こちら - 多文化医療サービス研究会

「医療通訳フォーラム 2015」@東京
2015 年7月4日(土)14時~16時30分(小山台会館大ホール)
多文化医療サービス研究会(RASC)主催
〜医療通訳資格認定制度の是非を問う!〜という副題のもとで、当日は、医
療通訳スタッフ、ボランテイア、地方自治体、病院や大学関係者、聴覚障害の
方など 60 名以上もの参加者が熱心に壇上の議論に聞き入った。壇上では、医師
とMICかながわ通訳スタッフが1チームになり、あえて資格認定制度に関し
て賛成論者側と反対論者側の2手に分かれて、コーディネーターの多文化医療
サービス研究会(RASC)西村代表が投げかけていく論点に対して次々と意
見を述べていった。
賛成論者側からは、
「資格制度は医療機関など通訳利用者にとって、信頼でき
る通訳かどうかがわかるようになる」、「医療通訳の発展のためには専門職であ
るべきで、そのために資格制度は必要だ」、「適正報酬への第一歩になる」など
の意見が出された。
反対論者からは、
「全言語一律に同じ内容の資格試験を実施できるのか」、
「少
数言語にはどう対応するのか」、「地域によっては通訳人材が不足する」、「資格
の無い人を排除すると医療が止まる」、「日本語の試験ではネイティブと日本人
では明らかな差がついてしまう」などの意見が出された。
フロアからは、基本的に賛成という意見が多かった。
「医師や看護師も国家試
験に受かってすぐ翌日から一人で医療行為ができるわけではなく、資格試験の
レベル設定も、最低限の学習レベルを評価するもので構わないのではないか」、
「フォローアップの研修が重要だ」、「医療機関に使ってもらえる医療通訳制度
にするには資格制度が必要」、「医療通訳のキャリアパスも考慮すべき」、「ニー
ズのある言語からとりかかればよい」、「地方のほうは通訳人材がそろわない」、
「報酬や資格制度の財源が用意できない」などの意見が出された。
最終的には、資格認定制度は、医療通訳の社会的信用性の向上、学習モチベ
ーションのアップにつながるため、
「必要だと考えられる」という結論に至った
が、課題も多いことが指摘された。その上で、すぐにできることとしてコーデ
ィネーターの西村代表からは、
「まずは講師の認定制度から始めてみたらどうか」
との提案がなされた。
提出された「意見ペーパー」
(アンケート)には、次のような意見が出された。
・たいへん興味深い討論会だった。資格認定制度は、ないよりあったほうがよ
いが、財源確保が重要で、医療機関に予算を確保してほしい。
・とてもスケールの大きい話が多くてわくわくした。資格は目安になるのであ
ったほうがよい。
・医療通訳は命に関わる通訳だから、患者も安心するような資格だとよい。
・賛成論、反対論ともたいへん興味深く拝聴した。それぞれ大事にしたい部分、
ゆずれない部分があると思った。病院内に一般通訳者と医療通訳者の両方が
いると心強い。
・ できる言語から資格制度を立ち上げ、医療機関側へ通訳の重要性に対する認
知度を高める戦略が有効だと思う。
・ 資格認定がなくても通訳ができるようにしないと、少数言語の通訳が不足し
てしまう。
・研修(養成)、OJTによりレベルを確保できる。それが報酬や人材確保、キ
ャリアパスにつながると思う。
すぐに解が出ない点もあるだろうが、様々な関係者が一同に集まり互いの理
想に耳を傾けながら多角的に議論できたことは、今後同じ方向に進んでいくた
めにも大変貴重な時間であったと思う。(RASC 森田直美)