2014 年度 下水道新技術研究所年報 [要約版] 宮崎県下水道施設における津波シミュレーションを用いた津波対策に関する 共同研究 調査研究年度 2013 年度・2014 年度 震災対策の推進 (目 的) 本共同研究は,宮崎県,宮崎市,延岡市,日南市,日向市,串間市および(公財)日本下水道新技術機構と津 波対策に関する共同研究会により,県内複数自治体の下水道施設を対象とした詳細な津波シミュレーションに よる被害想定を実施し,津波対策基本計画を策定することを目的とした。 表-1 対象下水道施設数 (下水処理場・ポンプ場) (結 果) 都市名 施設数 本共同研究で対象とした下水道施設数と都市名を表-1 に示す。 宮崎市 13 (1)津波解析条件 延岡市 9 県公表の都道府県津波想定における解析条件(10m メッシュ)を基に,対象施設周辺 日向市 4 では詳細シミュレーション(2m メッシュ)を実施するため,国土 日南市 2 地理院が管理する陸域地形データを追加した。 管理棟 地震後36分経過 (最大浸水深時) (2)詳細な津波シミュレーションの実施(図-1) 消化タンク 水処理棟 (1)の解析条件で,検討対象施設の「建物有」 +10 と「建物無(波力の算出のため) 」のシミュレーショ 塩素混和池 +5 場内ポンプ棟 ンを実施し,対象とする施設の各建築物に対して水 0 理量(最大浸水深,最大流速,流向,基準水位等) 水位、m しさ沈砂洗浄棟 5m/s の整理を行った。建物周辺の流速および浸水深から 流速 下水処理場 算定されるフルード数より,水深係数を設定し,波 50m 力を算出した。これらの結果を用いて各施設に対す 距離 る被害想定を実施した。 図-1 津波シミュレーションの実施例 (3)津波対策基本計画の立案(図-2) ▼敷地境界 レベル 対策内容 得られた被害想定から,津波対策を4段階の対策規模 ▼ポンプ棟 施設敷地周囲を防護壁で囲い Ⅰ ▲対策レベルⅢ 場内への浸入を防ぐ レベルに分け,各施設について,レベル毎に被害想定に ポンプ室 電気室 建物の開口部を防水化し、 Ⅱ P 対する具体的な対策内容を検討し,施工性,維持管理性 屋内への浸入を防ぐ ▲対策レベルⅣ および概算費用より,最も適切であるレベルを採用した。 部屋の出入口を防水化し、 Ⅲ 部屋への浸入を防ぐ 換気 搬出入室 その後,対策内容について優先順位を設定し,短・中・ 機械室 Ⅳ 設備(機器)の防水化 長期の段階的な対策計画を立案した。 ▲対策レベルⅡ 対策規模 Ⅰ>Ⅱ>Ⅲ>Ⅳ ▼対策レベルⅠ 図-2 津波対策レベル (まとめ) 下水道施設に対し,詳細な津波シミュレーションによる被害想定を実施した。得られた被害想定から適切な 規模の対策を採用し,段階的な対策計画を立案した。 今回,宮崎県取りまとめのもと,共同研究会を設立したことにより,検討コストの低減,県下自治体の情報 共有等が図られ,効率的な津波対策検討を実施することができた。 本共同研究は, 「東日本大震災における津波による建築物被害を踏まえた津波避難ビル等の構造上の要件に係 る暫定指針」における「特別な調査または研究に基づく算出」に該当する。よって,研究の成果は「下水道施 設の耐震対策指針と解説(2014) 」に記載されているとおり,耐津波対策の検討例として活用されることになる。 ※ 宮崎県,宮崎市,延岡市,日南市, 日向市, 串間市,(公財)日本下水道新技術機構 問い合わせ先:研究第一部 中島 英一郎,小塚 俊秀,中野 善彰,井上 智行【03-5228-6597】 キーワード 津波対策,シミュレーション,数値解析,危機管理,防災対策 ―5―
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