Page 1 Page 2 100 2. 2. 3 研究の実践 3. L 寒踐@ 2次閱教D最大值

イプシロン 2014. Vol .56, 99 − 103
イメージのある数学の学習指導
愛知県 立津島北高等学校 河 村 謙 太
1 は じ めに
答え が はっ き りとし てい て 、そ こ に至 るま で の手 順 が、 これ ほ ど明 確 に書い て あ るの にも か か
わらず 、 なぜ数 学 は嫌 われ、 理解 さ れない のか。 こ れ は私 が長い 間、 素 朴に 思っ てい るこ とであ
り 、数 学教 師を 目指 し た 理由 の一つ で あ る。学校数 学 で 教え る 内容 の 量は 時代 に よっ て変 わ るが 、
教 え る内容 そ の もの は不 変で あ る。 私 がす べき こ とは 、こ の変 わら ない 台本 を、 い かに して 生 徒
の印象 に残 る よ う演 じ るかで あ る と考 える。
印象 に残 る とい うこ とは、 次 に同 じ よ うな問 題を 解 く とき に、 何 をやっ た か を思い 出しや すい
とい うこ とで あ る。 生徒 が 問題 を解 く とき 、直 前 に習っ た こ とで さ えで き ない のは 、こ の 思い 出
す 力 が乏 しい か らで は ない か と考 える。そ して 、思い 出 す力 を養 うこ とは 、問題 に直 面し た とき 、
過 去 の経 験 に照 らし 合 わせ 、比 較し 、応 用 して 解 決す るこ とにつ な がっ てい く と考 え る。 生徒 に
ど のよ うなイ メ ージ を 作り 、 思い 出させ る か、 そ の方 法 を研 究し たい 。
2 研究の内容
2 .1 研究の目的
授業の中で、印象を残すことのできるものは、教師の発する言葉と板書が主である。もち
ろんそれ以外に、教室の雰囲気や季節なども思い出すきっかけ となり うるが、これらを積極
的に活用することは現実的ではない。思い 出しやすい授業が生徒の理解を促すならば、い か
に生徒に強い印象を与える言葉を選ぶか、また、いかにインパクトのある板書をするかは非
常に重要である。
そこで私は、授業で印象に残る活動や板書を必ず一つ以上することとし、生徒に何らかの
印象を残すことを目的とした。
2.2 生徒の実態
本校の生徒は、大人しく、とにかく真面 目である。数学を苦手とする生徒は多い が、何と
か理解しようと努力はできる。公式や定理を使うだけで答えが求められるような問題は、何
度も練習してできるようになる。定期考査でも、そういった問題は解くことができる程度ま
では勉強してくる。しかし、公式を複数回使 う問題や場合分けが必要な問題はできない生徒
が大半である。例えば、2 次関数のグラフ から最大値と最小値を求める問題で、平方完成は
できるが、それが何のためにすることなのかわからず、そこで終わってしま うのである。ま
た、本校の生徒の数学の勉強の特徴として、問題 の解き方を必死に覚えようとするこ とがあ
る。思い 出すべき印象がないことによって起こる行動だと考える。
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2.3 研究の実践
2. 3. 1 実践① 2次関数の最大値・最小値問題
定義域が固定された、2 次関数の最大・
最小問題でGRAPESを用いて解説す
ることを考えた。y=(x-a)2+1 の
aの値を変化させることで、最大およ
び最小となるxの値が変化するので、
場合 分 けが 必 要に なる。 し かし 、生 徒
には 「 グラフ を 動 かす 」 とい うイメ ー
ジ がま だ 存在 し ない。 そ の た め、な ぜ
グラフ を 動 かさ なけ れ ばな らない の か
も 理解 で きない と考 え、 まず 、 グラフ
が 動く と はど ういう こ となの かを 印象
づけようと思いGRAPESを利用した。GRAPES
の利点は値を変化させること
によって、グラフが移動する様子を実際
に見ることができるという点である。 し
かし、ノートにはある瞬間のグラフしか
書けないので、定義域が変化していない
様子とグラフが動く様子を表現するため
に 、右 の よ うに縦 に並 べ て板 書し た。
ま た、 定義 域 内は 実線 で、 定 義域 外 は
点線 で表 現 し 、実 線部 分 のみ が 「見 え
てい る」 とい う言葉 で 表現 し た。
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2. 3.2 実践② 断面を移動させてできる立体の体積を求める問題
半径aの円の直径に垂直な弦を底辺とし、高さがhの二等辺三角形を円に対して垂直に
作 る。 こ の三角 形 が通 過し て でき る 立体 の 体積 を求 め よ。
この問題を3D-GRAPES を用いて解説をすることを考えた。この種の問題を解く上で、
で きあ が る立 体 の形 は さほ ど重 要で は ない。 む し ろ、 でき あ が る立 体の 概形 が わか らな く
て も断 面 積 さえ表 現で き れ ば、 体積 を 計算 でき る点 の方 が重 要であ る。 でき あ がる 立 体が
複 雑で あ るほ ど、 積 分法 の 有用 性が 実感 で き ると 考え る。 で あ るな らば、 ま ず、 立 体 が複
雑 であ るこ とを知 ら なけ れ ばな らない 。 そ こで 、 立体 をイ メ ージ させ る のだ が、 言葉 だ け
で は伝 え るこ と が難し い。 ま た、 板 書 をす る には芸 術 的セ ン スが 必要 に なっ てく る。 教 科
書 や 問 題 集 の解 説 に も 作 ら れ る 立 体 は 書 か れて い な かっ た。 こ れ を 表 現 す る た め に3D-GRAPES
を 活用 し た。 ここ で は、 動く 辺 が掃 く部 分 の残 像 で立 体を 表 現し た。
3 研 究 の結 果
3 .1 実 践 ①の 結果
グラフ が動 く こ とで 、何 が 起こっ てい る のか は理 解 させや す かっ た。 ま た、 生 徒 の反応 も
よく 、印 象 がしっ かり残 っ た よ うに思 う。 し かし 、 定義 域内 の どこ で 最大 (最 小 ) になっ て
い る かは 理 解で き てい な かっ た。
3 .2 実践 ② の結果
立体 がで きあ がっ てい く 過 程や そ の立 体を い ろい ろな 角 度か ら 見る こ とが でき る点 で 生徒
の反 応 は非 常 によ かっ た。 授 業後 に、 他 に どん な立 体を 描 ける か興 味 を もっ た生 徒 もお り、
線 が動い て 立 体と なる こ とに 強い 印象 を 与 えら れた よ うに感 じ た。
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4 考察
4 .1 実 践 ① の結果 に対 す る考 察
グ ラフ が動 く こ とを印 象 付け る とい う 目標は 達成 された が 、そこ か ら最 大(最小 )を とる X
が変 わる こ とを理 解 させ ら れな かっ た。 グ ラフ が動 く こ とに 注 意が 向き すぎ て しま い 、問題
を解くために思い出すものとしては、不十分なものとなってしまった。また、ICTを使うこ
と 自体 が 、生徒 にい つ も と違 う印 象 を与 えら れる と楽 観 的 に考 えて い た が、本 校 には 常時ICT
で授 業 を行 う教員 もお り 、画 像や 映 像に 対し て真 新 し さを感 じ な かっ た のか もし れ ない と、
後になって思い至った。それを踏まえて、別なクラスでGRAPESを使わずに、教室の開い
た窓を定義域に見立てて、自らが2次関数のまねをして授業を行ったところ、GRAPESを使
っ た とき 以 上 の反応 を 見 るこ とが でき た。 特 に磨 りガ ラ ス の窓 は、 そこ に グ ラフ があ る はず
な の に見 え ない ( 見に くい )こ と を表 現す る には うっ てつ け で あっ た。 他 の 単元 でも 、身 の
回 り のも の を利用 し て表 現 でき ない か 研究 した い。
4. 2 実践②の結果に対する考察
3D-GRAPES
を使 っ た のは 初 めて であっ た が 、立 体 の表 現 に 関し て は非 常 に強力 なツ ー
ルで あ る と感 じた。 平面 を積 分す る こ とで 体積 が求 ま る とい うこ とを 、空 間上で 表 現で き る
ので 、 積分 の 意味 も感 じさ せ るこ と がで きた。 立体 を扱 うとき は 積極 的 に利 用し 、 常に 印象
を与 え られ る よ うにし たい。 ただ 、 自分 で立 体を 想 像で き る よ うにな るま で に は、 まだ まだ
段階を踏まなければならないと感じた。GRAPESで値を変化させるときに、途中で止めて、
その後どうなるかを想像させるなどの手立てが必要だと考える。また、3D-GRAPESを使
っ た 次 の時 間で 、 歯磨 き粉 のチ ュ ーブ が 立体 とし て似 てい る とい う話 をし た とこ ろ、 そ れを
持 っ て来 れ ばよ かっ た ので は ない か と言 われて し まっ た。 実 生活 の中 にあ り なが ら、 思い つ
かな かっ た こ とは 大い に反 省 すべ き 点で あっ た。 今 回 紹介 し た 立体 を3D-GRAPES
で表 現
するのに、3時間程度の時間を要した。見せた時間は1,2分であったので、コストパフォ
ーマンスは悪かった。 GRAPESよりはるかに難しいソフトであるように感じたので、今後、
積 極的 に 触っ て、 慣 れてい き たい 。
5 ま と め
理解できているとは、イメージがある状態だと考える。印象に残る活動を研究のテーマとし、
主としてICTの活用によって印象を強くすることを考えた。ICTを利用すれば、視覚で印象に
残すことは比較的簡単であった。その際、強調するべき内容をよく考えておかなければならな
い 。 印象 に残 る のは 視覚 的な も ので あ るか もし れない が、 必要 な の はそ の内 容 であ る。 動 的、
視覚 的 な印 象 を残 す 中に 、重 要な 事柄 を しっ かり 入 れ込 むこ とが今 後 の課 題 とな った 。こ れ は、
ICTを使う、使わないにかかわらず、教材研究そのものである。最も重要なことがらを絶対に
外 さない よ う常に 心 がけ たい。 さら に、身 近 な もの を使っ て例 え るこ と がで きない か考 え るこ
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イメージのある数学の学習指導
とも、大切 であ る。生 徒 と共通 の認 識 が あれ ば、印象 に残 り やす く 、思い 出しや すい と考 える。
今 回 は動的 な 内容 に対 し て、 そ の印象 を 残す こ とを 考 えた が、 今後 は 公式 一つ に で も何 らか の
イ メ ージを 残せ る よ うにし たい 。
数学 とい う変 わら ない 台本 の 単元す べ てで 、イ メ ージ す る もの がそ れぞ れ あれ ば、 問題 を 解
く こ とは少 し 楽し く なる ので は ない だろ うか。 数学 の 問題 が解 け る とい うこ と は、生 徒 が 自信
を もつ こ とに つ なが る と考 える。数学 が難 し い と思 う生 徒 が多い から こそ 、や り がい を感 じ る。
今 後 も 自己研 鑚 に励 んでい き たい 。
6 お まけ
6 .1 三角 関数 の加 法 定理 で 間違 えや すい とこ ろ
sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ
sin(α-β)=sinαcosβ-cosαsinβ
cos(α+β)=cosαcosβ-sinαsinβ
cos(α-β)=cosαcosβ+sinαsinβ
6.2 各象 限 で三 角 比が 正 の値 にな る もの
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