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別紙
諮問第518号
答
1
申
審査会の結論
「固定資産公課証明書の交付申請書及び添付書類」における異議申立人の個人情報に
係る部分を対象保有個人情報と特定して開示とした決定及び「固定資産関係証明書正
本」を不存在を理由として非開示とした決定は、妥当である。
2
異議申立ての内容
(1)異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、東京都個人情報の保護に関する条例(平成2年東京都条
例第113号。以下「条例」という。)に基づき、異議申立人が行った「1
(証明)関係証明申請書及び添付書類、2
固定資産
上記の申請書に基づく固定資産(土地・
家屋)関係証明書の正本・東京都江東都税事務所長発行・2件以上」の開示請求に対
し、東京都知事が平成27年6月30日付けで行った開示決定及び非開示決定について、
その取消しを求めるというものである。
(2)異議申立ての理由
異議申立書及び意見書における異議申立人の主張を要約すると、以下のとおりであ
る。
ア
固定資産公課証明書の交付申請者を特定する氏名、住所など個人情報の開示を求
める。本件請求は、異議申立人の個人情報を誰に開示したか、また、開示した内容
を求めるものであって、正当な請求である。この異議申立人の主張を全く無視した
処理は不適切な処理、不当な決定であるので異議申立てをする。
イ 「正本を申請者に交付済みであり、存在しない。」という理由で非開示としてい
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る理由には正当性がない。行政庁として正当性を欠く処理通告で非開示は不当であ
る。正本の法的な解釈を再度確認し、「正本」の正当なる意味を理解した措置決定
を求める。
ウ
行政庁により第三者に自己の個人情報が開示された場合に、申請人の個人情報を
非開示とするのが条例制度の目的なのか。行政機関たる東京都知事に対して個人情
報開示請求をしても情報を非開示とする制度なのか。
3
異議申立てに対する実施機関の説明要旨
理由説明書及び口頭による説明における実施機関の主張を要約すると、以下のとおり
である。
(1)関係証明書について
本件異議申立てに係る開示請求の対象となっている「固定資産(土地・家屋)関係
証明書」と、当該開示請求に対する非開示決定通知書に記載 している「固定資産
公課証明書」は同一のものであるので、以下統一して「関係証明書」という。
関係証明書とは、物件の所在、物件の表示、所有者の住所・氏名のほか、価格、固
定資産税・都市計画税の課税標準額、固定資産税(相当)額、都市計画税(相当)
額について、申請に応じて証明を行うものである。
また、「都税に関する公簿等の閲覧及び都税に関する証明事務の取扱いについて」
(昭和61年7月1日付61主税税第37号主税局長通達。以下「通達」という。)によ
り、関係証明書を申請できる者は、「証明事項に係る本人」、「本人の代理人」及
び「法令等に基づき閲覧又は証明の申請をすることについて正当な理由を有する者
又はその代理人」と定められている。
ここでいう法令等に基づき証明の申請をすることについて正当な理由を有する者
とは、通達の規定によると、強制競売等を申し立てようとする債権者等、証明事項
に係る本人の委任等がなくとも、独自の法律的地位に基づき証明の申請をすること
ができることが法令等により明らかにされている者をいい、賃貸借契約書、強制競
売申立書、訴状等により、申請をすることができる者であるか否かの確認を行い、
申請をすることができることが明らかになれば、関係証明書の交付を行うものとし
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ている。
(2)開示決定における対象保有個人情報の特定について
本件に係る「固定資産公課証明申請書及び添付書類」は、証明の申請をすることに
ついて正当な理由を有する異議申立人以外の第三者(以下「申請者」という。)に
よって作成された文書であり、その中に異議申立人の個人情報が含まれているもの
である。そのため、異議申立人を本人とする保有個人情報に係る部分について全部
開示とし、それ以外の部分については対象外とした。
(3)非開示とした理由について
東京都における関係証明書は申請があった都度発行し、発行した証明書をそのまま
申請者に交付するものであり、発行した証明書は実施機関には存在しないため、不存
在による非開示とした。
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審査会の判断
(1)審議の経過
審査会は、本件異議申立てについて、以下のように審議した。
年
月
日
審
議
経
過
平成27年11月13日
諮問
平成27年12月25日
新規概要説明(第163回第一部会)
平成28年
1月
実施機関から理由説明書収受
平成28年
1月20日
異議申立人から意見書収受
平成28年
1月28日
実施機関から説明聴取(第164回第一部会)
平成28年
2月17日
審議(第165回第一部会)
5日
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(2)審査会の判断
審査会は、異議申立ての対象となった保有個人情報並びに実施機関及び異議申立人
の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
ア
本件請求個人情報及び本件対象保有個人情報について
本件異議申立てに係る開示請求は、「固定資産に係る固定資産(証明)関係証
明申請書及び添付書類」(以下「本件開示請求1」という。)及び「上記の申請
書に基づく固定資産(土地・家屋)関係証明書の正本・東京都江東都税事務所長
発行・2件以上」(以下「本件開示請求2」という。)である。
実施機関は、本件開示請求1に対して、固定資産(土地・家屋)関係証明書交付
の申請書類である固定資産公課証明書の交付申請書及び添付書類(以下「本件対象
公文書」という。)のうち異議申立人の個人情報に係る部分(以下「本件対象保有
個人情報」という。)を対象保有個人情報として開示決定を行い、本件開示請求2
に対しては、平成26年8月○日及び平成26年8月○日に江東都税事務所に申請さ
れた固定資産(土地・家屋)関係証明書の正本(以下「本件請求個人情報」とい
う。)を請求にかなう個人情報として特定した上で、当該情報そのものを既に申請
者に交付していることから、不存在を理由とする非開示決定を行った。
異議申立人は、異議申立書において、本件対象保有個人情報の対象外とされた部
分及び不存在とした本件請求個人情報の開示を求めると主張していることから、審
査会は、本件対象保有個人情報の特定の妥当性及び本件請求個人情報の不存在の妥
当性について判断する。
イ
固定資産(土地・家屋)関係証明書の交付について
固定資産(土地・家屋)関係証明書(以下「関係証明書」という。)は、所有者
の住所・氏名、物件の所在地、種類や地積といった物件の表示に加え、物件の価格、
固定資産税及び都市計画税の課税標準額、固定資産税額相当額、都市計画税額相
当額について、申請に応じて証明を行うものである。
民事執行規則(昭和54年最高裁判所規則第5号)23条5号、73条、173条1項及
び2項並びに民事保全規則(平成2年最高裁判所規則第3号)32条の規定により、
不動産に対する強制執行としての強制競売若しくは強制管理、担保権の実行として
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の競売若しくは収益執行又は強制管理の方法による仮差押の執行(以下「強制競売
等」という。)の申立てに際しては、当該不動産に対して課される租税その他の公
課の額の証明書を強制競売等の申立書に添付しなければならないこととされている。
このため、実施機関では、通達を定め、強制競売等を申し立てようとする債権者
から強制競売等の申立てに用いることを明らかにした上で上記証明書の交付の申請
がなされた場合においては、関係証明書の交付を行うものとしている。
また、通達では、関係証明書の申請ができる者及び交付を受けられる者を「証
明事項に係る本人」、「本人の代理人」及び「法令等に基づき閲覧又は証明の申
請をすることについて正当な理由を有する者又はその代理人」とし、法令等に基
づき閲覧又は証明の申請をすることについて正当な理由を有する者であることの
確認は、賃貸借契約書、強制競売申立書、訴状等により行うこととしている。
ウ
本件対象保有個人情報の特定の妥当性について
審査会が見分したところ、本件対象公文書のうち、実施機関が異議申立人の保
有個人情報であると特定した部分は、申請書に記載されている異議申立人所有の
固定資産に関する情報、添付書類の不動産強制競売申立書の当事者目録に記載さ
れている異議申立人の住所・氏名及び同じく添付書類である異議申立人を当事者
とする訴訟の判決文であり、これらの情報は異議申立人を識別することのできる
氏名と一体となっていることから、異議申立人の保有個人情報であると認められ
る。一方、実施機関が異議申立人の開示請求の対象外とした申請者の住所・氏名、
申請者が本件申請を行う原因となった不動産強制競売申立てに係る内容には、異
議申立人の氏名等、異議申立人を識別することができる情報は含まれておらず、
異議申立人の保有個人情報とは認められない。
したがって、実施機関が本件対象保有個人情報を異議申立人の保有個人情報と特
定して開示した決定は、妥当である。
エ
本件請求個人情報の不存在の妥当性について
地方税法(昭和25年法律第226号)734条1項は、都はその特別区の存する区域
において、都を市とみなして固定資産税を含む普通税を課するものと定めている。
また、同法380条1項は、市町村は、固定資産の状況及び固定資産税の課税標準で
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ある価格を明らかにするため、固定資産課税台帳を備えなければならないと定め、
さらに、同条2項の規定により固定資産課税台帳の備付けは電磁的記録をもって
行うことができるとしている。
実施機関の説明によると、これらの規定に基づき、都では、固定資産課税台帳
を独自の電子情報処理組織である「税務総合支援システム」(以下「税務システ
ム」という。)により運用・管理しており、証明発行業務についても税務システ
ムにより行っている。証明書の発行に当たっては、申請の都度、税務システムの
証明発行画面に必要事項を入力し、証明書を作成して申請者へ交付しているため、
異議申立人が請求した証明書の正本というものは存在せず、写しも残らないとの
ことである。
審査会が実施機関が行っている税務システムによる証明書の発行業務について確
認したところ、実施機関の説明のとおり、証明書は申請の都度発行され、申請者に
交付する文書以外は存在しないことが認められた。
以上のことから、実施機関が本件請求個人情報を不存在を理由として非開示と
した決定は、妥当である。
よって、「1
審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
秋山
收、浅田
登美子、神橋
一彦、隅田
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憲平