平成 24 年度 南伊豆町有害鳥獣対策調査委託 報告書

平成 24 年度
南伊豆町有害鳥獣対策調査委託
報告書
平成 25 年 3 月
株式会社 環境アセスメントセンター
《 目 次 》
1. 業務概要 ............................................................................ 1
1.1 業務目的 ........................................................................ 1
1.2 業務の名称等 .................................................................... 1
1.3 業務内容 ........................................................................ 1
1.4 調査場所 ........................................................................ 1
1.5 現状調査数量 .................................................................... 1
2. 調査概要 ............................................................................ 2
2.1 調査方法等 ...................................................................... 2
2.2 調査年月日 ...................................................................... 7
3. 現状調査結果 ........................................................................ 8
3.1 処分状況の把握 .................................................................. 8
3.1.1 資料調査 ..................................................................... 8
3.1.2 ヒアリング調査 .............................................................. 10
3.1.3 センサーカメラ調査 .......................................................... 11
3.2 他市町村事例把握 ............................................................... 14
3.2.1 返信・回答状況概要 .......................................................... 14
3.2.2 回答結果 .................................................................... 16
3.3 成分検査 ....................................................................... 27
3.3.1 成分検査結果 ................................................................ 27
3.3.2 他地域の検査事例との比較 .................................................... 31
3.3.3 他の畜肉及びシカ肉との比較 .................................................. 38
3.4 需要調査 ....................................................................... 39
3.5 動物用焼却炉に関する情報収集 ................................................... 40
3.5.1 イノシシ、シカの体サイズ及び重量 ............................................ 40
3.5.2 焼却炉の設置、運用に関わる法令 .............................................. 41
3.5.3 資料収集結果 ................................................................ 42
3.5.4 機種 ........................................................................ 43
4. 解析 ............................................................................... 45
4.1 現状の処分方法による影響 ....................................................... 45
4.2 今後の捕獲数推計からの影響 ..................................................... 45
5. まとめ ............................................................................. 46
5.1 調査結果とりまとめ ............................................................. 46
5.2 有識者ヒアリング ............................................................... 47
5.3 今後の課題・提案 ............................................................... 48
5.3.1 処分方法 .................................................................... 48
5.3.2 利活用 ...................................................................... 49
添付資料
議事録(猟友会、精肉店)
他市町村事例把握アンケート案内文、回答用紙及び添付資料
成分検査分析結果(試験検査成績書)
焼却炉資料
電子データ(CD-R)
報告書本編原稿ファイル(PDF、Word 等)
他市町村事例把握アンケート集計結果データベース
他
1. 業務概要
1.1 業務目的
本業務は、近隣や類似団体の対応事例や町内の現況を調査することにより、有害鳥獣の駆除個
体の処理に対する方針を決定するための基礎データを収集することを目的とする。
1.2 業務の名称等
業務名称等は以下のとおりである。
業務の名称:平成 24 年度南伊豆町有害鳥獣対策調査
委 託 者:南伊豆町
〒415-0392 静岡県賀茂郡南伊豆町下賀茂 315-1
受 託 者:株式会社 環境アセスメントセンター
〒420-0047 静岡市葵区清閑町 13-12
業 務 期 間:平成 24 年 9 月 27 日~平成 25 年 3 月 29 日
1.3 業務内容
本業務の業務内容は、以下に示すとおりである。
なお、詳細な調査・取りまとめ方法等詳細については監督員と協議して決定した。
■計画準備
■現状調査(処分状況の把握、他市町村事例把握、成分検査、需要調査、動物用焼却炉に
関する情報収集)
■解析
■報告書作成
1.4 調査場所
南伊豆町町内
1.5 現状調査数量
現状調査の数量は、以下に示すとおりである。
表 1.5.1
現状調査数量
内容
①資料調査
処分状況の
②ヒアリング調査
把握
③センサーカメラ調査
数量
一式
一式
2 箇所×2 週間
④他市町村事例把握
50 市町村
⑤成分検査
⑥需要調査
イノシシ 8 検体
5 店舗
⑦動物用焼却炉に関する情報収集
一式
1
備考
南伊豆町における有害鳥獣駆除資料整理
賀茂猟友会南伊豆分会へのヒアリング
動物による残渣利用状況把握
アンケート調査による被害状況、被害防止対策、
処理方策、処理施設有無等の把握
栄養、風味(脂肪酸、アミノ酸、核酸)
町内の精肉を取り扱う店舗への聞き取り調査
大型鳥獣の焼却が可能な焼却炉の取り扱い業者
からの情報・資料収集
2. 調査概要
2.1 調査方法等
2.1.1 処分状況の把握
(1) 資料調査
南伊豆町が収集している有害鳥獣捕獲個体の捕獲頭数及び処分状況等について整理した。
(2) ヒアリング調査
社団法人 静岡県猟友会 賀茂猟友会 南伊豆分会の猿渡会長を対象に、直接面談によるヒアリ
ング調査を行い、処理に係わる情報(捕獲数、処理方法、場所など)を入手し、処理実態について
把握した。
なお、猟友会会員へのアンケート調査については、ヒアリング対象者から「アンケート等を行
っても実情は把握できないであろう」との助言が得られたことから、実施しなかった。
(3) センサーカメラ調査
残渣埋設地 2 箇所にそれぞれ 2 週間以上センサーカメラを設置し、他の動物による埋設残渣の
利用状況を確認した。
調査を実施した環境及び調査日数等は、表 2.1.1 に示すとおりである。
表 2.1.1
センサーカメラ調査概要
環境
山林
地点状況
・広葉樹林やスギ・ヒノキ植林等が広がる山林。
・地表に残渣廃棄。
開放地
・山際の造成裸地。
(造成裸地) ・くぼみに残渣廃棄。
調査期間
平成 24 年 11 月 13 日~
12 月 1 日(18 日間)
平成 24 年 11 月 13 日~
12 月 6 日(23 日間)
調査期間:カメラ設置期間の内、電池切れ等により作動しない期間を除く、実稼働期間を示す。
2.1.2 他市町村事例把握
(1) アンケート対象
処理施設(食肉処理加工場、焼却処理場、埋設地等)がある市町村 40 市町村と、伊豆地域獣害
対策連絡会加盟の 10 市町(伊豆市・南伊豆町を除く)を対象とした。
処理施設のある市町村は、主に農林水産省ホームページの鳥獣被害対策コーナーで紹介されて
いる野生鳥獣を地域資源として活用している 119 事例(平成 24 年 7 月現在、http://www.maff.
go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/pdf/hp.pdf)を参考とした。これらの中から、イノシシを扱って
いる事例、施設を市町村が所有している可能性がある事例、行政からの補助金を受け建設されて
いる可能性がある事例等を優先して選定した。なお、農林水産省ホームページで紹介されていな
い事例がインターネット上で確認された場合は、必要に応じてアンケート対象とした。
上記の結果選定されたアンケート対象市町村は、表 2.1.2 に示すとおりである。
なお、アンケートの宛先は、当該市町村のホームページを検索し、有害鳥獣駆除対策を担当し
ていると考えられた部署とした。
2
表 2.1.2(1) 他市町村事例把握アンケート対象
(処理施設のある全国の 40 市町村)
番号
市町村名
処理施設名称等
対象獣類区分
参考としたホームページ・条例
(イノシシ、シカ)
(○:上記農水省 HP)
101 茨城県石岡市
朝日里山学校
イノシシ
○
102 栃木県那珂川町
那珂川町イノシシ肉加工施設
イノシシ
○
103 千葉県鴨川市
清澄山系ジビエ
イノシシ、シカ
○
104 千葉県君津市
君津市獣肉処理加工施設
イノシシ、シカ
○
105 東京都奥多摩町
森林恵工房 峰
シカ
http://www.maff.go.jp/j/seisan/ tyozyu/
higai/h_manual/h21_03/pdf/data4.pdf
106 山梨県南都留郡富士河口湖町 富士河口湖町ジビエ食肉加工施設
シカ
富士河口湖町ジビエ食肉加工施設条例
107 山梨県北都留郡丹波山村
丹波山村シカ肉処理加工施設
シカ
108 静岡県榛原郡川根本町
南アルプスジビエ牧場
シカ
109 静岡県伊豆市農林水産課
伊豆市食肉加工センター「イズシカ問屋」 イノシシ、シカ
110 三重県度会郡大紀町
シカ・イノシシ処理施設
イノシシ、シカ
111 福井県若狭町
嶺南地域有害鳥獣処理施設
イノシシ、シカ
○
○
○
○
嶺南地域有害鳥獣処理施設条例
112 滋賀県高島市
朽木猟友会シカ肉加工施設
イノシシ、シカ
○
113 京都府京丹後市
京たんごぼたん・もみじ比治の里
イノシシ、シカ
○
イノシシ、シカ
○
114 和歌山県日高川町
日高川町有害鳥獣食肉処理加工施設
中津処理施設「ジビエ工房 紀州」
115 和歌山県田辺市
ジビエ本宮
イノシシ、シカ
○(和歌山県本宮町で表示)
116 鳥取県鳥取市
イノシシ解体処理施設
イノシシ
○(鳥取県鹿野町で表示)
117 鳥取県西伯郡南部町
イノシシ解体処理施設
イノシシ
○
118 島根県邑智郡美郷町
邑智食肉処理加工場
イノシシ
○
119 島根県松江市
イノシシ資源化施設(解体処理)
イノシシ
○(島根県八雲町で表示)
120 島根県益田市
美都猪処理場
イノシシ
○(島根県美都町で表示)
121 島根県安来市
猪肉処理施設
イノシシ
○(島根県広瀬町で表示)
122 岡山県新見市
新見市大佐猪解体処理施設
イノシシ
○
123 岡山県加賀郡吉備中央町
イノシシ処理加工施設
イノシシ
○
124 広島県呉市
イノシシ肉専用処理場
イノシシ
125 徳島県美馬市
美馬市シカ肉等処理加工施設
イノシシ、シカ
126 愛媛県上島町
上島町獣肉処理加工施設
イノシシ
○
127 愛媛県西予市
西予市獣肉処理加工施設「ししの里せいよ」イノシシ
○
128 愛媛県今治市
しまなみイノシシ活用隊獣肉処理加工施設 イノシシ
○
129 高知県四万十市
しまんとのもり組合鳥獣解体場
イノシシ
○
130 福岡県糸島市
浮嶽くじら処理加工センター
イノシシ
○
131 福岡県田川郡添田町
添田町食肉処理加工施設
イノシシ、シカ
○
132 福岡県京都郡みやこ町
みやこ町有害鳥獣加工施設
イノシシ、シカ
○
イノシシ
○
イノシシ
○
○
133 佐賀県武雄市
134 長崎県佐世保市
武雄鳥獣食肉加工センター猪突猛進
「やまんくじら」
有害鳥獣有効利用施設
(いのしし肉加工販売所ヘルシーBOAR)
○
美馬市シカ肉等処理加工施設条例
135 長崎県南松浦郡新上五島町
有害鳥獣有効利用施設
イノシシ
136 長崎県対馬市
対馬またぎ
イノシシ
○
137 長崎県松浦市
イノシシ加工所不老の森
イノシシ
○
138 大分県日田市
日田市獣肉処理施設
不明
139 大分県国東市
有害鳥獣処理加工施設
イノシシ
○
140 鹿児島県伊佐市
伊佐市有害鳥獣処理施設
イノシシ、シカ
○
3
日田市獣肉処理施設の設置及び管理に関
する条例
表 2.1.2(2) 他市町村事例把握アンケート対象
(伊豆地域獣害対策連絡会加盟の 10 市町)
番号
市町村名
処理施設名称等
141 静岡県沼津市
施設なし
142 静岡県熱海市
施設なし
143 静岡県伊東市
施設なし
144 静岡県下田市
施設なし
145 静岡県伊豆の国市
施設なし
146 静岡県田方郡函南町
施設なし
147 静岡県賀茂郡東伊豆町
施設なし
148 静岡県賀茂郡河津町
施設なし
149 静岡県賀茂郡松崎町
施設なし
150 静岡県賀茂郡西伊豆町
施設なし
(2) アンケート内容
アンケートでは、以下に示す内容について問い合わせた。
なお、被害状況、被害防止対策、有害鳥獣捕獲個体数、処理・利活用状況については、主にイ
ノシシ、ニホンジカ、ニホンザルの 3 種についての情報を収集した。
表 2.1.3
他市町村事例把握アンケート内容
区分
設問等の内容
農林水産省事業「野生鳥獣による農作物の被害状況調査票」の提供依頼
林産物の加害鳥獣名、被害対象、被害面積、被害金額
被害防止対策実施状況
被害対策内容
有害鳥獣捕獲個体数、処理方法
捕獲個体数及び処理方法
食肉加工施設有無、所有者・管理者、建設年、対象鳥獣、課題
有害鳥獣捕獲個体処理施設及び処 焼却施設有無、所有者・管理者、建築年、対象鳥獣、課題
理の状況
埋設施設・土地有無、所有者・管理者、設置年、対象鳥獣、課題
施設決算書、施設パンフレット、施設写真
被害状況
4
2.1.3 成分検査
(1) 分析検体収集
平成 24 年度に南伊豆町内で捕獲されたイノシシ 4 個体を対象に成分検査を行った。
分析に供する部位は、食肉として一般的なロース、バラ、モモ、ヒレの 4 箇所とし、検体数は
部位毎に 2 検体(合計 8 検体)とした。
捕獲された個体の情報及びそれらから取り出した検体は、以下に示すとおりである。
表 2.1.4
個体
番号
捕獲年月日
成分検査に供した捕獲個体情報及び検体
捕獲場所
1
平成 24 年 11 月 19 日 南伊豆町二条
2
平成 25 年 1 月 2 日
南伊豆町上小野
3
平成 25 年 1 月 3 日
南伊豆町一条
4
平成 25 年 1 月 5 日
南伊豆町加納
備考)体重:内臓除去後の重量
写真 2.1.1
性別
体重 *
♂
♀
♀
♀
13 貫目(約 49kg)
12 貫目(約 45kg)
12 貫目(約 45kg)
8 貫目(約 30kg)
取り出した検体
モモ№2、バラ№2
ロース№1、バラ№1、ヒレ№1
モモ№1、ロース№2
ヒレ№2
成分検査に用いた検体
(2) 分析項目
成分検査の分析項目は、以下に示すとおりである。
表 2.1.5 成分検査の内容
検査項目
栄養
一般成分
無機成分
脂肪酸組成
風味
遊離アミノ酸
核酸
水分・タンパク質・脂質・灰分・炭水化物・エネルギー
カルシウム・鉄
ミリスチン酸・パルミチン酸・パルミトレイン酸・ステアリン酸・オレ
イン酸・リノール酸・α-リノレン酸
20 種(アスパラギン、セリン、アスパラギン酸
グルタミン酸、スレオニン、アルギニン、ヒスチジン
グリシン、リジン、チロシン、トリプトファン、システイン、メチオニ
ン、プロリン、フェニルアラニン
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン)
イノシン酸、グアニル酸
5
検体数
8
8
8
8
8
2.1.4 需要調査
以下に示す町内の 5 店舗に対し、イノシシ肉の取り扱いの有無、需要、単価について直接面談
又は電話により聞き取り調査を行った。
表 2.1.6
店舗名
稲本精肉店
三浜屋
臼井肉店
浜店
マックスバリュー下賀茂店
需要調査対象
住所
南伊豆町下賀茂 325-6
南伊豆町下賀茂 260-10
南伊豆町湊 891-10
南伊豆町妻良 481
南伊豆町下賀茂日詰 257-1
写真 2.1.2
電話
0558-62-0119
0558-62-0414
0558-62-0429
0558-67-0048
0558-62-1000
需要調査実施状況
2.1.5 動物用焼却炉に関する情報収集
イノシシ、シカの焼却が可能な焼却炉を取り扱う以下のメーカーに、電話等により問合せを行
い、焼却炉に関する情報を収集するとともに、カタログ等を取り寄せた。
表 2.1.7
会社名
焼却炉メーカー問い合わせ先
本社所在地・連絡先
インシナー工業株式会社
東京都大田区大森北 1-33-4
03-6404-3311
株式会社
京都府福知山市大江町千原 43
0773-56-5666
マルテック
DAITO 販売株式会社
愛知県瀬戸市原山町 168
0561-21-3111(代)
備考
・小型焼却炉から大型動物焼却炉まで対応。
・本業務での対応窓口:取締役 松本。
・静岡支店および工場の所在地は伊豆市上船原。
・有害鳥獣用動物焼却炉を製品カテゴリーに設け
ている。
・本業務での対応窓口:取締役 大山。
・大手メーカー。
・本業務での対応窓口:販売部 津久居。
※他市町村事例把握において、三重県大紀町から
紹介を受けた焼却炉メーカー
2.1.6 有識者聞き取り調査
報告書作成時の有識者聞き取りにあたり、静岡県経済産業部農林業局農山村共生課職員及び静
岡県農林技術研究所森林・林業研究センター研究員と、聞き取り可否について協議した。
その結果、了解が得られた静岡県農林技術研究所森林・林業研究センター職員の大橋正孝氏(ニ
ホンジカプロジェクト上席研究員)を対象に、県内での有害捕獲個体の利活用状況、利活用にあた
っての課題等について助言を頂いた。
6
2.2 調査年月日
調査年月日は、以下に示すとおりである。
表 2.2.1
内容
資料調査
処分
状況の
把握
ヒアリング調査
調査年月日
―
平成 24 年 11 月 9 日
センサーカメラ
調査
他市町村事例把握
成分検査
平成 24 年 11 月 13 日
平成 25 年 1 月 9 日
平成 24 年 12 月 6 日
平成 25 年 1 月 9 日
需要調査
平成 25 年 1 月 9 日
動物用焼却炉に関する
情報収集
有識者聞き取り調査
調査年月日
調査内容等
―
社団法人 静岡県猟友会
賀茂猟友会 南伊豆分会
会長 猿渡氏
カメラ設置
カメラ回収
アンケート発送
分析検体収集
稲本精肉店
美浜屋、臼井肉店、浜店、
マックスバリュー下賀茂店
平成 25 年 3 月
情報・カタログ収集
平成 25 年 3 月 19 日
大橋 正孝 氏
7
備考
随時実施
南伊豆町役場にて実施
回答発送締切 12 月 26 日
直接面談
電話による聞き取り
電話・メールにて実施
3. 現状調査結果
3.1 処分状況の把握
3.1.1 資料調査
(1) 農産物被害状況
南伊豆町におけるイノシシ及びシカの農産物被害状況は、以下に示すとおりである。
イノシシの被害金額は平成 20 年以降増加傾向にあり、平成 23 年度の被害金額は平成 20 年の
約 4 倍にまで増加している。また、シカについては平成 22 年から農産物被害の報告が上がるよう
になり、平成 23 にかけて被害面積・被害金額が増加している。
表 3.1.1
南伊豆町におけるイノシシ、シカによる農産物被害状況
内容
被害状況
被害面積(a)
イノシシ
シカ
H20
2,625
0
H21
1,170
0
H22
1,086
14
イノシシ
シカ
H23
2,903
262
被害面積(a)
5000
被害面積
4000
3000
2000
1000
0
H20
H21
被害金額(千円)
イノシシ
シカ
H22
年度
H20
2,775
0
H21
4,735
0
イノシシ
H23
H22
6,210
140
H23
10,900
1,490
シカ
被害金額(千円)
12500
被害金額
10000
7500
5000
2500
0
H20
H21
8
年度
H22
H23
(2) 有害鳥獣捕獲頭数
南伊豆町におけるイノシシ及びシカの有害鳥獣捕獲での捕獲頭数は、以下に示すとおりである。
各年度の捕獲頭数はイノシシが最も多く、平成 17 年度から平成 23 年度までは 81 頭から 249
頭の間で推移している。平成 24 年度のイノシシの捕獲頭数は、平成 25 年 1 月 28 現在で 478 頭と
なっており、過去 8 年間の中で最も多くなっている。この要因について、猟友会会員より、餌と
なるシイの実の落下開始時期が例年より遅れて秋季に山の餌量が不足し、里の農作物を採食する
ことが増えたためとの情報が得られている。
一方、近年被害発生報告が増えているシカは 0~5 頭となっており、イノシシと比較すると捕
獲頭数は少ない状況にある。
表 3.1.2
南伊豆町における鳥獣別有害捕獲頭数
内容
捕獲状況
捕獲頭数
イノシシ
シカ
H17
84
H18
249
H19
115
H20
81
0
H21
104
0
H22
233
0
H23
187
5
H24
478
2
H24 年度の捕獲頭数は、平成 25 年 1 月 28 日現在の数値
イノシシ
シカ
500
捕獲頭数(頭)
捕獲頭数
400
300
200
100
0
H17
H18
H19
H20
年度
H21
H22
H23
H24
(3) 捕獲個体処理状況
南伊豆町における捕獲個体の処理状況は以下に示すとおりで、イノシシ及びシカの処理は主に
自家消費と埋設となっている。
表 3.1.3
南伊豆町における捕獲個体処理状況
内容
処理状況
自家消費
埋設
自家消費
400
284
300
28
200
100
0
25
0
73
74
46
33
131
H21
H22
114
194
H24
10
5
0
0
H21
H22
年度
年度
イノシシ
シカ
9
不明
15
0
H23
埋設
20
処理個体数(頭)
処理個体数(頭)
捕獲個体
処理状況
不明
0
500
0
3
2
0
1
1
H23
H24
3.1.2 ヒアリング調査
猟友会へのヒアリング調査では、町内の有害鳥獣捕獲個体の処分状況の他、処分に関する課題
や処理施設に関する意見等が得られた。
猿渡会長からの聞き取り情報概要は、以下に示すとおりである。
《町内の有害鳥獣捕獲個体の処分状況》
聞き取り対象者自身は、自家消費や自分の所有している畑に廃棄しているとの情報が得られた。
その他の猟友会会員の処分方法については詳細に把握されておらず、またアンケート等を行っ
ても処分状況を把握する事は難しいとの意見が得られた。
《廃棄した残渣の状況》
「一晩で消失することもある」との情報が得られた。
《有害鳥獣駆除個体の処理施設の必要性》
処分の手段を有していない会員は必要性を感じ、自ら獲物をさばくことができる会員は必要性
が低いと感じている可能性があるとの情報が得られた。
《有害鳥獣駆除個体の処理施設設置にあたっての課題》
販売価格が高くなるとの課題が指摘された。
表 3.1.4
猟友会ヒアリング調査結果概要
内容
情報
①町内の有害鳥 ・自分自身は、主に所有する畑の穴に廃棄している。皮は
獣捕獲個体の ごみに出すこともある。
処分状況
・銃猟を行う会員は、個人あるいはグループで解体し、自
家消費している事が多いようである。
・農作物被害軽減のためにワナを設置している会員は、処
分を銃猟の会員に依頼しているようで、最終的な処分状
況は知らない可能性がある。
・山中への残渣投棄等も想定されるが、詳しいことは分か
らない。
・会員を対象としたアンケート調査では、処分状況や埋設
場所等の情報を収集するのは難しいと思う。
②廃棄した残渣 ・埋設後、一晩で残渣がなくなることもある。
の状況
③有害鳥獣捕獲 ・農作物被害軽減のためにワナを設置している会員は捕獲
個体処理施設 後の処分に困っているので、体制整備や処理施設の設置
の必要性及び は望んでいると思う。
課題
・銃猟を行う会員は、自分たちで処理ができる人が多いの
で、設置の必要性は低いと感じているかもしれない。
・イノシシ肉などを販売する場合は、肉の価格は高価なも
のとなる可能性があるため、売れるようにするためには
行政が赤字を補う必要も出てくることが想定される。
10
3.1.3 センサーカメラ調査
(1) 撮影状況
センサーカメラの撮影状況概要は、以下に示すとおりである。
残渣を採食していることが確認できた種は、哺乳類ではタヌキ、イノシシ、鳥類ではトビとカ
ラス類であった。
地点別では、山林ではタヌキが単独又は複数個体で頻繁に採食に訪れ、開放地(造成裸地)では
カラス類の飛来が多かった。
表 3.1.5
内容
カメラ作動期間
作動期間中に
廃棄された残渣
残渣の採食が
確認された種
センサーカメラ調査結果概要
山林
11 月 13 日~12 月 1 日(18 日間)
イノシシ幼獣、シカ頭部、内臓、
肉塊、骨、毛皮
タヌキ、イノシシ、カラス類
開放地(造成裸地)
11 月 13 日~12 月 6 日(23 日間)
シカ成獣、内臓、脚
タヌキ、トビ、カラス類
*:上記の他、山林ではネズミ類、ネコ及び小型鳥類を、開放地ではネズミ類及び小型鳥類を撮影。
(残渣の採食は認められず、単なる通過の可能性あり)
(2) 残渣の消失状況
カメラの稼働期間中には、イノシシ幼獣及びシカ成獣(いずれも丸ごと)、体の一部としては
シカの頭部、内臓、肉塊、骨、毛皮、脚が廃棄された。
残渣毎の消失状況は以下に示すとおりで、肉塊や内臓等の体の一部が廃棄された場合は、個体
が丸ごとが廃棄された場合よりも早く廃棄場所から消失した。
表 3.1.6
残渣
イノシシ幼獣
シカ成獣
内臓
肉塊(小)・骨
採食又はその可能性の
ある動物
タヌキ、カラス類
カラス類
タヌキ
タヌキ、カラス類
主な残渣の消失状況概要
廃棄から動物採食
開始までの時間
約3日
約 2 時間
約 2 時間
約 3 時間
廃棄から消失までに要した時間
約5日
10 日以上(毛皮の剥皮状態で撮影終了)
約 11 時間
約 10 時間
なお、主な残渣の消失過程は、表 3.1.7~表 3.1.10 に示すとおりである。
11
表 3.1.7
主な残渣の消失までの過程(イノシシ幼獣)
廃棄場所:山林
残渣:イノシシ幼獣(体重 6~7kg 程度)
採食又はその可能性のある動物:タヌキ、カラス類
廃棄から消失までに要した時間:約 5 日
過程
確認日
時刻
状況
①
11 月 13 日
14:50
②
11 月 15 日
12:02
③
11 月 15 日
・タヌキが訪れるが、15 日廃棄の内臓のみ採食。
19:31 ・イノシシ幼獣に対しては、臭いを嗅いだだけ。
④
11 月 16 日
0:28
⑤
11 月 16 日
12:36
⑥
11 月 16 日
18:50
⑦
11 月 17 日
3:48
⑧
11 月 18 日
・イノシシ幼獣消失。
18:57 ・前後の撮影からタヌキによる持ち去りの可能性あり。
・残渣(イノシシ幼獣)廃棄。
・廃棄から 2 日間動物の接近はなく、残渣に変化なし。
・イノシシが訪れるが採食なし。
・カラス類が訪れ採食するが、残渣に大きな変化なし。
・タヌキが訪れる。
(※16 日日中に追加廃棄された骨・肉塊に誘引されたと考えられる。)
・⑥以降、骨や肉塊は持ち去られるが、イノシシ幼獣には変化なし。
表 3.1.8
主な残渣の消失までの過程(シカ成獣)
廃棄場所:開放地
残渣:ニホンジカ成獣
採食又はその可能性のある動物:カラス類
廃棄から消失までに要した時間:10 日以上
過程
確認日
時刻
①
11 月 26 日
10:30
②
11 月 26 日
12:23
③
11 月 29 日
12:00
④
12 月 1 日
5:01
⑤
12 月 2 日
14:25
⑥
12 月 3 日
15:11
⑦
12 月 6 日
11:06
⑧
12 月 6 日
11:21
状況
・残渣(シカ成獣)廃棄。
(※シカ成獣廃棄以前に廃棄されていた肉塊・骨も残っている。)
・カラス類の初飛来。
・カラス類の群れによる採食もあるが、残渣に大きな変化なし。
・タヌキが訪れるが、シカの脇にある肉塊を採食。
・シカを採食する様子なし。
・トビが飛来するが、シカの脇にある肉塊をついばむ。
・トビが飛来してシカの上に乗るが、シカをついばむ様子なし。
・カラス類の採食により、剥皮が進行。
・撮影終了。
12
表 3.1.9
主な残渣の消失までの過程(内臓)
廃棄場所:山林
残渣:内臓
採食又はその可能性のある動物:タヌキ(同時に 3 個体撮影)
廃棄から消失までに要した時間:約 11 時間(採食開始からは約 8 時間)
過程
確認日
時刻
状況
①
11 月 24 日
15:34
②
11 月 24 日
・タヌキが訪れる。
17:41 ・この後、5 分程様子を伺った後、採食を始める。
③
11 月 24 日
18:08
④
11 月 24 日
18:10
⑤
11 月 25 日
2:27
・残渣(内臓)廃棄。
・タヌキ 2 個体での採食開始。
・タヌキ 3 個体での採食開始。
・内臓残渣消失。
表 3.1.10
主な残渣の消失までの過程(肉塊(小)・骨)
廃棄場所:山林
残渣:肉塊(小)、骨
採食又はその可能性のある動物:タヌキ
廃棄から消失までに要した時間:約 10 時間(タヌキ採食開始から 4 時間半)
過程
確認日
時刻
①
11 月 21 日
11:41
②
11 月 21 日
③
11 月 21 日
④
11 月 21 日
⑤
11 月 21 日
状況
・残渣(肉塊、骨)廃棄。
(※肉塊・骨廃棄以前に廃棄されていた内臓も残っている。)
・カラス類が採食開始。
14:58 ・16:00 までの間、最大 2 羽が採食に訪れるが、残渣に大きな変化
なし。
・タヌキ 2 頭が採食開始。
17:05 ・日没(16:38)後約 30 分で、採食に訪れる。
・最大タヌキ 3 頭が採食する。
17:17 ・肉塊や骨を優先的に採食しているようで、内臓には関心を示してい
ない。
・肉塊及び骨消失。
21:48 ・肉塊、骨廃棄前から廃棄されている内臓だけが残る。
13
3.2 他市町村事例把握
3.2.1 返信・回答状況概要
全国 50 市町村に送付したアンケート調査の返信状況及び各設問等への回答状況は、以下に示
すとおりで、全体の返信数は 36 通(返信率 72.0%)となっている。
伊豆市等の処理施設のある 40 市町からは 26 通(返信率 65.0%)、伊豆地域獣害対策連絡会加盟
の 10 市町(伊豆市、南伊豆町除く)からはすべて返信があった。
表 3.2.1(1)
他市町村事例把握アンケート返信・回答状況概要
処理施設のある 40 市町村
番号
市町村名
101
102
103
104
105
106
107
108
109
110
111
112
113
114
115
116
117
118
119
120
121
122
123
124
125
126
127
128
129
130
131
132
133
134
135
136
137
138
139
140
返信
有無
茨城県石岡市
×
栃木県那珂川町
●
千葉県鴨川市
●
千葉県君津市
×
東京都奥多摩町
×
山梨県南都留郡富士河口湖町
●
山梨県北都留郡丹波山村
×
静岡県榛原郡川根本町
×
静岡県伊豆市農林水産課
●
三重県度会郡大紀町
●
福井県若狭町
●
滋賀県高島市
●
京都府京丹後市
●
和歌山県日高川町
●
和歌山県田辺市
×
鳥取県鳥取市
●
鳥取県西伯郡南部町
●
島根県邑智郡美郷町
×
島根県松江市
●
島根県益田市
●
島根県安来市
●
岡山県新見市
●
岡山県加賀郡吉備中央町
●
広島県呉市
●
徳島県美馬市
×
愛媛県上島町
●
愛媛県西予市
●
愛媛県今治市
●
高知県四万十市
●
福岡県糸島市
●
福岡県田川郡添田町
●
福岡県京都郡みやこ町
×
佐賀県武雄市
●
長崎県佐世保市
●
長崎県南松浦郡新上五島町
×
長崎県対馬市
×
長崎県松浦市
×
大分県日田市
×
大分県国東市
×
鹿児島県伊佐市
●
返信・回答数
26
返信・
回答状況
返信・回答率
65.0%
小計
(回答数/返信数)
●:返信・回答あり
問 1 被害状況
農産物
林産物
(書類添付)
―
―
●
×
●
●
―
―
―
―
×
●
―
―
―
―
●
●
●
●
×
●
●
●
●
●
●
×
―
―
×
●
×
●
―
―
●
●
×
●
●
●
×
●
×
●
●
×
―
―
●
●
×
●
●
●
▲
●
×
●
×
×
―
―
×
●
×
●
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
×
●
13
22
50.0%
▲:回答あり(一部書類不足)
84.6%
設問別回答状況
問2
問3
被害防止
捕獲個体数
対策内容
・処理状況
―
●
●
―
―
●
―
―
●
●
●
●
●
●
―
●
●
―
●
●
●
●
●
●
―
●
●
●
●
●
●
―
●
●
―
―
―
―
―
●
26
―
●
●
―
―
●
―
―
●
●
●
●
●
●
―
●
●
―
●
●
●
●
●
●
―
●
●
●
●
●
●
―
●
●
―
―
―
―
―
●
26
―
●
●
―
―
●
―
―
●
●
●
●
●
●
―
●
●
―
●
●
×
●
●
●
―
●
●
●
●
●
●
―
●
●
―
―
―
―
―
●
25
―
●
●
―
―
×
―
―
●
●
×
×
●
×
―
×
×
―
●
×
×
×
●
×
―
●
×
×
×
×
×
―
●
●
―
―
―
―
―
×
10
100.0%
100.0%
96.2%
40.0%
×:返信・回答なし
14
問4
問5
処理・利活用 処理・利活用
施設
の課題等
表 3.2.1(2)
他市町村事例把握アンケート返信・回答状況概要
伊豆地域獣害対策連絡会加盟の 10 市町
番号
返信
有無
市町村名
141
142
143
144
145
146
147
148
149
150
静岡県沼津市
静岡県熱海市
静岡県伊東市
静岡県下田市
静岡県伊豆の国市
静岡県田方郡函南町
静岡県賀茂郡東伊豆町
静岡県賀茂郡河津町
静岡県賀茂郡松崎町
静岡県賀茂郡西伊豆町
返信・回答数
返信・
回答状況
返信・回答率
小計
(回答数/返信数)
返信・回答数
返信・
回答状況
返信・回答率
合計
(回答数/返信数)
●:返信・回答あり
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
10
問 1 被害状況
農産物
林産物
(書類添付)
●
×
×
●
●
●
●
●
×
●
▲
●
●
×
●
●
●
●
×
●
7
8
設問別回答状況
問2
問3
被害防止
捕獲個体数
対策内容
・処理状況
問4
問5
処理・利活用 処理・利活用
施設
の課題等
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
10
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
10
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
10
×
×
●
×
×
●
×
×
●
×
3
100.0%
70.0%
80.0%
100.0%
100.0%
100.0%
30.0%
36
20
30
36
36
35
13
72.0%
55.6%
83.3%
100.0%
100.0%
97.2%
36.1%
▲:回答あり(一部書類不足)
×:返信・回答なし
返信のあった 36 通の各設問に対する回答状況は、被害防止対策内容(問 2)、有害鳥獣捕獲個体
数・処理・利活用状況(問 3)についてはすべて回答があり、林産物被害状況(問 1-2)と処理・利活
用施設(問 4)についても比較的高い回答率であった。
一方、農産物被害状況(問 1-1、野生鳥獣による農作物の被害状況調査票(農林水産省事業)添付)
の回答率は 55.6%に留まった。また、有害鳥獣捕獲個体の処理・利活用に関する課題(問 5)につい
ても、回答率は 36.1%と低い状況であった。
なお、回答用紙以外には、以下に示す添付資料の送付があった。
番号
表 3.2.2
市町村名
110
三重県大紀町
113
124
京都府京丹後市
広島県呉市
126
愛媛県上島町
128
愛媛県今治市
129
静岡県西伊豆町
他市町村事例把握アンケート添付資料一覧
資料タイトル
形式
パンフレット
生ゴミ、動物用焼却炉
写真
京たんご ぼたん・もみじ 比治の里
パンフレット
イノシシが近づきにくい街づくり
パンフレット
平成 23 年度鳥獣被害対策事業の実施状況調査票 書類
上島町獣肉処理加工施設概要
書類
平成 23 年度の鳥獣被害対策事業の実施状況
書類
平成 21,22,23 年度猪及び鹿捕獲頭数
書類
(管理捕獲、猟期中捕獲含む)
15
3.2.2 回答結果
(1) 問 1-1
被害状況(農産物)
《設問》
農林水産省事業「野生鳥獣による農産物の被害状況調査票」写しを、本アンケート用紙
とともに同封・送付して頂けると助かります。
平成 21 年度、平成 22 年度、平成 23 年度の 3 年分の情報を収集しています。
区分
返信数
処理施設所有市町村
伊豆獣害対策連絡会
合計
回答市町村数
26
10
36
13
7
20
回答数
(複数回答あり)
749
332
1,081
平成 21~23 年度分の情報提供:18 市町村
平成 22,23 年度分の情報提供:2 市町村
1) 各市町村の被害状況把握方法
「野生鳥獣による農産物の被害状況調査票」の返送があった 20 市町村で行われている被害状
況把握方法(複数回答あり)は、以下に示すとおりである。
被害把握方法は、農家からの報告による市町村が 13 市町村とやや多かった。
14
12
農家からの報告
10
集落代表者からの報告
農業共済組合への照会
8
6
有害捕獲申請書と確認
13
4
8
8
JAからの聞き取り
10
6
2
6
5
猟友会からの聞き取り
現地調査
0
図 3.2.1
被害状況把握方法
2) 被害報告件数
種類別・農産物別の被害報告件数は表 3.2.3 に示すとおりで、加害獣は哺乳類 13 種、鳥類 9
種であった。また、農水省でアンケート対象としている農産物 10 品目で被害報告があった。
種類別で被害品目が多かったのは、哺乳類のイノシシ、サル、シカの 3 種と鳥類のカラスであ
った(表中青網掛け)。また、農産物で被害件数が多い上位 5 品目は、稲、豆類、果樹、野菜、い
も類であった(表中黄色網掛け)。
16
表 3.2.3
区分
哺乳類
13 種
鳥類
9種
種類
他市町村事例把握アンケート結果(農産物被害
稲
イノシシ
サル
シカ
ネズミ
ウサギ
クマ
モグラ
タヌキ
ハクビシン
アライグマ
ヌートリア
タイワンリス
その他獣類
スズメ
カラス
カモ
ムクドリ
ヒヨドリ
ハト
キジ
サギ
その他鳥類
合計
麦類
46
17
30
3
1
豆類
4
1
7
2
4
1
10
雑穀
果樹 飼料作物 野菜
21
11
15
9
2
4
45
32
34
3
1
1
5
5
5
1
5
3
3
3
16
19
5
1
9
7
8
36
2
2
24
13
4
2
4
1
10
1
169
1
15
2
2
3
5
5
3
1
3
1
98
18
9
19
1
3
5
259
32
9
2
5
1
41
13
15
1
農産
物数
その他
12
1
9
26
8
18
3
1
2
2
2
4
1
1
3
1
1
6
1
1
6
5
1
3
2
2
11
6
12
2
4
3
3
274
20
家畜・
生産地
いも類 工芸作物
51
30
35
2
6
1
6
23
21
10
7
5
11
6
30
3
被害件数)
2
2
1
104
31
3
75
1
10
10
10
3
7
4
2
7
7
6
7
6
5
7
9
1
4
4
6
4
2
5
1081
種類別・農産物別の合計被害金額は以下に示すとおりで、被害金額も被害件数同様、イノシシ、
サル、シカ、カラスが多く(表中青網掛け)、特にイノシシの被害金額は突出していた。また、農
産物で被害額が1億円を超えたのは、稲、果樹、野菜、いも類であった(表中黄色網掛け)。
表 3.2.4
区分
哺乳類
13 種
鳥類
9種
他市町村事例把握アンケート結果(農産物被害
種類
イノシシ
サル
シカ
モグラ
クマ
ネズミ
アライグマ
タイワンリス
タヌキ
ヌートリア
ハクビシン
ウサギ
その他獣類
スズメ
カラス
カモ
ムクドリ
ヒヨドリ
ハト
キジ
サギ
その他鳥類
合計
稲
麦類
23,115
3,319
9,272
2
5
44
6
2
48
357
22
7
1
624
728
101
雑穀
176 30,443
23 4,020
163 7,067
1
2,220
69
22
0.2
9
96
99
246
果樹
1,410
443
2,044
208
1
490
19
38,110
豆類
2
3
113
2
1
226
21
49
20
8
39
22
1
8
7
4,528
322
345
1,212
11
475
8
201
48
9,588
330
2,622
2
3
163
560 59,079
17
飼料
作物
野菜
112 16,774
2 7,477
148 14,929
8
27
6
152
72
1,611
437
844
39
78
106
14 4,763
合計被害金額(万円))
いも類
9,607
648
1,320
0.1
3
0.3
2
1
31
38
30
工芸
作物
469
0.2
339
5
0.2
1
2
36
1
485
2,801
19
24
12
6
57
276 50,714 11,730
2
817
家畜・
生産地
その
他
総計
879 82,985
404 16,340
3,102 38,427
8
2,252
13
22
708
5
430
30
3,004
2
866
54
1,538
0.1
66
3
285
15
911
19 15,521
101
835
5,431
70
61
16
512
385
631
4,919 170,994
なお、イノシシ、サル、シカの主要被害農産物(表中桃色網掛け)の 1 件あたりの被害金額の分
布は、以下に示すとおりである。
~ 500万円
501~ 1000万 円
1001~ 1500万円
1501~ 2000万円
2001万円 ~
50
40
(
被
害
金
額
別
件被
害
報
告
件
数
)
イノシシ
30
20
10
0
稲
果樹
野菜
い も類
主 要農産 物
~ 500万円
(
被
害
金
額
別
件被
害
報
告
件
数
)
サル
501~ 1000万 円
1001~ 1500万円
1501~ 2000万円
2001万円 ~
40
30
20
10
0
稲
果樹
野菜
い も類
主 要農産 物
~ 500万円
(
被
害
金
額
別
件被
害
報
告
件
数
)
シカ
501~ 1000万 円
1001~ 1500万円
1501~ 2000万円
2001万円 ~
40
30
20
10
0
稲
果樹
野菜
主 要農産 物
図 3.2.2
1 件当たりの被害金額分布
18
い も類
(2) 問 1-2
被害状況(林産物)
《設問》
近年の鳥獣による特用林産物(しいたけ・たけのこ・わさび・くり)の被害状況につい
て教えて下さい。
区分
返信数
処理施設所有市町村
伊豆獣害対策連絡会
合計
回答市町村数
26
10
36
22
8
30
回答数
(複数回答あり)
104
69
173
回答数:未記入以外の回答件数(被害なし、被害不明含む)
種類別・林産物別の被害報告件数は以下に示すとおりで、クリ、シイタケ、タケノコ、ワサビ
に被害があった。加害獣別ではイノシシが全 4 品目に被害を与えている状況であった。
表 3.2.5
他市町村事例把握アンケート結果(林産物被害
種類
イノシシ
シカ
イノシシ、シカ
サル
ウサギ
クマ
タイワンリス
カラス
合計
クリ
シイタケ
23
タケノコ
12
9
3
16
3
3
8
3
40
3
46
61
表中数字:被害報告件数(未記入、被害なし、被害不明含まず)
19
ワサビ
39
9
6
3
1
3
3
被害件数)
12
9
3
24
(3) 問 2
被害防止対策内容
《設問》
近年の被害防止対策内容について教えて下さい。
実施年度と加害獣(主に大型哺乳類)別の対策内容の記入をお願いします。
最新年度の情報を収集しています。【複数回答可】
区分
返信数
処理施設所有市町村
伊豆獣害対策連絡会
合計
回答数
(複数回答あり)
209
110
319
回答市町村数
26
10
36
26
10
36
回答数:未記入以外の回答件数(被害なし、駆除実績なし等含む)
イノシシは 34 市町村から 135 件、サルは 25 市町村から 71 件、シカは 27 市町村から 87 件の
の被害防止対策の実施に関する情報が得られた。
イノシシ、サル、シカに対する被害防止対策実施件数は、以下に示すとおりである。
全体及び種毎ともに、猟友会委託による駆除、駆除報奨金・奨励金の支払い、防護柵設置補助
金交付の件数が多かった(表中黄色網掛け)。
表 3.2.6
加害
鳥獣名
イノシシ
サル
シカ
合計
駆除
駆除
行政 猟友会 その他
報奨金・
委託
主導 委託
奨励金
13
6
8
27
24
12
16
52
1
4
5
26
15
18
59
被害防止対策実施状況
その他
買い 捕獲機材 行政主導の
取り
貸出
防護柵設置
2
1
1
4
20
6
9
35
表中数字:駆除対策件数(未記入、被害なし、駆除実績なし含まず)
20
4
2
3
9
防護柵
設置
補助金
31
11
20
62
追払い 住民への 加工品
機材貸出 啓発・広報 の PR
5
4
4
13
15
10
10
35
4
2
6
その他
2
2
1
5
(4) 問 3
有害鳥獣捕獲個体数・処理・利活用状況
《設問》
近年の有害鳥獣捕獲個体数、処理状況等について教えて下さい。
集計年度と、有害鳥獣捕獲で捕獲した加害獣(主に大型哺乳類)別の捕獲個体数、処理状
況の記入をお願いします。最新年度の情報を収集しています。
区分
返信数
処理施設所有市町村
伊豆獣害対策連絡会
合計
回答数
(複数回答あり)
68
29
97
回答市町村数
26
10
36
26
10
36
回答数:未記入以外の回答件数(被害なし、駆除実績なし等含む)
1) 捕獲個体数
イノシシは 33 市町村から、サルは 24 市町村から、シカは 27 市町村から捕獲個体数の情報が
得られた。各種の個体数レベル毎の捕獲件数は、以下に示すとおりである。
イノシシ、シカ共に年間 500 頭以下の市町村が多かった。年間の最多捕獲頭数は、イノシシが
長崎県佐世保市の 5,210 頭(H23 年度)、シカが京都府京丹後市の 1,637 頭(H23 年度)であった。ま
た、サルは年間 50 頭以下の市町村が多く、年間の最多捕獲頭数は千葉県鴨川市の 395 頭(H24 年
度 11 月末時点)であった。
内容
捕獲個体数
~500頭
501~1000頭
1501~2000頭
2001頭~
1001~1500頭
25
25
20
20
捕 15
獲
件
数 10
捕 15
獲
件
数 10
23
5
6
1
2
201頭~
101~150頭
24
2
0
2
0
サル
イノシシ
~500頭
501~1000頭
1501~2000頭
2001頭~
1001~1500頭
30
25
20
捕
獲
15
件
数
10
51~100頭
151~200頭
5
4
捕獲
個体
数
~50頭
25
5
2
3
1
0
シカ
図 3.2.3
捕獲個体数
21
1
1
2) 処理状況
イノシシは 33 市町村から、サルは 18 市町村から、シカは 23 市町村から処理方法に関する情
報が得られた(複数回答可)。処理施設のある 26 市町村及び伊豆地域獣害対策連絡会加盟の 10 市
町毎の、種別処理方法件数は以下に示すとおりである。
イノシシは、全体では自家消費している市町村が最も多かったが、処理施設所有施設を有する
市町村では埋設(山林等の任意場所で処理)、自家消費、食肉加工処理施設での処理が同程度とな
った。一方、伊豆地域では自家消費の傾向が強かった。
サルでは、処理施設の有無を問わず、埋設(山林等の任意場所で処理)となった。
シカは、全体では埋設(山林等の任意場所で処理)が最も多かったが、処理施設所有施設を有す
る市町村では埋設(山林等の任意場所で処理)がやや多く、伊豆地域では自家消費の傾向がやや強
かった。
焼却
埋設(山林等の任意場所で処理 )
食肉加工処理施設での活用
その他
埋設(特定の埋設場所で処理)
自家消費
その他(埋設又は自家消費)
不明
25
21
20
20
17
処
15
理
件
数
件 10
14
13
9
(
8
7
)
5
3
1
0
4
3
1
0
0
0
2
1
0
1
0
2
1
0
イノシシ
サル
図 3.2.4(1)
シカ
処理状況(処理施設所有市町村)
焼却
埋設(山林等の任意場所で処理)
食肉加工処理施設での活用
その他
埋設(特定の埋設場所で処理)
自家消費
その他 (埋設又は自家消費)
不明
12
10
10
9
8
処
理
件 6
数
6
5
(
4
)
件
6
3
3
2
2
2
2
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
イノシシ
図 3.2.4(2)
サル
シカ
処理状況(伊豆獣害対策連絡会)
22
0
0
(5) 問 4
処理・利活用施設
《設問》
集計年度と、有害鳥獣捕獲で捕獲した個体の処理施設の状況を情報提供が可能な範囲で構い
ませんので教えて下さい。処理実績は最新年度の情報の記入をお願いします。
また、施設の決算書、パンフレット、施設写真をご提供頂けるようであれば、本アンケート
用紙とともに同封・送付して頂けると助かります。
区分
処理施設所有市町村
返信数
回答市町村数
26
25
回答数
(複数回答あり)
76
集計は、処理・利活用施設がある市町村のみを対象とした。
回答市町村数:焼却施設、埋設場所、食肉加工処理施設、食肉加工品販売施設の 1 つ以上
に回答を寄せた市町村数
1) 焼却施設
焼却施設に関する回答があったのは、19 市町村であった。
このうち、「専用施設を所有している」との回答があったのは三重県大紀町 1 箇所であった。
三重県大紀町の専用施設は平成 22 年に設置された町所有の焼却炉であり、維持費は 30 万円とな
っている。その他、清掃センター等の既存施設を利用している市町村が 6 箇所、
「専用施設がない」
との回答があった市町村が 12 箇所であった。
課題としては、
「沢や山林内に個体を投棄する等、狩猟者のモラル改善」(千葉県鴨川市)、
「年々
捕獲頭数が増加しており、処理が大変である。施設建設場所を受け入れてもらう地区や、建設維
持管理にも経費がかかるなどの問題がある。」(京都府京丹後市)、「行政が主体となって捕獲を行
う場合に専用施設がないため、積極的に行えない。」といった意見が寄せられた。
2) 埋設場所
埋設場所に関する回答があったのは、19 市町村(伊豆地域獣害対策連絡会を除く)であった。
いずれも専用施設はないとの回答であった。
課題としては、焼却施設と同様の課題が寄せられた。
23
3) 食肉加工処理施設
食肉加工処理施設に関する回答があったのは、23 市町村であった。このうち、「専用施設を所
有している」との回答があったのは、以下に示す 20 市町村であった。
表 3.2.7
番号
103
106
109
112
113
114
116
117
119
123
124
126
127
128
129
130
131
133
134
140
食肉加工処理施設に関する回答結果
専用施設
設置年
市町村名
千葉県鴨川市
山梨県南都留郡富士河口湖町
静岡県伊豆市農林水産課
滋賀県高島市
京都府京丹後市
和歌山県日高川町
鳥取県鳥取市
鳥取県西伯郡南部町
島根県松江市
岡山県加賀郡吉備中央町
広島県呉市
愛媛県上島町
愛媛県西予市
愛媛県今治市
高知県四万十市
福岡県糸島市
福岡県添田町
佐賀県武雄市
長崎県佐世保市
鹿児島県伊佐市
H23
H20
H22
未記入
H21
H22
未記入
H23
H21
H22
H16
H24
H22
H22
H20
H23
H23
H20
H14
H20
専用施設
建設費
8,237,827
30,000,000
58,825,000
未記入
80,278,000
28,000,000
未記入
15,000,000
18,800,000
8,900,000
17,000,000
15,567,000
13,482,000
不明
2,000,000
12,000,000
25,865,007
20,000,000
8,657,000
7,400,000
専用施設
維持管理費
未記入
900,000
未記入
未記入
9,772,000
9,000,000
未記入
未記入
2,200,000
未記入
4,944
未記入
未記入
不明
100,000
2,800,000
292,263
4,800,000
400,000
700,000
専用施設
所有者
民間
市町村
市町村
民間
市町村
広域行政
市町村
市町村
民間
民間
民間
市町村
民間
民間
民間
民間
市町村
民間
民間
市町村、民間
処理対象
鳥獣種名
イノシシ、シカ
シカ
イノシシ、シカ
未記入
イノシシ、シカ
イノシシ、シカ
イノシシ、シカ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ、シカ
イノシシ
シカ
イノシシ
イノシシ、シカ
イノシシ
イノシシ
イノシシ、シカ
設置された時期は、回答のあった 18 市町のうち 16 市町が平成 20 年度以降であった。
専用施設建設費は約 200 万円(高知県四万十市)~8,000 万円超(京都府京丹後市)と幅があった。
専用施設維持管理費は、年間約 5,000 円(広島県呉市)~970 万円超(京都府京丹後市)と幅があ
った。広島県呉市への問合せでは、
「施設が民間所有であるため、行政としては保険料程度しか支
払っていない」とのことであり、施設運営形態により維持費は大きく異なっていると考えられる。
専用施設所有者は、20 件中 11 件が民間、市町村が 7 件、民間及び市町村が 1 件、広域行政が
1 件であった。
また、これら施設の運営等に関する課題について以下の意見が寄せられ、販売ルートや安定し
た供給量の確保、品質等の課題が挙げられた。
表 3.2.8
番号
103
113
114
117
119
127
128
130
134
140
市町村名
千葉県鴨川市
京都府京丹後市
和歌山県日高川町
鳥取県西伯郡南部町
島根県松江市
愛媛県西予市
愛媛県今治市
福岡県糸島市
長崎県佐世保市
鹿児島県伊佐市
食肉加工処理施設に関する課題
課題
利用率の向上。販売ルートの確保。
シカ肉の熟成期間の関係等からシカの受け入れ調整をしなければならない。
売上げが課題(まだまだ普及が必要)
。人件費。
品質向上。
肉の確保及び流通先の開拓。
品質の良い個体の安定した搬入と、解体加工した精肉の出荷先の確保。
販売ルートの確保。持ち込まれた肉の品質。
食肉の安全性確保。食肉の安定供給。販売先の開拓・確保。
販路拡大。処理に適した個体の確保。
個体搬入の制限や山の生物であり捕獲が容易でないため、原材料の搬入が不安定。
24
4) 食肉加工品販売施設
食肉加工品販売施設に関する回答があったのは、4 市町村であった。このうち、
「専用施設を所
有している」との回答があったのは、表 3.2.9 に示す 2 市町村であった。
京丹後市の施設は食肉加工処理施設と兼用であり、イノシシ及びシカの冷凍肉の販売を行って
いる。
課題としては、京丹後市から、「シカ肉の熟成期間の関係等からシカの受け入れ調整をしなけ
ればならない」、
「販路の拡大を図るための地元飲食店でのメニュー化、郷土料理としての定着化」
が挙げられている。
表 3.2.9
番号
102
113
市町村名
栃木県那珂川町
京都府京丹後市
食肉加工品販売施設(専用施設)に関する回答結果
専用施設
設置年
H23
H24
専用施設
建設費
未記入
80,278,000
専用施設
維持管理費
専用施設
所有者
未記入
市町村
9,772,000 市町村
処理対象
鳥獣種名
未記入
イノシシ、シカ
また、既存施設を利用して加工品の販売を行っている市町村として、表 3.2.10 に示す 2 市町
村があった。
三重県大紀町ではイノシシ丼、イノシシまんじゅう、シカコロッケ、シカカレーの販売を、広
島県呉市ではパック詰めしたイノシシ精肉の販売を行っている。
課題としては、大紀町から「地域づくり団体が施設運営しているが、高齢化・後継者不足」が
挙げられている。
表 3.2.10
番号
市町村名
施設
設置年
110
三重県大紀町
H23
124
広島県呉市
H23
食肉加工品販売施設(既存施設利用)に関する回答結果
既存施設
廃校の給食調
理室を改築
ロッジ使用
専用施設
建設費
専用施設
維持管理費
専用施設
所有者
処理対象
鳥獣種名
5,500,000
未記入
市町村
イノシシ、シカ
未記入
未記入
市町村
イノシシ
25
(6) 問 5
有害鳥獣捕獲個体の処理・利活用に関する課題
《設問》
有害鳥獣捕獲個体の処理、利活用について、課題等ありましたら教えて下さい。
区分
返信数
処理施設所有市町村
伊豆獣害対策連絡会
合計
回答市町村数
26
10
36
14
3
17
回答数
(複数回答なし)
14
3
17
有害鳥獣捕獲個体の処理・利活用に関する課題として、以下に示す意見が寄せられた。
表 3.2.11
整理
番号
有害鳥獣捕獲個体の処理・利活用に関する課題
市町村名
課題等
102 栃木県那珂川町
放射能の問題
現段階での利用率が低いため、利用率の向上を図る必要がある。また、加工後の食
肉の販売ルートが確立されておらず、自家消費となっているため、体制を整えるこ
103 千葉県鴨川市
とが必要。放射性物質検査の結果、千葉県内のイノシシ肉について出荷停止となっ
ており、一部解除を含め安全性を保障するような対応が求められている。
市内全域で毎年約 2000 頭のシカ、イノシシが捕獲されている。加工センターへの
109 静岡県伊豆市
搬入もあるが、それ以外は狩猟者が自家消費するか、山中埋設で処理され、その負
担が大きい。衛生面からも専用の処理施設が必要と思われる。
処理については焼却炉の整備を行い、また、食肉利用についても、個人において、
110 三重県大紀町
食肉処理加工所及び、地域づくり団体・道の駅にて、加工及び販売を行なっている。
ただし、全体的に高齢化、後継者不足は否めなく課題となっている。
シカ肉に対する市民の意識が低いため、地域でシカ肉が食せたり、身近に販売店が
113 京都府京丹後市
必要だと思われるが、スタッフ等の関係で思うように肉の流れが作れない。
肉の確保と流通先の新規開拓が必要と思われる。猟友会の高齢化、会員の減少につ
119 島根県松江市
いても対策が必要である。
捕獲については担い手不足で猟友会の平均年齢が上がってきている。食肉加工に向
121 島根県安来市
けての体制不足。イノシシ肉の流通ルート不足。
捕獲したイノシシが全て肉として処理できるものではなく、又、良質な肉によるブ
ランド化を目指していることから、安定供給が今後の課題である。加工品としてジ
123 岡山県吉備中央町
ャーキーやウインナー、又、皮を活用した小物類等の製品化を研究しており、新た
な地域特産品として期待している。
126 愛媛県上島町
天然イノシシのため、数量に限りがある。
127 愛媛県西予市
品質の良い個体の安定した搬入と解体加工した精肉の出荷先の確保
【処理】処理施設の経営安定、武雄産いのしし肉の安全性確保(細菌等検査)が重要
【利活用】特産品化の促進及び無駄な部位肉の有効活用、地元でのPR(試食会・
料理教室等)…地元ではイノシシ肉を食べる習慣が無い為
133 佐賀県武雄市
都市圏でのPR(イベントでの試食・販売)、駆除意欲の向上、地元団体と協力・
連携 ⇒ 地域の活性化
個体の処理は、焼却、埋設、自家消費のほか、一部販売目的に処理加工している。
134 長崎県佐世保市 特に販売用は専用施設で行っているが、販路が拡大できず、施設の維持管理費、人
件費を確保するのが難しい状況。
現在、処理は従事者が各自で行っている。処分施設や食肉加工施設、肉食としての
買取制度を希望する声も大きいが、有害鳥獣捕獲のみでは、原材料の安定供給は難
しく、この様な施設運営は困難であると思われる。もし実施するなら、有害鳥獣捕
143 静岡県伊東市
獲なしでも運営できるような企業を誘致し、その中に有害捕獲分も入れてもらうよ
うな仕組みでないと難しいと思っている。何か良いやり方があれば知りたい。
26
3.3 成分検査
3.3.1 成分検査結果
南伊豆町内で捕獲した 4 頭計 8 検体(モモ 2 検体、ロース 2 検体、バラ 2 検体、ヒレ 2 検体)の
分析結果について、栄養成分(一般成分、無機成分)と風味成分(脂肪酸、遊離アミノ酸、核酸)に
区分して整理した。
(1) 一般成分
一般成分の検査結果は、以下に示すとおりである。
表 3.3.1
検査項目
水分(g/100g)
たんぱく質(g/100g)
脂質(g/100g)
灰分(g/100g)
炭水化物(g/100g)
エネルギー(kcal/100g)
カルシウム(mg/100g)
鉄(mg/100g)
個体情報
(捕獲日、性別、産地)
一般成分検査結果
個体 3 個体 1
個体 2
個体 3
個体 2 個体 1
モモ 1 モモ 2 ロース 1 ロース 2 バラ 1 バラ 2
72.9
68.6
55.5
35.4
52.3
38.5
20.1
19.8
16.4
10.5
14.0
11.9
6.1
12.3
27.5
53.0
34.9
49.1
1
1
0.8
0.4
0.6
0.4
0
0
0
0.7
0
0.1
135
190
313
522
370
490
2.4
2.6
2.4
2.6
2.6
2.2
2.5
4.2
15
18
2.3
2.7
H25.1 H24.11
H25.1
H25.1
H25.1 H24.11
オス
メス
メス
メス
オス
メス
二条
上小野
一条
上小野
二条
一条
個体 2 個体 4
ヒレ 1 ヒレ 2
74.9
72.2
21.3
19.4
2.8
7.5
1.1
1.1
0
0
110
145
2.7
3.4
2.8
3
H25.1
H25.1
メス
メス
加納
上小野
平均
58.8
16.7
24.2
0.8
0.1
284.4
2.6
6.3
主要な成分は水分■、たんぱく質■、脂質■で、灰分と炭水化物はわずかに含まれる程度であ
った。水分とたんぱく質、脂質についてみると、多くの試料で水分が最も多く含まれていた。
部位ごとの傾向は、モモとヒレは水分が多く、次いでたんぱく質、脂質の順であり、この 2 つ
の部位は成分が類似の傾向にあった。一方、ロースとバラは他の部位と比較して脂肪が多く、個
体によっては脂質が水分を上回るものがみられた。
100
90
80
重量(g/100g)
70
60
脂質(g/100g)
50
たんぱく質(g/100g)
水分(g/100g)
40
30
20
10
0
モモ1
モモ2
ロース1
図 3.3.1
ロース2
バラ1
バラ2
ヒレ1
ヒレ2
水分・たんぱく質・脂質検査結果
エネルギーについては、脂質の多いロースとバラで高く、脂質の少ないモモとヒレでは低い傾
向があった。カルシウムについては、部位毎の差はほとんどなかったが、鉄はロースで高い傾向
があった。
27
(2) 風味成分
1) 脂肪酸
脂肪酸の検査結果は、以下に示すとおりである。
イノシシ肉の主な脂肪酸はオレイン酸■、パルミチン酸■、ステアリン酸■、リノール酸■で、
この 4 種で脂肪酸組成全体の約 90%を占めるとされており(久家,2002)、今回の分析結果もこの 4
種で 90%以上を占める結果となった。
なお、脂肪酸の割合については、部位ごと、個体ごと、捕獲時期ごとに大きな違いはみられな
かった。
表 3.3.2
検査項目
脂肪酸検査結果
個体 3
個体 1
個体 2
個体 3
個体 2
個体 1
個体 2
個体 4
モモ 1
モモ 2
ロース 1
ロース 2
バラ 1
バラ 2
ヒレ 1
ヒレ 2
平均
C18:3n3(α-リノレン酸)
0.8
1.5
1.0
0.5
1.0
0.9
2.2
1.8
1.2
C16:1(パルミトレイン酸)
4.2
3.2
4.7
4.2
5.0
3.3
2.3
3.4
3.8
C14:0(ミリスチン酸)
1.2
1.7
2.6
1.4
2.9
1.7
1.1
1.3
1.7
C18:2n6cis(リノール酸)
7.4
25.3
5.7
4.0
5.2
11.2
20.5
10.1
11.2
C18:1n9cis(オレイン酸)
42.4
30.8
41.4
45.9
39.2
38.2
31.5
38.6
38.5
C18:0(ステアリン酸)
13.9
10.9
14.6
14.0
14.4
14.4
15.0
15.4
14.1
26.5
26.8
C16:0(パルミチン酸)
個体情報
(捕獲日、性別、産地)
26.4
H25.1
メス
一条
23.5
H24.11
オス
二条
27.9
H25.1
メス
上小野
28.5
H25.1
メス
一条
30.6
H25.1
メス
上小野
28.4
H24.11
オス
二条
22.4
H25.1
メス
上小野
H25.1
メス
加納
単位)g/脂肪酸 100g
100%
90%
80%
70%
60%
C18:3n3(α-リノレン酸)
C16:1(パルミトレイン酸 )
50%
C14:0(ミリスチン酸)
C18:2n6cis(リノール酸)
40%
C18:0(ステアリン酸)
C16:0(パルミチン酸)
30%
C18:1n9cis(オレイン酸)
20%
10%
0%
モモ1
H25.1
個体3 メス
一条
モモ2
H24.11
個体1 オス
二条
ロース1
H25.1
個体2 メス
上小野
ロース2
H25.1
個体3 メス
一条
図 3.3.2
バラ1
H25.1
個体2 メス
上小野
バラ2
H24.11
個体1 オス
二条
脂肪酸検査結果
28
ヒレ1
H25.1
個体2 メス
上小野
ヒレ2
H25.1
個体4 メス
加納
2) アミノ酸
たんぱく質の合成に必要な 20 種のアミノ酸の検査結果は、以下に示すとおりである。
表 3.3.3
検査項目
非必須アミノ酸
グリシン
アラニン
チロシン
セリン
シスチン
グルタミン酸
グルタミン
アスパラギン酸
アスパラギン
アルギニン
プロリン
必須アミノ 酸
非必須アミノ酸小計
トレオニン
バリン
メチオニン
イソロイシン
ロイシン
フェニルアラニン
トリプトファン
リジン
ヒスチジン
703
12
9
4
6
11
19
-
個体情報
(捕獲日、性別、産地)
309
4
4
2
2
4
16
302
1
1
1
178
5
4
2
3
6
15
-
-
3
2
3
1
48
21
21
54
48
44.7
226
251
162
512
H25.1
H25.1 H24.11 H25.1
メス
メス
オス
メス
一条
上小野
二条
上小野
251
H25.1
メス
加納
364.2
-
2
1
86
43
25
789
352
H25.1
H24.11
メス
オス
一条
二条
327
H25.1
メス
上小野
2
3
8
2
12
-
8
3
141
2
2
-
-
203
5
4
3
3
6
16
6.6
95.4
22.1
6.0
5.4
165.5
3.2
10.4
4.8
0.1
10
3
2
17
230
1
1
平均
458
5
5
3
4
8
14
11
4
-
19
6
必須アミノ酸小計
合計
アミノ酸検査結果
個体 3
個体 1
個体 2
個体 3
個体 2 個体 1 個体 2 個体 4
モモ 1
モモ 2 ロース 1 ロース 2 バラ 1 バラ 2 ヒレ 1 ヒレ 2
12
7
6
5
5
3
7
8
150
56
98
53
56
69
210
71
110
3
1
4
1
2
52
4
14
6
6
2
2
6
6
12
6
2
6
1
360
210
190
91
160
59
160
94
8
3
2
2
1
24
13
5
10
4
4
10
13
12
5
2
5
2
2
5
5
1
-
8
3
319.5
4.4
3.8
2.5
3.3
5.3
14.6
8.0
2.9
単位)mg/100g
凡例)黄色:うま味成分
アミノ酸のうち、久家(2002)でうまみ成分として挙げているグリシン、アラニン、チロシン、
グルタミン酸は、南伊豆産のイノシシからも含有が確認された。このうちアラニンは全ての試料
に比較的多く含まれていた。
部位毎のアミノ酸含有量は、モモとヒレに多く含まれる場合があった。
1000
900
800
重量(mg/100g)
700
600
500
400
非必須アミノ酸合計
必須アミノ酸合計
300
200
100
0
モモ1
H25.1
個体3 メス
一条
モモ2
H24.11
個体1 オス
二条
ロース1
H25.1
個体2 メス
上小野
ロース2
H25.1
個体3 メス
一条
図 3.3.3
バラ1
H25.1
個体2 メス
上小野
バラ2
H24.11
個体1 オス
二条
ヒレ1
H25.1
個体2 メス
上小野
脂肪酸検査結果
29
ヒレ2
H25.1
個体4 メス
加納
主なアミノ酸の割合は以下に示すとおりで、全ての試料でグルタミン■とアラニン■の割合が
多く、この 2 つのアミノ酸で含有量の 60%以上を占める結果となった。
アラニンは運動時に筋肉から肝臓を経て糖の供給(運動の持続)に関わることが、グルタミンは
消化管のエネルギー源や修復に利用されるなど重要な働きをすることが知られている(高
橋 ,2002)。 ま た 、 ラ ッ ト を 対 象 と し た 実 験 結 果 か ら 、 ア ラ ニ ン と グ ル タ ミ ン を 同 時 に 摂 取
(1:12g/kg)するとアルコールの代謝の改善がみられるのに加えて、肝障害の改善にも広く有効で
ある可能性が高いとされている。
100%
90%
80%
70%
60%
その他アミノ酸
アスパラギン
50%
フェニルアラニン
40%
チロシン
30%
アラニン
グルタミン
20%
10%
0%
モモ1
H25.1
個体3 メス
一条
モモ2
H24.11
個体1 オス
二条
ロース1
H25.1
個体2 メス
上小野
ロース2
H25.1
個体3 メス
一条
バラ1
H25.1
個体2 メス
上小野
図 3.3.4
バラ2
H24.11
個体1 オス
二条
ヒレ1
H25.1
個体2 メス
上小野
ヒレ2
H25.1
個体4 メス
加納
アミノ酸の割合
3) 核酸
うまみ成分の核酸の検査結果は、以下に示すとおりである。
イノシン酸については、部位による特定の傾向は見られなかったが、個体ごとでは個体 2(上小
野産♀、ロース 1)で多く、個体 3(一条産♀、モモ 1、ロース 2)では少ない結果であり、個体差が
大きい結果となった。なお、グアニル酸は全ての個体で検出されなかった。
表 3.3.4
検査項目
5’-イノシン酸(mg/100g)
5’-グアニル酸(mg/100g)
個体情報
(捕獲日、性別、産地)
核酸検査結果
個体 3
モモ 1
個体 1
個体 2
個体 3
個体 2 個体 1
モモ 2 ロース 1 ロース 2 バラ 1 バラ 2
7
47
120
16
76
65
H25.1 H24.11
H25.1
H25.1
H25.1 H24.11
オス
メス
メス
メス
オス
メス
二条
上小野
一条
上小野
二条
一条
30
個体 2 個体 4
ヒレ 1 ヒレ 2
120
110
H25.1
H25.1
メス
メス
加納
上小野
平均
70.1
-
3.3.2 他地域の検査事例との比較
(1) 比較対象
南伊豆町産のイノシシ成分検査結果を、部位毎に以下に示す既存の検査事例との比較を行った。
表 3.3.5 比較対象としたイノシシ肉既存検査事例
出典
種類
分析部位等
日本食品標準成分表
イノシシ
脂身付、生
・日本食品標準成分表 2010*1
ロース、脂身付、生
・五訂増補 日本食品標準成分表
バラ、脂身付、生
脂肪酸成分表編 *2
ブタ大型種
モモ、脂身付、生
・日本食品標準成分表準拠
ヒレ、赤肉、生
アミノ酸成分表 2010*3
背ロース
夏捕獲個体
モモ
バラ
島根県産のイノシシ肉分析結果*4
イノシシ
背ロース
冬捕獲個体
モモ
バラ
*1:http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2011/06/01/1299011_1.pdf
*2:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/houkoku/1299179.htm
*3:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/houkoku/1298881.htm
*4:http://www4.ocn.ne.jp/~jseafood/fusou2.index.html
表 3.3.6
項目
一般成分
脂肪酸組成
アミノ酸
島根県
既存事例との比較内容
日本食品標準成分表
イノシシ
ブタ
比較内容
主要な成分(水分、たんぱく質、
脂質)を比較
モモ、ロース、バラ
○*
モモ、バラ、ロース
バラ、モモのみ
○*
モモ、バラ、ロース バラ、モモのみ比較
モモ、バラ、ロース
なし
ロースのみ
*:部位の記載がなかったため、数値が近似しているロースのデータと比較した
一部の分析成分は本調査と異なる
31
うま味成分を比較
(2) 一般成分比較
1) モモ
モモの一般成分の比較結果は、以下に示すとおりである。
イノシシの結果についてみると、全般的にたんぱく質■は量・割合とも試料による変化が少な
く、モモ肉に安定して含まれている成分であると考えられる。一方、脂質■について見ると、南
伊豆町産イノシシのモモは、島根県産イノシシのモモより脂質の割合がやや高く、ブタ大型種の
モモと類似した結果となった。
表 3.3.7
性別等
雌モモ 1
雄モモ 2
雌モモ
雄モモ
雄モモ
雌モモ
雌モモ
雌モモ
雌モモ
雌モモ
雄モモ
ブタ大型種モモ
モモの一般成分(水分・たんぱく質・脂質)事例比較結果
捕獲時期
H25.1
H24.11
H13.2
H13.2
H14.2
H14.2
H13.7
H13.8
H13.9
H13.9
H13.9
-
産地
水分
一条
二条
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
-
たんぱく質
72.9
68.6
75.3
73.4
76.5
73.5
76.0
78.7
75.9
78.1
78
68.1
脂質
20.1
19.8
21.8
21.8
22.3
22.8
20.6
20.3
20.6
20.0
19.5
20.5
6.1
12.3
2.6
4.9
1.6
3.2
2.6
0.8
2.2
1.2
1.6
10.2
単位)g/100g
100%
90%
80%
70%
60%
50%
脂質
40%
たんぱく質
30%
水分
20%
10%
0%
H25.1 H24.11 H13.2 H13.2 H14.2 H14.2 H13.7 H13.8 H13.9 H13.9 H13.9 ブタ
雌モモ 雄モモ2 雌モモ 雄モモ 雄モモ 雌モモ 雌モモ 雌モモ 雌モモ 雌モモ 雄モモ 大型種
一条
二条 島根県 島根県 島根県 島根県 島根県 島根県 島根県 島根県 島根県 モモ
図 3.3.5
モモの一般成分事例比較結果
32
2) ロース
ロースの一般成分の比較結果は、以下に示すとおりである。
イノシシの結果について比較すると、捕獲時期が異なるものの、南伊豆町産イノシシのロース
は、島根県産イノシシのロースと比べて脂質■が非常に多い点が特徴的であり、ブタ大型種のロ
ースよりも多かった。
表 3.3.8
ロースの一般成分(水分・たんぱく質・脂質)事例比較結果
性別等
雌ロース 1
雌ロース 2
雌ロース
雄ロース
雄ロース
雌ロース
雌ロース
雌ロース
雌ロース
雌ロース
雄ロース
イノシシ
日本標準食品成分表
ブタ大型種
ロース
捕獲時期
H25.1
H25.1
H13.2
H13.2
H14.2
H14.2
H13.7
H13.8
H13.9
H13.9
H13.9
産地
上小野
一条
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
水分
55.5
35.4
75.5
72.9
74.8
73.8
75.2
77.7
74.9
77.9
77.3
たんぱく質
16.4
10.5
21.1
22.2
22.6
21.5
20.8
21.2
20.4
20.0
19.6
脂質
27.5
53.0
3.6
4.4
2.4
3.7
3.1
0.9
5.1
1.2
2.1
-
-
60.1
18.8
19.8
-
-
60.4
19.3
19.2
単位)g/100g
南伊豆町産は脂質の割合が非常に高い
100%
90%
80%
70%
60%
50%
脂質
たんぱく質
40%
水分
30%
20%
10%
0%
イノシシ
H13.9
H13.9
H13.9
H13.8
H13.7
H14.2
H14.2
H13.2
H13.2
H25.1
H25.1
雌ロース1 雌ロース2 雌ロース 雄ロース 雄ロース 雌ロース 雌ロース 雌ロース 雌ロース 雌ロース 雄ロース 日本標準
島根県 食品分表
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
一条
上小野
図 3.3.6
ロースの一般成分事例比較結果
33
ブタ
大型種
ロース
3) バラ
バラの一般成分の比較結果は、以下に示すとおりである。
イノシシの結果について比較すると、捕獲時期が異なるものの、南伊豆町産イノシシのバラは、
ロース同様、島根県産イノシシのバラと比べて脂質■が非常に多い点が特徴的であり、ブタ大型
種のバラよりも多かった。
表 3.3.9
性別等
雌バラ 1
雄バラ 2
雌バラ
雄バラ
雄バラ
雌バラ
雌バラ
雌バラ
雌バラ
雌バラ
雄バラ
ブタ大型種バラ
バラの一般成分(水分・たんぱく質・脂質)事例比較結果
捕獲時期
H25.1
H24.11
H13.2
H13.2
H14.2
H14.2
H13.7
H13.8
H13.9
H13.9
H13.9
-
産地
上小野
二条
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
島根県
水分
52.3
38.5
73.6
67.3
73.9
73.5
71.1
79.6
72.4
78.6
76.9
50.4
たんぱく質
14.0
11.9
22.0
22.5
22.6
21.7
20.2
19.3
20.8
19.5
18.9
14.2
脂質
34.9
49.1
5.5
10.0
2.3
4.0
7.6
0.9
6.9
1.3
2.8
34.6
単位)g/100g
南伊豆町産は脂質の割合が非常に高い
100%
90%
80%
70%
60%
50%
脂質
40%
たんぱく質
水分
30%
20%
10%
0%
H25.1 H24.11 H13.2 H13.2 H14.2 H14.2 H13.7 H13.8 H13.9 H13.9 H13.9
ブタ
雌バラ1 雄バラ2 雌バラ 雄バラ 雄バラ 雌バラ 雌バラ 雌バラ 雌バラ 雌バラ 雄バラ 大型種
上小野 二条 島根県 島根県 島根県 島根県 島根県 島根県 島根県 島根県 島根県 バラ
図 3.3.7
バラの一般成分事例比較結果
34
(3) 脂肪酸組成比較
1) ロース
ロースの脂肪酸組成の比較結果は、以下に示すとおりである。
イノシシ肉の主な脂肪酸であるオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸の 4 種
で脂肪酸組成全体の約 90%を占めるとされているが、ブタも含め全ての試料においてこの傾向が
見られた。
表 3.3.10
ロースの脂肪酸組成事例比較結果
ロース 2
H25.1
個体 3 メス
一条
ロース 1
H25.1
個体 2 メス
上小野
脂肪酸組成
C14:0(ミリスチン酸)
C16:0(パルミチン酸)
C16:1(パルミトレイン酸)
C18:0(ステアリン酸)
C18:1n9cis(オレイン酸)
C18:2n6cis(リノール酸)
C18:3n3(α-リノレン酸)
合計
2.6
27.9
4.7
14.6
41.4
5.7
1
97.9
1.4
28.5
4.2
14.0
45.9
4.0
0.5
98.5
夏肉
ロース
島根県
0.8
19
1.8
25.0
31.6
14.2
1.7
94.1
冬肉
ロース
島根県
1.2
22.5
2.4
21.7
36.4
9.1
1.5
94.8
ブタ
大型種
ロース
イノシシ
日本標準
食品成分表
1.6
25.8
1.9
16.2
40.3
10.8
0.5
97.1
単位)g/脂肪酸 100g
100%
90%
80%
70%
C18:3n3(α-リノレン酸)
60%
C16:1(パルミトレイン酸)
50%
C14:0(ミリスチン酸)
40%
C18:2n6cis(リノール酸)
30%
C18:0(ステアリン酸)
C16:0(パルミチン酸)
20%
C18:1n9cis(オレイン酸)
10%
0%
ロース1
H25.1
個体2 メス
上小野
ロース2
H25.1
個体3 メス
一条
図 3.3.8
夏肉
ロース
島根県
冬肉
ロース
島根県
ブタ
大型種
ロース
イノシシ
日本標準
食品分表
ロースの脂肪酸組成事例比較結果
35
1
22.1
3.3
9.2
47.7
12.8
0.3
96.4
2) バラ
バラの脂肪酸組成の比較結果は、以下に示すとおりである。
イノシシ肉の主な脂肪酸であるオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸の 4 種
が脂肪酸組成全体の約 90%を占めるとされているが、ロース同様、ブタも含め全ての試料におい
てこの傾向が見られた。
表 3.3.11
バラの脂肪酸組成事例比較結果
バラ 2
バラ 1
H24.11
H25.1
個体 2 メス 個体 1 オス
二条
上小野
脂肪酸組成
C14:0(ミリスチン酸)
C16:0(パルミチン酸)
C16:1(パルミトレイン酸)
C18:0(ステアリン酸)
C18:1n9cis(オレイン酸)
C18:2n6cis(リノール酸)
C18:3n3(α-リノレン酸)
合計
2.9
30.6
5.0
14.4
39.2
5.2
1.0
98.3
夏肉バラ
島根県
1.7
28.4
3.3
14.4
38.2
11.2
0.9
98.1
冬肉バラ
島根県
0.8
18.9
1.8
20.8
36.1
14.0
1.7
94.1
ブタ大型種
バラ
1.2
22.3
2.3
22.4
36.0
9.1
1.6
94.9
単位)g/脂肪酸 100g
100%
90%
80%
70%
C18:3n3(α-リノレン酸)
60%
C16:1(パルミトレイン酸)
50%
C14:0(ミリスチン酸)
40%
C18:2n6cis(リノール酸)
30%
C18:0(ステアリン酸)
C16:0(パルミチン酸)
20%
C18:1n9cis(オレイン酸)
10%
0%
バラ1
H25.1
個体2 メス
上小野
バラ2
H24.11
個体1 オス
二条
図 3.3.9
夏肉バラ
島根県
冬肉バラ
島根県
ブタ
大型種
バラ
バラの脂肪酸組成事例比較結果
36
1.6
25.1
2.7
13.2
43.0
11.3
0.5
97.4
(4) アミノ酸比較
アミノ酸については、久家(2002)でイノシシに含まれるとされるうま味成分 4 種を対象に比較
を行った。
南伊豆町産と島根県産と比較すると、ロース及びバラについては、南伊豆町産はアラニンがほ
とんどを占めるのに対し、島根県産は 4 種類の成分が一定量以上出現する特徴があった。
表 3.3.12
部位
産地
一条
二条
島根県
島根県
上小野
一条
島根県
島根県
上小野
二条
島根県
島根県
モモ
ロース
バラ
捕獲時期
H25.1
H24.11
夏
冬
H25.1
H25.1
夏
冬
H25.1
H24.11
夏
冬
アミノ酸事例比較結果
グルタミン酸
12.0
6.0
23.5
18.6
2.0
13.4
22.4
13.9
31.4
グリシン
12.0
7.0
25.0
20.6
6.0
5.0
20.0
23.6
5.0
3.0
21.6
25.6
アラニン
150.0
56.0
65.4
79.1
98.0
53.0
52.2
51.7
56.0
69.0
62.0
72.1
チロシン
110.0
3.0
11.8
13.4
1.0
4.0
12.4
15.2
1.0
2.0
10.4
14.1
備考
個体 3 メス
個体 1 オス
個体 2 メス
個体 3 メス
個体 2 メス
個体 1 オス
単位)mg/100g
表 3.3.13
アミノ酸事例比較結果
部位
各部位の比較結果
・すべての試料でアラニンが多く含まれる。
・一条産の♀はアラニン、チロシンが他の
試料よりも著しく多い。
300
モモ
重量(mg/100g)
250
200
グリシン
150
チロシン
100
アラニン
グルタミン酸
50
0
モモ1
H25.1
個体3 メス
一条
モモ2
H24.11
個体1 オス
二条
夏肉
モモ
島根県
冬肉
モモ
島根県
150
ロース
重量(mg/100g)
120
90
グリシン
・すべての試料でアラニンが多く含まれる。
・島根県産は、4 種の成分が一定程度含まれ
るが、南伊豆産はアラニンがほとんどを
占める。
チロシン
60
アラニン
グルタミン酸
30
0
ロース1
H25.1
個体2 メス
上小野
ロース2
H25.1
個体3 メス
一条
夏肉
ロース
島根県
冬肉
ロース
島根県
150
バラ
重量(mg/100g)
120
グリシン
90
チロシン
アラニン
60
グルタミン酸
30
0
バラ1
H25.1
個体2 メス
上小野
バラ2
H24.11
個体1 オス
二条
夏肉
バラ
島根県
冬肉
バラ
島根県
37
・すべての試料でアラニンが多く含まれる。
・島根県産は、4 種の成分が一定程度含まれ
るが、南伊豆産はアラニンがほとんどを
占める。
3.3.3 他の畜肉及びシカ肉との比較
他の畜肉及びシカ肉と比較結果は、以下に示すとおりである。
南伊豆町産のイノシシ肉(モモ)は、シカ肉(前脚)よりも脂質とエネルギーが多く、他の畜肉(モ
モ)とは成分に大きな差はないがエネルギーは少ない結果となった。
表 3.3.14
成分
水分(g/100g)
たんぱく質(g/100g)
脂質(g/100g)
灰分(g/100g)
炭水化物(g/100g)
エネルギー(kcal/100g)
イノシシ肉と他の肉類との一般成分比較
イノシシ
(南伊豆町産
モモ肉の平均)
豚肉
(モモ)
70.8
20.0
9.2
1.0
0.0
162.5
68.1
20.5
10.2
1
0.2
183
牛肉
(モモ)
67.7
21.2
9.6
1
0.5
182
鶏肉
(モモ)
シカ肉
(前脚)
69
16.2
14
0.8
0
200
出典)畜肉:日本食品標準成分表 2010
牛肉‥輸入肉 もも 脂身つき 生、豚肉‥大型肉種 もも 脂身つき 生、鶏肉‥若鶏肉 もも 皮つき 生
シカ肉(前脚)‥唐沢ほか(2010)
38
74.6
22.3
1.5
1.1
0.5
101
3.4 需要調査
町内 5 件の精肉取り扱い店舗への聞き取り結果は、以下に示すとおりである。
《イノシシ肉取り扱い有無》
5 件のうち、過去も含めて取り扱いがあるとの回答が得られたのは、稲本精肉店だけで、その
他の店舗では取り扱いがなかった。
表 3.4.1
店舗
稲本精肉店
三浜屋
臼井肉店
浜店
マックスバリュー
下賀茂店
需要調査聞き取り調査結果(取り扱い有無)
取り扱い有無
取り扱い状況概要
・平成 24 年はペンションからの引き合いがあったため取り扱った。
・部位はロース、肩ロース、モモ、ヒレ等で、ある程度まとまった量を
卸した。
○
(H24 年のみ) ・価格は部位によって異なるが、平均 2,000 円/kg とした。
・昨年の取り扱いの際には店頭にも少量並べたが販売は芳しくなかっ
た。
×
―
×
―
×
―
×
―
《イノシシ肉取り扱い判断理由》
イノシシ肉を取り扱っていない理由としては、地域での需要が少ないことを挙げる店舗が多か
った。平成 24 年に取り扱った稲本精肉店からは、取り扱いにかなり手間がかかったため平成 25
年は取り扱っていないとの情報が得られた。
今後の取り扱いについては、予定なし又は取り扱い不明との情報が得られた。
表 3.4.2
店舗
稲本精肉店
三浜屋
臼井肉店
浜店
マックスバリュー
下賀茂店
需要調査聞き取り調査結果(取り扱い判断理由)
取り扱っていない理由
今後の取り扱い予定等
・平成 25 年もペンションから引き合いが来 ・不明
たが、昨年取り扱いにかなり手間がかか ・放血等の解体処理を適切に行えば臭みは
気にならない。また、調理する人が利用
ったので、今年は断った。
・地域の住民は臭みがあるイメージを持っ しやすい状態に加工すれば、需要は出て
くると思う。
ているので、購入しない人が多い。
・販売する場所の整備も、需要を増やす上
で必要と考えている。販売先や安定した
販路を確保することが、まず初めに必要
だろう。
・地域での需要が少ない。
・なし
・今後需要が増えるような事があれば取り
扱うことがあるかもしれないが、現在は
取り扱いを考えていない。
・地域での需要が少ない。
・不明
・なし
・地域での需要が少ない。
・捕獲されたイノシシの肉は、無料で地域 ・元々地元の民宿等からの引き合いがない
の知り合いに配られるため、買ってまで 上に、民宿自体が経営者の高齢化により
減っている。今後の、需要増加も期待で
利用する人はいない。
きない。
・マックスバリュー本部からの投入がない ・不明
ため。
39
3.5 動物用焼却炉に関する情報収集
3.5.1 イノシシ、シカの体サイズ及び重量
焼却が想定される哺乳類の中で、特に大型のイノシシ及びシカの体サイズ、重量等について以
下に整理した。
表 3.5.1
項目
頭胴長
イノシシの体サイズ及び重量
イノシシ
シカ
110~160cm
90~190cm
肩高
60~80cm
60~130cm
体重
50~150kg
25~130kg
0.66m2~1.28m2
0.54~2.47m2
面積(肩高×頭胴長)
40
3.5.2 焼却炉の設置、運用に関わる法令
焼却炉を運用する際に、焼却炉の規模、焼却能力よって法令の規制を受ける。規制によっては
煤煙や燃え殻などの測定や技術管理者を置くことが義務づけられる。焼却炉の運用に関わる法令
は以下に示すとおりである。
この法令に該当する焼却炉は設置前に都道府県知事等に届け出が必要になり、1~3 の法令に該
当する場合は排出ガス等の測定が毎年義務づけられており、測定費用が発生する。これらの法令
に該当しない焼却炉は届出不要型と呼ばれ、小型の焼却炉がこれにあたる。
基本的には焼却能力が 50kg/時間、火床面積が 0.5m2未満であれば届出は不要となるが、イノ
シシ及びシカを解体せずに焼却するためには比較的大型で、焼却能力が高い焼却炉が必要である
ため、ダイオキシン類対策特別措置法を始めとした法令に該当し、維持費用が発生することにな
る。
表 3.5.2
焼却炉の運用に関わる法令
該当基準
No.
法令
火床
焼却
面積
能力
対応
その他条件
測定項目
測定
回数
費用
許可申請(設置 ダ イ オ キ シ
ダイオキシ
1 ン類対策特
別措置法
煤煙分析、燃え殻(焼却
60 日前まで)、 ン
0.5m2
50kg/h
以上
以上
-
備考
灰)、煤じん(集じん)
煤煙分析、燃え
年1回
殻(焼却灰)、煤
780,000 260,000×3=780,000
/年
じん(集じん)
の測定
許可申請(設置 硫 黄 酸 化
・ばい煙測定
60 日前まで)、 物 、 窒 素 酸
33,000×2 回×2 種類
排 出 ガ ス の 測 化物
=132,000
定
2
大気汚染防
2.0m2
200kg/h
止法
以上
以上
・測定頻度
年 2 回 132,000
-
以上
/年
排出ガス量が 4 万 m3N/
時未満であり、継続し
て休止する期間が 6 ヵ
月以上の施設のばいじ
ん、窒素酸化物の測定
頻度:年1回以上
許可申請
ダイオキシ
ン(排ガス 年 1回
/年
中)
廃棄物の処
3
260,000
理および清
2.0m2
200kg/h
掃に関する
以上
以上
申請書(*技術管理者を
置かなければならな
い。)
一酸化炭素
-
・廃棄物処理施設設置許可
・法律で定められた設備の
法律
連続的
-
構造は申請の必要が無
い焼却炉に対しても適
用される
据え付け面積 設置の 7 日前
4 消防法
-
-
2m2 以上
までに届け出
・焼却炉の設置基準(安全
-
-
-
な距離の確保等)が各自
治体によって定められ
ている
定 格 出 力 着工 30 日前に
・今回情報収集した焼却炉
7.5kw 以上の 届け出
5 騒音規制法
-
-
には、基準に該当する規
送風機が装備
-
されているも
-
-
模の送風機は搭載され
ていない
の
費用出典)建設物価 2012 年 11 月版(建設物価調査会,2012)
41
3.5.3 資料収集結果
対象とした 3 社からの情報及び資料収集状況は、以下に示すとおりである。
なお、入手したカタログ等の資料は、資料編に収める。
表 3.5.3
会社
インシナー
工業
マルテック
DAITO 販売
株式会社
問い合わせ結果
電話問い合わせ内容
カタログ
・有害鳥獣駆除や食肉処理施設に関連した焼却炉を全国的
に販売している。
・補助金等の申請など設置に関わる経験がある。
・自治体単独で費用を負担するのではなく、県の農林水産
関係の部署に相談して補助金を得ることを提案。単独の
市町村が全額負担して購入する例は無く、周辺自治体や
猟友会などと協力して負担を抑えている。
・イノシシを焼却するのには、75kg/時間以上の焼却能力を
持つものが必要。処理量と利用頻度によって適する機種
が異なる。
・有害鳥獣用動物焼却炉を製作。設置場所、使用方法とい
った細かな条件に対応した設計を行うことが可能。
・動物用焼却炉は投入場所を上部、側面、台車方式から選
択可能。
・消防法の手続きやダイオキシンの測定などに対応可能。
・動物を焼却する場合は動物の焼却に適した方式の焼却炉
を使用することが望ましい。
・通常の焼却炉では完全に焼却できない可能性がある。
備考
入手
入手
入手
・有害鳥獣用焼却炉の具
体的な見積書を入手。
・鳥インフルエンザ対策
用移動式燃却炉を静岡
県に納入。
・三重県大紀町の食肉処
理施設に小型焼却炉を
納品。
問い合わせを行った結果、焼却炉設置検討の際に留意すべき点として以下の 3 点が挙げられる。
1.動物の焼却には専用の焼却炉が必要で、メーカーによっては細かな条件に対応して専用設計の
焼却炉を製作可能。
2.一度に何頭を処分するのか、毎日使用するのかといった処理量と利用頻度がわかると適切な機
種を選択できる。
3.補助金の交付や、他の自治体や団体と連携して設置費用を削減することが可能である。
42
3.5.4 機種
各メーカーからの情報とカタログ情報をもとに、表 3.5.5 に機種を、各メーカーの特徴を表
3.5.6 に整理した。
なお、DAITO 社では大型の動物を焼却可能なものとしてペット用火葬炉を製造しているが、法
令対応の関係で廃棄物を焼却することはできないため、ここでは割愛した。
表 3.5.4
メーカー
型式
AK-75
インシナー
工業
AK-100
AK-150
AK-190
CA-21 型
マルテック
CAB-21 型
DAITO
BNG-500
用途
動物
汚物
畜産
豚
猪
鹿
生ゴミ
動物
焼却
能力
(kg/h)
動物用焼却炉一覧
火床
面積
(m2)
75
2m2 以下
100
150
190
2m2 以上
参考価格
(円)
備考
ダイオキシン、
消防
ダイオキシン、
大気汚染、廃棄
約 20,000,000 物、消防
-
上部投入型
ダイオキシン、 (一括投入量 500kg 回)
消防
上部投入・台車投入型
25,500,000
(一括投入量 500kg 回)
届出不要だが、イノシシ
3,900,000 なし
及びシカの焼却には解
体が必要
100~140*
24,500,000
2
2m 以下
100~140*
16
対応が必要な
法令
2m2 以下
*:焼却物の発熱量や水分量によって変化
法令)ダイオキシン:ダイオキシン類対策特別措置法、大気汚染:大気汚染防止法、
廃棄物:廃棄物の処理および清掃に関する法律、消防:消防法
表 3.5.5
メーカー
インシナー
工業
マルテック
DAITO
各メーカーの特徴
型式
AK-75
AK-100
AK-150
特徴
【利点】
・実情に応じて機種を選択することが可能である。
・AK-75 は法令対応のための維持コストが安い。
・AK-100 以上のものは大型で複数頭のイノシシ及びシカの処分が可能。
【欠点】
AK-190
・AK-75 型は維持コストが安いが焼却能力が低い。
・AK-100 以上のものは大気、廃棄物の法令に対応するため維持コストがかかる。
CA-21 型 【利点】
・比較的大型で、複数のイノシシ及びシカを同時に処分可能である。
・火床面積が狭く大気、廃棄物の法令に対応するための維持コストがかからない。
・廃棄物の投入方式は上部からと側面から可能。CAB-21 型は廃棄物を側面から台
車で出し入れ可能で、投入および灰の処理が容易。
CAB-21 型
・オプションで軽トラックやリフト、クレーン等での投入が可能。
・これ以外にも実情に合わせた焼却炉を設計可能。
【欠点】
・特になし。
【利点】
・法令対応の届け出が不要で、購入後も有害物質測定のための費用がかからない。
BNG-500
【欠点】
・イノシシ及びシカを処理する際は解体が必要で、一度に複数個体の処理は困難。
43
各メーカーの焼却炉は、以下のとおりである。
AK 型(インシナー工業)
BNG-500 型(DAITO)
CA21 型(マルテック)
廃棄物を上部と側面から投入可能
CAB21 型(マルテック)
側面入口が台車式になっている
図 3.5.1
動物用焼却炉
44
4. 解析
4.1 現状の処分方法による影響
現在行われている捕獲者による山林の任意の場所への廃棄では、内臓や肉塊等に分解された残
渣は概ね 10 時間程度でタヌキ等により採食され、廃棄場所から消失している。
このことから、廃棄残渣が堆積して周辺に悪臭を放ったり、水質を汚濁する等の大きな問題は
発生していないと推察される。
4.2 今後の捕獲数推計からの影響
現在、南伊豆町で最も多く有害捕獲されているイノシシは、平成 24 年度は気象要因により約
500 頭まで捕獲頭数が増加したものの、平成 17 年度~平成 23 年度の 7 年間は年間 100 頭~250
頭程度で推移している。現状の捕獲努力量であれば、概ね年間 100~250 頭程度で維持され、継続
的に処分量が増加していくことはないと推察される。逆に、後述するシカの増加の影響によって
は、捕獲数・処分量が減少する可能性も考えられる。
一方、シカについては、平成 23 年度が 5 頭、平成 24 年度が 2 頭であり、これまではほとんど
捕獲されていない。しかし、後述するとおり、有識者からは「今後 5 年先を考えるとシカの方が
問題になってくると思われる。シカ対策も早めに検討しておくのが望ましい。」との助言が得られ
ており、今後は捕獲数及び処分量の増加が予想される。
これらのことから、今後のシカの捕獲個体数によっては、山林等の任意の場所への廃棄量が増
加し、影響が発生する可能性も考えられるため、シカ捕獲数の推移を注視していく必要がある。
45
5. まとめ
5.1 調査結果とりまとめ
本業務で実施した各調査結果の総括は、以下のとおりである。
表 5.1.1
項目
処分状況の把握
回答
被害
状況
被害
対策
有害
捕獲数
他市町村
事例把握
処理
状況
処理
利活用
成分検査
需要調査
焼却炉情報収集
調査結果総括
内 容
【猟友会ヒアリング情報】
・猟友会会員の処分方法については詳細に把握されていない。
・残渣を廃棄した場合は、比較的早く無くなることがある。
・捕獲個体の処分手段を持たない会員は処理施設の必要性を感じ、自ら獲物を解体
することができる会員は必要性が低いと感じている可能性がある。
・処理施設を作り、イノシシ肉を販売する場合は、販売価格が高くなる可能性があ
る。
【センサーカメラ調査結果】
・哺乳類はタヌキとイノシシ、鳥類はトビとカラス類が残渣を食べる。
・山林ではタヌキが頻繁に訪れ、開放地(山際の造成裸地)ではカラス類の飛来が多
い。
・解体した後の肉や内臓は、10 時間程度で消失。処分個体を丸ごと廃棄した場合は、
肉や内臓に比べて消失までに時間がかかる(5 日~10 日以上)。
・50 通送付のうち 36 通の返信あり(返信率 72.0%)
・農産物被害状況は、イノシシ、サル、シカ、カラスの被害が多い。被害額では、
稲、果樹、野菜、いも類が多い。
・林産物被害状況は、イノシシとシカの被害が多い。タケノコ、シイタケ等に被害
が発生している。
・対策として、猟友会委託の駆除、駆除報奨金・奨励金交付、防護柵設置補助金交
付を行っている市町村が多い。
・年間(一部は年度途中集計)では、イノシシは 500 頭以下、サルは 50 頭以下、シカ
は 500 頭以下の捕獲数の市町が多い。
・最も多いのは、イノシシが長崎県佐世保市の 5,210 頭、シカが京都府京丹後市の
1,637 頭、サルは千葉県鴨川市の 395 頭。
・イノシシは、処理施設を所有する市町村では埋設(山林等の任意場所で処理)、自
家消費、食肉加工処理施設での処理が同程度、伊豆地域では自家消費の傾向が強
い。
・サルは、処理施設の有無を問わず、埋設(山林等の任意場所で処理)が多い。
・シカは、処理施設を所有する市町村では埋設(山林等の任意場所で処理)がやや多
く、伊豆地域では自家消費の傾向がやや強い。
・焼却施設:専用施設を所有している市町村は 1 箇所。
・埋設場所:専用の埋設場所を設置している市町村なし。
・食肉加工処理施設:専用施設を所有している市町村は 21 市町村。
建設費は約 200 万~8,000 万超と幅がある。施設の所有者は民間が多い。
課題として販売ルートや安定した供給量の確保、品質等が上がっている。
・南伊豆町産のイノシシ肉 8 検体を分析。
・島根県産等との比較では、捕獲時期が異なるものの、ロース及びバラの脂質の割
合が高い。
・町内 5 店舗のうち、1 店舗で 1 年間だけイノシシ肉取り扱いの情報あり。
・地域での需要が少ないため、取り扱っていない店舗が多い。
・3 社からカタログ等の試料及び情報を入手。
・イノシシ及びシカを解体せずに焼却処分可能な焼却炉は大型で、維持・管理に費
用がかかる。
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5.2 有識者ヒアリング
有識者の大橋正孝氏(静岡県森林・林業研究センター上席研究員)を対象に行った県内他地域で
の利活用取り組み状況や課題等に関する聞き取り調査では、以下に示す助言が得られた。
表 5.2.1
項目
有識者ヒアリング結果
内 容
県 内 の 利 活 用 事 ・静岡県内で利活用を積極的に進めているのは伊豆市だけである。施設的には全国
例について
的に見ても高い水準にあると思われる。公表はされていないが、利活用するシカ
肉の放射能検査等も行っている。
・伊豆市では、処理後の残渣を富士バイオテックに持ち込んで肥料にしている。
・施設立ち上げに尽力された職員の方は亡くなってしまったが、後任の方に聞けば
情報を入手できる。
利活用について 【問題点・留意点】
・全国の利活用を行っている市町村が抱えている問題であるが、採算がとれない。
伊豆市でも採算はとれていない。行政が係る場合は、維持管理に多額の経費がか
かることを覚悟する必要がある。
・食肉加工処理施設を作った場合、残渣は産業廃棄物にあたるので、法に則り処理
する必要がある。
・兵庫県等では、県のシカ肉活用ガイドラインに沿って捕獲・処理した製品に対す
る食品認証制度を設けており、この様な品質確保が必要である。処理までの過程
が分からない肉が出回って事故が発生した場合、南伊豆町だけでなく、全国各地
の利活用に大きな打撃を与えかねない。
【利活用する場合の展望について】
・伊豆地域のイノシシは、丹波地方と並んで全国的に見てもおいしいとされており、
販売戦略を練ることで、販路は開ける可能性はある。
・丹波産のイノシシは既にマーケットができている。伊豆地域では需要は少ないと
思うので、地理的に近い関東圏が販売先として考えられる。
その他
【南伊豆町での獣害問題】
・イノシシとシカでは、現在はイノシシの方が問題になっていると思うが、今後 5
年先を考えるとシカの方が問題になってくると思われる。シカ対策も早めに検討
しておくのが望ましい。
【成分検査について】
・有害鳥獣駆除で捕獲したイノシシやシカの利活用を考えているのであれば、狩猟
期以外に捕獲した個体の成分検査を行うのがよい。
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5.3 今後の課題・提案
5.3.1 処分方法
(1) 山林等への任意場所への廃棄
現在行われている捕獲者による山林等の任意の場所への廃棄では、残渣は比較的早く野生動物
により採食されており、大きな問題は発生していないと推察される。
なお、個体を解体せず丸ごと廃棄している場合は、内臓や肉塊等に比べて消失までの時間が長
くなる傾向にあることから、可能な限り以下の処理をしてから廃棄する事が望ましい。
〈任意場所廃棄時の留意事項〉
・毛皮を剥ぐ。(毛皮の一部でも可)
⇒臭いにより野生動物の誘引効果が高まる。毛皮を剥いだ場所からの採食が容易になる。
・足・胴体等に細分化する。
⇒野生動物の持ち運びや採食が容易となる。
(2) 特定場所への廃棄
特定の場所に穴を掘って集中的に廃棄する場合、ハエの大量発生や悪臭、水質汚濁等の衛生上
の問題、廃棄場所が人目に触れることによる景観上の問題等が懸念される。そのため、場所選定
等の際には以下に示す事項等について十分留意するほか、並行して焼却炉導入等の別の処理方法
も検討することが望ましい。
〈特定場所の設置に関する留意事項〉
・周辺に民家や耕作地、遊歩道等の人間活動が無い場所。
・簡易水道や耕作地の水源に影響が無い場所。
・複数の場所に埋設地を設置し、廃棄量に応じてローテーション又は分散廃棄する。
〈特定場所の構造、廃棄方法等に関する留意事項〉
・廃棄物が人目に付きにくい構造の採用(廃棄場所周囲への目隠しシートの設置等)。
・野生動物が出入りし、廃棄個体を採食できる構造の採用。
・極めて多数の個体を同時に廃棄する必要がある場合は、野生動物による採食が追い付かない
可能性があるため、廃棄後に土をかけて埋設する。
・その他、必要に応じた対策を適宜実施する。
(雨水流入に伴う廃棄物・汚水のオーバーフロー防止対策等)
【野生動物出入り用斜路】
埋設場所の角の一部を土砂で
埋め戻し、幅約 1m、角度 30°
前後の斜路を設ける。
【目隠しシート】
【埋設穴】
搬入口
【野生動物出入り用の隙間】
目隠しシートと地表との間
を 30cm 程度空ける。
廃棄場所イメージ図
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(3) 焼却炉導入
焼却炉は規模によって購入費用、維持管理費用が異なる。このため導入を検討する場合は、事
前にこれまでの町内における処分実績や近隣市町の処分実績を踏まえて、イノシシ及びシカ等の
処分量及び焼却頻度を推定し、運用面、費用面で適切な焼却炉を検討することが望ましい。
また、焼却処分場建設・運用に必要な以下の事項についても考慮する必要がある。
〈焼却炉導入時の留意事項〉
・焼却炉費用以外に必要な経費
基礎工事、建屋工事、電気工事、給水工事
等
・各種法令対応(焼却炉の規模によって異なる)
ダイオキシン類対策特別措置法
大気汚染防止法
廃棄物の処理および清掃に関する法律
消防法
騒音規制法
等
5.3.2 利活用
全国各地で利活用の試みが行われているが、販売ルートや安定した供給量の確保、品質等の課
題を抱えており、有識者からも「採算がとれない」等の助言が得られている。
南伊豆町においても、イノシシやシカの捕獲頭数が今度大きく変わっていく可能性がある時期
であり、材料の安定供給については現時点では不明である。また少なくとも地元での需要が少な
いことが確認されていること等から、全国の利活用先進市町村と同様の問題が、南伊豆町でも発
生する可能性が高いと考えられる。
食肉加工処理施設の導入にあたっては課題が多く、南伊豆町においても同様の問題が発生する
可能性が高いと考えられるため、現時点では利活用施設の設置は避けることが望ましい。
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