茨城県立医療大学紀要第21巻の刊行にあたって 学長 工 藤 典 雄 大学教員の責務は,教育・研究・社会貢献である。3つの松明に明確な境界はなく,また,そのいずれか に当てはめることが難しい教員活動も多い。しかし,大学人である以上,輝きの濃淡はあるにせよ,3 つの 要素は活動の源泉として持っていて欲しい。 授業や実習指導だけが教育ではない。そのための委員会活動も教育の一環である。大学での,学生との触 れ合いはすべて教育的要素をもつ。本学では,すべての教員が,この教育活動に多大なエネルギーをつぎ込 んでいる。しかも情熱をもって,取り組んでいる。このことは,自由参加の FD である IPU ミーティング にいつも大勢の参加があることからも判る。 医療系の大学教員は,社会貢献や地域貢献に近い所に活動の基盤を持つ。県や市町村の行政の中で,ある いはボランティアとして,専門知識を生かしている教員も多い。医療とは直接関係ない教員も,小,中,高 校の生徒を対象にいろいろな公開セミナーなどに熱心に取り組んでいる。各教員の社会貢献への意識は総じ て高い。熱意が横溢している教員も多い。 研究についてはどうであろうか?大学の研究活動の指標として,科学研究費の取得状況がある。平成 27 年度の採択件数は,38 件。教員数は 108 人なので,決して大きい数字ではなく,少々物足りない。 しかし,大学では,科研費を取得しうる行為だけが,研究ではない。教育や社会貢献における新たな試み や日々の活動の定量的・定性的な分析も,りっぱな研究活動である。ただし,それが成果物として公表され て,初めて研究として認知される。本刊では,本学の各種委員会活動やアンケート調査の解析が、 原著や報 告として多く掲載されている。日々の教育や社会貢献活動を研究に昇華しようとする試みに,本紀要の果た す役割は大きい。
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