JPSJ フレンドシップミーティング 2016 年 3 月 21 日(月) 12:30-13:20 2016 年日本物理学会年次大会 東北学院大学 AP 会場 次第 (司会:神木正史) 12 時 30 分-12 時 40 分 JPSJ Outstanding Referee 2016 授賞式 12 時 40 分-12 時 50 分 JPSJ 近況報告 (JPSJ 編集委員長 12 時 50 分-13 時 20 分 上田 和夫) 講演会 中央大学 脇田 順一 「バクテリアの紐状成長における複雑な折り畳み過程 の定量化」 (要旨裏面参照) 質疑応答 JPSJ Outstanding Referee 2016 受賞者一覧(五十音順、敬称略) 網塚 浩 田島 節子(大阪大学) 楠瀬 博明(明治大学) 広井 善二(東京大学) 榊原 俊郎(東京大学) 堀田 貴嗣(首都大学東京) 佐々 真一(京都大学) 三宅 和正(豊田理化学研究所) 佐藤 憲昭(名古屋大学) 柳瀬 陽一(京都大学) (北海道大学) バクテリアの紐状成長における複雑な折り畳み過程の定量化 中央大学 脇田 順一 納豆菌を仲間とする枯草菌を寒天培地表面に接種し培養すると、誘導期とよばれる不活性期間を経た のちに細胞分裂を始め、指数関数的に細胞数を増やし(対数期)、ある段階でコロニーとしての成長を 開始する。細胞分裂からコロニー成長開始直前までの期間は、細胞分裂は繰り返されるものの細胞の分 断は起こらず、繋がった細胞は1本の細長い紐状に伸びていく。指数関数的に長さを増すこの細胞鎖は、 折り畳み過程を繰り返しながら培地表面を覆い尽し、最終的に巨視的な大きさのコロニーへと成長する。 図1のモルフォロジー・ダイアグラムは、培地の固さと栄養分の違いによってコロニーの形が5種類の 特徴的な形に分類されることを示している。これらのパターンは、ミクロなバクテリア細胞から、どの ようなプロセスを経て形成されるのであろうか。 中央大学理工学部の本田(大学院生)らは、細胞分裂開始からコロニー成長開始までの細胞鎖の折り 畳み過程(図1の領域 B に着目)におけるビデオ画像1枚1枚を丹念に調べ直すことを始めた。細胞鎖 の画像から手作業で「一筆書き」の曲線をトレースし、折り畳み過程の結果、各時刻で2重線になって いる部分の長さ、3重以上になっている部分の長さを、その時点でまだ折り畳みが生じていない単線部 分の長さとともに測り、数値データに整えた。すでに周囲で形成されている複雑な折り畳み構造を「平 均場」と見なし、その中において、図2に示したいくつかの単純な素過程だけに着目するという粗視化 を行い、単線、2重線、および3重以上の部分の長さの時間発展を記述する非線形方程式系を考案した。 その解析的な積分解は、いくつかのパラメータ・フィッティングを行うことにより、上述の実測データ をよく再現することができた。フィッティングで得られたパラメータの値は、図2で示した素過程のう ち、[2] や [3] といった副次構造への遷移率に単純な法則性があることを示唆する。 50 20 C n [g/l] ] 10 5 2 1 0.5 0.2 1/15 1/10 1/8 1/7 1/6 1/5 1/4 1 / C a [g/l] 図 1.枯草菌コロニーのモルフォロジー・ダイアグラム 図2.細胞鎖の折り畳み過程における素過程 注目論文 Self-Elongation with Sequential Folding of a Filament of Bacterial Cells Ryojiro Honda, Jun-ichi Wakita, and Makoto Katori: J. Phys. Soc. Jpn. 84, 114002 (2015)
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