(第1回会合) における各委員からの意見

「流通・取引慣行と競争政策の在り方に関する研究会」
(平成 28 年 3 月 11 日(金)13:00~15:00)
配布資料2
流通・取引慣行と競争政策の在り方に関する研究会(第1回会合)
における各委員からの意見
セーフ・ハーバーの基準として市場シェアや順位を採用すること等について
【各会員からの意見】
○ 企業結合ガイドラインでは,HHIがセーフ・ハーバーの基準として導入さ
れているところ,垂直的制限行為の是非を判断するに当たっても,行為者の市
場シェアのみを考慮するのではなく,市場全体の状況を見て判断するのはどう
か。
○ 市場における順位は変動性が高いという点に鑑みると,セーフ・ハーバーの
基準としては市場シェア基準のみでよいのではないか。
○ 事業者からすると,自社の市場シェアを厳密に算出しようとすれば,分母と
なる市場規模を工業統計や商業統計から引用することとなるが,商業統計は毎
年実施されないことを踏まえると,恒常的に自社の厳密な市場シェアを把握す
ることは難しい。その意味では,把握することが比較的容易な,市場における
順位をセーフ・ハーバーの基準とすることには意味があるのではないか。
海外(EU)におけるセーフ・ハーバーを参照することについて
【各会員からの意見】
○ EUにはいくつか「セーフ・ハーバー」と呼ぶことのできる制度があり,そ
のうち,一括適用免除規則によるセーフ・ハーバーは,EU機能条約第101
条第1項に該当するような垂直的協定について,一定の要件を満たした場合
に,EU機能条約第101条第3項の要件を満たしたものとして合法の推定を
与えるというものであるのに対し,デミニマス告示におけるセーフ・ハーバー
は,小規模な事業者による協定について,一定の要件を満たす場合にはそもそ
も「感知し得る競争制限」とみなさず,EU競争法の対象から外すものである
との違いがある。流通・取引慣行ガイドラインにおける自由競争減殺の考え方
というのは,デミニマス告示でいうところの「感知し得る競争制限」に近いと
も考えられるため,EUの例を参考にするのであれば,一括適用免除規則にお
けるセーフ・ハーバーではなく,デミニマス告示におけるセーフ・ハーバーを
参考するのも一案であろう。
○ EUにおいては,「agreement」の解釈として,メーカーが強制力をもって流
通業者を一方的に拘束する場合であっても,多くの場合,「黙従の合意」とし
て「agreement」の一つに整理される。この点,我が国においても,例えば,拘
束条件付取引について,「拘束条件を付して取引する」という広義の
「agreement」が存在すると捉えており,「agreement」について,EUと比較
的近い捉え方をしている。他方,米国においては,単独の取引拒絶のみが行わ
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れた場合には例外的に適法とする特殊な法制度となっており,我が国やEUと
は異なる立て付けになっている。
また,EUにおいては,セーフ・ハーバーに該当する場合であっても事後的
に撤回することが可能であるところ,流通・取引慣行ガイドラインとはセー
フ・ハーバーの性質がそもそも異なるため,こうした制度的な違いには留意す
る必要がある。
さらに,デミニマス告示について補足すると,同告示では,市場シェア1
5%を垂直的制限行為におけるセーフ・ハーバーとしているが,累積シェアが
30%以上になる場合には,セーフ・ハーバーが5%に下がる立て付けになっ
ているところ,事後的にセーフ・ハーバーが変動するという点で,流通・取引
慣行ガイドラインとは異なっている。
セーフ・ハーバーの市場シェア基準の水準や対象行為類型について
【各会員からの意見】
○ セーフ・ハーバーの具体的な基準を検討するに当たっては,例えば,累積的
効果を勘案し事後的にセーフ・ハーバーが撤回され得るといった,EUのよう
な例外的な取扱いを行うのか否かという点をはっきりさせる必要がある。そし
て,これらの例外的な取扱いについての検討と併せてセーフ・ハーバーの具体
的な基準を検討すべきである。
○ 現在の家電業界における流通実態を踏まえると,現行のセーフ・ハーバー基
準を緩和し,メーカーによる垂直的制限行為が認められる余地を広げてほし
い。
具体的には,市場シェアをEU並みの30%に引き上げ,順位基準を不問と
すべきである。また,セーフ・ハーバーが認められる行為を,流通業者の取引
先に関する制限や小売業者の販売方法に関する制限も含めた非価格制限行為全
般に拡大するほか,流通業者の取引先に関する制限の一つである安売り業者へ
の販売禁止及び小売業者の販売方法に関する制限の一つである広告・表示方法
の制限については,セーフ・ハーバーに該当しない場合であっても,価格維持
のおそれがなければ違法にならないことを明記してほしい。
○ セーフ・ハーバーの立て付けとして,現在は,セーフ・ハーバーに合致する
か否かという1つの基準しかないが,企業結合ガイドラインにおいて「競争を
実質的に制限することとなるとは通常考えられない」とされる基準と,「競争
を実質的に制限することとなるおそれは小さいと通常考えられる」とされる基
準の2段構えの基準が採用されているように,複数の基準を設けることも,事
業者の予測可能性に資するという観点からは,あり得るのではないか。
○ 現行の流通・取引慣行ガイドラインの市場シェア基準を引き上げること自体
は,会員の総意であると考えられる。
セーフ・ハーバーの市場シェアの水準については,公正取引委員会が所管す
る他のガイドラインと整合性をとるべきである。流通・取引慣行ガイドライン
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は独占禁止法第19条に関するガイドラインなのだから,同じ独占禁止法第1
9条に関する他のガイドラインと基準が異なることは問題である。そうする
と,整合性の観点からは,独占禁止法第19条のガイドラインである知的財産
ガイドラインのセーフ・ハーバーの水準を踏まえ,少なくとも20%までは引
き上げることが妥当だと考えられる。
○ 相談事例集では,市場シェアが20%程度の事業者が行う非価格制限行為を
独占禁止法上問題となるおそれがあるとした事例がある。また,市場の画定の
仕方によっては,単一ブランドで市場が成立したり,ある程度のカテゴリで市
場が成立することがある点を踏まえると,市場シェア基準としては20%が限
界ではないかと考えられる。
累積的効果を考慮することについて
【各会員からの意見】
○ 垂直的制限行為を行う事業者の市場シェアが低い場合であっても,他の事業
者が同時並行的に垂直的制限行為を行い,例えば,その累積シェアが80%を
超えるような場合には市場閉鎖効果が大きいと考えられることから,一定の場
合には累積的効果を考慮すべきである。
○ セーフ・ハーバーは,事業者が安心感を持って事業活動を行うための基準で
あると考えられるところ,累積的効果の考え方を導入すると,セーフ・ハーバ
ーに該当する場合であっても,事後的にセーフ・ハーバーを撤回される可能性
があり,また,他の事業者の市場シェアを把握できない場合もあるため,事業
者に不安感を与えることになってしまう。他方で,市場シェアの低い事業者が
横並びで同様の行為を行った結果,多数の流通経路が閉鎖されるといった特殊
な事案に対応するためには,累積的効果を考慮することに一定の意味がある。
ただし,先ほども申し上げたとおり,EUにおいては,セーフ・ハーバーに
該当する場合であっても事後的に撤回することが可能な制度となっているとこ
ろ,流通・取引慣行ガイドラインとはセーフ・ハーバーの性質がそもそも異な
るため,こうした制度的な違いには留意する必要がある。
「市場」の考え方を明確化することについて
【各会員からの意見】
○ 市場画定については,単一のブランドで市場を画定できる場合と,ある程度広
いカテゴリーで市場が画定される場合があるところ,市場をどのように捉えるの
かという点についてガイドラインに追記すべきではないか。
○ 流通分野においては,一定の市場を確定的に捉えるということ自体が難しく
なってきているのではないか。
○ 差別化された製品の市場の場合には,市場画定が非常に難しい。この点,市
場画定の方法によっては,狭い市場が画定され,市場シェアが高く算出された
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結果,事業者の予想に反してセーフ・ハーバーの対象から外れることもあり得
る。EUの垂直的制限規制においては SSNIP テストが用いられているが,SSNIP
テストを用いる場合であっても,差別化された製品の市場を画定することは,
実際には非常に難しいだろう。いずれにせよ,市場をどのように画定するのか
という点については,様々な議論があるところであり,簡単に結論を出すこと
は極めて難しいと考えられる。
流通業者による垂直的制限行為の取扱いについて
【各会員からの意見】
○ 流通業者による垂直的制限行為について考え方を盛り込む場合には,優越的
地位の濫用という日本独自の観点から捉えるのではなく,自由競争減殺の観点
から捉える方が対外的に説明しやすいと考えられる。また,流通業者がメーカ
ーに対して行う垂直的制限行為の中には,優越的地位の濫用ほど強制性がない
ものも多いため,そうした行為についても射程に収められるような記載振りに
しておく方がよいと考えられる。いずれにせよ,セーフ・ハーバーに購入者基
準を導入するか否かなど,流通業者による垂直的制限行為については,全体見
直しの際に考え方を整理することになるのではないか。
その他
【各会員からの意見】
○ 垂直的制限行為に関する経済分析については,現状,理論的分析はそれなり
にあるが,実証的分析はまだまだ数が少なく,またその分析結果も異なってお
り,発展途上の状況にある。また,「『合理の原則を適用する当たってどのよ
うな手順が必要か』という点を経済学の領域から分析しなければならない」と
主張する論文はここ2年間で現れ始めているが,具体的な研究はほとんど行わ
れていないのが実情である。
○ 家電業界からの要望書では,「安売り業者への販売禁止」について,価格維
持のおそれがない場合には違法でないことを明記するよう求めているが,そも
そも,安売り業者への販売を禁止して,価格維持効果がない場合というのは想
定しにくいのではないか。
以上
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