特集 April Vol.27 No.1 痛み 概論 能加算」が新設されて以降、老健施設の在宅復帰 食事、入浴や排泄といった ADL(日常生活動 機能の強化が徐々に強調されるようになり、平成 作)における能力向上や社会参加に関わる希望も 24 年度改定では、 「在宅強化型」なる新たな報酬 少なくない(表 1) 。 体系が誕生した。その後、平成 27 年度改定では このことは、平成 15 年の「高齢者リハビリ 従来型の基本サービス費が大幅に減額されるなど、 テーション研究会」 (厚生労働省)においても、 今後、老健施設がめざしていく方向性は在宅復帰 すでに課題として指摘されていたことだった。に 機能の強化なのだということが、より明確に示さ もかかわらず、表 2をみてもわかるように、い れたといえる。 まも依然として通所リハビリの内容は明らかに機 それはつまり、老健施設のリハビリ機能を強化 痛みを治したい 52.9% 身体機能を治したい 78.8% 筋力や体力をつけたい 75.4% 歩けるようになりたい 60.8% 言葉や記憶を治したい 35.3% 日常生活を送る上での基本的な動作(移 動や食事、排泄、入浴、着替えなど)が できるようになりたい 55.9% 買い物や掃除、料理など家事ができるよ うになりたい (n=2,260) 関節可動域訓練 66.1% 筋力増強訓練 78.7% 筋緊張緩和 52.9% バランス練習 39.9% マッサージ 37.5% 体操 47.5% 摂食・嚥下訓練 10.5% 言語訓練 3.9% 計算ドリル 20.1% 回想法 36.3% 5.4% 起居・移乗動作訓練 32.3% 歩行訓練 75.3% トイレ動作訓練 病気やけがになる前に行っていた趣味活 動や仕事をするなどの社会的活動をでき るようになりたい 42.3% 職員やなじみの仲間などに会いたい 54.7% 専門のリハビリテーションを受けたい 45.9% 何となく続けている 13.5% 活動 上や改善は当然ではあるが、現実的には、移動や その他 平成 18 年度介護報酬改定で「在宅復帰支援機 (複数回答 n=2,786) 心身機能 所リハビリを継続する理由としては、身体機能向 社会的活動 高齢者が病院や施設から退院・退所した後も通 ADL・IADL 活動と参加に焦点 通所リハビリの重要性高まる く耳にするところである。 心身機能 通所リハビリの仕組みを整えることは 地域での生き残りにつながる 老健施設における通所リハビリのあり方 6.7% 入浴動作訓練 8.1% 移乗動作訓練 10.8% その他ADL訓練 12.3% IADL練習 3.4% 趣味活動 24.2% その他 11.2% 表 1 利用者のリハビリテーションの継続理由 表 2 通所リハビリで提供されている内容 能訓練に偏ったプログラムの提供が続いているよ 立っているように、リハビリとは、人としての尊 活動と参加を見据えたリハビリプログラムをど し、通所リハビリなどのサービス提供により、在 うだ。 厳・権利・名誉を再びとり戻すという意味をもつ。 う提供していくかを考えることは、自ずと施設の 宅に復帰した後の支援にも注力すべしということ そんな背景もあり、平成 27 年度介護報酬改定 この意味を忘れてしまうと、特に高齢者におけ 外(地域住民や他事業所)との連携を模索するこ だ。事実、 「リハビリテーションマネジメント加 においては、中重度の要介護者や認知症高齢者へ るリハビリの意義を見失ってしまう。高齢者のリ ととなり、それはすなわち、地域包括ケアシステ 算(Ⅱ) 」に代表されるように、リハビリに対す の対応のさらなる強化として、 「活動と参加に焦 ハビリが若い世代のそれと異なるのは、終了後の ムの構築の整備にもつながっていく。 る報酬上の評価も手厚くなっている。 点をあてたリハビリの推進」が明確に示された。 生活イメージをもちにくいということだろう。 本来のリハビリの定義に立ち返り、老健施設本 近年、厳しい経営を強いられるなか、多くの老 そのための「生活行為向上リハビリテーション実 “通所リハビリからの卒業”が難しい要因もそこ 来の特長を生かした通所リハビリの仕組みを整え 健施設が併設する通所リハビリの機能に高い報酬 施加算」や「社会参加支援加算」が新設されたこ にある。身体機能の回復のみに目を向けることな ていけるかどうかは、老健施設が今後、地域のな 評価がついたわけで、これは大いに活用すべきで とはご承知のとおりである。 く、精神的ケアを含んだ支援に目標、モチベー かで生き残っていくための試金石となるのではな ションの設定をどこにもっていくか ― 。 いだろうか。 容易なことではないかもしれないが、介護のプ 本特集では、有識者による通所リハビリの意義、 ロフェッショナルがそろう老健施設としては、医 加算算定の解説と、通所リハビリに力を入れてい ある。 介護給付費実態調査によると、通所リハビリの 提供件数が年々増えている傾向にあるのは確かな 老健施設の強みを生かし バランスのとれたリハビリを 出典:平 成 24 年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査 (平成 26 年度調査) 「リハビリテーションにおける医療と介護の 連携に係る調査研究事業」報告書 出典:平 成 24 年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査 (平成 25 年度調査) 「生活期リハビリテーションに関する実態調 査」報告書 ようである。しかしながら、通所リハビリの提供 改めていうまでもないことであるが、 「リハビ 療機関の提供する通所リハビリとの差別化を図る る 2 つの施設を紹介する。いま一度、老健施設な 件数は増えても、その内容は、いまだ医療におけ リテーション(rehabilitation) 」という単語が、 意味でも、それらを踏まえた対象者の生活全体を らではの通所リハビリのあり方を見直し、その上 るリハビリにおいて主に実施されるような機能訓 re(再び)+habile(適する・人間にふさわし みたバランスのよいプログラム構成によるリハビ で、自施設の今後の可能性を探るきっかけにして 練そのものを目的としたものが多いという声もよ い)+ation(~の状態にすること)から成り リの提供をめざしたいところである。 ほしい。 10 ●老健 2016.4 010-011特集 概論(四)0314.indd 11 老健 2016.4 ● 11 2016/03/14 18:13:07
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