技術の窓 №2124 H 28.3 .25 無塩発酵大豆食品(無塩味噌)の開発 味噌は高塩分で用途も限定されることから消費量が低迷しています。最近は、生活習慣病予防の 観点から活発に減塩運動が行われており、味噌(汁)の需要維持のためには減塩及び無塩化の要望 に応えることは重要です。 そこで、 新潟県産味噌は酵母発酵による香気が優れていることを利用し、 味噌汁用として風味の優れた無塩味噌注1)を製造する技術開発に産学官で取り組みました。 ☆ 技術の概要 1.製造工程を、酸敗の原因となる乳酸菌及び大腸菌や Staphylococcus 属など衛生細菌を死滅 させる【高温消化工程】と、酵母などの添加微生物の発酵を促進する【発酵工程】に区分し た単行複発酵式とすることで、安全な無塩味噌の製造が可能となりました(図1)。 2.PCR-DGGE 法により製造工程ごとの菌叢を解析した結果から、工程②及び③の処理条件(高温 消化温度と時間)を製造上の重要管理点(CCP)として設定しました(図2) 。 3.本技術は、味噌汁に適する一般的な米味噌(8歩麹、水分 45%、塩分 12%)から食塩を除いた 無塩味噌の他にも、多様な品質(麹歩合、水分量、耐塩・非耐塩性発酵微生物の組合せ)の無塩 発酵大豆食品を調製することができ、これらは菓子類などへの調味素材としての適性があります。 発酵微生物添加 発酵タンク 0.1~1.0トン 加熱 大豆 約60℃ 米麹 3~10週間 ③高温消化 約10℃ 1~5日 麹由来雑菌低減 ②仕込温度 管理点① 約60℃ 酸処理 ④低温下発 酵菌添加 【高温消化工程】 混入雑菌抑制 発酵 無塩 味噌 ⑤多段階 温度管理 【発酵工程】 図1 無塩味噌の製造工程と5つの管理点 30% 高温消化42hr (正常) 高温消化18hr (酸敗) Aタイプ Aタイプ Bタイプ 菌 発 添 酵 加 後 後 Bタイプ 仕 込 直 後 菌 発 仕 菌 発 仕 菌 発 添 酵 込 添 酵 込 添 酵 加 後 直 加 後 直 加 後 後 後 後 後 後 変性剤濃度 仕 込 直 後 Aタイプ:麹歩合50歩 Bタイプ:麹歩合10歩 注1)品質表示基準の定義では、味噌は食塩を 同定された菌属種 A:Enterococcus spp. 使用することが必須である。また、味噌 は半固形状とあるため、原料配合比で水 B:staphylococcus gallinarum 分が多い発酵物も含め、製品の名称は「み C:Lactobacillus brevis そ」とはならない。 (酸敗原因菌) D:Enterococcus spp. 60% 図2 PCR-DGGE法による製造工程ごとの菌叢解析 ☆ 活用面での留意点 1. CCP 制御及び多段階温度管理を厳密に行う必要から、味噌の加熱及び冷却装置が必要です。 2. 本技術は、新潟県と県内企業による共同特許出願(特開 2014-90693)が成され、平成 28 年4月に特許査定となる予定です。詳細については、新潟県農業総合研究所食品研究セン ター園芸特産食品科(TEL:0256-52-3240)にお問い合わせください。 (担当:農研機構 食品総合研究所 門間美千子)
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