シンポジウム グローバリゼーションと保険業 コーディネーター 専修大学商学部 小藤 康夫 (こふじ やすお) 趣旨 一段と進展するグローバル化の 中で、世界の中の日本保険業を 見据えた時の日本の保険業を 取り巻く現状と、方向性ならびに 役割について、様々な角度から 考えていきたい。 日本の保険市場 ●変貌する保険市場 1990年代後半以降 → 縮小化 ●マクロ経済の諸問題 日本経済のデフレ化 → 大胆な経済政策 構造問題 → 深刻な人口減少 少子高齢化 (10億円) 図1 GDPと全生損保・収入保険料の推移 1,000,000 GDP 全生保・収入保険料 100,000 10,000 1,000 全損保・収入保険料 100 10 1955年度 1960年度 1965年度 1970年度 1975年度 1980年度 1985年度 1990年度 1995年度 2000年度 2005年度 2010年度 (注)生命保険協会、日本損害保険協会、内閣府の資料より作成。ただし、生保・収入保険料はかんぽ生命を除く。 保険市場の成熟度 日本経済が成熟するにつれて、新たなリス クも発生する。 リスクの規模も膨らむ。 保険のニーズも高まるかもしれない。 成長が期待できる発展途上の段階か 成熟段階に達し、飽和状態に突入したのか 保険普及度(%) = 収入保険料 ÷ GDP 図2 全生損保・収入保険料の対GDP比の推移 1.6 8.0 (%) 全損保・収入保険料の対GDP比(左目盛り) 1.2 6.0 0.8 4.0 全生保・収入保険料の対GDP比(右目盛り) 0.4 2.0 0.0 0.0 1955年度 1960年度 1965年度 1970年度 1975年度 1980年度 1985年度 1990年度 1995年度 2000年度 2005年度 2010年度 困難な局面の打開策 ●一部の生保 → 株式会社化の移行 資金調達の容易さ → M&A(合併・買収) ●保険会社のグローバル化 → 海外事業への進出 アジアや欧米の現地会社を買収あるいは出資 海外事業の収益を増やす 図3 最近の生損保による海外M&A 買収先 金額 公表日 <生保> 住友生命 米シメトラ・ファイナンシャル 4,650億円 2015年8月 明治安田生命 米スタンコープ・ファイナンシャル・グループ 5,250億円 2015年7月 第一生命 米プロテクティブ 5,800億円 2014年6月 三井住友海上 英アムリン 6,420億円 2015年9月 東京海上HD 米HCCインシュアランスHD 9,400億円 2015年6月 損保ジャパン(当時) 英キャノピアス 1,000億円 2013年12月 <損保> (注)日本経済新聞(2015年9月8日)参照 保険会社のグローバル化 を促す要因 ●直接的要因 → 国内経済の長期にわたる低迷状態 ●間接的要因 リスクとリターンを十分に認識し管理するERM 経営の浸透 外国人株主の存在 株主構成に占める外国法人の割合 40%台 図4(1) 保険会社の経営モデル 資本の健全性 全体の利益 内部留保 株主価値の向上 配当金 株価 資本の効率性 繰入金 繰入率 成長の持続性 資本金 配当率 図4(2) 保険会社の経営モデル 相関係数 国内事業のリスク 全事業の収益率 国内事業のリターン 期待収益率 全事業のリスク 全事業のリターン リスク対比の収益性 海外事業のリスク 海外事業のリターン 国内事業の割合 図4(3) 保険会社の経営モデル 資本の健全性 内部留保 全体の利益 株主価値の向上 配当金 株価 資本の効率性 繰入金 繰入率 相関係数 配当率 成長の持続性 資本金 国内事業のリスク 全事業の収益率 国内事業のリターン 期待収益率 全事業のリスク 全事業のリターン リスク対比の収益性 海外事業のリスク 海外事業のリターン 国内事業の割合 経済価値ベースの監督体制 ●国際的な保険会計基準や保険監督規制 保険IFRS(国際財務報告基準) IAIS(保険監督者国際機構) EUでのソルベンシーⅡ 時価評価した資産と負債の差額に相当する純資産が リスク総量をどれだけ上回っているかを確認する。 パネリスト ●報告① 中浜 隆氏 (小樽商科大学) 「保険業をめぐるグローバリゼーション の背景と動向」 ●報告② 木下孝治氏 (同志社大学) 「国際保険監督規制の現状と課題」 ●報告③ 岡田太志氏 (関西学院大学) 「保険業のドメステイック性とグローバル性」 ●報告④ 野口直秀氏 (第一生命) 「生命保険業のグローバル化への対応と課題」 ●報告⑤ 鈴木衆吾氏 (三井住友海上) 「損害保険業のグローバル化への対応と課題」 (終)
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