世界選手権レポート PDF JDBA科学技術委員会 越智 祐光

第8回世界ドラゴンボート選手権大会報告書
作成者
理事
越智祐光
1)大会概要
第8回世界ドラゴンボート選手権大会は,オーストラリアの「Sydney International Regatta Center」に
おいて開催(9/20~9/23)されました.会場は直線2km のレースを行うことのできる人工の静水湖で,
シドニーオリンピックのカヌー競技が行われた場所であります.コースには,スタートからゴールまで,1
0m 間隔でブイが設置されており,スタート審判棟,ゴール審判棟も恒久的に設置されていました.
競技は,オープン・女子・男女混合のカテゴリーで,プレミア・ジュニア・シニア・グランドの4つの種
目において,それぞれ,200m,500m,1000m(男女混合は除く),2000mの4つの距離で競
われました.
日本からは,プレミアオープンに横浜サーフベイザーズ,シニアオープンに東京龍舟シニア,プレミアミ
ックスに東京龍舟がそれぞれ出場しました.しかし,日本は準決勝に進出するも,敗退という結果でした.
2)日本チームの結果ならびに,日本チームが出場したレース結果について.
1.プレミアミックス(東京龍舟)について
プレミアミックス 2000m
国名
順位
9カ国出場
タイム
1
Canada
9’51”82
2
Germany
9’55”73
3
Macau
9’57”93
4
New Zealand
10’21”50
5
Russia
10’32”90
6
Australia
10’36”60
7
Philippines
10’38”90
8
Taipei
10’45”70
9
Japan
10’55”80
プレミアミックス 500m Minor Final
国名
タ イ ム
プレミアミックス 500m Grand Final
順位
レーン
11カ国出場
国名
タイム
順位
レーン
1
Philippines
2分05秒47
4位 1
Germany
1分54秒88
5位
2
Japan
2分03秒68
3位 2
United State
1分53秒16
1位
3
New Zealand
2分02秒14
2位 3
China
1分54秒20
4位
4
Taipei
2分02秒05
1位 4
Australia
1分53秒83
3位
5
Chile
2分07秒12
5位 5
Canada
1分53秒67
2位
Macau
1分55秒14
6位
6
6
プレミアミックス 200m Minor Final
プレミアミックス 200m Grand Final
国名
タイム
順位
レーン
12カ国出場
国名
タイム
順位
レーン
1
Chile
50秒45
5位 1
Canada
45秒79
4位
2
Japan
48秒90
2位 2
Australia
45秒37
3位
3
Taipei
49秒26
4位 3
China
44秒80
1位
4
New Zealand
48秒81
1位 4
United States
45秒17
2位
5
Russia
49秒12
3位 5
Germany
46秒23
5位
6
Macau
50秒75
6位 6
Macau
46秒73
6位
2.シニアオープン(東京龍舟シニア)について
シニアオープン 500m Minor Final
国名
タイム
シニアオープン 500m Grand Final
順位
レーン
レーン
1
1
9カ国出場
国名
タイム
順位
Australia B
1分57秒28
6位
2
Japan
2分09秒78
2位 2
Great Britain
1分56秒63
5位
3
Germany
2分03秒48
1位 3
Canada A
1分51秒87
1位
4
Canada B
2分12秒51
3位 4
United States A
1分54秒75
3位
5
5
Australia A
1分54秒54
2位
6
6
United States B
1分55秒73
4位
シニアオープン 200m Minor Final
国名
タイム
シニアオープン 200m Grand Final
順位
9カ国出場
国名
タイム
順位
レーン
レーン
1
1
Great Britain
45秒99
4位
2
Canada B
54秒30
3位
2
United States A
46秒05
6位
3
Germany
48秒67
1位
3
Australia A
44秒58
2位
4
Japan
50秒26
2位
4
Canada A
43秒83
1位
5
5
United States B
45秒83
3位
6
6
Australia B
46秒01
5位
3.オープン(サーフベイザーズ)について
オープン 500m Minor Final
国名
オープン 500m Grand Final
タイム
順位
レーン
14カ国出場
国名
タイム
順位
レーン
1
New Zealand
2分00秒13
6位 1
Slovakia
1分51秒53
6位
2
Germany
1分56秒35
3位 2
China
1分50秒52
4位
3
Canada
1分53秒45
1位 3
Philippines
1分49秒15
2位
4
Hung Kong
1分53秒82
2位 4
United States
1分48秒74
1位
5
Taipei
2分00秒07
5位 5
Great Britain
1分49秒76
3位
6
Japan
1分59秒62
4位 6
Australia
1分50秒80
5位
オープン 200m Minor Final
国名
オープン 200m Grand Final
タイム
レーン
順位
14カ国出場
国名
タイム
順位
レーン
1
Japan
47秒700
4位 1
Australia
43秒30
4位
2
Germany
46秒069
3位 2
Great Britain
43秒26
3位
3
Canada
45秒180
1位 3
Philippines
42秒16
1位
4
Hung Kong
45秒278
2位 4
China
42秒29
2位
5
Macau
失格
United States
43秒80
5位
6
New Zealand
47秒702
Slovakia
44秒02
6位
5
5位 6
プレミアミックスに出場した日本チームが,世界選手権で優勝するためには,200m レースのタイムでは
5 秒,500m レースでは,10 秒以上引き上げなければならないという結果でした.調査記録の分析が行えて
いないので感想になりますが,スタート(0­10m)においては,大きな差は見られませんでした.しかし,最
高速度に至るまでの加速区間(500m レースでは 100m 地点まで)に加え,最高速度がトップチームに比して
低いと推察されました.また,体力的要因も考えられますが,加速よりも,トップスピードを維持し続ける
ことの方が重要と考えられる 2000m レースの結果からも,日本チームは最高速度について課題があること
を示唆しているように考えられました.
オープンに出場した日本チームは,スタート(0­10m)で大きな差をつけられていた事から,スタートにお
ける課題があると推察されました.さらに,最高速度に乗せるまでの加速区間に課題があると推察され,こ
れらを克服することによって,タイムを向上させることが可能であると考えられます.
シニアオープンに出場した日本チームは,レース全体的に見て,大きな差がありました。シニアチームは,
日本選手権のオープンで優勝できるレベルのタイムを出せなければ,世界選手権で決勝に進出できないとい
う厳しい現状であります.
各レースの 100m 地点までの 10m 間隔の速度変化を分析できるように VTR 撮影しましたので,分析が終
わり次第報告させていただきます.
3)通信員としての役割について.
今大会において,私は現地結果を日本に報告する通信員としての役割を担当しました.十分にこなせたと
は言えませんが,日本で結果を待ち望んでいるみなさんに,迅速で正確なデータをお届けするため,毎晩遅
くまでパソコンと向き合い,自分なりに精一杯の努力を致しました.
しかし,現地に到着後,日本へのメール送信の可能性を確認しましたが,送付したメールが受信されず,
返送されてきました.今後は,日本でのメール受信先を複数にしておくのが良いことを経験させていただき
ました.これは,私が日本ドラゴンボート協会の役員の方々と,普段から連絡をあまりとれていなかったた
めに起きたことだと考えています.
4)コーチングワークショップについて
今大会から開催された,コーチングワークショップに参加させていただく機会を得ました.ここでは,世
界選手権等で好成績をおさめた各国のコーチ達のお話を聞くことができました.
04 年の世界選手権オープン1000mレースで優勝し,07年の1000m,500mレースで優勝した
アメリカチームは,1人乗りのアウトリガーカヌーで,事前に定めた距離を,左漕ぎ,右漕ぎ,で漕ぎ,そ
の平均タイムの上位のものから選手を選抜し,代表チームとして派遣しているとのことでした.
また,
「ターロン社」の副社長が,カーボンパドルの材質の繊維等について説明を行ってくれました.今後
カーボンパドルの値段は安くなるであろうとのことでした.
さらに,シドニー大学のサラから,歪計を内蔵したカーボンパドルを使用し,経験者と未熟者のキャッチ
のタイミングの違いや,
パドルの動きについての調査結果の発表がありました.私には勉強になりましたが,
舟速が分からず,調査に協力した方々のお話では,なかなかうまくデータが取れなかったそうです.
ワークショップのお話ではありませんが,今大会のプレミアオープン200mレースで優勝・500mレ
ースで準優勝したフィリピンのコーチは,
「5年前からメンバーを固め,強化をはかってきたことが,結果に
つながった」とおっしゃっておられました.私も参加させていただいた,前々大会(2004 年第6回世界選手
権大会:中国・上海)では,200mレースでは準優勝したものの,500mレースでは準決勝で敗退してい
ました.
5)個人的感想について
第8回世界ドラゴンボート選手権大会に参加して,日本も競技力を高める手立てをとらないといけないと
感じました.日本のトップチームが,世界選手権でメダルを取れれば,結果としてドラゴンボートの普及に
もつながっていくのではないかと考えます.それは,サッカーやバレー,野球等がそうであったように,ト
ップチームの競技力を伸ばすことが,国内における普及にも,競技力の向上にもつながると考えられます.
コーチングワークショップにおいて,艇に上下動の負荷をあまり与えない方が良いということから,カヤ
ックの漕法が良いというカナダと,カナディアンカヌーの漕法が良いという国がありました.どちらの漕法
をドラゴンボートに援用できるのかというお話でしたが,科学的ではありませんでした.世界選手権の結果
のみから推察すると,あらゆるカテゴリーでメダルを獲得しているカヤック漕法に軍配が上がるように感じ
ました.私は,ドラゴンボート固有の技術である漕法に関して,究明していかなければならないと感じまし
た.
また,欧州勢は,太鼓に合わせて舟を漕ぐのではなく,漕ぎ手のリズムに合わせて太鼓を叩いたり,漕ぎ
手全員のピッチを一気に変えるために鼓手が乗艇しているような印象を受けました.確かに,日本のチーム
は,太鼓に合わせて舟を漕ぐために,漕ぎ手が太鼓に合わせるための「間」のようなものが存在し,タイム
ロスが生じているように感じさせられました.これは私が調査を行った2004年の調査結果からも明らか
になっています.
世界選手権に参加する機会をいただき,選手の皆さんが全力を発揮できるように微力を尽くしましたが,
結果的には私ばかりが勉強さえていただくことになりました.私が経験してきたことをドラゴンボートの発
展に役立つように努力させていただく所存です.