NO. 2015・45 号 発行日:2015 年 4 月 15 日 2010 年 4 月から始めました『検査のパレット』も丸 5 年がたちました。今年度からは新たにタイトル は、ブルー系の色合いで皆さんにお届けします。6 年目の初回は、肝臓の繊維化の新たなマーカーとして 今年 1 月に保険収載された『M2BPGi』の項目について藤井さんに書いてもらいます。今後とも検査の パレットを継続しますのでみなさん楽しみにしてください。 技師長 石竹 久仁 『M2BPGi』とは・・・?? ウイルス性肝炎は、日本では約 300 万人が感染する国内最大の感染症です。慢性肝炎から肝細胞がん へ進行する過程で、線維に富んだ組織が肝臓に蓄積し肝臓の機能が徐々に損なわれていきます。ウイル ス性慢性肝炎の治療プロセスにおいては肝臓の線維化の程度を判定することが重要です。現在は肝臓組 織を採取して行う生検が主流となっていますが、患者負担が大きいことが課題となっていました。 『M2BPGi』は、肝線維化の進行と相関が高いレクチンを用いて、変化した糖鎖構造 Mac-2 binding protein 糖鎖修飾異性体(以下、M2BPGi)を捉え、化学発光酵素免疫反応により M2BPGi 量に応じた 発光強度を検出する検査技術で、肝臓の線維化の進行度合いが数値で分かります。このような検査技術 は、これまでのタンパク質ベースでの検査では実現できなかった、線維化病態における M2BPGi 表面上 の質的変化(糖鎖構造変化)を捉えることが可能となる点で、より有用性の高い検査と考えられます。 肝線維化の状態別(健常人、肝線維化ステージ F01~F4)で M2BPGi の測定値を比較した結果、健常 人では低値であり、肝線維化のステージの上昇程度に伴い優位に高値になり、肝生検結果との一致率で も 80%以上を示しました。また、肝生検で F4 判定された症例に関して M2BPGi は優位に高い診断能を 有しています。 この検査技術の実用化によって採血のみで肝臓の線維化の進行度を迅速に測定することができるた め、ウイルス性肝炎の治療における患者負担の軽減が期待されています。 M2BPGi の保険点数は、200 点です。 既存法との比較 文責 藤井 亜依 監修 石竹 久仁
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