日本情報産業新聞に掲載の対談記事

IT活用の本質とは
開発・運用とユーザーで議論を
現在の企業システムの姿に即した新しいシステム開発手法として、開発と運用︵Develop
mentとOperation︶が連携したシステム開発手法の﹁DevOps︵デブオプス︶﹂
が注目されている。欧米で導入が進むなか、日本ではあまり情報もなく、捉え方もそれぞれという
状態だ。そこで、間違った理解にならないよう、企業へのITコンサルティングを行う戦略スタッ
きく高めることも
できる。今のアイ
ディアが当たりか
外れか、ITで分
るといい。そうし
た時に、ITの開
発と運用がスピー
ド感を抑えるブレ
ーキになっていて
は困るんです。
前田
ITサー
出席者の経歴
年生れ、東北学院大大学院博士課程前期終了後、アマダ、日
グ代表
前田隆
︵まえだ・たかし︶氏
エマージングコンサルティン
本CAなどを経て、サービスマネジメントのコンサルタント、イ
ンストラクターを務める。ITILエキスパート/マネージャー
三井伸行︵みつい・のぶゆき︶ 氏
戦略スタッフ・サービス
取締役
エグゼクティブコンサルタント
年生れ、日本大学生産工学部電気工学科卒、メーカーでの
開発経験を経てUMTP立上げに参画、システム開発プロジェ
それだけでは、プロセスが単に
ネスを支えているという重要な
なかでそれを語っていて、ビジ
クト支援、アジャイル導入支援などコンサル実績多数。
短くなるだけです。そもそもI
ビスによってスピ
ード感が高まって
もそこをしっかりと見極めて、 三井
DevOpsはツール
いるのかがわかる
やプラクティスの話でなく、考
意識が欠落している。それでは
評価できなければならない。今
え方の話です。いまはそういっ
Tの導入には、ビジネスの永続
が変わっていったとき、システ
ユーザーのIT部門は外部のI
た細かいことで議論している。
のは、オペレーシ
ユーザーは初めて﹁早いね﹂と
ムにどう手を加えればいいのか
Tベンダーのようになっていま
DevOpsを導入してもうま
感じるのです。なのに、今はシ
は記載されていない。効率を上
すから。それを実現するために、 ユーザー、開発、運用が三位一
性を実現できるかという視点が
ステムを作るまで時間がかかり
げるための取組みもなされてい
ョンの領域に入っ
ると、﹁1・2年かかりますね﹂ るが、あくまで開発の中での再
すぎている。開発企業に相談す
利用性とかテンプレートとかの
くいきません。
vOpsを考え
などと言われてしまう。アジャ
話で、開発局面の効率化にしか
大切です。ユーザーのIT部門
る場合は、ユー
イルなど、システム開発も色々
なっていない。
フ・サービスの三井伸行取締役と、ITILエキスパートであるエマージング・コンサルティング
ザーが操作して
な方法で開発を短くしているけ
てからで、そこで
いるシステムが
ど、発注側にもエンジニアの視 個別最適だと。
ない。何でITシステムが必要
なのですかというところに立ち
て失敗し、﹁単なるはやりもの
戻りましょう。システムをビジ
か﹂とすたれていってしまうの
前田
今、ITの価値をユー
で、一緒になってビジネスを支
ではもったいないです。﹁IT
ネス価値で語れるようにする
えるというよう格好にもう一度
サービスとは事業永続性を実現
ザーが認識できなくなっていま
んなメリットがあるか意識せず
見直しましょうと。それがDe
点にも﹁ビジネスの成功﹂とい 前田
DevOpsも手法・
がよいでしょう。今国内でのD 三井
運用でもITILとい
に早くしても意味がない。何を
vOpsという考え方で、注目
う意味を含めて
う言葉がブームになりました
そこですべきかしっかり押さえ
と、DevOps導入効果も得
が、日本ではITILに準拠し
ないと、開発が早い、運用側の
す。それを本来の姿に戻すため
evOps議論は、開発と運用
て都合がいいように運用してく
するためのもの﹂という原理原
技法のひとつだから、使えば全
していません﹁こういう機能を
︵お守︶の話になっていて、オ
れるという解釈になっている。
されています。ただし、本来は
統合した全体最適、すなわちD
則を真摯に考え、開発・運用を
うものが欠落しており、開発の
達成してくれればいい﹂という
ペレーション領域、いわゆる事
キャッチアップが早いというだ
運用と開発が同居して一体化し
ビジネスをサポートするために
﹁オペレーショ
こったら動かせばいいという思
もので、これがビジネスに対し
業がどうあるべきなのか、何を
けの話になり、あくまで個別最
られます。折角良い手法がある
考になっている。でもそれは違
てどれだけ重要な機能なのかと
ITILの本質はビジネス視点
適で会社組織やビジネス最適化
のに、中途半端な理解で導入し
いますよね。経営者や事業推進
いうことは開発サイドに伝わっ
したいのかという視点が抜けて
です。ビジネスの成功視点。
には、今までのように開発と運
側から見たとき、ITシステム
ていない。また、依頼したビジ
いるように感じます。
用が別々に考えていては駄目
が欲しいといった場合、欲しい
ネス側は、開発への投資を回収
体のスピードは早くなる。ただ
のはソフトや端末ではなく、自
しなければなりません。ただし、 視点が3つあると。
それによって、ビジネス側にど
分のビジネスを優位にし、かつ
ゴールの概念がずれている。
効率的に支える仕組みです。当
evOpsを目指すべきだと思
は、言われた機能を作ることだ
を取るのではなく、ビジネスと 三 井
さらに今まで開発者
ネスで利益を生まなければなら 前田
開発は開発領域で調整
会社は、最終的にビジ
投資の回収というのは、オペレ 前田
いうところにターゲットを置い
ましょうというものなのに、今
ない。投資回収というのは、利
にはなりません。そこに警鐘を
ーションの段階に入って、つま
益を生むことです。スペック通
ーターに﹁よろしく﹂と引継ぐ
ような付帯情報を残し、オペレ
る情報は誰が知っているという
ほかに開発のキーポイントにな
一覧をドキュメント化し、その
の機能やジョブ、ハードなどの
し、開発者がアプリケーション
の永続性や利益をちゃんと意識
せない領域に入っていて、事業
はお客様が利益を得るために外
とどまっていたが、いまやIT
作って運用するというところに
です。従来、IT企業の役割は
験に基づいて対処している状態
ラブルがあると運用担当者が経
の要求に合せてシステムを開発 三井
そんななかで、何かト
センサスが取れないと、本当に 前田
1回作って維持すれば
ション、ビジネスの3者でコン
るということを開発とオペレー その都度新たに作ってい
達成すると同時に、業務で使え
が出来上がってしまう。機能を
ど使い物にならないというもの
作っても、機能としてはいいけ
す。そんな中で折角システムを
いかに達成するかということで
フトで会社が求めるビジネスを
動かすことでもない。作ったソ
ればならない。
のビジネス計画を反映させなけ
評価するために、事業側も長期
張する際に受け皿はあるか等を
えなければいけない。事業が拡
に、共通に認識できる尺度を考
く、サービス品質と考えたとき
ない。ソフトや運用の品質でな
なるビジネスが消えてしまう。
になってしまう。すると主体と
ればいいのかと、結局機能の話
も分らないからどんな機能にす
技術者はビジネスの話をされて
えなければならない。開発する
は出ません。まず、考え方を変
てこなかった。そういう文化の
があるというようなことは考え
各業界における1425名の要
施した。調査は、世界 カ国の
sに関する企業の意識調査を実
然の秘訣﹂として、DevOp
エコノミーで勝ち抜くための公
evOpsアプリケーション・
平均 %
向上﹂といった項目において、
プリケーションの品質・性能の
加﹂﹁市場投入期間の短縮、ア
ている企業では、﹁顧客数の増
Opsに取組んでも、いい結果 CAテクノロジーズは、﹁D DevOpsをすでに採用し
人たちが意識を変えずにDev
職者を対象に実施され、日本で ま た 、 世 界 と 日 本 の 比 較 で
勝ち抜くための Dev Op s
ような形です。開発者は、仕様
になっている。これまでは業務
してものが作れるかということ
開発者側がこのトラン
いいものを、﹁このシステムの 前田
は100名が回答した。
とが明らかになっている。
は、DevOpsをすでに採用
している企業の割合は、世界で
%だが日本では9%にとどま
5
―年では
っている。ただし、2年以内に
%となった。
予定している企業は合せて
%、今後5年間で採用を
%で、今後3
採用すると回答した日本企業は
ザクションは1時間にどれくら 調査によると、全回答者の
―%改善しているこ
CAテクノロジーが世界で意識調査
通りに納期に間に合せて開発す
ビジネスに役に立つものはでき
ライフサイクルは終焉です。ア
かなければいけなくなると。
ることに徹しています。
最適化という形で事務の代行的
ないのではないでしょうか。
ビジネスへの影響は
個処理できればいいという
考え方をするわけです。だから
が
に言われた通りに作るという考
スに利益をもたらすという意識
であることが明らかになった。
採用しているか、採用する予定
人来るとは考えず、システム
ます。すると開発者は、お客が
と答え
%がDevOps戦略をすでに
かが重要です。そういったなか 三井
それと、企業のビジネ
を達成するまでがDevOps
い発生するのかという質問をし
ス環境が常に変化しており、先
です。
た場合、ユーザーはお客さんが
は透明ではないですよね。悲観
ですよね﹂という考えは間違っ
に対処します。ただしそれだ
で、システムをどう作るか、そ
的ということでなくて、新しい 三井
今の開発者は仕様通り
ジャイルで早く作れるからいい
と、トラブルシューティングの
に動くか、なおかつどこでシス
して作ったシステムがどう安全
う概念が出てきたと。
場合、ビジネス視点で見たら復
ものが出てきたとき、業績を大
会話が成立しないわけです。な
なしで取組むと、大変なことに
16
22 32
向上の必要性﹂︵世界 %、
リケーションの品質と性能
採用する動機は、﹁アプ
54
う戦略的にITを活用していく
旧の時間にどれだけかけていい
テム投資を回収していくかとい
えで、ドキュメ
ので、DevOpsに取組むの
たかというもの
なります。
34%
1時間に 人来るから
のかわかりません。このシステ
うことで、DevOpsという
はいいことなのですが、ビジネ
を用意している
でDevOpsを導入できます
世界
28%
が作った仕様を前提として物事
13
日本
24%
モバイルデバイスの使用
頻度の上昇
ている。投資を回収し投資目的
ムが止まったことによって、ど
考えが出てきたわけです。
対してどう作っ
ントも、要求に
だけ、運用に対
わったときや企
というアプローチも見ますが、
して、業務が変 三井
市場では自動化ツール
業の事業永続性
42%
20
前田
運用担当者は、開発者
88
18%
顧客体験向上の必要性
れだけの損失が予測されるか、
ても﹁お守﹂をするというシス
運用というと、どうし
本来運用側はそれを考えて、ど 前田
ちらかから手をつけるかを判断
テムサポートの部分がクローズ
用の段階では、お守以外にも通
アップされますが、システム運
システムの作りしか書いていな
常のビジネスの中で使っている
者からもらった仕様を見ても、
い。もとを辿れば、ビジネス側
部分があります。だから、De
DevOpsを導入する動機
20
24
10% 20% 30% 40% 50%
0%
日本 %︶が最も高く、続
42
使用頻度の上昇﹂︵世界
いて﹁モバイルデバイスの
%、日本 %︶
、﹁顧客体験
28
向上の必要性﹂︵世界 %、
日本 %︶が続いた。
34
しなければならないのに、開発
もそこまで考えて設計要求を出
24
前田氏
23
33
18
33%
アプリケーションの品質と
性能向上の必要性
20
20
らは、自分たちのビジネスでど そこでDevOpsとい
なIT化を進めてきた。これか
共通認識のもと開発を
然、それが止ったら困る。開発
りユーザーが使って初めてでき
けに専念し、どこの業務に影響
います。
側では、その視点が抜けている
るもので、本来はそこを意識し
て、共通の話ができないといけ
は開発、運用と自分の持ち分の
ため、様々な問題が起きている。
りに作ることでも要求どおりに
ならす必要があります。
これまでの企業のシステム導入
なければなりません。
ン﹂といった方
ビジネスニーズへの即応
体になって議論しなければなら
円滑に動くよう
DevOpsは最適です。
支えているとい
の前田隆社長に、システム開発と運用の立場でDevOpsの本質について語ってもらった。
51
56
の流れをみると、まずユーザー
側も、とりあえずトラブルが起
能中心で話をしています。運用
実装するかに注意を奪われ、機
かし今、開発側はどんな機能を
スを優位性にするためです。し
スを必要とする理由は、ビジネ
三井
ユーザーがITサービ
析からお願いします。
まず開発と運用の現状分
DevOpsの可能性を探る
特別対談
三井氏
(第三種郵便物認可)
=特 集=
月曜日
(7)
2015年3月9日