豊岡市の人口動態分析 中嶋 圭介 神戸市外国語大学 外国語学部 法経商コース 准教授 米国地球高齢化研究所 非常勤上級研究員 ひょうご共済会館 2015年1月6日 1.豊岡市の高齢化 2 1. 総人口の推移 豊岡市:総人口と年齢3区分別人口の推移(1980~2040年) 100,000 (人) 85,592 80,000 総人口 74,143 62,079 60,000 20‐64歳 40,000 65歳以上 20,000 0‐19歳 総人口は1980-2010年に約 1.1万人(-11.3%)減少。減少 ペースは今後加速すると見ら れ、2010年の85,592人から 2040年には62,079人 (-27.5%)になると推計されて いる。 1995-2000年に、高齢者人口 (65歳以上)が若年人口( 0‐19歳)を上回る。 2045‐2050年期に、高齢者 数が生産年齢人口を上回る。 向こう10数年間は、75歳以上 の後期高齢者の増加率が著し い。 0 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 年 総人口 0-19歳 20-64歳 65歳以上 75歳以上 1980 1995 2010 2025 2040 96,448 28,281 54,981 13,186 5,020 93,859 22,047 52,582 19,230 8,272 85,592 15,795 45,647 24,152 13,465 74,143 11,877 35,711 26,555 16,014 62,079 9,248 28,157 24,674 15,496 2010-25 -13.4% -24.8% -21.8% 9.9% 18.9% (出所)総務省統計局「国勢調査」,国立社会保障・人口問題研究所(2013年3月) 累積増加率 2025-40 2010-40 -16.3% -27.5% -22.1% -41.4% -21.2% -38.3% -7.1% 2.2% -3.2% 15.1% 3 2.年齢構造の推移 豊岡市:年齢別人口割合の推移(1980~2040年) 60% 57.0% 56.4% 55.2% 65歳以上の高齢者率は、2010年の 28.2%から2040年には39.7%にな ると推計されている。 53.3% 48.9% 50% 47.8% 45.4% 39.7% 40% 30% 34.3% 29.3% 20‐64歳 36.9% 28.2% 26.1% 65歳以上 23.4% 18.5% 17.5% 20% 13.7% 16.8% 21.4% 15.3% 0‐19歳 14.9% 高齢者サポート率の低下が著しい。 2010年には1人の高齢者を生産年 齢人口1.9人で支えていたが、2040 年には1.1人(ほぼマンツーマン)で 支える年齢構造に。 合計サポート率は、高齢者サポート 率ほどでないにしても、着実に低下 する。2010年には高齢者と若年者 を合せた被扶養者1人を1.1人で支 えていたが、2040年には0.8人で支 える年齢構造に。 10% 0% 年 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 高齢者サポート率 4.17 3.23 2.36 1.89 1.43 1.29 1.14 合計(高齢+若年)サポート率 1.33 1.30 1.23 1.14 0.96 0.91 0.83 高齢者サポート率 = 生産年齢人口 ÷ 高齢者人口 合計サポート率 = 生産年齢人口÷(高齢者人口+若年人口) (出所)総務省統計局「国勢調査」,国立社会保障・人口問題研究所(2013年3月) 4 3.人口減少の要因 豊岡市:総人口・出生数、死亡数、転入数、転出数の推移(1980~2040年) 120,000 6,000 (人) (人) 総人口(左) 80,000 4,000 60,000 3,000 40,000 2,000 転出数(右) 転入数(右) 死亡数(右) 20,000 1,000 出生数(右) 0 0 豊岡市 年 総人口 出生数 死亡数 転入数 転出数 自然増加 社会増加 1980 96,448 1,320 837 3,310 3,943 483 -633 1985 96,086 1,166 838 3,162 3,829 328 -667 1990 94,163 941 827 3,157 3,493 114 -336 1995 93,859 900 943 3,773 3,700 -43 73 2000 92,752 903 874 3,501 3,482 29 19 自然増加 5,000 社会増加 100,000 社会増加 1990年代後半(阪神大震災の影響 と考えられる)を除いて、転出超過( 社会減少)が続いている。 自然増加 かつては出生数が死亡数を上回っ ていた(自然増加)。近年の人口高 齢化進行によって高齢者死亡数が 増加する一方で、以下に述べるよう に、主として出産女性の転出超過に よって出生数が減少。このため、ここ 10年は、自然減少が続いている。 出生数=出生率×出産女性数 出生率の低下要因 ①未婚率の上昇 ②夫婦が産む子供数の減少 2005 89,208 732 1,000 2,424 2,830 -268 -406 (人) 2010 85,592 763 1,149 1,847 2,197 -386 -350 出産女性数の減少 ①少子化 ②転出超過 スライド7に示す通り、出生率は全国 ・兵庫平均より高く比較的安定して推 移していることから、出生力は保た れており、出生数減少は、主に転出 超過による出産女性数の減少による ものと考えられる。 (注) 合併(2005年)前の数値は、旧市及び町外への移動のため、現豊岡市間の移動数を含んでいる。 (出所)総務省統計局「国勢調査」,国立社会保障・人口問題研究所(2013年3月) 5 4.出生力の推移 合計特殊出生率の推移 豊岡市 香美町 新温泉町 養父市 朝来町 但馬 兵庫県 全国 1985 2.08 2.35 2.35 2.07 2.14 2.14 1.75 1.76 1990 1.82 2.00 2.05 2.11 1.95 1.92 1.53 1.54 1995 1.75 2.09 2.17 1.90 1.80 1.85 1.41 1.42 2000 1.85 1.78 1.90 1.86 1.84 1.84 1.38 1.36 2005 1.63 1.72 1.80 1.85 1.68 1.69 1.25 1.26 合計特殊出生率は、全国・兵庫平均に比べて高い水準 で推移している。 2010 1.94 1.84 1.76 1.73 1.72 1.84 1.41 1.39 この出生率における豊岡市と全国・兵庫平均の差は、 下段表「第3子以上が総出生数に占める割合」が示す ように、子供もつ夫婦の出生力の高さによるものと考え られる。 (出所)兵庫県(2014)『平成25年保健統計年報』より、国勢調査を基にしたデータ 豊岡市:出産順位別出生数 年 第1子 第2子 第3子 第4子 第5子 第6子以上 合計 2005 335 286 96 12 3 0 732 2006 352 301 121 18 2 3 797 2007 314 272 102 19 5 0 712 2008 339 288 113 18 5 1 764 2009 315 261 109 29 3 0 717 2010 323 281 132 25 6 2 769 2011 287 256 113 29 5 0 690 2012 304 281 129 20 3 0 737 2007 17.7% 14.9% 15.3% 2008 17.9% 15.8% 15.7% 2009 19.7% 15.6% 15.6% 2010 21.5% 15.6% 16.0% 2011 21.3% 15.7% 16.4% 2012 20.6% 16.1% 16.4% (人) 2013 287 263 99 17 6 5 677 第3子以上が総出生数に占める割合 年 豊岡市 兵庫県 全国 2005 15.2% 14.4% 14.2% 2006 18.1% 14.4% 14.6% (出所)兵庫県『保健統計年報』(平成17年~平成25年版より) 2013 18.8% 16.2% 16.4% 6 5.出産女性数の推移 豊岡市:出産年齢女性数の推移 (人) 累積増加率 1980-2010 2010-2040 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 25-34歳 6,927 5,281 5,362 4,213 3,170 3,284 2,872 -39.2% -31.8% 15-49歳 22,417 20,726 18,604 15,386 13,110 11,101 9,808 -31.4% -36.3% 年 (出所)総務省統計局「国勢調査」,国立社会保障・人口問題研究所(2013年3月) 豊岡市:母の年齢別出生数(2013年) 出生数(人) 総数に占める割合 総数 677 100% 19歳以下 9 1.3% 20-24歳 62 9.2% 25-29歳 204 30.1% 30-34歳 245 36.2% 35-39歳 123 18.2% 40-44歳 32 4.7% 45歳以上 2 0.3% (出所)兵庫県『保健統計年報』(平成17年~平成25年版より) 豊岡市の赤ちゃんの約7割が、25-34歳の母親から生まれる。 豊岡市の出産年齢女性数の減少は著しく、過去30年間25-34歳で39%、15-49歳で31%減少した。今後2010- 40年の間、それぞれ32%、36%の減少が見込まれている。 (注)推計期間(2010-40年)において25-34歳の減少幅が縮小しているのは、同推計を作成した社人研が、長期的に 純移動率が低下収束すると仮定しているためと考えられる。 7 6-1.純移動の特徴 豊岡市:年齢性別・純移動率(2005→2010年) 40% 28.2% 30% (20‐24歳) 20% 男女とも進学期(15-19歳)に大きな転 出超過、就職期(20-24歳)に大きな転 入超過となっている。 21.2% 10% 但し、男性は44%転出超過の後、28% が戻っているのに対し、女性は39%転出 超過の後、21%しか戻っていない。女性 よりも男性のほうが、戻ってくる可能性が 高いと言える。 0% -10% 男 -20% 女 -30% (15‐19歳) -40% -39.2% -44.2% -50% 豊岡市:年齢性別・純移動数(2005年→2010年) (人) 0~4 → 5~9 男 女 -12 -38 5~9 10~14 15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74 75~79 80~84 85~ → → → → → → → → → → → → → → → → → 10~14 15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74 75~79 80~84 85~89 90~ -41 8 -433 -307 -996 -851 438 345 59 42 -8 -85 -27 -39 4 2 -9 22 -24 17 22 -27 10 -18 -19 -10 17 15 -16 32 20 13 38 38 合計 -979 -841 (出所)内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局提供CD-ROM、国勢調査データ 8 6-2.純移動の特徴 豊岡市:地域別移動数(2005年→2010年) 転入総数 県内他市区町村から 神戸市 養父市 香美町 姫路市 京丹後市 他県から 大阪府 京都府 東京都 鳥取県 滋賀県 国外から 男(転入) 2640 1229 246 143 137 121 83 1315 367 305 66 54 48 96 転出総数 県内他市区町村へ 神戸市 姫路市 養父市 朝来市 西宮市 他県へ 大阪府 京都府 滋賀県 岡山県 鳥取県 男(転出) 3103 1287 328 161 116 95 67 1816 454 418 94 82 77 (人) 転入総数 県内他市区町村から 養父市 神戸市 香美町 京丹後市 朝来市 他県から 大阪府 京都府 東京都 鳥取県 岡山県 転入 国外から 女(転入) 2728 1266 203 200 180 115 111 1196 351 316 52 42 42 266 転出総数 県内他市区町村へ 神戸市 養父市 朝来市 西宮市 姫路市 転出 他県へ 大阪府 京都府 岡山県 滋賀県 奈良県 女(転出) 3168 1433 388 169 124 114 113 1735 496 462 71 61 57 転出超過は、ほぼ全て他県への移動によるもの。 男女とも転入元・転出先は、関西圏の都市部が多い。進学に 合わせて豊岡市を離れ、就職を機に戻る者もいるが、そのま ま都市部に定着しているものと考えられる。 総数(男女) 転入 県内他市区町村 他県 国外 転入 転出 転出-転入 5368 2495 2511 362 6271 2720 3551 N/A 903 225 1040 -362 9 7.純移動の特徴 豊岡市:総人口推計シミュレーション(2010~2060年) 90,000 85,589 2010-2040年の間に、出生率・純移動率とも 現状維持を仮定する④創生会議シナリオで 最も大きな人口減少が見込まれる。(約2.8 万人減、累積-33%) (人) 80,000 72,990 70,000 65,126 65,704 60,000 62,071 57,127 50,000 40,000 52,294 出生率が人口置換水準(2.1人)にまで回復 し、純移動率ゼロを仮定する①シナリオで最 も小さな人口減少。(約1.3万人減、累積-15 %) 46,397 ①社人研準拠+出生率上昇+移動ゼロ 30,000 ②社人研準拠+出生率上昇 20,000 ③社人研準拠(基準シナリオ) ④創生会議 10,000 0 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 2055 2060 出所:内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局提供CD‐ROMに基づいて作成 10 参考:周辺自治体との比較 11 1.地域中では「少し若い」豊岡市 市町村別・高齢者率 (65歳以上の高齢者が総人口に占める割合:2010年、2040年 ) 60% 55% 48% 50% 40% 40% 36% 42% 43% 44% 45% 45% 2010年 2040年 日本全国 23.0% 36.1% 兵庫県 23.1% 36.4% 京都府 23.4% 36.4% 鳥取県 26.4% 38.2% 但馬地域 30.3% 42.3% 40% 37% 33% 30% 44% 28% 26% 30% 30% 31% 33% 33% 30% 23% 20% 10% 0% 福知山市 鳥取市 豊岡市 与謝野町 岩美町 (出所)国立社会保障・人口問題研究所(2012, 2013) 養父市 京丹後市 香美町 朝来市 新温泉町 若桜町 2010年 2040年 12 2.地域中では人口・労働減少も「小さ目」の豊岡市 市町村別・人口と労働人口(20-64歳)の減少率 (2010-40年期間の累積減少率 ) 0% ‐10% 人口 減少率 労働人口 減少率 日本全国 -16.2% -28.7% 京都府 -15.6% -28.1% 兵庫県 -16.4% -28.7% 鳥取県 -25.1% -35.9% 但馬地域 -32.4% -42.7% ‐20% ‐21% ‐24% ‐30% ‐27% ‐34% ‐40% ‐32% ‐33% ‐35% ‐38% ‐44% ‐50% ‐60% ‐45% ‐35% ‐44% ‐36% ‐38% ‐41% ‐44% ‐48% 人口減少率 労働人口減少率 ‐43% ‐49% ‐55% ‐55% ‐63% ‐70% 鳥取市 福知山市 豊岡市 朝来市 京丹後市 養父市 与謝野町 岩美町 香美町 新温泉町 若桜町 (出所)国立社会保障・人口問題研究所(2012, 2013) 13 3-1.全国平均に比べて豊岡市女性の就労率は高い 年齢性別・労働参加率:全国平均 vs 豊岡市 (2000年、2010年) 100% 90% 全国・男(2010) 80% 豊岡・男(2010) 70% 60% 豊岡・男(2000) 50% 40% 30% 全国・女(2010) 豊岡・女(2010) 20% 10% 豊岡・女(2000) 0% (出所)総務省統計局 2010年国勢調査・2000年国勢調査 14 3-1.全国平均に比べて豊岡市女性の就労率は高い 年齢別・女性労働参加率: 豊岡市(2010年) 年齢別・女性労働参加率: 全国平均(2010年) 80% 80% 70% 70% 60% 60% 50% 50% 40% 40% 30% 30% 20% 20% 10% 10% 0% 0% 主に仕事 家事のほか仕事 通学のかたわら仕事 (出所)総務省統計局 2010年国勢調査 休業者 主に仕事 家事のほか仕事 通学のかたわら仕事 休業者 15 4.豊岡市は、近隣市町に比べて20-24歳の女性純流入が多い。 年齢別・女性純移動率(2010-2015年推計値) 20% 10% 0% ‐10% ‐20% ‐30% ‐40% 豊岡市 養父市 朝来市 香美町 新温泉町 福知山市 鳥取市 (出所)国立社会保障・人口問題研究所(2012, 2013) 16
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