特別講演2 アスレティックトレーナーの役割 −野球日本代表チームの場合− 日本体育大学体育学部体育学科 助教 運動処方研究室 河 野 徳 良 近年、数多くの日本人トップアスリートが海外で活躍するようになり、彼らをサポートしてい るアスレティックトレーナーの存在も広く知られるようになってきている。その影響もあり高校、 体育系大学、医療又は体育系専門学校ではアスレティックトレーナーを目指す学生が増加傾向に ある。しかしながら、アスレティックトレーナーのイメージばかりが先行し、現状をどこまで把 握できているか疑問が残るところである。アスレティックトレーナーの役割を一言で言うならば スポーツ界(現場)と医学界との重要なパイプ役である。 わが国ではアスレティックトレーナーとしての国家資格が存在しないため、1)医療資格型(理 学療法士、柔道整復師、あん摩マッサージ師圧師、鍼・灸師など)、2)日本体育協会公認資格 型(日本体育協会公認アスレティックトレーナー)、3)海外の公認資格型(NATA 公認アスレテ ィックトレーナーなど)、4)トレーニング指導型(体育系大学出身者など)など個々のバック グランドはさまざまであり、その役割も多岐にわたっている。 ここでは、野球日本代表チームトレーナーの役割として2006年3月に開催された第1回 World Baseball Classic(以下 WBC)での活動を中心に紹介する。WBC ではオフィシャルトレーナ ー6名、アンオフィシャルトレーナー11名の計17名が代表チームに帯同し選手のサポートを 行った。代表チームトレーナーのコンセプトは『各チームで行われているトレーナーサービスと 同等のものを帯同期間中も行う』であり、そのための事前調査(整形外科的調査、内科的調査、 コンディション調査)は非常に重要である。なかでもコンディション調査に関しては、選手本人 だけではなく、所属チームにおける担当トレーナー又はコンディショニングコーチ、場合によっ てはパーソナルトレーナーと連絡をとり調整方法の確認を行った。 代表チームトレーナーの役割として求められるものは、1)短期間での各選手におけるコンデ ィション把握・調整、2)選手に対しての教育(試合・練習を含む環境の違い、ドーピング、時 差対策など) 、3)マルチな仕事(ウォームアップ/ダウン指導、トレーニング指導、バッティン グピッチャー/キャッチャー、広報、通訳など)である。 代表チームの特徴としては、通常は各チームで個々にコンディション調整を行っているが、代 表チーム帯同時、短期限定のチームとして行動することがあげられる。そのため、日々のコンデ ィション変化に対しては Daily Conditioning/Treatment Report を使用し短期間で選手のコンデ ィション把握が出来るよう努めている。 今回は、わが国におけるアスレティックトレーナーの現状と役割、特に野球日本代表チームト レーナーの役割として2006年3月に開催された第1回 World Baseball Classic での活動を中 心に紹介させていただく。
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