あいち介護予防フォーラム 治さなくてよい認知症~患者さんの心に寄り添って~ 日 会 時:平成27年9月20日(日) 場:あいち健康プラザ ヘルスサイエンスシアター プログラム ●13:00~13:05 【挨 拶】 あいち介護予防支援センター センター長 津下一代 ●13:05~15:00 【基調講演と対談】 基調講演: 「治さなくてよい認知症~患者さんの心に寄り添って~」 日本医科大学 精神神経科 上田 諭 対 談: 日本医科大学 精神神経科 上田 諭 あいち介護予防支援センター 先生 先生 センター長 津下一代 ●15:00~15:10 【休 憩】 ●15:10~15:30 【実 演】 「健康長寿あいち ~楽しく体験!介護予防体操~」 あいち介護予防リーダー 上田 諭 先生のプロフィール 京都府生まれ。新聞記者を経て、北海道大学医学部入学。卒業後は、東京医科歯科大学附属病院神経 科精神科、東京都多摩老人医療センター(現・多摩北部医療センター)内科および精神科、東京武蔵 野病院精神科、東京都老人医療センター(現・東京都健康長寿医療センター)精神科などに勤務の後、 現在は日本医科大学精神神経科講師。 【主な著書】 『治さなくてよい認知症』 『不幸な認知症 幸せな認知症』など 主催 あいち介護予防支援センター 平成27年 9 月20日(日)のあいち県民 健康祭において県民向けの講演会「あいち介護 予防フォーラム」を開催しました。 『治さなくてよい認知症~患者さんの心に 寄り添って~』をテーマとして、多くの認知症 の患者さんを診られてきた、上田諭先生をお招 きして、認知症の患者さんをどのように見守っ ていけばいいのかについての基調講演と津下 センター長との対談を行いました。 上田先生と津下センター長の対談 高齢化が進むとともに認知症の患者さんも 増加しており、患者さんとどのように向き合っ ていけばいいのかについては、介護する方にと っては切実な問題なので関心も高く、事前参加 申し込みが多数ありました。 当日は県民の方々を始め、県や市町村等の関 係者など、318名と多数の方にご参加いただ きました。 基調講演 日本医科大学 精神神経科 講師 上田 諭 先生 上田先生は認知症の患者さんを診察する際には 症状だけを聞いて安易に薬を出すのではなく、患 者さん本人の話を聞き、今の心境やプライドを尊 重したうえで生活面や心理面でのケアや介護に重 きを置いた診察をしているそうです。 高齢になると誰もが認知症になる可能性があり 決して特別な病気ではないこと、今のところ認知 上田 諭先生 症を治す方法はないので、薬などで治そうと頑張 るのではなく、患者さんがいつまでも元気で暮らせるように、心や生活を充実させていく ことが大事であることについてお話しいただきました。 ☆認知症は治さなくてよい 認知症の原因は様々です。治る認知症はごくわ ずかであり、認知症のうち 7 割のアルツハイマー 病は脳の神経細胞が脱落して、記憶力や判断力が 低下し、日常生活に様々な問題が起きてくる病気 です。アルツハイマー病は治すことができないの で、病気を治そうとするのではなく、元気で楽し く生活することが本当の回復であるとのお話しが ありました。 ☆長寿で認知症は必然 85 歳以上のほぼ2人に1人は認知症であり、長寿になれば誰もが認知症になる可能性が あります。長寿をほめたたえている社会であれば、認知症もまたほめたたえるものではな いのかとのことでした。 ☆生活的視点の目標 自尊心を保ちながら、周囲に(役割を)認められつつ、張り合いのある生活を送っても らい、病気を持ちながらいかに生き生きとした生活を送ることができるかといったことが 生活的視点の目標であると述べられました。 ☆心は正常→乱れやすい 本人の心は正常なので、忘れることやできなくなったことへの不安、対人関係が薄れ、 社会・家庭内の役割を失くすといったことから、孤立・孤独感、疎外感、居場所のなさ などの自己否定的な感情を生んでしまいます。周囲の対応次第でそのような感情が深く もなれば、その反対に薄らいでくることもあるとのことです。 ☆「活動+交流」環境作り 趣味や楽しみなど生活に張り合いができるように、本人のプライドを傷つけないような 声かけをして、活動の場に行って人との交流をしてもらうことで、本人の意欲を持ち、不 安感を改善したり、認知機能の維持・改善を図っていくことになるとのお話しでした。ま た、昼夜の生活のリズムや衣食が満たされる生活を送ってもらうことが大事であるとのこ とです。 ☆「過剰な期待」は禁物 家族の「治るかも」という期待が、本人の今の状態を否定してしまい、それが圧力とな って、不安感、孤立感、妄想、徘徊といった症状を引き起こしてしまうことがあります。 治そうとするのではなく、現在の本人を「今のままで十分。今のあなたがよい」と受け入 れることが大事であるとのことでした。 ☆どこで診てもらうか 周囲が「おかしいな」と思ったら、ためらわず早めに地域包括支援センターなどに相談 するか、物忘れ外来、認知症を診る精神科、認知症を診る内科などで受診します。 また、受診を勧めるときは本人のプライドを傷つけないように、 「忘れっぽいから念のた めに」 「高齢者ならみんな診てもらっているから」というような言い方で受診を勧めてみ ましょう。それでも拒否が強い方には、 「付き添いを頼みたいから一緒に行ってほしい」と 自分が受診するからと伝え、病院には前以てそのことを話しておくのも一つの方法です。 嘘も方便であるということを話されました。 ☆接し方のタブー ○指摘しない・・・・・物忘れをいくら指摘しても治らない、かえって逆効果 ○議論しない・・・・・妄想や幻視の訴えをいちいち否定しない ○怒ら(せ)ない・・・怒ったり、怒らせたりしない このような対応ができないとプライドが傷ついたり、劣等感、被害感が強まったりして、 介護者に拒否的になったり、妄想を抱いたりする素地になるかもしれないとのことです。 ☆介護者の健康のために どんなに前向きに介護に向き合っていても限界があるので、決して無理をしないことが 大切です。 ○自分だけの(趣味の)時間をもつ ○「他人に任せる」ことに罪の意識をもたない ○相談できる相手をもつ(友人、ケアマネ、保健師、医師など) ○無理なら在宅介護をやめていい、という感覚をもっておく ○介護の経験が人生で意味あることと考えられること ということなどを考えておくのもいいと話されました。 対 談 【上田諭先生 × 津下一代センター長】 基調講演に引き続き、上田先生と津下センター長の対談が行われました。 認知症と診断された方に対して、脳の 機能が悪くなったと思われる方が多いが、 初期のころは95%正常であり、心につ いては全く正常なので、そのことを理解 した上で本人に接していくことが大事と のことでした。 認知症の予防と称して、好きでもないことを 嫌々やるよりも、自分が好きなこと、打ち込め ることをやった方がいいとのことです。私たちは 認知症を避けるための人生を送っているわけでは ないので、自分が豊かになり、楽しめるような人生を過ごしていきましょうと述べられま した。 引きこもっている方には、外で活動できるようなき っかけを作ってあげることが大事。定年になった男性 は、これまで仕事や仕事上のつきあいしかなかったの で、何もやることがなくなって外出しなくなる人が多 いので要注意とのことです。 大府市 久野孝保市長 東浦町 神谷明彦町長 東海市 坂祐治健康福祉監 対談の最後にはゲストとしてお越しいただいた大府市 久野市長、東浦町 神谷町長、東 海市 坂健康福祉監より、ご講演の感想などについてご発言をいただきました。 実 演 「健康長寿あいち ~楽しく体験!介護予防体操~」 あいち介護予防リーダーにより、音楽に合わせ、介護予防体操が実演されました。リー ダーの声に合わせて参加者のみなさんも一緒に体を動かし、会場全体いきいきとした雰囲 気の中、笑顔の中でフォーラムを締めくくることができました。 あいち介護予防リーダーは、現在833名が養成されており、ボランティアとしてみな さまの地域で介護予防の担い手として活動いただいております。
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