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思考過程論|Chapter 2
2015/04/23
名畑 理津子
Chapter 2
MRI Scanners
内容:MRI の構造(ハード&ソフト)の説明および安全に使用するための方法
p.31
l
現代の MRI スキャナーは Rabi や Bloch, Lauterbur など他の初期の先駆者が使用して
いた装置とは似ても似つかない。
l
MRI は医療業務の一部で重要性が高まっているため,現代の MRI スキャナーは人間工
学的で患者に優しくなっている。
Figure 2.1 (A) General Electric, (B) Siemens, (C) Philips
l
絶え間ない技術的改良によって,近代のスキャナーは,空間中の信号の位置を特定する
能力や,データ獲得率,異なるタイプの画像を獲得できる柔軟性という面で,以前のも
のを遥かに凌駕している。
l
l
それにも関わらず,MRI の根本的な基礎原理は変わっていない。
Ø
強力な磁場を使用する:Rabi
Ø
送受信コイルを用いた核誘導を使用する:Bloch
Ø
画像を得るために勾配磁場を使用する:Lauterbur
本章では,MRI スキャナーの主要なコンポーネントの確認と,用途の記述と,安全性に
関する考察を行う。
How MRI Scanners Work
l
l
MRI スキャナーは,3 つの主要なコンポーネントがある。
M
電磁石コイルによって生成される静磁場。
R
標的原子核の共鳴周波数でのエネルギー放出。
I
画像形成(グラディエントコイルのオンオフによって,空間の磁場強度を調整)。
しかし,これらの 3 つだけが fMRI にとって重要なコンポーネントではない。
Ø
静磁場の均質性を確保するシムコイルや,スキャナーの制御や実験課題のための特
殊化されたコンピュータシステム,生理的モニタリングも必要である。
l
本セクションでは,近年の MRI スキャナーにおけるすべてのコンポーネントおよびその
実装について紹介する。
Figure 2.2
Ø
2 つのシステム:①画像獲得に関わるもの,②実験に関わるもの
ハードウェアコンポーネントの詳細な使用法>>Chapter 3∼5
p.32
Static magnetic field(静磁場) ・・・Magnetic
l
MRI スキャナーでは,人間の体内に含まれるある核(通常,水分子に含まれる水素原子
核)を整列させるために,強力な静磁場を使用する。
p.33
l
初期の MRI スキャナーでは,静磁場の生成のために永久磁石を用いた。
Ø
l
永久磁石;磁場が弱い
近年の MRI スキャナーは,電磁気力を通じて静磁場を生成している。
Ø
ワイヤーに電流を流すと方位磁石の針に影響すること(磁場の発生)が,1820 年
にデンマーク人の物理学者 Hans Oersted によって発見された。
Ø
その数年後,磁場強度は,電流の強さに比例することが,フランス人物理学者
Jena-Baptiste Biot と Felix Savart によって定量化された。
p.34
l
MRI での適切な磁場に関する 2 つの基準がある。
1.
磁場均一性(field uniformity)or 均質性(homogeneity)
2.
磁場強度(field strength)
1.
均一性
l
空間,時間ともに均一な磁場を作ることが,身体の画像の生成を支える。
Ø
l
磁場が均一でなければ,身体のある部分から測定された信号が変化してしまう。
均質な磁場を生成するデザイン
Figure 2.3A
Helmholtz pair
Figure 2.3B
ソレノイド(Helmholtz pair よりも均一)
p.35
2.
磁場強度
l
極度に大きな磁場を生成するためには,過大な電流がワイヤーのループへ注入されなけ
ればならない。
l
近年の MRI スキャナーは超伝導電磁石を使用している。
Ø
超伝導電磁石
²
コイル巻線は,一般的にニオブチタンから作られている。
²
12K(ケルビン)(-261℃)を下回るよう,液体ヘリウムの中につける。低い
温度になると,ワイヤーの抵抗はなくなり(i.e., 超伝導状態),強力で,安定
していて,持続的な電流が作られる。
l
以上の組み合わせによって,近年の MRI スキャナーは均質性と,安定的な磁場強度(人
2
間:1.5∼11T,動物:20T を超えるものも)が保たれる。
l
超伝導性を使用した磁場であるため,MRI 内の静磁場はいつでも活動している。
Ø
静磁場は特に安全性が重要>>本章の後半
Radiofrequency coils(RF コイル,高周波コイル)
l
強力な静磁場は MRI にとって必要であるものの,静磁場それ自体は MR 信号を生成し
ない。
l
MR 信号は,電磁石コイル(静磁場内で原子核の共鳴周波数で電磁場を生成,そして受
信する)によって生成される。
Ø
MRI 研究で最も影響力のある原子核は,電磁気スペクトラムの高周波部分(portion)
で共鳴するために,こうしたコイルは RF コイル呼ばれる。
l
l
RF 電磁場は,静磁場と同様の基準を用いて評価される
1.
不均一性(i.e., 時空間を超えて均一)
2.
感度(i.e., 放出と検出できる信号の相対的強さ)
RF コイルの用途
Ø
人間の身体が強力な磁場に置かれると,平衡状態(身体の中の原子核の磁気モーメ
ントが磁場に協調する)になる。
Ø
RF コイルは,身体へ特定の周波数で共鳴する電磁気を送り,平衡状態を混乱させ
る:励起(excitation)
Ø
RF パルスのエネルギーを原子核が吸収する。
Ø
RF パルスが終わると,原子核は平衡状態に戻り,励起中に吸収されたエネルギー
が放出される。
Ø
放出されたエネルギーを RF コイルによって検出する(MR 信号)。
²
励起と受信状態の詳細>>Chapter3
p.36
l
RF コイルによって伝達もしくは受信することができるエネルギー量は,測定されるサ
ンプルからの距離に依存する。
l
fMRI の場合には,RF コイルは,一般的に頭の周辺に置かれる。
Figure 2.4
(A) 表面コイル,(B) ボリュームコイル,(C) 位相配列
A)
表面コイル
Figure 2.4A
l
表面コイルのデザインは,単一ループの誘導子̶コンデンサ(LC)サーキットに基づい
p.37
ている。
l
脳への空間的近接のために,高いイメージング感度を示す。
3
e.g., 視覚野のように特定の脳部位へ標的を絞る fMRI 研究でしばしば使用される。
l
与えられた脳部位の一部から回収された信号の量は表面コイルからの距離に依存するた
め,コイルのすぐそばの領域は,とても詳細な信号が提供されるものの,遠い領域はと
ても少ない。
Figure 2.5A
B)
ボリュームコイル(鳥かごコイル)
Figure 2.4B
l
エネルギーを均一に分配するために,LC サーキットは,円形状の表面を反復する。
l
表面コイルよりも頭から遠いために, MR 信号の感度は低いものの,脳の受信範囲は広
い。
Figure 2.5B
p.38
C)
位相配列
l
1 と 2 の組み合わせ
Ø
Figure 2.4C
イメージングボリュームの興奮性のためにボリュームコイル,MR 信号の受信:表
面コイル
l
多数の受信コイルは,位相配列として知られる重複したパターンで配列される。
l
空間的冗長性を持った多数の受信コイルを使用することは,サンプリングの密度を低下
させることができ,それゆえ像の獲得のスピードがかなり速くなる。
Figure 2.5C。
l
新しい MRI スキャナーでは,多重受信コイルが使用されている>>詳細は 12 章
l
RF コイルの感度は,サーキットによるコイル内で生成される磁場の強さと比例する。
l
感度の質(Q),抵抗(R),誘導子(L),コンデンサ(C)
𝑄=
1 𝐿
𝑅 𝐶
Gradient coil(グラディエントコイル,勾配磁場コイル,傾斜磁場コイル)
l
MR 信号は空間情報を持たないため,それ自体によって像を生成できない。
l
グラディエントコイルは,MR 信号を調整された方法で空間的に依存するようにする。
l
空間情報を取り戻すため,個々のグラディエントコイルは,特定の方向での磁場の強さ
を調整するために使用される。
Ø
l
z:主磁場に対して平行,x・y:主磁場とそれぞれに対して垂直
グラディエントコイルは 2 つの基準に基づいて評価される
4
1.
線形性
2.
磁場強度
p.39
l
線形グラディエントコイルの最も単純な例
Figure 6A
l
グラディエントコイルによって生成される磁場での変化は,静磁場よりも小さい
Ø
l
Maxwell pair:z 勾配を生成する基本
近年のスキャナーで使用される勾配は,一般的に数 10mT/m
x と y の勾配(xy 軸勾配と知られる)は,z と同様の方法で生成される。
Figure2.6B
Figure 2.7
Golay pair
鞍型
x,y,z グラディエント
p.40
l
グラディエントコイルの強さは,電流の密度と,コイルの内径サイズの関数である。
Ø
電力の増加によって電流密度が増加すると,強力な勾配が作られる。
Ø
コイルのサイズを小さくすると,より小さな領域で電流が移動するために,強力な
勾配磁場を作り出す。
²
勾配磁場の強さにおけるボアの大きさと電力の間のトレードオフは,線形では
ない。
²
ボアサイズが大きくなると,同じ強さの勾配を作り出すために要求される力の
量は 5 倍。
p.41
Shimming coils(シムコイル)
l
静磁場の不均質性(いくつかの場所が強すぎる,弱すぎるなど)を補正しなければなら
ない。
l
一般的に,シムコイルは一次,二次,三次の順番で磁場を作り出すことができる。
Ø
3
例えば,x-シムコイルは x 軸間の位置に依存する磁場を生成する(一次),x シム
コイルは x 位置の 3 乗に依存した磁場を生成する(三次)。
l
高次の磁場は静磁場の中で不均一性を補正するために組み合わせて使用される。
Ø
一般的に,磁場は直径 20cm の球状のボリューム以上でおよそ 0.00001%等しくさ
れる(3T では,0.0000003T 以内)。
l
他の磁場と異なり,シムコイルは各参加者対して適合させることができる。
Ø
fMRI 研究では,各人の頭は,磁場をわずかに異なる形で曲げる。>>シムコイル
で最適化
5
Thought Question
いくつかの製造業者は,脳に対する臨床と機能的研究のために 脳のみ の MRI スキャナーを
開発してきた。あなたが知っていることに基づいて,そのようなスキャナーの利点を考えて
みましょう。
Computer hardware and software
l
MRI スキャナーは,全てのハードウェアコンポーネント(e.g., グラディエントコイル,
RF コイル,デジタル化)を整理するため,少なくとも一つのコンピュータを備えてお
り,しばしば複数のコンピュータはハードウェアのクラスターに分けて制御するために
使用されている。
l
2 つのカテゴリの特殊化されたソフトウェアが MRI イメージの収集と分析に必要となる。
1.
イメージを獲得するためにスキャナーハードウェアに一連の命令(パルスシークエンス)
を送る。
Figure 2.8
2.
GUI によるパルスシークエンスのパラメータ選択
イメージの創造,表示,分析を行う再構成と分析パッケージ。
Ø
イメージ形成の原理とパルスシークエンスの選択>>Capter4 と 5
p.43
Experimental control system
l
課題操作への反応の中で脳機能の変化を引き出すため,研究者は実験を統制するためコ
ンピュータを使用する。
l
制御システムの 3 つの基本的コンポーネント
1.
実験刺激を生成する
※通常のコンピュータモニタはスキャナーの強力な磁場へ持って行けない。
e.g. 視覚刺激の場合
・MR に準拠したカスタムのバーチャルリアリティゴーグルを使用する。
・スキャナーのボア内のスクリーンにイメージを投影する。
2.
被験者の行動的反応を記録する
3.
刺激の提示及び反応の記録と,イメージ獲得のタイミングの同期(実験デザインが fMRI
データと一致するように)
l
実験のセットアップの主要課題は,設備をスキャナー室内で使用できるようにすること。
Ø
強力な磁場によって引きつけられない。
Ø
また像の収集を妨害しない。
6
Physiological monitoring equipment
l
多くの MRI スキャナーは,生理的な測定を記録するための設備を持つ。
e.g.,心拍や呼吸速度,CO2 の排出量,皮膚コンダクタンス
l
臨床研究では,このような設備は担当医が患者のバイタルサインをモニターするために
使用される。
l
fMRI 研究での生理的モニタリングは,異なる目的で使用される。
1.
MRI データとの関連づけのため。
生理的に変化するパターンを記録し,後で補正する。
e.g., 心臓が脈を打つ時,肺が息を吸い込む時に,わずかに脳が動く。
吸い込みによる空気の体積の変化は,脳の磁場の安定性に影響する。
>>イメージの質を改善させる。
2.
生理と認知の関係性をより理解するため。
>>被験者の心的状態に関する,さらなる情報が得られる。
l
fMRI 実験のデザインはより複雑であり,複数のコンポーネントが含まれる。
>>Box 2.1
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MRI の原理
苧阪 直行 (編) (2010). 脳イメージング ワーキングメモリと視覚的注意からみた脳 培風館
MRI の構造
NICT News:http://www.nict.go.jp/publication/NICT-News/0609/research/index.html
①
マグネット
テキストの図
用途
p.40 Figure 2.7
静磁場の発生
Bo(赤)
②
RF コイル
p.36 Figure 2.4
RF パルスの発
生・受信
③
④
グラディエ
p. 40 Figure 2.7
画像の作成(空
ントコイル
x,y,z(緑)
間の特定)
シムコイル
p. 40 Figure 2.7
静磁場の補償
Shim(青)
MRI の軸
Siemens
MAGNETOM Skyra 3T
x
z
y
8