社長×社外取締役 対談 - 三菱ケミカルホールディングス

ステークホルダーの皆さまへ
社長×社外取締役 対談
代表執行役社長に就任した越智仁が、
新たに社外取締役に選任された國井秀子と、
今後の中期的な企業価値向上をどのように描き、
その先にあるビジョン
「KAITEKI実現」
をいかにめざすかについて意見を交わしました。
※両名の略歴については、P56-57をご覧ください。
中期的な企業価値向上策
國井
國井
収益性の向上という視点では、昨今世の中で注
期的にどのように企業価値を向上させていこうとお考
目されるROEで10%を前提に検討中と伺っています。
えですか。
その達成をどのようにお考えですか。
越智
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現在、策定中の次期中期経営計画も含めて、中
たいと考えています。
当社では、従来から一般に企業価値として捉え
越智
当社は今後、成長を通してより高い収益性を実
られてきた業績などの財務面に加えて、
イノベーション
現したいと考えており、ROE向上は次期中期経営計画
創出や社会的価値の概念を組み入れた多面的な価値
の要として検討を進めているところです。目標達成に
をKAITEKI価値と呼び、企業価値と位置づけてその向
は、
相当程度、
事業の収益性を上げていかなければなり
上をめざしてきました。
ません。
重点領域の一つは機能商品分野で、
素材を提供
このKAITEKI価値をつくり出す言わば母体となる
することのみならず、
マーケティングを強化し、
お客さま
骨格や考え方は、
ある程度整理され、
でき上がりつつあ
のニーズ、
すなわち、
お客さまの抱える課題をともに解
ると認識しています。従って、次期中期経営計画を含め
決すべく、素材と加工が一緒になって総合化学の強み
た今後は、その方向性を堅持しながら、欧米の化学企
を発揮していくことに糸口があると考えています。
もう
業並みに収益性のレベルを上げることに注力していき
一つは、ヘルスケア分野で、医療用医薬品に加え、
日本
社外取締役
代表執行役社長
國井 秀子
越智 仁
三菱ケミカルホールディングス KAITEKIレポート2015
一方で、事業の取捨選択や資産の圧縮も不可欠で
す。素材分野のなかには収益的に厳しい事業もあり、
こ
社長×社外取締役 対談
れまで進めてきた構造改革をもう一段レベルを上げる
ことが必要です。一方、MMAのように競争力のある事
業はグローバルでしっかり育て上げ、収益性をさらに
高めるなどメリハリをつけていきたいと考えています。
戦略
イノベーション
ステークホルダーの皆さまへ
社長メッセージ
捉えた、
ヘルスケアソリューション事業を強化します。
プロフィール
会長メッセージ
の高齢化問題など急速な勢いで変化する社会ニーズを
國井 ご説明いただいた機能商品分野やヘルスケア
分野の新しい事業で収益性を高めるには、イノベー
ンにつながっています。
このタイプのイノベーションは、
ション=画期的な技術革新のように捉えられがちです
早すぎても遅すぎても事業化の機を逸するため、社会
が、
さまざまなものを組み合わせたり、結合したりする
の動き、
研究開発の成果、
そして補完すべき技術を連動
ことで、
ニーズに合ったもの、社会的に価値を生めるも
して見ていくことが極めて重要です。
この取り組みを進
のを創出するのもイノベーションです。
その観点からす
めるのが当社の技術経営
(MOT)
の大きな役割です。
れば、MCHCグループ内の技術やノウハウを含めた膨
國井
大な蓄積を新しい製品なり、
ソリューションとして変換
するという意味では、私の専門のIT分野と共通性があ
していくことが重要なのでしょう。
り、
MCHCグループのイノベーションを考えるうえでも
越智 おっしゃる通りで、私も、
イノベーションには二
今後、ICT※の活用が非常に重要になってくるものと思
通りあると考えています。一つは、國井さんの言われた
います。
画期的な技術革新に相当するもので、炭素繊維、有機
※ICT: 情報通信技術
太陽電池、
リチウムイオン電池材料、医薬品などがその
越智
例と言えるでしょう。
ただし、炭素繊維が普及するまで
す。一つは、今後の成長分野であるヘルスケアソリュー
に20、30年という長い年月を要したように、
このタイプ
ション事業での活用です。患者さんの身体や診断の
のイノベーションには時間がかかることを想定しなけ
データなどを複合的に組み合わせて解析することに
ればなりません。
よって個々人の健康管理や予防医療の
「解」
を提供でき
社会やお客さまに対してソリューションを提供
ガバナンス情報
私は、ICTについては2つの活路を考えていま
財務情報
もう一つは、我々の技術や製品群を組み合わせ、
ブ
成果
ションが不可欠のように感じます。
日本では、
イノベー
るようになることをめざしたいと考えています。
もう一つは、製造技術を差異化し、
より良い素材やソ
式会社生命科学インスティテュートのヘルスケアソ
リューションを提供するための活用方法です。
ドイツな
リューション事業が良い例です。既存の臨床検査・診断
どでは第4次産業革命と呼ばれていますが、
原料、
製造、
製品事業や化学工学の一環として培ってきた高度な分
加工、
そして、消費する側のそれぞれが蓄積する膨大な
析・解析技術を、高齢化の対応や医療費の削減問題と
データを有機的に組み合わせ、活用することで、上流か
いった社会的ニーズとマッチさせることで、健康寿命を
ら下流までの強靭なバリューチェーンを構築し、
グロー
伸ばすためのシステムを事業化するというイノベーショ
バルでの競争力につなげていければと考えています。
三菱ケミカルホールディングス KAITEKIレポート2015
企業情報
ラッシュアップさせることから生み出されるもので、株
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ステークホルダーの皆さまへ
サステナビリティへの貢献
ガバナンスの強化
國井 サステナビリティ向上も、MCHCグループの経
越智
営基軸の一つですね。
社と製薬会社をともに大きくして伸ばすために、
純粋持
越智
当社グループでは、資本効率の向上やイノベー
株会社のMCHC傘下に2つの事業会社を置き、
パート
ションの追求と同様に、企業活動を通じて社会や地球
ナーと位置づけたことに始まります。
そこに、事業会社
のサステナビリティ向上に貢献していくことで価値の
として三菱樹脂株式会社や三菱レイヨン株式会社、最
創造をめざしています。
近では生命科学インスティテュート、大陽日酸株式会
現在のホールディングス制は、
もともと、
化学会
サステナビリティ向上のためには、
より長期の時間軸
社が加わり、傘下の会社を増やしながら成長してきま
で幅広いステークホルダーと協働する必要がありま
した。ただ、
ここまで事業会社が増えると、組織が多層
す。例えば、温室効果ガスを当社グループの製造サイト
化し、近年は監督と執行の役割が複雑になっていまし
からの排出分だけでなく、
バリューチェーン全体で削減
た。そこで、監督と執行をより明確に分離し、
グループ
をめざすことなども、
その一つと言えるでしょう。
このよ
のガバナンス機能を強化し、機動性・透明性をこれまで
うな活動の実践を積み重ねることで、従業員にも多面
以上に高めていくというのが指名委員会等設置会社へ
的な視点や発想が養われ、環境変化に強い企業体質や
の移行の大きな背景です。
次のイノベーションを生むきっかけにつながっていくも
國井
のと考えています。
まり、パートナーシップを築きながら、MCHCがリー
成長機会とし
國井 サステナビリティへの取り組みを、
ダーシップを執っているという構造は極めて重要だと
て位置づけているのですね。また、そこに指標を紐づ
思います。幅広いオープンイノベーションが求められて
け、
それを尺度として進捗のチェックを行う仕組みとす
いるなか、
遠慮なく議論して知恵を出し合っていけるか
ることで、抽象的になりがちなサステナビリティを具体
どうかが鍵になりますから。
的な考え方として多様な企業活動のなかに統合してい
る点はすばらしいことだと思います。
MCHCグループにおいて、
さまざまな会社が集
一方で、特にグローバル化が進むなかで、説明責任
を果たすためには、透明性の向上も不可欠だと思いま
す。
その点はどうお考えでしょうか。
越智
ご指摘の通り、國井さんをはじめとした独立社
外取締役の目を増やし、
株主をはじめとするステークホ
ルダーの皆さまに対する透明性を高めることも今回の
新体制の大きな狙いです。
また、MCHCの取締役会は、
化学、製薬、
そして産業ガスなど多様な背景をもつ取締
役から構成されていますが、
そこに技術、
経営、
コンプラ
イアンスなどに関する有識者からなる社外取締役が加
わり、
さまざまな意見を頂戴することで果敢な経営に
向けたリスクをとれるものと考えています。
國井
私も、MOTにおける知見に加え、
日本企業全般
にITが弱いことでグローバルでの競争力を落としてい
る側面がありますので、
そういう視点でも貢献できれば
と考えています。
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三菱ケミカルホールディングス KAITEKIレポート2015
プロフィール
会長メッセージ
社長×社外取締役 対談
ステークホルダーの皆さまへ
社長メッセージ
戦略
成果
多様性
(ダイバーシティ)
越智
先ほど國井さんからもグローバル化の進展に触
地が大きいと思いますが、
どのようにお考えですか。
越智
新入社員の30%以上が女性になってきたり、工
次第に世界に広がり、今や全従業員6万8千人のうち2
インドは変わりつつあると感じています。
また、
MCHCの
万3千人の従業員が海外のグループ会社で働いていま
米国地域統括会社の社長は米国人女性ですし、外国人
す。
しかし、会社の運営方法や業務手順などさまざまな
を含めて活性化していけたらと考えています。
仕組みは依然、
日本中心です。
これでは、多国籍からな
國井 それは頼もしい限りで、期待しています。
これま
るグループのダイバーシティを活かしきれず、真にグ
で聞いてきたお話を振り返ると、
KAITEKIという明確な
ローバルでの成長を見込めません。
そろそろ、
グローバ
ビジョンを据え、社会的な価値を生み出していくことが
ルな運営体制のため、人材育成システムや組織をはじ
企業の価値であるという視点に改めて感銘を受けまし
めとするインフラ機能の改革に本格的に手をつける段
た。非常に夢のある会社だという思いを新たに今後、社
階にあると考えています。
外取締役として尽力していきます。
國井
越智
確かに、
グローバル化には、地球全体の視点で
財務情報
場長に女性が登用されるなど、
職場の雰囲気や育成のマ
ガバナンス情報
れていただきましたように、
当社グループも活躍の場が
力強いお言 葉ありがとうございます。私は、
KAITEKI実現にしても、企業価値向上にしても、いろ
ると思います。
また、
日本はまだまだ言葉が参入障壁と
いろな面で
「人」が鍵となると考えています。KAITEKI
なっている側面はありますが、今後は、言葉が原因でグ
の考え方を従業員一人ひとりに実践してもらい、私た
ローバルなサービスが行えないどころか、新興国に逆
ちにしかできない価値創造を通して、真に強い会社、真
転される懸念もあります。
まさに、
グローバルでの運営
にグローバルな
「THE KAITEKI COMPANY」
をめざ
体制を整えていくことが重要です。
ところで、外国人と
していきます。
企業情報
見渡して、
どこが最適なのかという視座が求められてい
は別に、日本では人口の半分、つまり女性の活躍の余
三菱ケミカルホールディングス KAITEKIレポート2015
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