陸運と安全衛生 №555 平成 27 年 10 月 1 日(毎月 1 回 1 日発行) (1) 手順書は 危険回避の 道しるべ! 平成 27 年 10 月 №555 発行所 陸上貨物運送事業労働災害防止協会 〒108-0014 東京都港区芝 5 丁目 35 番 1 号 産業安全会館内 ☎03-3455-3857 代表 http://www.rikusai.or.jp 会員の方の購読料は会費に含まれております。 (印刷物による年間購読料 3,600 円) ○ 第30回全国フォークリフト運転競技大会開催 ・・ (1)~(4) ○ フォークリフト荷役技能検定のご案内 ・・・・・・ (4) ○ 小企業無災害記録表彰 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (5) ○ 荷主等の事業場の担当者への安全衛生 教育講習会のご案内 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (5) ○ 「荷役作業場所のチェックリスト」をご活用ください ○ 災害事例とその対策(荷役災害) ・・・・・・・・・・ ○ 安全管理士の着眼点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ○ 「緑十字賞」受賞者のご紹介 ・・・・・・・・・・・・・・ ○ 労働災害発生状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (5) (6) (7) (8) (8) 第 30 回全国フォークリフト運転競技大会開催 【女性の部】優勝 兼子紗哉加選手(静岡県支部) 【一般の部】優勝 稲山忠勝選手(群馬県支部) 準優勝 久野愛子選手(愛媛県支部) 準優勝 小暮健太選手(埼玉県支部) 全国フォークリフト運転競技大会 会場全景 第 30 回全国フォークリフト運転競技大会が、 9 月 27 日(日)に、埼玉県深谷市の埼玉県トラ ック総合教育センターで開催され、各都道府県 支部での地区予選から選出された女性の部 12 名、一般の部 55 名の計 67 名の選手が学科・点 検・運転の 3 種目で知識と技能を競いました。 なお、地区予選参加選手は過去最多の 1,019 名 にのぼりました。 この大会は、フォークリフトの運転競技を通 して、遵法精神と安全意識の高揚、運転の知識 と技能の向上を図り、職場における安全作業の 確立と労働災害の防止を目的として厚生労働省 の後援、公益社団法人全日本トラック協会及び 一般社団法人日本産業車両協会の協賛、またコ マツリフト株式会社、ニチユ三菱フォークリフ ト株式会社、ユニキャリア株式会社、トヨタL &F埼玉株式会社、住友ナコマテリアルハンド リング販売株式会社からのご協力をいただき開 催されました。 開会式 午前 9 時からの開会式では、佐藤公望大会実 行委員長(陸運労災防止協会専務理事)から開 会の挨拶があり、次いで、開催地の鳥居伸雄埼 玉県支部長から、選手激励の挨拶がありました。 続いて、昨年の優勝者が所 属していた新潟県支部選出の 廣川祐二選手が全選手を代表 して、力強く宣誓を行いまし た(写真 1) 。 学科競技 オリエンテーションが行 われた後、競技が開始され、 写真 1 選手宣誓 選手は、抽選で決まったゼ ッケン番号を胸に着けて、 最初の学科競技に取り組みました(写真 2)。内 容は法令、フォークリフトの荷役に関する装置 の構造及び取扱いの方法に関する知識等安全の 基礎として必要な知識に関する問題です。 写真 2 学科競技 陸運と安全衛生 №555 平成 27 年 10 月 1 日(毎月 1 回 1 日発行) 点検競技 次は、点検競 技です(写真 3)。 フォークリフト の作業開始前点 検は、労働安全 衛生規則により 義務付けられて います。作業開 始前にフォーク 写真 3 点検競技 リフトの点検を 適切に行い、不具合箇所を見つけるという設定 です。限られた時間の中ですばやく点検が行わ れました。 運転競技 最後は、運転競技です(写真 4)。ディーゼル・ トルコン車を使い、決められたコースを走行し、 必要な荷の積み卸し等を限られた時間の中で行 います。フォークリフトのエンジンキーを審査 員から受け取り、目を閉じ呼吸を整えエンジン を始動させる選手の方々からは緊張感が伝わっ てきました。 写真 4 運転競技 表彰式 競技は朝からの小雨が次第に強くなりました が、昼頃までには雨が上がる天気の下行われま (2) した。 全選手が競技を終え、午後 3 時 55 分から表 彰式が行われました。表彰式の会場となった多 目的ホールは、支部や選手の所属する事業場等 から応援にみえられた方々が会場から入りきれ ないほどとなり、会場の外まで熱気があふれて いました。 当協会川合正矩会長からの「本日の大会を通 じて得られた経験を職場の同僚、後輩の方々に 広く伝えていただき、職場における労働災害の 防止になお一層のご尽力をいただきたい」旨の 挨拶(代読)に続き、ご来賓の厚生労働省労働 基準局安全衛生部長、全日本トラック協会会長、 日本産業車両協会会長のご祝辞をいただきました。 その後、当協会黒谷一郎技術管理部長から、 各競技についての講評(次ページに掲載)と入 賞者発表があり、入賞者のお名前が読み上げら れる都度、応援の方々から歓声があがり、大き な拍手が沸き起こりました。 そして、厚生労働大臣賞と陸運労災防止協会 会長賞各賞が入賞された選手に授与され、今回 の大会は、午後 5 時に閉会となりました。 入賞選手の皆さん 前列左から、芝吹義範選手、小暮健太選手、稲山忠勝選 手、佐藤大会実行委員長、兼子紗哉加選手、久野愛子 選手、藤本小梨絵選手、後列左から、須藤将選手、戸 澤克美選手、中嶋竜二選手、多田早織選手、緑美幸選 手、林裕子選手(入賞者一覧表は4ページに掲載) 第 30回 全 国 フ ォ ー ク リ フ ト 運 転 競 技 大 会 出 場 選 手 の 皆 さ ん ( 敬 称 略 ) 女性の部 支部名 氏名 支部名 氏名 支部名 氏名 支部名 氏名 茨城県 髙橋 利恵 富山県 林 裕子 三重県 森川 静香 岡山県 三浦 千春 埼玉県 志村美佐子 石川県 小倉 益代 京都府 藤本小梨絵 愛媛県 久野 愛子 千葉県 川田美穂子 静岡県 兼子紗哉加 大阪府 多田 早織 鹿児島県 緑 美幸 一般の部 支部名 北海道 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 氏名 久慈 博幸 須藤 将 及川 正史 石川 宏 高橋 克彦 戸澤 克美 福島県 伊藤 竜也 鈴木 雄也 茨城県 片岡 祐太 栃木県 三室 裕介 支部名 氏名 栃木県 加藤 慎也 岩本 武範 群馬県 稲山 忠勝 小暮 健太 埼玉県 伊賀 元気 佐々木順章 千葉県 林 智次 小川 和史 東京都 高邊 一 清水 秀章 神奈川県 渡邊 正明 支部名 新潟県 富山県 石川県 福井県 山梨県 長野県 岐阜県 静岡県 氏名 廣川 祐二 関川 真人 中川 陽介 山田 拓実 山野 弘昭 清水 康次 大平 貴章 久保田俊也 梅村 雅之 成岡 弘史 青木 一剛 支部名 愛知県 三重県 滋賀県 京都府 大阪府 奈良県 鳥取県 岡山県 山口県 徳島県 氏名 塩澤 純 神谷 直斗 岩田 拓也 岩井 暁 鶴長 浩二 伏田 裕輔 濵田 伸 片山 祐貴 進 恭士朗 西川 智明 支部名 氏名 香川県 西脇 守彦 近久 寛之 愛媛県 片山 泰彰 高知県 佐野 彰 福岡県 中嶋 竜二 佐賀県 東 卓也 熊本県 竹下 立浩 大分県 根神 伸哉 宮崎県 芝吹 義範 鹿児島県 福永 清春 沖縄県 大城 元輝 陸運と安全衛生 №555 平成 27 年 10 月 1 日(毎月 1 回 1 日発行) (3) 第 30 回全国フォークリフト運転競技大会講評 大会参加者は、 女性の部 12 名、 一般の部 55 名。 総合得点の平均点は、女性の部 823 点、一般の 部 884 点。 優勝者は 1,000 点満点で女性の部 915 点、一般 の部 968 点と素晴らしい成績でした。特に一般の 部においては、優勝者から 5 位までの得点差がわ ずか 10 点という接戦でした。 学科競技は、残念ながら満点(300 点)はあり ませんでした。女性の部、一般の部を通じて、最 高点は、294 点。 点検競技は、満点(100 点)は、女性の部、一般 の部通じて 34 名と例年に比較して多かったです。 運転競技においても、満点(600 点)が 2 名い らっしゃいました。 技術管理部長 黒谷 一郎 以上、女性の部も含め、全体として良い成績で した。 選手の皆さんは、大変な緊張の中で精一杯、日 頃の力を発揮しようと努められていました。これ までの努力、大会への参加は大きな経験として今 後の活動に生かしていただけるものと思います。 女性の部を設けましたが、男女を問わず、本大会 の目的である、運転技能の向上と安全意識の高揚 を十分果たすことのできた大会でした。 例年以上に多くの方の来場をいただき、選手と 応援の方々の熱意の中、素晴らしい盛り上がりの 競技大会となりましたことを感謝申し上げ、講評 とします。 一般の部 優勝選手インタビュー 株式会社バンテックイースト埼玉営業部江南営業所太田出張所 稲山忠勝 選手(群馬県支部) 優勝おめでとうございます。大会出場のきっかけ をお聞かせください。 平成 23 年に社内大会にピンチヒッターとして 急きょ出場したのがきっかけです。翌年の平成 24 年から地方大会に出場しました。全国大会は 1 回 目の出場です。 どのように大会にのぞまれましたか? 学科競技に向けて、テキストを読み込み、過去 の問題を解くことに取り組みました。テキストの 法令のページは破けてホッチキスで留めてあります。 点検・運転競技に対しては、今年の 5 月ぐらい から地方大会に向け週 2、3 日、群馬県から埼玉 県に通い練習しました。 全国大会前日は、日立物流グループの模擬大会 に出場しました。12 位という不本意な内容だった ので、落胆したのですが、せめて学科競技で一問 でも落とさないようにと部屋に閉じこもり勉強し ました。 各競技で手応えはありましたか? 学科競技は今年の問題は難しかったです。点検 競技は手応えがありました。運転競技では最初の 停止線 A からのクランクがギリギリだったのでぶ れそうになったのですが、そこを乗り越えてから は自信が付きました。 優勝することができた秘訣があれば教えてくださ い。 「思い」です。誰よりも一番になるという「思 い」です。 運転資格取得時 期と現在の職務 内容をお聞かせ ください。 10 年前に運転 資格を取得しま した。日々フォ ークリフトに乗 り構内作業を行 っています。 作業中に意識さ 優勝された稲山忠勝選手 れていることはありますか。 安全確認を徹底しています。会社からも教育さ れています。 最後に一言お聞かせください。 この結果におごらず、安全意識の向上に努めて いきたいです。 女性の部 優勝の兼子 紗哉加選手 のインタビ ューは当紙 11 月号に掲 載予定です。 優勝された兼子紗哉加選手 陸運と安全衛生 №555 平成 27 年 10 月 1 日(毎月 1 回 1 日発行) (4) 女性の部 第30回全国フォークリフト運転競技大会 女性の部 入賞者(敬称略) 順 位 氏 名 優 勝 (厚生労働大臣賞) 兼 子 紗哉加 支 部 名 総合得点 学 科 静岡県 準優勝 第3位 第4位 第5位 久 野 愛 子 愛媛県 藤 本 小梨絵 京都府 多 田 早 織 大阪府 緑 美 幸 鹿児島県 健闘賞 林 裕 子 点 検 運 転 915 270 100 545 889 889 873 865 234 264 258 240 95 85 100 90 560 540 515 535 配 点 最 高 得 点 300 100 600 総合得点 1,000 平 均点 270(1名) 233.0 100(5名) 90.0 560(1名) 500.0 915 823.0 学 科 点 検 運 転 ( )内は最高得点者数 富山県 (注)総合得点が同点の場合は、運転競技の得点が高い選手が上位者となります。 一般の部 第30回全国フォークリフト運転競技大会 一般の部 入賞者(敬称略) 順 位 氏 名 優 勝 支 部 名 総合得点 学 科 点 検 運 転 稲 山 忠 勝 群馬県 968 288 100 580 準優勝 第3位 第4位 第5位 小 暮 健 太 芝 吹 義 範 中 嶋 竜 二 戸 澤 克 美 埼玉県 宮崎県 福岡県 福島県 964 961 960 958 294 276 270 258 100 85 100 100 570 600 590 600 健闘賞 須 藤 将 岩手県 (厚生労働大臣賞) 配 点 300 点 検 100 運 転 600 総合得点 1,000 学 科 最 高 得 点 平 均点 294(1名) 256.3 100(29名) 93.8 600(2名) 533.9 958 884.0 ( )内は最高得点者数 「フォークリフト荷役技能検定」のご案内 フォークリフトは、製造業、陸運業、商業など幅広い業種において活用されていますが、不安全な 作業による重篤な労働災害も多く発生しており、フォークリフトによる安全な荷役作業の徹底が求め られています。 このため、陸上貨物運送事業労働災害防止協会では、荷役作業の労働災害の防止を推進することを 目的として、フォークリフト運転者の安全、正確、迅速な荷役作業を評価し、検定 1 級及び検定 2 級として認定する「フォークリフト荷役技能検定」を開始することといたしました。 なお、平成 27 年度の技能検定試験は、2 級のみを以下により実施いたします。 多数のフォ―クリフト運転者の皆様のご参加をお待ちしております。 また、マンガでこの検定を説明したリーフレットを作成しました。ぜひご覧ください。 http://www.rikusai.or.jp/public /ginou-kentei/manga.pdf 受講資格 フォークリフト運転技能講習修了後、2 年以上の実務経験を有する者 開催日、開催地、定員、お申込方法 開催日 平成 27 年 11 月 9 日(月)※ 開催地 ①北海道 ②福島県 ③埼玉県 ④千葉県 ⑤神奈川県 ⑥長野県 ⑦愛知県 ⑧愛媛県 ⑨福岡県 ※ ⑤神奈川県及び⑥長野県は、11 月 9 日(月)に学科試験のみ実施し、実技試験は次の日に行います。 ⑤神奈川県実技試験日:平成 27 年 12 月 13 日(日)/⑥長野県実技試験日:平成 27 年 11 月 17 日(火) 定員 各開催地 約 20 名 お申込みについて(詳細はこちらへ→http://www.rikusai.or.jp/public/ginou-kentei/) 陸災防本部ホームページで希望開催地の空き状況を確認後、受検申請書をダウンロードし、必要事 項を記載の上、陸災防本部にファックス又は郵送にて申込みください。 受検費用 学科試験受検手数料 5,000 円(税別) 実技試験受検手数料 20,000 円(税別) 検定の申込み、問合せ先 陸上貨物運送事業労働災害防止協会 / 〒108-0014 東京都港区芝 5-35-1 産業安全会館 6 階 TEL:03-3455-3857 / FAX:03-3453-7561 / MAIL:[email protected] 陸運と安全衛生 №555 平成 27 年 10 月 1 日(毎月 1 回 1 日発行) (5) 陸運労災防止協会の表彰制度による小企業無災害記録事業場 〔平成27年8月〕 第3種( 7年間) ・有限会社千明アクティー 群馬県支部 第2種( 5年間) ・有限会社ムラヨシ運輸 岩手県支部 【荷役ガイドラインに基づく講習会開催のご案内】 「荷主等の事業場の担当者への安全衛生教育講習会」のご案内 当紙 7、8、9月号にてご案内いたしました厚生労働 省委託事業として当協会が行う「荷主等の事業場の担 当者への安全衛生教育講習会」が平成 27 年 9 月 2 日 広島県福山市での開催を皮切りにスタートしました。 製造業や小売業等、荷主企業の方々に多く参加いた だいており、講習会終了後のアンケートでもご好評を いただいています。 (注)荷主等とは「荷主、配送先、元請事業者等」をい います。 (写真)埼玉県での開催風景 10月以降の荷主等の事業場の担当者への安全衛生教育講習会 開催日一覧 都道府県 開催日 都道府県 開催日 都道府県 開催日 都道府県 開催日 青 森 宮 城 秋 田 山 形 福 島 茨 城 栃 木 千 葉 東 京 神奈川 10月27日(火) 10月7日(水) 10月1日(木) 10月29日(木) 10月6日(火) 10月27日(火) 10月30日(金) 12月4日(金) 12月8日(火) 10月8日(木) 新 潟 富 山 石 川 福 井 山 梨 長 野 岐 阜 静 岡 愛 知 三 重 12月11日(金) 11月19日(木) 11月12日(木) 11月18日(水) 11月27日(金) 12月2日(水) 12月8日(火) 10月21日(水) 10月22日(木) 12月10日(木) 滋 賀 京 都 大 阪 兵 庫 奈 良 和歌山 鳥 取 島 根 岡 山 山 口 12月2日(水) 調整中 11月19日(木) 10月16日(金) 1月26日(火) 1月28日(木) 12月9日(水) 12月8日(火) 調整中 11月18日(水) 愛 媛 高 知 福 岡 佐 賀 長 崎 熊 本 大 分 宮 崎 鹿児島 沖 縄 10月23日(金) 調整中 11月13日(金) 11月12日(木) 1月26日(火) 11月27日(金) 12月4日(金) 12月3日(木) 11月26日(木) 11月25日(水) 上記スケジュールのとおり、10 月以降全国各地で開催します。 荷主等の事業場の荷役災害防止担当者への安全衛生教育は、厚生労働省の「荷役ガイドライン」 でその実施が求められている安全衛生教育です。受講料は無料です。 陸災防ホームページで各会場の空き状況が分かります。 (http://www.rikusai.or.jp/public/kyoiku/ niyaku-guideline_kyouiku/ninushi-kyoiku_H27/kousyuukai_guide.htm) 空き状況をご確認のうえ、当該ページから申込書をダウンロードしていただき、陸災防各都道府 県支部までFAXにてお申込みください。 荷主の皆様「荷役作業場所のチェックリスト」をご活用ください 荷主等の事業場敷地内で行われる荷役作業において、陸運事業者の労働者が、 「墜落・転落」 「転倒」 「フォークリフトによるはさまれ・巻き込まれ」等の労働災害に被災している現状を鑑 み、当協会と厚生労働省では、荷役作業における安全対策を推進しているところです。とりわ け、荷役作業場所の安全を確保するためには、荷主等の協力が必要不可欠であり、荷役作業場 所の安全は、さらには、荷役作業をする自社の労働者への安全対策につながるものです。 このようなことから、今般、特に労働災害の多い転倒、墜落・転落に重点を置き、荷主等が 自社事業場の荷役作業場所の機械や作業環境、服装、作業方法について点検・改善を行い、労 働災害防止につなげることを目的とした、 「荷役作業場所のチェックリスト」を作成しました。 つきましては、事業場にて、本チェックリストを活用した荷役作業場所の点検と、安全のた めの必要な改善を行ってください。 「荷役作業場所のチェックリスト」→ http://www.rikusai.or.jp/public/leaflet/niyakucl2.pdf 陸運と安全衛生 №555 平成 27 年 10 月 1 日(毎月 1 回 1 日発行) 製造工場構内において棚卸し中の作業員が バックしたフォークリフトに激突される 災害事例 と その対策 1 事業の種類:陸上貨物運送事業 2 発生場所 :製造工場構内 3 被災者 (6) :作業員(班長) 4 傷病の程度:全身打撲重傷 5 災害発生状況 この災害は、製造工場構内において、棚卸しの ためラックに保管していた部品の検品作業中に 発生したものである。 ① 災害発生当日は午前 8 時に出勤し、朝礼・ ⑵ 2 人のフォークリフト作業にもかかわらず作 業指揮者を決めていなかった。 ⑶ 工場内のフォークリフト運行経路にもかか わらず接触防止対策が施されていなかった。 ⑷ 被災者がフォークリフトの死角に位置し検 品作業を行っていた。 ⑸ フォークリフトの運転手が後方確認を怠っ た。被災者Aは、エリア内立入禁止の指示を受 けていなかった。 体操の後、各作業員はそれぞれの作業に従事 7 再発防止対策 した。 ⑴ フォークリフト作業を行うときには、前もっ ② 被災者はフォークリフトの運転手 2 人と てその作業に係る場所の広さ、地形、フォーク 工場倉庫内にある部品の棚卸しのための検 リフトの種類、能力、荷の種類、形状等に適応 品作業を行っていた。 する作業計画を定め、かつその作業計画により ③ フォークリフトは最大荷重 1.5 トンのカウ ンターバランス型フォークリフトで運転手 は技能講習を修了していた。 作業を行わなければならない(労働安全衛生規 則第 151 条の 3)と定められている。 ⑵ フォークリフト作業を 2 人以上で行うときに ④ 被災者は工場内作業の班長であった。 は、作業指揮者を定め、作業計画に基づき作業 ⑤ フォークリフト運転手が一個目の部品(箱 の指揮を行わせなければならない。 (労働安全衛 詰)を引き出し別のラックに収めた後 2 個目 生規則第 151 条の 4) の部品(箱詰)を引き出そうとバックした時、 この場合は被災者が作業指揮者となる。 検品作業をしていた被災者をフォークリフ ⑶ 工場内では通行が煩雑しているため、フォー ト後部で激突したものである。 ⑥ 被災者は全身打撲の重傷であったが幸い にも命をとりとめた。 クリフト等の通行区分と人の通行区分を色等で 分ける等接触防止措置を講ずること。 ⑷ フォークリフト運転手に後退時には後方確認 6 災害発生原因 を指差し呼称等で確実に行うよう再教育を行う ⑴ こと。 フォークリフトを使って作業を行うときに 作業計画を定めていなかった。 陸運と安全衛生 №555 平成 27 年 10 月 1 日(毎月 1 回 1 日発行) 安全管理士 の着 眼 点 (7) トラックドライバーの過労死予防 安全管理士 堀野 弘志 今年も早いもので、年越しまであと 3 か月と なりましたが、11 月は「過労死等防止啓発月 間」とされ、厚生労働省は「過重労働解消キャ ンペーン」を実施し、長時間労働の削減等過重 労働解消に向けた集中的な周知・啓発を行うと しています(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisa kunitsuite/bunya/roudoukijun/campaign201 5.html)。 そこで、道路貨物運送業における過労死等の 実態を調査・分析してみました。 厚生労働省が公表した平成 26 年度の「過労 死等労災補償状況」によると、過重な仕事が原 因で発症した脳・心臓疾患について、「業務上 疾病」と認定し労災保険給付を決定した件数は 277 件で、うち死亡は 121 件でした。 「脳・心 臓疾患」277 件の内訳は、業種別では道路貨物 運送業の 77 件が最多で 28%(2 番手は飲食店 の 18 件、6%)となっています。また、職種別 では自動車運転従事者が最多の 85 件で 31%を 占めています(2 番手は法人・団体管理職員の 24 件、9%) 。 脳・心臓疾患のうち死亡の 121 件の業種別や 職種別の内訳は公表されていませんが、全業種 の年齢別と時間外労働時間数別の内訳は公表 されていますので、グラフで表します。 かります。また、時間外労働時間については過 労死認定要件である 1 か月 100 時間超、2~6 か月平均で 80 時間超という時間外労働時間数 の重要性が再認識されます。 では、道路貨物運送業のトラックドライバー の過労死や過労自殺はどのような状況なのか、 平成 26 年の死亡災害事例(労働者死傷病報告) の中で、起因物のないもの、分類不能のものな どの内、長時間労働が原因とされた過労死は全 業種で 47 件(過労自殺を含む)ありました。 業種別では道路貨物運送業が最多の 10 件で、 最も多い業種となっています。 平成 23 年から 26 年の 4 年間の事例を分類 すると、下図グラフの様に虚血性心疾患 ※によ る過労死が約 7 割、脳血管疾患が 25%となっ ています。 過労死の内訳(H23~H26) 精神障害 6% 脳血管疾患 25% くも膜下 出血 14% 自殺 6% 脳梗塞 3% 脳内 出血 8% 心停止 25% 脳・心臓疾患(死亡)の年齢別支給決定件数 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 心筋 梗塞 25% その他 19% 虚血性 心疾患 69% 10歳代 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳以上 脳・心臓疾患(死亡)の時間外労働時間数別 支給決定件数 60 50 40 30 20 10 0 時間外労働時間(1か月平均) グラフで明らかなように年齢別では 40 歳代 と 50 歳代の働き盛りが圧倒的に多いことが分 ※虚血性心疾患とは…心臓は絶え間なく動 き続けるため常に大量の酸素とエネルギー源 を必要としており、冠動脈を通じてそれらが心 筋に届けられます。しかし、動脈硬化などで冠 動脈に十分な血液が流れない状態になると、心 臓は虚血状態となり栄養不足になります。心筋 は数十分で壊死状態になり二度と元に戻りま せん。虚血が一過性の場合が狭心症で心筋が壊 死した場合が心筋梗塞です。 ●過労死発症のメカニズムと予防対策 脳・心臓疾患は生活習慣(食習慣、喫煙、飲 酒、運動不足など)から生活習慣病(高血圧症、 脂質異常症、高血糖症、肥満など)が原因で血 管病変(動脈硬化など)が進行し、そこに「業 務による明らかな過重負荷」が加わると発症す るリスクが高まります。40 歳代 50 歳代の生活 習慣病の所見がある働き盛りのトラックドラ イバーには、生活習慣病にならないように健康 管理体制を整備し、更に過重労働にならないよ うに、適切な労働時間管理を行う必要があります。 陸運と安全衛生 №555 平成 27 年 10 月 1 日(毎月 1 回 1 日発行) (8) 緑十字賞を受賞 平成 27 年度 中央労働災害防止協会は、長年にわたり我が国の産業安全又は労働衛生の推進向上に尽くし、顕著な 功績が認められた方々に贈る「緑十字賞」の平成 27 年度受賞者を決定しました。 受賞の表彰式は、来る 10 月 28 日(水)に愛知県名古屋市で開催される第 74 回全国産業安全衛生大 会総合集会において行われます。 当協会関係者では、次の方が受賞されます。心からお祝い申し上げます。 (敬称略・順不同) 産業安全 かわかみ か ず と 川上和人 陸上貨物運送事業労働災害防止協会鳥取県支部長 有限会社川上運輸 代表取締役社長 産業安全 いちみやこうぞう 一宮貢三 陸上貨物運送事業労働災害防止協会愛媛県支部長 一宮運輸株式会社 代表取締役社長 業種別労働災害発生状況 項目 死傷 平成27年1月~8月 平成26年1月~8月 [速報値] [速報値] 死亡者数 構成比 死亡者数 構成比 (人) (%) (人) (%) 業種 平成 27 年 9 月 7 日現在 死亡 前年比較 増減数 (人) 増減率 (%) 平成27年1月~8月 平成26年1月~8月 [速報値] [速報値] 死傷者数 構成比 死傷者数 構成比 (人) (%) (人) (%) 前年比較 増減数 (人) 増減率 (%) 全 産 業 564 100.0 618 100.0 -54 -8.7 65,144 100.0 67,007 100.0 -1,863 -2.8 製 造 業 101 17.9 116 18.8 -15 -12.9 15,135 23.2 15,660 23.4 -525 -3.4 鉱 業 8 1.4 8 1.3 0 0.0 126 0.2 151 0.2 -25 -16.6 業 197 34.9 233 37.7 -36 -15.5 8,756 13.4 9,803 14.6 -1,047 -10.7 交 通 運 輸業 17 3.0 10 1.6 7 70.0 1,885 2.9 1,945 2.9 -60 -3.1 陸上貨物運送事業 60 10.6 68 11.0 -8 -11.8 8,043 12.3 8,207 12.2 -164 -2.0 港 湾 荷 役業 5 0.9 4 0.6 1 25.0 181 0.3 222 0.3 -41 -18.5 業 19 3.4 27 4.4 -8 -29.6 976 1.5 960 1.4 16 1.7 農業、畜産・水産業 21 3.7 17 2.8 4 23.5 1,461 2.2 1,413 2.1 48 3.4 第 三 次 産業 136 資料出所:厚生労働省 24.1 135 21.8 1 0.7 28,581 43.9 28,646 42.8 -65 -0.2 建 設 林 業種、事故の型別死亡災害発生状況 (平成 27 年 1 月~8 月) 項目 業種 合計 墜落・転落 平成 27 年 9 月 7 日現在 はさまれ・ 交通事故 交通事故 飛来・落下 崩壊・倒壊 激突され 巻き込まれ (道路) (その他) 激突 その他 全 産 業 564 147 2 31 40 38 84 112 3 107 製 造 業 101 19 0 7 10 8 32 3 0 22 建 設 業 197 70 0 11 14 18 22 18 0 44 交 通 運 輸 業 17 5 0 0 0 0 0 7 2 3 他 189 46 2 9 8 12 27 50 1 34 陸上貨物運送事業 60 7 0 4 8 0 3 34 0 4 同 上 対 前 年 増減 -8 0 -1 1 4 -5 -6 -4 0 3 そ の 業種、事故の型別死傷災害発生状況 (平成 27 年 1 月~8 月) 業種 項目 合計 1,199 激突 616 飛来・落下 崩壊・倒壊 激突され 436 256 419 はさまれ・ 交通事故 交通事故 動作の反動・ 巻き込まれ (道路) (その他) 無理な動作 その他 910 541 5 1,112 232 -22 0 70 27 同 上 対 前 年 増減 2,317 転倒 -164 -59 -76 8 -16 26 -21 -101 (注) 上記 2 表の右端の列の「その他」は、「墜落・転落」~「交通事故(その他)」以外をまとめたもの 詳細は、陸災防ホームページ http://www.rikusai.or.jp に掲載 陸上貨物運送事業 8,043 墜落・転落
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