別紙 諮問第520号 答 1 申 審査会の結論 「私の相談記録票のうち、私が平成22年○月○日以降に相談した内容」を一部開示 とした決定は、妥当である。 2 異議申立ての内容 (1)異議申立ての趣旨 本件異議申立ての趣旨は、東京都個人情報の保護に関する条例(平成2年東京都条 例第113号。以下「条例」という。)に基づき、異議申立人が行った「○○(本人) の○○保健所での相談記録のうち、○○が平成22年○月○日以降に相談した記録」 の開示請求に対し、東京都知事が平成27年4月10日付けで行った一部開示決定につ いて、その取消しを求めるというものである。 (2)異議申立ての理由 異議申立書及び意見書における異議申立人の主張を要約すると、以下のとおりで ある。 黒塗りになっている部分の内容を知りたいので、開示を要求する。 3 異議申立てに対する実施機関の説明要旨 理由説明書及び口頭による説明における実施機関の主張を要約すると、以下のとお りである。 (1)精神保健相談対応医師の氏名について 開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示請求者以外の特定の個人を識 別することができるものであるため、条例16条2号に該当すると判断し、非開示と - 1 - した。 また、通常、医師の氏名は相談者に明らかにせずに相談業務を行っているため、 氏名を開示することにより、医師が相談事業への協力を躊躇し、協力が得られなく なるなど、相談事務の適正な執行に支障が生じるおそれがあることから、条例16条 6号に該当すると判断し、非開示とした。 (2)「分析・判断」欄及び「今後の計画及び方針」欄について 「分析・判断」欄には、相談に対応した医師や保健師が、相談により得られた情報 を専門的見地から分析し、相談対象者に対する支援の方向性や解決の優先度等につ いて判断した内容などが記載されている。 また、「今後の計画及び方針」欄には、上記の分析・判断に基づき、医師や保健 師が考えた今後の支援計画及びその方針が記載されている。 一般的に、相談が長期化するなどして担当職員に異動等があっても、過去の経緯 等を踏まえた上で継続的な相談事務を行っていく必要があることから、相談内容の 分析等の記載については、正確かつ詳細に記載することが求められている。 これらの情報を開示することにより、今後、担当職員が相談者の意向等を考慮し て、相談内容の分析等を記録することに消極的になることが考えられ、記録内容が 形骸化することにより、相談内容について公正な判断が行えなくなるなど、相談事 務の適正な執行に支障が生じるおそれがあることから、条例16条6号に該当すると 判断し、非開示とした。 (3)平成22年○月○日付相談記録票(B)の下から2行目及び3行目について 非開示とした部分には、医師の分析等が記載されており、開示することにより、今 後、担当職員が相談者の意向等を考慮して、相談内容の分析等を記録することに消 極的になることが考えられ、記録内容が形骸化することにより、相談内容について 公正な判断が行えなくなるなど、相談事務の適正な執行に支障が生じるおそれがあ ることから、条例16条6号に該当すると判断し、非開示とした。 - 2 - 4 審査会の判断 (1)審議の経過 審査会は、本件異議申立てについて、以下のように審議した。 年 平成27年 月 日 9月 審 1日 議 経 過 諮問 平成27年10月28日 新規概要説明(第158回第二部会) 平成27年12月15日 実施機関から理由説明書収受 平成27年12月21日 実施機関から説明聴取(第160回第二部会) 平成28年 1月18日 異議申立人から意見書収受 平成28年 1月21日 審議(第161回第二部会) 平成28年 2月18日 審議(第162回第二部会) (2)審査会の判断 審査会は、異議申立ての対象となった保有個人情報並びに実施機関及び異議申立 人の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。 ア 精神保健福祉相談及び相談記録票について 東京都保健所においては、地域保健法(昭和22年法律第101号)6条及び精神保 健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)47条に基づき、精神 保健福祉相談(以下「相談」という。)を実施している。 相談は、地域における精神障害者やその家族、関係者又は心に不安を持つ人に 対して、医療の必要性の判断、受療支援、社会復帰支援、再発・悪化予防、家族 支援などを通じ、精神障害者の社会復帰の促進や自立等のために必要な援助を行 うことなどを目的として実施されており、相談内容により医学的判断や緊急対応、 - 3 - 継続相談の必要性などを判断し、専門医による精神保健医療相談や医療機関の紹 介等を行う場合もある。 また、相談の際には、継続的な対応等の必要性から、その都度、実施機関の職 員が相談に関する記録を作成することとされており、「東京都保健所における保 健師の相談記録に関するガイドライン」(平成22年3月23日付21福保保政第1293 号)において、記録項目、相談記録票の様式等が定められている。 イ 本件対象保有個人情報及び本件非開示情報について 本件異議申立ての対象となった保有個人情報は、実施機関が異議申立人からの 相談を受けて作成した平成22年○月○日及び平成27年○月○日の相談記録票(以 下「本件対象保有個人情報」という。)である。 実施機関は、本件対象保有個人情報のうち、相談に対応した医師の氏名(以下 「本件非開示情報1」という。)を条例16条2号及び6号に該当するとして、ま た、「分析・判断」欄、「今後の計画及び方針」欄及び平成22年○月○日付相談 記録票(B)の末尾から2行目及び3行目の部分(以下「本件非開示情報2」と いう。)を条例16条6号に該当するとして、それぞれ非開示とする一部開示決定 を行った。 ウ 条例の定めについて 条例16条2号本文は、「開示請求者以外の個人に関する情報(事業を営む個人 の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月 日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるも の」を非開示情報として規定している。また、同号ただし書は、「イ 法令等の 規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定さ れている情報」、「ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示す ることが必要であると認められる情報」及び「ハ 当該個人が公務員等…である 場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報の うち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」のいずれかに該当 する情報については、同号本文に該当するものであっても当該情報を開示しなけ ればならない旨規定している。 - 4 - 条例16条6号は、「都の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若し くは地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、開示すること により、…当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を 及ぼすおそれがあるもの」を非開示情報として規定している。 エ 本件非開示情報の非開示妥当性について (ア)本件非開示情報1について 審査会が見分したところ、本件非開示情報1には、異議申立人の相談に対応し た医師の氏名が記載されており、これは、開示請求者以外の特定の個人を識別 することができる情報であることから、条例16条2号本文に該当する。 次に、同号ただし書の該当性について検討すると、当該医師は、地方公務員法 (昭和25年法律第261号)22条2項の規定により臨時的に任用された職員であっ て、氏名が公にされていないことから、同号ただし書イには該当せず、その内容 及び性質から、同号ただし書ロ及びハのいずれにも該当しないと認められる。 したがって、本件非開示情報1は、条例16条6号の該当性を判断するまでも なく、非開示が妥当である。 (イ)本件非開示情報2について 審査会が見分したところ、本件非開示情報2には、相談に対応した職員又は医 師による相談内容の分析や判断、今後の対応方針等(以下「相談内容の分析 等」という。)が記載されている。 実施機関の説明によると、一般的に、相談が長期化するなどして、その間に実 施機関の担当職員に異動等があっても、過去の経緯等を踏まえた上で継続的かつ 適切な相談事務を実施する必要があることから、相談内容の分析等の記録につい ては、専門的知見に基づき、正確かつ詳細に記載することが求められるとのこと である。このような性質の情報を開示することにより、今後、職員や医師が相談 者の意向等を考慮して、相談内容の分析等を正確かつ詳細に記録することに消極 的となることが予測され、その結果、記載内容が形骸化し、相談内容について公 正な判断が行えなくなるなど、相談事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあ ると認められる。 - 5 - したがって、本件非開示情報2は条例16条6号に該当し、非開示が妥当であ る。 なお、異議申立人は、異議申立書及び意見書において種々の主張を行っているが、 これらはいずれも審査会の判断を左右するものではない。 よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。 (答申に関与した委員の氏名) 横山 洋吉、中村 晶子、野口 貴公美、山田 - 6 - 洋
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