6-7月

Botswana Medical Information
2015 年 6-7 月
・交通事故現場で医療を開始するシステムの運用
保健省は交通事故の被害者に対して、現場で救急医療を提供するシステムの運用を開始し
た。この救急医療チームは Medical Rescue International Botswana(MRI, 救急搬送会社)、
警察、消防、赤十字、医師が連携して成り立っている。MRI 代表の Matabiswana 氏による
と、
「交通事故の被害者が MRI へ登録しているか否かに関係なく、救急車両の提供を受ける
ことができる。特に妊婦と小児には優先的に提供される。支払いについては、自動車保険
会社または医療保険会社に請求書を送ることとしている。」と述べた。
DailyNews. June 11, 2015
・予防医学の普及
ボツワナ保健省は予防医学の普及に力を入れていく方針を打ち出した。近年ボツワナでは
非感染性疾患による死亡者が増えており、その割合は全死亡数の 37%に達している。非感
染性疾患の代表としては心筋梗塞、脳血管障害、悪性腫瘍、糖尿病、そして喘息となって
いる。これらの疾患は生活習慣と密接に結びついていることから、保健省は人々への啓蒙
を第一に行っていくことにし、喫煙を止めること、過剰な飲酒を控えること、脂肪や塩分
の多い食事を止めること、日常的に運動をすることなどを啓蒙している。
DailyNews. June 29, 2015.
・早期の HIV 治療を目指して
ボツワナ保健省は Botswana-Harvard AIDS 研究協定を通じて、ワークショップを開催し、
HIV 治療開始基準を現行の CD4 細胞数 350/uL から 500/uL に引き上げることを医療従事者
に指導した。この変更は WHO の新ガイドラインに従ったものであり、CD4 細胞数が高い
状況下で HIV 治療を開始することで、HIV 感染の可能性を 96%低減できると報告されてい
る。しかし、より早期に治療を開始することになるため、費用がかさむことになるが、ボ
ツワナ政府がその資金を確保できるのかという問題については明らかにされていない。
Sunday standard. June 28- July 4, 2015.
・薬剤供給の維持
ボツワナ保健省副大臣の Madigele 氏は議会で、薬剤(特に抗生物質と降圧薬)が不足して
いることを認めた。彼は一例として、6 月末時点での Kanye 地域での実態を挙げ、抗生物
質と降圧薬の充足率は各々80%と 67%であったと説明した。薬剤不足への対策として、地
域の健康対策部門に資金を割り振り、中央薬剤部門(Central Medical Store)が切らしてい
る薬剤を私立の薬局から購入するようにしていると述べた。
DailyNews. July 9, 2015.
・人材管理システムの導入
保健省は USAID の協力を得て、
医療資源を有効に活用するために人材情報システム
(iHRIS)
を導入することとした。このシステムを導入することで、医師や看護師の正確な数が把握
でき、またどこで働いているのかを評価することも可能となる。さらに退職した医療従事
者についても把握可能で、彼らの再雇用にもつながる。保健省事務次官 El-Halabi 氏は「人
材管理の面での負担軽減が期待される」と述べた。
DailyNews. July 22, 2015.
・世界献血の日
保健省事務次官の El-Halabi 氏は世界献血の日(毎年 6 月 14 日)の記念式典で、
「輸血によ
って救われる命がある。特に外傷、事故、出産時の合併症などのようなケースである。ボ
ツワナでは血液の売買は行われておらず、全輸血用血液が無償の献血によって提供されて
おり、これは誇るべきことである。しかし、年に 40,000 単位の血液が必要とされているが、
供給が需要に追いついていない状態が続いている。」と述べた。またボツワナでの献血の
60%が学生によって提供されていることも明らかにされた。
DailyNews. June 17, 2015
・過剰の鉛が検出された即席麺への対応
高濃度の鉛が含まれているとのことで即席麺の Maggi(Nestle 社)がインドなどの国で販
売停止となっていることを受けて、ボツワナ保健省は以下のように声明を出した。「ボツワ
ナ国内で流通している Maggi は南アフリカで製造されたものであり、我々の研究所による
調べでは鉛成分は検出されなかった。したがって、Maggi の流通を停止させる必要はない。
」
DailyNews. June 19, 2015.
・国際標準化機構(ISO)からの認定
報道機関向けの発表によると、Princess Marina Hospital(ハボロネ市)の検査室はこのた
び、南部アフリカ開発機構(SADC)より信認を受け、ISO 15189: 2012 を取得した。ISO
を取得した検査室はボツワナでは初であり、ISO の取得はこの検査室が「適切な結果を適切
な患者に、適切な時期と適切な費用で提供できる」ことを証明するものである。同病院は
ISO の取得に向け、2007 年頃より人材の教育や機器の充実などに多くの投資をしてきてお
り、それらが実を結んだ。
DailyNews. July 16, 2015.
・精神医療の必要性
保健省の精神医療調整員の Zibochwa 氏は、Lobatse で開催された精神医療看護のワークシ
ョップで、
「精神的な問題と身体的な問題は密接な関連があるにもかかわらず、精神的問題
への対応が大きく遅れている。心のケアも総合的な医療の一部に組み入れる必要がある。」
と述べた。なお、ボツワナの人々の約 3.7%が精神的な問題を抱えているとされている。
DailyNews. June 18, 2015.
・看護学校の問題
フランシスタウンの健康科学専門学校は看護師と助産師を養成しているが、講師の不足に
悩まされている。講師一人あたりの理想的な学生数は 5 名であるが、現在のところ看護師
養成部門では 8 名、助産師養成部門では 7 名となっている。保健省大臣の Makgoto 氏は、
この専門学校のみならず、様々な医療施設に医療従事者を引き留めておくことが難しいこ
とを認めた。
DailyNews. July 22, 2015.
・薬剤の適切な使用についての初のワークショップ
7 月 27 日から 3 日間、医療従事者を対象とした薬剤の適切な使用に関するワークショップ
が初めて開催された。保健省大臣の Makgoto 氏は「高血圧や糖尿病などの非感染性疾患が
ボツワナを含む発展途上国で大きな問題になってきている。これらの非感染性疾患の治療
薬は非常に高価であり、薬剤が適切に使われることが大切である。」と述べた。このワーク
ショップでは、抗生物質・抗 HIV 薬・向精神薬・降圧薬などの使用法に加えて、誤った使
用が薬剤抵抗性につながることについての指導が行われた。
DailyNews. July 30, 2015.
・進まない割礼
安全な割礼を推進するキャンペーン(Safe Male Circumcision: SMC)は思ったように進ん
でいない。SMC 計画担当の Judge 氏は Ramotswa(ハボロネから南へ 30km ほどの町)で
次のように語った。
「3 ヶ月間の夏期休暇中に Ramotswa で 300 名の男性に対する割礼を目
指しているが、
今までのところ 38 名にしか施行できていない。
多くの人が割礼を拒むのは、
手術に対する恐怖と迷信が要因であろう。」また、昨年 8 月にスポンサーが資金供給を引き
上げたことにより、SMC は資金難にも直面している。
DailyNews. July 28, 2015.
追記
割礼とは「男子の性器の包皮の一部を切ること」です。元来は宗教色の強い行為でしたが、HIV
を含む性感染症の予防効果があることが証明されており、HIV が社会問題となっているボツワ
ナでは保健省が先頭となって、その普及を促しています。
・周産期の問題
周産期死亡率を 1990 年比で 75%減少させることが、Millennium Development Goals(国連
が 2000 年に定めた 2015 年までに世界各国が達成すべき目標)の一つであるが、本来なら
ば避けられた要因での周産期死亡がいまだに見受けられる。6 月 17 日のハボロネでの公聴
会で、ボツワナ大学の Ramogala-Masire 医師は「ボツワナでの周産期死亡には様々な要因
があるが、患者家族に問題があるケースもある。助けを求めるのが遅かったり、健康への
意識が乏しかったり、医療施設から離れていたりという原因が見受けられる。周産期死亡
率を低下させるためには、医療スタッフへの訓練の質を上げ、各医療従事者が自分の責任
と役割を自覚し、問題を共有することが大切だ。
」と述べた。
DailyNews. June 22, 2015.
追記
最新のボツワナの統計によると、2008 年に出産 10 万件に対する母体死亡(周産期死亡)は 189 件であ
ったのに対し、現在では 134 件になっています。また、5 才未満児死亡数は 2008 年に子供 1,000 人あ
たり 76 件であったのに対し、現在では 28 件になっているとのことです。
DailyNews. June 22, 2015.
地域の話題
・地方病院の困窮
オカバンゴ地区の Gumera Primary Hospital は人口増加に伴う患者数増加に対応できていな
い。Gumera Hospital は 1985 年に診療所として運営が開始され、後に病院として機能する
ように改められたが、施設は以前と変わらないまま運営している。Gumera Hospital はオカ
バンゴ地区 61,000 人を対象とし、総病床数は 34 床で、うち 8 床が産科病棟、残り 26 床が
一般病床となっているが、病床数を超えて患者が入院している状況となっている。地方議
会は政府に対して、病院設備の早急な刷新を訴えている。
DailyNews. June 9, 2015
・地方の歯科診療所
Selebi-Phikwe には公立の歯科診療所が2つあるが、歯科治療用の椅子が壊れていたため、
十分な医療を提供できなかった。しかしこの 6 月、診療所の一つに新たな椅子が導入され、
サービスが提供できるようになった。ただ、もう一方の歯科診療所は相変わらず、医療相
談と抜歯のみしか行えない。また、両方の診療所にレントゲン機器があるが、壊れており
使用不可能である。そのうえ、Selebi-Phikwe には義歯を作成する施設がないため、義歯が
必要な患者は Francistown まで行かなくてはならない。
DailyNews. July 15, 2015.
・大臣の Tuli 地域への訪問
保健省大臣の Makgato 氏は Tuli 地域(ボツワナ東部)を訪問し、農場経営者に対して、移
動式医療施設を設置するための土地の提供を依頼した。同氏は「Tuli 地域は近隣の医療施設
から離れているため、医療提供目的で、移動式医療施設が毎月訪問することを保健省は決
定した。そのための土地の提供をお願いしたい。また、農場の労働者から時間外賃金の不
払い・質の低い滞在施設・疾患罹患時の不良などの不満が上がっている。これらの問題に
対する適切な対応を求める。
」と述べた。
DailyNews. July 7, 2015.