プログラム - 第58回 手外科学会 学術集会

プログラム
Thursday, April 16
4月16日(木)
Room 1
第 1 会場(Room 1)
8:10~8:40
会長講演
座長:水関 隆也(広島県障害者リハセンター)
1-1-PL
末梢神経障害の治療
根本 孝一(防衛医科大学校 整形外科学講座)
末梢神経障害の治療においては、損傷部位のみならず、「脳〜脊髄〜末梢神経〜効果器官」のループ
の全てを考慮する必要がある。障害部位は一カ所とは限らず、背景に糖尿病や慢性腎不全などの影響
により神経易損性が存在することもある。ストレスは各種疾患の発症と治療経過に影響を及ぼすが、
神経修復術後の回復も遅延させる。
神経移植術では神経断端を同定して新鮮化することが必須であるが、身体深部では周囲の癒着に埋も
れた神経断端の同定は極めて困難である。神経は周囲組織より軽度T2高信号を示すのでMR neurography
が撮像できる。神経に圧迫や損傷があって神経と神経周囲に炎症がある場合は、より鮮明な高信号変
化を示すので、損傷部位と範囲を同定できる。
神経の手術に際しては新たな神経損傷は絶対に避けねばならない。正常な運動枝を保護することは
神経鞘腫核出術において必須である。肺尖部に発生した軟部腫瘍は胸腔鏡視下に切除が可能である
が、下位腕神経叢や肋間神経の損傷を避けるために、試作した術中神経電気刺激器は有効である。
神経が損傷されると、受傷時を起点として効果器官の変性が生じ、再生軸索が効果器官に到達する
まで変性は進行する。したがって、この期間に効果器官の変性を防止することが重要である。脱神経
性筋萎縮の防止には持続的筋電気刺激療法が有効である。
フォーカル・ジストニアは手指の巧緻運動を障害する中枢神経の機能的障害である。原因が特定で
きない現時点では、複合的方法で治療を行うのが最善である。軟性装具は異常運動を物理的に抑制す
るとともに、いわゆる「感覚トリック」が働くため有効と考えられる。
鏡療法は幻視痛の治療法として開発された、脳可塑性を利用した治療法である。手外科領域でも応
用が可能であり、フォーカル・ジストニアと複合性局所疼痛症候群に対して有用である。
根本 孝一(ねもと こういち)
略歴:
1976年
1983~1988年
1985~1987年
1988~1992年
1991年
1992~1997年
1997~2004年
1998~1999年
2004~2015年
2007~2010年
2014年~
36
慶應義塾大学医学部卒業
国立栃木病院 理学診療科医長
カナダ留学(McGill大学 形成再建外科)
国立栃木病院 整形外科医長
AOA International Traveling Fellow
防衛医科大学校
防衛医科大学校
英国公務出張
防衛医科大学校
防衛医科大学校
防衛医科大学校
整形外科講師
整形外科学助教授
整形外科学教授
防衛医学研究センター長
教育担当副校長・医学教育部長
シンポジウム 1:TFCC の診断と治療
座長:三浪 明男(北海道中央労災病院せき損センター) 中村 俊康(国際医療福祉大学臨床医学研究センター)
1-1-S1-1
Microscopy coil を使用した MRI 矢状断画像による三角線維軟骨複合体
(TFCC)の尺骨付着部評価
Evaluation of the fovea attachment of Triangular Fibrocartilage Complex by Sagittal
plane MR Images using microscopy coil.
田中 利和(キッコーマン総合病院 整形外科)
TFCC 損傷を疑われた 20 例に対し MRI microscopy coil で撮像し、尺骨矢状面撮影による尺骨付着部
と disc の掌側移動の評価を行った。結果を知らない 1 人の整形外科に評価してもらい、最終的に手術,
関節鏡を行った。付着部の評価は感度 % 特異度 %であったが、disc の掌側への移動の複合評価
では感度 %特異度 %であり、付着部損傷の評価には複合評価が有効であった。
1-1-S1-2
TFCC 損傷に対する鏡視下 capsular repair
The Arthroscopic Capsular repair for TFCC Peripheral tear
安部 幸雄(済生会下関総合病院 整形外科)
TFCC周辺部損傷のうち尺骨茎状突起剥離断裂や背側部断裂は縫合術の適応となる.当科では outsidein でのマットレス縫合による鏡視下 capsular repair を基本としている.橈骨遠位端骨折に合併した周
辺部断裂の一期的縫合術の成績は良好であった.一方,慢性手関節尺側部痛症例におけるこれらの断
裂の縫合の結果も良好であった.鏡視下 capsular repair は手技に習熟すれば短時間で行え,良好な除
痛効果も得られる.
1-1-S1-3
遠位橈尺関節不安定性を伴う三角線維軟骨複合体尺側損傷に対する尺骨小
窩修復術:観血的手術と鏡視下経骨孔修復術の比較
Comparison of open versus arthroscopic transosseous foveal repair for ulnar side
TFCC tears with DRUJ instability
恵木 丈(大阪労災病院 整形外科)
池田 幹則,鈴木 啓介,矢野 公一
DRUJ 不安定性を有する TFCC 尺骨小窩損傷に対して手術を施行した 29 例、観血的修復術(O 群)14 例
と関節鏡視下修復術(A 群)15 例を比較検討した。手術時年齢は O 群平均 38 歳、A 群 31 歳。受傷から
手術までの期間は O 群平均 7 か月、A 群 11 か月。O 群は骨アンカーにより TFCC 深層の小窩への縫合
を行い、A 群は関節鏡視下に深層を尺骨小窩へプルアウト、同時に浅層を関節包に修復した。医師及
び患者立脚型評価共に A 群が術後 1 年時点で勝っていた。
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Room 1
9:00~10:30
Room 1
1-1-S1-4
Fovea 損傷に対する鏡視下 inside︲out 法による縫合法とその成績
Arthroscopic Inside-out Technique for Foveal Repair
藤尾 圭司(関西電力病院 脊椎外科 手外科 整形外科)
竹内 久貴,松本 泰一,片山 幹,橋村 卓実
TFCC の fovea 損傷の治療として手術成績を向上するには縫合部の充分な debridement 及び正確な位
置への縫合が重要である。fovea を debridement する方法として実質を開窓し橈骨手根関節から行う
方法、DRUJ 鏡を用いる方法、ミニオープンで行う方法の実際および鏡視下に我々の開発したガイド
を用いて inside-out 法で縫合する方法を紹介し、症例に応じた工夫とその成績について報告する。
1-1-S1-5
掌側進入法による直視下 TFCC 修復術の治療成績
Open Repair of the Triangular Fibrocartilage Complex from Palmar Aspect
森友 寿夫(大阪行岡医療大学 行岡病院手外科センター)
有光 小百合,久保 伸之,正富 隆,行岡 正雄
難治性手関節尺側部痛のある TFCC 小窩部断裂 21 例に掌側進入法による直視下 TFCC 修復術を行っ
た。掌側進入法によって小窩部の病変をよく観察することができ、尺側手根伸筋腱の腱鞘床や背側橈
尺靭帯浅枝を温存して掌側橈尺靭帯深枝を修復することができた。最終診察時、11 例で痛みは消失し、
握力は健側比 65% から 91% に改善した。最終成績は 18 例で優、3 例で良と良好であった。掌側進入法
では掌側橈尺靭帯深枝の縫合処置が容易であった。
1-1-S1-6
遠位橈尺関節不安定性を伴う TFCC 尺骨小窩部断裂に対する関節鏡援助下
靭帯修復術の治療成績
Arthroscopically Assisted Specified Limbs Repair (AASLR) for TFCC Foveal Tear
with DRUJ Instability
村田 景一(市立奈良病院 四肢外傷センター)
矢島 弘嗣,河村 健二,水谷 泰士,田中 康仁
DRUJ 不安定症を伴う TFCC 深層尺骨小窩部損傷に対して損傷靭帯を特定して靭帯修復術(AASLA
法)
を施行した.対象症例は 25 例,手術時年齢は平均 32 歳であった.術前後の疼痛,DASH,PRWE,
握力,DRUJ 不安定性,modified Mayo Wrist Score を比較評価した.平均 18 か月の術後中期調査期
間で AASLA 法の結果は良好であった.
1-1-S1-7
尺側手根伸筋腱半裁腱を用いた手関節 TFCC 再建術
Reconstruction of the TFCC using half-slip tendon of the extensor carpi ulnaris
中村 俊康(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター)
河野 友祐,小原 由紀彦,山部 英行,鎌田 雄策
遠位橈尺関節(以下 DRUJ)不安定性を伴う三角線維軟骨複合体(以下 TFCC)損傷に対し、尺側手根伸
筋腱(以下 ECU)半裁腱を用いた TFCC 再建法の成績を検討した。本手術を行い、1 年以上経過観察が
可能であった 65 例 66 手関節では優 50 良 9 可 3 不可 4 と良好な臨床成績を得ることができた。本手術
法は TFCC の 3 次元構造を良く温存し、回旋中心である尺骨小窩に残存 TFCC を誘導するために良好
な成績をおさめることができた。
38
特別講演 1
座長:山内 裕雄(順天堂大学 名誉教授)
1-1-SL1
手外科のときめき ―日手会の過去、現在、将来について―
矢部 裕(慶應義塾大学名誉教授)
私が日手会へ入会したのは 1960 年、日本は高度成長期にあり、すべてが右肩上がりにチェンジしつ
つある時代だった。慶應の岩原教授のドイツ語の整形外科学は古臭く、アメリカ式の手の外科は新鮮
で、接すると、未知への期待で胸がときめいた。
日手会学術集会は今年で第 58 回を迎える。1957 年九大の天兒教授が第 1 回の会長として学術集会を主
催し、岩原教授は第 3 回を主催した。私がフレマンの頃だった。手外科のときめきの原点は、アメリ
カで手の外科を学んで帰国した津下、田島両先生だった。学術集会におけるお二人の発表、特に手術
の結果は、スクリーンに映し出されて、一目瞭然だった。私自身、津下先生に師事し、米国 Campbell
clinic へ留学し Prof.L.Milford に学んだ。そして、手外科に熱中して行った。その研鑽中に私自身とき
めきを感じた具体的な事例について紹介する。そして手外科の素晴らしい仲間を得た。
日手会の歴史は、平成 13 年に刊行された記念誌「20 世紀の手の外科―21 世紀への飛躍を期待して」に
詳細に記録されている。この間、日本の手の外科は見事な飛躍を遂げた。21 世紀に入り、そして現在
も日手会会員数は順調な伸びを見せている。しかし、日本は少子高齢化が進み、人口の減少に加えて、
疾患構成も変わりつつある。このまま右肩上がりで推移はしない。幸い、日手会は日本医学会に加盟
することが出来た。そして 2 階建て構造として、専門医制度にも乗れそうだ。さらに、学問的にも臨
床的にも社会的にも深め、国民から認知されるべく努める必要がある。
2014 年の春の日手会総会で、形成外科の理事を加えて、役員は刷新され、新しく理事長が選出された。
ヌーベルバーグとして期待するところ大である。
そして、特に若手の日手会会員は手外科のときめきを胸に感じて深めていって欲しい。
矢部 裕(やべ ゆたか)
略歴:
1932年埼玉県生まれ
慶應義塾大学医学部卒業
1957年 3月
同大学大学院
(外科系整形外科学)入学
1958年 4月
国療長嶋愛生園に勤務する傍ら岡山大学津下健哉先生に師事
1963年 1月
米国テネシー州立大学に留学(Prof.L.Milfordに師事)
1969年10月
名古屋保健衛生大学整形外科教授
1972年12月
慶應義塾大学整形外科教授
1986年 6月
慶應義塾大学病院長
1991年10月
同大学名誉教授、国家公務員共済立川病院長(2003,3まで)
1998年 4月
主催学会:第33回日手会
(1990)
、第69回日整会(1996)
等
賞罰:Pioneer of the Hand Surgery
(2004)、日整会学会賞(2012)
等
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Room 1
10:55~11:55
Room 1
13:25~14:25
教育研修講演 1
座長:佐々木 孝(済生会神奈川県病院)
1-1-EL1
最も悲惨な野球肘 ―離断性骨軟骨炎―
The most miserable baseball elbow: Osteochondritis of the humeral capitellum
伊藤 恵康(慶友整形外科病院)
いわゆる野球肘には Little leaguer’s elbow、小頭離断性骨軟骨炎、尺側側副靭帯損傷、肘頭疲労骨折、
滑膜襞障害等が代表的なものである。中でも悲惨な後遺障害をきたす可能性が最も高い障害は離断性
骨軟骨炎である。過酷な練習、未治療、発見の遅れ、不適切な治療などにより高度な変形性肘関節症
を遺し、スポーツ活動はもとより日常生活にも支障をきたす例が少なくない。平成 2 年からこれまで
に手術的に治療した症例は 800 例以上となり、愕然とした。手術法は、症例に応じて骨釘移植、モサ
イク形成、遊離体摘出術、遊離体再固定、肋骨肋軟骨移植、およびこれらの組み合わせで選択した。
離断性骨軟骨炎の経験を振り返って、成績不良となった症例の問題点を考えて見たい。
伊藤 恵康(いとう よしやす)
略歴:
昭和42年
昭和43年
昭和57年
昭和64年
平成17年
40
慶應義塾大学医学部卒業
同整形外科学教室入局
専任講師
慶友整形外科病院副院長
同病院長
パネルディスカッション 1:PIP 関節脱臼骨折の治療
座長:島田 幸造(JCHO 大阪病院救急部/スポーツ医科学)
佐藤 和毅(慶應義塾大学整形外科)
1-1-P1-1
経皮ピンニングによる PIP 関節掌側脱臼骨折の治療
Percutaneous Pinning for Palmar Fracture Dislocation of the Proximal Interphalangeal
Joint
千馬 誠悦(中通総合病院 整形外科)
成田 裕一郎
手指 PIP 関節の掌側脱臼骨折に対しての経皮ピンニング手術結果を報告する.対象は 6 か月以上の経
過観察できた 9 例 10 指で,すべて小指であった.手術は径 1mm の鋼線を近位背側から骨片の背側で
中央を滑らせて,先端を骨片間から中節骨の髄内へ刺入して固定する.全例で骨癒合し,PIP 関節の
可動域は平均で自動伸展が -12°,自動屈曲が 92°であった.経皮操作で整復と固定ができれば,本法
は有用な治療方法の一つといえる.
1-1-P1-2
PIP 関節背側脱臼骨折に対するミニプレート固定手術
Mini plate fixation for the treatment of PIP joint fracture dislocations
岡崎 真人(荻窪病院 整形外科)
田崎 憲一,西脇 正夫,谷野 善彦
PIP 関節背側脱臼骨折に対してミニプレート固定した 15 例の治療成績について検討した。術後 6 週で
の自動 PIP 関節屈曲は 35〜100°
( 平均 75°)で、最終経過観察時の自動 PIP 関節屈曲 57〜110°
( 平均
91°)、伸展 -30〜+10°
( 平均 -6°)、握力健側比 68〜122%(平均 94%)だった。小指例、受傷から手術
まで 3 週以上経過した例は可動域回復が劣った。
1-1-P1-3
陥没骨片を伴った PIP 関節背側脱臼骨折に対する側方アプローチ:
動的創外固定と牽引ギプス固定の比較
Lateral approach for fracture dislocation of proximal interphalangeal joint
accompanied with the depressed fragment: Comparison of dynamic external fixation
with cast immobilization with traction
矢崎 尚哉(静岡済生会総合病院 手外科・マイクロサージャリーセンター)
矢島 弘毅,木野 義武,渡邉 健太郎
観血的治療を行った陥没骨片を伴った軸圧型 PIP 関節背側脱臼骨折 19 例 20 指を対象とした.10 指は
術後に直達牽引を行った.他の 10 指に動的創外固定を追加した.2 群間の可動域に有意差を認めなか
った.PIP 関節屈曲は牽引ギプス群に成績不良例が 1 指あったが,創外固定群は全例が良好だった.
動的創外固定を使用することにより,PIP 関節屈曲は満足すべき結果が得られたが,半数の例に PIP
関節伸展制限が残った.
41
Room 1
14:35~16:05
Room 1
1-1-P1-4
PIP 関節脱臼骨折における DDA 創外固定器の問題点
Postoperative finger deformity with DDA external fixation in PIP joint fracturedislocation
木村 和正(越谷誠和病院 整形外科)
佐野 和史,増田 陽子,橋本 智久,大関 覚
対象は DDA 創外固定単独で治療を行った PIP 関節脱臼骨折 11 例。手術は牽引整復後に陥没転位が遺
残する場合には Hintringer 法を追加、創外固定を装着した。調査時の平均伸展、屈曲は PIP-1°, 96°、
DIP-4°, 79°。整復 pin の刺入を要した 6 例中 4 例がスワンネック変形を認めた。この変形を予防する
ために術後の過牽引に注意する事や、MP 屈曲下の早期 DIP 可動域訓練から FDP 腱・側索の癒着を回
避する事等は肝要と思われる。
1-1-P1-5
指関節牽引可能な可動式創外固定器を併用した骨軟骨移植による指関節形
成術
Finger joint plasty using osteochondral graft with joint traction mechanism type hinge
external fixator
五谷 寛之(清恵会病院大阪外傷マイクロサージャリーセンター)
田中 祥貴,宮下 昌大,佐々木 康介,山野 慶樹
可動式創外固定併用例(Compass PIP hinge, Global hinge fixator(本邦発の新しい創外固定器),Suzuki
type fixator)を併用した骨軟骨移植を指関節に行った。骨軟骨は肋骨肋軟骨や手根骨から採取した。
最終成績は MP 関節で自動 ROM が平均 56、PIP 関節で平均 62.3 度であった。この方法は手術前に関
節列隙を保持しながら、可動域訓練を行なう事、骨軟骨移植後の 2 期的再建後に過牽引下にリハビリ
を行う事の 2 つの利点がある。
1-1-P1-6
陳旧性 PIP 関節脱臼骨折に対する治療成績の検討
Surgical Treatment for Chronic Fracture-dislocation of the PIP Joint
佐藤 和毅(慶應義塾大学医学部 整形外科学教室)
岩本 卓士,鈴木 拓,増田 秀輔,越智 健介
陳旧性 PIP 関節脱臼骨折 41 例 41 関節の治療成績を検討した。受傷から手術までの期間は 6 週間から
19ヵ月、施行手術は矯正骨切り術 27 例、骨軟骨移植による関節形成術 13 例、人工関節置換術 1 例、
経過観察期間は 6-72ヵ月であった。術前 / 最終診察時の平均関節可動域は矯正骨切り術群 19.2/73.0
度、関節形成術群 5.9/65.8 度、人工関節置換術 25/70 度で、いずれの術式も良好に改善し、有用な治
療法と考えられた。関節軟骨損傷が高度な例に対しては関節形成術や人工関置換術が選択肢になり得
ると考えた。
42
シンポジウム 2:腱損傷
座長:坪川 直人(新潟手の外科研究所)
内山 茂晴(信州大学整形外科) 1-1-S2-1
陳旧性屈筋腱損傷に対する滑膜内腱移植術の経験
Flexor tendon grafting to the hand using the intrasynovial donor tendon
大井 宏之(聖隷浜松病院 手外科・マイクロサージャリーセンター)
内山 茂晴,神田 俊浩,向田 雅司,加藤 博之
陳旧性屈筋腱断裂に対する滑膜内腱移植の 2 施設研究。対象は 7 例 7 指。腱移植後 5 例は早期自動屈伸
訓練、2 例が早期他動屈曲自動伸展訓練を行った。1 例が術後 3 週で感染を起こし再断裂。感染沈静後
再腱移植を行った。再腱移植時に断裂した移植腱は正常の腱に近い性状であり、癒着も少なかった。
2 例で腱剥離術を要したが、腱剥離時の移植腱はこちらも正常の腱に近い性状であった。最終結果は
%TAM が 89%、%術後達成が 85% であった。
1-1-S2-2
国際分類 zone II 遠位での手指屈筋腱損傷に対して A4 滑車切除と早期自動
運動療法を施行した症例の検討
Evaluation of Flexor Tendon Repair with Excision of A4 Pulley and Early Active
Mobilization in Distal Zone II
森谷 浩治((財)新潟手の外科研究所)
吉津 孝衛,牧 裕,坪川 直人,成澤 弘子
【目的】国際分類 zone II の新鮮手指屈筋腱損傷に対して A4 滑車の切除と早期自動動療法を施行した
症例について調査した。【対象と方法】1993-2014 年に治療した 15 例 22 指を対象とした。【結果】腱浮
き上がり現象はなく、最終診察時の総自動運動域(TAM)は平均 233°であった。【考察】zone II 損傷
においても C1 滑車が温存できれば、A4 滑車切除が TAM や腱浮き上がり現象に及ぼす影響はほとん
どないと考える。
1-1-S2-3
屈筋腱引き抜きを伴った手部外傷に対して行った腱移行術―指引き抜き切
断を中心に―
Tendon transfer for reconstruction of avulsed flexors in hand injuries-Treatment of
finger avulsion injuries五谷 寛之(清恵会病院大阪外傷マイクロサージャリーセンター)
田中 祥貴,矢野 公一,佐々木 康介,山野 慶樹
手指屈筋腱の引き抜きを伴う手部のデグロービング損傷や手指切断において機能再建、特に手指屈筋
腱の再建は重度の軟部組織損傷の故に困難を伴う。我々は再建に隣接指の屈筋腱等を腱移行に用いて
おりその成績について報告する。初回手術時に腱移行を行った症例は 5 指であり、二期的に腱移行を
施行した例は 4 指であった。最終観察時に Grade1 が 1 例 2 指、Grade2 が 3 指、Grade3 が 4 指であり、
Grade4 はなかった。
43
Room 1
16:15~17:45
Room 1
1-1-S2-4
屈筋腱損傷修復後(zone2)に対する早期自動運動法の成績
Results of Early Active Mobilization after Flexor Tendon (zone2) Repair
奥村 修也(聖隷浜松病院 リハビリテーション部)
大井 宏之,神田 俊浩
屈筋腱損傷修復後に早期自動運動法(EAM)を導入して 20 年を経たので成績について報告する。対象
は 1994-2014 年に zone2 の一次修復した 25 手 31 指である。成績は %TAM 法で優 23 指・良 8 指であった。
EAM では自動屈曲が重視されるが、EAM に IP 関節の伸展制限予防に伸展スプリントも早期から導
入たこと、最大伸展位から自動屈曲することで腱滑走が大きく得られ修復腱の滑走障害防止に効果を
あげたことが結果に結びついたと考えられた。
1-1-S2-5
Zone II 屈筋腱損傷に対する早期自動運動療法 ―治療成績に影響を与え
る因子の検討―
Analysis of factors influence outcome in early active mobilization for flexor tendon
injury in zone II of the hand.
金城 養典(清恵会病院手外科マイクロサージャリーセンター)
高松 聖仁,鈴木 啓介,福田 誠,日高 典昭
Zone II 屈筋腱損傷の早期自動運動療法において,治療成績に影響を与える因子を検討した.対象は
28 例 30 指,平均経過観察期間は 7 か月であった. Strickland の評価基準を用いた最終評価では,優
23 指,良 7 指であり,術後 4 週目の屈曲拘縮の状態が最終成績に影響していた.早期自動運動療法は
比較的良好な成績であったが,より伸展を意識した後療法が治療成績の向上に重要と考えられた.
1-1-S2-6
手指 MP 関節伸筋腱脱臼の手術療法の経験
Operative treatment for extensor tendon dislocation of metacarpophalangeal joint of
fingers
西浦 康正(筑波大学附属病院 土浦市地域臨床教育ステーション)
原 友紀,神山 翔,村井 伸司,井汲 彰
手指 MP 関節伸筋腱脱臼 11 例 12 手 20 指の手術法と治療成績について報告する。局所麻酔下に手術を
行った。全例尺側への脱臼であった。手術法は、損傷部の縫合 2 例、尺側腱間結合の切離のみ 1 例、
他の 8 例では、尺側の緊張をゆるめ、その上で橈側矢状索の縫縮を行った。自動運動で緊張を確認し
た。必要に応じ腱間結合の一部を反転させ補強した。術後 4 か月以上経過観察時に、再脱臼なく、疼
痛なく、可動域正常と治療成績は良好であった。
44
防衛衛生セミナー
座長:尼子 雅敏(防衛医科大学校)
1-1-BS
自衛隊による国際貢献活動と災害派遣
International contributions and disaster relief missions of Japan Self Defense Forces
川口 雅久(防衛省陸上幕僚監部衛生部)
近年、国内外における自衛隊の役割はより一層多様化している。
自然災害が多い我が国において、災害救助活動は自衛隊にとって重要な任務の一つであり、古くは
1959 年の伊勢湾台風に対する救助活動が実施された。近年では、記憶に新しい御嶽山における噴火災
害、東日本大震災における大規模震災および原子力災害、そして高病原性鳥インフルエンザや口蹄疫
への対応等、内容的にも多岐にわたる任務の遂行が求められてきている。
自衛隊の災害派遣は、原則的に都道府県知事からの要請に基づき、自衛隊法の下に様々な活動が実
施される。この際、「公共性」
「緊急性」
「非代替性」の 3 つの基本原則に沿って行われる。また、行動と
しては大きく「災害派遣」
「地震防災派遣」
「原子力災害派遣」などを定めている。これを基に各種災害の
発生時に、地方公共団体や関係諸機関等と連携・協力し、被災者の捜索・救助、医療・患者搬送、防
疫、給水、人員の輸送といった活動を実施する。
一方、国際平和協力法、国際緊急援助隊法及び各種特別措置法等に基づき、海外における活動にも
積極的に取り組んでおり、これまでに全て合わせると 20 以上のミッションに参加してきた。
国際平和協力活動とは、国際的な安全保障環境を改善するために国際社会が協力して行う活動をい
う。現在までに、国連平和維持活動(いわゆる PKO)への協力をはじめとする国際平和協力業務(イラ
ク人道復興支援活動やソマリア沖・アデン湾における海賊対処活動等)や海外の大規模な災害に対応
する国際緊急援助活動(フィリピン国際緊急援助活動、スマトラ沖大規模地震及びインド洋津波にお
ける国際緊急援助活動等)などを行ってきた。
海外における災害に関しては、特に開発途上地域に於いて大規模な災害が発生又はその恐れがあ
り、被災国の政府等からの要請があった場合、外務大臣と防衛大臣の協議に基づいて自衛隊は国際緊
急援助活動を実施する。自衛隊は、緊急援助活動としての医療活動、輸送活動、給水活動などの協力
を行うことができるが、具体的にどのような活動を行うかについては、個々の災害の規模や態様、被
災国政府または国際機関からの要請内容など、その時々の状況により判断される。
背景が多様で様態が複雑・多彩な事態が世界各地で生起しており、テロ、海洋の安全保障、自然災
害への対処といったいわゆる「非伝統的」な安全保障分野については多国間協力の重要性がますます高
まっている。さらに、大規模災害や感染症の流行に対しても迅速な対応が国際社会に対して求められ
てきている。災害に関する活動の主体はあくまで文民であるが、迅速かつ大規模で自己完結性を保持
する各国軍等との連携が重要となる場合も少なくない。こうしたいわゆる民軍協力への関心は国際的
にも高まっている。
今回、これまで自衛隊が実施してきた国際貢献活動や国内での災害派遣等について、日本手外科学
会員たる自衛隊医官が参加したミッションを中心に紹介させていただく。自衛隊の活動内容や課題を
ご理解いただくことにより、関係自治体や諸機関、各種医療機関等との連携がさらに進み、より有効
な救助・支援等が可能となることの一助となれば幸甚である。
川口 雅久(かわぐち まさひさ)
略歴:
平成 4年
防衛医科大学校医学科卒業
45
Room 1
18:00~19:00
Room 1
平成 4年
平成 6年
平成 8年
平成10年
平成13年
平成15年
平成16年
平成18年
平成22年
平成23年
平成25年
平成26年
46
防衛医科大学校整形外科
第1後方支援連隊衛生隊
防衛医科大学校整形外科
自衛隊中央病院整形外科
McGill大学(カナダ)留学
第4師団司令部医務官
陸上幕僚監部衛生部
自衛隊中央病院整形外科
防衛研究所一般課程
陸上幕僚監部衛生部企画室・自衛隊中央病院整形外科
西部方面総監部医務官・自衛隊熊本病院整形外科
陸上幕僚監部衛生部企画室長・自衛隊中央病院整形外科
第 2 会場(Room 2)
8:45~9:45
招待講演 1
座長:矢島 弘嗣(市立奈良病院四肢外傷センター)
The management of Vascular anomalies of the upper limb
Hiroshi Nishikawa (西川 洋), MB BChir, MA, MD, FRCS(Plast)
(Consultant Craniofacial and Plastic Reconstructive Surgeon, Birmingham Children’s Hospital, UK)
Vascular anomalies have been classified by Muliken and Enrolas according to the type of abnormal blood
vessel that it contains. The most common anomaly affecting the upper limb are haemangiomas and
congential vascular tumours, which eventually regress. The other main groups affecting the upper limb are
vascular malformations. The majority of these are low flow lesions of which venous malformations and
lymphatic malformations comprise the majority. Rarely high flow lesions affect the upper limb and these
are mostly congenital arterio-venous malformations (AVM). This paper concerns the management of these
lesions based on experience over the last 15 years at the Birmingham Children’s Hospital UK. There has
been a switch away from surgery to interventional radiology for the first line treatment in the form of
sclerotherapy. Laser continues to be used for capillary malformations (port wine stains). The techniques of
both sclerotherapy and surgery are explained including the types of injectable materials used and the role
and timing of surgery. The difficulties of treating high flow lesions such as AVMs, is also discussed. The
experience with embolisation with Onyx®, for AVMs in combination with surgery is presented. The need
for combined, multi-disciplinary approach in the management of vascular malformations is stressed.
Hiroshi Nishikawa is a consultant craniofacial and plastic reconstructive surgeon. He was born in Japan but
has lived in the UK since the age of three. He was educated at Dulwich College and he underwent medical
training at Cambridge University and Kings College Hospital London. He was trained in plastic surgery in
London, Leeds and Taiwan and was a craniofacial fellowship in Adelaide South Australia. He was a consultant
craniofacial surgeon in St James Hospital Leeds from 1995 until 2001. Since then he has been a consultant at
the Birmingham Children’s Hospital Birmingham UK. He has been the clinical lead of both plastic surgery and
the craniofacial departments in Birmingham. He was also lead clinician of the vascular anomalies multidisciplinary team in this hospital and is a senior intercollegiate college examiner for plastic surgery in the UK.
He has been on the council of the British Association of Plastic and Aesthetic Reconstructive Surgeons and is
a member of the Royal Society of Medicine. He is a board director and founder of The Westbourne Clinic in
Birmingham which has pioneered local anaesthetic and sedation techniques for aesthetic and reconstructive
patients. He is married with three children.
47
Room 2
1-2-IL1
9:50~10:50
招待講演 2
座長:西浦 康正(筑波大学附属病院土浦市地域臨床教育センター)
1-2-IL2
Nerve injury, the dying neurons and the frustrating nerve gap
Mikael Wiberg, MD, PhD
Room 2
(Professor, Dept of Hand and Plastic Surgery, Umeå University Hospital, Sweden)
Functional recovery after peripheral nerve injury is limited by many factors related to the biology of the
nervous system, including the extent of nerve cell survival after the injury, the rate and quality of axonal
outgrowth, the orientation and specificity in growth of regenerating axons, production of scar molecules
and the survival and state of the end organs. We are investigating the biological reactions which impede
regeneration with the goal to develop novel therapies to increase neuronal survival and reduce target organ
atrophy. Using experimental in vivo peripheral nerve injury models we have characterised the time course
of neuronal cell death and we have also studied this after upper limb nerve injury in patients. We are
investigating the apoptotic signalling mechanisms which lead to the cell death and elucidating the role of
microRNAs, important post transcriptional regulators, in controlling how these processes are activated or
repressed. We have shown that antioxidant drugs such as N-acetyl-cysteine provide significant
neuroprotection after nerve trauma.
Clinical treatment of extensive peripheral nerve injuries involves bridging the defect with a nerve autograft
taken from elsewhere in the body. This helps to guide some of the regenerating nerve axons across the gap
and towards the distal target organs. However, even in this “best case scenario”, functional recuperation of
muscle movement and skin sensitivity is very often poor. This loss of function and the added morbidity for
the patient due to the need to retrieve a nerve for the graft is far from ideal and has prompted the search for
alternative approaches. We are combining cells and biomaterials to create artificial nerve repair conduits
within which the regrowing axons are directed by path-finding cues and stimulating molecules. Adult stem
cells can be isolated from various sources including fat, bone marrow and dental tissues. We are
investigating the neurotrophic, angiogenic and immunomodulatory activities of these cells to find the best
cell types to treat nerve injuries. We have shown that these stem cells can be stimulated to become like glial
cells which help repair the damaged peripheral neurons. When the stem cells are transplanted within the
nerve repair conduits they promote axon regeneration, enhance remyelination and increase proximal neuron
cell survival.
The timing of surgery is another factor influencing the extent of recovery but it is not yet clearly defined
how long a delay may be tolerated before repair becomes futile. In experimental systems we have shown a
dramatic decline in the number of regenerating neurons and myelinated axons found in the distal nerve
stump when repair is made more than one month after injury. There is also a significant decline in Schwann
cells accompanied by a progressive increase in fibrotic and proteoglycan scar markers in the distal nerve
with increased delayed repair time. Muscle atrophy is also significantly increased with any delay in nerve
repair suggesting the distal stump reactions also play a significant role in impeding functional recoveries.
Our current research is therefore also focussing on targeting the distal stump, in addition to finding new
ways to increase neuronal survival.
Mikael Wiberg was born 5 April 1957 and got his University Medical Degree 1985 at Uppsala University in
Sweden. He got his PhD in Neuroscience at the same University 1986 and became Associate Professor in
Neuroscience 1991. During the same period he trained as Hand and Plastic Surgeon and became Consultant
in these clinical subjects 1991 and 1995, respectively. After one years fellowship in Microsurgery in Leeds, UK,
he returned to an Academic post in the Department of Hand and Plastic Surgery, Umeå University and
48
49
Room 2
University Hospital, where he since 2001 is Professor of Hand Surgery and Anatomy, Senior Consultant and
Head of the academic Department.
His area of research is within neurotrauma and specifically how to improve the functional results after
peripheral nerve injuries. His work is both experimental and clinical and has the last ten years been focused on
the importance of timing of surgery, neuroprotection and the use of stem cells to bridge nerve defects. He has
published around 130 peer reviewed papers, several review articles and book chapters. He has supervised 18
MD and PhD students and runs a research group of 15 people.
The last five years his main research grants have been approved by The Swedish Medical Research Council,
EU-VII framework and EU-regional funds.
His clinical subspecialities are pediatric and nerve surgery.
Prof Wiberg is represented at many national and international committees and at present a substantial time is
spent being the Director of Research of the University Hospital, Umeå, and their regional representative in the
National Committee for Transplantation.
12:10~13:10
西新宿セミナー 1
座長:金谷 文則(琉球大学)
共催:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
1-2-LS1-1 橈骨遠位端骨折治療の最近の話題
Room 2
~
「守・破・離」を踏まえて~
善家 雄吉(産業医科大学 整形外科学)
酒井 昭典
「守・破・離」に則って、最近の橈骨遠位端骨折の話題につき検討した。「守」:橈骨遠位端骨折に対す
る保存治療についての再考と掌側ロッキングプレート固定の明確な適応や標準的手術手技について。
「破」:手関節尺側部痛に関する知見については手関節鏡を用いた評価が必須であるが、その判断は難
しい。「離」:「Dual window approach」は、橈骨遠位端骨折の尺骨遠位端骨折合併例や掌尺側骨片の
正確な整復を行う際にとりわけ有用なアプローチである。
善家 雄吉(ぜんけ ゆうきち)
略歴:
昭和47年生まれ
平成 9年
産業医科大学医学部医学部 卒業
産業医科大学医学部付属病院整形外科
平成13年
平成15年
マツダ
(株)
健康推進センター(広島県)産業医
長崎労災病院整形外科 副部長
平成17年
平成18年
香川労災病院整形外科 副部長
平成21年
産業医科大学整形外科
BG Unfallklinik Tuebingen(HPRV unit)fellowship(独:2ヶ月)
義大病院
(E︲DA hospital)
骨科 visiting scholar
(台湾:3ヶ月)
平成22年
埼玉成恵会病院・埼玉手の外科研究所
平成23年
埼玉医大総合医療センター高度救命救急センター助教
平成23年
産業医科大学救急・集中治療部 助教
産業医科大学整形外科 助教
平成24年
50
1-2-LS1-2 現代の日本社会における橈骨遠位端骨折治療のあり方
内藤 聖人(順天堂大学附属順天堂医院 整形外科)
内藤 聖人(ないとう きよひこ)
略歴:
昭和53年生まれ
高知医科大学医学部医学科 卒業
平成15年
平成15年
順天堂大学医学部付属順天堂医院
順天堂大学医学部付属静岡病院
平成18年
平成22年
伊豆保健医療センター 整形外科医長
平成22年
順天堂大学大学院 卒業(医学博士取得)
順天堂大学順天堂病院 非常勤助教
平成22年
平成22年
フランス ストラスブール大学手の外科教室Pr LIVERNEAUX 留学
平成24年
順天堂大学医学部付属静岡病院
順天堂大学医学部付属病院
平成26年
51
Room 2
掌側ロッキングプレートの普及とともに橈骨遠位端骨折治療に対する保存治療は手術治療より難易度
が高いものとなり、また良質な保存治療を継承している施設は少なくなった。一方、現代日本では周
囲からの支援が手薄な高齢者や保存治療を受け入れられない青壮年者が人口の大多数を占める。今
や、掌側ロッキングプレートによる手術治療は良好な短期成績が期待され、積極的な手術加療は現代
の社会背景に適しているかもしれない。
13:25~14:25
招待講演 3
座長:柴田 実(新潟大学)
1-2-IL3
From Debates to Conclusion in Peripheral Nerve Injury and
Reconstruction
Room 2
David Chwei-Chin Chuang, M.D
(Professor, Taipei-Linkou Chang Gung Memorial Hospital, Chang Gung University, Taiwan)
I have obtained my microsurgical careers since 1982 . I become a peripheral nerve reconstructive
microsurgeon after my training with four inspirited teachers: Prof. Julia K Terzis (USA), Prof. H Millesi
(Austria), Prof. A Narakas (Switzerland) and Prof. Toru Kondo (Japan). I have performed numerous
reconstructions related to peripheral nerve injuries, including adult brachial plexus injuries (more than 1800
cases ), obstetrical brachial plexus palsy (more than 500 cases, including infant OBPP and Child OBPP ),
facial paralysis (> 350 cases), functioning free muscle transplantation (near 1000 cases), compression
neuropathy (thoracic outlet syndrome, cubital tunnel syndrome, carpal tunnel syndrome, and others), and
other numerous peripheral nerve injuries and reconstructions. I also performed numerous searches on
peripheral nerve especially on nerve transfers.
There are many debates but few conclusion or answers on peripheral nerves reconstruction. I am today
trying to make some conclusion related to peripheral nerve debates from my person point of views,
including 1. Classification of degree of nerve injury, 2. Classification of traction avulsion amputation of
limbs and reconstruction, 3. Surgical treatment of thoracic outlet syndrome, 4. Surgical treatment of cubital
tunnel syndrome, 5. Classification of level of brachial plexus injury, 6. Proximal-to-distal vs distal-toproximal in priority reconstruction in brachial plexus injury; 7. Nerve transfer. in BPI, 8. Choice of
neurotizer (CFNG vs spinal accessory nerve vs masseter nerve) for facial paralysis reconstruction, 9.
Postparetic facial synkinesis treatment, 10. Evaluation system to evaluate functional result after free muscle
transplantation.
1.
2.
3.
4.
52
Since 1984, the first surgeon in Taiwan concentrates in peripheral nerve injury, research and its
reconstruction → from desert to greenland
Between 1985 and 2014, I have performed near 2000 cases of adult brachial plexus exploration and
reconstruction, functioning free muscle transplantation (near 1000 cases for different purposes), more
than 500 cases of obstetrical brachial plexus palsy reconstruction (including early nerve reconstruction,
enterovirus brachial plexus neuritis treatment, and late sequelae reconstruction), facial paralysis
reconstruction (> 400 cases), compression neuropathy treatment (thoracic outlet syndrome > 60 cases,
cubital tunnel syndrome > 350 cases, carpal tunnel syndrome > 650 cases), radial nerve > 450 cases
and other numerous median, ulnar, femoral, sciatic, common peroneal nerve, posterior tibial nerve etc
peripheral nerve injuries and numerous peripheral nerve sheath tumors (neurofibroma, schwannoma,
plexiform types) resection.
I have developed many concepts and techniques related to peripheral nerve reconstruction, such as
classification of brachial plexus injury, classification of radial nerve injury, classification of postparetic facial
synkinesis and strategy for treatment, classification of traction avulsion amputation of the major limb,
technique of gracilis myocutaneous flap harvest, technique revolution of facial nerve reconstruction,
surgical treatment of thoracic outlet syndrome, subfascial anterior transfer for cubital tunnel syndrome,
operative methods of nerve transfer for irrepairable brachial plexus avulsion injury, contralateral C7
transfer, intercostals nerve transfer, nerve transfer for functioning muscle transplantation (for elbow
flexion, elbow extension, finger flexion or finger extension ).
Chapter author for two versions (2nd version 2006, third version 2013) of textbook of “Plastic Surgery”,
for Adult brachial plexus injuries.
Host chairman to host “ Instructional Course for Adult Brachial Plexus Injuries”, at Linkou-Chang Gung
Memorial Hospital, November 10-11, 2009. Including 6 live surgeries (3 for nerve reconstruction, 3 for
functioning muscle transplantation), 8 lectures and “Q and A” discussion
6. Host chairman to host “Instructional Course for Facial Paralysis Reconstruction” at Linkou-Chang Gung
Memorial Hospital, Oct. 25, 26, 2011, including 8 live surgery, 10 lectures and “Q and A” discussion
7. Numerous presentations and publications, clinical and research
8. Have treated foreign patients from different countries, including India, Malaysia, Thailand, Malaysia,
Korea, Singapore, Philippine, mainland China, Australia, Portugal, Spain, Pakistan, Iraq, Nigiria, Sri Lanka
and USA
9. journal’s reviewer, including PRS, JPRAS, JHS (America), JHS (European) Journal of brachial plexus and
peripheral nerve injury and journal of PRS (ROC)
10.ex-Present of Taiwan Society for Plastic Surgery; ex-President for Taiwan Society for Surgery of the
Hand. Establish CME for both societies.
11.President-elect WSRM (2014-2015); President of WSRM (2015-2017)
5.
Room 2
53
14:35~16:25
シンポジウム 3:音楽家の手の障害
座長:酒井 直隆(東京女子医科大学附属青山病院整形外科)
有野 浩司(防衛医科大学校) 1-2-S3-1
Room 2
管楽器奏者の手の問題
Hand Problems in Wind Instrument Players
有野 浩司(防衛医科大学校 整形外科)
根本 孝一,尼子 雅敏
日本には吹奏楽団が多数存活動しているため管楽器奏者数は案外多い。管楽器は奏者自身が手で重量
を支えながら演奏することが多く、多くの障害が上肢に発生する。中でも手関節、手指に多い。治療
は楽器・奏法の調整が重要で、保存的に行うのが基本であり、薬物療法以外に装具療法、理学療法も
管楽器奏者と楽器の特性を考慮しながら行うことが重要である。手術適応は限定的で十分に長所・短
所を考慮して行い、楽器との接触部の皮切を避ける。
1-2-S3-2
弦楽器奏者の障害に対処するためのヒント
A cue for solution of musculoskeletal problems of instrumental musicians
大江 隆史(名戸ヶ谷病院 整形外科)
弦楽器の特徴は弦をおさえる指の位置で音高を決める点、弦と弓との位置関係で音色を変える点であ
る。弦楽器では楽器の位置を保持するためにも身体を使う。左上肢では肘は屈曲し、前腕は回外し、
手関節は屈曲する。また指の末節にかかる力も場面により変化する。弓を素早く移動させるために右
肘関節は素早く反復して屈伸される。また指の滑らかな移動には手内筋の働きが欠かせない。弦楽器
奏者の診療に必要な知識を示したい。
1-2-S3-3
ピアノ奏者の手の障害
Musician’s Hand in Pianists
和田 卓郎(北海道済生会小樽病院 整形外科)
射場 浩介,花香 恵,渡邊 祐大,織田 崇
ピアノ演奏には手指の大きな可動域,スピードと強弱のコントロールという高度なスキルが要求され
る.練習が長時間に及べば,ピアニストには overuse を中心とした様々な手の障害が発生する.本発
表では,頻度の高い腱滑膜炎,絞扼性神経障害,focal dystonia,CM 関節炎などの診断と治療を概説
する.さらに,演者らが経験した手術例を提示し,手術適応,手術法について考察する.
54
1-2-S3-4
楽器奏者に発症する胸郭出口症候群―鑑別診断の必要性
Thoracic Outlet Syndrome of the Musical Instrument Player-the Need for Differential
Diagnosis
代田 雅彦(さいたま赤十字病院 整形外科)
白川 健
1-2-S3-5
音楽家のフォーカル・ジストニア
Focal dystonia observed in musicians.
中島 八十一(国立障害者リハビリテーションセンター 学院)
音楽家に見るフォーカル・ジストニアの多くは動作特異性ジストニアである。ジストニアは基底核疾
患とされながら、大脳から脊髄までの中枢神経系の感覚機能と運動機能の両方で多くの異常が指摘さ
れるとともに、それらを統合するあり方で感覚運動連関を含む広範な機能障害と理解されるようにな
った。それらを自験例で観察した病態生理に触れながら、これまでに多くの施設でなされた研究を基
にして臨床症状、治療のまとめを解説する。
1-2-S3-6
音楽家の手の障害―概況と関節痛・フォーカル・ジストニアの治療
Medical Problems of the Musician’s Hand - Overview and Treatment for Arthralgia
and Focal dystonia
酒井 直隆(東京女子医科大学 附属青山病院 整形外科)
音楽家の手の障害の自験例 3,004 例のうち職業音楽家は 88%を占め、腱鞘炎が 25%、付着部炎 23%、
筋肉痛 12%、関節痛 12%、神経障害 25%であった。関節痛の 33%はへバーデン結節であり、荷重関
節の発想で DIP 関節のアライメント矯正を行った。神経障害の 80%はフォーカル・ジストニアで
Slow Down Exercise を中心とするリハビリ訓練に、装具・内服薬・ボツリヌス注射等を併用した。
1-2-S3-7
Musician’s Hand:ジャンゴのジプシースウイングギターから津軽三味線
まで
Musician’s Hand: Django’s Gypsy Swing Jazz Guitar to Tsugaru Shamisen
藤 哲(弘前大学医学部附属病院)
上里 涼子,林 慶充,佐々木 規博,湯川 昌広
手外科医にとって、音楽家の手の障害ほど治療方針の決定に際し頭を悩ませるものはない。要求され
る高度な技術ならびに芸術性ゆえに、些細な問題が音楽家生命を脅かす危機的な状況に陥る可能性が
ある。治療に当たっては、正確な診断と演奏活動への早期復帰をめざした医療が望まれる。一方で、
障害を受け入れ新たな演奏・個性を出し活躍している音楽家もいる。代表的症例を紹介し , 音楽家の
手の治療について考察する。
55
Room 2
楽器奏者に発症した胸郭出口症候群(以下 TOS)11 例を考察する。TOS を発症し易い骨格的素因が強
ければ、楽器演奏が負荷誘因となり成長期十代に TOS を発症する。この時期に発症せずに成人した
音楽家の中にも、様々な程度の骨格的素因の潜在例があり、何らかの誘因によりそれまで保っていた
胸郭出口部の均衡が破綻すると TOS を発症する。その上肢症状は多彩なので音楽家の手障害の鑑別
診断として留意を要する。
1-2-S3-8
管楽器の楽器別特性と補助装具について
Characteristics of each wind instrument and its accessory
澤野 展之(陸上自衛隊中央音楽隊)
Room 2
【はじめに】
管楽器は、演奏の調性(演奏する音程)の問題から、子供から大人まで、また、体格の大小を問わず、
同一の大きさの楽器を使用します。どの楽器を演奏するかは自身で選んでも、楽器の大きさは変えら
れないということです。シンポジウムでは、楽器毎の特性や体のどの部分に負荷がかかるか等を紹介
させていただきます。
【楽器別の保持要領と負荷】
実際に楽器を演奏することで身体の故障が発症する以前に、演奏者は楽器の保持という段階で何ら
かの悩みを持っています。それは、安定して演奏を継続させるための楽器の保持です。
繊細で、時には高速な運動を連続して要求されることも多く、その演奏の質を優先するために、楽
器の保持において不自然な姿勢になってしまう例があります。
楽器の重さや演奏する姿勢によって大きく異なりますが、演奏とは直接関わらない(音を変えるた
めの動作とは関わらない)状態で、既に身体のある部位に負荷をかけて痛めてしまうことがあります。
肩こりや腰痛、やがて神経を圧迫する症状から、もともと負荷のかかっていなかった箇所を傷めます。
それは痛みだけでなく、やがて精神的なストレスとなったり、実際に演奏に影響を及ぼす症状にまで
繋がっていきます。
【楽器保持のための補助装具】
オプションとして使用される補助装具等を紹介します。
56
16:40~17:40
招待講演 4
座長:藤 哲(弘前大学医学部附属病院)
1-2-IL4
35 years surgical experience with musicians
Ian Winspur, MD FRCS FACS LLM
Only a small proportion of the medical care of musicians’ hands and arms requires operative surgery and
those cases mostly involve coincidental open trauma. Hence hand surgeons in general have little
experience in the care, both surgical and non-surgical, of musicians. In this lecture I will outline the
general principles of diagnosis and analysis of the musician’s hand and arm problems. The principles of
surgical management and some specific modifications of surgical technique will also be discussed. Much
of this material is contained in The Musician’s Hand, translated by Dr Nemoto and Dr Sakai. However
since publication of the book additional experience has been gained in 3 surgically troublesome areas –
painful cmc arthritis in older female pianists, loss of wrist rotation in mal-united distal radial fractures in
violinists and trigger fingers non responsive to steroid injections in musicians who play in the extreme
digitally flexed position eg guitarists – and I will discuss my recent surgical solutions in detail and the
results of this surgery and hand surgery in general in professional musicians.
Ian Winspur was born in Scotland and educated at Edinburgh University Medical School. He trained in Plastic
Surgery and Hand Surgery in England and in the USA and practiced hand surgey in California for 15 years
where he first started working with musicians, caring for a number of professional musicians with serious
coincidental hand injuries. He returned to London in 1994 to establish a private practice and immediately
became the preferred hand surgeon for most of the major symphony orchestras and many popular and jazz
musicians. He wrote and co-edited The Musician’s Hand which was published in 1998 and subsequently
translated by Dr Nemoto and Dr Sakai into Japanese. He continues in private practice in London and has to
date operated on over 200 professional musicians. He is a trustee of The British Association of Performing
Arts Medicine and a founder of the MSc in Performing Arts Medicine at University College London where he is
an honorary lecturer.
57
Room 2
(Consultant Hand Surgeon, Wellington Hospital, Honorary Lecturer, University College London, UK)
17:45~18:48
一般演題 1:手根管症候群(治療)
座長:寺田 信樹(藤田保健衛生大学第 2 病院)
1-2-1
神経障害性疼痛を有する手根管症候群におけるプレガバリンの効果
Efficacy of pregabalin for treating neuropathic pain with carpal tunnel syndrome
Room 2
高井 盛光(獨協医科大学 整形外科学)
長田 伝重,亀田 正裕,都丸 倫代,種市 洋
神経障害性疼痛(NP)が痛みの発症機序となった手根管症候群(CTS)の割合、およびプレガバリンの
効果を検討した。23 例を対象とし、NP のスクリーニングツールにて NP を有する症例にプレガバリ
ンを投与した。NP を有する CTS 症例は 13 例(56%)であった。プレガバリン投与にて痛みに関する評
価項目は有意に減少した。機能に関する評価項目および電気生理学検査では有意な変化はなかった。
1-2-2
手根管症候群に対するプレガバリンの有用性と安全性
Usefulness and Safety of Pregabalin for The Carpal Tunnel Syndrome
奥山 峰志(旭川医科大学 整形外科)
入江 徹,研谷 智,伊藤 浩,平山 隆三
手根管症候群に対してプレガバリン投与を行い、その有用性と安全性を検討した。2012 年 3 月より
2014 年 9 月までに手根管症候群と診断され、研究登録への同意が得られた 16 例を対象とした。このう
ち、5 例では副作用などにより投与継続を断念した。投与継続できた 11 例では、Numeric Rating
Scale(以下 NRS-11)0〜10 の 11 段階で投与前平均 6.2 が投与後平均 3.65 へ有意に改善した。
1-2-3
手根管症候群に対する手関節装具療法の成績
Clinical Results of Wrist Splint for Carpal Tunnel Syndrome
井上 貞宏(井上整形外科)
浜田分類 Grade1 の手根管症候群(CTS)220 手に対する市販の装具療法の成績は、平均 20 か月の経過
で 65%の症例に良好であった。しかし、遠位潜時が 7ms 以上、発症から 1 年以上経過したもの、70 歳
以上のものには不良例が多かった。症状誘発テストが陰性のものでも有効例が多かった。装具療法は
軽症の CTS には有効であり、簡便な保存療法として積極的に用いられて良いと考えられた。
1-2-4
radial approach による手根管開放術の治療成績
Clinical results of carpal tunnel release using radial approach
鈴木 康一(慶仁会 川崎病院 整形外科)
川崎 由美子,稗田 寛
手根管開放術の術後の愁訴として pillar pain は避けられない問題である.Weber(1997)らが報告した
Radial approach は pillar pain を抑えることを目的とした方法であるが,今回我々は手根管症候群 21
例に対して radial approach にて手根管開放術を施行したが,術後早期より手掌部の疼痛が抑えられ,
術後 3ヶ月まで pillar pain が残存した症例は認めなかった.
58
1-2-5
手根管症候群に対する鏡視下手根管開放術後早期の主観的評価
Early subjective outcomes after endoscopic carpal tunnel release (ECTR) for carpal
tunnel syndrome
近藤 幹朗(泉整形外科病院)
高原 政利,丸山 真博
1-2-6
75 歳以上の手根管症候群に対する鏡視下手根管開放術の術後成績
Outcome of endoscopic carpal tunnel release for carpal tunnel syndrome in elderly
patients
谷脇 祥通(医療法人三和会 国吉病院 整形外科)
75 歳以上の手根管症候群患者に対する鏡視下手根管開放術の術後成績の評価を行った。75 歳以下の
群と比較して quick DASH、CTSI、短母指外転筋の複合筋活動電位の遠位潜時の術後回復過程には有
意差を認めなかったが、術前から quick DASH と CTSI の機能尺度が高齢者では有意に高く、合併疾
患などの関与が考えられた。75 歳以上の高齢者においても鏡視下手根管開放術は十分な症状や機能の
回復が期待できる方法である。
1-2-7
透析手根管症候群切除滑膜におけるアミロイド沈着陽性率
Amyloid deposition of carpal tunnel syndrome in dialysis patients
長沼 靖(山形大学整形外科)
佐竹 寛史,本間 龍介,丸山 真博,高木 理彰
透析手根管症候群の病態について検討するため、平均透析年数 18.1 年 20 例の手根管症候群罹患者の
切除滑膜におけるアミロイド沈着陽性率を調査した。アミロイド沈着が確認されたのは 2 手(10%)で
あり、過去の報告に比して低かった。透析技術の進歩によりアミロイド沈着の進行は緩徐となってい
るが、アミロイド沈着が主体とされる透析手根管症候群の病態にも変化が生じていると考えられた。
59
Room 2
手根管症候群に対し鏡視下手根管開放術(ECTR)施行例で術前と術後 1 か月もしくは 3 か月に Hand 20
を行った 61 例 73 手を対象に Hand 20 が術前よりも改善する時期を調査した。Hand 20 の平均は術前:
39.8、術後 1 か月:33.9、3 か月:26.2 であった。術後 1 か月では 92% でしびれが改善し、61% で Hand
20 が改善した。術後 3 か月では 73% に Hand 20 の改善がみられた。
第 3 会場(Room 3)
8:40~9:43
一般演題 2:橈骨遠位端骨折(高齢者ほか)
座長:酒井 昭典(産業医科大学整形外科)
1-3-1
Monoaxial locking plate(DVR)を用いた橈骨遠位端骨折の治療成績及び
問題点
The Clinical Outcome and Problems of Monoaxial Locking Plate Fixation with DVR
Plate for the Distal Radius Fracture.
Room 3
酒井 健(東戸塚記念病院 整形外科)
川崎 恵吉,西中 直也,稲垣 克記
橈骨遠位端骨折に対し DVR を使用した症例の治療成績を検討した。症例は 96 例で、術者は卒後平均
8 年であった。手術時間は平均 51.1 分で治療成績は良好であったが、合併症は 10.3%に生じていた。
DVR は手術時間も短縮でき、経験年数によらず良好な成績が得られ、有用であるが、スクリュー長
やプレートサイズの選択、設置位置については十分に注意して使用する必要がある。
1-3-2
当科における高齢者橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレートの治
療成績
The clinical outcome of volar locking plate fixation for the distal radius fractures in
elderly people
高崎 実(九州労災病院 整形外科)
畑中 均
橈骨遠位端骨折に関しては若年者と高齢者では日常生活での手の使用の程度が異なることから、同様
に治療をしても疼痛などを含めた臨床成績に差が出てきてしまうと思われる。このため、高齢者に絞
って治療した成績を検討した。当院で掌側ロッキングプレート固定を施行した 60 歳以上の症例のう
ち、10 か月以上フォローした 176 手について検討を行い、関節可動域・握力・Mayo Wrist Score・尺
側部痛を評価した。
1-3-3
中高年女性における橈骨遠位端骨折の治療成績
The Outcomes of Surgically treated Distal Radius Fracures in Elderly Women
畑中 均(九州労災病院 整形外科)
高崎 実
もっとも頻繁に遭遇する橈骨遠位端骨折は、骨粗鬆症を背景に転倒等の軽微な外力によって中高年の
女性に生じる症例であるので、このような症例に絞って治療成績を検討した。最終経過観察時の平均
健側比握力・健側比可動域・Cooney score・DASH score はそれぞれ 91%, 86%, 83, 10 であった。尺
側部の疼痛もしくは圧痛を 6 手に認めた。長母指屈筋腱皮下断裂を 1 手に、抜釘時に同腱の毛羽立ち
を 2 手に認めた。
60
1-3-4
高齢者の橈骨遠位端骨折に対する Locking plate の治療成績
Palmar Locking Plate for Fixation of Distal Radius Fractures in Elderly Patients
杉田 直樹(厚生連吉田総合病院 整形外科)
定地 茂雄,本山 満,山本 りさこ,竹本 正瑞
高齢者の橈骨遠位端骨折に対する Locking plate 固定術の治療成績を検討した。対象は 70 歳以上の 59
例,骨折型は AO 分類で A2:19 例,A3:29 例,C1:1 例,C2:8 例,C3:2 例。X 線評価は術直後
平均 PT 9.3°,RI 23.1°,UV 0.4mm が,調査時平均 PT 8.0°,RI 22.9°,UV 1.1mm であった。本術式
は骨の脆弱性を有する高齢者においても十分な整復位の保持が可能であった。
1-3-5
手関節鏡併用手術にて加療した橈骨遠位端関節内骨折の検討
Arthroscopically Assisted Surgery of Intraarticular Distal Radius Fracture
橈骨遠位端関節内骨折に対し、手関節鏡併用手術にて加療を行った症例を検証した。2008 年より
2014 年 5 月までに、PART 法に準じて観血的治療を行い、術後 3ヶ月以上経過観察を行なった 55 手関
節を対象とした。いかなる骨折型で鏡視併用手術が有用であったかを検討した。鏡視下手術は、骨片
間の step off や gap の評価だけでなく、プローベ触知による骨片の安定性の評価が可能で、手関節鏡
併用手術は必須であると考える。
1-3-6
背側転位型橈骨遠位端骨折の整復固定:プレート設置前に健側を基準とし
て骨折部の整復を完了する方法の検討
Reduction and Fixation Technique for Distal Radius Fracture of Dorsal Displacement
Type: A Study of Method of Reduction According to Anatomical Shape of Intact Side
Before Plate Attachment
山縣 朋宏(さいたま市立病院)
福岡 昌利,小川 亮,小林 紘樹
背側転位型橈骨遠位端骨折に対する骨折部の術中整復の手段として,掌側ロッキングプレート設置前
に骨折部の整復を完了し,整復位の確認に健側を基準に作成した術中テンプレートを用いる方法の有
効性について検討した.単純 X 線の計測では,ほぼ健側の形態に近い整復が得られており,矯正損失
も少なく,有用な手段であると考えられた.
1-3-7
橈骨遠位端骨折術後プレート抜釘の効果
Effect of implant removal after plate fixation for distal radius frature
安岡 寛理(公立玉名中央病院 整形外科)
中野 哲雄
橈骨遠位端術後抜釘が自他覚所見に及ぼす影響を調べた。男性 5 例、女性 26 例、29〜77(平均年齢 65)
歳を調査対象とし、手関節可動域、握力、QuickDASH、Hand-20、modified Cooney score、斉藤の
demerit point system を調べた。背屈のみが術前平均 59 度から術後 63 度へと、統計学的有意差をも
って改善した。プレート抜釘術は屈筋腱断裂予防効果だけでなく、背屈可動域改善効果も見込まれる
ため積極的に行ってよい手技と考える。
61
Room 3
松田 匡弘(福岡整形外科病院)
櫛田 学
9:43~10:46
一般演題 3:PIP 関節
座長:百瀬 敏充(諏訪赤十字病院)
1-3-8
手指基節骨単顆部骨折の治療成績
Clinical Results of Unicondylar Fractures of the Proximal Phalanx of the Finger
勝田 康裕(JA愛知厚生連海南病院 整形外科)
関谷 勇人,五十棲 秀幸,岡本 秀貴,西 源三郎
今回我々は手指基節骨単顆部骨折の 14 例を経験したので、その治療成績と問題点につき文献的考察
を含め報告する。本骨折の治療として、転位を認めない症例では経皮的 multiple pinning、または慎
重な観察下での保存的治療が、転位を認める症例では正確な徒手整復が可能なら multiple pinning、
不能なら観血的整復及び多数本の K-wire での固定が有用である。
Room 3
1-3-9
中節骨基部 PIP 関節内骨折への吸収性ピン(充填)髄内釘整復固定の試み
New Method of Minimally Invasive Therapy for Intra-articular Fractures of the
Proximal Interphalangeal Joint with Bioabsorbable Pin
山下 優嗣(鳥取大学 医学部附属病院 整形外科)
林原 雅子,藤田 章啓,金谷 治尚,永島 英樹
中節骨基部関節内陥没骨折に経皮経骨髄的整復固定手技は有用であるが、時に整復不足や矯正損失を
生じる。当科では 2012 年より陥没、短縮転位している中節骨基部関節内骨折に対し、吸収性ピンで
骨片を基節骨頭へ押し付け関節面の整復を得、適宜創外固定を使用し、髄腔充填による整復保持と髄
内釘として骨長維持を図り、最も良い適応は低侵襲で外固定不要となる陥没骨折で、片側 plateu 骨折
も創外固定併用で整復保持が可能と思われた。
1-3-10
手指 PIP 関節内骨折の術後成績に影響を及ぼす因子の検討
Factors affecting surgical results of fractures and dislocations of the proximal
interphalangeal joint
高橋 明子(中日病院 名古屋手外科センター)
中尾 悦宏,篠原 孝明,浦野 秀樹,中村 蓼吾
手術的治療を行った PIP 関節内骨折 28 指について、治療成績に影響を及ぼす因子を検討した。終診時
の PIP 関節可動域は平均 85°、成績は excellent 17、good 6、fair 3、poor 2 であった。予後不良因子
として高年齢、尺側指、陳旧例、高度な脱臼・粉砕などが挙げられた。手術法は最終成績に影響しな
かった。適切な整復固定と後療法を行えばほぼ良好な成績が獲得できたが、予後不良因子のある症例
では治療の限界もあると考えた。
62
1-3-11
Dynamic Distraction Apparatus を用いた手指 PIP 関節周辺骨折の治療
成績
Treatment of peri- or intra PIP joint fractures using Dynamic Distraction Apparatus
岡本 道雄(市立豊中病院 整形外科)
難波 二郎,宮村 聡,山本 浩司
粉砕した手指 PIP 関節周辺骨折に対して、Dynamic Distraction Apparatus を用いて治療しているの
で、今回その治療成績を報告する。10 例に対して経皮的、観血的に整復固定を行い、その後、DDA
を装着した。最終観察時側面 X-p にて 3 例に亜脱臼の残存を認めた。PIP 関節平均可動域は屈曲 73.2°、
伸展 -8.4°であった。また 1 例に偽関節、1 例に変形性関節症を認め、それぞれ再手術を必要とした。
1-3-12
PIP 関節掌側脱臼骨折の治療経験
Treatment of Palmar Fracture- dislocations of the Proximal Interphalangeal Joint
PIP 関節掌側脱臼骨折の 6 例を報告する。手術は 3 例に非観血的整復+経皮的鋼線固定、3 例に観血的
整復+ screw 固定を行った。最終観察時 PIP 関節の可動域は屈曲平均 95°、伸展平均 --3.3°と比較的
良好であったが、経皮的鋼線固定を行ったうち 2 例で PIP 関節の伸展制限が残存した。中央索付着部
の剥離骨折に対して強固な固定を得ることは容易ではないが、小皮切での screw 固定は比較的低侵襲
で骨折部を直視下に確認し整復できる利点がある。
1-3-13
創外固定を使用した PIP 関節脱臼骨折の治療成績
The Treatment Results of Proximal Interphalangeal Dislocation Fracture with External
Fixation
橋本 瞬(相澤病院 整形外科)
山崎 宏
PIP 関節脱臼骨折 10 例 10 指に指関節牽引・創外固定を用いて治療した。背側脱臼 8 例、掌側脱臼 2 例、
受傷から手術までは平均 6.8 日、観察期間は平均 15.ヵ月であった。関節面は Hintringer 法で整復した。
1 例でピン刺入部の感染、1 例で隣接指の皮膚潰瘍を認めた。PIP 関節の術後平均 ROM は屈曲 72°、
伸展 -12°、DIP 関節は屈曲 48°、伸展 -7.5°であった。PIP 関節だけでなく DIP 関節の拘縮も認められ
る例があった。
63
Room 3
藤井 裕子(市立宇和島病院 整形外科)
鶴岡 裕昭,松坂 隆範,岩川 和弘,西村 亮祐
1-3-14
肋骨肋軟骨移植術による手指全置換術後の肋軟骨石灰化に関する検討
Radiological Study on the Calcification of Costal Osteochondral Graft after Total
Finger Joint Arthroplastys
本田 祐造(慶應義塾大学 整形外科)
佐藤 和毅,越智 健介,岩本 卓士,松村 昇
肋骨肋軟骨による関節全置換術を行った手指関節障害 21 例 22 関節中、24ヵ月以上の経過観察が可能
であった 8 例 8 関節を対象に、移植肋軟骨の石灰化について検討した。6 例で移植軟骨部に明らかな石
灰化がみられ、骨頭側は掌側基部から背側へ、遠位側は基部より全体に石灰化が進む傾向があった。
しかし、骨性部間距離は維持され、臨床的に問題を生じることはなかった。手指関節は中長期的にも
機能すると考えられた。
Room 3
10:55~11:49
一般演題 4:橈骨遠位端骨折(問題点)
座長:山本 謙吾(東京医科大学)
1-3-15
橈骨遠位端骨折掌側プレート後の母指運動障害;長母指屈筋腱は癒着する
か?
Evaluation of the Motor Dysfunction of Thumb After Volar Locking Plating of Distal
Radius Fractures. ; Do the Adhesions of the Flexor Pollicis Longus Tendon Affect the
Thumb Motor Function?
内藤 利仁(聖マリアンナ医科大学 医学部 整形外科学講座)
清水 弘之,松下 和彦,泉山 公,別府 諸兄
掌側ロッキングプレート固定(以下,VLP)後の長母指屈筋腱(以下,FPL)の癒着状況と母指運動障害
との関連性を検討した.VLP 固定術と抜釘を行い,母指機能評価と抜釘術中に FPL 癒着状況を観察
し得た症例 21 例を対象とした.FPL 癒着状況はプレート長を 3 分割し,癒着の程度を 4 段階にスコア
化して肉眼的に評価した.軽度の癒着を含むと全例に癒着は認められ,癒着スコアが高値で母指運動
機能評価が低値である症例が存在した.
1-3-16
掌側ロッキングプレートを用いた、橈骨遠位端骨折手術後の合併症
the Comprication of Distal Radius Fracture
守 宏介(みつわ台総合病院)
有薗 行朋,浜田 良機
掌側ロッキングプレート使用の術後合併症について報告する。当科で掌側ロッキングプレートを用い
て手術を行った橈骨遠位端骨折、男 50 例、女 109 例の計 159 例を対象とした。術後合併症は、10 例
(6.3%)に肩関節痛、8 例(5.0%)に手根管症候群、各 5 例(3.1%)の腱鞘炎、腱断裂と手指の関節拘縮を
認 め た。 そ の 他、 手 関 節 尺 側 部 痛 4 例(2.1%)、 術 創 部 の keloid 状 瘢 痕 形 成 2 例(1.3%)、 手 指 に
allodynia を見た 2 例(1.3%)で肩関節痛が最多であった。
64
1-3-17
橈骨遠位端骨折掌側プレート固定における橈骨軸位撮影を用いた螺子背側
突出部位の評価 多施設共同研究
Radiological evaluation to detect dorsally penetrating screws after volar plating of
distal radius fracture: a multicenter study
大野 克記(大阪医科大学 整形外科)
小田 明彦,石津 恒彦,岡本 雅雄,根尾 昌志
橈骨遠位端骨折に対する掌側プレートの合併症のひとつに螺子の背側突出が考えられている。屍体標
本を用いた報告では橈骨 15°軸位撮影がよいとされ、実際の臨床において検証した。本撮影にて螺子
突出を認めたものは 138 手中、9 手であった。突出部位は Lister 結節橈尺側に加え遠位橈尺関節にも
認め、専用台を用いた本法が有用と考えられた。また、橈骨遠位端背側に粉砕のない症例にも認め、
骨折型に関わらず生じることが示唆された。
橈骨遠位端骨折におけるスクリュー突出
Screw protrusion in volar locking plate for distal radius fracture
荻原 弘晃(浜松赤十字病院 整形外科)
牧野 絵巳,杉浦 香織,大村 威夫
VLP 固定の遠位背側へのスクリュー突出を計測し、最適なスクリュー長を検討した。対象は 26 例で、
術中背側皮質骨までの距離を測定し、術後 CT 撮影でスクリュー位置の変化を計測した。遠位スクリ
ューは、173 本挿入され、背側皮までの距離が短縮していたスクリューは 65 本であった。年齢、性別、
プレートの種類などは影響なく、プレート尺側に刺入したスクリューは橈側に比べて有意に短縮して
いた。
1-3-19
橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート法におけるマルチスライ
ス CT を用いたインプラント突出の検討
Multislice CT examination of dorsal screw penetration and palmar plate prominence
distance in the locking plate method for distal radius fractures.
深井 敦大(西宮協立脳神経外科病院 整形外科)
瀧川 直秀,阿部 宗樹,安井 憲司,江城 久子
橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート法の問題点としてプレートやスクリューが原因とな
る屈筋腱及び伸筋腱損傷が挙げられる。今回、CT を用いてスクリュー背側突出やプレート遠位掌側
突出距離を評価した。掌側ロッキングプレート法における腱損傷予防の為、FPL の走行位置を理解し
てプレートを設置する事及び、術中に施行可能な橈骨遠位端軸斜像で遠位スクリュー背側突出の有無
を評価する事が望ましい。
65
Room 3
1-3-18
1-3-20
橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート破損に関するアンケート
調査(第 2 報)
A questionnaire survey with hardware failure of volar locking plate system for distal
radius fracture(second report)
富田 一誠(昭和大学江東豊洲病院 整形外科)
川崎 恵吉,池田 純,久保 和俊,稲垣 克記
橈骨遠位端骨折治療用掌側ロッキングプレートを扱う医療機器メーカーに対して、プレートの破損、
スクリューの破損、連結部の緩みの有無について、アンケート調査した。報告された症例数は概数で
あり、破損例はメーカー届出のみである。約 29 万弱の症例の中で、プレート破損が 0.016%、スクリ
ュー破損が 0.037%、ロッキング連結部破損が 0.039% であった。システムのコンセプトを熟知して、
機種を選択する必要があると思われた。
Room 3
66
12:10~13:10
西新宿セミナー 2
座長:池上 博泰(東邦大学)
共催:三笠製薬株式会社
1-3-LS2
第 17 回 手外科における保険診療
牧野 正晴(新潟万代病院 整形外科)
平成 27 年度は 2 年毎に行われる医療保険大改定の年度ではないので、保険診療上の大きな変更はない
と考えられる。
今回は、日本手外科学会社会保険等委員会活動、保険収載活動、Q & A、医師の技術料算定方法の検
討等にテーマにした講演を行う予定である。
略歴:
(1975年)
新潟大学医学部卒業
昭和50年
同年、新潟大学整形外科教室に入局し、田嶋達也教授のもとで複数の病院をローテイションしながら整形外科
および手外科の研修を開始した。
1985年Clinical and Research Hand Fellow としてDr.Swansonのもとで研修を行った。
◦勤務先
新潟万代病院 〒950︲8798 新潟市中央区八千代2︲2︲8
電話 025︲244︲4700 Fax 025︲247︲6216
◦所属学会
日本整形外科学会
日本リウマチ学会
日本手外科学会
(代議員)
日本マイクロサージャリー学会(評議員)
International Member of American Society for Surgery of the Hand(ASSH)
67
Room 3
牧野 正晴(まきの まさはる)
13:25~14:19
一般演題 5:橈骨遠位端骨折(工夫)
座長:安部 幸雄(済生会下関総合病院)
1-3-21
DVR 掌側ロッキングプレート固定後の矯正損失を予防するための工夫:
Subchondral Bone Tamp 法の有用性について
Our approach to prevent the loss of reduction following DVR volar locking plate
fixation: efficacy of the subchondral bone tamp technique
加藤 直樹(埼玉成恵会病院・埼玉手外科研究所)
福本 恵三,久能 隼人,酒井 伸英,斉藤 憲太
Room 3
関節面直下に fracture void が存在する橈骨遠位端骨折では、DVR 掌側ロッキングプレートで効果的
な subchondral support が出来ず、矯正損失が生じることがある。今回、こうした橈骨遠位端骨折 17
例に対して、局所海綿骨を用いた Subchondral Bone Tamp 法を併用し、その臨床成績を検討した。
結果、全例で矯正損失量は有意に減少しており、整復位保持の観点から本法は有用であると思われた。
1-3-22
橈骨遠位端骨折掌側皮質粉砕症例に対する創外固定を併用した掌側ロッキ
ングプレート固定の有用性
Usefullness of volarlocking plating with external fixator for distal radius fracture
大坪 晋(松山市民病院 整形外科)
掌側皮質が粉砕した橈骨遠位端骨折症例は術後短縮変形が残存し、可動域制限、特に回外制限を来た
し易い。そこで整復と初期固定に創外固定を併用した。症例は 3 例で創外固定牽引下に整復を保った
状態で掌側ロッキングプレートにて固定し、術後 2 週間創外固定を装着した。骨萎縮や僅かに短縮変
形を認めた症例はあったが全例骨癒合は得られ、可動域も良好であった。
1-3-23
Intrafocal pinning を併用した橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプ
レート固定
Treatment for distal radius fracture using volar locking plate with intrafocal pinning
中山 政憲(独立行政法人地域医療機能推進機構 埼玉メディカルセンター 整形外科)
菊池 駿介,岩本 卓士,佐藤 和毅
橈骨遠位端骨折に対して intrafocal pinning を併用した掌側ロッキングプレートを用いた手術例 30 例
30 手の手術成績についてまとめた。本法は整復と固定が同時に比較的容易にできるため、手術時間の
短縮が見込める。ロッキングプレートの固定後閉創前にピンを抜去しても概ね問題はない。手術まで
の待機期間が 15 日を超える症例では close での整復にこだわらず、まず掌側を展開した後整復操作を
行うのが望ましいと考えられた。
68
1-3-24
橈骨遠位端骨折における背側天蓋状骨片に対する治療戦略
Strategy for treatment of the dorsal roof fragment in the fracture of the distal radius
近藤 秀則(金田病院 整形外科)
今谷 潤也,森谷 史朗,前田 和茂,桐田 由季子
橈骨遠位端骨折において手関節内に転位した背側の関節外骨片は背側天蓋状骨片と呼ばれ、その合併
は比較的まれではあるが時々遭遇する。また同骨片に対する処置の必要性について以前からいくつか
の報告があるが、具体的な方針ついての言及は未だない。そこでわれわれは同骨片を伴った橈骨遠位
端骨折 10 例における特徴とその処置方法を後ろ向きに調査し、その結果から現時点における背側天
蓋状骨片に対する治療戦略について検討した。
1-3-25
杉山 陽一(順天堂大学 医学部附属 静岡病院 整形外科)
内藤 聖人,有富 健太郎,金子 和夫,大林 治
我々は、関節内掌側転位骨片を伴う橈骨遠位端骨折(DRF)に対する骨接合術の工夫を行っている。遠
位設置型プレートを用いた Condylar stabilizing 法である。本術式により臨床成績、画像所見は良好
な結果が得られた。掌側転位骨片を伴う DRF 治療の問題点は掌側転位骨片の整復不良による関節面
不整の残存である。本術式は整復困難な関節内掌側転位骨片の整復に有用である。
1-3-26
関節鏡を併用した橈骨遠位端骨折の治療―整容的アプローチと従来法の比
較―
Comparison between ARC(Arthroscopic Reduction and Cosmetic approaching)
technique and traditional approach with arthroscopically assisted ORIF for distal
radius fracture
重松 浩司(東大阪市立総合病院 整形外科)
井川 真依子,面川 庄平,田中 康仁
我々は橈骨遠位端骨折に対する関節鏡手術に整容面を配慮した術式(ARC 法)と従来法(C 法)と比較し
た。対象は橈骨遠位端骨折各群 60 例を対象とした。骨癒合期間、関節鏡視下追加整復率、関節可動
域および握力、術前後のレントゲン評価に両群間に差はなく術後瘢痕は ARC 法で統計学的に優位に
瘢痕が細かった。ARC 法の治療成績は従来法と同様であり、整容面では優れており、掌側ロッキン
グプレートで対応可能な症例は適応となりうる。
69
Room 3
橈骨遠位端骨折に対する手術治療の工夫―関節内掌側転位骨片の整復操作
Devising a distal radius fracture fixation focus on the intra-articular volar dislocated
fragment.
14:19~15:22
一般演題 6:橈骨遠位端骨折(合併損傷ほか)
座長:山中 一良(済生会神奈川県病院整形外科)
1-3-27
橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート固定後の手指拘縮
Finger contracture after volar locking plate fixation of distal radius fractures.
後藤 真一(鶴岡市立荘内病院 整形外科)
秦 命賢
Room 3
当科では橈骨遠位端骨折手術後の全例に、術翌日より手指拘縮予防を行っているが、それでも手指拘
縮を合併することがあるため、その詳細を調査した。手術を行った橈骨遠位端骨折 157 例中、術後 4
週以降に手指拘縮を認めたのは 27 例であった。手指拘縮には、高齢、多骨片型骨折、尺骨遠位端骨
折の合併、認知症、高度の浮腫が関係していた。また、最終経過観察時に手指拘縮が残存したのは 7
例で、より高齢、認知症が関係していた。
1-3-28
掌側ロッキングプレートにて治療した橈骨遠位端骨折の術後手根管症候群
(正中神経障害)
Carpal tunnel syndrome after volar locking plate fixation of distal radius fracture
夏目 唯弘(刈谷豊田総合病院 整形外科)
浦野 秀樹,水島 秀幸,山本 美知郎,平田 仁
当院で橈骨遠位端骨折に対し掌側ロッキンブプレートで治療した 81 例を前向きに調査し内 71 例を対
象とした。正中神経障害の発症は 7 例で発症時期は主に術後 2〜12 週であった。CTS 群では高齢で低
エネルギー損傷例が多かった。レントゲンパラメーター・プレート設置位置・骨折型に有意差を認め
なかった。正中神経横断面積は CTS 群で有意に増大していた。CTS の発症原因として潜在的手根管
症候群の存在が示唆された。
1-3-29
橈骨遠位端骨折に合併した尺骨遠位端骨折に対する尺骨治療法の検討
Clinical results of fractures of the distal ulna associated with distal radius fractures.
本田 祐造(長崎労災病院 整形外科)
角 光宏,田中 奈津美
橈骨遠位端骨折に合併した尺骨遠位端骨折 38 例について検討した。骨折型は Biyani 分類で type1:14
例、type2:2 例、type3:12 例、type4:10 例、治療はプレート固定、ピン・screw 固定、Darrach 法、
保存加療を行った。type1 は橈骨固定後に尺骨が安定すれば保存加療、type3 で接合する場合ピン、
スクリュー固定で十分な治療効果があった。type4 はプレート固定が望ましいが、接合困難な場合は
Darrach 法も選択肢の 1 つと思われた。
70
1-3-30
橈骨遠位端骨折治癒後に手術を必要とした TFCC 損傷
Analysis of TFCC injury that required surgery after uneventful healing of distal radius
fracture
安部 幸雄(済生会下関総合病院 整形外科)
守屋 淳詞
橈骨遠位端骨折の治療において最も優先される事項はアライメントの復元であり,復元できれば一般
に治療成績は良好である.一方,TFCC 損傷は本骨折に高率に合併しその予後を左右する因子とし
て認識されているが,その一期的処置についてはいまだ指針が得られていない.今回,膨大な数の保
存治療,観血的治療例において TFCC 損傷が問題となったのはわずか 10 例にすぎない.しかし尺側
部痛が遷延すればその処置が必要となる.
1-3-31
今田 英明(国立病院機構 東広島医療センター整形外科)
渋谷 早俊,新本 卓也,松下 亮介,岸 和彦
今回我々は橈骨遠位端骨折に合併する DRUJ 不安定性の評価に術中 modified sky line view を利用し
た。橈骨遠位端骨折 13 例に対して橈骨をロッキングプレート固定した後、透視画面に描出された
modified sky line view 上にて尺骨に掌背側のストレスを加え尺骨が橈骨 sigmoid notch の掌背側縁の
いずれかを完全に乗り越えた 4 例を不安定ありとして修復術を追加した結果、臨床成績は良好であっ
た。
1-3-32
橈骨遠位端骨折に合併した遠位橈尺関節不安定性の評価法~回外位での試
み~
Evaluation for DRUJ instability associated with Distal Radius Fracture -forearm
supination杉田 健(健和会大手町病院整形外科)
酒井 和裕,古川 雄樹,宮地 有理
橈骨遠位端骨折手術時の遠位橈尺関節(DRUJ)評価は橈骨内固定後に DRUJ ballottement を評価する
が定量的ではない。手関節中間位の評価が報告されているが DRUJ が安定する回外位で掌側ストレス
撮影を行うと、緊張した三角繊維軟骨複合体と掌側橈尺靭帯と遠位骨間膜を緊張状態にすると緩みが
除去され、その結果評価 できるため特異性が高い。橈骨内固定後の追加手術を行う指標としての回
外位ストレス撮影法を考案したので紹介する。
71
Room 3
橈骨遠位端骨折に合併した遠位橈尺関節(DRUJ)不安定性の評価への術中
modified sky line view の応用
The modified sky line view for evaluating the distal radioulnar joint instability
secondary to distal radius fracture
1-3-33
尺側要素損傷から考える橈骨遠位端骨折の予後不良因子
Poor Prognosis Factors of Distal Radius Fracture
山部 英行(済生会横浜市東部病院 整形外科)
山中 一良,小原 由紀彦,中村 俊康
橈骨遠位端骨折に合併する尺側要素損傷の修復を行わなかった症例をまとめ、そこから予後不良因子
を検討した。尺骨茎状突起骨折の有無および部位からのみから予後を予測することは困難であった。
予後不良例では全例 TFCC 損傷を伴っていた。高齢者の変性断裂では関節円板の穿孔タイプが多いた
め、ulnar variance を確実に矯正する必要がある。比較的若年者の新鮮断裂では橈側損傷タイプが多
く、手術時に縫合を行う事が望ましい。
15:40~16:43
一般演題 7:橈骨遠位端骨折(評価)
Room 3
座長:亀山 真(東京都済生会中央病院整形外科)
1-3-34
橈骨遠位端骨折における骨折型一致率の検討
Coincidence of distal radius fracture classification using plain X ray images
牧野 絵巳(浜松赤十字病院 整形外科)
荻原 弘晃,杉浦 香織
単純 X 線分類の CT 像に対する正答率、医師間の分類の一致率について検討した。単純 X 線と CT を
撮影した 138 手を、3 人の医師が AO 分類で骨折型を分類した。CT 像に対する正答率は type で平均 74
%、group で平均 46%と低く、X 線分類の一致率は κ 係数で poor〜moderate と低かった。単純 X 線に
よる関節内の評価は困難で、CT の併用が有効であると考えた。
1-3-35
背屈型橈骨遠位端関節内骨折における骨片転位の三次元的解析
Three dimensional analysis of displacement of fragments in dorsally angulated
intra-articular distal radius fracture
信貴 厚生(大阪大学大学院医学研究科 器官制御外科学)
岡 久仁洋,後藤 晃,栗山 幸治,村瀬 剛
【要旨】橈骨遠位端関節内骨折の正確な整復のためには骨片の転位方向、程度を把握することが重要
であり、CT による評価が一般的となっている。しかし CT 評価に基づく骨折型分類の報告は乏しく、
骨片の転位について三次元的に解析した報告はない。今回橈骨遠位端背屈型関節内骨折の CT データ
から三次元骨モデルを作成し、関節内骨片の骨折型の分類と、骨片ごとの転位の三次元解析を行った
ので報告する。
72
1-3-36
背側転位型橈骨遠位端関節内骨折における背側骨片面積の評価
An evaluation for cross-section area of dorsal fragment in distal radius intra-articular
fracture
伊藤 博紀(厚生連山本組合総合病院)
背屈転位型橈骨遠位端関節内骨折のうち,CT で DRUJ にかかる骨折線を認めた症例に対して,画像
解析ソフト Image (
J NIH)を用いて背側骨片関節面の橈骨手根関節面に対する面積の割合を計測した.
背側骨片関節面の橈骨手根関節面に対する面積の割合は,14.0 ± 6.2 % であった.本手法によって,
より客観的な骨折型の把握が可能となり,今後臨床的検討を加えることによって,治療戦略の策定に
役立つ可能性がある.
1-3-37
橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート固定術後の骨癒合評価
The assessment of the distal radius fracture union after volar locking plate fixation.
橈骨遠位端骨折掌側ロッキングプレート固定後の CT による骨癒合判定を検討した。39 例に対し、術
後平均 57.7 日(52〜67)日に手関節 CT を撮影し、骨癒合のスコアー化を 3 人の検者で行った。また、
術後 35 日以内に CT 撮影した 4 例(未癒合例)と術後 122 日以降に CT 撮影した 4 例(癒合例)のスコアー
をもとに cutoff 値を決定し、骨癒合の判定を行うと検者間信頼性は kappa = 0.716 であった。
1-3-38
保存治療を行った橈骨遠位端骨折における X 線側面像分類を用いたパラメ
ータ変化の検討
The study of radiographic parameter change for conservative therapy of distal radius
fractures using lateral view of X-ray classification.
古川 佳世子(産業医科大学病院)
善家 雄吉,目貫 邦隆,酒井 昭典,古川 英樹
保存治療を行った橈骨遠位端骨折症例 35 肢を対象として、X 線パラメータの経時的変化を解析した。
X 線側面像の掌側骨皮質に注目して、髄内型、解剖型、髄外型に分類し、palmar tilt(PT)、radial
inclination(RI)、ulnar variance(UV)を受傷時、整復時、最終観察時で計測した。結果は、整復時に
髄外型の症例は最終観察時 UV の矯正損失が小さい傾向にあった。
1-3-39
65 歳以上の橈骨遠位端骨折術後患者における Hand20 による評価の検討
Examination of evaluation by Hand20 in distal radius fracture surgery patients over 65
years of age
馬渕 まりえ(地域医療機能推進機構 中京病院 整形外科)
平田 仁
橈骨遠位端骨折の術後回復を評価する上での患者立脚型評価として、65 歳以上の患者における Hand20
の有用性を検討した。64 歳以下 23 名、65 歳以上 49 名。64 歳以下では Hand20 は DASH、術後日数、掌
屈、背屈、橈屈、尺屈、回内、回外、握力健側比と相関を認めた。65 歳以上では Hand20 は DASH、
術後日数、背屈、回外、握力健側比との相関を認めた。Hand20 は 65 歳以上に限らず有用な患者立脚
型評価と考えられた。
73
Room 3
栗山 幸治(星ヶ丘医療センター 整形外科)
上杉 彩子,片岡 利行,村瀬 剛,濱田 雅之
1-3-40
橈骨遠位端関節内骨折術後の術後 MRI 所見と術後関節症変化について
MR Imaging of Intra-articular Distal Radius Fractures
澁谷 亮一(協立病院 整形外科)
正富 隆
橈骨遠位端関節内骨折に対してプレートを用いた 30 例(AO 分類、C1;13 例、C2;8 例、C3;9 例)に
術後平均 10.4 か月で MRI 検査を行った。X 線で関節裂隙の狭小化が 9 例に認められた。MRI 上、12 例
で関節面の軟骨欠損が認められ、そのうち 5 例で軟骨下骨の欠損が認められた。またこの 5 例のうち、
4 例は AO 分類の C3 型、1 例は C1 型であった。MRI にて関節軟骨の欠損が 40% の症例で認められ、さ
らに 16.6% の症例で軟骨下骨が吸収されていた。
16:43~17:46
一般演題 8:マレット指
Room 3
座長:谷野 善彦(藤井外科胃腸科・整形外科)
1-3-41
骨性マレットの保存治療
Non-operative treatment of bony mallet fingers
原 章(順天堂大学附属 順天堂浦安病院 整形外科)
工藤 俊哉,山本 康弘,楠瀬 浩一
骨片の大きさが関節面の 3 分の 1 を超える骨性マレットを保存的に治療した 7 例について報告した.
内訳は新鮮例 5 例,陳旧例 1 例,術後偽関節 1 例であった.骨折部に gap を認めても骨片同士が引き合
うように gap が縮小し,全例で骨癒合を得た.可動域の評価で伸展 0°を達成するのは難しいが,陳旧
例の 1 例を除き全例で疼痛はなく患者の満足度は高かった.外固定には装具やテーピング固定よりも
シーネ固定が角度を調節でき,有用であった.
1-3-42
骨性槌指に対する最小侵襲スクリュー固定法の治療成績についての検討
Research on Clinical Results of Minimally Invasive Screw Fixation Method for Mallet
Fracture
桐田 由季子(岡山済生会総合病院 整形外科)
今谷 潤也,森谷 史朗,前田 和茂,近藤 秀則
当科では 2007 年より比較的骨片の大きな骨性槌指に対して最小侵襲スクリュー固定法(MISF)による
治療を行い,その良好な治療成績を報告した.今回我々は MISF による治療を行った 66 例に対し,治
療成績およびそれに影響を与える因子について検討した.
74
1-3-43
低出力超音波治療による小児陳旧性骨性槌指の治療経験
Low intensity pulsed ultrasound for old bony mallet finger treatment in children
太田 剛(済生会川口総合病院 整形外科)
大沼 円,若林 良明,大川 淳
我々は小児の陳旧性骨性槌指に対して低出力超音波骨折治療(以下 LIPUS)を用い良好な結果を得たの
で報告する。症例は陳旧性小児骨性槌指 8 例。年齢は平均 13.3 歳。男児 5 例、女児 3 例。初診時の愁
訴は圧痛、屈曲時痛であった。LIPUS 治療により 8 例中 7 例に骨癒合を得た。また全例において疼痛
は消失し、愁訴はなくなった。LIPUS は小児骨性槌指に対して手術療法の前に試みてよい治療法と考
える。
1-3-44
陳旧性骨性槌指の治療経験
Treatment for chronic mallet fracture
陳旧性骨性槌指に対する鋼線を用いた観血的整復固定術を施行した。対象は 22 例 22 指、年齢は平均
35 歳、術後経過観察期間は平均 42 週、受傷から手術までの期間は平均 9 週であった。全例で骨癒合は
えられ、DIP 関節の痛みはなかった。DIP 関節可動域は平均 44 度、伸展不全角は平均 6 度、蟹江評価
は優 10, 良 6, 可 1, 不可 5 であった。最終診察時の DIP 関節可動域は年齢において有意差を認めた。
1-3-45
石黒法による陳旧性骨性槌指の治療
Treatment of chronic mallet fracture by Ishiguro’s procedure
千馬 誠悦(中通総合病院 整形外科)
成田 裕一郎
受傷 2 か月以上経過後に石黒法で手術した陳旧性骨性槌指の手術成績について報告する.術後 4 か月
以上経過観察できた 14 例 14 指を対象とした.手術までの期間は平均 82 日であった.伸展ブロックピ
ンを経皮的に刺入した後に観血的に骨片間の肉芽組織切除後に整復,ピンニングをした.全例で骨癒
合が得られたが,3 例に軽度の疼痛があった.術後には屈曲制限をよりきたしやすかった.手術時に
は関節面の整復に重点をおくべきである.
1-3-46
陳旧性骨性槌指の若年例に対する石黒法による治療経験
Treatment of Chronic Bony Mallet Fingers with Ishiguro’s Procedure in the Young
高瀬 史明(神戸大学大学院 整形外科)
美舩 泰,乾 淳幸,国分 毅,山崎 京子
骨性槌指新鮮例に対する石黒法の成績は良好であり広く用いられているが、受傷後 6 週以上経過した
陳旧性骨性槌指は観血的整復固定術の適応とされている。しかし観血的操作に伴う骨片の破損や終止
伸筋腱の損傷など治療に難渋する事も少なくない。今回我々は、受傷後 12 週以上経過した陳旧性骨
性槌指に対し、経皮的操作を併用した石黒法を用いて手術を行い良好な成績を得た 2 例を経験した。
75
Room 3
森澤 妥(国立病院機構埼玉病院 リハビリテーション科)
吉田 篤,河野 友佑,松村 崇史,高山 真一郎
1-3-47
陳旧性骨性マレット指に対する Pull out 法の治療経験
Modified Pull Out Suture Technique for the Treatment of Chronic Bony Mallet Finger
稲垣 弘進(JA愛知厚生連 豊田厚生病院 整形外科)
佐伯 将臣
受傷後 6 週間以上経過した陳旧性骨性マレット指 5 例 5 指(全例 Wehbe 分類 2B 型)に対して pull out
suture 法を行った。手術法の point は、両側の爪側縁から近位へ短冊状に皮切を行ったこと、3-0 ナイ
ロン糸を用いて指の背側皮膚で pull out 固定を行い 4 週で抜去したこと、1.0K-wire で DIP 関節固定を
5 週間行ったことである。蟹江の評価では優 2 例良 3 例、Crawford の評価では excellent2 例、fair3 例
であった。仕事や ADL 上に障害はなかった。
Room 3
76
第 4 会場(Room 4)
9:00~10:30
シンポジウム 4:上肢先天異常:機能障害の評価と治療
座長:高山 真一郎(国立成育医療研究センター)
堀井 恵美子(名古屋第一赤十字病院) 1-4-S4-1
先天異常手における第 1 指間の機能評価法
—母指 MP 関節の不安定性に着目して—
A Radiographic Method for Evaluation of the Index-Hypoplastic Thumb Angle
高木 岳彦(東海大学 医学部 外科学系 整形外科学)
関 敦仁,森澤 妥,持田 讓治,高山 真一郎
先天異常手では、第 1 第 2 中手骨間の開大が不良でこれを代償するように母指 MP 関節が橈屈する症
例にしばしば遭遇する。母指対立再建を目的に MP 関節の安定性獲得を含めた手術を行うことも少な
くないが、その際、橈屈不安定性の評価が重要である。われわれは第 1 指間を最大に開大した位置で
円錐形発泡スチロールを把持させ、第 1 第 2 中手骨間と母指基節骨第 1 中手骨のの開大角度を測定す
ることで母指 MP 関節の橈屈不安定性の評価を試みた。
幼少児における先天異常手の機能評価
Assessment for hand function in young children with congenital hand anomaly
射場 浩介(札幌医科大学 整形外科)
Functional dexterity test(FDT)と巻きメジャーを用いて行う(メジャー法)検査法を用いて、先天異
常手を有する小児患者対象に手指機能評価を行った。FDT とメジャー法は先天異常手を有する幼小
児の手指機能評価に使用可能であり、手術前後での手指機能改善を反映する有用な検査法と考えられ
た。
1-4-S4-3
母指多指症の治療成績の検討
Surgical results of thumb polydactyly
川端 秀彦(大阪府立母子保健総合医療センター 整形外科)
母指多指症自験例を日本手外科学会母指多指症術後成績評価表を用いて検討した.同評価表によって
評価することができた 125 例 132 母指を対象とした.手術時日齢は 371 日(0-1222 日),経過観察期間
は 7.1 年(1-17 年)であった.結果は「優」26%,「良」52%,「可」17%,
「不可」5% であった.分岐高位が
近位であるほど治療成績が悪くなる傾向を認めた
77
Room 4
1-4-S4-2
1-4-S4-4
裂手症における機能障害の評価と治療
Functional Assessment and Surgical Treatment of Cleft Hand
福本 恵三(埼玉成恵会病院・埼玉手外科研究所病院)
菅野 百合,小平 聡,酒井 伸英,斉藤 憲太
裂手症 12 例 17 手の機能を、握力、ピンチ力、Functional Dexterity Test、Simple Test for Evaluating
Hand Function、Q − DASH、Hand10 を用いて評価し、指列欠損型、第 1 指間の形態との関連を検討
した。症例が少ないが、これらの結果は裂手の機能は指列の減少に従って低下し、2 指列以上の欠損
型では良好ではないことを示唆する。1 指列欠損型の術後機能は第 1 指間の状態に関わらず良好であ
った。
1-4-S4-5
先天性多発性関節拘縮症の機能障害と治療―肘関節、前腕・手関節、手指―
Functional disorder and therapy for congenital arthrogryposis.
森澤 妥(国立病院機構埼玉病院 リハビリテーション科)
関 敦仁,高木 岳彦,福岡 昌利,高山 真一郎
Room 4
先天性多発関節拘縮症の機能障害と治療の適応・限界に関して検討した。対象は肘関節、前腕・手関
節、手指の手術を施行した 40 例 70 肢を対象とした。手指の屈曲拘縮に関しては安定した成績が得ら
れた。手関節の屈曲拘縮に関しては、軟部組織の剥離・延長のみでは限界があった。肘関節の屈曲再
建に関しては利用する力源が適切であれば改善が得られた。本疾患の治療に際しては個々に対応する
ことが必要である。
1-4-S4-6
先天性近位橈尺骨癒合症授動術の術後成績と分類
Mobilization of a congenital proximal radio-ulnar synostosis : Surgical results and
proposed classification
金谷 文則(琉球大学 大学院 医学研究科 整形外科講座)
金城 政樹,仲宗根 素子,掘切 健士,普天間 朝上
先天性橈尺骨癒合症に授動術を行い全例に何らかの ADL 改善を認めた。術後平均獲得可動域は前方
脱臼群 98 度、脱臼無し群 96 度、後方脱臼群 78 度と前方脱臼群の可動域は後方脱臼群より良好であり、
後方脱臼群のなかでも術前回内強直 50 度未満群の平均可動域は 85 度と、50 度以上群の 73 度に比べて
有意に良好だった(p < 0.05)。橈骨頭脱臼の方向と前腕回内強直角度による分類は術後獲得可動域の
指標になり得る。
78
12:10~13:10
西新宿セミナー 3
座長:坪川 直人(新潟手の外科研究所)
共催:日本メディカルネクスト株式会社
1-4-LS3
前腕 bipolar 損傷の治療 ―TFCC と骨間膜の治療を中心として
中村 俊康(国際医療福祉大学臨床医学研究センター / 山王病院 整形外科)
前腕 bipolar 損傷は広義には手関節と肘関節に同時に脱臼や骨折が生じるもの、狭義には近位および
遠位橈尺関節に同時に脱臼と骨折が生じるものと定義される稀な外傷である。代表的な外傷は EssexLopresti 骨折や bipolar 損傷で、骨間膜の損傷の有無により治療の難易度が変わる。本講演では前腕
回旋メカニズム、bipolar 損傷の病態と治療、付随損傷を生じたさまざまな variation について説明する。
中村 俊康(なかむら としやす)
略歴:
(満51歳)
昭和38年生
慶應義塾大学医学部卒業
慶應義塾大学医学部整形外科助手
Research Fellow, Mayo Clinic
Research Fellow, New York州立大学Buffalo校
Room 4
昭和63年 3月
昭和63年 5月
平成10年 7月
平成11年10月
平成12年11月
平成18年 7月
平成26年 7月
慶應義塾大学助手(医学部整形外科学)
慶應義塾大学医学部整形外科専任講師
国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授
山王病院整形外科部長
慶應義塾大学医学部整形外科客員准教授
79
13:25~14:28
一般演題 9:手根管症候群(術後評価)
座長:山本 真一(横浜労災病院)
1-4-1
手根管症候群手術後 2 年以上経過後の就労状況,手の痛み、しびれ,動作
障害に関するアンケート調査 第二報
Second report on questionnaire survey of the working situation and residual
complaints more than two years after carpal tunnel release
畑中 大介(長野県立 須坂病院)
内山 茂晴,林 正徳,池上 章太,加藤 博之
特発性手根管症候群手術後 2 年以上経過後の 57 例に就労状況、残存する愁訴等に関するアンケート調
査を行った。術後 1 か月以内に主婦業を含む就労に復帰していたのは 48 例(88%)で、手のしびれや痛
みは改善していた。しかし、CTSI-SS が 2 点以上の例は 15 例(26%)
、VAS 値で 11mm 以上のしびれ
が残存している例は 22 例(38%)であった。手根管開放術後 2 年以上でも症状の残存する例は少なくな
かった。
1-4-2
Room 4
手根管開放術後の正中神経内の微小血行動態の変化 ~造影超音波検査を
用いた検討~
Intraneural Microvascular Alterations of the Median Nerve after Carpal Tunnel
Release Assessed Using Contrast-Enhanced Ultrasonography
本宮 真(釧路労災病院 整形外科 手外科センター)
船越 忠直,松井 雄一郎,河村 太介,岩崎 倫政
造影超音波検査を用いて、手根管開放術前後における正中神経内の血流の変化を比較検討した。術後
手根管近位部で神経内血流は有意に増加し、術後 3 か月まで血流増加は持続していた。一方、臨床症
状や電気生理学的回復と神経内血流の変化に有意な相関は認めなかった。屈筋支帯の単純切除による
神経除圧効果だけでなく、除圧による微小血行動態の変化が術後の神経回復に重要である可能性が示
唆された。
1-4-3
手根管症候群の感覚評価における Pain Vision Ⓡの有用性
Utility of current perception threshold by perception quantitative measuring device
(Pain Vision®) for carpal tunnel syndrome
中村 恒一(安曇総合病院 整形外科)
内山 茂晴,伊坪 敏郎,林 正徳,加藤 博之
小型、簡便な感覚定量分析装置(Pain Vision Ⓡ)を用いて手根管症候群(CTS)患者の術前後の感覚を評
価し、その有用性を検討した.CTS 患者の感覚定量評価における Pain VisionR は,簡便、欠損値が少
ない、再現性が高い、重症度と相関する、2PD 値や SW 値と同定度の反応性を有する、などの利点が
ある.Pain Vision Ⓡは,CTS における感覚障害と術後の感覚回復の評価に有用である.
80
1-4-4
鏡視下手根管開放術(奥津法)における USE system 挿入時の正中神経偏
位・形態変化に関する超音波検査を用いた検討
The ultrasonographic study of median nerve displacement under Endoscopic Carpal
Tunnel Release
喜多島 出(虎の門病院分院 整形外科)
山本 精三,中道 健一,立花 新太郎
鏡視下手根管開放術(以下 ECTR)施行時に超音波検査を同時に施行し,USE system 挿入が正中神経
に与える影響を分析した.術前,USE system 挿入時,屈筋支帯切離後において,手根管近位レベル
および遠位レベルで超音波検査を施行し,正中神経の偏位,形態変化について検討した.USE
system 挿入により正中神経は橈側に偏位,形態も変化し,正中神経に対する負荷が加わる一方,リ
トラクト効果により safe zone を広げる効果を認めた.
1-4-5
超音波短軸像による正中神経の手根管内での移動の検討―手根管開放術前
後の比較―
Ultrasound assessment of the displacement of the median nerve in the carpal tunnel
before and after the carpal tunnel release in patients with the carpal tunnel syndrome
南野 光彦(日本医科大学 武蔵小杉病院 整形外科)
澤泉 卓哉,小寺 訓江,友利 裕二,高井 信朗
1-4-6
超音波動態解析による手根管症候群手術後の効果判定
Ultrasound Assessment of the Effectiveness of Carpal Tunnel Release on Median
Nerve Deformation
吉井 雄一(東京医科大学茨城医療センター 整形外科)
石井 朝夫,ドン ウェンリン,田中 利和
観血的手根管開放術(OCTR)前後の手指運動時の正中神経の形態変化を調べた。手根管症候群患者の
手根管近位部で正中神経の横断面積、周径、縦横比、円形度を計測した。指屈曲位での計測値を指伸
展位の計測値で除した値を変化率とし、術前後で比較した。OCTR 術後、周径と円形度の変化率は術
前と比較して有意に大きくなり、縦横比の変化率は小さくなった。OCTR 術後の形態変化は健常者と
類似しており神経の回復所見と考えられた。
81
Room 4
手根管症候群 12 例に対して,手根管開放術前後における手関節肢位変化と手指屈伸による正中神経
の手根管内移動について,超音波短軸像で比較検討した.神経は,術前では手関節中間位から背屈位
にすると背橈側に,尺屈位では掌橈側に,そして掌屈位と橈屈位では掌尺側に移動し,全指屈曲時に
屈筋腱により横手根靱帯で圧迫されていた.手根管開放後では,神経は全手関節肢位で掌側に転位し,
屈筋腱による干渉は受けない傾向を示した.
1-4-7
鏡視下手根管開放術後 2 年以上経過例の MRI による検討
Change of Carpal tunnel in MRI before and two years after endoscopic carpal tunnel
release
百瀬 敏充(諏訪赤十字病院)
内山 茂晴,宮岡 俊輔,加藤 博之
鏡視下手根管開放術(ECTR)前後の MRI にて手根管と正中神経の長期変化を検討した.ECTR 術後の
患者 24 例にて術前と 2 年以上経過時の神経伝導速度,手根管部の MRI を施行し,有鉤骨鉤と手関節
部横断像にて手根管と正中神経の断面積,palmar bowing を測定した.無症状例の MRI の断面積も測
定した.術後 2 年以降も手根管の拡大は維持され,有鉤骨鉤部の正中神経は肥大のままで手関節部は
軽度縮小した.
14:28~15:31
一般演題 10:手根管症候群(術後 合併症)
座長:若林 良明(横浜市立みなと赤十字病院)
1-4-8
手根管開放術後の手根骨配列の変化
Computed tomography of the carpal bone after the carpal tunnel release
Room 4
平良 貴志(四谷メディカルキューブ 手の外科・マイクロサージャリーセンター)
戸張 佳子,山田 哲生,吉村 礼子,平瀬 雄一
手根管開放術後に起こる pillar pain の一因として手根骨配列が変化することで母指球筋、小指球筋起
始部が一時的に不安定となることが関与していると考えた。当院で過去 2 年間に手根管開放術を行い、
術前後に CT 撮影を行われていた 10 例 12 手を対象に調査を行った。術後 pillar pain を認めたものは 4
例 4 手であり、手根骨配列の変化と pillar pain の有無に相関関係を認めた。
1-4-9
鏡視下手根管開放術後の pillar pain
Pillar pain after endoscopic carpal tunnel release
牧 裕(一般財団法人 新潟手の外科研究所)
吉津 孝衛,坪川 直人,成澤 弘子,森谷 浩治
Two portal による鏡視下手根管開放術(ECTR)後の pillar pain、皮切部瘢痕圧痛、皮下屈筋支帯切離
部圧痛の発生頻度を検討し、以前報告した手掌内小皮切直視下手根管開放術(OCTR)後の同様の頻度
と比較した。術後 1ヵ月の pillar pain の頻度は男女ともに 20%台であった。皮切部瘢痕や屈筋支帯切
離部の圧痛は女性に多い傾向があった。ECTR の方が OCTR に比べ女性の pillar pain の頻度が少なか
った。
82
1-4-10
手根管開放術後に神経障害性疼痛が出現した症例の検討
Neuropathic pain after open carpal tunnel release
園畑 素樹(佐賀大学 医学部 整形外科)
峯 博子,鶴田 敏幸,馬渡 正明
手根管開放術後に神経障害性疼痛(NP)が出現した症例について検討した。PainDETECT にて NP(-)
の症例 112 手を対象とした。術後不変であった症例 97 手と、術後 NP(+)となった症例 15 手を比較検
討した。術前疼痛 VAS に有意差を認めた(p < 0.01)が、年齢、性別、罹病期間、神経伝導速度に有意
差を認めなかった。術前に疼痛が強い CTS 患者に手根管開放術を行う際には術後の疼痛管理に注意
を要する。
1-4-11
重度尺骨神経麻痺に対する Bulkhalter & Strait 変法の治療成績
Bulkhalter and Strait modified procedure for severe ulnar nerve palsy
坂井 健介(聖マリア病院 整形外科)
吉田 史郎,吉田 健治,仲摩 憲次郎,白濱 正博
1-4-12
重度手根管症候群に対する固有示指伸筋腱移行による対立機能再建術
Opponensplasty with Extensor Indicis Proprius for Severe Carpal Tunnel Syndrome
森谷 浩治((財)新潟手の外科研究所)
吉津 孝衛,成澤 弘子,原 敬,柳橋 和仁
【目的】固有示指伸筋を用いて対立再建を施行した重度手根管症候群の治療成績を調査したので報告
する。【対象と方法】術後 6 か月以上の経過観察が実施できた 27 例を対象とし、示指との指腹つまみ
力と示指中手指節(MP)関節の伸展不全角度を調査した。【結果】つまみ力は対健側比の平均で最終診
察時は 91% であった。示指 MP 関節の伸展不全は平均 6.4°であった。【考察】本術式の機能獲得は良好
で、示指機能への障害も少ないと考える。
1-4-13
特発性手根管症候群の再手術
Secondary Carpal Tunnel Surgery
吉村 光生(吉村整形外科医院)
特発性手根管症候群 35 例 35 手に対し再手術を行った.初回手術は直視下法 28 例,鏡視下法 7 例であ
った.直視下法の内訳は手掌皮切法 19,従来法 4,手掌・手関節部 2 皮切法 3,手関節部皮切法 2 であ
った.術中所見は横手根靭帯の不完全切離 23,神経損傷 4,屈筋腱滑膜炎 3,神経癒着 2,原因不明 3
であった.神経損傷は全て鏡視下法であった.再手術は全て直視下法で行ったが,術後症状は消失ま
たは著明に改善した.
83
Room 4
尺骨神経損傷や重度肘部管症候群などはかぎ爪変形遺残とともに重篤な巧緻運動障害が残存しやす
い。今回 10 症例に対し、Burkhalter and Strait 変法による骨間筋機能再建術を行ってきたが、変形の
矯正とともに握りやピンチ動作も改善し、DASH score は術前平均 41.3 点から術後平均 19.2 点まで有
意に改善していた。本法は患者の満足度も非常に高く、難治性尺骨神経麻痺の再建法として有用であ
ると思われた。
1-4-14
血液透析患者に発症した手根管症候群における再手術例の検討
Reoperation for Carpal Tunnel Syndrome in Hemodialysis Patients
佐伯 将臣(豊田厚生病院 整形外科)
稲垣 弘進
血液透析患者の手根管症候群に対し、鏡視下手根管開放術を施行した 14 例 19 手について、再手術例
を初回手術のみの例と比較し、再発の要因を検討した。調査項目は、シャント側との関係、初回手術
までの透析歴、術前の電気生理学検査から抽出した distal motor latency と sensory nerve conduction
velocity、Kelly の評価基準とした。血液透析患者の手根管症候群の再手術はシャント側に多く、初回
手術までの透析歴が短い傾向にあった。
15:50~16:44
一般演題 11:末梢神経(画像診断)
座長:冲永 修二(東京逓信病院整形外科)
1-4-15
脳磁図を用いた手根管症候群における脳皮質の変化の検証
Magnetoencephalographic analysis of cortical activity in carpal tunnel syndrome
Room 4
岩月 克之(名古屋大学 医学部 手の外科)
寳珠山 稔,上村 純一,平山 正昭,平田 仁
手根管症候群に脳磁図を行い、正中神経を刺激し体性感覚誘発脳磁場を計測した。単発刺激に加え 4
種類の刺激間隔(ISI)の 2 発刺激に誘発された N20m の振幅の回復曲線を対照群と比較した。ISI が
10ms で有意に大きな反応を示した。N20m の電流源を脳上へ投影した結果、手根管症候群患者では
上方向に位置する傾向見られた。手根管症候群患者は体性感覚皮質における抑制性活動の減少を生
じ、さらに体性一次感覚野の再構築を生じている。
1-4-16
肘部管症候群の画像診断における尺骨神経 MRI T2 強調像 high signal の
有用性
Reliability of MRI T2W high signal of the ulnar nerve in diagnosis for cubital tunnel
syndrome
寺山 恭史(蓮田病院)
内山 茂晴,岩倉 菜穂子,加藤 義治,加藤 博之
肘部管症候群(CubTS)の MRIT2W における尺骨神経 high signal の所見が診断に有用かを検討した。
CubTS 患者群 30 肘と control 群 24 肘の肘部 MRI から、尺骨神経が high signal を示す high type と high
を示さない low type に分類した。High type は CubTS 群で 67%、control 群で 13% であり、CubTS 群
で有意に高値であった(Fisher’s exact test, p < 0.05)。T2 high の所見は CubTS の診断における陽性
的中率が 0.87 と有用な画像診断所見と考えられた。
84
1-4-17
特発性と思われる手根管症候群に対する術前ルーチン MRI の必要性に関す
る検討
Is routine preoperative MRI necessary for a patient with clinical diagnosis of
idiopathic carpal tunnel syndrome?
河原 三四郎(高月整形外科病院 東京手の外科・スポーツ医学研究所)
山口 利仁
手根管症候群の診断は、臨床所見や電気生理学検査に基づいて行われ、補助診断として MRI や超音
波が使用されることがある。MRI は神経・屈筋腱と手根管内の占拠性病変の描出に優れている。本研
究では、特発性手根管症候群と臨床診断し、手術を計画した症例で術前 MRI を撮像した患者を対象
とした。その中で手根管開放術以外の術式も要すると判断される病変が見られた症例を検討し、ルー
チン MRI の必要性を検討する。
1-4-18
透析に伴う手根管症候群についての MRI による検討 ―非透析症例との比
較―
MRI analysis of carpal tunnel syndrome due to long term hemodialysis. Comparison
to non-hemodialysis cases.
藤田 浩二(土谷総合病院 整形外科)
木森 研治,角西 寛,山中 浩気,生田 義和
1-4-19
上肢麻痺を主訴に来院した特発性腕神経叢障害における MRI の有用性
Usefulness of MRI in patients with idiopathic brachial disorders complaining of upper
extremity paralysis
澤田 智一(浜松医科大学 整形外科)
大村 威夫,松山 幸弘,荻原 弘晃,牧野 絵巳
誘因なく発症し、片側上肢の進行性不全麻痺があり、MRI にて異常を認めた 3 例を対象とした。発症
から診断までの期間は最長 5 年であり、2 例に整形外科手術既往があった。全例がまだらな不全麻痺
で、1 例のみ感覚障害がなかった。腕神経叢部 MRI(斜位冠状断像、STIR、造影 T1)において、全例
に神経腫大と造影効果を認めた。上肢麻痺に対して積極的に腕神経叢部まで含めた MRI を行うこと
で診断可能となると思われる。
1-4-20
演題取り下げ
85
Room 4
屈筋腱、滑膜いずれへのアミロイド沈着が透析による手根管症候群(CTS)の主病因であるかを、CTS
初回手術を施行した HD 群、非 HD 群各 40 例について、術前 MRI を比較して検討した。その結果、
HD 群で屈筋腱と手根管の断面積が増大していたが、主に滑膜がある手根管内スペースには変化がな
かった。屈筋腱へのアミロイド沈着が屈筋腱肥大、さらに手根管内圧上昇を惹起し、神経圧迫の主因
となっている可能性が示唆された。
16:44~17:29
一般演題 12:肘関節(小児)
座長:関 敦仁(国立成育医療研究センター)
1-4-21
小児上腕骨顆上骨折に対する手術治療成績
Surgical Treatment for Supracondylar Fractures of the Humerus in Children
西田 欽也(手稲渓仁会病院 整形外科 上肢センター)
佐々木 勲,蔡 栄浩,遠藤 健,前田 明子
過去 7 年に手術を行った小児上腕骨顆上骨折 21 例について検討した。手術術式は徒手整復+鋼線固定
が 15 例、観血的整復+鋼線固定が 6 例、平均経過観察期間は 3 年 9 か月であった。最終経過観察時の
carrying angle は平均 173°、肘関節の伸展−屈曲は平均 16°− 134°であり、Flynn の評価法では良好
であった。Baumann angle 及び tilting angle は術直後と最終経過観察時の間で有意差はなく、正確な
整復と保持が重要であると考えられた。
1-4-22
小児上腕骨顆上骨折に伴う血管損傷に対する治療戦略
Treatment policy of vascular injury combined with pediatric supracondylar fracture
Room 4
中川 敬介(大阪市立総合医療センター 小児整形外科)
日高 典昭,福田 誠
小児上腕骨顆上骨折に伴う Pink, pulseless hand に対する治療方針は一定していない。Gartland 分類 3
型の症例を対象として後ろ向きに調査し、適切な治療戦略について考察した。症例は全 46 例で、術
前に明らかな循環障害を伴っていた症例は 8 例で、うち 7 例で血管を展開した。術中所見は血管攣縮
から血栓による完全閉塞まで様々であった。術前評価またはピンニング後の所見次第で、上腕動脈の
展開は躊躇すべきではないと考えている。
1-4-23
小児上腕骨外側顆骨折の合併損傷と治療成績
Complication and Clinical Evaluation of Humeral Epicondyle Fracture in Children
久保 和俊(昭和大学整形外科学教室)
川崎 恵吉,池田 純,富田 一誠,稲垣 克記
2001 年以降当科において手術加療を要した小児上腕骨外側顆骨折 106 例を経験し、特に合併損傷に着
目し、治療上の注意点を再確認したので臨床成績とともに報告する。平均年齢 6.2 歳、男児 64 例女児
42 例、右 50 例左 56 例、平均観察期間は 16.1ヶ月であった。腕尺関節の脱臼を伴っていた症例が 10 例
と比較的多くみられた。小児上腕骨外側顆骨折は初診時の充分な問診、理学所見が重要であり、病態
生理を理解して治療することが重要である。
86
1-4-24
小児上腕骨外顆骨折の治療経験―後外側 vs 前外側進入法
Clinical results of lateral humeral condyle fractures in children; results of a surgical
treatment using posterolateral v.s. anterolateral approach
友利 裕二(日本医科大学大学院医学研究科整形外科学分野)
澤泉 卓哉,南野 光彦,小寺 訓江,高井 信朗
小児上腕骨外顆骨折は関節内骨折であるため、関節面の解剖学的な整復が必要とされる。後外側進入
法では上腕骨遠位端前方関節面の展開が困難であるため、関節面の整復が不十分となり術後内反肘の
一因となったものと推察する。前外側進入法は上腕骨遠位前方関節面の展開が容易で、解剖学的な整
復が確実であることから、推奨される侵入法である。
1-4-25
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に対する骨軟骨柱移植術の中長期における画像
変化
Mid- to Long-term Radiographic Changes after Autologous Osteochondral
Mosaicplasty for Osteochondritis Dissecans of The Elbow
瓜田 淳(北海道大学大学院 医学研究科 整形外科)
船越 忠直,松井 雄一郎,河村 太介,岩崎 倫政
17:50~18:35
一般演題 13:皮弁ほか
座長:磯貝 典孝(近畿大学医学部形成外科)
1-4-26
手指再建のための様々な SCIP フラップ
Various Type of Superficial Circumflex Iliac Artery Perforator (SCIP) Flap for Hand
Reconstruction
吉松 英彦(東京大学医学部附属病院)
山本 匠,岩本 拓,成島 三長,光嶋 勲
From December fo 2012 to July of 2014, 7 cases of hand reconstruciton were performed using SCIP
flaps. The vascularized deep fascia and intercostal nerve were integrated with the skin paddle in
respective cases. A flow-through flap was elevated in one case in which only one digital was patent.
In 6 cases, flaps showed complete survivial with satisfactory cosmesis.
87
Room 4
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)に対する骨軟骨柱移植術(mosaicplasty)の中長期の画像変化につい
て検討した。対象は術後 5 年以上経過した 15 例 15 肘(中央型 7 肘、外側型 8 肘)、平均経過観察期間 89
ヵ月。外側型で術前の腕頭関節の適合性が悪く、橈骨頭が肥大していたが、中央型、外側型とも術後
に適合性の悪化や肥大化の進行はなかった。MRI では良好な軟骨が維持されていた。OCD に対する
mosaicplasty は安定した治療法であった。
1-4-27
手の重度 AVM における術前塞栓硬化療法が外科的治療に及ぼす影響
The implications of postoperative embolo-sclerotherapy for surgical treatment of
severe AVM
林 明辰(東京大学 医学部 形成外科)
田代 絢亮,成島 三長,光嶋 勲
近年、塞栓硬化療法と外科的手術での切除を併用した集学的治療が AVM の一般的な治療法とされて
きている。AVM の治療法において、塞栓硬化療法は様々な利点がある一方で、今回我々の施設で外
科的手術を行った症例から、病変外の部位での塞栓や硬化剤に伴う組織壊死、周囲組織の瘢痕化が塞
栓硬化療法の合併症として挙げられ、それらが切除・再建などの外科的手術を困難とする可能性があ
ることが示唆された。
1-4-28
鬱血対策に皮下静脈を付加した逆行性指動脈皮弁
Reverse Vascular Pedicle Digital Island Flap Superdranaged with Subcutaneous Vein
三宅 良平(大津赤十字病院 形成外科)
石河 利広,角谷 聡,中谷 浩子,石川 浩三
Room 4
指尖部損傷の再建に対し、逆行性指動脈皮弁は有用な再建法である。しかし、原法では術後に鬱血を
生じ易い事が問題とされている。中には重度の鬱血を生じ、皮弁壊死に至る可能性もある。この対策
として、血管茎とともに皮膚茎を付着させる方法や、皮弁移行後に皮下静脈を吻合する方法が報告さ
れているが、今回我々は掌側の皮下静脈を付加する方法を考案したので報告する。
1-4-29
Short pedicle により行った足趾からの組織移植による指尖再建
Finger tip reconstruction by free tissue transfer from toe using short pedicle
五谷 寛之(清恵会病院大阪外傷マイクロサージャリーセンター)
矢野 公一,田中 祥貴,宮下 昌大,山野 慶樹
手指指尖部欠損に対して第一背側中足動脈系より short pedicle を用いて採取した 2nd-toe Wrap
around flap(2nd-toe WAF),第 2 足趾よりの末節部指移植,Hemipulp flap を用いた指尖部再建を用
いた方法について報告する。症例は 18 指で、いずれも short pedicle を用いた。日手会の Highet 法改
変評価による知覚回復は S3 が 15 指、S2 が 3 指であった。
1-4-30
足部から手指へ移植した組織採取部の検討
Donor morbidity from the foot to the hand
田中 克己(長崎大学 医学部 形成外科)
高橋 国宏,千住 千佳子,大石 正雄,平野 明喜
足部は手指に類似した組織であり、手指再建の重要な組織採取部となっている。そのため多くの組織
移植が行われているが、採取部の犠牲は少なくないため採取後の問題点について検討を行った。当院
での過去 22 年の足部から手指への遊離植皮ならびに遊離皮弁による再建症例 211 例について考察を加
え報告する。
88
第 5 会場(Room 5)
9:00~10:30
シンポジウム 5:リウマチ手治療の進歩
座長:池上 博泰(東邦大学整形外科) 正富 隆(行岡病院整形外科・手の外科センター)
1-5-S5-1
関節リウマチにおける母指変形の手術療法
Surgical treatment for Rheumatoid thumb
小田 良(京都府立医大大学院 運動器機能再生外科学(整形外科))
遠山 将吾,谷口 大吾,藤原 浩芳,久保 俊一
RA 母指変形に対して手術を施行した 12 例を対象として術後成績について検討した.全例で機能改善
が得られたが,表面置換型人工関節をもちいた症例では機能改善がより優れていた.RA 母指変形の
治療は,各関節や軟部組織の解剖学的構造および変形の機序に精通し,状態に応じた最適なオプショ
ンを選択する必要がある.さらに手術療法においては,手術手技の向上に加え,局所の状態を的確に
判断して術式を決定することが重要である.
1-5-S5-2
関節リウマチの MCP 関節症に対する AVANTA プレフレックスの成績
~屈曲可動域獲得のための工夫~
Short-term Results of AVANTA Pre-Flex Type for Metacarpophalangeal Joints in
Rheumatiod Arthritis
秋田 鐘弼(大阪南医療センター 整形外科・リウマチ科)
坪井 秀規,辻 成佳,橋本 淳,齊藤 正伸
1-5-S5-3
関節リウマチにおける複指伸筋腱皮下断裂に対する腱再建術の検討
Reconstruction of extensor tendon subcutaneous rupture of multiple fingers of
rheumatoid hands
関口 昌之(東邦大学 医学部 整形外科)
宮崎 芳安,大日方 嘉行,川上 裕史,中村 一将
関節リウマチ(以下 RA)の多数指伸筋腱皮下断裂に対して、断裂腱の中枢側を反転して力源とする方
法を施行し、治療成績と有用性について検討した。尺側 3 指罹患は 7 例に環・小指罹患 2 例でこの方
法が行われていた。術後早期は MP 関節の伸展可動域の不良が目立ったが、術後 3〜6ヵ月で伸展可動
域が改善する症例が多かった。本法は、伸展の改善に時間を要すものの比較的良好な伸展可動域が獲
得できる方法である。
89
Room 5
RA による MCP 関節症 19 例 25 手 90 指にシリコンインプラントの AVANTA プレフレックスを用いた
関節形成術を施行した。MP 屈曲 / 伸展が術前平均 77°/-44°、調査時平均 66°/-13°と多くの症例が
MCP 屈曲 60°以上が獲得できていた。また、尺側偏位角度、外観に関する VAS は有意に改善した。
AVANTA プレフレックスの短期成績は良好で、術後の MCP 関節の屈曲角度も保持できていた。
1-5-S5-4
関節リウマチにおける尺骨近位端の安定化術
(Breen 変法)
の有用性について
Clinical reserch of stabilization of proximal ulna stump in rheumatoid arthritis
(modified Breen method)
谷野 善彦(藤井外科胃腸科整形外科)
栩木 弘和,田村 知雄
対象は術後 1 年以上経過観察した 29 例 31 手。平均年齢 58 歳、術後観察期間 4 年 10 か月、関節可動域、
握力、ulnar stump の疼痛、クリックの有無と橈骨と ulnar stump の距離計測を行った。疼痛は全例
認めず、1 手にクリックを生じた。各平均可動域は回内 58 → 75 度、回外 53 → 83 度、掌屈 24 → 20 度、
背屈 25 → 32 度と変化した。握力は 8.3 → 15.3kg と増加した。ulnar stump は橈骨との位置を維持して
いた。RA における本術式の制動効果は有用と考える。
1-5-S5-5
3 次元術前計画および lateral para︲olecranon approach による低侵襲人
工肘関節置換術の試み
Minimally invasive total elbow arthroplasty using three dimensional surgical planning
and lateral para-olecranon approach
岩本 卓士(慶應義塾大学 整形外科)
望月 猛,鈴木 拓,越智 健介,佐藤 和毅
対象は 9 例 9 肘.術前 CT を用いて適切なインプラントサイズおよび設置位置を決定した.展開は上
腕三頭筋外側 1/2 および肘筋を外側にレトラクトし,上腕三頭筋腱付着部は温存する lateral paraolecranon approach により施行した.ROM は屈曲が術前 118°から術後 128°へ,伸展が術前 -35°から
術後 -17°に改善した.術後の上腕三頭筋機能不全,脱臼は生じなかった.上腕三頭筋腱付着部を切離
しない本法は伸展可動域の改善が良好であった.
1-5-S5-6
Room 5
リウマチ手の機能再建術に対する患者立脚型アウトカム評価
Patient-based outcome assessment for the surgical reconstruction of the rheumatoid
hand
石川 肇(新潟県立リウマチセンター リウマチ科)
阿部 麻美,大谷 博,親川 知,針金 健吾
リウマチ手の機能再建術が施行された 30 例を対象に、術前(ベースライン)と術後 1 年での疾患活動性
と 4 つの評価法を用いたアウトカム評価を前向き研究で行った。その結果、疾患活動性(DAS28-ESR
(4), SDAI)、上肢能力(DASH)、身体機能(HAQ-DI)、QOL(HAQ-DI, EQ-5D)のいずれも有意に改
善していたが、心理面(BDI-II)の改善までには至らなかった。
90
12:10~13:10
西新宿セミナー 4
座長:大江 隆史(名戸ヶ谷病院)
共催:旭化成ファーマ株式会社
1-5-LS4
手の外科医が診る骨粗鬆症・代謝性骨疾患
~親子の遺伝率からみた骨量獲得~
清水 弘之(聖マリアンナ医科大学 整形外科)
手の外科医は橈骨遠位端骨折を治療する機会が多いことから、手の外科医が骨粗鬆症治療に興味を持
ち、精通できれば患者に薬物治療を継続させ、その後の骨折や寝たきりを予防できると考えている。
今回、小児期からの骨密度獲得戦略と中年以降に対する橈骨遠位端骨折後の骨粗鬆症薬の使い方、
BP 剤を使用してはいけない代謝性骨疾患があることなどを中心にお話し、薬物治療をドロップアウ
トさせないコツについて言及する。
清水 弘之(しみず ひろゆき)
略歴:
昭和32年生まれ
昭和58年
平成 2年~4年
平成 5年
平成17年
平成22年
聖マリアンナ医科大学卒業
米国ケンタッキー州Louisville Hand Surgery 留学
聖マリアンナ医科大学整形外科講師
聖マリアンナ医科大学整形外科学助教授、リハビリテーション部副部長
同 整形外科学病院教授、リハビリテーション部部長、医療安全管理室室長
Room 5
91
13:25~14:10
一般演題 14:炎症 1
座長:野口 政隆(田中整形外科病院)
1-5-1
ばね指に対する腱鞘外注射注射は有効なのか
Is it available Extrasheath injection for trigger finger?
豊泉 泰洋(日本大学病院 整形外科)
長尾 聡哉,長岡 正宏
【目的】ばね指に腱鞘外注射を行い腱鞘内注射と比較。【対象】腱鞘内注射群(IS)と腱鞘外注射群(ES)
に分け検討。IS 群 19 指 ES 群 21 指。男 9 女 31 人。全例超音波下に直交法でトリアムシノロン 4mg+1
%リドカイン 0.4ml27G 針で腱鞘内 / 外に薬液広がることを確認した。【結果】両群早期は軽快。IS 群 3
例 ES 群 4 例再注射を要した。腱鞘切開 IS 群 3、ES 群 2 要。合併症は両群無し。【考察】ケナコルト注
射療法において、治療効果の差は認めなかった。
1-5-2
ステロイド側正中注入法による狭窄性屈筋腱腱鞘炎の治療経験
Midlateral injection of steroid in the treatment of stenosing flexor tenosynovitis
亀山 真(東京都済生会中央病院 整形外科)
小見山 貴継,手塚 正樹,柳本 繁
狭窄性屈筋腱腱鞘炎に対する初期治療として,PIP 関節を屈曲位に保ちながら指基節部側方より基節
骨頸部掌側面と屈筋腱の間隙に向けて懸濁性ステロイド(トリアムシノロン)を注入する側正中注入法
(Midlateral injection technique)を紹介する.本法は,高確率での腱鞘内への注入を可能とし,腱鞘
炎症状の治癒率,指関節可動域の改善の程度は従来法に匹敵する効果が得られていた.
Room 5
1-5-3
de Quervain 病に対する腱鞘再建術の治療経験
Clinical results of pulley reconstruction for de Quervain`s disease
岩崎 幸治(太田総合病院 手外科センター)
富田 泰次,金 潤壽,根本 高幸
de Quervain 病の診断にて腱鞘形成術を施行した 14 例に対し検討をおこなった。第 1 区画を Z 状もし
くは step-cut 状に切開し APL、EPB を展開して滑膜及び隔壁を切除、腱鞘腔を拡大しつつ腱鞘断端
を縫合し腱鞘を再建した。術後、軽度の疼痛を 3 例、一過性のしびれを 1 例に認めたものの腱の亜脱
臼はなく、麻生の評価法で優 9 例、良 5 例と成績は良好であった。手技も容易で、重大な合併症もな
い本法は de Quervain 病の手術法として有用と考える。
92
1-5-4
高周波プローブによる超音波検査を用いた強剛母指の画像的検討
Evaluation of Trigger Thumb in Children using High-Frequency Ultrasonography
國府 幸洋(柏厚生総合病院 整形外科)
杉山 敦樹
小児強剛母指 10 例 10 指を高周波プローブによる超音波検査を用いて画像的に検討した.FPL 腱と A1
プーリー(以下 A1)は患側で有意に肥厚していた.全例において A1 における腱の通過障害を示唆す
る所見(dark tendon sign)と,腱内部の器質的変化を示唆する所見(tendinopathy)を見出した.また,
今回の検討から,本疾患では A1 や腱周囲軟部組織の炎症や浮腫,血流増加が生じていないか,検出
できないほど微細であると推察した.
1-5-5
手に生じた米粒体を伴った屈筋腱滑膜炎
Flexortenosynovitis with rice bodies in the hand
花香 直美(三友堂病院)
佐竹 寛史,石垣 大介,丸山 正博,高木 理彰
手指屈筋腱周囲に米粒体を伴った腱滑膜炎を生じた 4 例を経験した。男性 2 例、女性 2 例。平均年齢
75 歳(63-85 歳)であった。外傷の既往 1 例、手術後 2 例であり、全例腱滑膜と米粒体切除を行い、合
併症に対する治療も行った。病理所見はいずれも非特異的な滑膜炎であり、非定型抗酸菌陽性が 2 例
であった。術後観察期間は平均 1 年 7 か月(6 か月〜4 年 8 か月)で、再発が認めていない。
Room 5
93
14:35~16:05
シンポジウム 6:Dupuytren 拘縮の治療
座長:内田 満(東京慈恵会医科大学形成外科)
平田 仁(名古屋大学手の外科) 1-5-S6-1
Partial fasciectomy と Z︲plasty による Dupuytren 拘縮の治療
partial fasciectomy and Z-plasty for Dupuytren’s Contracture
菅野 百合(埼玉成恵会病院 埼玉手外科研究所)
福本 恵三,加藤 直樹,小平 聡,斉藤 憲太
Dupuytren 拘縮に対する cord 直上切開+ partial fasciectomy + Z-plasty の術式の治療成績を報告す
る。55 例 63 手 術、Meyerding 分 類 stage0 が 2 手 stage1 が 32 手 stage2 が 22 手 stage3 が 4 手 stage4 が 2
手に施術した。Tubiana の術後評価は優 18 手、良 31 手、可 7 手、不可 6 手であった。可症例は PIP 関
節拘縮の再拘縮が、不可症例は病態の進展が成績不良の原因となっていた。皮膚性拘縮に対しては
Z-plasty で対応できた。
1-5-S6-2
Dupuytren 拘縮に対する部分的腱膜切除術の長期経過についての検討
Long term follow-up of partial fasciectomy for Dupuytren’s contracture
山中 浩気(土谷総合病院 整形外科)
木森 研治,河越 宏之,角西 寛,生田 義和
Room 5
Dupuytren 拘縮に対する部分的腱膜切除術後 5 年以上の経過観察が可能であった 21 例 22 手を対象と
して、自動伸展可動域の推移、cord の発生、機能障害の有無について検討した。PIP 関節の長期成績
は MP 関節に劣っていたものの、PIP 関節の伸展制限が残る症例は MP 関節が代償性に過伸展する傾
向があり、日常生活動作への影響は少なかった。また、主に橈側で進行が多く認められたが、再発率
は低く、患者満足度は概ね良好であった。
1-5-S6-3
Zigzag 切開による腱膜切除、創部分開放+早期運動療法による
Dupuytren 拘縮の治療
Surgical Treatment for Dupuyren’s Contracture with Zigzag incision, Partial open
method and Early Exercise
麻田 義之(田附興風会 北野病院 整形外科)
Dupuytren 拘縮の手術において Zigzag 切開で展開し病的腱膜の徹底切除を行ってきた。創閉鎖時に、
V-Y 法に準じて山形の頂点に切れ込みを加え、緊張が強い時は開放として、術後は温浴下に積極的
な手指自動運動を行った。直接検診による追跡が可能であった 30 例 33 手 58 指の成績は、小指の改善
がやや劣るものの良好な結果が得られ、創も追加処置を行うことなく一期的に治癒した。本法は、拘
縮改善、創閉鎖、治癒に有効な方法と考える。
94
1-5-S6-4
Dupuytren 拘縮に対する経皮腱膜切離術の治療成績—Dupuytren
Diathesis、及び術前拘縮と臨床成績の関連
Clinical results of percutaneous needle fasciotomy for Dupuytren’s disease ; Is there
any correlation between preoperative severity or Dupuytren’s diathesis and clinical
results?
阿部 圭宏(千葉大学 医学部 整形外科)
徳永 進
経皮腱膜切離術 51 例 103 指の臨床成績を報告する。%improvement は MP 関節 89%、PIP 関節 57%、
Successful correction は MP 関節 99%、PIP 76% 関節であった。術後成績は Abe’s glade3, 4 が 1, 2 より
有意に悪かった。再発率は MP 関節 20%、PIP 関節 38% であり、diathesis score での有意差はなく、
手術時年齢で有意差を認めた。MP 関節の治療成績は PIP 関節より良好であった。若年発症と PIP 関
節の拘縮が成績不良の原因と考えた。
1-5-S6-5
当科における Dupuytren 拘縮の治療の実際
The treatment of Dupuytren’s contracture in our department.
鳥谷部 荘八(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター形成外科・手外科)
牛尾 茂子
Surgery therapy that is now generally done is difficult, there are many risk of postoperative
complications in Dupuytren’s contracture. We have examined cases that were experienced in four
years. We need a minimum of fasciectomy and postoperative rest in patients, subjected to necessary
and sufficient post-operative analgesia, are striving to avoid complications.
1-5-S6-6
高度なデュプイトラン拘縮例の創閉鎖に有用な局所皮弁
Useful local flaps for severe Dupuytren contracture cases
デュプイトラン拘縮の手術ではあえて指の完全伸展位での矯正を行わない考え方が一般的である。し
かし、PIP 関節の屈曲が非常に高度な症例では、指を伸展した時点で皮膚欠損を生じてしまう症例も
多い。演者は手術終了時点での指の完全伸展を手術の目標とし、このような症例に対しては積極的に
指の局所皮弁による被覆を行い、良好な結果を残してきたので報告する。病的コードの切除は必要条
件ではないことを説明する。
95
Room 5
平瀬 雄一(四谷メディカルキューブ手の外科マイクロサージャリーセンター)
山口 利仁,稲見 浩平,福本 恵三
16:15~17:45
シンポジウム 7:手の感染症の診断と治療
座長:仲沢 弘明(日本大学医学部整形外科)
楠瀬 浩一(東京労災病院整形外科) 1-5-S7-1
化膿性腱鞘炎に対する治療成績の検討
The outcome of treatment of pyogenic flexor tenosynovitis
平川 明弘(岐阜大学 医学部 整形外科)
蔵満 紀成,大野 義幸,秋山 治彦
化膿性腱鞘炎と診断し、手術加療を行った症例の治療成績を検討した。術後機能は Good:10 指、
Fair:10 指、Poor:1 指、%TAM は 85.5 ± 14.5% であった。術後機能が良好であった症例は stage1 と
stage2 の 1 部であり、すべて発症から 4 日以内に手術が行われていた。早期の段階で手術加療を考慮
することが良好な機能予後を得るために重要と考えられた。
1-5-S7-2
手指の結核性腱鞘炎の治療経験
Two cases of tuberculous tenosynovitis in the finger
藤岡 宏幸(兵庫医療大学リハビリテーション学部)
常深 健二郎,国分 毅,豊川 成和,田中 寿一
手指の結核性腱鞘炎を報告する。症例 1:85 歳女性。中咽頭癌治療中。左環指 MP 関節痛が生じ MRI
で屈筋腱腱鞘滑膜炎が疑われた。滑膜より結核菌が同定された。症例 2:52 歳男性。糖尿病および肝
移植後。右中指 PIP 関節部の腫脹が生じ、MRI で伸筋腱の炎症が疑われた。創部の浸出液より結核菌
が同定された。いずれの症例も抗結核薬内服にて治癒した。易感染性宿主に生じた治療抵抗性腱鞘炎
では、結核性腱鞘炎も考慮する必要がある。
Room 5
1-5-S7-3
非定型抗酸菌感染による手・前腕腱鞘炎の治療経験
Therapeutic Experience of Tenosynovitis Caused by Nontuberculous Mycobacteria.
大北 弦樹(山梨大学医学部附属病院 整形外科)
佐藤 信隆,斎藤 正憲,長澤 晃樹,波呂 浩孝
2010 年 4 月から 2014 年 3 月までに、臨床症状と所見から非定型抗酸菌による感染症と診断した 9 症例
を対象に、検討を行った。その治療法は症例に応じて異なるが、可能な限り病巣を切除し、十分な抗
結核薬を投与出来た症例は全例治癒した。炎症所見の強くない腱鞘炎を認めた場合、本疾患を念頭に
置き、早期に治療を開始することが重要と考えられた。
96
1-5-S7-4
手の非結核性抗酸菌感染症
Nontuberculous Mycobacterial infections of the hand
植村 一貴(信州大学 医学部 整形外科)
内山 茂晴,林 正徳,小松 雅俊,加藤 博之
手の非結核性抗酸菌感染症が疑われ手術を行った 16 例について検討した.術中検体の抗酸菌培養は 4
例が陽性で,PCR は 1 例のみ陽性であった.術後に化学療法を行わなかった 2 例と化学療法が継続不
能であった 5 例では、1 例を除いて全例が再発した.非結核性抗酸菌は抗酸菌培養や PCR での検出率
が低いため,感染が疑われる場合には抗酸菌培養や PCR の結果にかかわらず術後の化学療法を行う
必要がある.
1-5-S7-5
手の非結核性抗酸菌症に対するリファンピシン、エタンブトール、クラリ
スロマイシンを用いた 3 剤併用療法の治療成績と問題点
Combined administration of rifampicin, ethanbutol, and clarithromycin for the
treatment of nontuberculous mycobacterial infection in the hand
加地 良雄(香川大学 医学部 整形外科)
中村 修,山口 幸之助,山本 哲司
手の非結核性抗酸菌症(NTM)の 10 例に対し病巣切除とリファンピシン(RFP)、エタンブトール
(EB)、クラリスロマイシン(CAM)を用いた 3 剤療法を行った。4 例では副作用を認めず治療を完結
できたが、残る 6 例で副作用を認めた。このうち 2 例では減感作療法により治療を再開でき、合計 6
例で 3 剤療法を完結できた。残りの 4 例では 3 剤療法を断念した。再発は 3 剤療法を完結できた 6 例中
1 例と、完結できなかった 4 例中 1 例に認めた。
1-5-S7-6
成田 裕一郎(中通総合病院整形外科)
開放性の小児末節骨骨端線損傷に伴った骨髄炎の 7 例を経験した.対象は男 6,女 1 で,受傷時年齢は
平均 12.3 歳,罹患指は示指 3,中指 2,環指 2 で,6 例で受傷時に爪甲基部からの出血があった.全例,
他の医療機関からの紹介で,受傷から前医初診までの期間は平均 6.3 日,前医初診から当科受診まで
の期間は平均 6 日であった.全例で菌が同定され,病巣掻爬と抗菌剤の経静脈投与を行い,感染は治
癒し骨癒合が得られた.
1-5-S7-7
有茎指動脈脂肪弁を用いた手指の慢性骨髄炎の治療
Pedicled Adipose Tissue based on the Digital Artery for Treatment of Chronic Digital
Osteomyelitis
岡田 充弘(大阪市立大学医学研究科 整形外科学教室)
上村 卓也,横井 卓哉,新谷 康介,中村 博亮
指動脈を血管茎とした血管柄付き脂肪弁を用い、手指の慢性骨髄炎を治療を行った。術後平均経過観
察期間は 42ヶ月で、現在まで慢性骨髄炎の再発は認めない。また、有茎脂肪弁を採取することによる
指節関節の可動域制限は認めず、手指の知覚障害も認めなかった。本法は、基節骨から末節骨まで移
植可能であり、手指に発生した慢性骨髄炎の治療法として安全かつ有効であると考える。
97
Room 5
小児手指末節骨骨端線損傷に伴った化膿性骨髄炎の治療経験
Pyogenic Osteomyelitis following from Epiphysial Fracture of Distal Phalanx in
Children
17:55~18:49
一般演題 15:関節リウマチ
座長:西田 圭一郎(岡山大学整形外科)
1-5-6
AVANTA シリコン MCP Preflex インプラントの有用性の検討
Usefulness of AVANTA Silicone MCP Preflex Implants in Metacarpophalangeal Joint
Arthroplasty for Rheumatoid Arthritis
兒玉 祥(広島県立障害者リハビリテーションセンター 整形外科)
水関 隆也
関節リウマチに対してシリコン MCP 関節置換術を行った 8 例 11 手について検討した.AVANTA
Silicone MCP を使用し,このうち 5 手では全指で伸展 0°の Standard type を使用し,6 手にて小指の
みに 30°Preflex type を使用した.尺側偏位は術前 51.5°
,調査時 7.3°,屈曲 / 伸展可動域は術前 -47.8°/
80.8°,調査時 -20.6°/62.5°であった.小指にて 2 種類のインプラントを比較すると Preflex type にて
有意に大きい術後屈曲可動域を獲得していた.
1-5-7
リウマチ指尺側偏位矯正術における第 4.5CM 関節固定の有用性
Ulnar Side Carpometacarpal Arthrodesis in Rheumatoid Arithritis Patients with Ulnar
Drift Deformities.
中野 賢二(鹿児島赤十字病院)
有島 善也,南川 義隆
リウマチ指尺側偏位の発生原因は様々であるが、第 4.5 中手骨の病的沈下を伴う症例に第 4.5CM 関節
固定を併用することにより手術成績の改善が期待される。本法を行った初回手術 10 例 12 手について
検討した。尺側偏位角(中指)は術前 23 度から術後 7 度に改善し、握力、DASH score も改善した。合
併症は尺骨神経背側皮枝支配領域の一過性知覚麻痺を 2 手に認めた。
Room 5
1-5-8
リウマチ手に対する中手骨短縮術の工夫
Modified shortening osteotomy for treating metacarpophalangeal joint deformity in
patients with rheumatoid arthritis
越智 健介(慶應義塾大学 整形外科)
佐久間 悠,岩本 卓士,佐藤 和毅,桃原 茂樹
MP 関節が比較的軽度な関節リウマチ患者の尺側偏位とスワンネック変形の 3 例 6 指に、中手骨骨幹
部短縮術を行った。中手骨骨幹部を短縮し、尺側の手内筋腱切除と伸筋腱中央化も行った。術後平均
23 か月の現在、全例で骨癒合が得られ術前の主訴は改善した。再発時の人工関節置換術に際しても骨
接合材や骨硬化部への対処が不要な本法は、関節破壊が軽度の症例に対する中手骨短縮術として推奨
してよい方法と思われた。
98
1-5-9
関節リウマチによる遠位橈尺関節病変に対する matched ulna resection
Matched Ulna Resection for Arthrosis of Distal Radioulnar Joint in Rheumatoid
Arthritis
細見 僚(大阪府済生会中津病院 整形外科)
安田 匡孝,安藤 佳幸,安福 友紀子,大橋 弘嗣
我々は関節リウマチによる遠位橈尺関節病変に対する治療法として matched ulna resection を行って
おり,治療成績から本法の適応について検討した.術後全例で疼痛の改善を認め,可動域は平均回内
71°
(術前 69°),回外 90°
(術前 73°)であった.尺骨末端の不安定性は認めなかった.経過観察中に手
根骨の尺側偏位の進行を認めなかった.本法は,手技が簡便で,術後尺骨断端部の問題もなく,安定
型の症例にはよい適応である.
1-5-10
関節リウマチ手指伸筋腱断裂症例における発症前経時的手関節 X 線評価
Preoperative radiological evaluation of the wrist joint in rheumatoid arthritis patients
with extensor tendon rupture
田中 啓之(大阪大学 医学部 整形外科)
岡田 潔,岡 久仁洋,村瀬 剛,吉川 秀樹
関節リウマチ手指伸筋腱断裂発症に関与する要因を探索する目的で、経時的に発症前の X 線評価を行
った。Carpal height ratio の低下、ulnar translation の増加、radio-carpal rotation の増加、ulnar head
translation の増加を徐々に認めた。特に carpal height ratio の低下を発症前 2 年より著明に認めてい
た。経時的な手関節の X 線価を行うことで手指伸筋腱断裂発症を予測できる可能性がある。
1-5-11
当院における関節リウマチ患者に対する手外科手術の変遷
Hand Surgery of Rheumatoid Arthritis : Fifteen years of change in Tsukuba University
Hospital
筑波大学整形外科における関節リウマチ患者に対する手外科手術の傾向を診療記録から後ろ向きに調
査した。対象は 1999-2013 年の期間に手術を受けた 91 例 128 手術で、男性 11 例、女性 80 例、平均年
齢 60 歳、平均罹病期間 18.2 年であった。当院では手術件数は増加傾向にあり、罹病期間が長く関節
破壊の進行に手術が行われている傾向にあった。今後は生物学的製剤の普及に伴い手術件数は減少に
転じると考えられる。
99
Room 5
井汲 彰(筑波大学 医学医療系 整形外科)
原 友紀,村井 伸司,西浦 康正,山崎 正志
第 6 会場(Room 6)
8:40~9:43
一般演題 16:腕神経叢
座長:田尻 康人(東京都立広尾病院整形外科)
1-6-1
腕神経叢損傷における手指刺激での感覚神経活動電位測定の臨床意義
Sensory Nerve Action Potential in Brachial Plexus Injury
原 由紀則(東京都立広尾病院 整形外科・末梢神経外科)
星川 慎弥,飯島 準一,北 優介,田尻 康人
腕神経叢損傷(BPI)21 例における指刺激感覚神経活動電位(SNAP)と神経根損傷状態との関係を検討
した.母指−橈骨神経− C6 根,中指−正中神経− C7 根,小指−尺骨神経− C8 根の対応として,末
梢神経 SNAP 振幅と術中電気診断した神経根損傷状態との関係を検討した.SNAP 振幅が 3μV 以下の
場合には,神経根は不全損傷や節後損傷の可能性があるため,積極的に展開し損傷状態を確認するこ
とが望ましい.
1-6-2
肩甲上神経修復後の肩外転角度測定の不信頼性と対応
Unreliability of Conventional Measurement of Shoulder Abduction following
Suprascapular Nerve Repair
下江 隆司(小郡第一総合病院 整形外科)
土井 一輝,服部 泰典,坂本 相哲
腕神経叢損傷での肩甲上神経修復後の成績評価は全肩外転角の測定のみで、肩関節構成関節である肩
甲上腕関節(GH)、肩甲胸郭関節(ST)、胸鎖・肩鎖関節(鎖骨角)を無視しており、その結果は信頼性
に乏しい。肩動的 XP 前後像を用いて肩甲上神経修復例で 内外転位の GH、ST、鎖骨角を測定した。
全肩外転角は GH の改善角度と必ずしも一致していなかった。 神経修復術後の肩機能成績の判定には
GH、ST 個々の関節可動域の分析が不可欠である。
1-6-3
Room 6
肩関節脱臼に合併した腕神経叢麻痺、特に遠位筋麻痺の臨床像
Paralysis of Infraclavicular Brachial Plexus, especially Distal Terminal Branches,
associated with Shoulder Dislocation.
山本 真一(横浜労災病院 手・末梢神経外科)
佐藤 昌樹,八木 敏雄,大庭 紗希,三上 容司
肩関節脱臼には腋窩神経を含む神経麻痺が合併することが知られているが、前腕以遠に関する報告は
少ない。肩関節脱臼に合併した腕神経叢麻痺で、受傷後 6ヵ月以上経過した 8 例の遠位筋麻痺の臨床
像を検討した。通常の高エネルギー外傷に合併する腕神経叢損傷鎖骨下型とは異なる病態が考えられ
た。整復まで 3-4 時間以上経過すると、尺骨神経の過誤神経支配に伴う巧緻障害が残存する例もあり、
可及的速やかな整復が重要である。
100
1-6-4
腕神経叢損傷に対する肘屈曲機能再建術の治療成績
Treatment Outcome of Reconstruction of Elbow Flexion for Brachial Plexus Injury
川本 祐也(名古屋大学 医学部附属病院 手の外科)
岩月 克之,山本 美知郎,栗本 秀,平田 仁
外傷性腕神経叢損傷に対し肋間神経移行術、Oberlin 法にて肘屈曲機能再建を行った 18 例の治療成績
を検討した。肋間神経移行術 10 例、Oberlin 法 8 例で、最終診察時の平均肘屈曲力(MMT)は肋間神経
移行術 2.9、Oberlin 法 3.8 であった。Oberlin 法は肋間神経移行術より早期に肘屈曲力が回復していた。
最終診察時の平均 Hand20 スコアは肋間神経移行術 69 点、Oberlin 法 46 点であった。上位型は Oberlin
法で対応可能な例が多く良好な成績であった。
1-6-5
頭部外傷を合併した腕神経叢損傷への肋間神経移行術後成績の検討
Results of Intercostal Nerve Transfer for Brachial Plexopathy patients complicated
with traumatic brain injury
星川 慎弥(都立広尾病 整形外科/リハビリ科)
原 由紀則,北 優介,新堀 浩志,田尻 康人
腕神経叢損傷により肋間神経移行をされた上腕二頭筋は機能転換により随意収縮が可能となる。これ
は大脳を含む中枢神経系の可塑的変化によるものと説明される。今回頭部外傷による脳の器質的損傷
が肘屈曲機能獲得に影響を与え得るか検証した。頭部外傷合併例では上腕二頭筋力が M3 になるまで
有意に長期間を要した。頭蓋内の器質的障害により脳の可塑性形成による随意性修得過程が障害さ
れ、回復が遅延した可能性がある
1-6-6
胸腔鏡補助下肋間神経移行術の有用性と限界
Usefulness and Limitations of Thoracoscopic-Assisted Intercostal Nerve Transfer
三上 容司(横浜労災病院 運動器センター)
山本 真一,田尻 康人,川野 健一,有野 祐介
101
Room 6
胸腔鏡補助下肋間神経移行術(TAICNT)を試みた 11 例を検討した。2 例は壁側胸膜の炎症による肋間
神経の視認困難で、1 例は横隔神経麻痺による横隔膜拳上のための胸腔鏡挿入困難で鏡視下手術を断
念した。8 例で TAICNT を行った。8 例中 2 例は、術中に直視下法に移行した。術後の biceps 筋力は、
M4 以上が 5 例、M3 が 1 例、M2 が 2 例であった。TAICNT は、小侵襲で有用な方法であるが、その
限界を理解した上で行う必要がある。
1-6-7
胸郭出口症候群における腕神経叢造影 Dynamic 3DCT を用いた検討―安
静位および上肢下垂位での肋鎖間隙・鎖骨下筋に着目して―
Analysis of Dynamic 3DCT after Brachial Plexography in Thoracic Outlet Syndromecostoclavicular space and subclavicular muscle with a resting and an upper limb hung
downward position斧出 絵麻(清恵会病院 整形外科)
高松 聖仁,香月 憲一,坂中 秀樹
胸郭出口症候群において肋鎖間隙の画像評価は困難である.我々は安静位および上肢下垂位で腕神経
叢造影後 3DCT を 12 患者 14 肢に行い,肋鎖間隙について鎖骨下筋を含めた検討を加えた.その結果,
肋鎖間隙は安静位平均 29.7/ 下垂位 23.4mm(S.D),腕神経叢周囲の造影剤の厚みは 17.7/14.0mm(S.D),
鎖骨下筋の厚みは 6.3/5.4mm(N.S.)であった.これまで腕神経叢圧迫の原因として注目されていなか
った鎖骨下筋も評価可能であった.
9:43~10:28
一般演題 17:尺骨神経ほか
座長:橋詰 博行(笠岡第一病院)
1-6-8
尺骨神経麻痺を生じた前腕両骨骨幹部骨折の 4 例
Ulnar nerve palsy after midshaft forearm fractures. A report of four cases.
沖田 駿治(岡山市立市民病院 整形外科)
福田 祥二
尺骨神経麻痺を伴う前腕両骨骨幹部骨折の報告は非常に少ない。4 例の尺骨神経麻痺を伴う前腕両骨
骨幹部骨折を経験した。症例は 12 歳 -17 歳(平均 14.3 歳)。4 例中 3 例は Gustilo 分類 type1 の開放骨折
であった。全例骨折観血的手術と同時に尺骨神経の確認を行った。4 例中 3 例で術後 16-20 週に神経剥
離を追加した。前腕両骨骨幹部骨折には稀ではあるが尺骨神経損傷を合併することがあるので注意が
必要である。
1-6-9
Room 6
尺骨神経断裂に対する神経縫合の 3 例
Repair of the ulnar nerve laceration injury
池口 良輔(京都大学 整形外科)
太田 壮一,貝澤 幸俊,織田 宏基,松田 秀一
尺骨神経断裂に対する縫合術の成績は、支配筋肉が手内在筋となるため縫合部との距離が長くなり、
一般的には成績不良と言われている。今回我々は尺骨神経鋭的断裂に対し縫合した症例を 3 例経験し
た。全例とも鷲手変形が認められた時期もあったが経過とともに消失し、腱移行などの追加手術は必
要にならず、学業や原職に復帰した。鋭的断裂で年齢が若年者の場合は、早期に端々縫合できれば神
経回復が期待できると考えられた。
102
1-6-10
Guyon 管症候群の臨床像と画像所見
Clinical features and radiological findings of Guyon’s canal syndrome
金谷 耕平(札幌医科大学 整形外科学講座)
射場 浩介,山下 敏彦,和田 卓郎
Guyon 管症候群 9 例 9 手の臨床像を調査し、画像所見の特徴を検討した。原因は、ガングリオンが 3
手で最も多く、腫瘍、fibrous band、異常筋、豆状有鉤靭帯、繰り返し外傷、不明がそれぞれ 1 例で
あった。麻痺は、運動麻痺のみが 6 手、知覚麻痺のみが 1 手、運動および知覚麻痺が 2 手であった。
Gross&Gelberman 分類で Zone 1 の 2 手では、尺骨動脈の著明な背側への蛇行が認められた。
1-6-11
尺骨神経管症候群の電気生理学的診断と治療成績
Electrodiagnosis and Treatment for Ulnar Tunnel Syndrome
信田 進吾(東北労災病院 整形外科)
芦名 善博,園淵 和明
尺骨神経管症候群 26 例の電気生理学的診断と治療成績を検討した。第一背側骨間筋(FDI)の複合筋活
動電位(CMAP)は 25 例中 22 例に振幅低下、16 例に潜時延長を認め、小指外転筋(ADM)の CMAP は
23 例中 21 例が潜時延長と振幅低下を示した。知覚神経活動電位(SNAP)は 10 例中 3 例が潜時延長を示
した。FDI- および ADM-CMAP の両者の分析により確定診断が容易となると考える。
1-6-12
両側に発症した特発性前骨間神経麻痺
Bilateral Spontaneous Anterior Interosseous Nerve Palsy
飯島 準一(東京都立広尾病院)
田尻 康人,星川 慎弥,原 由紀則,林 洸太
両側に発症した特発性前骨間神経麻痺の 5 例 10 肢を調査した.性,年齢,既往歴,臨床経過などには
明らかな特徴はみられなかったが,同じ誘因で再発した症例が 2 例みられた.1 例は分娩 2ヶ月後と 6
ヶ月後に発症し,もう 1 例は人工股関節全置換術後 10 日後と 2 日後に発症した.特発性前骨間神経麻
痺の原因はいまだ不明であるが,神経に直接影響しない外的要因と内的要因の関与が示唆される.
Room 6
103
12:10~13:10
西新宿セミナー 5
座長:高岸 憲二(群馬大学)
共催:久光製薬株式会社
1-6-LS5
アスリートの手関節、手指の外傷と障害
―診断と治療、
競技復帰に向けた手外科医、セラピスト、チームスタッフの連携―
中尾 悦宏(中日新聞社健康保険組合 中日病院)
私たち手外科医が担当するアスリートの手関節や手指の突発的な外傷、パフォーマンス低下をひき起
こす障害について、病態評価や治療法を概説する。競技の特性、選手の競技レベルやポジション、競
技シーズンにおける時期などを把握し治療計画を立てる。広く活躍するトップアスリートの手根骨骨
折、尺側手関節障害や手指骨折、靱帯損傷などの症例を通して、ハンドセラピストやトレーナー、コ
ーチと連携した早期競技復帰やパフォーマンス向上への取り組みを紹介する。
中尾 悦宏(なかお えつひろ)
略歴:
昭和37年
昭和62年
昭和62年
平成 1年
平成 5年
平成 7︲8年
平成14年
平成15年
平成19年
平成23年
Room 6
104
愛知県生まれ
名古屋大学卒業
名古屋掖済会病院研修医
同 整形外科医員
名古屋大学整形外科医員
New York州立大学Syracuse健康科学センター hand fellow
名古屋大学整形外科・手の外科 助手
同 医局長
中日新聞社健康保険組合 中日病院 整形外科部長
同 副院長
13:25-14:19
一般演題 18:腱損傷(基礎ほか)
座長:牧 裕(新潟手の外科研究所)
1-6-13
マウス滑膜内腱の加齢に伴う遺伝子発現の変化
Age-related alteration of gene expression in mice intrasynovial tendon
林 正徳(信州大学 医学部 運動機能学教室)
内山 茂晴,植村 一貴,小松 雅俊,加藤 博之
加齢に伴い発症頻度が増加する狭窄性腱鞘炎の病態を明らかにするため,老化モデルマウスの滑膜内
腱における遺伝子発現解析を行った.Tenomodulin を含む腱関連因子は週齢数の増加に伴い発現が低
下し,軟骨関連因子は老化モデルマウスにおいて発現が増加していた.本研究の結果より,加齢に伴
い潜在的に進行する腱組織から軟骨組織への遺伝子発現レベルでのシフトが腱鞘炎発症の原因の一つ
となっていることが示唆された.
1-6-14
超音波ガイド下手術器具の開発経験
Development experience of ultrasound-guided surgical instruments
仲西 康顕(奈良県立医科大学 整形外科)
面川 庄平,小畠 康宣,清水 隆昌,田中 康仁
我々は弾発指に対する経皮的腱鞘切開術を安全に行う為に、超音波ガイド下手術専用に設計した器具
を開発し、臨床に応用した。開発した「ダブルガイド式腱鞘切開器」では切開器具が腱鞘以外の組織を
損傷しない構造に設計されているのが最大の特徴であり、低ランニングコストでありながら、安全性
を確保している。手術中の腱鞘切開範囲や切開された腱鞘も、超音波を用いて容易に確認することが
可能である。
1-6-15
高血糖が腱細胞に及ぼす影響についての検討
Effect of hyperglycemia on degeneration and inflammation of tenocytes
植田 安洋(神戸大学大学院 医学研究科 整形外科学)
乾 淳幸,美舩 泰,高瀬 史明,国分 毅
105
Room 6
腱障害と糖尿病との関連が報告されているがその機序については明らかではない。本研究では高血糖
がラットアキレス腱細胞に及ぼす影響について検討した。高グルコース濃度の細胞培地を用い、細胞
増殖活性、I 型及び III 型コラーゲン、Nox1,4 の発現、活性酸素種の産生を測定した。高血糖群の方
が細胞増殖活性は低く、I 型コラーゲンが減少していた。III 型コラーゲン及び Nox1 は増加し、活性
酸素種の産生も増加していた。
1-6-16
挫滅症候群モデルにおける筋挫滅と全身性合併症に対する抗フリーラジカ
ル治療の検討
Treatment with anti-free radical agent for ischemic reperfusion injury of skeletal
muscle and general condition in crush syndrome model
横山 弘和(三重大学 整形外科)
辻井 雅也,飯野 隆大,國分 直樹,須藤 啓広
本研究では長時間虚血による筋挫滅と再灌流後の全身性合併症に対する edaravone(Ed)の効果を検討
した.長時間虚血では Ed による局所制御は困難だが,血漿 TNF-α と腎障害に対する結果より,Ed
の全身性酸化ストレスに対する抑制効果が示唆された.骨格筋の早期アポトーシス抑制効果,先行研
究の Ed による短時間虚血での炎症細胞浸潤の抑制効果から,Ed は内因性に加え外因性アポトーシス
も抑制しうると考えられた.
1-6-17
超音波エコーを用いた A1 pulley 高位での正常屈筋腱の形態変化の評価
―ばね指に対するストレッチ効果の原理解明を目指して
Ultrasound evaluation of the altered morphology of flexor tendon at A1 pulley in
normal case
岩倉 菜穂子(東京女子医科大学 整形外科学)
寺山 恭史,高築 義仁,深谷 久徳,加藤 義治
ばね指の保存治療としてストレッチ(徳永法)は経験的に有効だが、その原理は不明である。原理解明
を目的に超音波エコーを用いて A1 pulley 高位での屈筋腱短軸像の形態の変化を評価した。正常例 50
例の両中指を対象として伸展位、PIP 関節屈曲位、MP 関節屈曲位、PIP・MP 関節屈曲位の 4 肢位で
屈筋腱断面横縦比を計測した。屈筋腱断面は、関節を屈曲して力を入れることで横楕円から縦楕円へ
変化する事が判明した。
1-6-18
超音波画像と術中所見から得られたバネ指の病態
Pathogenesis of the trigger finger considered from preoperative ultrasound images and
intraoperative findings
榮崎 彰秀(奈良西部病院 奈良手の外科研究所)
中村 敏夫巳,玉井 進
Room 6
バネ指症状を訴え、超音波エコー評価と、腱鞘切開術を施行した 25 例 28 指を対象とし、エコー画像・
術中所見を確認した。今回の調査で示指〜環指の症例では、腱自体の nodule はなく、腱鞘の肥厚及
び腱鞘の浮腫に伴う A1 プーリーと FDS との間での滑走不良が主な原因であると考えられた。母指で
は、腱の nodule を認める症例もあり、解剖学的にも他指と異なる事からも、母指と他指のバネ指の
病態は異なる可能性が示唆された。
106
14:19~15:22
一般演題 19:指節骨骨折
座長:岩部 昌平(済生会宇都宮病院)
1-6-19
基節骨基部骨折に対する観血的整復術:アプローチと内固定法の工夫
New open reduction methods for the proximal phalangeal base fractures
板寺 英一(成田赤十字病院 整形外科)
我々は基節骨基部骨折に対し,組織を温存しながら強固な内固定を行う方法を模索してきた.今回は
我々が開発してきた手術法について治療成績を含めて報告する.術式 1:trans-web アプローチ,3 例
3 骨折.術式 2:trans-web +側正中アプローチ,3 例 3 骨折.術式 3:経中手骨髄内スクリュー固定,
3 例 5 骨折.これら術式はそれぞれ強固な固定性が得られ,治療成績は良好であった.従来の治療法
に加え,これらも選択肢のひとつになり得る.
1-6-20
指骨骨折専用のロッキングプレートの可能性と問題点
Possibilities and Problems of Locking Plate for Fractures of the Phalanx
今谷 潤也(岡山済生会総合病院 整形外科)
森谷 史朗,前田 和茂,桐田 由季子,近藤 秀則
指骨専用ロッキングプレートを用いて加療した指骨骨折 26 例 26 指を対象とし,その治療成績を調査
した.骨折型は基節骨骨折が 10 指,中手骨骨折が 10 指などであった.全例で骨癒合が得られ,可動
域は %TAM で平均 91% と良好で,腱剥離などの追加手術を要した症例はなかった.ロッキングプレ
ートは適応を選んで適切に使用すれば,その優れた初期固定性により早期リハビリテーションが可能
であり,良好な成績が得られていた.
1-6-21
手指基節骨骨折に対する MP 関節からの髄内性経皮ピンニング
Intramedullary percutaneous pinning from MP joint for proximal phalangeal fractures
寺浦 英俊(東住吉森本病院 整形外科)
川端 確,五谷 寛之,坂中 秀樹,山野 慶樹
107
Room 6
手指基節骨骨幹部横・短斜骨折 22 例 27 指に対して MP 関節よりの髄内性経皮ピンニングを施行した。
全例で変形なく骨癒合を得た。ワイヤー抜去までの期間は平均 5.6 週、TAM は平均 235°、%TAM は
平均 96%、設楽の判定基準で excellent 23 指、good 3 指、poor 1 指であった。頚部・基部を含めた骨
幹部横・短斜骨折に対しては MP 関節よりの髄内性経皮ピンニングで良好な治療成績が得られた
1-6-22
intrafocal pinning による手指骨折の治療
intrafocal pinning for fractures of hand
金 潤壽(太田総合病院 手外科センター)
富田 泰次,根本 高幸,岩崎 幸治
今回、我々は intrafocal pininig を行った手指骨折の臨床成績を調査し、検討を加えたので手術手技と
ともに報告する。対象は手指骨折に対し本法を行った 236 例で、これらの症例に対して臨床成績を調
査した。第 5 中手骨頸部骨折例の術後 total active motion は平均 251°、臨床評価は全ての症例で
exacellent か good で、骨癒合は平均 4 週間で認められた。手指骨折に対する本法は簡便で有用性が高
く、手外科医にとって必須の手術手技である。
1-6-23
指運動を妨げない基節骨基部骨折に対する至適ピン刺入位置の検証
Optimal Insertion for Percutaneous Pinning of Proximal Phalanx Fracture - Dynamic
Analysis of the Interosseous Hood Using Fresh Frozen Cadavers
井汲 彰(筑波大学 医学医療系 整形外科)
田中 利和,和田 卓郎,青木 光広
基節骨基部骨折に対する経皮的鋼線刺入固定術の際に、ピンと基節骨周囲軟部組織の干渉による術後
可動域制限を予防するためのピン至適刺入位置の検証を行なった。
新鮮凍結屍体 7 体 34 指を用い、屈曲位・伸展位・Intrinsic plus 肢位での基節骨周囲軟部組織の基節骨
との位置関係を単純 X 線で評価した。
屈曲位および Intrinsic plus 肢位で骨折部近位背側の関節面近くからの刺入が適していると考えられ
た。
1-6-24
手指骨骨折に対するディスポシリンジを用いた創外固定法の治療経験
External fixation framed by disposable syringe for phalangeal fractures
長谷川 和重(仙塩利府病院 整形外科)
宮坂 芳典
Room 6
3cc のディスポシリンジと 1.0~1.2mmK-wire で作成した創外固定を用いて、基節骨骨折 9 指、中手骨
骨折 4 指、9 例 13 指を治療した。創外固定期間は平均 5 週で、全例で矯正損失なく骨癒合が得られた。
可動域は概ね良好で感染例はなく、ワイヤ刺入部反対側の皮膚刺激症状が 2 指、一過性の指神経障害
が 1 指あった。本法は、開放骨折の初期治療、転位の矯正保持、内固定の補助追加固定に際し、選択
肢の 1 つになりうる。
108
1-6-25
手指 MP 関節側副靱帯の基節骨付着部裂離骨折に対する bone anchor を
用いた骨接合術
Treatment of metacarpophalangeal joint collateral ligament avulsion fracture in fingers
using bone anchor
中西 巧也(三重大学 大学院 医学系研究科 整形外科学)
辻井 雅也,國分 直樹,大角 秀彦,須藤 啓広
手指 MP 関節側副靱帯の裂離骨折は、転位を認める症例では観血的治療を要する。今回、当科にて本
疾患 7 例に対して行った手術方法を報告する。掌側アプローチにて整復後、bone anchor を基節骨掌
側へ挿入し、骨片の靱帯付着部へ縫合糸をかけ、ピンを刺入した後、結紮操作により圧着した。骨癒
合不全を 2 例に認めたが、関節可動域は健側と同等で生活上の支障はなかった。本法は狭い術野でも
比較的容易であり、有用な方法と思われた。
15:40~16:34
一般演題 20:手関節
座長:小野 浩史(国保中央病院)
1-6-26
橈骨の橈屈変形が遠位橈尺関節の支持性に与える影響
Effect of radial angulation of distal radius fracture on distal radioulnar joint stability:
a biomechanical study
別所 祐貴(慶應義塾大学 整形外科)
中村 俊康,斎藤 毅,名倉 武雄,戸山 芳昭
橈骨の橈屈変形が DRUJ の支持性に与える影響を生体工学的に検討した.新鮮凍結死体 4 体 4 上肢を
用いた.Radial inclination を正常,10 度尺屈,10 度,20 度橈屈と変化させた際の DRUJ の stiffness の
変化を,正常,TFCC 部分切離,全切離で評価した.橈屈に伴い DRUJ 支持性は著明に増加した.そ
の傾向は TFCC を尺骨小窩部で切離した後も保たれており,ECU 腱鞘床の緊張が関与したと考えら
れた.
1-6-27
亀田 正裕(獨協医科大学 整形外科学)
長田 伝重,高井 盛光,青木 倫代,種市 洋
Sawbone を用いた AO C3.2 型骨折モデルにおける骨折部の固定性を、Hearty plate Ⓡ単独群、格子状
固定併用群、DVR Ⓡ群、VA-TCP Ⓡ群、Variax Ⓡ群の 5 群について、250N の軸圧負荷 1、1000、2000、
3000 回目の剛性と破断力を測定した。剛性では Hearty plate Ⓡ単独群および格子状固定併用群に対し
Variax Ⓡ群で有意に高値であり、破断力は Hearty plate Ⓡ単独群および格子状固定群に対し VA-TCP Ⓡ
群および Variax Ⓡ群が有意に高値であった。
109
Room 6
AO C3 型橈骨遠位端骨折に対する各種掌側ロッキングプレートの固定性:
人工骨による生体力学研究
Comparison of Different Volar Locking Plates for AO type C3 Distal Radius Fractures:
A Biomechanical Study
1-6-28
橈骨遠位端骨折に合併する scapholunate instability の術前診断―種々の
舟状骨月状骨間距離計測の診断精度―
The Diagnostic Accuracy of Radiographic Scapholunate Distance Measurements for
Scapholunate Instability Associated with Distal Radius Fracture.
鈴木 大介(吉本整形外科外科病院 整形外科)
面川 庄平,小野 浩史,片山 健,田中 康仁
橈骨遠位端骨折に合併する scapholunate instability を種々の単純 X 線での舟状骨月状骨間距離計測を
用いて診断可能か評価した。SL 間距離計測は関節近位端、中央、遠位端で行った。結果、SL 関節中
央での計測値が Geissler 分類 grade4 と grade2 以下で有意差を認めたが ROC 曲線解析では AUC0.744
であった。他の計測値からの診断は困難である。
1-6-29
舟状大菱形小菱形骨(STT)関節症に対する鏡視下手術による治療経験
The teatment of scapho-trapezio-trapezoid joint osteoarthritis by the arthroscopic
surgery
新井 猛(聖マリアンナ医科大学 整形外科学講座)
内藤 利仁,田中 雅尋,清水 弘之,別府 諸兄
保存療法抵抗性の STT 関節症 2 例に関節鏡視下手術を施行した。症例は 63 歳と 38 歳の女性例 2 例で
あった。2 例とも 1 年以上の保存療法に抵抗性のため,鏡視下手術を施行し症状は軽快した。STT 関
節症はピンチ動作の過度な負荷により発症する。治療では一般的に保存療法が有効であるが,保存療
法抵抗例では関節固定術が選択されている。今回の経験から関節裂隙が維持されていれば鏡視下手術
で良好な結果を得ることが可能である。
1-6-30
手関節背側ガングリオンに対する鏡視下手術
Arthroscopic Surgery of Dorsal Wrist Ganglion
根本 高幸(太田総合病院 手外科センター)
富田 泰次,金 潤壽,岩崎 幸治,平出 周
Room 6
手関節背側ガングリオンに対して鏡視下手術を行った 20 例を対象に、鏡視所見、再発率、合併症に
ついて調査した。術前の疼痛は全例消失した。鏡視所見は関節内に stalk の突出を 5 例(25%)にみとめ
た。術後の再発は術後 2 年で 1 例(5%)にみとめた。合併症は術後 2 年で環指伸筋腱皮下断裂を 1 例に
みとめた。鏡視下ガングリオン切除術は良好な成績が得られていたが、伸筋腱断裂の合併症には十分
な注意が必要である。
110
1-6-31
手関節痛を生じた occult ganglion の超音波診断
Ultrasonography for Occult Ganglion with the Dorsal Wrist Pain
三澤 寛子(聖マリアンナ医科大学 整形外科学講座)
清水 弘之,中島 浩志,新井 猛,別府 諸兄
手関節痛を主訴に来院し超音波検査で ganglion と診断された 43 例の臨床像と超音波画像について検
討した.手関節背側の occult ganglion は腫瘤を触知せず疼痛を主訴に来院することがあり診断に難渋
することがあるが,超音波検査は有用である.自験例では最小 3 × 3 × 2mm まで診断することができ
た.また盲目的な穿刺は後骨間神経を損傷する危険があり,確実に内容物を吸引するためにも超音波
ガイド下穿刺は有用な方法である.
16:34~17:37
一般演題 21:超音波検査
座長:中道 健一(虎ノ門病院リハビリテーション科)
1-6-32
上肢手術における腋窩神経ブロックの成績―放散痛法と超音波ガイド下法
との比較検討―
Comparison with conventional axillary plexus block and ultrasound guided axillary
plexus block for upper extremity surgery
坪根 徹(周東総合病院 整形外科)
腋窩神経ブロックをより確実に行うために超音波ガイド下法を導入し,放散痛法と比較検討した.対
象は腋窩神経ブロック施行 139 例で,放散痛法を 75 例に,超音波ガイド下法を 64 例に施行した.局
所静脈麻酔あるいは指神経ブロックを追加した症例は各群 7 例(9%),5 例(8%)で,駆血痛は 3 例(4%),
5 例(8%)に認め,群間に有意差は認めなかった.エコーを導入してから麻酔が安定した印象を受けて
いたが,従来法と大きな差を認めなかった.
1-6-33
学童期小児に対する超音波ガイド下鎖骨上窩腕神経叢ブロック
(Kulenkampff 変法)
Ultrasound guided modified Kulenkampff anesthesia for school aged children
学童期症例(7 歳〜12 歳)の 17 名(男児 14 名、女児 3 名)の上肢手術症例 25 例に対するエコーガイド下
鎖骨下腕神経叢ブロック(クーレンカンプ変法)の成績を報告する。術前に同意した総ての症例で手術
を完遂でき、有害事象は発生しなかった。本法は刺入点から腕神経叢までの距離が短いことから 27G
針での刺入が可能であり、学童期症例にもよい適応があると考えられた。
111
Room 6
梶原 了治(松山赤十字病院整形外科)
1-6-34
腕神経叢ブロックにおけるエコーガイド下肋間上腕神経ブロックの併用に
ついて~ターニケットペインへの有用性~
Brachial plexus block with ultrasound-guided intercostobrachial nerve block for
tourniquet pain
山中 浩気(土谷総合病院 整形外科)
木森 研治,角西 寛,藤田 浩二,生田 義和
鎖骨上部腕神経叢ブロック単独では上腕内側の麻酔が不完全となり、ターニケットペインを確実に予
防することはできない。エコーガイド下に、第 2・第 3 肋間レベルで前鋸筋と小胸筋間に局所麻酔薬
を投与する肋間上腕神経ブロックを腕神経叢ブロックに併用したところ、20 例中 17 例で上腕内側を
含む上肢の完全な麻酔が得られた。腕神経叢ブロック単独群と比較し、本法はターニケットペインの
予防に有用であることが示唆された。
1-6-35
上肢手術に対する超音波ガイド下鎖骨上腕神経叢ブロックの使用薬剤によ
る成績の比較と問題点
A comparison between 3 conbinations of volume and concentration of lidocaine and
Ropivacaine for Ultrasound-guided supraclavicular brachial plexus block.
瀬戸 信一朗(山口県立総合医療センター 手外科センター)
重冨 充則,永尾 祐治,赤川 誠,関 寿大
超音波ガイド下鎖骨上神経ブロックを施行した 47 例を 1% リドカイン 20cc、1% リドカイン 10cc+0.75
%ロピバカイン 10cc、0.75% ロピバカイン 30cc の 3 群に分け麻酔から執刀までの時間、執刀時の冷覚
脱失部位、局所麻酔薬追加の有無、副作用、術後の疼痛の推移と筋力回復時間、満足度、不満な点な
どを比較検討した。リドカイン群は成績不良であった。問題点として尺骨神経領域の効き目が悪く、
改善するための工夫について考察した。
1-6-36
超音波ガイド下鎖骨上法腕神経叢ブロックを用いた手術経験―適応と限界
について―
Elbow and Hand Surgery Under Ultrasound-Guided Supraclavicular Brachial Plexus
Block
中山 政憲(独立行政法人地域医療機能推進機構 埼玉メディカルセンター 整形外科)
菊池 駿介,岩本 卓士,佐藤 和毅
Room 6
超音波ガイド下鎖骨上法腕神経叢ブロック(以下 SCB)のもとで行った手肘の手術 107 例についてまと
めた。術中局所麻酔の追加を要したのは肘疾患や尺側の処置を含む例が多かった。止血帯部痛は 60
分以内であれば訴えない例がほとんどだが、それを超える時間の手術では問題となる例もあった。
SCB は手関節より遠位の手術でかつ比較的短時間の手術には有効だが、肘関節や尺側の操作を伴う例
や長時間の手術では疼痛が問題となりやすい。
112
1-6-37
上肢の腱鞘炎および腱付着部症に対する超音波ガイド下局所注射療法の経験
Ultrasound Guided Local Injection for the Treatment of Tenosynovitis and
Enthesopathy of the Upper Limb
田中 優砂光(自衛隊熊本病院 整形外科)
10ヵ月間当科外来で行った上肢(肩関節およびその周囲組織を除く)の腱鞘炎および腱付着部症に対す
る超音波ガイド下局所注射療法の成績を,同一患者に対する注射回数を元に検討した.腱鞘炎に対す
る注射 43 件のうち注射回数 1 回が 41 件であり,腱付着部症に対する注射 29 件のうち注射回数 1 回が
26 件であった.旧型の装置であっても,超音波ガイド下注射療法はより確実に患部に薬剤を注入する
ことができるので,有効性が高い.
1-6-38
超音波ドップラー法が診断に有用であった血管性胸郭出口症候群の一例
Case report of a patient with vascular thoracic outlet syndrome diagnosed by Doppler
ultrasonography.
横田 淳司(藍野病院 整形外科)
渡辺 千聡
胸郭出口症候群(TOS)の多くは神経性であると報告されている。今回、超音波ドップラー法が診断・
術後評価に有用であった 20 歳女性、血管性 TOS 症例を 経験したので報告する。血管性 TOS の診断・
術後評価には肢位を変えリアルタイムに血行を評価できる超音波ドップラー法が有用であった。経腋
窩第一肋骨部分切除術は本病態に対して有効であったが、腹腔鏡などを併用し、視野を確保し行うこ
とが望ましいと思われた。
17:37~18:40
一般演題 22:Dupuytren 拘縮
座長:柿木 良介(近畿大学医学部整形外科)
1-6-39
当科における Dupuytren 拘縮の治療成績
Treatment outcome of Dupuytren contracture
当院の Dupuytren 拘縮に対する腱膜切除の術後成績と術中の工夫について報告する。対象は 18 例 22
手 で、 重 症 度 は Meyerding 分 類 で grade 0 が 2 手、1 が 8 手、2 が 3 手、3 が 8 手、4 が 1 手 で あ っ た。
Zig-Zag 皮切を基本とし、cord の切離によって指が伸展するたび皮膚の緊張を確認し皮切をデザイン
することで、皮膚の緊張を防止し早期の可動域訓練が可能であった。皮膚形成処置を必要としたのは
1 手のみで、拘縮改善率も良好な成績を得た。
113
Room 6
平原 康文(防衛医科大学校 整形外科)
有野 浩司,尼子 雅敏,大野 晋太郎,根本 孝一
1-6-40
当科における Dupuytren 拘縮の術後成績
Clinical Results of Surgical Treatment for Dupuytren’s contracture
渡辺 直也(帯広厚生病院)
木村 長三,岩崎 倫政
当科で Dupuytren 拘縮に対し手術を行った 30 例 35 手 53 指の術後成績について調査した。MP 関節の
伸展角度は術前平均−32.9°から最終観察時−1.1°に改善したが、PIP 関節の伸展角度は術前平均
−24.5°から最終観察時−13.0°であった。合併症は、再発し再手術となった症例 1 手、創離解 5 手、皮
膚壊死 3 手、創感染 1 手、CRPS3 手、一過性の指神経障害 6 手、神経損傷を 1 手に認めた。
1-6-41
当院における Dupuytren 拘縮の治療成績
The surgical outcome of Dupuytren’s contracture
松本 泰一(倉敷中央病院 整形外科)
高山 和政,津村 卓哉,林 孝典,松下 睦
Dupuytren 拘縮に対して multiple Z plasty,open palm,背側中手動脈穿通枝皮弁や digito-lateral
flap など皮弁を皮膚切開部に挿入する方法,また partial fasciectomy などの手術を我々は行ってきた.
今回その治療成績について検討したので報告する
1-6-42
デュプイトラン拘縮に対する needle aponeurotomy の検討
Result of needle aponeurotomy forDupuytren’s contracture
山崎 厚郎(千葉大学大学院 整形外科)
國吉 一樹,松浦 佑介,小林 倫子,安部 玲
デュプイトラン拘縮に対して海外では needle aponeurotomy は主要な治療法の一つであるが日本での
報告は少ない。我々は H24 年 1 月より経皮腱膜切開術を行ってきているので短期ではあるがその成績
を報告する。
1-6-43
指 PIP 関節に 60°以上の屈曲拘縮を伴う Dupuytren 拘縮の治療
Treatment for Dupuytren’s contructure with severe PIP joint contructure
Room 6
佐々木 勲(手稲渓仁会病院 整形外科)
蔡 栄浩,西田 欽也,遠藤 健,前田 明子
指 PIP 関節に 60°以上の屈曲拘縮を伴う Dupuytren 拘縮の治療成績を調査した。Grayson 靭帯を含め
指全体の spiral cord や lateral cord を徹底的に切除することにより、比較的良好な成績が得られた。
罹病期間の長さが指 PIP 関節伸展不良の要因の一つと思われた。
114
1-6-44
Dupuytren 拘縮におけるインテグリンの関与
The effect of integrins in Dupuytren’s contracture
松井 雄一郎(北海道大学 整形外科)
今 重之,船越 忠直,松田 正,岩崎 倫政
Dupuytren 拘縮の発生機序には、TGF-β1 の関与が指摘されているが詳細はいまだ不明である。TGF-
β1 は筋線維芽細胞表面でインテグリンにより活性化されることが指摘されている。そこで拘縮患者
から採取した腱膜の組織学的検討やインテグリンの発現量を評価し、その病態を解析した。本研究結
果より、Dupuytren 拘縮の病態には特にインテグリン β6 が関与し、その発現上昇により TGF-β1 が
活性化され線維化を促進する可能性が示唆された。
1-6-45
高度 PIP 関節屈曲拘縮を伴った Dupuytren 拘縮に対して皮弁を併用した
治療成績―術後 1 年以上の経過例の検討―
Clinical results for Dupuytren contracture of sever flexion contracture of the PIP joint
with local flap
勝村 哲(平塚共済病院 整形外科 手外科センター)
坂野 裕昭,岡崎 敦,竹元 暁,齋藤 知行
皮弁を併用した Dupuytren 拘縮手術で高度関節拘縮例に対して、術後 1 年以上経過観察が可能であっ
た症例の術後成績について検討した。8 例 8 手を対象とし、年齢は 69.3 歳、術前、調査時の PIP、MP
関節の拘縮角度、屈曲拘縮改善率、最終調査時の DASH スコアについて検討した。関節拘縮角度は
PIP 関節が術前平均 70.0°が最終調査時 23.8°に、MP が 44.4°が 3.8°に改善し、屈曲拘縮改善率は、平
均 75.0%、DASH スコアは 9.17 であった。
Room 6
115
第 7 会場(Room 7)
8:40~9:34
一般演題 23:マイクロ
座長:五谷 寛之(大阪外傷マイクロセンター/静岡理工大学)
1-7-1
切断指における Cold Intolerance に対する検討
The Study of Cold Intolerance for Finger Amputations
松井 裕帝(札幌徳洲会病院整形外科外傷センター)
辻 英樹,倉田 佳明,坂 なつみ,越後 歩
今回我々は当院で加療した切断指で 6 か月以上経過観察可能であった 40 例 51 指について CISS と
DASH スコア,Hand20 との相関の有無と,CI あり / なし 2 群間での受傷形態,生着の有無,単指と
複数指切断,縫合神経本数,吻合動脈本数,吻合静脈本数,喫煙の有無,受傷時期との関連を検討し
た.CISS と DASH,Hand20 との間に優位な相関を認めた.CI あり群となし群における各因子の間に
は有意差は認めなかった.
1-7-2
Untied Stay Suture 法による小児 Zone1・2 指尖部切断再接着術
Replantation of Zone1.2 Finger Tip Amputation in children using Untied Stay Suture
Method
長谷川 健二郎(川崎医科大学 整形外科)
高田 逸朗,長谷川 徹,難波 祐三郎,木股 敬裕
Untied Stay Suture 法を用いて再接着術を施行した小児 Zone1・2 指尖部切断 6 症例について報告する。
1st・2nd stay suture には両端針付きナイロン糸を用い、その他は基本的に片針になったものを使用
した。縫合手順は Untied Stay Suture 法に準じた。全症例生着した。5 症例は動脈・静脈を吻合でき
たが、Zone1 の 1 症例は動脈のみ吻合可能であった。2 症例で関節可動域制限を残し、2 症例で爪の変
形を認めた。
1-7-3
静脈再建できなかった指末節部切断再接合術後の瀉血法の比較検討
Comparative Study of Phlebotomy after Fingertip Replantation without Venous
Anastomosis
河野 李枝(新東京病院 形成外科)
柳林 聡,吉田 龍一,山本 直人
Room 7
静脈再建できなかった指末節部切断再接合術後の瀉血法として Medical leech の使用、fish mouth
incision 法などの報告がある。われわれは最近の経験から、その効果を比較検討した。静脈再建でき
なかった指末節部完全切断 20 例中、Medical leech による瀉血は 9 例中 9 例生着、fish mouth incision
法による瀉血は 6 例中 3 例生着、瀉血未実施例は 5 例中 1 例生着した。Medical leech 使用例は、静脈
吻合実施例と遜色ない生着率であった。
116
1-7-4
切断指再接着術後の感覚評価
Sensory evaluation after amputated digit replantation
鈴木 歩実(聖隷浜松病院 手外科・マイクロサージャリーセンター)
神田 俊浩,大井 宏之,向田 雅司
当院で再接着術を施行し、経過を 6 か月間以上観察し得た手指完全切断患者 50 例 65 指を対象として、
切断指生着後の感覚回復について評価を行った。切断レベルが遠位になるにつれ SW の健患側差は小
さくなり、static 2PD も判別できる症例の割合も増え、paresthesia の VAS 値も低くなる傾向がみら
れた。Zone1 群の全指および zone2 群のうち神経を 2 本縫合した 4 指全てで static 2PD が判別可能であ
った。
1-7-5
手部複合損傷の治療経験
treatment of mangled hand
土田 芳彦(湘南鎌倉総合病院 外傷整形外科)
治療が困難な手部複合損傷の 27 症例に対して、主としてマイクロサージャリーを用いた一期的再建
術を施行した。血管損傷は 10 例 37%に認められ、皮弁形成術は 9 例 33%に施行されていた。最終経
過観察時の上肢機能は Chen の評価基準 1 が 1 例、2 が 8 例、3 が 15 例、4 が 3 例であった。初期の的確
な組織損傷評価に基づいた論理的治療計画が肝要である
1-7-6
Saturated Salt Solution 法固定 Cadaver による Surgical Training の経験
The Experience of Surgical Training using the Cadaver embalmed by Saturated Salt
Solution Method
白井 隆之(佐久市立国保浅間総合病院 形成外科)
林 省吾,伊藤 正裕
国内で cadaver を用いて surgical training する機会は非常に少ない。今回東京医科大学において
saturated salt solution 法(以下 SSS 法)固定した cadaver を使用し、逆行性指動脈皮弁 1 例・前外側大
腿皮弁 2 例・側頭筋膜弁 1 例を挙上した。SSS 法固定は Thiel 法と比べ、軟部組織の萎縮が少なく、血
管剥離の感覚が生体に近かった。SSS 法固定は、皮弁挙上手技の習得に有用と考えられた。今後
cadaver に対する法と環境の整備が求められる。
Room 7
117
9:34~10:37
一般演題 24:OA 手関節
座長:代田 雅彦(さいたま赤十字病院)
1-7-7
遠位での尺骨短縮骨切り術後の遠位橈尺関節症に関する検討
Degenerative Change of Distal Radio-ulnar Joint Following Distal Ulnar Shortening
Osteotomy
河野 正明(興生総合病院 整形外科)
森実 圭,千葉 恭平,高須 厚,芝 成二郎
遠位で尺骨短縮骨切り術を施行した 84 手の遠位橈尺関節(DRUJ)の変性変化につき検討した。11 手に
骨棘形成を認め、骨棘を認めた手の短縮量は平均 4.8mm、認めない手は平均 3.8mm で有意差を認めた。
関節症の発生率は、報告されている近位での骨切りと比較して少なく、distal oblique bundle の存在
が関与している可能性が示唆された。また遠位での骨切りでも短縮量が多いと発生率が上がってお
り、DRUJ の安定性が上がることも確認された。
1-7-8
modified Sauve︲Kapandji 法における骨切り部近位断端制動の必要性
Clinical Symptoms in Modified Sauve-Kapandji Procedure without Stabilization of
the Proximal Ulnar Stump
池田 純(昭和大学横浜市北部病院整形外科)
川崎 恵吉,久保 和俊,富田 一誠,稲垣 克記
進行期遠位橈尺関節障害に対する治療の選択肢として手関節形成手術は有用であるが、骨切りした尺
骨の近位断端が愁訴につながるという理由から断端を腱などで制動すべきとする報告を散見する。し
かし、我々の結果からは特に制動をしなくても経時的に骨切り部断端の疼痛は除痛され、不安定性も
制動される傾向が確認され、術中の骨切り部の制動は不要であると思われた。
1-7-9
尺骨断端切除後の尺骨断端不安定症に対する Breen 法の治療成績
Stabilization of the Ulnar Stamp Using Breen Method after resection of the Ulnar
Stamp
松井 雄一郎(北海道大学 整形外科)
船越 忠直,本宮 真,瓜田 淳,岩崎 倫政
Darrach 法、Sauvé-Kapandji 法さらには橈骨月状骨間固定術の術後の尺骨断端不安定症に対する
Breen 法の治療成績及び画像所見により本術式の有効性を調査した。臨床成績は 5 手中全例で良好で
あった。単純 X 線上、橈骨・尺骨間の距離(Radioulnar distance)に術前後で有意な変化はなかった。
尺骨断端が尺側手根伸筋腱及び尺側手根屈筋腱の両腱により制動化され安定化したと考えられた。
Room 7
118
1-7-10
STT 関節症に対する橈骨からの血管柄付き骨移植を用いた部分手関節固定
術の手術成績
Scaphotrapeziotrapezoid (STT) fusion with vascularized bone grafting from the radius
for STT arthritis
根本 哲也(昭和大学 医学部 整形外科学教室)
川崎 恵吉,稲垣 克記,久保 和俊,池田 純
STT 関節固定術をはじめとする部分手関節固定術はキーンベック病や STT 関節症に対して行われる
治療法であるが、合併症の一つに、遊離骨移植を用いた固定術では偽関節の危険性が 0〜27%と報告
されている。今回我々は STT 関節症の 5 例に対し、STT 関節固定術を血管柄付き骨移植を用いて行い、
全例で骨癒合が得られ、全例で ADL 上も良好な成績が得られたため、ここに報告する。
1-7-11
進行期 STT 関節症の治療経験
Treatment for Advanced Scaphotrapezial Trapezoidal Arthrosis
浅野 研一(東海病院 整形外科)
牧野 仁美,近藤 高弘,鈴木 正孝,平田 仁
進行した STT 関節症に対して治療を行った.STT 関節症の臨床経過を調べることと手関節 X 線を評
価し,手根配列の変化について検討した.Crosby 分類 grade3 の STT 関節症では舟状骨の背屈に加え
て月状骨の背屈が生じていた.手術治療は橈尺屈の制限を認めたが,疼痛は改善した.手根配列の変
化として舟状骨の背屈が矯正され月状骨背屈の進行を抑制したことが考えられた.
1-7-12
Heberden 結節の erosive 変化について
Heberden’s Nodes: erosive osteoarthritis
酒井 伸英(埼玉成恵会病院・埼玉手の外科研究所)
福本 恵三,加藤 直樹,菅野 百合,小平 聡
Heberden 結節 281 例 1363 指を X 線上で Erosive と non-Erosive に評価し比較検討した。Erosive は、
76 例 188 指であり、性別は女性 66 例、男性 10 例、罹患指は、母指 13 指、示指 53 指、中指 57 指、環指
24 指、小指 41 指であった。1966 年、Peter らは Erosive osteoarthritis の概念を報告した。臨床症状に
おいて Erosive は non-Erosive と比べ疼痛や不安定性が強いといわれており、Erosive 群が関節内注
射や関節固定で有意に多かった。
1-7-13
一般住民における手指変形性関節症とその関連因子
Prevalence and risk factors of hand osteoarthritis in Japanese general population
佐々木 規博(弘前大学大学院 医学研究科 整形外科学講座)
上里 涼子,千葉 大輔,石橋 恭之,中路 重之
Room 7
Prevalence and risk factors of hand osteoarthritis in Japanese general population
119
12:10~13:10
西新宿セミナー 6:第 53 回手の先天異常懇話会
日本手外科学会先天異常委員会主催の「第 53 回手の先天異常懇話会」を第 58 回日本手外科学会学術集
会会期中に開催いたします。今回は‘母指形成不全’をテーマとして、治療に難渋した症例や教訓的な
症例などを持ち寄っていただき、自由に討論する会です。時間があれば,その他に診断治療に悩んで
いる症例についても、検討を行う予定です。多くの方々の参加をお待ちしております。
Room 7
120
15:40~16:43
一般演題 25:腫瘍
座長:西田 淳(東京医科大学整形外科学分野)
1-7-14
手の良性腫瘍手術前後の患者立脚型機能評価
Patient-rated outcome measures before and after surgery for bone and soft tissue
tumor of the hand
山本 美知郎(名古屋大学大学院医学系研究科手の外科学)
岩月 克之,栗本 秀,水島 秀幸,平田 仁
上肢の腫瘍切除術を行った 250 例を対象とし、手術前後の患者立脚型機能評価表 Hand20 スコアを評
価した。ガングリオンでは 20.7 から 9.8 に、血管系腫瘍は 24.5 から 7 に、腱鞘巨細胞腫は 13.3 から 6.3 に、
神経鞘腫では 15.5 から 10.5 に、内軟骨腫は 19.4 から 2 にそれぞれ有意に改善した。脂肪腫は 18.6 から
11.7 に、グロームス腫瘍は 9 から 5.3 に線維腫は 16.7 から 6.8 となった。
1-7-15
当科における神経鞘腫の治療経験 核出術と術後神経障害
Schwannoma enucleation and postoperative nerve disorder
大野 晋太郎(防衛医科大学校 整形外科学講座)
有野 浩司,尼子 雅敏,平原 康文,根本 孝一
科で腫瘍核出術を行った神経鞘腫 58 個について報告する。対象:男性 6 例女性 14 例、複数個発生が
男性 1 例、女性 2 例であった。手術時平均年齢 56.5 歳。発生部位は上肢 15 個、下肢 38 個、体幹 5 個で
あった。大きさは 3-60mm であった。術後神経障害を 10 例に認めたが、いずれも 9 か月以内に改善し、
遺残はなかった。
1-7-16
四肢に発生した神経鞘腫の治療成績
clinical result of the schwannomas developed to limbs
前田 和洋(東京慈恵会医科大学 整形外科)
千野 博之,奥津 裕也,湯川 充人,丸毛 啓史
神経鞘腫は日常の手外科診療においてしばしば経験するが、核出術により、その予後は比較的良好で
ある。しかし、術後に神経脱落症状が生じ、その改善に長期間を要する症例も散見される。そこで、
今回、当科における神経鞘腫の術後成績を調査し、いかなる症例に神経脱落症状が出現しやすいかを
検討した。
Room 7
121
1-7-17
Metachondromatosis の画像変化と特徴
Characteristic radiographic findings in patients with metachondromatosis
鳥居 暁子(国立成育医療研究センター病院 整形外科)
関 敦仁,飯ヶ谷 るり子,高山 真一郎
Metachondromatosis は多発性外骨腫症と並んで過誤腫症を主徴とする疾患である。手足に好発する
多発性の骨性隆起の他、骨盤や長管骨骨幹端部の内軟骨腫様変化、関節軟骨の小石灰化像が見られる。
本疾患と診断されれば骨性隆起が消退する可能性もあるため、特徴的な X 線所見の検討は診断および
治療方針の決定に有意義である。2002〜2014 年に当院で経験した本疾患患者 13 例の手部の X 線画像
の経年変化と特徴的所見について報告する。
1-7-18
MRI での診断が困難であった上肢軟部腫瘤の検討
Soft tissue tumors in upper extremity: the discrepancy in diagnosis between MRI
findings and histological study.
福田 誠(大阪市立総合医療センター 整形外科)
日高 典昭,金城 養典
術前 MRI 診断と術後病理診断を調査し,診断の相違例を検討した.MRI 施行後に手術を行い,診断
の確定した上肢軟部腫瘤 140 例を対象とした.MRI 診断と病理診断の一致率は脂肪腫 100%、神経鞘
腫 79%、ガングリオン 69%、類表皮嚢腫 66%、腱鞘巨細胞腫 57% であった。診断に相違があった例は,
デスモイド,結節性筋膜炎等であった.脂肪腫以外の腫瘍が考えられる場合は,発生部位や性状を考
慮しながら注意深く鑑別診断を行う必要がある。
1-7-19
手・前腕原発の悪性骨軟部腫瘍の検討
Primary malignant bone and soft tissue tumors of the hand and forearm
園淵 和明(東北大学 医学部 整形外科)
保坂 正美,綿貫 宗則,信田 進吾,宮坂 芳典
手に原発する悪性骨軟部腫瘍は比較的稀である。当院にて手術を行った手・前腕原発の悪性骨・軟部
腫瘍の 5 例につき検討した。4 例で患肢温存ができ機能障害も認めなかったが、前腕原発が多かった
ことがその要因と思われた。実際手に発生した骨肉腫の 1 例は、機能障害を恐れて手術を拒否し腫瘍
死した。手においては手術に伴う機能障害のリスクが高いが、救命のためには十分な切除縁が重要で
あることにかわりはない。
1-7-20
手発生の類上皮肉腫
Epitheloid sarcoma of the hand
村松 慶一(山口大学 医学部 整形外科)
伊原 公一郎,橋本 貴弘,富永 康弘,田口 敏彦
Room 7
類上皮肉腫は手に発生する悪性腫瘍中では最も予後不良である。今回当科で治療した遠位型手発生 3
例について臨床的特徴や治療成績について検討した。1 例は化学療法を施行したが効果なく腫瘍死し
た。2 例は小さな腫瘍であり切除術で制御されている。本腫瘍の臨床成績を向上させるには早期発見
し、最初から切断も含めた広範切除を行うことである。しかし、小径腫瘍では辺縁切除でも制御可能
例もあり個別の治療選択が重要である。
122
16:43~17:46
一般演題 26:手術手技
座長:内尾 祐司(島根大学医学部整形外科)
1-7-21
変形性 PIP 関節症に対する表面置換型人工指関節置換術の治療成績
Surface Replacement Arthroplasty for Osteoarthritis of the Proximal Interphalangeal
Joint: case series
大森 信介(香川県済生会病院 整形外科)
森重 浩光,杉田 英樹
変形性 PIP 関節症 6 例 7 指に対して掌側アプローチで表面置換型人工指関節置換術を施行し、その治
療成績を検討した。全例女性、年齢は平均 58 歳、経過観察期間は平均 17 か月であった。関節可動域
は術前平均 22 度が術後 64 度に改善し、疼痛は消失した。X 線では弛みは認めず、2 例に骨棘形成を認
め、うち 1 例に尺屈変形を伴った。2 例に関節拘縮を認め授動術を行った。1 例にスワンネック変形を
認め修復術を施行した。
1-7-22
変形性 PIP 関節症に対する表面置換型人工関節のアプローチ別における短
期成績と合併症―掌側と背側アプローチの比較―
Comparison of short-term outcomes of surface replacement arthroplasty for
osteoarthritis of PIPj-dorsal approach vs. volar approach白川 健(さいたま赤十字 整形外科)
代田 雅彦
変形性 PIP 関節症に対する表面置換型人工関節置換において、掌側アプローチ(5 指)と背側アプロー
チ(12 指)の短期(術後 1 年)成績および合併症について比較検討を行った。PIP 可動域は両アプローチ
で同等であった。合併症について、背側 Chamay アプローチでは 2 指で伸展位強直となったが、二期
的に lateral band release が有効であった。掌側アプローチでは、術中の伸筋腱付着部骨折が成績不良
因子と思われた。
1-7-23
PIP 関節痛を主訴とする症例に対する浅指屈筋腱切除
Resection of flexor digitorum superficialis tendon for PIP joint pain
平瀬 雄一(四谷メディカルキューブ手の外科マイクロサージャリーセンター)
平良 貴志,戸張 佳子,山田 哲生,戸田 千里
123
Room 7
PIP 関節の疼痛を主訴として外来を訪れる患者は多い。しかし、十分な治療方法が確立されていると
は言えない。とくに、関節変形を有するブシャール結節症例の治療は放置されている。われわれは、
関節変形のあるなしにかかわらず、PIP 関節の腫脹疼痛を訴える症例に対して浅指屈筋腱の切除を行
い良好な結果を得てきた。ブシャール結節、難渋するバネ指症例に対する適応、方法、結果について
300 例を超える最新のデータを報告する。
1-7-24
紡錘形皮切を用いた手指関節固定術
Distal interphalangeal joint and interphalangeal joint arthrodesis by spindle-shaped
skin incision
野々村 秀彦(岐阜県総合医療センター 整形外科)
横井 達夫
DIP/IP 関節固定術に対し背側皮膚を紡錘形に切除するアプローチを開発し、指尖部からのヘッドレ
スコンプレッションスクリュー挿入による内固定法と組み合わせ、7 例 8 指に施行した。AcuTwist を
指尖部より挿入する DIP 関節固定術は、手技も簡便であり、整容面から特に女性に対して有用な方法
と考えられた。ただし母指 IP 関節固定術の際は、内固定材料の選択や刺入方向について十分考慮す
る必要があると考えられた。
1-7-25
Fiber Wire を用いた新しい移行腱骨固定法の試み
New surgical procedure in transferred tendon fixation on phalanges using Fiber Wire
宇佐美 聡(東京医科歯科大学 形成再建外科)
本間 勉,清水 寛章,岡崎 睦
正中尺骨神経麻痺および尺骨神経麻痺の腱移行術の際、Fiber Wire を用いた基節骨への新しい腱固定
を試みた。症例は 3 例 10 指であり、ECRL を力源とした背側ルートでの腱移行・移植を行った。4-0
FiberLoop を 2 本ずつ移植腱に通した後、基節骨側面より 2 ケ所の骨孔を開け、Fiber Wire を対側で
縫合固定した。術後は移行腱の緩みや腱断裂も認めず、局所疼痛なども認めなかった。伸筋腱の骨固
定に対しては十分な強度を持つと考えられた。
1-7-26
上肢外傷に対する簡易陰圧閉鎖療法の簡便性と有用性
The convenience and availability of modified negative pressure wound therapy for
upper extremity trauma
原 夏樹(日本鋼管福山病院)
内田 陽一郎,加藤 久佳,田島 貴文
陰圧閉鎖療法は皮膚欠損創の肉芽形成促進目的や植皮部の固定目的として優れた方法である。本邦に
おいても陰圧閉鎖療法は 2010 年より保険適応となったが、既製品の多くはレンタルによる使用とな
るため緊急手術時に使用できない状況が発生し得る。当院では上肢外傷に対し入手しやすい材料を用
いた簡易陰圧閉鎖療法を行い好成績を収めているので紹介する。
1-7-27
掌背側皮膚軟部組織欠損に対する twin︲faced abdominal flaps による再建
Twin-faced abdominal flaps for massive soft tissue defect of the hand region
奥原 裕佳子(広島大学病院形成外科)
横田 和典,四宮 陸雄,砂川 融,越智 光夫
Room 7
掌背側皮膚軟部組織欠損において腹部有茎皮弁を用いる場合,大きな皮弁が必要になり躯幹正中を越
えて皮弁を作成すると壊死を来しやすくなるという欠点がある.そこで我々は,掌背側を覆うための
2 つの皮弁を作成し供与部位を縫縮していくことでそれらが向かい合うようなデザインを考案した.
本法では 2 つの皮弁とすることで正中を越えることなくデザインすることができ,かつ供与部位も一
期的に縫縮でき非常に有用である.
124
14:05~14:29
e ポスター 1:特殊外傷ほか
座長:市川 亨(金子整形外科)
1-A-EP-1
重度手部前腕開放骨折の治療成績
Surgical outcome for Severe open fracture of hand and forearm
谷川 暢之(関西医科大学附属滝井病院 整形外科)
齋藤 貴徳,飯田 寛和
伸筋腱損傷を伴う手部前腕開放骨折に対する受傷後即時骨接合術、伸筋腱縫合術や一期的腱移行術、
早期運動療法を併用して加療した治療成績を調査した。高エネルギー外傷により受傷した 14 例を対
象とした。軟部組織損傷は、Gustilo 分類 type3A が 6 例、3B が 4 例、3C が 4 例であった。術後 MP/
PIP 関節拘縮に対して、8 例 19 関節に観血的関節授動術を追加した。最終調査時の Chen の評価基準
では、クラス I が 6 例、II が 6 例、III が 2 例であった。
1-A-EP-2
肘関節脱臼・橈骨遠位端骨折同側損傷症例の検討
Elbow dislocation with ipsilateral distal radius fracture
中後 貴江(兵庫県災害医療センター 整形外科)
松橋 美波
肘関節脱臼・橈骨遠位端骨折同側損傷 6 例について検討した。肘関節脱臼は simple dislocation が 4 例、
complex dislocation が 2 例で、橈骨遠位端骨折は AO 分類 23-A2 が 1 例、23-C3 が 5 例であった。高エ
ネルギー外傷に起因し不安定性が強いことから、初期治療として肘関節・手関節共に創外固定が有用
であった。
1-A-EP-3
高圧注入損傷の治療経験
The treatment of high pressure injury
森実 圭(里仁会 興生総合病院 整形外科)
河野 正明,千葉 恭平,高須 厚,芝 成二郎
手部の高圧注入損傷 3 例を報告する。全例 20 代男性、ペイントガンでの受傷であった。部位は中指
PIP 掌側、母指 MP 尺側、手掌であった。単純 X 線像で注入部周囲に塗料を認めた。全例緊急手術に
て debridment を行った。生じた軟部組織の壊死に対して、各種皮弁で被覆した。1 例が骨髄炎を発症
し切断、2 例は患指温存可能であった。高圧注入損傷は緊急での debridment を要し、注入部周囲が壊
死となり、皮弁での被覆が必要となりやすい。
125
e Poster A
e ポスター A(e Poster A)
e Poster A
1-A-EP-4
小指基節部高度外傷後の拘縮に対し、腱剥離に逆行性有茎筋膜脂肪弁移植
を追加した 2 症例の検討
Extensor tenolysis with reversed vascular pedicle adipofascial flap for PIPjoint
contracture following crush injury in the proxymal phalanx of the lille finger , 2 cases
of report,
梶原 了治(松山赤十字病院 整形外科)
指基節部の高度外傷後に生じた伸筋腱の癒着に対する腱剥離単独の成績は再癒着を招くことが多い。
今回基節部外傷(切断指再接着、基節骨開放性骨折+屈筋腱損傷)の術後に伸筋腱の癒着による可動域
制限を生じた 2 症例に対して吉津らが報告した伸筋腱剥離後の有茎脂肪弁移植を行って癒着防止を図
った。2 症例ともに術後再癒着を生じることなく良好な可動域が得られた。
14:29~14:59
e ポスター 2:麻酔ほか
座長:木森 研治(土谷総合病院整形外科)
1-A-EP-5
上腕動脈穿刺法によるカテーテル治療後の陳旧性合併症
Complications after brachial artery catheterization without early surgical intervention
新谷 康介(大阪市立大学大学院医学研究科 整形外科学)
岡田 充弘,上村 卓也,中村 博亮,高松 聖仁
近年、手外科において上腕動脈穿刺法による血管カテーテル治療後の合併症に対する治療報告が散見
される。血腫による合併症は緊急治療が必要であるが、合併症発生後に緊急治療がされず、陳旧例と
なった報告は少ない。新鮮例においては、筋膜切開などにより機能障害を軽度に抑えることが可能だ
が、本症例のように、陳旧例となれば治療効果は限定的である。合併症発生時は、速やかに外科的治
療を行うことが望ましいと考える。
1-A-EP-6
心血管手術後の虚血再灌流による上肢コンパートメント症候群の 2 例
Two cases of acute compartment syndrome causing reperfusion of ischemia after
cardiovascular surgery
佐藤 大(市立釧路総合病院 整形外科)
永野 裕介,下段 俊,藤田 諒,羽場 等
心血管手術後の虚血再灌流による上肢の急性コンパートメント症候群
(Acutecompartment syndrome;
ACS)の報告は少ない。今回急性大動脈解離、急性動脈閉塞症術後に上肢 ACS を発症した 2 例を経験
した。心血管手術後に ACS と診断し減張切開を行ったが、橈骨神経麻痺が遷延した。虚血再灌流後
の ACS では、急速な筋区画内圧の上昇が起こり、筋区画に不可逆性変化を生じさせる可能性がある
ため、術中のモニタリングが必要であると考えられる。
126
手外科領域における持続末梢神経ブロックを用いた早期リハビリテーショ
ンの経験
The Experience of the Early Rehabilitation with Continuous Peripheral Nerve Block
立松 尚衞(名古屋市立大学 大学院医学研究科 整形外科)
岡本 秀貴,川口 洋平,関谷 勇人,大塚 隆信
持続末梢神経ブロック併用のリハビリテーションを行った。症例は 4 例(男性 3 人、女性 1 人)。関節
拘縮 2 例に関節授動術、屈筋腱癒着 2 例に腱剥離術を行った。留置神経は正中神経が 3 例、尺骨神経
が 1 例。退院後の外来通院時も使用した。術後 2 日目の疼痛は VAS:0〜3.0(平均 1.5)。関節可動域は
腱剥離術で良好だったが、関節授動術で改善が少なかった。本法は早期自動運動における鎮痛に効果
が得られ、外来通院でも使用でき有用と考えた。
1-A-EP-8
エピネフリン含有リドカインを用いた手指局所麻酔の有用性
Usefulness of digital local anesthesia using Lidocaine with Epinephrine
楠原 廣久(近畿大学 医学部 形成外科)
和田 仁孝,西脇 仁,末吉 遊,磯貝 典孝
エピネフリン(以下 E)含有リドカインは、手指での使用は本邦で禁忌とされているが、現在、海外で
安全性が見直されている。われわれは E 含有リドカインによる手指の局所麻酔で手術を行い、合併
症なく良好な結果得られたので報告する。特に腱の手術においては、E 含有リドカインを使用するこ
とで、術中無血野を保ちつつ腱の自動運動が可能となり、術者と患者がともに術直後の可動域を確認
できるため有用であった。
1-A-EP-9
指瘢痕拘縮に対する連続 5 皮弁 Z 形成術の有用性
Multiple five flap Z plasty using finger burn contructures
黒川 正人(熊本赤十字病院 形成外科)
中馬 隆広
今回,我々はこのような手指の熱傷後瘢痕拘縮に対して通常の 5 皮弁 Z 形成術を連続して組み合わせ
た連続 5 皮弁 Z 形成術を用いて有用であったので,ここに報告する。手術のデザインは,通常の 5 皮
弁 Z 形成術を複数個組み合わせる方法と,5 皮弁 Z 形成術に連続 Z 形成術を連続させる方法がある。
いずれにしてもデザインは複雑となるが,延長効果は高く有用であった。
127
e Poster A
1-A-EP-7
e Poster A
15:10~15:46
e ポスター 3:肘部管・骨壊死
座長:越智 健介(慶應義塾大学整形外科)
1-A-EP-10 若年者における肘部管症候群の治療成績
Treatment of Cubital Tunnel Syndrome in Patients Aged Under Twenty Years
有冨 健太郎(順天堂大学 医学部 整形外科)
岩瀬 嘉志,内藤 聖人,楠瀬 浩一,金子 和夫
若年者の肘部管症候群は稀である.今回 20 歳未満の肘部管症候群の治療成績について検討した.対
象は 4 例 4 肘,男性 1 例 1 肘,女性 3 例 3 肘,年齢は 15~19 歳.原因は,外反肘が 1 肘,尺骨神経の脱
臼が 1 肘,両者の合併が 1 肘,不明が 1 肘.術前の赤堀の病期分類では第 3 期 3 肘,第 4 期 1 肘.全例
に皮下前方移行術を施行.術後の赤堀の予後評価基準の評価では,優 4 肘であり症状の改善を認めた.
1-A-EP-11 尺骨神経の friction neuropathy に対する尺骨神経筋層下前方移動術
anterior submuscular transposition of the ulnar nerve for the treatment of friction
neuropathy
浅田 麻樹(京都府立医大 大学院 運動器機能再生外科学(整形外科))
藤原 浩芳,小田 良,玉井 和夫,久保 俊一
尺骨神経の friction neuropathy に対する神経剥離術や King 変法,皮下前方移動術は,術後に摩擦や
外力による刺激が残存することがあるが,筋層下前方移動術では,これらが生じにくい.上腕骨内上
顆骨切りを併用することで,筋力低下や内上顆炎を予防できると考え,6 例に施行した.上腕骨内上
顆骨切りを併用した筋層下前方移動術は,骨切り量と内固定法に留意する必要があるものの,有効な
術式と考えた.
1-A-EP-12 肘部管症候群重症例に対する示指外転機能再建術の治療経験
Clinical Results of Tendon Transfer to Restor Abduction of the Index Finger for
Cubital Tunnel Syndrome
山上 信生(島根大学 医学部 整形外科)
山本 宗一郎,青木 陽,内尾 祐司
肘部管症候群による尺骨神経麻痺の重症例で早期のつまみ動作の改善を希望する患者に対して,
Neviaser 法による一期的示指外転機能再建術を行っており,その術後成績について調査したので報
告する.術後,つまみ動作は全例で改善しており,肘部管症候群重症例に対する示指外転機能再建術
は有用な手術方法と考えられる.
128
骨移植術による治療経験
Treatment of scaphoid nonunion or osteonecrosis of carpal bones with a vascularized
bone graft harvested from the volar aspect of the radius
高橋 芳徳(徳島県立中央病院 整形外科)
浜田 佳孝,日比野 直仁
手根骨の偽関節,骨壊死に手根動脈を茎とする橈骨遠位尺側からの有茎骨移植施行例を検討した.症
例は舟状骨偽関節 11 例,骨壊死症 5 例,掌側より病巣部を掻爬し血管柄付き骨移植後に内固定した.
圧壊壊死の 3 例を除き Mayo wrist score で 75 以上であった.本手技は病巣部と同一の展開で living
bone の採取,移植ができるが血管走行を考慮することや動脈分岐部の剥離,移行ルートの作成や骨
の固定に手技上の工夫と注意を要した.
1-A-EP-14 若年者に生じた小菱形骨無腐性壊死の 1 例
Aseptic necrosis of the trapezoid bone in a young patient, a case report
森重 浩光(香川県済生会病院 整形外科)
杉田 英樹,大森 信介
症例:8 歳女性、競技:バレエ、主訴:右手背痛。単純 X 線で小菱形骨に硬化像、MRI で輝度変化を
認め、小菱形骨無腐性壊死と診断した。若年であり保存療法を選択した。8 か月後には疼痛消失し、
画像上修復像を認め、競技復帰した。小菱形骨の無腐性壊死は極めて稀だが、栄養血管が何らかの原
因で阻害されれば壊死に至る可能性はある。本症例のように、リモデリング能が旺盛な小児例であれ
ば、保存療法でも治癒し得ると考えた。
1-A-EP-15 有頭骨壊死に対する関節鏡視下病巣切除および母床掻爬術の治療経験
Arthroscopic debridement for avascular necrosis of the capitate
清水 隆昌(奈良県立医科大学 整形外科)
面川 庄平,重松 浩司,仲西 康顕,田中 康仁
有頭骨壊死は非常にまれな疾患であり、現在病期分類に基づく定められた治療アルゴリズムが存在し
ない。本疾患に対し、我々は関節鏡視下病巣切除および母床掻爬術を行っておりその有用性を検討し
た。本法は、有頭骨頭切除に伴う隣接関節への影響を、長期的に観察する必要があると考えられるも
のの、有頭骨壊死に対して優れた除痛効果と機能回復が期待できる方法である。
129
e Poster A
1-A-EP-13 舟状骨偽関節と舟状骨・月状骨壊死症に対し掌側手根動脈を茎とした有茎
e Poster A
15:46~16:22
e ポスター 4:関節リウマチ
座長:秋田 鐘弼(大阪南医療センター整形外科、リウマチ科)
1-A-EP-16 リウマチ母指に対する Thompson 法の治療成績
Clinical Outcome of Thompson procedure for Thumb Rheumatoid Arthritis.
河村 太介(北海道大学 医学部 整形外科)
松井 雄一郎,船越 忠直,瓜田 淳,岩崎 倫政
母指の関節リウマチ(RA)病変は著しい手の機能低下につながる。当科における RA 母指 CM 関節病変
に対する関節形成術(Thompson 法)の治療成績を調査検討した。対象は、Thompson 法を施行した 9
例 9 指、経過観察期間平均 26 か月であった。術後握力の改善傾向を認めたがピンチ力は変わらなかっ
た。DASH スコアは術後有意に減少した。Thompson 法は RA 母指に対する有用な術式と考えられた。
1-A-EP-17 表面置換型人工指関節を用いた MP 関節高度脱臼症例の短期成績
Cement-less surface finger implant arthroplasty for complete dislocation of the MP
joint in RA
束野 寛人(熊本整形外科病院 整形外科)
南川 義隆
MP 関節高度脱臼症例にはシリコンインプラントが適応とされてきたが、我々は表面置換型人工指関
節である Self Locking Finger Joint(以下 SLFJ)を使用している。7 例、26 関節を対象に術後 1 年の成
績を検討した。全関節可動域は小指以外は有意に増加した。小指の尺側偏位再発が 1 例認められたが、
掌側への再脱臼はなかった。SLFJ は高度脱臼症例にも十分適応できると考えられる。
1-A-EP-18 RA 患者における手指 PIP 関節手術例の検討
Proximal interphalangeal Joint arthroplasty in Patient with Rheumatoid Arthritis
奥田 敏治(奥田整形外科)
岡本 秀貴,大塚 隆信
当院で PIP 関節に手術を施行し 1 年以上経過した RA 患者は 33 例 38 手 54 関節で、このうちボタン穴変
形を呈した症例を中心に検討した。手術方法は、南川の方法に準じた伸筋腱機構の再建(VY 法)29 関
節、インプラントを使用した形成術 12 関節、関節固定術 2 関節であった。可動範囲は伸展方向へ改善
し、滑膜切除による除痛効果もあり患者満足度は高かった。腫脹を伴った PIP 関節障害に対しては伸
展機構の再建が重要と思われる。
130
Reconstruction of Ruptured Extensor Tendon in Rheumatoid Arthritis
多田 薫(金沢大学 整形外科)
八野田 愛,岡本 駿郎,山本 大樹,土屋 弘行
関節リウマチに伴う伸筋腱断裂例 17 例の治療成績について検討した。術式は腱移行術が 3 例、腱移植
術が 4 例、尺側指から橈側指への端側縫合術が 9 例であった。端側縫合術を行った 9 例のうち 5 例では
伸筋支帯を開放し、4 例では開放せずに手術を行った。伸筋支帯を開放せず端側縫合術を行った群に
おいて MP 関節の可動域が良好であったことから、伸筋支帯は可及的に温存すべきだと考えられた。
1-A-EP-20 関節リウマチ・手関節に対する Acutrak screw を用いた Sauve︲Kapandji
法の治療成績―1 年間前向き研究―
One Year Outcome of Sauve-Kapandji Procedure for Rheumatoid Arthritis
池田 幹則(大阪労災病院 整形外科)
恵木 丈,川端 確,矢野 公一,鈴木 啓介
関節リウマチに対して Acutrak screw を用いて SK 法を行い、術後 1 年間の前向き調査が可能であっ
た 31 手関節の成績を調査した。SK 法単独が 24 関節、橈骨月状骨間固定術併用 7 関節である。結果は
全例で骨癒合が得られ、術後 1 年において Q-DASH、回外は改善し、掌屈は低下した。Xp 上、手根
骨の掌尺側への有意な転位の進行はなく、橈骨月状骨間固定術併用との関連はなかった。疾患活動性
の亢進がなければ SK 法単独で手根骨が制御可能であった。
1-A-EP-21 関節リウマチに対する人工肘関節置換術の機種選択と成績
Implant selection and clinical results of total elbow arthroplasty (TEA) for the patients
with rheumatoid arthritis.
高橋 光彦(高松赤十字病院整形外科)
笠井 時雄,西良 浩一
人工肘関節置換には非連結型と連結型の二つが使用できる。最近の TEA の機種選択と治療成績につ
いて報告する。対象は、7 例 9 肘である。臨床成績は Mayo Elbow Performance Score で評価した。
非連結型群は術前に関節の stability がある程度残っており、関節破壊が比較的少ないものに適応され
ていた。最終時臨床成績合計は両群とも同等に改善していた。
131
e Poster A
1-A-EP-19 関節リウマチに伴う伸筋腱断裂の治療成績について
e Poster A
16:30~17:12
e ポスター 5:母指 CM 関節 1
座長:副島 修(福岡山王病院整形外科)
1-A-EP-22 母指 CM 関節症に対するトンプソン法術後に生じた長母指伸筋腱皮下腱断裂
Extensor pollicis longus tendon rupture following the Thompson’s suspensionplasty
for osteoarthritis of the carpometacarpal joint of the thumb.
松永 渉(福岡山王病院 整形外科)
副島 修
母指 CM 関節症に対する Thompson 法術後に、長母指伸筋腱(EPL)皮下腱断裂をきたした 3 例を経験
した。症例は 3 例 3 指で、術後平均 42 日目に軽微なピンチ動作により発生した。全例で示指固有伸筋
腱を用いた腱移行術を行ったが、術中所見にて初回手術部位の滑膜炎を認め、EPL と摩擦を生じた可
能性が考えられた。術後の第 1 中手骨の傾斜角度の変化や早期リハビリテーションも発生に関与して
いると思われるが、今後更なる検討が必要である。
1-A-EP-23 当科における母指 CM 関節症に対する関節形成術の治療成績
Treatment result of the arthroplasty for thumb carpometacarpal osteoarthritis in our
deportment
大村 泰人(埼玉医科大学 整形外科)
河野 慎次郎,関口 浩五郎,神成 文裕,織田 弘美
母指 CM 関節症に対する治療は、関節固定、中手骨骨切り、関節形成、人工関節などさまざまな方法
があり、特に関節形成に関しては多くの術式が報告されている。われわれは、2011 年より母指 CM 関
節症に対し遊離腱(PL 腱)を用いた ligament reconstruction with tendon interposition arthroplasty
(LRTI)を行っており、遊離腱の固定に interference screw を用いている。今回その治療成績を検討
した。
1-A-EP-24 母指 CM 関節症に対する ZipTight を用いた靱帯再建を併用した鏡視下関
節形成術―第一報―
Arthroscopic suspension arthroplasty for trapeziometacarpal osteoarthritis by using
ZipTight
坂野 裕昭(平塚共済病院 整形外科・手外科センター)
勝村 哲,岡崎 敦,竹元 暁,齋藤 知行
母指 CM 関節症に対し ZipTight を用いて靱帯再建術を行った報告はない.我々は低侵襲で術後疼痛が
弱い鏡視下関節形成術において,更に低侵襲で簡便な方法として ZipTight を用いて靱帯再建術を併
用した鏡視下関節形成術を試みた.本法は合併症を生じやすい採腱の手技が省略できより低侵襲に関
節形成術を行うことが出来る.関節安定性は保持され除痛効果が高く早期に機能回復が得られる手技
と考えられる.
132
Middle term outcomes of trapeziometacarpal arthrodesis with headless screws.
瀧川 直秀(西宮協立脳神経外科病院 整形外科)
阿部 宗樹,安井 憲司,江城 久子,深井 敦大
【目的】Headless screw を用いた母指 CM 関節症に対する関節固定術の中期成績を報告する。【対象お
よび方法】手術症例 19 例 22 指のうち 5 年以上経過観察しえた 6 例 7 指を対象とした。手術時平均年齢
は 60 歳、Eaton 分類 stage2:3 指、stage3:4 指、観察期間は 5 年 7 か月であった。【結果】偽関節の 1
例は無症候性であり追加手術は施行せず。活動性の高い 1 例に MP 関節障害を認めた。【まとめ】活動
性の高い症例には注意深い経過観察が必要である。
1-A-EP-26 鏡視下母指 CM 関節形成術の成績不良例の検討とその対策(関節
realignment に注目して)
Problem and management for arthroscopic treatment of trapeziometacarpal joint
arthritis of the thumb
山下 優嗣(鳥取大学 医学部附属病院 整形外科)
林原 雅子,藤田 章啓,金谷 治尚,永島 英樹
鏡視下 interposition 関節形成術を行った母指 CM 関節症 12 手の術前後亜脱臼、臨床評価と術後疼痛解消
期間を検討した。術前亜脱臼 1/3 以上 6 手が 1/3 未満 6 手より疼痛解消期間と術後亜脱臼が大きく、術前
亜脱臼 50%以上 3 手が 50%未満 9 手より術後 DASH、VAS が不良だった。術前亜脱臼は関節不安定性を
示唆し成績不良要因と考え現在透視下第1中手骨間靭帯再建を行う鏡視透視下ligament reconstruction
tendon interposition へ移行した
1-A-EP-27 3D︲CT を用いた初期母指 CM 関節症の評価―可動域・骨棘形成・関節接
触面の変化―
A 3D-CT study of osteoarthritis of the first carpometacarpal joint in the early stage.Range of motion, osteophyte and changes in the joint surface-
高井 宏明(阿南医師会中央病院整形外科)
木村 哲也,東 龍男
母指 CM 関節症の発症過程を明らかにするために 3D-CT を用いて初期母指 CM 関節症の可動域・骨棘
形成過程・関節接触面の変化を評価した.Eaton stage 1-2 の 7 手を対象に母指の opposition と radial
abduction の 3D-CT 撮影を行なった.可動域は減少し,第 1 中手骨嘴状突起の骨棘形成と関節面の扁
平化・関節裂激の消失・軟骨下骨の硬化の進行過程を明らかにした.
133
e Poster A
1-A-EP-25 Headless screw を用いた母指 CM 関節症に対する関節固定術の中期成績
e Poster A
1-A-EP-28 外傷性母指 CM 関節脱臼に対して靭帯修復術を行った 2 例
Two cases that made the ligament repair for traumatic thumb CM joint dislocation
岩佐 諦(関西労災病院)
中川 玲子,堀木 充,田野 確郎
外傷性母指 CM 関節背側脱臼のギプス固定やピンニング固定での治療は不安定性が残存することが報
告されている。最近、母指 CM 関節の安定性には背側靭帯が重要であると指摘されている。今回、外
傷性母指 CM 関節背側脱臼に背側靭帯修復術を行った 2 例では術後の不安定性、疼痛、ADL 低下はな
く、背側靭帯修復術は有用な手術方法であると考えられる。
17:12~17:48
e ポスター 6:母指 CM 関節 2
座長:金 潤壽(太田総合病院)
1-A-EP-29 母指 CM 関節症に対する関節形成術と関節固定術の術後成績
Outcome of arthroplasty and arthrodesis for treatment of thumb carpometacarpal joint
arthritis.
花香 恵(札幌医科大学 整形外科)
射場 浩介,和田 卓郎,斉藤 憲,山下 敏彦
母指 CM 関節症に対する関節形成術と関節固定術の術後成績を検討した。形成術 8 例 8 母指、固定術
11 例 12 母指を対象とした。形成術は Weibly 変法で行い、固定術は Headless compression screw 及び
C-wire で固定した。検討項目は術後合併症、疼痛、握力、key pinch、DASH score とした。術後合
併症は橈骨神経浅枝のしびれ 3 母指,OA 変化 2 母指であった。疼痛は固定術で有意な改善を認め、
握力、key pinch、DASH score は同程度の改善であった。
1-A-EP-30 母指 CM 関節症に対する suspensionplasty の術後成績
Surgical outcome of suspensionplasty for CM joint osteoarthritis of the thumb
犬飼 智雄(福井大学 医学部 整形外科)
吉田 藍,小久保 安朗,内田 研造
Eaton 分類 3-4 の母指 CM 関節症に suspensionplasty を施行。術後半年以上経過観察可能であった 17
例を対象。治療成績として術前後の疼痛・関節可動域・握力・キーピンチ力,DASH を調査。可動域:
橈側外転が術前健側比 70%から術後 90%、掌側外転は術前健側比 65%から術後 85%に改善。握力は
術前健側比 70%から術後 85%、キーピンチ力は術前健側比 50%から術後 85%に改善。DASH score
は術前 55 点から 16 点に改善。
134
Differences in clinical manifestations of thumb CM joint arthritis based of Eaton
staging.
森崎 裕(東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科)
宮本 英明,菅原 留奈,大江 隆史,三浦 俊樹
母指 CM 関節症の X 線所見と臨床症状の関連を明らかにすべく 73 人 123 母指の母指 CM 関節症患者の
臨床所見を Eaton 分類(stage 2,3,4)毎に比較した。 Stage 4 では有意に安静時痛が強く、夜間痛も多
かった。MP 関節過伸展角度は Stage 3 が有意に stage 2 より大きかった。母指 MP 関節不安定性、MP
関節屈曲可動域、Kapandji index、掌側外転距離の群間の差はなかった。
1-A-EP-32 ミニ H 字型プレー卜を用いた母指 CM 関節固定術の治療経験
Arthrodesis using AO Mini H-shaped Plate for Carpo-Metacarpal arthrosis of the
Thumb
入江 徹(旭川医科大学 整形外科)
奥山 峰志,研谷 智,伊藤 浩,平山 隆三
ミニ H 字型プレー卜を用いた母指 CM 関節固定術を、12 手(OA 11 手 RA 1 手)に行った。術後平均 12
か月において 10 手が骨癒合し、2 手が癒合不全となった。疼痛は 9 手で改善、癒合不全 2 手と術後
CRPS1 手で改善しなかった。術後 X 線で 10 手は矯正位を保持していたが、癒合不全 1 手と骨欠損例 1
手で矯正損失があった。骨癒合 10 手は内固定材の抜去を要さなかった。条件の良い症例に対しては、
矯正位を保持し抜去の必要がない有用な方法と考えた。
1-A-EP-33 母指 CM 関節症に対する第 1 中手骨外転対立位骨切り術の治療成績
Clinical results of Abduction-opposition wedge osteotomy of the first metacarpal for
trapeziometacarpal osteoarthritis
都丸 倫代(獨協医科大学 整形外科学)
長田 伝重,高井 盛光,亀田 正裕,種市 洋
当科では、母指 CM 関節症に対し第一中手骨外転対立骨切り術(AOO)を行っている。2008 年以降、
AOO を 施 行 し た 6 例 7 手 を 調 査 し た。 最 終 観 察 時 に 可 動 域( 掌 側 外 転・ 橈 側 外 転 )
、 握 力、pulp
pintch、side pintch、HAND20、疼痛の VAS、単純 X 線像を評価し、比較的良好であった。AOO は
利点として簡便で安全に行え、CM 関節の動き、除痛効果に優れている。疼痛が残存する場合はサル
ベージ手術への移行も容易であり、有効な方法と考える。
135
e Poster A
1-A-EP-31 母指 CM 関節症の臨床所見:Eaton 分類に基づく差異
e Poster A
1-A-EP-34 DIP 関節部伸筋腱両側における嚢腫切除・骨棘部分切除による手指粘液嚢
腫の治療
Operation for mucous cyst of finger : Treatment of stalk and partial osteophyte
excision
河内 俊太郎(新潟大学 医歯学総合病院 整形外科)
柴田 実,金井 朋毅,松田 健,隅田 優介
手指粘液嚢腫に対し、嚢腫茎切除と骨棘部分切除手術を行い良好な成績を得たので報告する。対象は
23 例 28 指で、平均 60.3 歳、男性 9 例女性 14 例で、経過観察期間は平均 38.2 週であった。手術は終止
伸筋腱の両側から嚢腫茎と腱付着部以外の骨棘を部分切除し、一時縫合した。術後全例で嚢腫は消失
し、再発はなかった。また、術後疼痛・可動域制限も少なく、整容的にも良好で高い満足度が得られ
る手術法であると考えられる。
136
e ポスター B(e Poster B)
14:15~14:57
e ポスター 7:指尖部損傷ほか
座長:石川 浩三(大津赤十字病院)
指尖外傷での局所皮弁適応条件の検討
Usefulness of local flap for finger reconstruction
三島 吉登(長野赤十字病院形成外科)
岩澤 幹直,佐治 智子
指尖外傷 52 例 5 種類の皮弁で、適応条件と結果について検討した。背側枝皮弁は、長い rotation arc
の知覚皮弁である。1 指節半ほどまでの指背側掌側に適応範囲が広い。背側拡大指動脈皮弁は、指動
脈皮弁と指交差皮弁とを合わせた特長がある、掌側 3cm まで被覆可能な知覚皮弁であった。母指球皮
弁、指交差皮弁は、受傷近位損傷がある場合、必須の皮弁である。これら指局所皮弁は、非知覚皮弁
でも知覚回復は良い。
1-B-EP-2
指尖部損傷の皮弁による再建症例の検討
Reconstruction of Fingertip Injuries using Various Types of Flaps
松崎 浩徳(新潟臨港病院 整形外科)
植木 将人,間庭 圭一
再接着が適応とならない指尖損傷を皮弁で再建した症例に関して、損傷形態や術式および手術成績を
検討した。対象は 45 例 46 皮弁で、Allen 分類 type 2 から type 3 の症例の多くは神血管柄付き VY 型前
進皮弁で再建され、それより広範囲に及ぶ欠損に関しては逆行性指動脈皮弁や遊離皮弁での再建が行
われていた。指尖損傷では個々の皮弁の特徴を理解し損傷形態や患者のニーズに応じて適応を決定す
べきである。
1-B-EP-3
指尖部損傷に対する治療戦略
Treatment of fingertip injuries
白坂 律郎(土浦協同病院 整形外科)
若杉 琢磨,佐々木 研,石突 正文
指尖部損傷の定義は決まっていないが、爪母の損傷がないか限定的であれば爪の再生が期待できる。
このような症例に対しては指長が保てず、爪が再生しない断端形成の適応はない。今回我々は再接着
や各種局所皮弁で対応した指尖部損傷 40 例 42 指の経過を振り返る。現時点では再接着に VY flap(母
指の場合は掌側前進皮弁)、逆行性動脈皮弁といったオーソドックスな選択のみで大部分の症例に対
処が可能と考えている。
137
e Poster B
1-B-EP-1
1-B-EP-4
固有指部腱露出創に対する拡大型逆行性背側指動脈皮弁による再建
Reconstruction of skin defect of fingers with tendon exposure by extended reverse
dorsal digital artery flap
山中 清孝(多根総合病院 整形外科)
松村 健一
e Poster B
手背部に存在する皮膚穿通枝と背側指動脈の吻合によるネットワークを利用し,逆行性背側指動脈皮
弁を拡大した皮弁による再建を報告する.対象は 4 例 4 指で , 屈筋腱断裂に伴う指掌側の皮膚欠損が 2
例,手指背側の皮膚欠損が 2 例であった.皮弁および植皮はすべて生着し,壊死をきたしたものはな
かった.本法は伸筋腱の処理が不要なため挙上が容易で,十分な rotation arc があり,主幹動脈の犠
牲もなく有用な方法である.
1-B-EP-5
hemipulp flap による指尖部再建の検討
A Study of Finger Tip Reconstruction by Hemipulp Flap
高橋 信行(札幌医科大学 整形外科)
金谷 耕平,射場 浩介,山下 敏彦,入船 秀仁
hemipulp flap にて指尖部を再建した,5 例 5 指を検討した.全例完全生着が得られ,術後合併症,ド
ナー部位の障害は生じていなかった. 知覚回復は良好であり,DASH score は 12 点,外観の満足度
も高かった.hemipulp flap は,手指の美容的・機能的再建が可能であり,良好な知覚が期待できる.
手指掌側の広範囲な軟部組織欠損例のうち,特にピンチ動作に重要な母指・示指指尖部の再建に良い
適応と考えられた.
1-B-EP-6
指尖部切断に対して神経縫合を実施しない再接着手術に対する術後調査
Postoperative evaluation after replantation surgeries for complete digital amputations
竹内 久貴(神戸市立医療センター 中央市民病院 整形外科)
池口 良輔,安田 義
指尖部の完全切断症例に対して神経縫合を実施しない手術方法の術後成績について検討した。指尖部
切断症例に対して神経縫合を実施しないことは、指尖部に痺れ感が残存する原因の一つと考えられ
た。しかし、神経縫合を実施しなくとも患者の術後満足度は高いと考えられた。
1-B-EP-7
手指皮膚軟部組織欠損に対する Superficial Palmar Branch of the
Radial Artery Flap による治療経験
岩田 勝栄(南和歌山医療センター)
北野 陽二
手関節掌側部から採取される橈骨動脈浅掌枝 superficial palmar branch of the radial artery をドナー
とした皮弁による手指皮膚軟部組織欠損の 3 例を経験した。2 例は手指背側に、1 例は手指掌側皮膚欠
損に用いた。本皮弁の利点は、患指の手関節掌側部から採取でき、一期的に縫縮可能で、薄さ・色・
質感が良く、比較的大きな手指皮膚軟部組織欠損の再建に利用でき、主要血管を犠牲にしないこと等
が挙げられる。
138
14:57~15:21
e ポスター 8:橈骨遠位端骨折(評価ほか)1
座長:加藤 直樹(埼玉成恵会病院・埼玉手外科研究所)
1-B-EP-8
川崎 恵吉(昭和大学横浜市北部病院 整形外科)
稲垣 克記,Joerg Gruenert,Hermann Krimmer,Christoph Pezzei
ヨーロッパ 3ヵ国(スイス、ドイツ、オーストリア)における、橈骨遠位端骨折に対するロッキングプ
レートの使用状況を、Synthes 社、Stryker 社、Medartis 社及び矢野経済研究所などから調査した。
PLP である VATCP:VariAx:APTUS の使用された割合は、それぞれの国で異なっていたが、各国
の PLP の使用割合は、MLP に比べて、日本よりはるかに高かった。
1-B-EP-9
掌側転位型橈骨遠位端骨折分類の単純 X 線評価による検者間信頼性の検討
Investigation of intra-rater reliability by X-ray findings for volarly displaced distal
radius fractures
上杉 彩子(星ヶ丘医療センター 整形外科)
片岡 利行,栗山 幸治,濱田 雅之
掌側転位型橈骨遠位端骨折 28 症例に対して掌側 Barton 骨折か Smith 骨折かを単純 X 線評価を行い、
CT 評価と比較検討した。単純 X 線評価は 3 名の手の外科医以外の整形外科医にて行った。単純 X 線
評価では掌側 Barton 骨折症例のばらつきを認め検者間信頼性は低値であり、CT 評価との一致も少な
かった。単純 X 線だけで診断することは難しく CT が有用であると考えられた。
1-B-EP-10 橈骨遠位端骨折形状は尺骨茎状突起骨折の有無で変化するのか?
Correlation with ulnar styloid fracture and the fracture pattern of distal radius
佐々木 康介(清恵会病院 大阪外傷マイクロサージャリーセンター)
五谷 寛之,田中 祥貴,矢野 公一,山野 慶樹
橈骨遠位端骨折の骨折形状が,尺骨茎状突起骨折の有無により変化するのか検討すべく,橈骨遠位端
骨折の形状と尺骨茎状突起骨折の有無について CT にて評価した.橈骨遠位端関節外骨折 62 例(平均
年齢 67 歳)を評価した結果,尺骨茎状突起骨折を有する群で,橈骨遠位端骨折の尺側骨折線が統計学
的有意に遠位であったが,橈側転位に関しては,尺骨茎状突起骨折の有無により有意な差は認められ
なかった.
139
e Poster B
ヨーロッパ 3ヵ国(スイス・ドイツ・オーストリア)における橈骨遠位端骨
折に対するロッキングプレートの使用状況
Usage of the locking plate for distal radius fractures in three European countries
(Switzerland, Germany, Austria)
1-B-EP-11 骨形状に応じた橈骨遠位端骨折治療における内固定材の選択について
Implant selection for the distal radius fractures according to the bony anatomy
米田 英正(名古屋大学 手の外科)
岩月 克之,栗本 茂る,山本 美知郎,平田 仁
e Poster B
teardrop とよばれる橈骨最遠位尺掌側の骨突出には個体差があり、その個体差が各社のロッキングプ
レートの骨適合性に及ぼす影響を調査した。3D-CAD を用い、モデル化した骨と 3 枚のプレート
(Acu-loc, VCP, DVR)を重ねあわせ、骨プレート間の距離を算出した。尺側傾斜の急峻な骨には VCP
が適合し、傾斜の緩徐な骨には DVR の適合がよいことが判明した。
15:21~15:45
e ポスター 9:橈骨遠位端骨折(評価ほか)2
座長:野々宮 廣章(静岡赤十字病院)
1-B-EP-12 橈骨遠位端骨折において背側骨移植は必要か
Is the dorsal bone graft necessary for distal radius fracture?
浅沼 雄太(労働者健康福祉機構 東京労災病院)
楠瀬 浩一,松尾 亮平,武光 真志
手術加療を行った橈骨遠位端骨折のうち,整復後背側骨欠損例の骨欠損修復を観察した.対象は 2013
年 10 月〜2014 年 7 月に当科で治療した 7 例 7 手,55〜84 歳(平均 72 歳),骨折型 AO 分類,A3;1 例,
C2;6 例.評価は術前,直後,術後3ヵ月に CT を行った.骨形成有無は術後 3ヵ月後の手関節矢状断
において術直後の像と比較した.結果,全例で骨形成を認めた.整復後背側骨欠損を認めた症例でも
3 カ月の経過で良好な骨形成を認める可能性が高い.
1-B-EP-13 術後関節可動域訓練開始時期の橈骨遠位端骨折治療成績に及ぼす影響
Effect of Early and Delayed Onset of Rehabilitation in Treating Distal Radius Fracture
徳山 直人(東京大学 医学部 附属病院 整形外科・脊椎外科)
菅原 留奈,宮本 英明,大江 隆史,森崎 裕
術後他動可動域訓練開始時期が橈骨遠位端骨折術後成績に及ぼす影響を調べた。術後 21 日以内に他
動訓練を開始した早期群 10 例と 22 日以降に開始した非早期群 18 例の最終時の関節可動域、握力、X
線上の矯正損失を検討したところ両群で有意差はなかった。非早期群で AO 分類 typeC が多くそのた
め訓練開始時期が遅れたと推測されたが治療成績に差はなく安定性に不安が残る例では他動訓練開始
を遅らせることが可能と解釈した。
140
1-B-EP-14 有鉤骨鉤骨折もしくは大菱形骨稜骨折を合併した掌側転位型橈骨遠位端骨
折の検討
Treatment of palmar displacement type of distal radius fracture combined with
trapezial ridge fracture or hamate hook fracture
古屋 貫治(昭和大学横浜市北部病院 整形外科)
川崎 恵吉,稲垣 克記,酒井 健,根本 哲也
1-B-EP-15 透析・シャント肢側の橈骨遠位端骨折における術前シャント評価の有用性
Usefulness of Preoperative Evaluation of Vascular Access in Distal Radius Fracture
of Hemodialysis Shunt Limb Side
野口 京子(JCHO仙台病院 整形外科)
佐々木 大蔵
血液透析患者のシャント肢に生じた橈骨遠位端骨折では,シャント血管が手術の妨げとなることがあ
る。これに対し我々は術前にドプラー血流測定法,シャント造影法を用いシャントの走行を評価,こ
れを参考に安全な術式の選択を行っている。ドプラー血流測定は皮膚表層の血管の評価に優れてい
る。シャント造影法は,シャントの走行,吻合部,シャント狭窄の有無,側副血行路の発達が確認で
き、三次元的評価が可能である。
16:00~16:30
e ポスター 10:伸筋腱損傷
座長:鳥谷部 荘八(仙台医療センター形成外科・手外科)
1-B-EP-16 遠位橈尺関節症に続発した伸筋腱皮下断裂の検討 ~関節リウマチとの比
較~
Comparison of extensor tendon rupture associated with osteoarthritis of the dital
radioulnar joint and with rheumatoid arthritis of the wrist.
澤田 英良(安城更生病院 手の外科・マイクロサージャリーセンター)
建部 将広,浦田 士郎,田中 健司,丹羽 智史
環指・小指の伸筋腱皮下断裂に対して腱移行術を施行した症例のうち,遠位橈尺関節症・関節リウマ
チそれぞれに続発したものを比較検討した.遠位橈尺関節症では手根骨の変形が有意に少なく,尺骨
頭の背側脱臼が多い傾向にあった.いずれも屈曲制限はなく良好な成績が得られた.
141
e Poster B
当科で経験した橈骨遠位端骨折症例のうち、術前に CT 撮影を行っていた 246 例の再読影を行い、3 例
の有鉤骨鉤骨折を、4 例の大菱形骨稜骨折を認めたが、術前から診断していたのは 3 例であった。そ
のうち 6 例は掌側転位型橈骨遠位端骨折であり、両者の合併から受傷機転を考察すると、手掌からつ
いて受傷したと思われる。掌側転位型橈骨遠位端骨折に遭遇した際には、これらの合併骨折は見逃す
ことのないように、注意が必要である。
1-B-EP-17 長母指伸筋腱皮下断裂に対する手術症例の検討
Follow up Studies of Surgical treatment for the Extensor Pollicis Longus Rupture
石崎 力久(函館五稜郭病院 形成外科)
佐藤 攻
e Poster B
2010 年 10 月より 2014 年 9 月の間、当院で施行した EPL 断裂に対する手術症例について検討した。固
有示指伸筋腱(EIP)を用いて腱移行を施行したものを麻酔方法(全身麻酔および局所麻酔)と治療成績
との相関関係を検討したが有意差は認められなかった。治療成績に差は無いが、局所麻酔下の手術は
全身麻酔などに比べ緊張度を決定しやすく患者負担や医療コストが抑えられるなど利点は多く有用な
方法であると考えられた。
1-B-EP-18 手指伸筋腱皮下断裂の検討
The Treatment of Extensor Tendon Ruptures
吉塚 将昭(広島大学 医学部 整形外科)
砂川 融,中島 祐子,四宮 陸雄,越智 光夫
伸筋腱皮下断裂に対する手術成績を検討した.対象は 24 例 26 手、原疾患は RA17 手、OA8 手、キー
ンベック病 1 手。伸展不全を呈した指は小指 6 手(EDM のみ 2 手)、示指 1 手、環小指 12 手、中環小指
8 手。腱移行が 20 手に、腱移植と腱移行の併用が 6 手に実施された.MP 関節伸展 -20°以下の症例は 1
例、屈曲 50°以下の症例は 5 手、その両者が 2 手であった。成績向上のためには、早期に MP 関節の可
動域訓練を行うことが重要と考えられた。
1-B-EP-19 手指伸筋腱皮下断裂に対する並列位テーピング法による早期運療法の成績
Early active motion exercise for reconstruction of ruptured finger extensor tendons:
Juxtapositional taping method
善財 慶治(長岡中央綜合病院 整形外科)
長谷川 淳一
手指伸筋腱皮下断裂に対し減張位早期運動療法(石黒法)を改変した並列位テーピング法を施行し、そ
の術後成績を検討した。対象は過去 5 年間に本法を施行した 16 例(男女各 8 例、年齢 65〜86 歳)28 指で
あった。腱の再建は腱移行または腱移植で、原則として術翌日から手指自動運動を開始、術後平均 4
週間の手関節外固定と 6 週間のテーピングを行った。術後 17 か月時点での MP 関節自動伸展は− 5.5
度、他動屈曲は 100 度で健側との差− 4 度であった。
1-B-EP-20 手指 MP 関節部における伸筋腱脱臼の治療経験
Surgical Treatment for Extensor dislocation of the Metacarpophalangeal Joint
楢崎 慎二(岡山市立市民病院 整形外科)
沖田 駿治,兒玉 昌之,橋詰 博行
手指 MP 関節部での伸筋腱脱臼に対して手術療法を行った 5 指について検討した。全例男性の中指尺
側脱臼で、発症原因は外傷性損傷 2 指、特発性損傷 3 指であった。手術は骨間筋腱帽と矢状索を修復
した。最終調査時に疼痛、再脱臼を認めた症例はなかった。1 指で軽度の可動域制限を認めたが、そ
の他の症例においては認めなかった。手術療法は損傷部を確実に修復して、比較的早期に可動域訓練
を行うことで成績は良好であった。
142
16:30~17:06
e ポスター 11:屈筋腱損傷・槌指
座長:原 友起(筑波大学整形外科)
1-B-EP-21 指屈筋腱狭窄性腱鞘炎に対する経皮的腱鞘切開術の適応
田中 英城(新潟県立吉田病院 整形外科)
指屈筋腱狭窄性腱鞘炎に対する経皮的腱鞘切開術の適応について報告する。241 例 338 指のうち弾発
現象が無かったのは 30 指、合併症として Dupuytren 拘縮 8 指、RA2 指、DM20 指、抗凝固剤の使用が
11 指あった。弾発現象の無い例でも再手術例は無かった。Dupuytren 拘縮や RA でも局所の解剖学的
変化が軽度であれば必ずしも禁忌ではない。易感染性や創治癒が懸念される DM 例には良い適応であ
る。抗凝固剤使用例ではあえて休薬する必要はない。
1-B-EP-22 ばね指手術例 2092 指の検討
Retrospective study of two thousand ninety two operated trigger fingers.
上里 涼子(弘前大学大学院 医学研究科 整形外科)
佐々木 規博,西川 真史,石橋 恭之
手術を施行したばね指症例 1654 例、2092 指について、性差、罹患指、複数罹患、再発率を検討した。
その結果、罹患指は、女性の左で中指、男性は左右とも中指に多く、女性では母指・中指の罹患が多
かった。複数指手術は男性 15.6%、女性 12.6%、対側手術はそれぞれ 12.7%、9.0% であった。男女で罹
患指にそれぞれ異なる傾向があり、男女での手指の使い方や、手の大きさの違い、地域的な要因など
が理由として考えられた。
1-B-EP-23 陳旧性深指屈筋腱断裂に対し腱縫合を施行した 3 例
Outcome of tendon suture for old open rupture of flexor digitorum profundus: report
of 3 cases
大石 崇人(磐田市立総合病院)
森本 祥隆
FDP 開放性断裂受傷後、陳旧例となり手術行った 2 症例 3 指に腱縫合を行ったので報告する。40 歳男
性。受傷後 2ヶ月で陳旧性示環指 FDP 断裂に腱縫合、早期運動療法施行。73 歳男性 受傷後 4ヶ月で
陳旧性示指 FDP 断裂、基節骨骨折変形治癒に腱縫合、骨切術、術後固定法施行。合併損傷のない症
例では良好な成績が得られた。陳旧性 FDP 断裂でも早期運動療法可能であれば、腱移植以外に腱縫
合を考慮してもよいと考えられた。
143
e Poster B
Indicaiton of Percutaneous Incision for Finger Flexor Stenosing Tenosynovitis
1-B-EP-24 診断に苦慮した小指伸展障害の 1 例
One case of the little finger extension disorder that had difficulty in diagnosis
矢野 浩明(宮崎大学 医学部 整形外科)
甲斐 糸乃,大田 智美,中村 志保子,帖佐 悦男
e Poster B
前腕骨折後の屈筋腱癒着は稀な障害である。今回、小指伸展障害を主訴とした深指屈筋腱癒着の 1 例
を経験したので報告する。症例は 26 歳男性。14 歳より左手小指の伸展障害を自覚するも、支障なく
放置。成人し仕事に支障をきたし、26 歳時に当科初診となった。画像・所見から屈筋腱癒着の予想は
できたが、当初外傷の既往が不明であり、診断に苦慮した。尺骨に癒着していた小指深指屈筋腱の剥
離術を施行し、経過は良好で原職に復帰した。
1-B-EP-25 腱性マレットに対する手術療法
Surgical treatment for mallet finger of tendon origin
守屋 淳詞(済生会下関総合病院 整形外科)
安部 幸雄
2004 年〜2014 年までに観血的治療を行った新鮮腱性マレット指 31 例を対象とした.受傷後平均 10.2
日で手術を施行し,pull out 法 9 例,suture anchor 17 例,伸筋腱縫縮 5 例をおこなった.最終診察時
の蟹江評価では優 7,良 14,可 6,不可 4 例であった.手術方法による差は無く,断裂部位による差も
見られなかった.手術は初診時の伸展不足角度が大きい症例に関しては良い適応と考える.
1-B-EP-26 腱性マレット指に対する治療成績
A Clinical Results for Mallet Finger of the Tendon Origin
川西 啓生(広島大学 大学院 整形外科)
砂川 融,中島 祐子,四宮 陸雄,越智 光夫
腱性マレット指の治療はスプリントを使用した保存的治療が一般的であるが,当科では,管理が容易
なことから,DIP 関節の Kirschner 鋼線による過伸展位固定(ピニング)で治療を行っている.過去 10
年間でピニング又はスプリントで治療した 14 例を対象とし,比較・検討を行った.ピニングは術後
管理が行い易いという利点があるが,屈曲制限をきたす可能性があり,固定期間と後療法に注意を要
する.
144
17:15~17:51
e ポスター 12:バイオメカニクス
座長:西脇 正夫(川崎市立川崎病院整形外科)
1-B-EP-27 腱修復モデルにおけるフィブリンの生体力学的指標への影響
上原 浩介(メーヨークリニック)
アマディオ ピーター シー,アン カイナン,ツァオ シェンファン
腱治癒促進を目的として、組織工学手法の応用が試みられており、細胞の scaffold としてフィブリン
があげられる。フィブリンは、フィブリノゲン・トロンビンの濃度により接着力が変化すると報告さ
れており、5 つの濃度の組み合わせでフィブリンを作成し、イヌ腱治癒モデルとマイクロテスターを
用いて生体力学的指標を調べた。フィブリン高濃度群で高い生体力学的特性が示された。
1-B-EP-28 PIP 関節 Accessory collateral ligament の線維化の局在性を掌側板の配
置から間接的に評価する方法に関する研究
Indirect Evaluation of Fibrotic Change in Proximal Interphalangeal Joint Accessory
Collateral Ligament by Volar Plate Locus
齊藤 晋(京都大学 医学部 医学科 形成外科)
鈴木 義久,鈴木 茂彦
PIP 関節の Accessory collateral ligament(ACL)に生じる線維化の局在性を調べた報告はない。ACL
の線維化を掌側板の配置から間接的に評価し、外傷による局在性の違いを調べた。またその局在性が
掌側板の運動や関節可動域に与える影響を調べた。機能的超音波法で背側脱臼損傷の掌側板の運動を
記録し、座標値の健側比から線維化を定量化した結果、局在性に違いがあることが分かった。それは
掌側板の軌跡パターンを変化させた。
1-B-EP-29 手指の独立屈曲運動に対する定量的評価法
Quantitative evaluation of independent flexion of each finger.
渡邊 祐大(札幌医科大学附属病院 リハビリテーション部)
和田 卓郎,射場 浩介,金谷 耕平,山下 敏彦
FDS test は手指の浅指屈筋の作用である独立屈曲運動を定性的に評価する方法である。我々は FDS
test を応用した示指〜小指の独立屈曲運動を定量的に評価する QFDS test を開発し、健常者 100 名、
200 手の独立屈曲運動を評価した。独立屈曲角度は指ごとで異なっており、左右・男女・年齢の要因
では有意差を認めなかった。QFDS test は独立屈曲運動障害の診断、治療評価に有用であると考えら
れた。
145
e Poster B
The Effect of Fibrin Formulation on Initial Strength of Tendon Repair in Vitro
1-B-EP-30 Krackow 変法を用いた腱側々縫合の力学的検討―第二報
Mechanical strength of the side-to-side tendon suture with modified Krackow methodpart2
上野 啓介(千葉大学大学院)
國吉 一樹,鈴木 崇根,助川 浩士,木内 均
e Poster B
本研究では術後リハビリを想定した繰り返し牽引試験を interlacing suture 法(I 法)と Krackow 変法
(K 法)で行い比較検討を行った。新鮮凍結死体 8 肢から採取した屈筋腱から作成した 32 組を 4-0 ナイ
ロン糸で作成。牽引試験を 5N〜75N で 200 回施行した結果、K 法と I 法の変位量に有意な差は認めず、
K 法に改良の余地があると考えた。
1-B-EP-31 リバースダーツスロー・モーションのキネマティクス:in vivo 三次元運
動解析
Three-dimensional kinematics of reverse dart-throwing motion
粕渕 賢志(大阪行岡医療大学)
森友 寿夫,有光 小百合,行岡 正雄
リバース・ダーツスロー・モーションの三次元運動解析を実施した。橈骨舟状骨関節は 73°、舟状骨
大菱形骨関節 47°、舟状骨小菱形骨関節 41°、舟状骨有頭骨関節 37°であった。橈骨月状骨関節 49°、
月状骨有頭骨関節 37°であり、橈骨三角骨関節 51°、三角骨有鈎骨関節 36°であった。手根中央関節よ
り橈骨手根関節が大きく動いていた。
1-B-EP-32 特発性舟状大菱形小菱形骨間関節症(STT 関節症)の 3 次元動態解析
In vivo 3-dimentional analysis of isolated scapho-trapezio-trapezoidal osteoarthritis
飯田 昭夫(阪奈中央病院 整形外科)
面川 庄平,森友 寿夫,大森 信介,田中 康仁
【目的】STT 関節症の病態を調査するため手関節橈尺屈に伴う舟状骨の動態を調査した。【方法】STT
関節症、健常者に対し、手関節尺屈位、橈屈位での CT から手関節橈尺屈に伴う舟状骨の回転角度と
重心位置の移動距離を計測し、STT 関節症と健常で比較を行った。【結果】手関節橈尺屈に伴う舟状
骨の橈屈角度と重心移動距離は STT 関節症において少ない傾向であった。【考察】舟状骨の橈屈制限
が STT 関節症の一因となっている可能性がある。
146
プログラム
Friday, April 17
4月17日(金)
Room 1
第 1 会場(Room 1)
8:00~9:30
シンポジウム 8:末梢神経障害
座長:額田 均(額田医学生物学研究所) 加藤 博之(信州大学医学部運動機能学教室)
2-1-S8-1
末梢神経と虚血
Peripheral nerve and ischaemia
額田 均((公益財団法人)額田医学生物学研究所付属病院)
末梢神経は中枢神経系とは対照的に虚血による障害を受けにくいとされている。しかし、この虚血に
対する抵抗性は正常の末梢神経についてであり、糖尿病などの背景疾患が存在する場合には虚血に対
する閾値の低下が見られる。本講演では、1、急性虚血による末梢神経障害、2、再灌流傷害による末
梢神経障害、3、慢性虚血による末梢神経障害、4、糖尿病と虚血性末梢神経障害について電気生理学
的および病理学的な面から解説する。
2-1-S8-2
神経痛性筋萎縮症 Neuralgic amyotrophy の概念と臨床像
Concept and Clinical features of Neuralgic Amyotrophy
福島 和広(信州大学 医学部附属病院 難病診療センター)
神経痛性筋萎縮症は片側上肢の神経痛で発症し、限局性の筋萎縮を生じる症候群である。肩甲上腕部
の筋萎縮を呈する典型例は、腕神経叢とその近傍の末梢神経障害と推定されている。感染、外傷、労
作、遺伝性素因など複数の誘因が知られるが、詳細な発症機構は不明である.典型例の他、前骨間・
後骨間神経麻痺、腰仙神経叢障害などの亜型が知られる.運動機能予後は必ずしも良好ではなく、治
療法の確立が必要である。
2-1-S8-3
末梢神経障害の超音波診断
Ultrasonography for the diagnosis of peripheral nerve disorders
中道 健一(虎の門病院 リハビリテーション科)
立花 新太郎,山本 精三,喜多島 出
末梢神経障害の診断は臨床,電気生理学的に行われるが,これらによっても診断が困難なことがある。
そのような症例に対し超音波検査を行い,絞扼像があれば絞扼性障害,びまん性の腫大でくびれがあ
れば特発性麻痺と診断できた。くびれを欠くびまん性の腫大には疾患特異性がない制約があるが,障
害部位を確認(神経絞扼との誤診を回避)できることは利点と考えられた。
148
超音波検査による特発性前骨間神経麻痺における「砂時計様くびれ」の診断
と経過観察
Ultrasonographic Diagnosis and Follow-up of Anterior Interosseous Nerve Palsy with
Hourglass-like Fascicular Constrictions
中島 祐子(広島大学病院 整形外科)
砂川 融,四宮 陸雄,越智 光夫
特発性前骨間神経麻痺の原因の一つとして神経束の「砂時計様くびれ」あるが、従来くびれの画像診断
は困難であった。本研究では 8 例に対して超音波検査でくびれの診断と経過観察を行った。6 例で正
中神経の神経束にくびれを認め、手術例ではほぼ超音波所見通りであった。手術例でくびれ率が改善
したものは麻痺が回復する傾向にあり、改善しないものには麻痺が残っていた。保存例でも回復とと
もにくびれ率が緩やかに改善していた。
2-1-S8-5
特発性前骨間神経麻痺の臨床像 ―単独麻痺と複合麻痺を比較して―
Spontaneous Anterior Interosseous Nerve Syndrome
赤根 真央(名古屋大学大学院医学系研究科 総合医学専攻運動・形態外科学 手の外科学)
山本 美知郎,岩月 克之,栗本 秀,平田 仁
前骨間神経支配の症状を示す麻痺(長野 1 型)と前骨間神経支配を超える症状を伴う麻痺(長野 2 型)に
ついて検討した。長野 1 型は 15 例で長野 2 型は 14 例であった。長母指屈筋が完全麻痺した症例と発症
前に患肢に疼痛を訴えた例が長野 1 型に有意に多かった。1 型の方が 2 型よりも長母指屈筋の運動麻痺
の程度が強く、発症前に疼痛を有意に訴え、保存治療での回復が遅れる傾向を認めた。
2-1-S8-6
特発性前骨間神経麻痺の神経線維束間剥離術術後の筋力回復
Recovery of Spontaneous Anterior Interosseous Nerve Palsies after Interfascicular
Neurolysis
田尻 康人(東京都立広尾病院 整形外科)
山本 真一,三上 容司,冲永 修二,原 由紀則
特発性前骨間神経麻痺 28 例の神経線維束間剥離術の術後経過を後ろ向きに調査した。術後 2 年以上観
察できた症例は、FPL71%、FDP64% で M4 以上に、100% と 92% で M3 以上に回復し、保存治療に比
べ回復割合は良好である。発症 1 年以上で手術した例も 8 例中 7 例は M3 以上に回復した。
149
Room 1
2-1-S8-4
Room 1
10:00~11:00
招待講演 5
座長:別府 諸兄(聖マリアンナ医科大学)
2-1-IL5
Understanding 3︲Dimensional Complexities of Distal Radius
Fractures: Acute Treatment, Late Management and the Impact on
the Distal Radioulnar Joint
William Seitz. Jr. MD
(Professor, Orthopaedic Surgery, Cleveland Clinic, Lerner College of Medicine, Case Western Reserve University,
Chairman, Orthopaedic at Lutheran Hospital, Cleveland Clinic Orthopaedic and Rheumatologic Institute, USA)
The high frequency and commonality of distal radius fractures have made them the focus of many clinical
and anatomic studies. As we began to learn more about the anatomy of the fractures we also began to
understand the “personality” of some of the fractures related to the degree of energy required to cause
certain fracture patterns, the potential fragility in certain individuals skeletal architecture, and as a result an
understanding of the steps required to reconstruct these fractures when surgically addressed.
Our early understanding was based on two dimensional plain radiographs and centered around the number
of fracture fragments (radial styloid, scaphoid facet, lunate facet, ulnar styloid). Our focus was based on an
emphasis of restoring radial length, angle of inclination and volar tilt while avoiding articular step off at the
radiocarpal joint. Pre and post-operative evaluations relied predominantly on plain radiographs and many
outcomes were based solely on the appearance of radiographic restoration of anatomy.
In time, use of CT scan pre- and post-operative evaluation demonstrated the ability (or inability) to restore
true articular congruity to the articular surface of the radiocarpal articulation, sigmoid notch, and alignment
of the distal radioulnar joint. This latter component identifying and focusing on the rotational component
present in many of these fractures.
Advances in the management of distal radius fractures resulted from application of fixation techniques
addressing each individual fracture fragment and its relationship to normal anatomy recognizing the
importance of restoring alignment in all planes of stability and at the distal radioulnar joint. These
techniques included a progression from closed reduction, “pins and plaster” stabilization, external fixation,
augmented external fixation, fragment specific fixation, to more recently fixe- angle volar plate fixation. In
the process, we have intermittently lost focus on the importance of restoring “wholeness” to both the bony
configuration of the distal radius as well as to the distal radioulnar joint.
Today, complications of inadequately treated distal radius fractures tend to present with symptomatology
focused at the distal radioulnar joint. An assessment of these complications suggest inadequate attention to
the fracture fragments attached on the palmar and dorsal side of the radius which anchor the corresponding
DRUJ ligaments and provide stability. A loss of stability and rotational malalignment have resulted in
displacement , incongruity and arthritis of the DRUJ.
Anatomic studies have shown variation in the depth and volumetric content of the sigmoid notch,
demonstrating concomitant variation in the bony architecture of the DRUJ and therefore, its ability to
provide stable seating of the ulnar head, making some joints inherently more unstable than others.
Our approach to managing distal radius fractures in the twenty first century should incorporate all of these
principles when we provide acute treatment. When we are faced with complications they should guide us
in our assessment and planning for our reconstructive techniques. Use of 3-dimensional CT scan guided
templating for reconstruction of the distal radius, ulna and DRUJ will be presented for management of
complex malunions along with a philosophy for management of acute fractures addressing each anatomic
150
William H. Seitz, Jr., M.D., the current President of the American Society for Surgery of the Hand. He is
Professor of Orthopaedic Surgery of Cleveland Clinic Lerner College of Medicine, Case Western Reserve
University, Chairman of Orthopaedic at Lutheran Hospital, Cleveland Clinic Orthopaedic and Rheumatologic
Institute, Chief, Hand Section. He is a Board-Certified Orthopaedic Surgeon who completed Medical School
training at the College of Physicians and Surgeons of Columbia University and Residency and Fellowship at
the New York Orthopaedic Hospital Columbia Presbyterian Medical Center in New York City. He joined the
Cleveland Clinic Orthopaedic & Rheumatology Institute in January 2000 after serving as Chairman of the
Department of Orthopaedic Surgery at the Mt. Sinai Medical Center in Cleveland. Dr. Seitz specializes in
surgery and rehabilitation of the hand, wrist, elbow and shoulder, focusing on congenital hand reconstruction,
trauma and arthritic-related reconstruction, total joint replacement, and arthroscopic management of upper
extremity joint problems.
He regularly engages in leading-edge research, concentrating in the areas of hand and upper extremity
reconstruction. Dr. Seitz is a prolific lecturer, author and editor. His extensive written work has appeared in
numerous peer-reviewed medical journals and textbooks.
He is a consultant for children with congenital neuromuscular disorders at several regional and national
institutions. Numerous professional awards and recognitions have been bestowed upon Dr. Seitz. He was
selected by his peers to be included in "The Best Doctors in America," 1996-present, and was entered into
"Who's Who in Medicine and Healthcare," 1997-present and "Who's Who in Science and Engineering,"
1996-present edition. He has been an invited keynote speaker and visiting professor at numerous leading
national and international conferences and institutions throughout his career. In 1996 he was chosen as a
“Community Hero” for his work in congenital hand reconstruction and his promotion of healthy living through
his love for marathon running to carry the Olympic torch on its course through Cleveland.
Dr. Seitz's professional memberships have included the American Society for Surgery of the Hand on whose
Council Board and Foundation he has served for many years, American Orthopaedic Association, Orthopaedic
Research Society, Orthopaedic Trauma Association, American Shoulder and Elbow Surgeons, American
Academy of Orthopaedic Surgeons, and he is a founding member of the International Society for Fracture
Repair. He was awarded the prestigious Sterling Bunnell International Traveling Fellowship in 1992, he
subsequently served as Chairman of the Sterling Bunnell Traveling Fellowship Selection Committee for the
ASSH. He has chaired and served on numerous committees and has held many leadership roles for these
societies. In turn, he has received many awards and honors by his peers in these societies.
Regionally, Dr. Seitz has been a member of the Academy of Medicine/NOMA since coming to Cleveland in
1985. He has served on numerous committees including the Legislative Committee, Physician Retention
Committee, Mini Internship Committee, Physician Advocacy Committee, Executive Committee and Board of
Directors, Board of Directors of the AMEF, has served as President of the Academy of Medicine of Cleveland/
Northern Ohio Medical Association, and the Cleveland Orthopaedic Society.
He loves to run long distances, fly fish and travel and is an avid golfer. His greatest joy in life is his family; his
four children David, Eric, Will and Ellie and his dear wife of 43 years, Susan.
151
Room 1
fracture fragment and all articular surfaces, and “salvage” reconstructive procedures when fracture
reconstruction has failed or is no longer a viable option.
Room 1
11:25~12:25
特別講演 2
座長:根本 孝一(防衛医科大学校)
2-1-SL2
わが国における医療機器研究・開発の現状と将来
Status and Future Trend of R&D for Medical Device in Japan
菊地 眞(公益財団法人 医療機器センター、防衛医科大学校名誉教授)
わが国おける医療機器研究開発と医療機器産業振興が経済成長戦略の一つとして取り上げられ、過去
に例を見ない枠組みで前進しつつある。平成 27 年 4 月には日本医療研究開発機構が発足し、これまで
の医療研究開発に関わる縦割り行政を排除し、まさにオールジャパンで医療に取り組むことになった
が、医療を学術面だけでなく産業面からも捉えようとする意欲的改革と言える。昨年 11 月 25 日には
改正薬事法が施行され、経済産業省も一体となって「得意技術を有するものづくり中小企業」の医療機
器産業参入への後押しを始めて、医療機器産業振興に向けた基盤整備が整いつつある。併せて橋渡し
研究開発拠点や臨床試験拠点整備なども進められており、医療機器の研究開発から臨床研究支援、さ
らに上市までが一貫して機能する医療機器産業化のためのシステム構築が始まっている。演者は平成
22 年から開始された経済産業省課題解決型医療機器等開発事業の有識者委員会委員長を務めると伴
に、ふくしま医療機器産業推進機構において医療機器開発と実用化を目指す事業者への支援を展開し
ている。福島県が全国有数の医療機器部品・製品生産県である利点を活かして、平成 28 年度に「福島
県医療機器開発・安全性評価センター(仮称)」を開設する。本センターは、医療機器の安全性評価と
事業化支援、並びに医療従事者への機器研修等を通じて安全で信頼される医療機器の開発、及び適正
かつ安全使用の促進を図り、もって医療機器産業の発展と医療の安全確保に貢献することを目指して
おり、特に医療機器の安全性評価機能の確立が求められていることから、衛生試験設備と動物実験設
備の充実を図る。同時にここでは、“ものづくり”だけでなく“医療を支える現場の人材育成・訓練機
能の提供”を主要な役目と位置付けている。
菊地 眞(きくち まこと)
略歴:
昭和49年慶應義塾大学大学院工学研究科博士課程修了
(工学博士)
。47年東京女子医科大学医用工学研究施設助
手。51年同講師。55年防衛医科大学校医用電子工学講座教授。平成15年同防衛医学研究センター長。19年同
副校長(教育担当)
。24年公益財団法人医療機器センター理事長、同附属医療機器産業研究所所長。25年一般財
団法人ふくしま医療機器産業推進機構理事長。国際医用生体工学連盟(IFMBE)前会長、日本レーザー医学会前
理事長、日本ハイパーサーミア学会前会長、日本生体医工学会前副会長などを歴任。昭和60年度英国電気学会
Kelvin論文賞、平成10年度日本医科器械学会論文賞、平成11年度通商産業大臣賞(標準化功労)、平成14 年度日
本医科器械学会著述特別賞、平成17年度日本レーザー医学会総会賞など多数受賞。内閣官房「健康・医療戦略
推進専門調査会」
(日本医療研究開発機構)委員、内閣府総合科学技術会議・科学技術重要施策アクションプラ
ン/ライフイノベーション戦略協議会委員、文部科学省橋渡し研究支援拠点審査委員、厚生労働科学研究費補助
金医療技術実用化総合研究事業審査委員、経済産業省
「課題解決型医療機器等開発支援事業」有識者委員会委員
長、
「福島県医療機器開発センター(仮称)」構想有識者委員会委員長などを歴任。
152
教育研修講演 2
座長:石黒 隆(いしぐろ整形外科)
2-1-EL2
キーンベック病の成因と治療
Etiology and Treatment of Kienböck Disease
上羽 康夫(認定NPO法人 健康医療評価研究機構、京都大学医療短大名誉教授)
[先人達の業績]Kienböck が Lunatomalacia の概念を確立させ,その後に多くの優れた研究業績が集
積された.この病気の原因として骨折・血流障害・血栓などが推測されたが,月状骨がどうして壊死
に陥るのか,そして何故 X 線像で種々な Stage 変化を示すかについては十分に解明されなかった.
「摘
出月状骨標本の所見」晩期キーンベック病症例から摘出した月状骨を調査した.月状骨は変形し,表
層軟骨は変性摩耗していた.月状骨表面には大骨折線が見られ,内部には多くの小骨折が認められた.
大骨折線は走行により 3 型に分類された.月状骨内には壊死部と生存部とが混在し,境界に新生骨の
形成が認められた.[成因論]Lichtman 分類の X 線像 stage と標本組織所見とを勘案すると,キーン
ベック病の発生機序は下記の如くである.手関節炎による関節内圧の上昇により微小静脈は閉塞さ
れ,月状骨内に鬱血が起こり,動脈流が減少し,酸素供給が途絶える.その結果,骨細胞は死滅し,
月状骨壊死が起こる.骨内カルシウムは濃縮され,骨芽細胞による appositional bone 形成が起こり,
X線で骨硬化像を呈する,関節炎が治まり,血流が再開されると一旦壊死に陥った月状骨の修復が始
まり,肉芽侵入に伴って骨強度は低下し,骨折が起こり易くなる.変形した月状骨はやがて関節症を
誘発する.[今後の治療方針]手関節内圧の上昇期には関節穿刺などを行い,関節内圧を下げる.月
状骨壊死期には血流促進や骨細胞増殖を促す.修復期には月状骨々折を予防するために創外固定など
を行う,骨折が起これば,骨癒合を促進させ,形状を復帰させる手術を行う.関節症が生じた場合に
は,変形した月状骨の治療のみならず変性摩耗した軟骨の修復術が必要であろう.
上羽 康夫(うえば やすお)
略歴:
1960年
1961年
1962年~1966年
そのうち
1965年7月~1966年 6月
京都大学医学部医学科卒業
横須賀米国海軍病院インターン修了
米国留学
Hand Fellow
1966年~1987年
(Prof. Robert E. Carroll at New York Columbia︲Presbyterian Medical Center)
京都大学医学部整形外科 助手,講師,助教授
1987年~1995年
1995年~2003年
2004年~現在
(Prof. Edmund Y. Chao at 米国ミネソタ州 Mayo Clinic Biomechanics Lab)
京都大学医療技術短期大学部作業療法学科 教授,部長,名誉教授
医療法人白菊会 白菊園病院 院長
特定NPO法人健康医療評価研究機構 医学諮問委員,評議員
そのうち
1981年7月~1981年12月
Research Associate
153
Room 1
13:55~14:55
Room 1
15:10~16:10
招待講演 6
座長:土井 一輝(小郡第一総合病院)
2-1-IL6
Hand and Brain
The connections of the periphery with the centre
Joerg Gruenert, Prof. Dr. med.
(Chairman, Department of Hand, Plastic and Reconstructive Surgery, Kantonsspital St. Gallen, Switzerland)
In all our daily activities we use our hands to explore our environment, to touch our surrounding and to
experience our opposite. We manipulate with the power grip and touch with the pinch- and key-grip
objects that surround us and shape and arrange our environment new. With the help of tools we are even in
the position to move and shape even bigger objects, on the other hand we can also perform microsurgical
manipulations on tiny objects. Very often the capability of our hands enables our activities of daily living
and garantees our daily living. With our hands work we earn our salary, we communicate with our hands
using many gestures and please our minds playing music instruments. For all these activities we need our
hands with their 42 muscles and 27 bones, but it won`t work without its connections via the 400.000 nerve
fibres through the brachial plexus and the brain with its 100 billion nerve cells in the cortex representing
our whole body according its functional importance (homunculus). There are many different sensory organs
needed in the finger tips and manifold connections not only to the contralateral, but also to the ipsilateral
cortex of the brain. These representations are plastic and correspond to the functional demands and their
training. Neuroplasticity defines the adaptation to use or non-use of a motor function or somatic quality. In
experimental research alterations in cortical representation can rapidly been found after immobilisation,
peripheral anaesthesia, nerve transsections and nerve repair. Rapid cortical reorganisations and functional
shifts are the consequences. 57% of all patients with peripheral nerve injuries are between 16 and 35 years
of age and 1.5 year after the injury at least 25% of the patients did not return to their former workplace.
Besides that the economic costs for one median nerve injury amount for about 51.000 Euro. After nerve
transsections there will be expected central neuron degeneration the more proximal a lesion occurs (27% in
proximal versus 7% in distal lesions). Can also Wallerian degeneration been influenced by therapeutic
measures? From a neuroscientific point of view there are many factors working in the brain and in the
periphery which influence nerve regeneration and functional recovery. A historical overview will
demonstrate the manifold ways of action and response in the brain, which determine the change of
regeneration. From physiologic observations in musicians and from reports in pathological circumstances
we can learn many relevant matters of how the brain is working and interacting with the periphery. Brain
processes which are connected to learning and experience processing are important. These mechanisms can
be optimized during the rehabilitaton period by multisensory inputs (e.g. tactile and therapeutic meals), the
use of sensory-gloves and other neuroscientific measures to improve lost functions. Here the knowledge of
the mirror neurons plays an important role and after nerve injuries besides the microsurgical nerve
reconstruction the use of mirror therapy supports and improves rehabilitation in these patients. For the hand
surgeon the scope has broadened and the results of surgical restoration of nerve injuries not only depend on
the surgical skills of the surgeon, but to a major degree also on how he manages to integrate the newest
developments of neuroscience in the rehabilitation.
Born: 26.02.1959 in Münster (Northern Germany)
Medical School at Münster university (Germany) and Berne university (Switzerland) from 1979 until 1985
Junior House Officer at Canniesburn Hospital, Glasgow with Ian McGregor and Gus McGrouther 1985/1986
154
Hand Surgery with Prof. Ueli Büchler in Berne (Switzerland) 1993 until 1995
1995
Professor of microsurgery – University of Münster (Germany)
1995-2001Professor of Hand- and Plastic Surgery, head of Department University of ErlangenNuremberg (Germany)
2001 until presentChairman of Department of Hand, Plastic and Reconstructive Surgery, Kantonsspital,
St. Gallen, Switzerland
Since 2004 chairman of section Limb&Spine at the IBRA (International Bone Research Association)
Member of German, Swiss, British and Japanese Society for Surgery of the Hand
University affiliation with Westfälische Wilhelms-University Münster/Germany
Friedrich-Alexander University Erlangen-Nürnberg/Germany
University Zürich/Switzerland
University of Birmingham/GB
Special interests: Reconstructive microsurgery, congenital malformations, nerve regeneration
Hand/Brain-connection, radius fractures
155
Room 1
Training inGeneral Surgery, Traumatology, Hand Surgery, Plastic Surgery, Maxillofacial Surgery at Münster
university 1986 until 1993
Room 1
16:20~17:50
シンポジウム 9:肘部管症候群の病態と治療
座長:池田 和夫(金沢医療センター整形外科)
宮坂 芳典(仙塩利府病院整形外科) 2-1-S9-1
若年成人ボランティアにおける尺骨神経障害
Incidence of Ulnar Nerve Palsy in Young Adult Volunteers
佐竹 寛史(山形大学 医学部 整形外科)
本間 龍介,丸山 真博,長沼 靖,高木 理彰
20 歳代の成人 360 名、男 270 名、女 90 名、平均年齢 24 歳を対象に徒手筋力テスト(MMT)を調べたと
ころ、母指内転筋 12.4%、小指深指屈筋 7.8%、第 1 背側骨間筋 16%、小指外転筋 12.8% に低下がみら
れた。また、肘内側における尺骨神経亜脱臼が 43%、Tinel 徴候が 40%、肘屈曲テストが 14% に陽性
であった。手に症状があり尺骨神経領域の MMT が低下していた尺骨神経障害が 2.6%、症状がなく
MMT が低下していた不顕性尺骨神経障害が約 10% にみられた。
2-1-S9-2
肘部管症候群患者における尺骨神経伸長度 ―病態と治療の観点から―
Unlar nerve strain around the elbow in patients with cubital tunnel syndrome
越智 健介(慶應義塾大学 整形外科)
堀内 行雄,堀内 孝一,森澤 妥,佐藤 和毅
尺骨神経伸長度に着目して、肘部管症候群の病態を検討した。新鮮屍体より顕著に高かった患者の神
経伸長度は、神経剥離術後に同程度となった。肘屈曲テスト(5 秒陽性率:35%)肢位に肩関節外転内
旋を加えた肩内旋肘屈曲テスト(同:90%)肢位の神経伸長度は、肘屈曲テスト肢位より有意に高かっ
た。肘部管症候群の病態や症状誘発には神経の伸長度が関与し、神経剥離術単独で神経伸長度は正常
化することが示唆された。
2-1-S9-3
重度肘部管症候群に対する腱移行術によるつまみ動作再建の治療成績
―神経除圧群との比較―
Tendon transfer to restore the pinch power for advanced cubital tunnel syndrome.
森澤 妥(国立病院機構埼玉病院 リハビリテーション科)
河野 友佑,越智 健介,佐藤 和毅,高山 真一郎
重度肘部管症候群に対するつまみ動作再建の有用性を検討した。対象は 20 例 21 肘でこれらを腱移行
術でつまみ動作再建した症例 T 群 10 例 10 肘、神経除圧のみ施行した症例 N 群 10 例 11 肘にわけて、両
群間の 1)赤堀の予後評価基準、2)ピンチ力、3)利き手の ADL 障害の改善程度を比較検討した。赤堀
の評価、ADL 障害の改善程度で T 群で有意に改善を認めた。ピンチ力は最終診察時で T 群は全例で
改善を認めたが、N 群は 3 例 3 肘で悪化していた。
156
尺骨神経脱臼による肘部管症候群に対する手術症例の検討
Operative treatment for recurrent dislocation of the ulnar nerve
池田 和夫(金沢医療センター 整形外科)
納村 直希,多田 薫
症例は 9 例 10 肘で、若年群は男 2 例、女 3 例で、中高年群に両側例があり 4 例とも男であった。両群
とも利き手 3 例、非利き手 2 例であった。若年群はスポーツ時の愁訴で、中高年群では仕事に支障が
あった。若年群で尺骨神経脱臼が 1 肘、三頭筋腱押し上げが 2 肘、腱の内上顆乗り上げが 1 肘、腱弾
発が 1 肘あった。中高年群では、神経脱臼が 2 肘、腱の乗り上げが 3 肘あった。手術は King 変法を行
った。三頭筋腱弾発例で一部腱切離をした。
2-1-S9-5
肘部管症候群に対する小切開単純除圧術の治療成績 ―手術適応を再考す
る―
Low Invasive Simple Decompression Procedure for Cubital Tunnel Syndrome
- Re-consideration of indication
長尾 聡哉(日本大学病院 整形外科)
長岡 正宏,豊泉 泰洋,冨塚 孔明,山口 太平
肘部管症候群に対する小切開単純除圧術の治療成績を調査したので報告する。本法を施行した 52 例
53 肘を対象とした。19〜78 歳(平均 52.8 歳)、男性 33 例 33 肘、女性 19 例 20 肘、罹患側は右側 28 例、
左側 23 例、両側 1 例であった。術前病期は第 I〜V 期でそれぞれ 7、14、19、11、2 肘であり、術後予
後評価は優:32 肘、良:16 肘、可:5 肘で術後再発を 1 肘に認めていた。OA 例、内外反肘の成績は
比較的良好であった。
2-1-S9-6
肘部管症候群患者における術後回復の傾向:線形混合効果モデルを使用して
Trend of Postoperative Recovery in Patients with Cubital Tunnel Syndrome: using a
Linear Mixed-Effects Model
井戸 芳和(信州大学 医学部附属病院 リハビリテーション部)
内山 茂晴,林 正徳,今枝 敏彦,加藤 博之
肘部管症候群患者 52 例における術後長期回復の傾向を線形混合効果モデルにて解析した.DASH の
術後長期回復の傾向は術前重症度に有意な影響を受けないことが示された.一方,握力,SP および
しびれ(しびれについては女性のみ)は術前重症度に有意な影響を受けていた.多重比較の結果,それ
らは McGowan 分類 Grade II の方が早期に回復する傾向にあった.患者 QOL は,術前の神経麻痺重
症度に依存せず回復することが示唆された.
157
Room 1
2-1-S9-4
Room 1
2-1-S9-7
肘部管症候群に対する予後予測因子の検討
Prognostic factor for the cubital tunnel syndrome.
鈴木 拓(慶應義塾大学整形外科)
岩本 卓士,越智 健介,松村 昇,佐藤 和毅
肘部管症候群の術後成績を検討し,術前における予後予測因子の解析を行った.性別,年齢,BMI,
頸椎疾患,糖尿病,職業,飲酒,喫煙量,術前重症度(McGowan 分類),MCV,SCV,術式を説明変
数とし,術後成績(Messina 評価)を目的変数としたロジスティック回帰分析を施行した.術前重症度,
頸椎疾患の合併,MCV が術後成績に有意に影響を与える因子であった(P < 0.05).
158
第 2 会場(Room 2)
8:20~9:14
一般演題 27:TFCC(診断)
座長:西川 真史(にしかわ整形外科・手外科クリニック)
当院における動的 MRI 撮影による TFCC 損傷の診断と鏡視下部分切除術
の成績について
Diadnosis for TFCC injury with Dynamic MRI and Results of Arthroscopic Partial
Resectiom of injured TFCC
西川 真史(にしかわ整形外科・手の外科クリニック)
上里 涼子,佐々木 規博,石橋 恭之
TFCC 損傷診断に動的 MRI 撮影を施行している。動的 MRI は前額面で手関節橈尺屈位・中間位で撮
影し、それぞれの肢位での共通するスライスを組み合わせて動画にした。215 例、230 関節に鏡視
TFCC 部分切除手術を施行した。術後 3ヶ月経過で術後成績評価を行い、Ex:195 関節、G:17 関節、F:
10 関節、P:8 関節であった。動的 MRI 撮影(229 関節に施行)と術中鏡視所見を比較すると、76%で
有用な所見を得ることが出来た。
2-2-2
三角線維軟骨複合体損傷に合併した尺側手根伸筋腱障害と遠位橈尺関節障
害の MRI 所見
A MRI study of the ECU tendon disorder in traumatic and degenerative TFCC tears
山藤 滋(大阪暁明館病院)
面川 庄平,飯田 昭夫,田中 康仁
今回,三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷を有する患者の MRI を調査し,尺側手根伸筋(ECU)腱障害
あるいは遠位橈尺関節(DRUJ)障害の合併頻度を算出した.慢性 TFCC 損傷患者の MRI 所見から,
ECU 腱あるいは DRUJ 障害が TFCC 断裂に高頻度(26-52%)に合併することが判明した.
2-2-3
TFCC 損傷例は尺側手根伸筋腱,腱鞘変化を合併するのか?―TFCC 損傷
例とボランティアの MRI 比較―
Comparison of the morphology of ECU groove and influence to tendon and tendon
sheath between TFCC patients and Volunteers
田中 利和(キッコーマン)
小川 健,岡野 英里子,神山 翔,落合 直之
Microscopy coil を用いた MRI 撮影を行い ECU 腱,腱鞘内の性状変化と尺骨 ECU 溝の形態(幅,深さ,
傾斜角度,溝の内部 3 点を通る曲率半径)について TFCC 患者(46 名)とボランティア損傷(46 名)につ
き比較検討した.腱内評価,腱鞘内評価は各 3 グループ分けをした.
【結果】ボランティアに比較して,
TFCC 損傷例では,ECU 腱実質,腱周囲への変化を伴っていた.ECU 溝の形態学的な有意な違いは
なかった.
159
Room 2
2-2-1
2-2-4
TFCC 背側部断裂の臨床像と治療成績
Clinical appearance of TFCC dorsal tear
安部 幸雄(済生会下関総合病院 整形外科)
守屋 淳詞
Room 2
TFCC 損傷の分類には従来 palmer 分類が用いられてきたが,手関節鏡手術の発達に伴い様々な損
傷形態が明らかとなってきた.TFCC 背側部断裂もその一つであり,臨床的特徴は手関節尺背側部
の圧痛,回内外時の疼痛,ロッキング様症状,尺骨頭の背側への軽度不安定性,画像診断では MRI
が有効で axial 像にて TFCC 背側の損傷が認識でき,尺骨頭の回外転位を認めることもあった.鏡視
下縫合による成績は良好であった.
2-2-5
64 歳以下の橈骨遠位端骨折における遠位橈尺関節開大と DASH スコアと
の関連
Relationship between DRUJ widening and DASH score in patients sixty-four years of
age and younger with distal radius fracture.
片岡 利行(独立行政法人地域医療機能推進機構 星ヶ丘医療センター 整形外科)
栗山 幸治,上杉 彩子,濱田 雅之
橈骨遠位端骨折における受傷時の遠位橈尺関節の開大や著明な橈骨の短縮は遠位橈尺関節の不安定性
を予測する因子として報告されている。今回我々は 64 歳以下の橈骨遠位端骨折における遠位橈尺関
節開大が術後の DASH スコアにどのような影響を及ぼすか調査した。遠位橈尺関節開大が大きいほ
ど DASH スコアも高値となり、遠位橈尺関節間距離 3mm 以上あるいは ulnar variance +6mm 以上の
群では有意に DASH スコアが高値であった。
2-2-6
TFCC 損傷に対する手術後の痛みについての検討
Investigation of Ulnar side pain after treatment for TFCC injury
富田 一誠(昭和大学江東豊洲病院 整形外科)
池田 純,川崎 恵吉,久保 和俊,稲垣 克記
TFCC 損傷と診断し手術加療した 32 例( 男性 19 例、女性 13 例,平均年齢は 32 歳)の術後の痛みの変
化と部位を調査した。術前 VAS 平均 72.8 が、最終観察時 12.7 へと改善し、その 40.6%は痛みが消失し
た。痛みの部位は、ECU が 6 例、尺骨神経領域のしびれが 2 例、舟状月状骨間靭帯が 2 例、DRUJ が 2
例、手関節全体が 2 例、ポータル部が 2 例、尺骨への縫合 knot 部が 1 例であった。病態を解明し術後
に痛みが消失するよう術前から対処したい。
160
9:40~11:10
シンポジウム 10:末梢神経関連性疼痛(CRPS 含む)
座長:堀内 行雄(川崎市立川崎病院整形外科) 三上 容司(横浜労災病院運動器センター)
2-2-S10-1 採血時の正中神経損傷に対する防止対策の検討
勝見 泰和(宇治武田病院 整形外科)
河合 生馬,岸田 愛子,藤原 浩芳,久保 俊一
採血時の正中神経損傷を回避するために、健康成人 70 名を対象として、超音波エコーにて肘部の皮
静脈と正中神経との位置関係について検討した。正中神経の皮膚からの深さは 3.0mm から 24.4mm で、
右では男 8.5mm 女 8.4mm、左では男 8.5mm 女 8.1mm であった。採血皮静脈と正中神経表層までの距
離が最も近いものは 1.6mm で尺側皮静脈の近傍に正中神経が観察された。皮静脈と正中神経の距離
は、右 18.6mm 左 18.8mm であった。
2-2-S10-2 当院での外来採血時に合併した末梢神経障害患者調査
Nerve Injury Caused by Needle for Blood Sampling in Our Hospital.
佃 幸憲(北海道大学 医学部 整形外科)
船越 忠直,河村 太介,永野 裕介,岩崎 倫政
穿刺や採血による神経障害は訴訟に発展する例もある。平成 17 年 1 月から平成 25 年 12 月の間に当院
で外来採血を施行した患者を対象とし、神経障害の有無を調査した。神経障害と診断された患者は 14
名(全患者数の 0.0015%)、年平均 1.6 名であった。全例 4 か月以内に症状は消失し、訴訟例もなかった。
当院ではトラブルとなる症例はなく、医療安全対策に一定の効果があったと考えられる。
2-2-S10-3 電流知覚閾値による末梢神経障害の病態の検討 ―神経障害性疼痛と侵害
受容性疼痛の比較
Comparison between neuropathic and nociceptive pain using current perception
threshold testing
津田 悦史(自衛隊中央病院 整形外科)
尼子 雅敏,平原 康文,有野 浩司,根本 孝一
電流知覚閾値(CPT)検査を用いて、神経障害性疼痛(神経群)と侵害受容性疼痛(侵害群)患者の CPT
を計測し、比較検討した。神経群は患側の Aβ、Aδ 線維の閾値が有意に上昇しており(p < 0.001)、侵
害群では C 線維の閾値の上昇が特徴的であった。神経群は Aδ 線維を介して鋭い痛みが上行するのに
対して、侵害群は C 線維を介して鈍い痛みが上行し、知覚鈍麻が生じたことが示唆された。
161
Room 2
How to prevent Median Nerve Injury due to Injection Needle
2-2-S10-4 末梢神経手術後の疼痛予後
The prognosis of pain after peripheral nerve surgery
大西 哲朗(名古屋大学 手の外科)
栗本 秀,岩月 克之,山本 美知郎,平田 仁
Room 2
神経障害後の疼痛の経過は詳細な検討がなされておらず、治療を行う際に判断に困る事がある。今回、
神経手術後の疼痛の経過を調査し、神経障害後の疼痛の経過を検討した。上肢の神経の手術を受けた
患者のうち術後 3ヶ月以上 follow up 可能であった 59 例(男性 35 例、女性 24 例)を対象とした。時間経
過とともにほとんどの症例で Pain VAS score は低下していた。
2-2-S10-5 手術治療を要した医原性神経損傷の検討
Surgical Treatment for Iatrogenic Nerve Injury
湯川 昌広(弘前記念病院 整形外科)
藤 哲
手術による神経損傷や神経麻痺を見逃された症例に対する手術治療の成績を検討した。症例は 14 例、
手術時平均年齢 33.4 歳であった。原因は手術操作 10 例、神経断裂の見逃し 3 例、その他 1 例であった。
手術方法は神経移植術 5 例、神経縫合術 4 例、神経剥離術 3 例、筋・腱移行術 2 例だった。神経に対す
る手術を行った 12 例に関しては、他覚的には改善がみられたが、自覚症状が残存または増悪し、満
足度の低い症例が 3 例あった。
2-2-S10-6 指神経障害性疼痛にたいする血管柄付き神経皮膚移植術の効果
Evaluation of pedicled vascularized neuro-cutaneous flap for the treatment of
neuropathic pain following digital nerve injury
稲田 有史(医療法人社団湧水方円会稲田病院)
中村 達雄,諸井 慶七郎,面川 庄平,川西 弘一
指神経損傷に対する血管塀付き神経皮膚移植の開発をおこない、その結果を 10 例の長期観察例から
検討、症例はかぎられるが、非常に有用な外科的根治手段になりえると考えられた。今後、人工神経
との比較が望まれる。
162
12:40~13:40
西新宿セミナー 7
座長:面川 庄平(奈良県立医科大学)
共催:HOYA Technosurgical 株式会社
2-2-LS7
難関橈骨遠位端骨折の治療戦略―関節内骨折から遠位縁部骨折―
関節外骨折には近位設置型の掌側ロッキングプレートを使用し固定することで良好な臨床成績が得ら
れることは議論を待たない.しかし,関節内骨折,特に関節面の多骨片化を認める AO C3 骨折では
治療法が格段に難しくなる.また,遠位縁部の骨折は頻度が極めて少ないが最難関の治療になると考
える.本講演では難関骨折とされる C3 関節内骨折と遠位縁部骨折に対する掌側ロッキングプレート
固定術の治療戦略に関して述べる.
坂野 裕昭(さかの ひろあき)
略歴:
昭和37年生まれ
昭和62年
佐賀医科大学
(現佐賀大学)医学部 医学科 卒業
横浜市立大学医学部整形外科入局
平成元年
平成 6年
横浜市立大学医学部整形外科 助手
平成14年
横須賀北部共済病院 整形外科部長
横浜市立大学医学部 整形外科 非常勤講師
平成21年
平塚共済病院 整形外科部長、手外科センター長
平成22年
横浜市立大学大学院医学研究科運動器病態学 客員教授
平塚共済病院 診療部長
平成27年
163
Room 2
坂野 裕昭(平塚共済病院 整形外科・手外科センター)
13:55~14:55
招待講演 7
座長:落合 直之(キッコーマン総合病院)
2-2-IL7
Design in muscle innervation
Aymeric Lim, MBBS, FRCS (Glas), FAMS
Room 2
(Associate Professor, Department of Orthopaedic Surgery, National University of Singapore, Singapore)
The study of the musculoskeletal structure of the upper limb reveals a number of anatomic principles that
can be applied to any muscle or nerve. These are useful to the surgeon for repair and planning
reconstruction.
The basic functional unit of the upper limb is the muscle compartment. There are 5 basic questions that one
needs to answer about the design of nerves and muscles in the upper limb. The answers that this study
provides are
a) Muscles are modular and are either spindle shaped or trapezoidal.
b) Within the muscle, nerves cross the muscle fibres but do not cross the intra-muscular tendon.
c) The nerve connects to the muscle along the intersection of the muscle and the course of the nerve.
d) Primary nerve branch points are clustered according to muscle groups
e) Multiple compartment muscles have multiple primary nerve branch points
In summary, the basic functional component of the upper limb is the muscle compartment which has one
nerve and one function. These principles can be used to plan targeted reconstruction with minimal
morbidity.
Associate Professor Aymeric Lim was appointed as the Chairman, Medical Board (CMB) of the National
University Hospital on 1 December 2008. As CMB, he oversees the professional leadership in NUH, and
governs the practice of patient care, thereby ensuring an optimal standard of care of medical service within
the institution.
A/Prof Lim completed his medical training at the National University of Singapore in 1990. He obtained his
FRCS (Glasgow) in General Surgery in 1995 and went on to complete his advanced Fellowship training in
Hand surgery in France (Bordeaux and Nancy) in 2000.
A/Prof Lim is a past President of The Singapore Society for Hand Surgery and past Chairman of the Specialist
Training Committee.
He is the Commanding Officer of a SAF Combat Surgical Hospital and is active in humanitarian work.
A/Prof Lim is the Dean of the Healthcare Leadership College, a division of MOH Holdings. It serves
Singapore’s Ministry of Health and its public healthcare institutions in the areas of leadership development,
organizational development, policy perspectives, health system design and innovation.
A/Prof Lim’s research interests include free flaps, nerve and brachial plexus surgery as well as tendon
transfers. His research on the intra-muscular innervation of the muscles of the forearm has led to new clinical
work in the field of tendon transfers, where a single muscle unit was split and used for two separate tendon
transfers. Such techniques are especially useful for patients with severe crush or nerve injuries to the forearm.
In addition, A/Prof Lim has authored numerous research papers in international journals, and co-edited a book
titled “Elective Hand Surgery”.
164
15:10~16:40
パネルディスカッション 2:Kienbock 病の治療
座長:鈴木 克侍(藤田保健衛生大学) 岩崎 倫政(北海道大学整形外科)
2-2-P2-1
高瀬 勝己(東京医科大学 医学部 整形外科)
山本 謙吾
病期が進行した Kienbock 病に対し Graner 変法を施行してきた。今回、術後 5 年以上経過例を詳細に
検討したので報告する。対象は Lichtman 分類 stage 3b および 4 に至った 28 例。男 18 例・女 10 例、手
術時平均年齢 44.9 歳。治療成績は good 20 例・fair 6 例・poor 2 例で満足すべき結果が得られた。術後
変形性関節症性変化は、新たな発生あるいは増強を 28 例全例に認めたが、これらの変化は ADL 動作
に大きな影響を認めなかった。
2-2-P2-2
月状骨救済不能な壮年期キーンベック病に対する腱球置換、舟状大菱形小
菱形骨間関節固定術
Tendon Ball Replacement and Scaphotrapeziotrapezoid Arthrodesis for Advanced
Kienbock’s Disease in Adults of Prime
中尾 悦宏(中日病院 名古屋手外科センター)
中村 蓼吾,篠原 孝明,高橋 明子,浦野 秀樹
キーンベック病で機能障害が強く、月状骨の温存が出来ず、腱球置換、舟状大菱形小菱形骨間関節固
定術を施行した症例の成績をまとめ、有用性を検討した。8 例 8 手、25〜50 歳(平均 37 歳)、全手
stage IIIB、発症から手術まで平均 1.5 年、経過観察は平均 3.8 年であった。疼痛の消失や緩和は全手
で得られ、可動域、握力は改善し、E:4、G:3、F:1 であった。除痛効果に優れ、比較的短期間で
治療可能で、壮年期には推奨できる術式である。
2-2-P2-3
進行期 Kienböck 病に対する橈骨短縮骨切り術の手術成績
Radial shortening osteotomy for advanced Kienböck’s disease
千馬 誠悦(中通総合病院 整形外科)
成田 裕一郎
Lichtman 分類 3a の Kienböck 病に対して橈骨を 3mm 短縮する骨切り術を行ったので,中期成績につ
いて報告する.術後 3 年以上の経過観察できた 14 例 14 手関節を対象とした.手術時の平均年齢は 32
歳であった.橈骨短縮骨切り術により,疼痛は軽減か消失し,手関節可動域と握力の増加する可能性
が高い.X 線所見では月状骨には明らかな改善傾向はみられないが,進行を抑える効果は期待できる.
進行例もあり注意を要する.
165
Room 2
手根骨配列異常をきたした Kienböck 病に対する月状骨摘出後の手根骨間
部分固定術の中・長期術後成績
Long-term follow-up of partial intercarpal arthrodesis after excision of the lunate for
advanced Kienböck disease
2-2-P2-4
進行期キーンベック病に対する関節鏡視下月状骨摘出術
Arthroscopic Resection of Lunate for Advanced Kienbock Disease
吉良 務(奈良県立医科大学 整形外科学教室)
面川 庄平,小野 浩史,村田 景一,田中 康仁
Room 2
Lichtman stage3B 以降のキーンベック病 6 例に対して、関節鏡視下に月状骨摘出術を行った。術後平
均 1 年で、手関節可動域、DASH、PRWE、VAS、Mayo wrist score で有意な改善を認めた。握力、
Radioscaphoid angle は術前後で差を認めず、carpal height ratio は 0.49 から 0.46 に低下した。関節鏡
視下月状骨摘出術は良好な短期成績を示し、進行期キーンベック病に対して有用な治療法といえる。
2-2-P2-5
膠原病に合併したキーンベック病の治療
Treatment of Kienbock’s Disease followed with Connective Tissue Disease
谷口 泰徳(和歌山県立医科大学 整形外科)
下江 隆司,浅井 宣樹,山中 学,吉田 宗人
膠原病に伴ったキーンベック病 7 例 8 手の治療成績について検討した。年齢は 21 歳から 67 歳、全例が
女性。患側は左手 5 例、右手 1 例、両手 1 例。SLE が 3 例 4 手、混合性結合組織病が 2 例 2 手、強皮症
およびシェーグレン症候群が各々1 例 1 手であった。掌背屈可動域と握力は初診時より追跡調査時に
改善していた。CHR は追跡調査時低下していた。保存的治療、腱球置換術とも手根骨圧潰の進行を
認めたが、臨床成績はほぼ満足できる結果が得られた。
2-2-P2-6
Kienbock 病に対するセラミック人工月状骨置換術の有用性
Efficacy of Ceramic Lunate Implants for Kienbock’s Disease
鈴木 克侍(藤田保健衛生大学 医学部 整形外科)
志津 香苗,西尾 真,辻村 俊造
【目的】Kienbock 病に対するセラミック人工月状骨置換術の長期成績を検討した.【対象と方法】1989
〜2004 年に stage 3 の本病に対して本法を行い 10 年以上調査し得た 19 例(男 15 例,女 4 例),手術時年
齢平均 38 歳(19〜72 歳)を対象とした.【結果】最終調査時期は平均 164 か月(122〜252 か月),全例術
前の労働に復帰,疼痛は全例消失,握力は 45% から 81%,Cooney の評価は 48 点から 79 点へ有意に改
善した.【結語】本法は有用であった.
166
16:50~17:44
一般演題 28:TFCC(治療)
座長:森友 寿夫(大阪行岡医療大学)
2-2-7
TFCC 変性損傷に対する尺骨短縮術の効果:手関節鏡による検討
中村 俊康(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター)
西脇 正夫,別所 裕貴,福岡 昌利,齋藤 毅
尺骨短縮術による TFCC の変性の変化を初回手術時と抜釘時の関節鏡所見で検証した。対象は TFCC
の変性所見を認めた 276 例 282 手で、抜釘時に変性の改善を認めたのは 115 手(41%)で、2C 以上の
perforation が修復されていたのは 76 手中 55 手(73%)であった。DRUJ 鏡で TFC 近位面の変性を認め
た 266 手中 250 手(94%)で改善が得られた。
2-2-8
TFCC 小窩部断裂例に小窩部縫着に加えて尺骨短縮術の併用は必要か
Fovea suture for TFCC fovea rupture whether or not shortening ulna
普天間 朝上(琉球大学 医学部 整形外科)
金城 政樹,堀切 健士,大久保 宏貴,金谷 文則
TFCC 小窩部断裂例に尺骨突き上げ症候群合併例には TFCC 小窩部縫合に加えて尺骨短縮術を併用し
た。症例は 49 肢、手術時平均年齢 31.8 歳、術後平均経過観察期間 22.6ヵ月であった。UV にかかわら
ず尺骨短縮術併用群では疼痛は軽快または消失した。UV2mm 未満尺骨短縮術無群の 17 肢中 6 肢に疼
痛が残存し、5 肢は UV0mm 以下であるが尺骨突き上げ症候群合併があり尺骨短縮術を併用した方が
良いと思われた。
2-2-9
演題取り下げ
2-2-10
TFCC 損傷に対し TFCC 縫合術を行った症例の検討 ―直視下および鏡視
下縫合術の比較―
Treatment for TFCC injury -comparing arthroscopic repair with open repair富永 明子(JCHO大阪病院)
轉法輪 光,島田 幸造
当院にて TFCC 縫合術を行った 14 例を調査し、直視下手術 9 例、鏡視下手術 5 例で術後可動域、疼痛、
合併症を比較した。疼痛が残存した原因として尺骨神経背側枝損傷による CRPS、尺骨突き上げ症候
群の顕在化、縫合糸の位置不良が考えられた。可動域や合併症の点では鏡視下手術がやや優れていた。
術後に尺骨突き上げ症候群が顕在化する例があり、術前の評価を注意深く行う必要があると考えられ
た。
167
Room 2
Ulnar shortening for degeneration of the TFCC: arthroscopic evaluation
2-2-11
TFCC 損傷に対する鏡視下縫合術の治療成績
Results of arthroscopic repair for TFCC tears
藤原 浩芳(京都府立医科大学大学院医学研究科 運動器機能再生外科学)
小田 良,浅田 麻樹,奥田 良樹,久保 俊一
Room 2
32 例の TFCC 損傷に対し、鏡視下関節包縫合術と鏡視下経尺骨縫合術の術後成績を比較検討した。
経尺骨縫合術は TFCC を尺骨小窩に解剖学的に縫着できる利点があるが、術式がやや煩雑で関節包縫
合術に比べると侵襲が大きい。三角靭帯損傷を伴い、DRUJ の不安定性の強い症例には経尺骨縫合術
が適応となり、辺縁断裂のみの症例や、三角靭帯損傷を伴っていても DRUJ の不安定性が大きくない
症例には関節包縫合術が適応になると考えた。
2-2-12
遠位橈尺関節不安定症に対する掌側橈尺靭帯再建術
Palmar Reconstruction of the Triangular Fibrocartilage Complex for Static Instability
of the Distal Radioulnar Joint
有光 小百合(行岡病院 手の外科センター)
森友 寿夫,久保 伸之,正富 隆,行岡 正雄
高度背側 DRUJ 不安定性を伴う TFCC 損傷に対し、長掌筋腱を用いた掌側橈尺靭帯再建術を考案し 7
例に施行した。外傷歴があったのは 6 例、尺骨変異は平均 +2.1mm であった。尺骨変異陽性または尺
骨つきあげ症状があった 5 例には短縮骨切り術も併用した。術後全例で DRUJ 不安定性・尺側部痛は
消失した。Adams-Berger 法など他の手術法と比べ小侵襲で除痛と DRUJ 安定化効果に優れた方法と
考えられた。
168
第 3 会場(Room 3)
8:00~8:36
一般演題 29:手舟状骨骨折
座長:田中 寿一(兵庫医科大学整形外科)
2-3-1
舟状骨の CAST 内動態から見た舟状骨骨折に最適な CAST 固定法
In Vivo Three-Dimensional Kinematics of Scaphoid in Cast Immobilization
川西 洋平(大阪大学大学院 整形外科)
岡 久仁洋,信貴 厚生,大浦 圭一郎,村瀬 剛
2-3-2
単純 X 線による手舟状骨 humpback deformity の評価
Evaluation of humpback deformity of scaphoid fracture on plain X-ray
黒沢 一也(日高病院整形外科)
佐野 浩志,永井 彩子,高岸 憲二
単純 X 線による手舟状骨 humpback 判定につき評価を行った。手舟状骨骨折 19 例を対象とし 45 度斜
位の reverse PA oblique view による X 線と reconstruction CT(RCT)による sagittal 像を撮影。X 線
と RCT から dorsal cortical angle(CDA)と height-to-length ration(H-L ratio)を計測し X 線と CT 計
測値の相関をピアソンの相関係数検定で分析した。DCA は極めて強い相関を認め、H-L ratio も強い
相関を認めた。本撮影法は humpback 評価に適している。
2-3-3
舟状骨骨折に対する intraoperative 3DCT navigation の有用性―ナビゲ
ーション手技と透視下手技との比較検討―
The verification of the effects of intraoperative three dimentional navigation for
scaphoid fractures. -Comparison with the flouroscopic method鈴木 啓介(淀川キリスト教病院 整形外科)
金城 養典,福田 誠,日高 典昭,高松 聖仁
舟状骨骨折に対して CT ナビゲーション下に小切開螺子挿入を行った 10 例について,従来の透視下挿
入法 21 例と,螺子設置位置の精度について比較検討を行った.CT ナビゲーション法は舟状骨冠状断
において理想軸との偏位角が小さく,螺子の関節内への逸脱は認めなかった.CT ナビゲーション下
螺子挿入法は舟状骨へのより適切な設置位置と正確な螺子長の決定が可能となる有用な方法である.
169
Room 3
最適な舟状骨骨折のギプス固定法には議論の余地がある。そこで、正常手関節を用いて、Cast 着用下
の前腕回旋時と母指対立動作時の舟状骨の位置を三次元的に計測した。結果、前腕回旋時、母指対立
動作時ともに、舟状骨に有意な動きは認めなかった。これまでに、Colles cast でも良好な治療成績が
得られることが報告されているが、今回の解析結果は、これを裏付けるものであったと考える。
2-3-4
月状骨形態が舟状骨偽関節における DISI 発生率に与える影響
Association between lunate morphology and incidence rate of DISI deformity in
scaphoid nonunion
久能 隼人(埼玉成恵会病院 埼玉手外科研究所)
福本 恵三,加藤 直樹,小平 聡,小林 大輝
1990 年 Viegas は月状骨遠位関節面の形態を有頭骨のみと関節面をもつ type1,有頭骨に加え有鉤骨と
の関節面(medial hamate facet)をもつ type2 に分類した.その後 Hamate facet が有鉤骨近位関節症に
関与するという報告や type2 では舟状骨偽関節や舟状月状骨間解離で DISI を生じ難いとの報告もなさ
れている.今回当施設での舟状骨偽関節症例に対して後ろ向き観察研究を行い月状骨形態と DISI 発
生率に関し統計学的解析を行ったので報告する.
Room 3
8:36~9:12
一般演題 30:手舟状骨骨折偽関節
座長:和田 卓郎(北海道済生会小樽病院)
2-3-5
舟状骨偽関節に対するエンダーフックプレートを用いた治療成績
Results of scaphoid nonunion with Ender hook plate
松木 寛之(抱生会 丸の内病院 整形外科)
中土 幸男
舟状骨偽関節に対して,遊離腸骨移植とエンダーフックプレートを用いた固定術を行ってきたのでそ
れらの治療成績を評価した.対象は 13 例 13 手,男性 10 例女性 3 例,手術時平均年齢は 27.3 歳,術後
平均経過観察期間は 11ヵ月,骨折部位は腰部が 11 手,近位部が 2 手であった.骨癒合は全例で認め,
骨癒合期間は平均 16.4 週,Mayo wrist score は術後平均 93.8 点と良好な治療成績が得られた.
2-3-6
遠位スクリュー挿入孔を利用した経皮的舟状骨偽関節手術
Percutaneous fixation of scaphoid nonunion with curettage and bone grafting through
the distal insertion hole of the double threaded screw
太田 壮一(京都大学 医学部 整形外科)
池口 良輔,貝澤 幸俊,織田 宏基,松田 秀一
舟状骨嚢腫型偽関節に対して、遠位スクリュー挿入孔を利用した経皮的偽関節手術を 6 例 6 手関節に
行った。舟状骨遠位より嚢腫へと至る骨孔を作成後、嚢腫内を掻爬し、一部の症例には骨生検針を用
いて採取した移植骨を嚢腫内に充填した。その後、アキュトラック 2 ミニスクリューを挿入し、良好
な成績が得られた。遠位スクリュー挿入孔を利用した掻爬、骨移植は嚢胞型偽関節に対する最小侵襲
手術の一選択肢となりうる。
170
2-3-7
舟状骨偽関節に対する Zaidemberg 法の治療成績と問題点
Clinical result and problem of Zaidemberg procedure for scaphoid nonunion
高山 拓人(笛吹中央病院整形外科)
片桐 佳樹,真島 敬介
舟状骨骨折偽関節に対する 1,2-ICSRA を血管茎とした血管柄付き骨移植術(Zaidemberg 法)の治療成
績と問題点を報告する。おおむね成績は良好であったが、大きな骨欠損例、DISI 変形の残存、再偽
関節、内固定の方法と固定性などが検討を要する問題点であった。
2-3-8
術後の再発舟状骨偽関節に対する有茎血管柄付き骨移植術の治療成績
Treatment of pedicled vascularized bone graft for refractory scaphoid nonunion after
operation of scaphoid
今回の我々は、既往の舟状骨手術後の再発舟状骨偽関節例に対する有茎の血管柄付き骨移植術の有用
性を、retrospective に調査した。再手術群 15 手と、初回手術群 73 手を比較検討した。骨癒合と
Cooney score は、有意差はなく良好であったが、やや R 群が不良であった。Screw の温存が可能な症
例に、血管柄付きの移植骨片を inlay graft として設置すると、良好な治療成績が得られた。
171
Room 3
川崎 恵吉(昭和大学横浜市北部病院 整形外科)
稲垣 克記,富田 一誠,池田 純,上野 幸夫
9:40~11:10
パネルディスカッション 3:橈骨遠位端骨折 1
座長:稲垣 克記(昭和大学医学部整形外科) 今谷 潤也(岡山済生会総合病院整形外科)
2-3-P3-1
橈骨遠位端関節内骨折に対する掌側ロッキングプレート固定術の術後成績:
1row と 2row プレート固定術の後ろ向き比較研究
Comparative retrospective study of clinical results of volar locking plating for unstable
distal radius fractureds: 1row vs. 2row plate
坂野 裕昭(平塚共済病院 整形外科・手外科センター)
勝村 哲,岡崎 敦,竹元 暁,齋藤 知行
Room 3
橈骨遠位端骨折に対する 2row 掌側ロッキングプレートの有用性評価のため 1row プレートと比較検討
した.1 row plate(1 群)と 2 row plate(2 群)を使用した 86 例を対象とした.両プレートとも良好な臨
床成績が得られたが,関節面の整復位は 2 row プレートにおいて有意に保持された.関節内骨折に対
しては長期的な関節症発症予防の観点から 2 row プレートの使用が推奨される
2-3-P3-2
Polyaxial locking plate による橈骨遠位端骨折の治療成績
Clinical results of polyaxial locking plate fixation for treatment of distal radius
fractures.
石井 英樹(JCHO 佐賀中部病院 整形外科)
角田 憲治,浅見 昭彦,園畑 素樹
掌側ロッキングプレートによる橈骨遠位端骨折の治療は良好な成績が報告されている。著者らがこれ
まで polyaxial locking plate(PLP)治療を行った橈骨遠位端骨折 128 手の治療成績を報告する。臨床成
績並びに X 線学的評価も良好であったが、13 手に正中神経障害を合併し、遠位ロッキングスクリュー
の弛みに伴う矯正損失例を経験した。PLP はロッキング機構の脆弱性が問題となり、注意が必要であ
る。
2-3-P3-3
早期創外固定法による橈骨遠位端骨折の治療成績
Early External Fixation for Fresh Fracture of Distal End of Radius
西川 真史(にしかわ整形外科・手の外科クリニック)
上里 涼子,佐々木 規博,石橋 恭之
当施設では新鮮橈骨遠位端骨折症例に対して早期に Bridge type 創外固定器で治療を行なっている。
症例は 52 例、52 手。骨折型は AO 分類で A2:2、A3:5、B1:1、C1:23、C2:19、C3:2、受傷か
ら手術までの期間は平均 0.6 日、手術時間は平均 16.1 分(11-25 分)であった。日手会橈骨遠位端骨折の
治療成績判定基準での評価で Excellnt:43、Good:9、Fair:0、Poor:0 であった。
172
2-3-P3-4
橈骨遠位端関節内骨折における鏡視下整復術の術後成績
Arthroscopic reduction and internal fixation for intraarticular fracture of the distal
radius
坂本 相哲(小郡第一総合病院 整形外科)
土井 一輝,服部 泰典,下江 隆司
橈骨遠位端関節内骨折の治療で関節内骨片の正確な整復は変形性関節症を予防するうえで重要であ
る。当科では鏡視下整復固定術を行っており、その術後成績について報告する。2007〜13 に鏡視下整
復固定術を行い術後 1 年以上の経過観察が可能であった 51 例を対象とした。臨床成績は Mayo wrist
score、DASH で、OA は Knirk 分類で評価した。術後成績は概ね良好であった。関節内骨片の正確な
整復は OA への進行を最小限に止めていると推察した。
2-3-P3-5
森田 晃造(国際親善総合病院整形外科)
大橋 麻依子,越智 健介,堀内 行雄
掌側転位型橈骨遠位端関節内骨折に対し,polyaxial locking plate を用いて観血的固定を施行した 23
例の治療成績を検討した。X 線評価では術後平均で橈側傾斜 21.4°,掌側傾斜 12.4°,尺骨バリアンス
0.5mm であり矯正損失もごくわずかで良好に整復位が維持された。掌側転位した骨片が小さい骨折に
対しては骨片支持のため、より遠位にプレート設置が必要となる場合があり、スクリューの挿入に自
由度のある PLP が有用であると考えられた。
2-3-P3-6
橈骨遠位端関節内骨折に対する intraoperative 3DCT navigation の有用
性 ―透視下手術との比較検討―
The application of intraoperative three dimentional navigation for complex intraarticular fractures of the distal radius. -Radiological comparison between free hand
and a 3D-based navigation techniques金城 養典(清恵会病院手外科マイクロサージャリーセンター)
高松 聖仁,鈴木 啓介,福田 誠,日高 典昭
橈骨遠位端関節内骨折に対するナビゲーションの有用性を透視下手技と比較しその効果を検証した.
対象はナビゲーション下に VLP 固定を行った 11 例(N 群)で,透視下手技の 11 例(F 群)を対照とした.
N 群では術後の矯正位損失が有意に少なく,F 群では遠位螺子の関節内穿破が観察された.DRF に対
するナビゲーションの利用は,より安全で確実な手技を可能にすると考えられた.
173
Room 3
掌側転位型橈骨遠位端関節内骨折に対する polyaxial locking plate 固定
術の治療成績
Polyaxial Locking Plating for Volarly Displaced Intra-articular Fractures of the Distal
Radius
11:20~12:05
一般演題 31:橈骨遠位端骨折(変形)
座長:加地 良雄(香川大学整形外科)
2-3-9
橈骨遠位端骨折の背屈角度変形に関連する因子の同定
Search for factors deciding volar/dorsal angulation of distal radius fractures
田辺 勝久(西宮市立中央病院 整形外科)
橈骨遠位端骨折では、背屈変形の有無によって、関節内骨折パターンや Step-off 形成の位置に差があ
ることを、我々は報告している。187 例の橈骨遠位端骨折を対象として、掌背屈角度変形を左右する
因子を探した。年齢、男女、受傷肢の左右、骨端線の有無に関係なく、背屈変形の割合は一定してい
た。
Room 3
2-3-10
橈骨遠位端骨折の掌屈変形が遠位橈尺関節のキネマティクスに与える影響
Distal Radioulnar Joint Kinematics in Simulated Volarly Angulated Distal Radius
Fractures
西脇 正夫(川崎市立川崎病院 整形外科)
別所 祐貴,堀内 行雄,ジェイムス ジョンソン,グラハム キング
新鮮上腕切断 8 上肢を用い,橈骨遠位端骨折の掌屈変形 0°,10°
,20°が前腕自動回外運動中に DRUJ
のキネマティクスに与える影響を 3 次元的に評価した.その結果,10°の橈骨掌屈変形でも DRUJ の
キネマティクスは正常時から変化し,20°掌屈変形ではその変化はさらに増大した.TFCC 損傷を合
併すると変形治癒によるキネマティクスの変化はさらに増大した.
2-3-11
前腕回旋制限を呈する橈骨遠位端変形治癒骨折の 3 次元的解析
3-Dimensional Analysis of Malunited Distal Radius Fracture with Limitation of
Forearm Rotation
阿部 真悟(大阪大学大学院 器官制御外科学(整形外科))
岡 久仁洋,大浦 圭一郎,川西 洋平,村瀬 剛
前腕回旋制限を呈する橈骨遠位端変形治癒骨折にたいして CT 撮影し 3 次元骨モデルを作成し変形の
評価と前腕回旋の動態解析を施行した.掌背屈方向の変形は背屈変形 7 例,掌屈変形 3 例で,回旋方
向の変形は回内変形 8 例,回外変形 2 例であった.背屈変形は回内制限をきたし掌屈変形と回内変形
は回外制限と関連性があった.さらに回旋軸の変位,橈尺骨間のインピンジメント,遠位橈尺靭帯が
回旋制限の一因となることが示唆された.
174
2-3-12
橈骨遠位端骨折後変形治癒に対する簡便・低侵襲な矯正骨切り術を目指して
Simple corrective osteotomy of distal radius malunions
近藤 研司(徳島県鳴門病院 整形外科)
日比野 直仁,浜田 佳孝
著者らは橈骨遠位端骨折背屈変形治癒後の,簡便で低侵襲な矯正骨切り術を検討し,ulnar variance
4mm 以下は橈骨の骨切りのみで,これ以上は,まず尺骨短縮を行い,尺骨に合わせて術中の回旋可
動域を重視して橈骨も骨切りし,掌側ロッキングプレート固定後に人工骨補填を行ってきた.21 例症
例(平均年齢 62 歳)の 6 か月以上の短期成績は比較的良好で術前計画も簡便で,手術時間も平均 72(40
〜120)分で,5 例を除き伝達麻酔で施行できた.
2-3-13
橈骨遠位端骨折変形治癒後の手根配列異常に対する矯正骨切り術の効果
Effect of Corrective Osteotomy in Malunited Distal Radius on Carpal Malalignment
橈骨遠位端骨折変形治癒 10 例に対する矯正骨切り術の治療効果を検討した。手術は open wedge
osteotomy 8 例、closed wedge osteotomy 2 例で、全例掌側ロッキングプレートで固定した。平均 1 年 7
ヵ月の経過で、Mayo score平均87.0、quickDASH平均3.0と良好で、手根配列異常
(effective radiolunate
flexion)も、長期経過例と背屈変形が高度な radio-carpal malalignment 例を除き、術前 12.8 →最終 4.1
と良好な矯正効果を認めた。
175
Room 3
角 光宏(貞松病院 整形外科)
本田 祐造,田中 奈津美
12:40~13:40
西新宿セミナー 8
座長:田崎憲一(荻窪病院)
共催:ミズホ株式会社
2-3-LS8-1 次世代橈骨遠位端ハイブリットロッキングプレートが目指す治療戦略
長田 伝重(獨協医科大学日光医療センター 整形外科)
河野 茂
Room 3
橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレートとして、遠位列ロッキングホールを単軸性ロッキン
グ機構、遠位 2 列目を多軸性ロッキング機構とする DSS 法の可能なハイブリッドロッキングプレート、
HYBRIX Ⓡ(ミズホ)が開発された。HYBRIX Ⓡは近位設置型の 3 次元形状プレートで、短軸性プレート
と多軸性プレート双方の利点を有している。本プレートの開発経緯、特徴、有用性について解説する。
長田 伝重(おさだ でんじゅう)
略歴:
1959年4月21日 山梨県生まれ
山梨県立吉田高等学校卒業
1978年3月
獨協医科大学医学部卒業
1985年3月
獨協医科大学整形外科学教室入局
1985年5月
新潟手の外科研究所、国内留学
1993年5月
獨協医科大学整形外科学講師
1995年4月
米国留学
2000年~2001年
The University of Texas Medical Branch, Hand Surgeryおよび
Cristine M. Kleinert Institute for Hand and Micro Surgery
獨協医科大学整形外科学准教授
2005年1月
獨協医科大学整形外科学教授
2012年2月
獨協医科大学日光医療センター整形外科教授
2012年4月
現在に至る
◦学会、研究会役職
日本手外科学会 代議員、日本肘関節学会 評議員、日本骨折治療学会 評議員、日本運動器学会 評議員、国際
手外科連合 会員、国際整形災害外科学会 会員、東日本整形災害外科学会 評議員、東日本手外科研究会 運営
委員、栃木県整形外科医会 理事、栃木骨折研究会 幹事、栃木上肢の外科研究会 世話人代表、日本手関節外
科ワークショップ 世話人
◦委員会
Journal of Orthopaedic Science編集委員会 委員
Hand Surgery 編集委員会 委員
◦専門医等
日本整形外科学会 専門医
日本手外科学会 手外科専門医
176
2-3-LS8-2 ハイブリッド橈骨遠位端ロッキングプレート「HYBRIX」の臨床における有
用性
河野 茂(京都武田病院 整形外科)
橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレートとして、世界初のハイブリッドプレートである
HYBRIX Ⓡ(ミズホ)を開発した。HYBRIX Ⓡは症例により最遠位列のみの単軸性ロッキングプレート
としての使用が可能であり、また遠位 2 列目を用いた単・多軸性ロッキングプレートとして DSS 法を
施行することも可能である。実際の臨床使用例において有用性を解説する。
河野 茂(かわの しげる)
略歴:
平成 7年4月
平成 9年3月
平成11年4月
平成13年7月
平成19年7月
平成20年1月
平成26年4月
平成27年1月
兵庫県神戸市生まれ
京都府立医科大学医学部卒業
京都府立医科大学整形外科学教室入局
京都府立医科大学大学院入学
神戸大学医学部解剖学教室国内留学
京都大学医学部解剖学教室国内留学
京都府立医科大学大学院卒業
明石市立市民病院 整形外科 医長
西陣健康会堀川病院 整形外科 部長
京都府立医科大学 整形外科 講師
社会保険京都病院 整形外科 部長
同 リハビリテーション科部長
京都府立医科大学臨床准教授
京都鞍馬口医療センター 整形外科 部長
同 リハビリテーション科部長
京都武田病院整形外科部長
現在に至る
Room 3
昭和38年8月5日
平成 2年3月
平成 2年5月
平成 5年4月
177
13:55~14:58
一般演題 32:橈骨遠位端骨折(Locking Plate)
座長:吉川 泰弘(駒沢病院)
2-3-14
当院における MODE Distal Radius Plate の治療成績
Clinical Result of MODE Distal Radius Plate for distal radius fracture
石倉 久光(函館中央病院 整形外科)
平山 拓也,岩崎 倫政
Room 3
当院における橈骨遠位端骨折に対して MODE Distal Radius Plate での治療成績を検討したので報告
する。対象は 19 例 19 手、男性 6 例、女性 13 例 平均年齢 62.7 歳であった。平均経過観察期間は平均
7.7 カ月であった。評価項目は、臨床成績評価と X 線、CT 評価を行った。今回の成績は、諸家による
報告を見てもおおむね良好といえる。本プレートは、橈骨遠位端骨折に治療に有用なプレートの一つ
といえるであろう。
2-3-15
DVR 掌側ロッキングプレートを用いた橈骨遠位端骨折の治療成績
Clinical results of DVR anatomic plate system for distal radius fractures.
友利 裕二(日本医科大学大学院医学研究科整形外科学分野)
澤泉 卓哉,南野 光彦,小寺 訓江,高井 信朗
DVR プレートで内固定した橈骨遠位端骨折 24 手(AO 分類 A 型:6 手(A 群)、C 型:18 手(C 群))の治
療成績について報告する。Mayo スコア(Excellent(E), Good(G), Satisfactory(S), Poor(P))は A 群平
均 83 で E:1、G:4、S:1、C 群は平均 80 で E:2、G:12、S:3、P:1 であった。DRUJ に起因した
術後疼痛を訴える症例が散見され成績不良の原因となっていた。すべての症例で良好な成績を得るた
めには TFCC 損傷の評価および治療が重要と考えられた。
2-3-16
Stellar 2 プレートを用いた橈骨遠位端骨折治療の術後 CT による遠位スク
リューの評価
Evaluation of Distal Locking Screw Following Fixation of Stellar 2 Plate for Distal
Radius Fracture using Computed Tomography
瀧上 秀威(国立病院機構 横浜医療センター 整形外科)
伊藤 りえ,日塔 寛昇,坂野 裕昭,斎藤 知行
橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート固定術に Stellar 2 プレート(M)を用い,術後合併症
の一つである伸筋腱損傷の原因となる遠位スクリュー先端の向かう方向,背側骨皮質の穿通の有無を
術後 CT にて評価した.その結果,遠位 2 列の尺側 2 本のスクリューは第 3,4 区画へ向かう可能性が
極めて高かったが,イメージ側面像で Lister 結節の陰影を除した像を想定することでその突出を最小
限に抑えることができた.
178
2-3-17
橈骨遠位端骨折における Acu︲Loc2®Distal plate 及び Acu︲Loc2®
Proximal plate のプレート設置位置及び遠位部スクリュー位置の検討
Evaluation of the Plate and Screw Position of Acu-Loc2®Distal Plate and AcuLoc2®Proximal Plate for the Distal Radius Fracuture
前田 和茂(岡山済生会総合病院 整形外科)
今谷 潤也,森谷 史朗,桐田 由季子,近藤 秀則
Acu-Loc の改良型機種である Acu-Loc2D 及び Acu-Loc2P のプレート設置位置と遠位部スクリュー挿
入位置を検討した.Acu-Loc2D の掌側突出は Acu-Loc と比較 FPL の走行位置ではより小さく low
profile で Acu-Loc2P はさらに掌側突出が小さかった.遠位スクリューの距離は Acu-Loc2D で最も小
さくなっていた.いずれのプレートも FPL 損傷の危険性を漸減でき安定した固定性が期待できると
考えられた.
AO type A3 の橈骨遠位端関節外骨折に対する DVR プレートを用いた治療 ―遠位部ロッキングペグの必要本数について―
The treatment of extra-articular distal radius fracture with DVR.
本間 龍介(山形大学 医学部 整形外科)
石垣 大介,佐竹 寛史,長沼 靖,高木 理彰
背側転位型橈骨遠位端関節外骨折に対して、DVR の遠位部近位列にのみ 3 本もしくは 4 本のペグを挿
入して固定した 39 例を調査した。術後 1 週から 12 週にかけて radial inclination、volar tilt、ulnar
variance において矯正損失を認めず、手関節可動域と握力の改善を認めた。比較的単純な関節外骨折
の場合、必ずしも全てのロッキングホールにペグを挿入する必要はないと考えられた。
2-3-19
橈骨遠位端骨折に polyaxial locking plate を使用した術後の矯正損失;
異なる locking plate
(APTUS2.5、Matrix Smart Lock)の比較
Loss of correction after polyaxial locking plate fixation for distal radius fracture;
comparison between two different locking plates (APTUS 2.5 vs Matrix Smart Lock)
清水 あゆ子(東海大学 医学部付属 大磯病院 整形外科)
池田 全良,小林 由香,齋藤 育雄,石井 崇之
橈骨遠位端骨折に polyaxial locking plate である APTUS2.5 と Matrix Smart Lock の 2 種類を用い術直
後と術後 12 か月後の矯正損失を評価した。結果は両群間に有意差を認めず両群とも良好な固定性が
得られていた。固定性不良例は遠位 screw 刺入部の骨折の粉砕が高度な場合、掌側関節縁の骨片が小
さく plate で整復できない場合、骨粗鬆症の骨質のため橈骨茎状突起の橈側転位あるいは背側骨片の
背屈転位を充分に整復できない場合等であった。
179
Room 3
2-3-18
2-3-20
橈骨遠位端骨折に対する掌側プレート固定術後の掌側亜脱臼 — volar
lunate facet fragment 固定の重要性
Palmar Subluxation after palmar locking plate for distal radius fractures - Importance
of support of volar lunate facet fragment of distal radius 川崎 恵吉(昭和大学横浜市北部病院 整形外科)
稲垣 克記,Joerg Gruenert,Hermann Krimmer,Christoph Pezzei
Harness は、掌側転位型橈骨遠位端骨折に対する掌側プレート固定後に亜脱臼した症例について報告
したが、同様に再転位した我々の 14 例の中には、背側転位型の症例もあり、これらも掌側への亜脱
臼を認めた。1 例は合計 3 回のプレート固定術(創外固定追加)が行われたにもかかわらず、亜脱臼を
繰り返した。術後の再転位・亜脱臼の予防には、掌尺側骨片の整復と保持が重要で、必要なら一時的
に関節固定も有用と思われた。
Room 3
15:05~16:08
一般演題 33:橈骨遠位端骨折(Locking Plate/Nail)
座長:森田 晃造(国際親善総合病院)
2-3-21
骨脆弱性橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート固定術の治療成績
Volar Locking Plate Fixation for the Fragilyty Fructure of Distal Radius
小橋 裕明(大津市民病院 整形外科)
藤原 浩芳,河合 生馬,奥田 良樹
骨脆弱性橈骨遠位端骨折に対し,掌側ロッキングプレート固定術を行った女性における手術成績を遠
位設置型プレート群(A 群)と近位設置型プレート群(D 群)で比較検討した.症例は 61 例,全例女性.
平均 70.8 歳であり,経過観察期間は平均 8.7 か月であった.X 線計測は,強制損失はわずかで,A 群 1
例に長母指屈筋腱皮下断裂を認めたが D 群では認めなかった.近位設置型プレートは矯正損失を少な
くし屈筋腱障害を防止し得ると考える.
2-3-22
橈骨遠位端骨折治療における 2 種類の掌側ロッキングプレートの比較
Comparison of two different volar locking plates in treating distal radius fracture
菅原 留奈(東京大学医学部附属病院整形外科)
徳山 直人,宮本 英明,三浦 俊樹,森崎 裕
術後 6ヶ月経過観察が可能であった橈骨遠位端骨折 28 例に対し、2 種の掌側ロッキングプレート固定に
おける治療成績を比較した。A 群 13 例
(女性 8 例、男性 5 例:平均年齢 61.7 歳)
、D 群 15 例
(女性 11 例、男
性 4 例:平均年齢 58.7 歳)の術後機能評価(関節可動域、握力)と X 線評価(volar tilt、radial inclination、
radial height)を比較した。最終経過観察時の関節可動域、握力および X 線評価では両群で有意差は
なかった。
180
2-3-23
橈骨遠位端骨折における棚掛けスクリューを用いた掌側ロッキングプレー
ト固定の検討―有限要素法の観点から―
Finite element analysis for the stress distribution in the locking plating by shelf screw
in distal radius fractures
泉山 公(聖マリアンナ医科大学整形外科学講座)
別府 諸兄,清水 弘之,内藤 利仁,田中 雅尋
われわれは、橈側から掌側ロッキングプレートのロッキングスクリューに梁となるように横走するス
クリューを挿入する方法(以下棚掛け法)を考案した.橈骨遠位部の 3DCT 関節内骨折モデルを用い応
力分布を有限要素法で視覚化し掌側ロッキングプレート単独固定法と比較検討した.掌側ロッキング
プレート単独固定法より棚掛け法において棚掛けスクリューにより遠位ロッキングスクリューの応力
は低く荷重伝播能力に有意に優れていた.
plate edge leverage 法による橈骨遠位端骨折の治療成績
Clinical results of volar locking plate fixation using plate edge leverage method for
distal radius fracture
鈴木 康一(慶仁会 川崎病院 整形外科)
川崎 由美子,稗田 寛
橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート固定はスタンダードな治療法だが,解剖学的整復位
を得ることは必ずしも容易ではない.今回我々は整復前にプレートを骨幹端部に設置し,設置したプ
レートを梃子の支点として利用し遠位骨片を整復する plate edge leverage 法(PEL 法)を考案した.当
科で手術した橈骨遠位端関節外骨折 24 例を検討したが,最終経過観察時まで良好な整復位を保てて
おり,また臨床成績も良好であった.
2-3-25
橈骨遠位端掌屈転位型骨折におけるプレート設置位置の検討(model
bone での検討)
Examination of Plate Location at Volar Displacement Type Distal Radius Fracture.
(Examination in Model Bone)
古川 雄樹(健和会大手町病院 整形外科)
酒井 和裕,杉田 健,宮地 有理
橈骨遠位端掌屈転位型骨折は一般的にプレートを利用して骨折部を整復することが多い。その際、整
復前と整復後ではプレートの位置が変化する。今回我々は骨折モデルを作成し、骨折整復を再現した。
骨折部の整復に伴いプレートと骨折部遠位の位置関係は変化し、プレート遠位の設置位置が変化し
た。この変化はプレートの種類及び骨折部の転位の程度により変わることが分かった。
181
Room 3
2-3-24
2-3-26
橈骨遠位端関節外骨折に対する手術治療成績 ―髄内釘と掌側ロッキング
プレートの比較研究―
Comparative study of intramedullary nail and volar locking plate fixation for extraarticular distal radius fractures
川端 確(東住吉森本病院 整形外科)
佐々木 康介,寺浦 英俊
橈骨遠位端関節外骨折に対する髄内釘 15 例と掌側ロッキングプレート 17 例の治療成績を比較検討し
た。術後 3 か月時、6 か月時の握力と関節可動域、最終観察時の Mayo wrist score、術直後と最終観
察時のレントゲン各パラメーターを検討したが、2 群間に統計学的有意差を認めなかった。現在、橈
骨遠位端関節外骨折に対する手術治療として掌側ロッキングプレートが選択されることが多いが髄内
釘も選択肢となる。
Room 3
2-3-27
橈骨遠位端骨折に対する髄内釘~MICRONAIL の治療成績
Treatment of disatal radius fracture by intramedullary nail
筒井 美緒(新須磨病院 整形外科)
黒田 司,国分 毅
橈骨遠位端骨折に対し髄内釘による治療を行い、3 カ月以上経過観察できた 102 例について検討した。
骨折型は AO 分類 A3 66 例 C1 8 例 C2 28 例。受傷時年齢は平均 67 歳、経過観察期間は平均 2 年 6 カ月
であった。X 線上の矯正損失、関節可動域、握力健側比、臨床成績、合併症につき検討した。髄内釘
による橈骨遠位端骨折の治療成績は概ね良好であり、合併症として橈骨神経皮枝領域のしびれを 9 例
に認めたが全例回復した。
182
16:20~17:50
パネルディスカッション 4:橈骨遠位端骨折 2
座長:渡邉 健太郎(名古屋掖済会病院) 澤泉 卓哉 (日本医科大学武蔵小杉病院)
2-3-P4-1
橈骨遠位端骨折後の正中神経障害に関連する因子の検討
Factors Correlated with Median Nerve Injury in Patients with Distal Radius Fractures
里中 東彦(市立伊勢総合病院 整形外科)
辻井 雅也,原 隆久,吉田 格之進,萩 智仁
2-3-P4-2
橈骨遠位端関節内粉砕骨折の掌側ロッキングプレート固定における方形回
内筋温存の重要性
Significance of Pronator Quadratus Muscle Preservation in the Palmar Locking Plate
Fixation for the Comminuted Intraarticular Fracture of Distal Radius
伊藤 聰一郎(桜会病院 整形外科)
吉田 渡,吉岡 太郎
橈骨遠位端骨折 AO-C2, C3 型に掌側ロッキングプレート固定を行ない、方形回内筋(PQ)温存効果を
検討した。術後手関節伸展 / 屈曲、回内 / 回外、患側と健側の握力比、DASH と VAS 値を評価した。
術後 2 ケ月で回内角度は PQ 温存群が PQ 切離群に比し有意に大きく、VAS 値は小さかった。Quick
DASH 値も術後 1, 2 ケ月で PQ 温存群が PQ 切離群に比し有意に小さかった。術後 3 ケ月以降では有意
がなかった。
2-3-P4-3
脆弱性橈骨遠位端骨折患者の骨強度、骨格筋と骨代謝マーカー
Bone Strength, Skeletal Muscle Area, and Biochemical Markers Associated with Bone
Metabolism in Patients with Fragility Distal Radius Fracture
内山 茂晴(信州大学 医学部 整形外科)
池上 章太,上村 幹男,今枝 敏彦,加藤 博之
脆弱性橈骨遠位端骨折既往の患者は、健常コントロールと比較して、骨密度が低いが大腿骨周囲の骨
格筋量は同等である。更に 25(OH)D は低く、尿中デオキシピリジノリン、血清および尿中ペント
シジンは高い。これらは骨密度で調整後も有意差がある。
183
Room 3
橈骨遠位端骨折(DRF)56 手において,正中神経障害(しびれ)と年齢,骨折型,手根管内圧(CTP)と
の関連について検討した.11 手(19.6%)で受傷直後よりしびれを認め,3 手(5.3%)で術後も残存した.
年齢,骨折型はしびれとの明らかな関連は認めなかったが,術前 CTP はしびれ有群で有意に高かった.
急性期の正中神経障害の発生に CTP の受傷早期の急激な上昇が関連している可能性が示唆され,ま
た潜在性の正中神経障害の存在も考えられた.
2-3-P4-4
閉経後女性の橈骨遠位端骨折後の骨粗鬆症の診断と血清 ucOC、尿中 NTX
の解析結果
Evaluation of bone mineral density, serum undercarboxylated osteocalcin(ucOC) and
urine NTX for osteoporosis following postmenopausal women after distal radial
fracture
飯田 竜(永井病院)
辻井 雅也,國分 直樹,植村 和司,須藤 啓広
閉経後女性の橈骨遠位端骨折例 56 例(平均 69.7 歳)の YAM は平均 70% で,約 86%が骨粗鬆症と診断
された.また,34 例(平均 69.8 歳)の血清 ucOC、尿中 NTX は,各平均 6.7,46.1 で有意に相関し,27
例(79%),9 例(27%)で高値を示した.従って,本骨折は早期より骨粗鬆症の治療に介入でき,ADL
低下を招く大腿骨近位部骨折などの二次骨折の予防となる可能性がある.また,ucOC は 50 歳代より
高値例が多く,骨粗鬆症の介入の際の早期のマーカーになる可能性がある.
Room 3
2-3-P4-5
橈骨遠位端骨折への掌側ロッキングプレートの抜釘は必要か?屈筋腱の滑
走に伴う轢音の周波数解析
Risk assessment of subcutaneous tendon rupture following treatment of distal radius
fractures combined with volar locking plate fixation
山崎 宏(相澤病院 整形外科)
橋本 瞬,伊坪 敏郎,内山 茂晴,加藤 博之
目的:橈骨遠位端骨折の掌側プレート固定後の屈筋腱摩耗を予測する.方法:141 人で抜釘前に屈筋
腱滑走音の音響解析,X 線画像のプレート設置位置評価,超音波検査を行った.抜釘時に屈筋腱摩耗
を評価した.結果:轢音は 13% に認め,滑走音の振幅,基本波の振幅変動が大きかった.屈筋腱摩耗
は 9% に認め,多重ロジスティック回帰分析による予測因子は,轢音,プレート遠位設置,超音波で
の腱滑膜炎であった.
2-3-P4-6
橈骨遠位端骨折術後の長期臨床成績と手関節の変形性関節症に影響する要因
Long-term clinical outcome of distal radius fracture and the factor correlated with
wrist osteoarthritis
片山 健(国保中央病院 整形外科)
小野 浩史,古田 和彦
橈骨遠位端骨折(以下 DRF)術後の長期臨床成績と手関節の変形性関節症(以下 OA)に影響する X 線学
的要因を明らかにする.DRF 術後の長期臨床成績は良好であった.X 線学的評価では UV の増加が
DRUJ と尺骨月状骨関節に,舟状骨の掌屈が RS 関節と STT 関節の OA 変化に影響する可能性が示唆
された
184
第 4 会場(Room 4)
8:00~9:40
パネルディスカッション 5:手外科における穿通枝皮弁の展望
座長:田中 克己(長崎大学医学部形成外科)
面川 庄平(奈良医科大学整形外科) 2-4-P5-1
手の再建における穿通枝皮弁の現況
Perforator Flap for Reconstruction of Upper Limb
田中 克己(長崎大学 医学部 形成外科)
高橋 国宏
手外科領域の再建において穿通枝皮弁は高い有用性を持っているが、あくまでも手の治療の基本原則
に沿って行われることが重要であり、そのためにはどのような症例で穿通枝皮弁を適用となるのかを
厳密に判断することが必要となる。
2-4-P5-2
Pure Skin Perforator Cencept を用いた thin SCIP flap による手の再建
Hand Reconstruction with thin SCIP flap using Pure Skin Perforator Concept
我々は皮下脂肪を含めず挙上可能な pure skin perforator flap を用いて、手指再建を行ったので報告
する。特に SCIP flap は、傷跡が目立ちにくい場所にあるため、若い女性でも選択しやすい皮弁の一
つと考える。手指のような皮膚の厚みが少なく、機能的に重要な部位には、必要に応じて皮弁の厚み
を変化させることができる PSP flap concept を用いた flap による再建が有用であると考える。
2-4-P5-3
腓骨動脈穿通枝皮弁を用いた手の軟部組織再建
Peroneal perforator flap transfer for soft tissue reconstruction of the hand
河村 健二(市立奈良病院 四肢外傷センター)
矢島 弘嗣,村田 景一
手の軟部組織再建に用いた腓骨動脈穿通枝皮弁 27 例を検討した。17 例は腓骨動静脈本幹を血管茎と
して用いたが、10 例は穿通枝のみを血管茎とする true perforator flap として用いた。2 例が生着に失
敗し有茎橈側前腕皮弁による救済術を施行した。採取部は皮弁幅 4cm 未満の 12 例で一期的縫縮が可
能であったが、15 例で植皮が必要であった。皮弁の二期的な defatting が 14 例に必要であった。
185
Room 4
成島 三長(東京大学医学部形成外科美容外科)
林 明辰,田代 絢介,吉松 英彦,光嶋 勲
2-4-P5-4
穿通枝皮弁を駆使した美しい再建は、手指の機能アウトカムを高めるの
か?
How much does aesthetic reconstruction with perforator flaps improve functional
outcomes?
小野 真平(日本医科大学 形成外科)
小川 令
穿通枝皮弁を駆使した美しい上肢再建をすることは、整容面だけでなく機能面の治療アウトカムも高
め、結果として高い患者満足度が得られる。著者が用いている治療原則と美しく再建するためのポイ
ントを報告する。
2-4-P5-5
手外科領域における種々の穿通枝皮弁・脂肪弁の応用
The feasibility of various perforator flap, adiposal flap, and adipofascial flap in upper
extremities
高松 聖仁(淀川キリスト教病院整形外科)
金城 養典,鈴木 啓介,新谷 康介,斧出 絵麻
Room 4
われわれはこれまで報告の多い前腕・手部の軟部組織欠損以外に固有指部の組織欠損,神経剥離後・
縫合後の神経癒着防止・保護,腱剥離後の腱癒着防止・滑走床に穿通枝皮弁・脂肪弁を応用している.
それらに橈骨動脈穿通枝 11 例,尺骨動脈穿通枝 2 例,指動脈穿通枝 10 例,中手動脈穿通枝 4 例の皮弁・
筋膜脂肪弁・脂肪弁を用いて加療したが,皮弁は固有指部も含め全例生着し神経損傷部の疼痛の軽減
を認め伸筋腱の滑走も良好となった.
2-4-P5-6
穿通枝皮弁を用いた上肢軟部組織欠損
Perforator Flaps for Soft Tissue Reconstruction in the Upper Extremity
岡田 充弘(大阪市立大学医学研究科 整形外科学教室)
上村 卓也,横井 卓哉,新谷 康介,中村 博亮
穿通枝皮弁は、遊離または有茎皮弁として挙上可能である。遊離穿通枝皮弁は移植範囲を限定しない
ため、様々な軟部組織欠損に対応できる。一方、有茎穿通枝皮弁は移植範囲を限定するため、遊離穿
通枝皮弁と比べ、その適応は限定される。しかし近年、様々な血管茎を用いた有茎穿通枝皮弁が報告
され、上肢軟部組織欠損における有茎穿通枝皮弁の適応が拡大している。本発表では、それぞれの適
応について考察する。
2-4-P5-7
指の皮弁による再建の原則
Principles in reconstruction of finger by flaps
平瀬 雄一(四谷メディカルキューブ手の外科マイクロサージャリーセンター)
指は常に露出して使う器官であり、知覚、整容性、運動性の 3 つの要素が揃わないと良好な結果跛得
られない。微小血管解剖の発達により、より末梢の血管茎を使った各種の皮弁が発表されてきている。
しかし、いかなる皮弁であろうとも、手指の再建には「よく似た組織で再建する」といった原則が揺ら
ぐことはない。手指の再建に於けるこれらの原則を確認し、新たな皮弁の是非を考察したい。
186
10:00~10:45
一般演題 34:組織移植・熱傷ほか
座長:長谷川 健二郎(川崎医科大学整形外科)
2-4-1
小児における手掌熱傷の治療アルゴリズム~growth factor を併用する整
容と機能の両方を考慮した再建~
Algorithm for Aesthetic and Functional Resurfacing in Pediatric Hand Burns
林田 健志(国立長崎医療センター 形成外科)
西條 広人,諸岡 真,藤岡 正樹
小児の手掌熱傷では一般的に保存的治療が選択されるが、しばしば高度の熱傷瘢痕拘縮をきたし、整
容面と機能面の両方が問題となる。当科で行っている bFGF を併用した小児手掌熱傷創の治療結果を
検討した。小児手掌熱傷において、拘縮を防ぎ、良好な質感をもたらす bFGF の併用療法は受傷後 21
日目までの保存治療において有用であった。我々が行っている小児手掌熱傷に対するアルゴリズム
は、手術適応を決定するのに有用である。
2-4-2
乳幼児の手部熱傷後の瘢痕拘縮に対し手術治療を行った症例の検討
Operation for Burn-Contructure of the Hands in Infants
我々は、乳幼児の手部熱傷後に瘢痕拘縮が生じ、手術を行った症例の長期経過をもとに、初期治療お
よび瘢痕拘縮形成術での要点を検討した。対象は 10 肢で、瘢痕拘縮形成術施行時の年齢は平均 1.4 歳
であった。10 肢のうち 4 肢で複数回の手術を要した。乳幼児の手の瘢痕拘縮形成術においては、成長
を見据え、再拘縮や醜形を予防するために、綿密な手術デザイン、採皮部の選択、術後の装具療法が
重要と考えた。
2-4-3
後骨間神経麻痺・尺骨神経麻痺合併を呈する病態の治療経験
Posterior Interosseous Nerve Palsy combined with Ulnar Nerve Palsy
頭川 峰志(富山大学 医学部 整形外科)
長田 龍介
指伸展障害に手内筋麻痺を合併する症例について調査した。対象は 10 例、平均年齢 70.2 歳であった。
基礎疾患、前駆症状、神経学的所見、電気生理検査、画像所見、治療経過について調査した。遠位型
頚椎症性筋萎縮症、脳血管障害、Neuralgic amyotrophy などが考えられ、治療後も麻痺の回復は不
良であることが多く、指伸展障害に対する腱移行術が ADL の改善に必要である。
187
Room 4
福田 憲翁(獨協医科大学 形成外科学)
朝戸 裕貴,高田 悟朗,菅 剛史
2-4-4
重度上肢外傷に対する急性期遊離皮弁術における recipient 血管の検討
The examination of recipient vessels in acute free flap surgery for severe upper limb
injuries
辻 英樹(札幌徳洲会病院 整形外科外傷センター)
倉田 佳明,松井 裕帝,坂 なつみ,土田 芳彦
重度四肢開放骨折遊離皮弁では特に下肢例で post-traumatic vessel disease(PTVD)が問題となる.
【対象】重度上肢外傷,急性期遊離皮弁術 35 例(男 27 女 8、平均年齢 45.0 歳).【調査項目と結果】1.
Recipient 血管途絶 17 例,連続 18 例.2. PTVD 発症 4/35 例(11%),(途絶群 3,連続群 1 例).3. 受傷
〜皮弁術:発症群平均 11.0 日,非発症群 6.9 日.【考察】上肢外傷例でも 11%で PTVD 発症.発症には
受傷部位、程度、遊離移植術までの日数も関連.
2-4-5
足趾移植術の術後評価(SF︲36、SAFE︲Q、DASH を用いて)
The patient-relate measure(SF-36,SAFE-Q,DASH) for the treatment of the
reconstruction of finger
中西 昭登(田北会田北病院)
面川 庄平,川西 弘一,鍜治 大祐,田北 武彦
Room 4
手指の切断の再建方法として wrap around flap(WAF)、toe transfer、hemipulp flap は非常に有用で
1960 年代後半にその手技が確立された。特に WAF は整容的にも機能的にも有用性が認められている
が母指再建以外への適応は賛否の分かれるところである。最近実施した 6 例の足趾移植に対し術前と
術後に患者立脚型評価法(SF-36/SAFE-Q/DASH)を用いて治療効果判定をおこない足趾移植が患者
にあたえる影響を考察したので報告する。
11:00~12:03
一般演題 35:手根管症候群(疫学・病態ほか)
座長:信田 信吾(東北労災病院)
2-4-6
精密機械工場における手根管症候群の有病率
Prevalence of the carpal tunnel syndrome in the precision instrument factory
佐藤 彰博(弘前医療福祉大学 保健学部 医療技術学科 作業療法学専攻)
對馬 均,藤原 健一,湯川 昌広
第 57 回学術集会で報告したスクリーニング・ツールを使って精密機械工場における手根管症候群の
有病率と性別によるオッズ比を求めた.1,103 名(73.5%)から回答が得られ,自覚症状なし 999 名(90.6
%)
,自覚症状あり 104 名(9.4%)であった.面談・検査を希望した 28 名中,手根管症候群は 6 名で,
有病率 0.58%(男性 0.25%,女性 1.80%),オッズ比 7.37 であった.女性の多い職場では手根管症候群
を念頭に置いて健診する必要がある.
188
2-4-7
特発性手根管症候群に合併したバネ指症例の検討
Idiopathic Carpal Tunnel Syndrome with Trigger Finger
斉藤 忍(東京城東病院 整形外科)
国司 俊一,國吉 一樹
【目的】バネ指を合併した特発性手根管症候群(以下 CTS)症例の特徴を明らかにすること。【対象およ
び方法】CTS 症例 111 例 148 手に対しバネ指合併率を求め、バネ指非発症群と発症群 2 群に分け手根管
MRI について比較検討した。
【結果】バネ指合併率は 21% で、バネ指発症群は有鉤骨鉤レベルで滑膜
面積、滑膜占拠率において有意に高い値を示した。
【結論】手根管遠位での滑膜の増生が CTS 症例の
バネ指発症に関与しているものと思われた。
2-4-8
石灰沈着症による手根管症候群の治療経験
Carpal tunnel syndrome induced by calcinosis
原田 和弘(日本医科大学 整形外科)
澤泉 卓哉,小寺 訓江,武 雅樹,高井 信朗
石灰沈着症による CTS に対して手術加療を行った 5 人 5 手を対象とした.術後 CTSI-JSSH 症状重症
度スコアが平均 16.8(12〜20),機能的状態スケールは平均 10.4(9〜14)と共に改善し,経過観察期間に
おける再発例はなかった.いずれの症例も石灰沈着症を来すような基礎疾患は認めず,病態には over
use と滑膜炎が関与していると考えられた.
Room 4
2-4-9
手根管症候群の術後成績に母指 CM 関節症が与える影響
The prevalence of basal joint arthritis of the thumb in patients with carpal tunnel
syndrome
三竹 辰徳(安城更生病院 整形外科)
建部 将広,田中 健司,浦田 士郎
母指 CM 関節症が手根管開放術後に与える影響を評価するために、手根管開放術を行い 2 か月以上追
跡調査可能であった 304 例 365 手を調査した。本研究では手術を行った手根管症候群 365 手のうち、
101 手に画像上の母指 CM 関節症を認めた。CM 群では非 CM 群よりも高齢者が多かった。CM 群では
術前の電気生理学的検査で重度の手根管症候群が多かったが、最終診察時の臨床検査結果は非 CM 群
と遜色なく、いずれも良好な治療成績であった。
2-4-10
Kienbock 病に合併した手根管症候群の検討
Carpal tunnel syndrome associated with Kienbock disease
篠原 孝明(中日病院 名古屋手外科センター)
中尾 悦宏,高橋 明子,中村 蓼吾,平田 仁
Kienbock 病に合併した CTS に対して神経剥離術を行った 12 例 12 手(男 3、女 9)、平均年齢 72 歳を対
象として、臨床像、病態に関して検討を行った。高年の手関節症状がほとんどない末期の Kienbock
病であり、女性の割合が高いのが特徴であった。潜在的な CTS を背景として、月状骨の突出により
正中神経が掌側に押し上げられているすぐ遠位に横手根靭帯が位置するために、正中神経が横手根靭
帯近位部で絞扼されることが一因と考えられた。
189
2-4-11
特発性手根管症候群における腱滑膜の病理組織学的検討―若年群と高齢群
の比較―
Pathohistological Study of Tenosynovium in Idiopathic Carpal Tunnel Syndrome
-Comparing Older Age Group and Younger Age Group鶴田 敏幸(医療法人友和会 鶴田整形外科)
峯 博子,内橋 和芳
特発性手根管症候群(CTS)の術後において高齢者は成績が不良となることが多いが,その原因につい
ては明らかではない。今回 CTS の若年群(60 歳未満)と高齢群(70 歳以上)各 16 例の腱滑膜を病理組織
学的に検討した。その結果,若年群,高齢群でそれぞれ粘液変性が 81%,38%,軟骨細胞様細胞が
56%,13%に認められ,若年群において高頻度であった。今回の結果から CTS の若年群と高齢群で
はその病態に差違がある可能性が示唆された。
2-4-12
TTR アミロイド沈着を認めた手根管症候群の臨床的特徴と心機能
The clinical features and cardiac function of idiopathic carpal tunnel syndrome with
TTR amyroid deposition.
大茂 壽久(戸畑共立病院 整形外科)
酒井 昭典,川崎 優二
Room 4
特発性手根管症候群と診断され、手根管開放術を行った 53 名 60 手(男性 15 名 17 手、女性 38 名 43
手、平均年齢 68.1 ± 13.7 歳)に対し屈筋腱滑膜の TTR 沈着の有無を検討し、TTR 陽性群の臨床的特
徴と心機能を比較した。屈筋腱滑膜の TTR 陽性率は 43.3% であり、高齢男性の重症例に多かった。
心機能では、心電図上の刺激伝導系異常を 54.5%と高頻度に認め、心胸郭比の拡大と心室中隔および
心室後壁の肥厚を認めていた。
190
12:40~13:40
西新宿セミナー 9
座長:岩崎倫政(北海道大学)
共催:帝人ナカシマメディカル株式会社
手外科におけるシミュレーション技術:実用化への道程と将来展望
2-4-LS9
村瀬 剛(大阪大学 整形外科)
我々は手外科におけるシミュレーション技術開発と臨床応用を積極的に推進してきた。3 次元形状評
価が最も効果的な変形矯正に主に使用してきたほか、形態・動態解析の治療への応用、実体造形モデ
ルを手術ナビゲーションとして利用する試みを行ってきた。本講演では実際の臨床応用症例を交えな
がら、研究開発が実際にどのように行われてきたのか紹介し、普及に向けて行っている現在の取り組
みや将来に対する展望を述べる。
村瀬 剛(むらせ つよし)
略歴:
昭和37年生まれ
大阪大学卒業
Institut Francais de la Main(パリ、フランス)留学
星ケ丘厚生年金病院、整形外科医員
大阪暁明館病院、整形外科医員(部長代理)
国立大阪病院、整形外科医員
関西労災病院、整形外科医長
大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(整形外科)助手
同上 講師
同上 准教授
Room 4
昭和62年
平成 3年
平成 4年
平成 7年
平成 8年
平成10年
平成13年
平成20年
平成26年
191
13:55~14:49
一般演題 36:手根管症候群(母指球、重症例)
座長:長岡 正宏(日本大学病院整形外科)
2-4-13
手根管症候群患者における母指球筋の超音波検査による評価
The evaluation of thenar muscles in carpal tunnel syndrome with ultrasonography
岩永 康秀(東京都立多摩総合医療センター 整形外科)
辰巳 徹志
手根管症候群では母指球筋に萎縮が起こるが、画像での評価の報告はまれである。当院で手根管症候
群と診断された患者で母指球筋に萎縮が見られる例や手術が必要となった症例を対象に超音波検査に
よる母指球筋の評価を行い、健常人との比較を行うことで母指球筋の画像による評価を試みた。超音
波検査では母指球筋を構成する各筋肉の萎縮が描出可能であり、より詳細な評価につながると考え
る。
2-4-14
超音波検査による母指球筋萎縮の評価
Evaluation of thenar atrophy based on ultrasonographic measurement
Room 4
名倉 一成(神戸労災病院 整形外科)
金谷 貴子,美舩 泰,乾 淳幸,国分 毅
母指球筋萎縮を呈する手根管症候群(CTS)は臨床上重症 CTS とされ、電気生理学的にも重症である。
超音波検査を用いて重症 CTS の母指球筋萎縮を、30 代健常人と比較検討しところ、電気生理学的重
症度と並行してまず APB の筋幅減少が見られ、重症度の進行につれて OPP の筋幅減少が見られた。
重症 CTS の超音波検査を用いた母指球筋萎縮の評価は可能である。
2-4-15
特発性手根管症候群の超音波診断:honeycomb︲like image に基づく診
断基準
Ultrasonographic Diagnosis of Idiopathic Carpal Tunnel Syndrome Based on the
Honeycomb-like Image.
中道 健一(虎の門病院 リハビリテーション科)
立花 新太郎,山本 精三,喜多島 出
特発性手根管症候群(CTS)の超音波診断(US)は正中神経断面積(CSA)の測定とカットオフ値との比
較によるが,今回,正常像として神経束が粒状に描出される honeycomb-like image の有無がカット
オフ値の設定に与える影響を検討した。患者,対照とも CSA は本像の残存手では消失手より低値で
あり,カットオフ値も低かった。US 下 CSA 測定による特発性 CTS の診断では,本像の有無別にカッ
トオフ値を定める必要がある。
192
2-4-16
手根管症候群におけるエコー所見の検討―重症例との比較
Ultrasonographic assessment of idiopathic carpal tunnel syndrome Comparison with
severe cases
林原 雅子(鳥取大学 医学部 整形外科)
山下 優嗣,金谷 治尚,藤田 章啓,永島 英樹
手根管症候群 25 例を伝導速度検査により測定不能な重症例とそれ以外の 2 群に分け、SWtest による
知覚検査と超音波(US)検査を行い比較検討した。重症例では母指示指中指ともに有意に知覚が低下
していた。US 検査では手根管遠位の横径が小さく、手根管より近位で神経の縦径が大きい傾向にあ
った。
2-4-17
重症手根管症候群の短母指外転筋遠位潜時導出の限界
Limit of abductor pollicis brevis distal latency measurement of severe carpal tunnel
syndrome
田山 信敬(松村総合病院 整形外科)
重症手根管症候群で短母指外転筋遠位潜時(APB DL)が、どの程度まで導出されるのか検討した。表
面電極導出では上限値は 14.2msec で、針電極導出では 50.2msec だった。統計学的手法での予測値と
の比較では表面電極導出ではおおよそ妥当と思われ、針電極導出は予測値との著しい乖離があったた
め、実測値が妥当とした。
重症手根管症候群における短母指外転筋筋力回復の検討
Severe carpal tunnel syndrome-postoperative recovery of Abductor policis brevis
鈴木 重哉(藤枝市立総合病院 整形外科)
伊藤 高規,鈴木 希央,阿部 雅志,澤田 智一
母指対立障害を有する手根管症候群に対して手根管開放術を行った。罹病期間 1 年以上、手術時年齢
70 歳以上、電気生理学的検査で短母指外転筋終末潜時、感覚神経伝導速度が共に導出不能の場合をを
それぞれリスクポイント 1 点として各症例を 0〜3 点で点数化し、術後成績との関連を調べた。リスク
ポイントが高い症例ほど短母指外転筋の筋力が回復しない症例が多かった。
193
Room 4
2-4-18
14:49~15:53
一般演題 37:手根管症候群(術後 電気生理)
座長:國吉 一樹(千葉大学整形外科)
2-4-19
重症手根管症候群の術前後での電気生理学的検討
Electrophysiological evaluation of severe Carpal tunnel syndrome before and after
Carpal tunnel release
田山 信敬(松村総合病院 整形外科)
手根管症候群(CTS)の短母指外転筋複合筋活動電位(APB CMAP)が導出不能例で、短母指外筋針筋
電図(APB EMG)と第 2 虫様筋複合筋活動電位(2nd L CMAP)誘発を行い、術後の APB CMAP 導出
が、術前の APB EMG と 2nd L CMAP のどちらが予後判定に有用か比較検討した。術後の予後判定
には、どちらが有用とも言えなかった。
2-4-20
末期手根管症候群の手根管開放術予後予測における第 2 虫様筋複合筋活動
電位の有用性
Usefulness of Compound Muscle Action Potential of the Second Lumbrical for
Predicting Recovery after Carpal Tunnel Release in Extreme Carpal Tunnel Syndrome
Room 4
江畑 龍樹(佐倉整形外科病院)
末期手根管症候群の術後予後予測における、SL-CMAP の有用性を検討した。対象は手根管開放術を
施行し、1 年以上経過観察可能であった 56 手で、平均年齢は 62.3 歳、平均経過観察期間は 27.0ヵ月で
あった。母指対立改善群と非改善群で SL-CMAP 導出可能率に有意差を認めず、術前 SL-CMAP(+)
と SL-CMAP(-)で母指対立改善率に有意差を認めなかった。SL-CMAP は予後予測に必ずしも有用
とは言えず、予後の予測にはさらなる研究が必要である。
2-4-21
母指対立機能障害を伴う重度手根管症候群における 2L︲INT 法を用いた予
後予測の検討
Prognostic prediction using lumbrical and interossei recording of severe carpal tunnel
syndrome with undetectable compound muscle action potential of the abductor pollicis
brevis
大久保 直輝(京都府立医大大学院 運動器機能再生外科学(整形外科))
藤原 浩芳,小田 良,土田 真嗣,久保 俊一
短母指外転筋の複合筋活動電位が導出不能の重度手根管症候群 42 手に対して,第 2 虫様筋と第 1 掌側
骨間筋の運動遠位潜時差(2L-INT DIFF)が手根管開放術後の母指対立機能の回復を予測する指標と
なるか検討した.術前の 2L-INT DIFF と術後の母指掌側外転筋力の間に負の相関を認め,2L-INT
DIFF ≧ 6 ms 例では,術後 12ヵ月での MMT は 3 以下であった.術前の 2L-INT DIFF は,術後の母
指対立機能回復を予測する指標となりうる.
194
2-4-22
重症手根管症候群の術後短母指外転筋筋力回復の検討―短母指外転筋複合
筋活動電位と第 2 虫様筋複合筋活動電位
Severe carpal tunnel syndrome-relation between APB-CMAP, SL-CMAP and
postoperative recovery of APB mustle power
鈴木 重哉(藤枝市立総合病院 整形外科)
伊藤 高規,鈴木 希央,阿部 雅志
対立障害を有する重症手根管症候群に対して手根管開放術を行い、術前の短母指外転筋複合筋活動電
位(APB-CMAP)と第 2 虫様筋複合筋活動電位(SL-CMAP)の導出の有無と術後成績の相関を検討し
た。APB-CMAP や SL-CMAP が導出可能であっても術後の筋力回復が不良となる症例があり、電気
生理学的検査のみでは術後の APB 筋力の回復を予測するのは困難である。
2-4-23
手根管開放術を施行した 60 歳以下の手根管症候群における電気生理学検討
One-year postoperative electrophysiological recovery after carpal tunnel release in the
patients under 60 years old
金谷 貴子(神戸労災病院整形外科)
名倉 一成,国分 毅,美舩 泰,筒井 美緒
2-4-24
鏡視下手根管開放術後の各種検査所見の経時的変化 —重症度による改善
度の差の評価—
Time course of neurological function after endoscopic carpal tunnel release.
山口 幸之助(香川大学 医学部 整形外科)
加地 良雄,中村 修,今泉 泰彦,山本 哲司
鏡視下手根管開放術症例の術前後での電気生理学的評価,知覚評価(SWtest,m2PD,s2PD,振動覚
閾値),患者立脚型評価(Quick DASH)を行った.術前に SNAP が導出される症例では各検査で早期
に改善がみられた.術前に SNAP が導出されない重症例でも,CMAP が導出されていれば,早期に
SNAP が導出される可能性がある.一方で,術前に CMAP も導出されない高度重症例では,術後 6ヵ
月経過しても SNAP が回復する可能性は低く,知覚障害の難治化が示唆される.
195
Room 4
60 歳以下の手根管開放術症例 106 手を対象に電気生理学的重症度分類(1-5 期)に基づいて術前、術後
1 年の変化を比較検討した。術前は 92%(97 手)が 3-5 期に分散した。術後は、92% が 1 期以上の改善を
示し 1 期,2 期は有意増加し(p < 0.0001)、4 期,5 期は有意に減少した(p < 0.0001)。60 歳以下の手根
管症候群は、術前に中程度−重症例が多かったが、術後は良好な回復が期待できる。
16:00~17:03
一般演題 38:先天異常
座長:川端 秀彦(大阪府立母子保健総合医療センター)
2-4-25
中手骨分岐型母指多指症の長期成績
Metacarpal Type Thumb Polydactyly- Long-term surgical outcome
洪 淑貴(名古屋第一赤十字病院 整形外科)
大塚 純子,服部 達哉,堀井 恵美子
10 年以上経過観察し得た 17 例 19 手の中手骨分岐型母指多指症の術後成績を報告する。術前形態は尺
側指 MP 関節の alignment が良好な A 群 10 手、MP 関節で蟹爪様変形を呈する B 群 7 手、尺側指中手
骨が丸い C 群 2 手の 3 型に分類された。初回手術は尺側指中手骨の骨切りを 11 手に、MP 関節尺側靱
帯形成術を 4 手に施行した。修正手術は 5 例に 2 回、1 例に 3 回施行した。JSSH スコアでは優 2 良 12 可
5 で、B/C 群は A 群と比較して有意に成績が悪かった。
2-4-26
小指多指症の臨床像
Clinical Picture on Ulnar Polydactyly
Room 4
竹内 実知子(広島市立広島市民病院)
石田 治
小指多指症 5 例 9 手の臨床像を母指多指症と比較検討した。男児 4 例、女児 1 例、左 1 手、両側 4 例、
手術時平均年齢は 10ヵ月、病型は片側浮遊型 1 例、両側浮遊型 1 例、両側発育良好型 1 例、片側浮遊
型反対側発育良好型 2 例、手術は尺側指を切除した。浮遊型の付着部は 5 手で MP 関節レベル、発育
良好型の重複指は中手骨から分岐あるいは固有の中手骨を有していた。口蓋裂、多趾症を合併し同胞
発生もあり遺伝性が示唆された。
2-4-27
前腕成長障害による橈骨頭脱臼に対する治療
Surgical Treatment for Developmental Radial Head Dislocation
堀井 恵美子(名古屋第一赤十字病院)
洪 淑貴,服部 達哉,大塚 純子
橈尺骨の成長障害で橈骨頭脱臼を生じた 7 例 8 肢に,尺骨近位での矯正骨切り延長を行った.手術時
平均年齢 13.5 歳で,2 肢で橈骨矯正骨切術も行った.骨延長量は平均 34mm,創外固定装着期間は 154
日であった.合併症は,1 例で感染があり早期に延長を中止した.術後経過観察平均 90 か月で,橈骨
頭は変形し亜脱臼位だが前腕変形は改善した.軽度疼痛 3 肢,著明な可動域制限が 1 肢あり,good と
poor が各 1 肢で,6 肢は excellent であった.
196
2-4-28
小指多指症の検討
The clinical features of ulnar polydactyly.
加藤 秀輝(藤田保健衛生大学 形成外科)
奥本 隆行,吉村 陽子,井上 義一
多指症は比較的発生頻度が高い疾患だが,本邦では多くが母指多指症で小指多指症はまれである。今
回われわれは小指多指症 12 例 19 手,男 7 例,女 5 例について臨床像について検討した。小指多指症は
欧米では多指症全体の 20-40% だが本邦では 10% 前後である。欧米では浮遊型が多いが,本邦では発
育良好型が比較的多い。母指多指症や欧米と比較し,本邦の小指多指症の発生頻度はまれであり今後
も症例の蓄積を重ね検討する必要がある。
2-4-29
中足骨移植による重度母指形成不全症の再建:移植骨の生着とその成長
Two stage reconstruction by non-vascularized metatarsal bone graft followed by
opponensplasty for severely hypoplastic thumb with special reference to engraftment
and growth of transplanting bone
飯ヶ谷 るり子(国立成育医療研究センター病院)
高山 真一郎,関 敦仁,鳥居 暁子
2-4-30
16 歳以降に行った手先天異常修正術の検討
Clinical feature of the revision for hand anomaly from 16 years old
根本 充(北里大学 医学部 形成外科・美容外科)
熊澤 憲一,石川 心介,秋本 峰克
我々は 16 歳以降に行った手先天異常の修正術について調査したので報告する。修正術を行った手先
天異常は合指症 4 例 5 手、母指多指症 3 例 3 手、合短指症 1 例 1 手であった。修正術は拘縮解除 4 例 4 手、
指軸修正 3 例 3 手、爪甲位置修正 1 例 2 手に行った。手先天異常の術後形態は成長とともに変化し予想
し得ない変形をきたすことがあるので、成長とともに個々の希望に応じたきめ細かいフォローアップ
が重要である。
2-4-31
先天性橈尺骨癒合症における術後腕橈関節アライメントに関する検討
Evaluation of postoperative radiocapitellar joint alignment in the congenital radioulnar
syostosis patients
赤坂 朋代(千葉大学大学院医学研究院 整形外科学)
國吉 一樹,安部 玲,上野 啓介,木内 均
分離受動術・有茎血管柄付き脂肪弁挿入を行った先天性橈尺骨癒合症例の腕橈関節アライメントと成
績の関連を検討した。腕橈関節アライメントは単純 X 線側面像で分類、自動回内外可動域との相関を
調査した。全例腕橈関節の整復位保持は困難だった。自動回内外可動域は最終診察時には前方脱臼型
と後方脱臼型で有意差を認めなかった。後方脱臼型では回外時に橈尺骨のインピンジが必発であり成
績低下の一因と考えられた。
197
Room 4
中足骨移植と二期的腱移行による再建を行った重度母指形成不全 46 手について、移植骨の生着と成
長について焦点を当て検討した。本法は non-vascularized の骨移植であるが、移植骨の生着・成長は
80%以上の症例で良好で、骨端線は長期間開存していた。Blauth4 の一部では偽関節や変形を生じる
リスクが 30%程度あり一部の症例では適応の限界と考えられた。
第 5 会場(Room 5)
8:00~9:40
パネルディスカッション 6:手外科の教育
座長:服部 泰典(小郡第一総合病院整形外科)
柏 克彦(岩手医科大学形成外科) 2-5-P6-1
日本手外科学会カダバーワークショップにおける手外科教育
Hand Surgery Education with JSSH Cadaver Workshop
服部 泰典(小郡第一総合病院 整形外科)
柏 克彦,青木 光広,矢島 弘嗣
手術手技を習得するための最も有効な方法の一つは、カダバーを用いたトレーニングである。日本手
外科学会教育研修委員会では、2012 年 12 月に第 1 回カダバーワークショップを、2014 年 9 月に第 2 回
を開催し、関節鏡と四肢の皮弁挙上の手技の教育を行なった。Thiel 法という特殊な保存方法で処理
されたカダバーは柔らかく、実際の手術に近い感覚で手術手技を行うことができ、有益なワークショ
ップを開催できた。
2-5-P6-2
クリニカルアナトミーラボにおける新鮮凍結屍体を用いた手技教育の効果
Evaluation of surgical training using fresh frozen cadaver in Clinical Anatomy Lab
鈴木 崇根(千葉大学大学院医学研究院 環境生命医学)
國吉 一樹,小林 倫子,助川 浩士,金塚 彩
Room 5
海外では屍体を用いて実際に手術手技を教育する cadaver training が導入され効果をあげている。千
葉大学では演者らが 2010 年にクリニカルアナトミーラボを立ち上げ、積極的に導入している。実施
された手技教育の効果を発表する。
2-5-P6-3
望ましい手外科教育―形成、整形外科混合型の手外科専門施設での手外科
教育に携わって―
An ideal hand surgery education: from Saitama Hand Surgery Institute experience
福本 恵三(埼玉成恵会病院・埼玉手外科研究所)
加藤 直樹,菅野 百合,小平 聡,久能 隼人
埼玉手外科研究所は形成、整形外科混合型の手外科専門施設で、現在まで整形外科医 19 名、形成外
科医 17 名の手外科研修医を教育してきた。手外科は整形外科、形成外科の知識、技術がともに必要
な subspeciality の領域であるが、実際にはそれぞれの科で症例や治療内容に偏りがある。そのため手
外科研修期間の内 1 年程度、基盤診療科以外の施設で研修を受けることが望ましい。
198
2-5-P6-4
屈筋腱縫合のトレーニング法について:手外科教育の側面から
A model for practicing flexor tendon repair with artificial tendon
光安 廣倫(光安整形外科)
竹内 直英,岡田 貴充,岩本 幸英
屈筋腱縫合は手外科を専門にする上で重要な手技であるが、手技の正確さが成績を左右する。我々は
人工腱を使用し、力学試験を組み合わせることでトレーニング成果を評価するシステムを確立してお
り、その詳細について報告する。方法)歯科で使用する綿性の dental roll 2 本を人工腱として使用し、
主縫合、副縫合を行った後に、cyclic loading machine を用いて gap、疲労強度、破断強度を計測し、
手技を評価している。
2-5-P6-5
豚足を用いた腱縫合法実習
Surgical training of the tendon suture using pettitoes (hand of pork).
尼子 雅敏(防衛医科大学校 整形外科)
有野 浩司,根本 孝一
腱縫合の手技の習得の目的で、研修医に対して豚足を用いた腱縫合実習を行った。伸筋腱はマットレ
ス縫合で、屈筋腱は津下法で縫合させた。全員が体験し、縫合可能あった。豚足は食肉として流通し
ており、安価に入手可能である。さらに腱の性状は生体と相違なく、手技の習得の練習に適している。
研修医に腱縫合実習の機会を与え、その魅力を体感させることは、手外科の教育において有用である
と思われた。
2-5-P6-6
当科における手外科を対象としたマイクロサージャリー教育
Education for microsurgery technique in the field of hand surgery in our department
当院では手術用顕微鏡を 4 台設置した実験室で医学生、医師に対して血管吻合実習を行っている。医
学部 6 回生は臨床実習として 3 日間の午後をマイクロの実習に当てる。手術用顕微鏡を用い、3 及び
1mm 前後のシリコンチューブを 8 − 0、ないし 9 − 0 ナイロンで縫合させる。医師に対する血管縫合
指導のためにラット尾を使用している。腹側は尾骨、腱成分、動静脈の配列がヒトの指に似ており剥
離、血管縫合の実習に向く。
2-5-P6-7
当センターの Hand Fellowship について
The Hand Fellowship in Our Hand Center
大井 宏之(聖隷浜松病院 手外科・マイクロサージャリーセンター)
神田 俊浩,向田 雅司,鈴木 歩実
第 53 回の本会で当センターの Fellowship を報告。その後も年に 1-2 名の医師を教育したので現状を報
告する。2004 年 4 月から Fellow 採用を開始。現在まで 21 名(整形 16、形成 5)の医師を教育。手外科
全ての領域を網羅する教育のため整形・形成の区別なし。苦手を克服するように教育。リハビリも重
点的に教育。問題は個々の基礎や技量が大きく違うこと、研修を希望しても医局の問題があること、
常時 Fellow 確保が難しいことなどがある。
199
Room 5
五谷 寛之(清恵会病院大阪外傷マイクロサージャリーセンター)
田中 祥貴,佐々木 康介,宮下 昌大,山野 慶樹
2-5-P6-8
社会構成主義に立脚した医学部学生に対する ICT 活用ブレンド型カリキュ
ラムの実践経験
A report of the course of the musculoskeletal system for undergraduate medical
students based on constructivism in the blended learning environment
奥山 訓子(慶應義塾大学 医学部 運動器機能再建・再生学講座)
伊藤 薫子,越智 健介,岩本 卓士,佐藤 和毅
医学部学生の手外科認知度は低いが,臨床現場での問題解決能力や省察能力の涵養と実践レベルの手
技習得は,内発的動機や明快なイメージに基づかない知識の丸暗記とその反射的想起では難しい.社
会構成主義に基づく協同学習と内発的動機付けを促す目的で,手術ライブ,診察法実習,学生グルー
プワーク(GW)を含む集合型講義に,web 学習管理システムによる自習を加えたブレンド型カリキュ
ラムについて報告する.
Room 5
200
9:50~11:20
パネルディスカッション 7:手・肘の疫学
座長:西脇 祐司(東邦大学医学部社会医学講座衛生学分野)
尼子 雅敏(防衛医科大学校整形外科学講座) 2-5-P7-1
青壮年期の上肢運動器外傷・障害に関する疫学的研究
Epidemiologic study of the upper-limb injuries among young and middle-aged patients
伊藤 雄也(防衛医科大学校 整形外科)
尼子 雅敏,有野 浩司,根本 孝一
青壮年の上肢運動器外傷・障害の発生について疫学的に解明するために、青壮年期自衛官の上肢外傷・
障害患者のべ 6,198 件の診断名、年齢、損傷部位、受傷原因、受傷時の行動について検討した。青年
期は運動に伴う手指の外傷が多く発生し、35 歳以降は肩・肘の障害が増加した。骨折は自衛隊歴の短
い者が多く、BMI が有意に低かった(p<0.001)。
2-5-P7-2
手関節の変形性関節症の頻度とその発現に影響を及ぼす要因
Distribution of primary osteoarthritis in the wrist and the factors that are correlated
with wrist osteoarthritis.
片山 健(国保中央病院 整形外科)
小野 浩史,古田 和彦,赤羽 学,面川 庄平
手関節の 1 次性変形性関節症
(以下 OA)
の頻度とその分布を調査し,橈骨・尺骨の形状や手根骨配列が
橈側と尺側手関節の OA に影響する要因を明らかにするためにロジスティック回帰分析を行った.橈
側 / 尺側手関節の OA は 2.2%/12.8% に生じ,その関節症に最も影響を及ぼす要因は Radial inclination/
Ulnar variance であった.
大規模コホート研究による手指変形性関節症の有病率およびその関連因子
―The ROAD study―
Prevalence of hand osteoarthritis and associated factor - The ROAD study 児玉 理恵(東京大学 大学院 医学系研究科 整形外科)
岡 敬之,村木 重之,田中 栄,吉村 典子
ROAD study 第 3 回調査 1,535 名のデータにより、手指変形性関節症(HOA)の有病率が 91.5% であり、
年齢と有意な正の相関を示すことがわかった。関節毎では DIP 関節で 85.5% と最も多くみられ、PIP
関節のみ女性の方が有意に有病率は高かった。KL grade 3 度以上の severe OA は、握力および手の
痛みと有意な関連がみられた。
201
Room 5
2-5-P7-3
2-5-P7-4
バネ指手術時年齢の高齢化
Increasing Age at Surgery for Snapping Finger
新行内 義博(所沢中央病院 整形外科)
諸橋 彰,小泉 憲之,名嘉 準一,山本 淳一
人口の高齢化にともないバネ指手術症例も高齢化しているものと考え、所沢中央病院と仁和会総合病
院で、1997 年から 2014 までの 18 年間に手術したバネ指症例 483 例を対象に手術時年齢について分析
した。1997 年から 2008 年までの A 群、2009 年から 2014 年までの B 群に分類した.A 群 214 例、B 群
269 例の手術時平均年齢はそれぞれ 62.2 歳、65.6 歳で、手術時平均年齢を T 検定すると、平均年齢は
有意に高齢化していた(P < 0.05)。
2-5-P7-5
救急搬送された橈骨遠位端骨折の外傷重症度スコア(ISS)別の治療内容の
分析
Systemic Injury Severity Influences Treatment Plan for Distal Radius Fracture
若林 良明(横浜市立みなと赤十字病院 手外科・上肢外傷整形外科)
品田 春生,能瀬 宏行,二村 昭元,大川 淳
当院に救急搬送・入院した橈骨遠位端骨折 55 例を、外傷の全身的な重症度を示す ISS が 17 点以上の
重症群と、16 点以下の軽症群に分類し、治療内容や手術待機期間を比較して、多発外傷における合併
外傷の存在が治療方針へ及ぼす影響を検討した。手術が行われたのは重症群 52% に対し軽症群は 82%
と有意に高率で、待機期間も重症群 9.6 日に対し軽症群は 4.7 日と有意に短かった。合併外傷の状態が
治療計画に影響していたものと考えられた。
2-5-P7-6
当科で手術加療を行った手・肘部の腫瘍性病変について
Tumors of the hand and elbow : Surgical cases in our department
Room 5
岡本 駿郎(金沢大学 整形外科)
多田 薫,八野田 愛,山本 大樹,土屋 弘行
今回我々は、当科で手術加療を行った手・肘部の骨軟部の腫瘍性病変について検討したので報告する。
対象は 1990 年から 2014 年に当科で手術加療を行い、病理学的に診断した手部の腫瘍性病変 244 例並
びに肘部の腫瘍性病変 86 例である。悪性腫瘍の占める割合は手部 7.0%、肘部 36.0%と一般に報告さ
れる割合よりも高頻度であった。永久病理標本による最終病理診断が行われるまでは常に悪性腫瘍の
可能性に配慮すべきと考えられた。
202
12:40~13:40
西新宿セミナー 10
座長:有野浩司(防衛医科大学校)
2-5-LS10
関節リウマチによる上肢の機能障害に対する手術療法
―手指人工関節全置換術からリバース型人工肩関節全置換術まで―
池上 博泰(東邦大学 整形外科)
関節リウマチ(RA)は、手指だけでなく、手・肘・肩関節も障害される。したがって、手外科医が RA
の手指 ・ 肘関節を手術する場合には、肩関節 RA に対する現在の種々の治療方法(2014 年 4 月からはリ
バース型人工肩関節が本邦でも使用可能となった)も知り、上肢を一つの運動ユニットとして評価・
治療することが大切である。本講演では、上肢 RA に対して実際に手術を行った症例を提示して、肩
関節から手指関節まで言及する。
池上 博泰(いけがみ ひろやす)
略歴:
昭和35年生まれ
昭和60年
慶應義塾大学医学部卒業
米国・Harvard大学
(Massachusetts General Hospital)に留学
平成 6年
平成 9年
慶應義塾大学助手
慶應義塾大学医学部整形外科学教室専任講師
平成16年
平成23年
慶應義塾大学医学部整形外科学教室准教授
平成24年
東邦大学医学部整形外科学講座(大橋)准教授
東邦大学医学部整形外科学講座(大橋)教授
平成25年
Room 5
203
13:55~14:31
一般演題 39:中手骨骨折 1
座長:井口 理(練馬総合病院整形外科)
2-5-1
中手骨基節骨骨折に対するナックルキャストの治療成績
Knuckle cast for fracture of the metacarpus and proximal phalanx
高原 政利(泉整形外科病院 手肘スポーツ)
近藤 幹朗
中手骨・基節骨骨折の 82 例 101 指にナックルキャストを平均 3.6 週間装着し、96% は平均 4.7 週で痛み
なく、87% は平均 6.3 週で可動域制限がなく、20°以上の可動域制限は 1% のみであった。11 週以上観
察した 33 指に可動域制限はなかった。痛みや可動域制限が残る頻度は転位残存群(22%)の方が転位
なし群(8%)よりも高かった。骨癒合は平均 7.2 週で得られた。ナックルキャストは優れた治療法であ
り、第 1 選択となる。
2-5-2
中手骨骨幹部骨折に対する観血的治療―髄内釘法と ORIF 法の比較―
Invasive Surgery for the Shaft of Metacarpal Bone Fracture
峯 博子(医療法人友和会 鶴田整形外科)
鶴田 敏幸
今回,中手骨骨幹部骨折に対する髄内釘法と ORIF 法の有用性について検討した。対象は 33 例 39 指で,
髄内釘法 19 例 23 指,ORIF 法 14 例 16 指である。平均手術時間,平均骨癒合期間は,両群間に明有意
差はなかったが,競技復帰までの期間は,髄内釘群の方が有意に早かった。社会人の場合,仕事内容
によって職場復帰の可否は異なるが,スポーツ競技者の場合は早期に競技復帰可能な髄内釘法のほう
が有用ではないかと思われた。
Room 5
2-5-3
髄内釘固定法を行った中手骨骨折の治療成績
Treatment of Metacarpal Fractures with Intramedullary Fixation
北條 潤也(平成記念病院 整形外科)
小野 浩史,面川 庄平,田中 康仁
中手骨頚部及び骨幹部骨折の 26 例に対して髄内釘固定法を行った。徒手整復を行い、中手骨基部に
太い鋼線で刺入孔を作成し、弯曲をつけておいた鋼線を刺入し固定した。鋼線は平均 2.0 本を使用し、
全例骨癒合した。中手骨長は術後短縮を平均 3.2mm 認めた。伸筋腱や尺骨神経損傷、感染は認めな
かった。最終経過観察時に cross finger を 1 例、MP 関節の可動域制限を 2 例で認めた。不安定性のあ
る症例は別の治療法が良いと考えた。
204
2-5-4
中手骨頚部・骨幹部骨折に対する治療成績と問題点
Outcomes and complications of the operative treatment for metacalphal neck and shaft
fractures
井下田 有芳(江東病院 整形外科)
内藤 聖人,金子 和夫,梶原 一
中手骨骨折に対する当院での手術加療の治療成績を報告する。過去 5 年間で手術加療を行った頚部骨
折 10 例(鋼線によるピンニング・随内釘)、骨幹部骨折 9 例(スクリュー・プレート)を対象とした。全
例骨癒合を確認できたが、頚部骨折 1 例で術後掌屈変形を認め、遷延癒合を認めた骨幹部骨折 2 例に
対して LIPUS を使用した。中手骨骨折は軟部組織への侵襲を考慮し、強固な固定を得るための工夫
が求められる骨折の一つと考える。
14:31~15:16
一般演題 40:炎症 2
座長:福本 恵三(埼玉成恵会病院・埼玉手外科研究所)
2-5-5
米粒体を伴った慢性腱鞘滑膜炎の検討
Chronic tenosynovitis with rice body formation ; 5 cases report.
山本 大樹(金沢大学附属病院 整形外科)
多田 薫,岡本 駿郎,八野田 愛,土屋 弘行
2-5-6
クラミジア関連関節炎の手関節画像所見の検討
Evaluation of radiographic findings of Chlamidia-associated arthritis.
岡田 貴充(九州大学 医学部 整形外科)
大石 正信,小山田 亜希子,竹内 直英,岩本 幸英
手関節痛で発症したクラミジア関連関節炎の手関節画像所見について検討したので報告する。血清学
的にリウマチ因子、抗 CCP 抗体が陰性で関節リウマチが否定され、クラミジア抗体陽性の 6 例の画像
所見では、骨びらんを有頭骨に多く認め、全例に TFCC 損傷を認めた。前医診断は TFCC 損傷が 3 例、
関節リウマチ 3 例で、発症から診断確定まで平均 40.3ヶ月を要していた。原因不明の手関節痛は念頭
に置く必要がある。
205
Room 5
慢性腱鞘滑膜炎は、しばしば日常診療で遭遇する疾患であるが、米粒体形成を伴うものは比較的稀で
ある。今回我々は、米粒体形成を伴った慢性腱鞘滑膜炎 5 例について検討を行ったので報告する。腱
鞘滑膜炎の原因は、関節リウマチ 1 例、非結核性抗酸菌 2 例、Candida 1 例、不明 1 例であった。米粒
体を伴った腱鞘滑膜炎では、抗酸菌感染症のみでなく Candida 感染症も念頭に置く必要があると考え
られた。
2-5-7
手における非結核性抗酸菌感染症の治療経験
Treatment for Nontuberculous Mycobacterial Infection of the Hand
納村 直希(金沢医療センター 整形外科)
池田 和夫,多田 薫
臨床経過と病理組織像から非結核性抗酸菌感染症と診断した 7 例について治療成績を検討した。起因
菌が同定できたのは 4 例であった。病理所見では、類上皮肉芽腫を全例、多核巨細胞を 4 例、乾酪壊
死を 3 例に認めた。術後再発例が 2 例あった。非結核性抗酸菌感染症は、起因菌が同定不能であっても、
病理所見および臨床経過から強く本症を疑う場合は、術後早期に三剤併用療法を開始することが望ま
しいと言える。
2-5-8
非定型抗酸菌感染による手の化膿性腱鞘炎に対する治療戦略
Strategy of the treatment of tenosynovitis in the hand caused by non-tuberculous
mycobacterial infection.
原 章(順天堂大学附属 順天堂浦安病院 整形外科)
工藤 俊哉,山本 康弘,楠瀬 浩一
非定型抗酸菌感染による手の化膿性腱鞘炎に対する治療戦略と臨床成績を報告する.症例は 9 例で,
全例,切除滑膜の病理所見は類上皮肉芽腫であった.8 例を培養に提出し全例菌が判明した.内訳は,
M. marinum 6 例、M. fortuitum 1 例,M.kansasii 1 例で,菌の同定には平均 36.9 日,薬剤感受性検査
結果の判明には平均 43.3 日を要した.全例,複数の抗菌薬投与を 6 カ月から 1 年施行し治癒した.
2-5-9
手関節結核により屈筋腱断裂を生じた稀な 1 例
Rupture of flexor tendon due to wrist tuberculosis, a case report
Room 5
山中 清孝(多根総合病院 整形外科)
松村 健一
40 歳,男性.1 年以上前より続く手関節の腫脹,前腕の筋委縮があった.画像所見では手関節の骨髄
炎像とともに屈筋腱内に滑膜増殖による腫瘤を形成していた.滑膜切除を行い,結核の診断となった.
示指,小指の深指屈筋の断裂を認めたため,化学療法終了後,腱剥離術と腱移行術を行った.症状に
乏しいこと,他の疾患に間違われやすいことからも診断が遅れやすい.早期に診断し,関節機能を温
存することが重要である.
206
15:25~16:19
一般演題 41:腱損傷(臨床)
座長:大井 宏之(聖隷浜松病院)
2-5-10
長母指伸筋腱皮下断裂に対する治療
Surgery for closed rupture of the extensor pollicis longus tendon.
小平 聡(埼玉成恵会病院 埼玉手外科研究所)
福本 恵三,加藤 直樹,菅野 百合,久能 隼人
長母指伸筋腱皮下断裂に対する 3 術式を比較した。対象は、伝達麻酔下腱移行術 4 例、局所麻酔下腱
移行術 3 例、局所麻酔下腱移植術 3 例であり、Riddell の評価、qDASH、愁訴の問診で術後評価を行
った。すべての術式が Riddell の評価では良好な成績であったが、患者主体の評価では腱移植術が優
れていた。固有示指伸筋の筋力が弱い点や、移行腱の機能転換が不十分な症例が存在する点が原因と
推測された。
2-5-11
長母指伸筋腱皮下断裂の検討
Rupture of extensor pollicis longus
建部 将広(安城更生病院 手の外科・マイクロサージャリーセンター)
田中 健司,澤田 英良,丹羽 智史,三竹 辰徳
長母指伸筋腱皮下断裂症例 37 例について検討した。橈骨遠位端骨折・関節リウマチによるものが多く、
また原因の不明なものも認めていた。橈骨遠位端骨折では保存療法施行例により多く認められ、受傷
から発症までの期間は手術症例が有意に長かった。治療は腱移行を行い良好な成績が得られていた。
2-5-12
田中 雅尋(聖マリアンナ医科大学 整形外科学講座)
清水 弘之,新井 猛,小山 亮太,別府 諸兄
長母指伸筋腱(EPL)皮下断裂の中には母指 MP 関節伸展不全を合併する病態が存在する.EPL 皮下断
裂 69 例の内 MP 関節伸展不全(短母指伸筋腱は欠損 5 例,低形成 2 例,断裂 1 例)を伴った 8 例(骨折後
6 例,RA1 例,母指 CM 関節症 1 例)では脆弱性骨折後 EPL 断裂までの平均期間は 9 日であった.骨折
後 EPL 皮下断裂までの期間は約 4~8 週との報告が多いが,母指 MP 関節伸展不全合併例では,母指
MP 関節伸展機能を EPL が代償し早期断裂を生じる可能性がある.
2-5-13
指 PIP 関節伸展制限に対する Ohshio 法の治療経験
Ohshio’s method for extension disorder of PIP joint of digits.
増田 秀輔(慶應義塾大学 整形外科)
佐藤 和毅,越智 健介,岩本 卓士,松村 昇
Ohshio 法は指ボタン穴変形に対する手術法の一つで、lateral band の背側移動により PIP 関節伸展力
を補うものである。今回私たちは、RA や外傷に伴うボタン穴変形に加え DIP 関節過伸展を伴わない
PIP 関節伸展障害に対して Ohshio 法を行ったのでその治療成績を報告する。
207
Room 5
母指 MP 関節伸展不全を伴った長母指伸筋腱皮下断裂例の検討
Case reports ; a rupture of the extensor pollicis longus tendon with an extension lag of
the thumb metacarpophalangeal joint
2-5-14
手指腱鞘炎に対する超音波ガイド下腱鞘内ステロイド注射後の再発に影響
を与える因子の検討
Risk factors for recurrent trigger finger in patients who have already received an
ultrasound-guided intrasheath corticosteroid injection
四宮 陸雄(広島大学 医学部 整形外科)
砂川 融,中島 祐子,川西 啓生,越智 光夫
手指腱鞘炎に対する超音波ガイド下腱鞘内ステロイド注射後 1 年以内に再発した症例の再発に関わる
因子についてロジスティック回帰分析を用いて検討した.種々の要因の中で,注射前に認められる浅
指屈筋腱(FDS)内の超音波低輝度変化は腱鞘内ステロイド注射後の再発に有意に相関することが分か
った.つまり,注射前に認められる FDS 内の超音波低輝度変化は,手術療法を検討する一つの指標
となる可能性がある.
2-5-15
Zone1 屈筋腱断裂に対する pull out wire 法後の早期自動屈曲運動法
Early active flexion exercise after finger flexor tendon in zone1 repair operation
usingpull out wire method
野中 信宏(愛野記念病院 手外科センター)
田崎 和幸,宮崎 洋一,坂上 秀和,貝田 英二
本報告は,pull out wire 法を用いて修復した Zone1 の手指屈筋腱断裂 7 例 8 指に対して早期自動屈曲
運動法を行った治療成績を示したものである.結果は優 6 指,不可 1 指,再断裂 1 指であった.pull
out wire 法では腱縫着部が腱停止部になるため,癒着は腱縫着部位より必ず近位に存在する.したが
って癒着改善や安全面において伸展運動を行う Klinert 法よりも自動屈曲運動法がより適している.
Room 5
208
第 6 会場(Room 6)
8:20~8:56
一般演題 42:中手骨骨折 2
座長:河野 慎次郎(埼玉医科大学整形外科)
2-6-1
ラグビートップリーグ選手の中手骨骨幹部骨折 ―早期復帰に向けた治療―
Metacarpal Shaft Fractures of Rugby Players in Japan Top League -Treatment for
Early Return to Competition中尾 悦宏(中日病院 名古屋手外科センター)
中村 蓼吾,篠原 孝明,高橋 明子,茶木 正樹
トップリーグのラグビー選手の中手骨骨幹部骨折について、治療を紹介して考察し、競技復帰に向け
た取り組みについて報告する。5 例 5 手、右 3、左 2、第二中手骨 2、第三 2、第四 1 であった。治療法
は早期復帰を念頭に置いて検討し、全手で手術を施行した。骨折型や骨膜損傷の程度を考慮し、plate
固定を 4 手に screw 固定を 1 手に施行した。術直後より運動療法を指導した。全手で骨癒合が得られ、
平均 57 日で受傷前のレベルで実戦へ復帰した。
2-6-2
イリザロフ・ミニ創外固定器を用いた母指中手骨底部骨折の治療成績
Use of the Ilizarov mini-external fixator for a juxta-articular base fractures of 1st
metacarpal bones.
友利 裕二(日本医科大学大学院医学研究科整形外科学分野)
澤泉 卓哉,南野 光彦,小寺 訓江,高井 信朗
母指中手骨底部骨折は関節近傍骨折であることに加え、CM 関節の自由度が大きいためプレート固定
や鋼線固定のみでは強固な固定性が得られずに、しばしば術後外固定を要する。イリザロフ・ミニ創
外固定器は術直後から可動域訓練が可能で骨折部周囲の腱や軟部組織への侵襲も少ないため母指中手
骨底部骨折に対して有効な治療法と考えられる。しかし、屈曲・内転変形が遺残する症例も散見され
るため整復時に注意する必要がある。
2-6-3
Bennett 骨折に対する mini screw 固定の治療成績
志村 治彦(東京ベイ・浦安市川医療センター 整形外科)
二村 昭元,石井 宣一,藤田 浩二
Bennett 骨折に対する mini screw 固定の治療成績について検討した。症例は 2009 年以降に手術を施行
した Bennett 骨折 6 例である。男性 6 例で右手 4 例左手 2 例であった。平均年齢は 37.7 歳(22 − 66 歳)で、
経過観察期間は平均で 6.2(3 − 12 か月)であった。術後再転位は見られず骨癒合は全例に得られた。1
例で 1mm 未満の関節面の Step Off がみられた。%握力は平均 82.1(78.9 − 97.8)%、quick-DASH は平
均 4.5(0 − 13.6)であった。
209
Room 6
Operative treatment of Bennett fracture using mini screw
2-6-4
交叉指変形に対する矯正骨切り術―動作解析の基づいた手術シミュレーシ
ョン―
Three Dimensional Corrective Osteotomy for the Phalangeal Deformity with
Overlapping Fingers: Preoperative Simulation Based on the Motion Analysis
岡 久仁洋(大阪大学 整形外科)
信貴 厚生,大浦 圭一郎,田中 啓之,村瀬 剛
交叉指変形に対し、動作解析に基づいた 3 次元矯正骨シミュレーションと患者適合型手術ガイドを用
いて 7 例に手術を施行した。術後全例、指交叉は消失した。単純 X 線正側面の変形角は各々術前 7.6°、
2.3°が術後 1.0°、0.6°に改善した。基節骨の 3 例に術後健の癒着を認めたが腱剥離を行い、術前の可動
域は保たれた。本手法により、交叉指変形に対する正確な術前計画を立てることが可能であり、正確
な矯正骨切を行うことができた。
8:56~9:41
一般演題 43:バイオメカニクス
座長:村瀬 剛(大阪大学整形外科)
2-6-5
深指屈筋の筋力測定器の開発とその妥当性
Development of Power Measurement Device for the Flexor Digitorum Profundus and
its Validity
大山 峰生(新潟医療福祉大学大学院)
小田桐 正博,松澤 翔太,中村 雄一,吉津 孝衛
我々は FDP 筋力を正確に測定するために FDP 筋力測定器を開発した.本研究では Jamar 式,円筒型,
開発器の 3 種の握力測定器を用い,FDP を一定強度で電気刺激した時の握力を測定した.また開発器
を用い,環指の FDS 単独刺激,FDP 単独刺激,FDS と FDP の同時刺激時の指屈曲力を測定した.
FDP 電気刺激時の握力は開発器で最も高く,本器による握力には FDS の収縮張力が反映されづらい
ことが判った.開発器は FDP 筋力をより正確に測定可能である.
2-6-6
Room 6
筋腱駆動装置を用いた未固定屍体母指 CM 関節固定前後の三次元的動作解析
A biomechanical comparison of the thumb-tip trajectory with/without
trapeziometacarpal joint fusion: a cadaveric study.
河野 友祐(慶應義塾大学 整形外科)
中村 俊康,多田 充徳,名倉 武雄,佐藤 和毅
未固定屍体 6 体を用いて CM 関節固定前後での関節運動の変化を調査した。母指に関与する内在筋に
重錘をかけ、筋腱駆動装置を用いて外在筋を牽引して生じた母指の 3 次元的な運動を光学式モーショ
ンキャプチャシステムを用いて計測し、関節固定前後のデータを比較検討した。母指の指尖が描く軌
跡は、CM 関節固定前に比べ固定後に約 3 割に減少していた。またその制限される領域は、おもに手
掌に近い部分であることがわかった。
210
2-6-7
異なる前腕肢位による手関節掌屈筋力の変化
Wrist flexion forces in different forearm positions.
吉井 雄一(東京医科大学茨城医療センター 整形外科)
唯根 弘,大橋 一希,ドン ウェンリン,石井 朝夫
手関節筋力測定装置を用いて健常者の異なる前腕肢位における手関節掌屈筋力の変化を調べた。健常
男性を対象として、前腕の各肢位(中間位、回内位、回外位)で手関節掌屈最大筋力を計測した。手関
節掌屈筋力は中間位、回内位、回外位それぞれで 8.0+/-3.0、8.3+/-3.1、11.9+/-2.9(Nm)で、回外位
での掌屈筋力は中間位、回内位に対して有意に大きかった。これは橈尺側手根屈筋の筋収縮が最も効
率的に作用するためと考えられた。
2-6-8
握力測定機器の違いによる浅指屈筋および深指屈筋の筋活動
The differences in contractile properties of the flexor digitorum superficialis and flexor
digitorum profundus between the power measuring devices
小田桐 正博(新潟手の外科研究所)
大山 峰生,中村 雄一,松澤 翔太,吉津 孝衛
Jamar 式握力計と我々が開発した握力測定器を用い,握力発揮時の FDS と FDP の活動を比較した.
開発器による測定は,指関節最大屈曲に近い power grip 肢位とした.Jamar は握力増大に伴い FDS
と FDP の活動が比例的に増加した.開発器では FDP は Jamar と同様の活動を示したが,FDS は最大
握力発揮時でも約 40%の活動に留まった.このことは,Jamar は両筋の活動を総合的に反映するが,
開発器は FDP 単独の機能評価に有用であることを示している.
2-6-9
投球動作および肘内側不安定性が与える肘関節応力分布の変化
Stress distribution in throwing motion and medial collateral ligament injury in baseball
players
船越 忠直(北海道大学整形外科)
古島 弘三,門間 太輔,遠藤 香織,岩崎 倫政
211
Room 6
Computed tomography osteoabsorptiometry(CTOAM 法)により投球動作および肘関節不安定性が関
節応力にもたらす影響をボランティア 17 名、無症候性野球選手 20 名、MCL 群 30 名を対象に検討した。
投球動作により小頭前方と滑車後方に応力集中が生じると考えられた。加えて肘外反動揺性を認める
と小頭前方、滑車前方、滑車後方に広範囲に応力が集中していた。
10:00~11:03
一般演題 44:機能評価・労働災害
座長:清水 弘之(聖マリアンナ医科大学)
2-6-10
SF︲12 による上肢筋骨格系疾患における健康関連 QOL 評価法の検討 ~上肢、下肢、脊椎での比較検討~
The measurement of health-related quality of life (QOL) by SF-12 in upper limb
musculo skeletal disorders
目貫 邦隆(産業医科大学 整形外科)
平澤 英幸,善家 雄吉,中村 英一郎,酒井 昭典
当科初診患者 1040 名を対象に SF-12 による健康関連 QOL の調査を行い、過去行ってきた 3922 名を対
象とした SF-36 のデータと比較検討を行った。SF-12、SF-36 ともに疾患部位の影響が大きく、手・
肘での QOL は一番高く、腰・股では一番低い結果であった。SF-12 と SF-36 との比較では、疾患部
位別特徴および国民標準換算値は同等の結果であった。SF-12 は短時間で調査でき、臨床現場での健
康関連 QOL 調査の手段として妥当であると考えられた。
2-6-11
手・肘関節疾患患者における簡易上肢機能検査
(STEF)
と関節可動域の関係
Relationship between Joint Range of Motion and Simple Test for Evaluating Hand
Function (STEF) in Wrist or Elbow Disorders.
太田 光俊(北海道大学 医学部 整形外科)
河村 太介,船越 忠直,岩崎 倫政
手・肘関節疾患患者において,関節可動域制限が簡易上肢機能検査(STEF)スコアに影響を及ぼすと
いう仮説をもとに,手・肘関節手術予定患者の術前患側 STEF スコアと患側 ROM(手関節掌背屈,前
腕回内外,肘関節屈伸)の相関を調査した.手関節疾患患者において,STEF スコアと手関節掌背屈
arc および前腕回内可動域に有意な相関を認めた.STEF は,手関節・前腕の可動域制限を有する症
例において有用な機能評価法と考えられる.
2-6-12
手指機能障害における罹患部位別の簡易上肢機能検査(STEF)成績の検討
Study of the STEF score differences in the disease part of finger functional disorder.
Room 6
小川 圭太(北海道大学病院 リハビリテーション部)
河村 太介,稲垣 侑士,生駒 一憲,岩崎 倫政
手指機能障害患者 37 例の STEF と DASH との関連を検討し、罹患部位別の STEF を比較した。母指群・
示中指群・環小指群全てで STEF と DASH に有意な負の相関を認め(p < 0.01)、群間比較では STEF
患健比で有意差を認め、環小指群と比較して母指群・示中指群で有意に低い値となった(p < 0.01)。
つまみ動作に関係する母指・示中指領域の疾患で STEF が低下しやすいことが考えられた。
212
2-6-13
上肢運動器疾患における機能障害と心理学的要因の関連―DASH スコアと
運動恐怖―
Contribution of psychological factors to DASH score in upper extremity specific
disability
千見寺 貴子(札幌医科大学 医学部 解剖学第2講座)
射場 浩介
上肢運動器疾患患者に対して心理的評価と上肢機能評価を行い,その関連性について検討を行った.
上肢運動器疾患を有する患者において,上肢機能評価は運動恐怖症とのみ強い相関を認めた(ρ=0.81,
p < 0.01).本結果から運動恐怖が上肢機能に影響を与える可能性が示唆された.
2-6-14
労働災害事故による上肢外傷患者の注意機能の特性
Characteristics of attentional function in patients with work-related accidents leading
to upper extremity injuries.
白戸 力弥(札幌医科大学 附属病院 リハビリテーション部)
太田 久晶,石合 純夫,射場 浩介,山下 敏彦
注意機能と労災事故発生の関連性を明らかにするために,標準注意検査法を用いて,労災事故による
上肢外傷患者の注意機能を調査した.対象は不注意により生じた労災事故による上肢の外傷患者 9 例
とした.9 例中 8 例で 1 つ以上の下位検査で成績低下を認めた.最も成績低下を認めた課題は,記憶更
新課題 4 スパンであり,4 例で成績低下を認めた.注意機能の低下は,労災事故による上肢外傷の発
生要因となり得る可能性が示唆された.
2-6-15
労働災害による難治性手外科外傷症例の発生予防に関する検討
Examination of the occurrence prevention for severe hand trauma injury cases due to
occupational accidents
善家 雄吉(産業医科大学整形外科)
酒井 昭典,目貫 邦隆,平澤 英幸,山中 芳亮
213
Room 6
労働災害による難治性手外科外傷症例をもとに、労働者の外傷予防に感心のある多分野の専門家を 7
名収集し、「上肢外傷を防止するために実施すべき取り組み」のテーマで各人がアイディアを書き出
し、KJ 法を用いて、得られた内容をカテゴリーごとに分類し、スクリプト化して項目を整理した結果、
重篤な手外科外傷が起きないようにするための 11 のポイントが整理された。今後は、本研究の結果
を踏まえ産業医学現場に還元していく。
2-6-16
労働災害による手外科外傷症例の治療が長期化する要因についての検討
Examination of struggled hand trauma cases due to occupational accidents -Factors
for prolonged treatment善家 雄吉(産業医科大学整形外科)
福本 恵三,篠根 理孝,芝山 浩樹,酒井 昭典
難治性手外科外傷症例 117 例、平均年齢 40.1 歳を対象とし、これら症例の詳細を検討した。結果、受
傷原因として、はさまれ・巻き込まれ症例の割合が高かった。また感染の併発に加えて、剥脱損傷に
おける手袋着用の割合が高く、これらが重症化の要因と考えられる。今後は治療による重症化させな
い努力(感染制御)に加え、はさまれ・巻き込まれを起こさない、あるいは起きても重症化しないため
の対策を講じる必要がある。
Room 6
214
12:40~13:40
西新宿セミナー 11
座長:矢部 裕(慶應義塾大学)
2-6-LS11
手と人類の進化―手と脳のかかわり―
高橋 正憲(東京歯科大学 名誉教授)
ヒトは 700 万年前にチンパンジーから枝分かれした若輩者ですが、手を自由の使うことの魅力に牽
かれて長い時間と努力の結果、200 万年前にホモ・エレクトスが直立 2 足歩行を獲得しました。2 足歩
行の確立で手が器用に使われるようになり、左右を使い分ける必要性から利き手ができて、精巧な石
器などを作り使うようになりました。それにつれてそれまでチンパンジーと変わらなかった脳も大き
くなり形も変わっていったことが、化石の復元による頭蓋から推測できます。手の役割が増すととも
に、集団でのコミュニケーションの必要性から手などによるボディランゲジが盛んになり、その結果
右利きでは左脳に言語中枢が作られました。言語で過去や未来を語り、考えを他人と共有できるよう
になり、更に文字の登場でコミュニケーション能力は急速に高まっていきました。長い石器時代の後、
人は手を使って急速に科学技術を発達させ、音楽を奏で、芸術作品を作り、文学を記すようになって、
今、人類は文化・文明の繁栄を謳歌しています。脳が大きくなり機能が高まったことがチンパンジー
と変わらなかった初期人類を現代人にまで進化させましたが、その背景にはヒトが手を器用に使い言
語を使って、脳の機能を高めたことにあります。
赤ん坊の脳では神経細胞は出来ているのですが機能は未熟です。しかしその後手を使い、歩き、言
葉を話すようになって脳機能は急速に発達します。視覚や聴覚障害などで刺激の入らない中枢は発達
しないで他の機能に置き換わるとも言われています。それぞれの脳機能には発達の臨界期があり、臨
界期に最適な刺激が入らなければ脳の発育は障害され充分な機能は発揮できません。即ちヒトの脳は
変化するように創られていて、良い刺激のも悪い刺激にも反応する可塑性があると言えます。脳の可
塑性を意識してミラ-ニュ-ロンなどを活用することで、英才教育やフォーカルジストニアなどへの
アプローチが見つかるかも知れません。
Room 6
215
13:55~14:58
一般演題 45:肘部管症候群
座長:浦部 忠久(足利赤十字病院整形外科)
2-6-17
肘部管症候群手術症例における電気生理学的検討
Electrophysiological assessment of cubital tunnel syndrome after the decompression
surgery
隈部 洋平(神戸労災病院)
金谷 貴子,名倉 一成,美舩 泰,国分 毅
肘部管症候群 49 例の術後 1 年での電気生理学的回復を赤堀の病期分類(1-5 期)に基づき検討した。術
前は 1 期:8 例、2 期:3 例、3 期:11 例、4 期:23 例、5 期:4 例で、術後は 1 期:10 例、2 期:6 例、3
期:28 例、4 期:3 例、5 期:2 例となり重症例(4, 5 期)は有意に減少し、中程度例(3 期)は術後で有意
に増加した。肘部管症候群は手術加療によって重症例でも電気生理学的回復は期待できる.
2-6-18
肘部管症候群に対する鏡視下前方移行術の治療成績
Clinical results of the anterior transposition of ulnar nerve with endoscopic assistance
in the patients with cubital tunnel syndrome
小西池 泰三(岡山赤十字病院 整形外科)
三喜 知明
我々は奥津法に若干の工夫を加えた神経前方移行術を考案した。これは USE システムをガングリオ
ンなどの確認のため術中の検査に用いる。神経の前方移行に障害となる繊維性組織は鏡視下に切離す
る。術後の尺骨神経の神経溝の落ち込みを予防するため肘部管を閉鎖するというものである。術後 1
年以上を経過した 65 手の治療成績は優 23、良 30、可 11、不可 1 手であった。術後、尺骨神経は全例
前方に移行されていた。
2-6-19
肘部管症候群に対する尺骨神経前方移動術(transmuscular anterior
transposition)の臨床成績と予後因子
Clinical outcome and prognostic factors of the patients with cubital tunnel syndrome
treated by transmuscular anterior transposition of the ulnar nerve
Room 6
矢野 公一(清恵会病院 整形外科)
恵木 丈,川端 確,鈴木 啓介,池田 幹則
肘部管症候群に対して transmuscular anterior transposition 法を用いて手術加療を行い、術後 1 年以
上経過観察ができた 34 肘を対象として治療成績と予後因子を検討した。術前罹病期間、変形性肘関
節症(OA)、糖尿病、術前神経伝導検査結果等を予後因子、アウトカムを赤堀予後評価と術後患者主
観評価とした。赤堀予後評価は優 14 肘、良 9 肘、可 10 肘、不可 1 肘、患者主観評価は改善 27 肘、不
変 7 肘、赤堀予後評価と OA が有意な関連を示した。
216
2-6-20
肘部管症候群における神経変性所見の病態への関与―鏡視下尺骨神経異常
所見と術前臨床症状重症度の関係―
Relation between abnormal endoscopic nerve findings and clinical severity in cases of
cubital tunnel syndrome
吉田 綾(取手北相馬保健医療センター医師会病院 整形外科)
奥津 一郎,浜中 一輝
肘部管症候群に対する鏡視下神経剥離術での鏡視下尺骨神経異常所見長と術前臨床症状重症度には、
明らかな相関を認めなかった。絞扼性末梢神経障害における神経変性は局所の絞扼の程度に関わらず
一定の範囲で生じ、臨床症状重症度は局所絞扼による神経障害の程度に因ると考えられた。
2-6-21
術前病期分類に基づいた肘部管症候群の治療戦略:重症例に対する一期的
示指外転再建術の有効性について
Treatment of cubital tunnel syndrome based on preoperative grade of palsy: Effects of
simultaneous tendon transfer to restore index abduction for severe cases
加藤 直樹(埼玉成恵会病院・埼玉手外科研究所)
福本 恵三,菅野 百合,小平 聡,久能 隼人
ピンチ動作の障害を強く訴える赤堀の術前病期分類 4 期以上の重度の肘部管症候群に対して、移行腱
の緊張度を統一するように工夫した示指外転再建術(Neviaser 法)を一期的に行い、その治療成績を検
討した。結果、我々の行っている Neviaser 法で比較的安定したピンチ力の増加が得られていること
を確認した。術前病期分類 4 期以上では希望に応じて示指外転再建術を一期的に行った方が良いと思
われた。
2-6-22
肘部管症候群術後における上肢機能評価値の反応性と特徴
Responsiveness and Characteristics of Upper Extremity Functional Parameters in
Postoperative Patients with Cubital Tunnel Syndrome
井戸 芳和(信州大学 医学部附属病院 リハビリテーション部)
内山 茂晴,林 正徳,今枝 敏彦,加藤 博之
217
Room 6
肘部管症候群術後患者 39 例における各種上肢機能評価値の反応性とそれらの相関関係を調査した.
中等度以上の反応性を示したものは,術後 1 か月の時点で SW としびれ,3 か月で握力,2PD および
DASH,さらに 6 か月で神経伝導速度病期分類とサイドピンチと経時的に増加していった.すべての
時期において一貫して DASH と相関関係にあったものは,しびれと握力のみであり,それらの評価
の重要性が示唆された.
2-6-23
野球選手に生じた尺骨神経障害の手術成績とその問題点
Ulnar nerve disorder in baseball players
今田 英明(国立病院機構 東広島医療センター整形外科)
渋谷 早俊,新本 卓也,松下 亮介,岸 和彦
野球選手に生じた尺骨神経障害に対する手術成績を報告する。対象は 12 例、平均 18.5 歳であった。
全例に尺骨神経皮下前方移動術を行い 7 例に骨棘・遊離体切除を、1 例に MCL 再建術を合わせて行っ
た。術後全例で肘内側の痛みとしびれの改善を認めたがスポーツに完全復帰できたのは 9 例(75%)で
あった。尺骨神経皮下前方移動術は早期復帰を希望する本障害例の治療として有用であったが他の障
害を合併した場合は症状が残存する可能性がある。
14:58~15:52
一般演題 46:肘関節(成人)
座長:高原 政利(泉整形外科病院)
2-6-24
尺骨鉤状突起に関する解剖学的検討
An anatomic study of the ulnar coronoid process
志村 治彦(東京医科歯科大学大学院 整形外科学分野)
二村 昭元,今谷 潤也,大川 淳,秋田 恵一
terrible triad injury の治療成績向上のために尺骨鉤状突起の骨性要素と付着する軟部組織との関係性
を解剖学的に検討した。肘関節包の鉤状突起付着部を測定し、関節包と鉤状突起先端の骨軟骨成分の
関連性の検討を行った。関節包の近位付着部は鉤状突起先端から 5.8 ± 0.9mm であった。矢状断での
観察では、関節包の付着部より近位に 1.9 ± 0.2mm の骨性成分を、4.7 ± 0.2mm の骨軟骨成分を認めた。
2-6-25
Lateral para︲olecranon approach による two︲window technique を用
いた上腕骨遠位端骨折の治療経験
Two-window technique by using lateral para-olecranon approach for the treatment of
distal humerus fracture
Room 6
岩本 卓士(慶應義塾大学 整形外科)
名倉 重樹,稲葉 尚人,鈴木 拓,佐藤 和毅
対象は 9 例 9 肘,骨折型は AO 分類 A2:3 例,C1:3 例,C2:3 例であった.手術は lateral para-olecranon
approach により展開し,上腕三頭筋 1/2 を左右にずらす“two-window”アプローチにより骨折部の整
復固定を行った.術後 ROM は屈曲平均 126°,伸展平均 -10°であり,上腕三頭筋に起因する合併症は
生じなかった.肘頭骨切りを必要としない本法でも関節面の後方部分は十分確認可能であり,X 線透
視を併用することで良好な整復が得られた.
218
2-6-26
骨脆弱性を有する高齢者の上腕骨遠位端骨折に対する治療課題
Treatment of distal humerus fractures in the elderly with bone fragility
森谷 史朗(岡山済生会総合病院 整形外科)
今谷 潤也,前田 和茂,桐田 由季子,近藤 秀則
骨脆弱性を有する高齢者上腕骨遠位端骨折 52 例の治療上の問題点を調査し最適な治療方針を検討し
た.本骨折においては不適切な手術手技が初期固定性不良に直結した.また前額面多骨片を伴う C3
の骨接合術では関節面骨片の再転位例を認め,primary TEA の選択も考慮すべきである.本研究で
は 9 例(17%)にさらなる骨折を生じており,骨折の連鎖を予防するためには本骨折の治療のみならず,
初療時からの骨粗鬆症治療への積極的な介入も重要となる.
2-6-27
上腕骨遠位端骨折の治療と術後合併症の検討
Complication after treated distal humerus fracture
飯田 竜(永井病院)
辻井 雅也,國分 直樹,植村 和司,須藤 啓広
症例は上腕骨遠位端骨折 24 例(平均年齢 73.7 歳)で,転倒 19 例,転落 5 例.治療は保存 1 例,手術 23
例で,術式は CCS 2 例,後外側 plate+ 内側 screw 3 例,double plate 18 例(C 型 7 例で肘頭骨切り)で
あった.保存 1 例に偽関節,double plate を行わなかった C3 型の 2 例に術後転位を認めた.一方術後
尺骨神経麻痺を 22%認めた.上腕骨遠位端骨折は,double plate による強固な固定が重要であるが,
術中の尺骨神経に対する配慮,術前の informed consent が大切と考える.
2-6-28
肘関節脱臼・脱臼骨折に対する手術療法の治療成績
Functional outcome after operation of Elbow dislocation and dislocation Fracture
林 孝典(倉敷中央病院)
松本 泰一,津村 卓哉,高山 和政,松下 睦
当院における 2008 年から 2013 年までに手術加療を行った肘関節脱臼および脱臼骨折に対する治療成
績について報告する。症例は 14 人、14 肘(男性 6 名、女性 8 名)で検討項目は術後 3ヶ月、6ヶ月の JOA
スコアーおよび関節可動域である。術後 3ヶ月の平均 ROM は屈曲 123 度、伸展 -20 度、JOA スコアー
は 81 点で、術後 6ヶ月では屈曲 134 度、伸展 -18 度、JOA スコアーは 89 点に改善した。
血友病性肘関節症に対する鏡視下滑膜切除術の治療成績
Arthroscopic synovectomy for haemophilic elbow arthropathy
轉法輪 光(地域医療機能推進機構 大阪病院)
富永 明子,島田 幸造
血友病性肘関節症 4 例 4 肘に対して鏡視下滑膜切除術を行った。手術では、関節鏡視下に易出血性の
増殖した滑膜を切除し、1 例では橈骨頭形成術を追加した。術中、術後には正常レベルになるように
第 8 因子製剤を補充した。術後可動域や単純 X 線像の改善が見られた。1 例にて術後 1 日目に関節内出
血がみられた以外には大きな出血イベントはみられなかった。本法を行うことにより、新たな出血を
防ぎ、関節機能の改善が得られた。
219
Room 6
2-6-29
16:00~16:36
一般演題 47:母指 CM 関節 1
座長:鈴木 修身(JA 広島総合病院整形外科)
2-6-30
母指手根中手(CM)関節症における第 1 中手骨亜脱臼率に関する検討
The Rate of First Metacarpal Bone Subluxation in Osteoarthritis of the
Carpometacarpal Joint of the Thumb
金谷 治尚(鳥取大学医学部附属病院 整形外科)
山下 優嗣,林原 雅子,藤田 章啓,永島 英樹
第 1 中手骨の亜脱臼率が、母指 CM 関節症に与える影響について検討した。対象は 2010 年以降に当院
で手術を行った母指 CM 関節症患者 17 手で、検討項目は母指の可動域、対健側握力比、DASHscore
とした。結果は単純 Xp 正面像での脱臼率が多い群で DASHscore が有意に悪化していた。また可動域
は亜脱臼率の高い症例で良い傾向にあり、関節不安定性が可動域増大に寄与している可能性が示唆さ
れた。
2-6-31
母指 CM 関節形成術後の MP 関節過伸展変形に関する検討:機能的レント
ゲン評価法を用いて
A study on hyperextension of MP joint following CM joint arthroplasty of the thumb:
evaluation using functional X-ray imagings
加藤 直樹(埼玉成恵会病院・埼玉手外科研究所)
福本 恵三,菅野 百合,小平 聡,久能 隼人
母指 CM 関節形成術後の MP 関節過伸展変形は臨床的によく問題となるが、その原因、治療法につい
ては未だ統一された見解はない。今回、術前から術後にかけて母指の機能的レントゲン写真を撮影し、
様々な因子と MP 関節伸展角度の相関関係を検討した。その結果、術後に MP 関節伸展角度の増加を
認めたものは 20 例であり、母指 MP 関節過伸展変形と最も相関係数が高かったのは自動橈側外転角度
の減少であった。
2-6-32
当院における母指 CM 関節症に対する手術成績
Clinical outcome of suspension arthroplasty for thumb carpometacarpal joint arthritis.
Room 6
神山 翔(キッコーマン総合病院 整形外科)
田中 利和,小川 健,岡野 英里子,落合 直之
当院では母指 CM 関節症に対し、撓側手根屈筋(FCR)半切腱を用いた関節形成術を行っている。今回、
その手術成績を報告する。母指 CM 関節症に対する手術療法は種々の方法が報告されているが、過去
の報告と比較しても本方法は良好な成績が得られた。
220
2-6-33
母指 CM 関節症に対する鏡視下大菱形骨部分切除術と靭帯形成術の治療成績
Treatment of partial trapeziectomy and ligament reconstruction under arthoscopy for
osteoarthritis of thumb CMC joint
辻井 雅也(三重大学大学院 整形外科)
飯田 竜,國分 直樹,藤澤 幸三,須藤 啓広
母指 CM 関節症に対する手術術式は様々であるが,大菱形骨切除は本疾患の key と考えられる.しか
し切除による母指列短縮は必発であり,当科で行っている鏡視下手術から大菱形部分切除と靱帯形成
術(二重束)の治療成績を検討した.術後有意な機能回復を認め、関節可動域も術前と同等であった。
今回の検討から大菱形骨部分切除の成績は良好であり、合併症の抑制や salvage 手術のためにも大菱
形骨の温存は有用な方法であると考えられた。
16:36~17:12
一般演題 48:母指 CM 関節 2
座長:瀧川 宗一郎(菊名記念病院整形外科)
2-6-34
Eaton 分類 stage3,4 の進行期母指 CM 関節症に対する第 1 中手骨外転対
立位骨切り術
The Surgical Results of Abduction-opposition Wedge Osteotomy of the First
Metacarpal Bone for Trapeziometacarpal Osteoarthritis in Eaton Stages 3 and 4
堂後 隆彦(西能病院 整形外科)
Eaton分類stage3,4の進行期母指CM関節症16例18手に対して、第1中手骨外転対立位骨切り術
(AOO)
を行った。第 1 中手骨基部で 30°の楔状骨切りを行い、ロッキングプレートで内固定した。全例骨癒
合し、VAS、Quick-DASH ともに改善した。X 線上関節裂隙の開大を認め、関節脱臼率は改善した。
手技が簡便で関節を温存できる利点を加味すると、AOO は進行期母指 CM 関節症に対する治療法と
して第 1 選択となりうる術式であると考えた。
2-6-35
三浦 俊樹(JR東京総合病院 整形外科)
岩科 麻紀,田中 伸弥,森崎 裕,宮本 英明
母指 CM 関節症に対し大菱形骨を切除し関節形成を行う際、骨切除量や靭帯再建法の工夫が術後母指
沈み込みを防げるか検討した。大菱形骨部分切除群 21 指では PL 腱を FCR 腱にかけて背側亜脱臼を制
動し、大菱形骨全切除群 13 指では APL 腱を用い FCR 腱との縫合に加え母指 - 示指中手骨間の靭帯再
建も行った。両群とも術後半年で母指長は 2.5mm 短縮していたがその後の更なる短縮はなかった。
本結果は過去の報告に比し母指沈み込みを抑制していた。
221
Room 6
母指 CM 関節症に対する関節形成術における母指沈み込み防止の工夫
Techniques to Minimize Thumb Subsidence after Arthroplasty for Thumb CMC
Arthritis
2-6-36
母指 CM 関節に対する遊離腱球移植による再建法
Tendon ball interposition and ligamentous reconstruction for CM arthritis of thumb.
山口 利仁(東京手の外科・スポーツ医学研究所 高月整形外科病院)
稲見 浩平,河原 三四郎,宇佐美 聡
母指 CM 関節症に対して表面置換型人工関節抜去後にサルベージ手術として行っていた遊離腱球移植
の結果が良かったため、現在この方法を行っている。手術は背側より関節を展開し人工関節置換術を
行なうように下準備し、橈側手根屈筋腱半裁腱で作成した直径約 1.5cm の腱球を挿入した後、背側靭
帯を遊離腱で補強する。25 例 26 指に施行し平均観察期間は 2 年 9ヶ月であるが全例きわめて良好な経
過である。
2-6-37
鏡視下母指 CM 関節形成術の臨床成績とレントゲン評価の関連
Correlation between clinical and radiological result of arthroscopic trapezium hemiresection arthroplasty for thumb carpometacarpal joint
速水 直生(奈良県立医科大学 整形外科)
面川 庄平,小畠 康宣,仲西 康顕,田中 康仁
6 か月以上経過観察した鏡視下母指 CM 関節形成術 17 症例の、術後の経時的レントゲン計測と、機能
評価との関連を調査した。手術により形成した関節裂隙距離は術後やや減少したが、短期の術後経過
で有意差を認めず保たれていた。母指長の保持が最終握力、ピンチ力の増大に関与した。
Room 6
222
第 7 会場(Room 7)
8:15~9:18
一般演題 49:組織解剖
座長:青木 光広(北海道医療大学病院)
2-7-1
前腕回旋運動における近位橈尺関節の解剖学的検討
Anatomical Study of the Proximal Radioulnar Joint in the Forearm Rotation
Movement
西村 敏(聖マリアンナ医科大学病院 整形外科学講座)
田中 雅尋,新井 猛,清水 弘之,別府 諸兄
当講座の解剖学的研究結果にて橈骨頭関節環状面の大きさに有意差を認めたことから,前腕回旋運動
に伴う尺骨橈骨切痕への適合性の変化や,近位橈尺関節(以下,PRUJ)の形態上の相違が,肘関節の
安定性や変性に関与している可能性について,PRUJ の解剖学的検討を行った.回内位における
PRUJ の適合する割合は,回外位の約半分であった.肘関節安定性の相違に,PRUJ における骨性因
子が関与する可能性が考えられた.
2-7-2
前腕骨間膜遠位腱様組織の解剖学的検討
The anatomical study of antebrachial distal interosseous membrane
木内 均(千葉大学大学院 医学研究院 整形外科学)
國吉 一樹,助川 浩士,上野 啓介,鈴木 崇根
新鮮凍結屍体を解剖し、前腕骨間膜遠位腱様組織(Distal Oblique Band; DOB)の存在率と存在の性差、
左右差および付着位置と形態について検討。DOB は尺骨側では尺骨の 17.3%、橈骨側では橈骨 8%の
位置(背側関節包)を付着部とし斜走。50%の検体で認めた。DOB 幅は平均 1.8mm、厚さは平均
0.6mm であった。DOB は遠位橈尺関節の安定性への関与が報告されており、存在率や形態等の情報
は前腕遠位の手術の際に有用であると考えられた。
2-7-3
上腕筋浅頭腱膜を用いた輪状靭帯再建の解剖学的検討
An anatomical study of the tendon of the Superficial Head of the Brachialis Muscle
for Annular Ligament Reconstruction
大西 正展(奈良医大 整形外科)
面川 庄平,清水 隆昌,飯田 昭夫,田中 康仁
223
Room 7
学生解剖実習用保存屍体 30 肢で上腕筋浅頭腱膜(以下 SB)を使用した輪状靭帯(以下 AL)の再建に関
する解剖学的研究を行った。採取 SB は AL 再建に十分な長さを有した。付着部形態から、SB は AL
に近似した再建材料として使用可能と考えらえた。AL 前方付着部と SB 付着部間の距離は比較的離れ
ていたが、SB を再建する際には 25 例(83%)が上腕二頭筋腱付着部より中枢を走行し、軟部組織の干
渉なく AL 再建が可能であった。
2-7-4
超高周波プローブを用いたエコーによる橈骨神経浅枝の正常解剖
Anatomical study of superficial branch of radial nerve using high-resolusion
diagnostic ultrasound imaging
乾 淳幸(神戸大学大学院医学研究科整形外科)
国分 毅,美舩 泰,藤岡 宏幸,黒坂 昌弘
橈骨神経浅枝と橈側皮静脈の位置関係を 82 手についてエコーを用いて検討した。神経と静脈の距離
は橈骨茎状突起から 0, 5, 10cm のレベルで各々、平均 1.1 ± 1.0mm, 1.4 ± 1.3mm, 2.1 ± 1.6mm であり、
神経誤穿刺ハイリスク群の占める割合は 82.7%, 62.9%, 46.9% であった。屍体を用いた過去の報告と同
様の傾向を認め、エコーは表在皮神経の観察に有用であると考えられた。
2-7-5
手指伸筋腱延長部と爪構造の観察と機能に対する考察
Structures of extended extensor tendon to the nail matrix
青木 伸峰(防衛医科大学校 形成外科)
東 隆一,清澤 智晴,松井 利康,小林 靖
爪と指伸筋腱末節骨付着部の間の線維性構造物の詳細な報告はない。観察と機能的役割の考察を行っ
た。解剖用献体 3 体の各手指、第 1、2 足趾合計 36 本を用い、指尖から末節骨近位までを顕微鏡下に
観察した。線維性構造物は、特に手指で発達し伸筋腱の約半分程度の厚さを持つことがわかった。
DIP 関節屈曲時には関節回転中心を軸に強く緊張し、爪甲を引き寄せ、ピンチ動作時の指尖形成に動
的に関わると考えられた。
2-7-6
小指 FDS 腱独立滑走を妨げる解剖学的要因
Factors to interfere with the independent sliding of FDS tendon of the small finger
木村 和正(越谷誠和病院 整形外科)
佐野 和史,増田 陽子,橋本 智久,大関 覚
【対象.方法】20 手の小指 FDS 筋腱を解剖し、徒手的 FDS テストを 140 手に行った。小指 FDS 腱独立
滑走を妨げる解剖学的要因を検討した。
【結果】FDS テストで小指 DIP 屈曲を伴う群が有意に高齢であった。20 歳以下では common type が、
65 歳以上では absent type が最多であった。
【まとめ】高齢者の場合、破格ではなく腱滑膜組織が小指 FDS 腱独立滑走を妨げる要因と思われた。
Room 7
224
2-7-7
Hypertrophic thenar muscle 存在例における正中神経運動枝の走行に関
する解剖学的検討
An anatomic study of the course of the motor branch of median nerve in relation with
the existence of hypertrophic thenar muscle
金塚 彩(千葉大学 大学院医学研究院 環境生命医学)
助川 浩士,小林 倫子,鈴木 崇根,國吉 一樹
手根管開放術の展開時に母指球皮線上で横手根靭帯を横切る筋組織を Hypertrophic thenar muscle
(HTM)と定義し、その有無と正中神経運動枝の走行を調査。対象は新鮮凍結屍体 4 体 8 手。運動枝の
メルクマールとなる Kaplan’s cardinal line と示中指間橈側線の交点は実際の分岐部より近位尺側に存
在した。8 手中 3 手に HTM を認め、遠位は短母指外転筋(APB)に連続し、HTM は APB の一部と考
えられたがその有無と運動枝の分岐に関連はなかった。
9:18~9:54
一般演題 50:音楽家医学・リハビリ
座長:佐野 和史(獨協医科大学越谷病院整形外科
2-7-8
音楽家の筋骨格系問題についてのアンケート調査と検診の報告
Questionnaire surveys and medical examinations for musicians about musculoskeletal
problems
金塚 彩(千葉大学 大学院医学研究院 環境生命医学)
助川 浩士,小林 倫子,鈴木 崇根,國吉 一樹
音楽家の筋骨格系の問題について現状を明らかにし、楽器ごとの演奏姿勢の特徴と症状の関連性を検
討した。音楽家 51 名を対象にアンケート調査、15 名に対し検診を行った。全般的に頸部痛や腰痛の
愁訴が多かった。手の外科疾患では腱鞘炎や Heberden 結節、肘部管症候群、ジストニアがみられた。
演奏肢位の特徴からファゴットとフルートは左上肢痛、チェロは右肩痛、大きく重い楽器は運搬に伴
う手や腰の痛みが愁訴であった。
2-7-9
音楽家の手における DASH︲SM と上肢患者立脚型評価尺度の関連性の検討
Correlation between DASH-SM and Patient-oriented Outcome Measure with musician
hand
上原 浩介(東京大学 医学部 整形外科)
森崎 裕,三浦 俊樹,菅原 留奈,大江 隆史
225
Room 7
音楽家 47 例を対象に DASH の SM(スポーツ音楽モジュール)と各上肢評価尺度との関連を解析した。
平均 42.9 歳(男 11 女 36 例、プロ 7 例、音楽科学生 3 例)、鍵盤楽器 21、弦楽器 20、管楽器 2、打楽器 1
であった。SM 平均 52.8、DASH30.5、Hand20 35.3、JHand26.2 であった。楽器別の SM と各評価尺度
の相関係数は鍵盤楽器でそれぞれ 0.88、0.67、0.75、弦楽器で 0.48、0.54、0.53 であり、弦楽器の方が
相関が弱かった。
2-7-10
橈骨遠位端骨折術後の Quick︲DASH スコアと SF︲36 との関係性
The relationship between Quick-DASH and SF-36 of DRF
石川 貴史(社会医療法人共愛会 戸畑共立病院)
橈骨遠位端骨折症例 21 例に対して術後 1 週後の Q-DASH スコアと SF-36 を評価し、Q-DASH スコア
と SF-36 の下位尺度 8 項目との関係性を調査した。SF-36 の下位項目のうち、体の痛み、全体的健康感、
日常役割機能(精神)の 3 項目において弱い相関が得られた。術後早期のリハ介入にあたり身体機能の
改善を図っていくだけでなく、急性期においても精神面に対してのアプローチを行っていく必要性が
あると考えた。
2-7-11
手根管症候群術後早期リハビリの治療成績
Treatment of carpal tunnel syndrome with early rehabilitation intervention
犬飼 智雄(福井大学 医学部 整形外科)
山岸 淳嗣,小久保 安朗,内田 研造
手根管開放術を行った 25 例を対象。術後 2 日後より正中神経と屈筋腱の癒着を防止する腱滑走運動を
開始した。1 週間後より神経滑走訓練を行った。術前後の評価項目として、Q-DASH, CTSI-SS を検
討した。DASH score は術後 1ヵ月にやや上昇するもののその後改善を認めた。CTSI-SS は術後良好
に改善を認めた。術後早期からリハビリの介入を行うことにより、手の過使用や不使用を避けること
が可能であった。
10:10~11:13
一般演題 51:基礎
座長:南野 光彦(日本医科大学武蔵小杉病院整形外科)
2-7-12
臨床研究実施のための手続きの変遷と対策に関する検討
Examination about the changes against procedure for clinical researches in Japan
岡田 潔(大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部)
近年、臨床研究実施に関わる手続きも適正化を求められ、「人を対象とする医学系研究に関する倫理
指針」が施行される予定となっている。また、再生医療の分野では「再生医療等の安全性の確保等に関
する法律」が施行され、臨床研究の実施に当たっては、従来と異なる手続きが必要になった。以上を
鑑みて、手外科医が臨床研究の実施をより適切化していくために必要なポイントについて検討し、臨
床研究の推進に資することを目的とする。
Room 7
226
2-7-13
青壮年マウス坐骨神経欠損に対する iPS 細胞ハイブリッド型人工神経の有
用性
The efficacy of bioabsorbable nerve conduit coated with induced pluripotent stem cellderived neurospheres for peripheral nerve repair in middle-aged mice
横井 卓哉(大阪市立大学大学院 医学研究科 整形外科学)
上村 卓也,高松 聖仁,岡田 充弘,中村 博亮
これまで我々は、若年マウスの坐骨神経欠損に対する iPS 細胞ハイブリッド型人工神経の有用性つい
て報告した。臨床で人工神経が適応となる青壮年者を想定し、青壮年マウスの坐骨神経欠損に対して
iPS 細胞ハイブリッド型人工神経で移植再建すると、人工神経単独よりもマウスの下肢機能回復が促
進し、再生軸索が有意に増大した。青壮年マウスに対しても iPS 細胞ハイブリッド型人工神経は有用
であった。
2-7-14
iPS 細胞ハイブリッド型人工神経の長期成績―マウスモデルにおける iPS
細胞由来神経前駆細胞移植の効果―
Long-term outcomes of tissue-engineered nerve conduits coated with iPS cell-derived
neurospheres -The efficacy of iPS cell-derived neurospheres for peripheral nerve
regeneration in mice上村 卓也(大阪市立大学 医学部 整形外科)
高松 聖仁,横井 卓哉,岡田 充弘,中村 博亮
マウス坐骨神経欠損モデルに対して iPS 細胞ハイブリッド型人工神経で移植再建を行った。iPS 細胞
ハイブリッド型人工神経は、人工神経のみと比較して 48 週の長期成績において再生軸索数の増加を
認めた。移植した iPS 細胞由来神経前駆細胞がシュワン細胞様細胞として再生軸索周囲に残存し、軸
索伸長に貢献していることが示唆された。
2-7-15
ラット切断尾の CAS 凍結による組織学的変化と解凍後再接着の可能性に
ついて
Histological alteration of amputated tail of a rat after CAS freezing and its possibility
of replantation
佐野 和史(獨協医科大学 越谷病院 整形外科)
木村 和正,橋本 智久,増田 陽子,大関 覚
Cell Alive System is a particular freezing technique which restrains cell death during freezing at
minimum. Purpose of this study was is to elucidate possibility of replantation of CAS frozen
amputated composite tissue using a rat tail. As a result, although replanted tails resulted in
complete necrosis eventually, very useful findings for the future were achieved.
Room 7
227
2-7-16
外傷性肘関節拘縮の関節包における特異的なコラーゲン発現の解析
Expression Patterns of Collagen in Post-Traumatic Anterior Elbow Contracture
Capsules
佐々木 浩一(札幌医科大学 医学部 整形外科)
射場 浩介,和田 卓郎,青木 光広,Srinath Kamineni
本研究では、外傷性肘関節拘縮患者の肘関節前方関節包を用いて、各種コラーゲン発現が外傷時期に
応じて変化するかを調べた。関節包には I や III 型コラーゲンのほか、微量コラーゲンも存在し、外傷
時期に応じて発現量が変化した。I 型コラーゲン /III 型コラーゲン比は、外傷早期から経時的に増加
した。
2-7-17
演題取り下げ
2-7-18
microRNA︲222 の発現抑制による骨形成促進の検討
Inhibition of microRNA-222 expression accelerates bone fracture healing with
enhancement of angiogenesis and osteogenesis in atrophic non-union model in rat
吉塚 将昭(広島大学 医学部 整形外科)
中佐 智幸,砂川 融,中島 祐子,越智 光夫
microRNA(miRNA)の偽関節治療への応用の研究を行った。MSC と骨芽細胞の miRNA の発現の違
いの解析より miRNA-222 に注目した。miR-222 の発現を抑制すると、MSC からの骨芽細胞分化が促
進され、ラット大腿骨偽関節モデルでは骨形成促進が確認された。血管内皮細胞で miRNA-222 を抑
制すると血管新生が促進されるとの報告があり、miRNA-222 の抑制は骨分化促進、血管新生の両作
用を持ち、骨折偽関節の新たな治療法となる可能性が示唆された。
Room 7
228
12:40~13:40
西新宿セミナー 12:神経因性疼痛研究会
座長:尼子 雅敏(防衛医科大学校整形外科)
共催:日本臓器製薬株式会社
2-7-LS12-1 CRPS は治る? 25 年以上長期経過観察の検討
三木 健司(近畿大学 医学部 整形外科 / 行岡病院 リウマチ科 / 大阪大学疼痛医療センター)
行岡 正雄
CRPS を長期経過観察した経験から「痛み」は長期的に消失する症例が存在し、骨萎縮も改善する。日
常生活で患肢を使用できるようになる。しかし、関節拘縮は改善していない。おそらく日常生活で患
肢を使用することで CRPS の「痛み」が長期的には消失する症例がある。医師、患者とも諦めずに長期
経過観察が重要である。
2-7-LS12-2 CRPS を裁判所がどのように認定しているか
小島 崇宏(大阪A&M法律事務所)
交通事故により CRPS になり、重度後遺障害が残存したと主張して、加害者側に、損害賠償請求をす
るケースは少なくなく、裁判で、争われるケースも散見される。CRPS による後遺障害の等級認定が
なされるか否かで、交通事故被害者の受け取る賠償金額は大きく異なってくるため、医師としては、
後遺障害診断書等を作成するときは、自賠責保険上の認定基準や、その他基準の異同を認識し、適切
な診断を行う必要がある。
Room 7
229
e Poster A
e ポスター A(e Poster A)
8:00~8:24
e ポスター 13:前腕骨骨折
座長:白井 久也(美杉会佐藤病院)
2-A-EP-1
小児橈骨頚部骨折の治療成績
Clinical result of radial neck fractures in children
前田 明子(手稲渓仁会病院 整形外科)
佐々木 勲,蔡 栄浩,西田 欽也,遠藤 健
当院の小児橈骨頚部骨折の治療成績を調査した。対象 15 例、平均 7.3 歳。追跡期間は平均 3 年 9.5ヶ月。
7 例保存、8 例手術治療。基本的に Judet 分類 1,2 型は保存、3,4 型を手術治療とする方針で良好な
肘機能が得られたが、9 例で単純 X 線上異常をみとめた。最終 Carrying angle(以下 CA)は平均 18.3°
(健側 14.9°)で、早期骨端線閉鎖等により外反傾向がでると考えた。
2-A-EP-2
Hume 骨折の 3 例
Hume fracture : Report of three cases
杉浦 香織(浜松赤十字病院 整形外科)
荻原 弘晃,鈴木 重哉,牧野 絵巳
Hume 骨折は、尺骨塑性変形が橈骨頭脱臼の原因との説がある。尺骨塑性変形を伴う Hume 骨折の 3
例を経験し、尺骨骨切りにより良好な成績を得た。Hume 骨折の診断においては前腕全長 X 線を撮影
し尺骨塑性変形の有無を確認する必要がある。治療においては橈骨頭の整復に加え、尺骨の整復や骨
切りが必要と考える。
2-A-EP-3
小児肘頭骨折の治療経験
Treatment of olecranon fracture in children
久保田 豊(昭和大学 医学部 整形外科)
川崎 恵吉,上野 幸夫,稲垣 克記
小児肘頭骨折は肘周辺骨折の中で合併外傷の頻度が多いとされている。当科で治療を行った 30 例 32
肘について調査した。合併外傷として伸展外反損傷による Jeffery 型骨折や伸展内反損傷による Bado3
型の Monteggia 脱臼骨折などが有名であるが、それ以外にも Hume 骨折やさらには Acute plastic
bowing を合併する症例も認められ、様々な骨折型を念頭に置き診断・治療することが必要と思われた。
230
見落としやすい小児橈骨近位部骨折に合併する肘頭若木骨折
単純レントゲン写真での診断に有用な所見について
Useful plain radiographic sign in diagnosis of pediatric olecranon greenstick fracture
complicated with proximal radial fracture
藤原 祐樹(稲沢市民病院)
藤原 那沙,建部 将広,田中 宏昌,平田 仁
小児の肘頭若木骨折は Jeffery 骨折や Hume 骨折といった複合損傷の一部である可能性もあり重要だ
が、見逃されやすい。本研究では 15 歳以下の橈骨近位部骨折患者 22 例を調査し、うち 11 例に肘頭骨
折の合併を認めた。5 例は見逃されており、1 例に高度の屈曲拘縮が残存した。単純レントゲン写真
で 13 例全例に長軸方向の骨折線が確認され、他の検査が難しい小児の肘頭若木骨折の有無を判断す
る際には有用な所見と考えられた。
8:24~8:48
e ポスター 14:上腕・前腕骨骨折
座長:山内 健二(稲城市立病院)
2-A-EP-5
小児橈骨遠位端骨折に伴った尺骨急性可塑性変形~当院における橈骨骨折
に伴う尺骨損傷の検討を加えて~
Acute Plastic Bowing Deformity of the Ulna associated with Distal Radius Fracture
梅原 渓太郎(山口労災病院)
山本 久司,谷川 泰彦,藤 真太郎,城戸 研二
長管骨の急性可塑性変形は骨端線閉鎖前の小児に発生する稀な病態である。今回小児橈骨遠位端骨折
に伴う尺骨可塑性変形による尺骨頭脱臼を呈し、可塑性変形を観血的治療により脱臼整復を得た症例
を経験した。当院で過去 5 年間に橈骨骨折に対し手術加療を行った症例 39 例を検討したところ、約 8
割に尺骨損傷を伴い、3 例に尺骨可塑性変化を認めた。可塑性変形の中には関節の破綻を来たす症例
もあり、今後も注意が必要である。
2-A-EP-6
後骨間神経麻痺を合併した Monteggia 骨折の治療経験
Treatment of Monteggia fracture with posterior interosseous nerve palsy
藤浪 慎吾(JA愛知厚生連 海南病院)
関谷 勇人,勝田 康裕,五十棲 秀幸,岡本 秀貴
2006 年以降当院で治療した Monteggia 骨折 14 例のうち,後骨間神経麻痺を合併した症例を 4 例経験し
たので報告する.Monteggia 骨折に対しては 4 例とも観血的治療を行い,尺骨骨折を固定することに
より橈骨頭の脱臼が整復された.後骨間神経麻痺は保存的治療で 4 例中 3 例が 3ヵ月以内に改善された
が,1 例は麻痺の改善に長期間を要した。高エネルギーでの受傷や脱臼位で待機したことが要因では
ないかと考えられた.
231
e Poster A
2-A-EP-4
e Poster A
2-A-EP-7
小児前腕骨骨幹部骨折の治療成績および再骨折についての検討
The outcome of pediatric diaphyseal forearm fractures and refractures following
implant removal
岩瀬 真希(千葉市立青葉病院 整形外科)
山田 俊之,河野 元昭,橋本 健,六角 智之
当院における小児前腕骨骨幹部骨折の治療成績と術後再骨折について検討した.47 例(男児 43 例女児
4 例)中,経皮的鋼線刺入固定術(W 群)を 27 例,プレート固定術(P 群)を 20 例に行い,W 群 5 例(18.5%),
P 群 1 例(5%)に再骨折を認めた.抜去再骨折のリスク因子として考えられる横骨折,年長児のピンニ
ング,プレート抜去までの期間が短い症例については注意深い経過観察と後療法の検討が必要であ
る.
2-A-EP-8
ロッキングプレートを用いて治療した腕相撲骨折 7 症例の検討
Spiral fracture of the humerus during arm wrestling : clinical features of 7 cases
treated with locking plate
山下 泰司(琉球大学 医学部 整形外科)
金谷 文則,小浜 博太
腕相撲中に発生した上腕骨骨幹部骨折 7 症例をロッキングプレートを用いて治療した。全例男性で、
手術時の年齢は 20〜34 歳(平均 27.1 歳)。全症例 AO 12-B1 のらせん骨折で、内側に蝶形骨片を伴って
おり、スクリューとロッキングプレートを用いて内固定を施行した。術前橈骨新規麻痺を 1 症例認め
たが、断裂はなかった。術後 4 週の時点で可動域は健側の 80% まで回復し、最終調査時はほぼ 100%
であった
8:55~9:31
e ポスター 15:手指外傷 1
座長:戸部 正博(東北海道病院整形外科)
2-A-EP-9
観血的整復固定を要したマレットフィンガー症例
Mallet finger performed open reduction and internal fixation.
日比野 直仁(徳島県鳴門病院 整形外科)
近藤 研司,浜田 佳孝,吉岡 伸治,佐藤 亮介
2012.1 から 14.10 に石黒法で対処困難であった 11 例を検討した.受傷機転はスポーツ外傷 5 例,転倒
打撲が 4 例,回旋力によるもの 2 例.石黒法で対処困難な理由は,骨片の転位が著しい 5 例.陳旧例 3
例. 閉 鎖 的 整 復 が 不 能 2 例.関節面の陥没症例が 1 例.固定 方 法 は フ ッ ク プ レ ー ト 8 例.suture
anchor 固定 2 例.観血整復後石黒法が 1 例.術前と比べ伸展不足角は全例改善した.
232
の治療
Double extension block first technique for chronic bony mallet fingers
阿部 耕治(駒沢病院 整形外科)
吉川 泰弘
陳旧性骨性 mallet finger に対して、最初に extension block を行なった後に小皮切から瘢痕組織を除去
し、骨折面の整復を行なった double extension first technique を施行した 6 例 6 指の成績について報告
する。成績は概ね良好で、伸筋腱停止部周囲の血行温存に有利であり、extension block の際に骨片の
掌側移動が容易、皮膚縫合を要さないなど簡便かつ有用な方法であった。
2-A-EP-11 骨性槌指に対する 2 種の石黒変法の比較(double extension block 法およ
び intrafocal pinningh 法)
Modified ishiguro percutaneous pinning for bony mallet finger: double extension
block vs intrafocal pinning
関 康弘(諏訪中央病院 整形外科)
骨性槌指に対する 2 種の石黒変法(D 法:伸展ブロックピン 2 本+関節固定ピン 1 本の 6 例、I 法:1 本
の伸展ブロックピン+骨折部より回転防止ピン 1 本+関節固定ピン 1 本の 5 例)を比較した。平均自動
伸展角度は、D 法:-8.3 度、I 法:-4 度で、平均自動屈曲角度は D 法:40 度、I 法:57 度で、I 法が D
法よりともに良かったが、有意差は認めなかった。また、Crawford 評価基準にて D 法は good 3 例
fair 3 例で、I 法は excellent 1 例 good 3 例 fair 1 例であった。
2-A-EP-12 Mallet 骨折に対する引き寄せ締結法の治療成績
Osteosynthesis of mallet finger using tension band wiring technique
高田 治彦(医療法人楓会 林病院)
林 淳二
陳旧性 Mallet 骨折や骨片の小さな新鮮骨折に対する引き寄せ締結法の成績を報告する。対象は 25 例
で、新鮮例 4 例、陳旧例 21 例である。手術方法は末梢骨片を両端針付き wire にて末節骨掌側面で締
結し、DIP 関節は K-wire で伸展位で仮固定した。本法の利点は、骨片が非常に小さな場合、石黒法
による骨折の危惧がある症例に安全に行え、また陳旧例で骨折部の適合が悪い場合でも応用可能であ
る。
2-A-EP-13 基節骨開放骨折の内固定:プレート固定法と鋼線刺入法の比較
Internal fixation of open proximal phalangeal fractures: comparison of plate fixation
and pinning
坂 なつみ(札幌徳洲会病院 整形外科外傷センター)
松井 裕帝,斉藤 丈太,倉田 佳明,辻 英樹
開放性基節骨骨折は、部位、軟部組織損傷から治療に難渋する外傷とされる。我々は 2013 年より同
骨折に対して plate 固定法を用いている。本研究では 20 症例 26 骨折に対して、鋼線刺入群と plate 固
定群の治療成績を比較した。骨癒合期間、二次的手術の有無、%TAM の値において両群の成績に有
意差は認められなかった。骨折の重症度に応じた固定法の使い分けが必要であると考えられた。
233
e Poster A
2-A-EP-10 Double extension block first technique による陳旧性骨性 mallet finger
e Poster A
2-A-EP-14 PIP 関節掌側板剥離骨折に対し掌側より行う経皮的ピンニング
A percutaneous technique to treat volar avulsion fracture of PIP joint
藤田 俊史(三菱京都病院 整形外科)
山本 博史
比較的骨片の小さい回転転位を伴う PIP 関節掌側板剥離骨折に対する治療方法選択に苦慮することが
ある。今回我々は掌側より屈筋腱を貫いて経皮的にピンニング固定を行い PIP 関節を伸展位固定の後、
術後 3 週で抜釘し可動域訓練を行った。平均 9.5 週で全例骨癒合を得ることができ、PIP 関節の最終可
動域は 4 例中 3 例において健側比 100%、1 例において 79%であった。本術式は低侵襲で有効な治療方
法と考えられた。
9:31~10:01
e ポスター 16:手指外傷 2
座長:石垣 大介(済生会山形済生病院)
2-A-EP-15 手指関節内骨折に対して微量かつ定量的な牽引が可能な創外固定器 AIR︲X
(Axial Impact Reduction Fixator)
The AIR-X(Axial Impact Reduction Fixator) :A novel external fixator that enables
minor and quantitative traction for intraarticular phalangeal fractures of the hand
新井 哲也(岐阜県立多治見病院整形外科)
平田 仁,山本 美知郎,岩月 克之,米田 英正
手指関節内骨折の治療では、関節面の Alignment を保つため関節に牽引を加える必要がある。そのた
めの牽引用デバイスは既にいくつか存在するが、これらはゴムの力を用いた牽引法であり、組み立て
が煩雑、サイズが大きく常時装着しておくには不便、牽引力の微調整が困難、といった欠点があった。
我々は、牽引力にゴムではなく金属ばねとナットとボルトの原理を応用した牽引用器械を考案し、上
記問題点を全て解決した。
2-A-EP-16 上肢手術に対する PercuFIX double thread screw の使用経験
Treatment of upper extremity surgery using PercuFIX double thread screw.
岡崎 敦(平塚共済病院 整形外科・手外科センター)
坂野 裕昭,勝村 哲,竹元 暁,齋藤 知行
PercuFIX double thread screw(以下 PercuFIX)を用いて上肢手術を行った。対象は上肢手術に対し
PecuFIX を用いた 15 例 10 手 5 肘、年齢は平均 45.3 才、経過観察期間は平均 7.6ヶ月であった。全例骨
癒合を認め、平均骨癒合期間は 8.8 週であった。合併症としてスクリューによる皮膚潰瘍を 1 例に認
めた。使用方法に若干の注意点は認めたが、有用な固定材料であると考えた。
234
Irreducible palmar subluxation of the proximal interphalangeal joint of the finger
遠山 雅彦(JR大阪鉄道病院 整形外科)
田中 久夫,濱 峻平
徒手整復不能で観血的治療を要した手指 PIP 関節掌側亜脱臼の 4 例を経験した.全例小指で,整復阻
害因子は側索の嵌頓 2 例,側副靭帯の嵌頓が 1 例,中央索の損傷瘢痕化 1 例であった.全例側副靭帯
の断裂を伴っており,靭帯縫合と損傷部位の修復を行い比較的良好な結果を得た.PIP 関節の掌側脱
臼はまれで,屈曲力と回旋力が加わることにより生じる.整復困難例は観血的整復が必要となる.
2-A-EP-18 同一指における近位・遠位指節間関節同時骨折に対する手術経験
Surgical treatment for simultaneous fractures of interphalangeal joints in a same finger.
森 武男(荻窪病院 整形外科)
岡崎 真人,田崎 憲一,西脇 正夫
比較的まれな同一指における PIP・DIP 関節の同時骨折に対して、両者の手術を行った 12 例 12 指の
治療成績を後ろ向きに調査した。全例骨癒合を得られ、平均可動 arc は PIP 関節 77.7°、DIP 関節 41.4°
であった。特に伸展可動域制限を生じやすい傾向を認めた。外力の大きさに加えて、手術法や後療法
に制約を加えざるを得ないことが治療成績に影響したと思われた。
2-A-EP-19 新鮮及び陳旧性ロッキングサムの治療経験
The treatment of fresh and obsolete locking thumb
原田 義文(神戸大学 医学部 大学院 整形外科)
藤岡 宏幸,国分 毅,黒田 司,黒坂 昌弘
ロッキングサムは母指 MP(metacarpophalangeal)関節が伸展位でロックされ、屈曲困難となる病態
である。今回我々は 9 症例 9 指の新鮮及び陳旧性ロッキングサムの検討を行った。新鮮 8 例中 5 例は徒
手整復可能であったが、整復困難な 3 例及び陳旧例 1 例は観血的整復を必要とした。新鮮例の多くは
徒手整復可能であったが、陳旧及び整復困難例では中手骨骨軟骨隆起による副靭帯緊張増強を認め、
観血的整復が必要であった。
235
e Poster A
2-A-EP-17 徒手整復不能な手指 PIP 関節掌側亜脱臼の治療経験
e Poster A
10:01~10:25
e ポスター 17:先天異常
座長:武石 明精(騎西クリニック病院形成外科・整形外科)
2-A-EP-20 母指形成不全患者の手指機能評価における Functional Dexterity Test の
有用性 ―前向き研究―
Assessment for post-operative improvement of hand dexterity in children with
hypoplastic thumb using Functional Dexterity Test -prospective study-
射場 浩介(札幌医科大学 整形外科)
金谷 耕平,高橋 信行,和田 卓郎,山下 敏彦
母指対立再建術を行った母指形成不全患者 5 例 5 手の手指機能変化を Functional dexterity test(FDT)
を用いて手術前、術後 6ヵ月と 12ヵ月で前向きに比較検討した。FDT 値は術前 88 秒から術後 6ヵ月で
49 秒、12ヵ月で 41 秒に改善した。FDT は母指形成不全患者における手術前後の手指機能の改善を反
映していると考えられた。
2-A-EP-21 絞扼輪症候群にみられた罹患手付着索状組織の検討
Histological Study of the Adherent Cord Like Substance Around the Affected Hand in
Constriction Band Syndrome
菊地 憲明(山形大学 医学部 附属病院 形成外科)
舟山 紗耶,池山 有子,佐竹 寛史,石垣 大介
絞扼輪症候群の発生原因には、異常な羊膜腔が形成されるという内因性説、羊膜の破裂による羊膜索
状物の胎児体表への接着と絞扼による外因説、物理的絞扼がおきる前の血行障害によって胎児体表に
羊膜が接着するという説、羊水減少に伴う子宮内環境の変化が原因とする諸説があるが、一元的に発
生要因を説明できるものではない。絞扼輪症候群症例の罹患手に生下時から認められた索状組織を組
織学的に調べ発生原因を検討する。
2-A-EP-22 過剰三角骨内楔状骨切り術を施行した対立可能な三指節母指例
Osteotoy of delta bone for opposable triphalangeal thumb
島田 賢一(金沢医科大学 医学部 形成外科)
岸邊 美幸,宮永 亨,川上 重彦
対立可能な三指節母指に対して、三角骨内の楔状骨切り術を施行した。IP 関節の可動域は術前後変化
なく,可動域制限はなかった。また術後の IP 関節の不安定性もなかった。三角骨内で骨切りを行う
ことにより,既存関節に侵襲を加えずに偏位の修正を行えた。余剰三角骨のサイズは小さく,骨切り
に際しては注意深く行う必要がある。三角骨を有する三指節母指においては,三角骨内の楔状骨切除
は有用である。
236
BILATERAL BIPARTITE CARPAL SCAPHOID: A CASE REPORT AND
LITERATURE REVIEW
中山 美数(大分整形外科病院)
竹光 義治,大田 秀樹,木田 浩隆
極めて稀な先天異常である両側二分舟状骨の 1 症例を経験したので報告する。外傷歴のない 47 歳男性
患者で右手関節痛にて来院、画像検査にて健側にも同様の二分化した舟状骨を認めた。炎症所見を伴
っていたため対症療法にて軽快したが、このような症例では偽関節と誤診され手術的加療を行う可能
性もあるため、二分舟状骨という先天異常が存在することを念頭に置き注意深く鑑別していく必要性
があると考えられた。
10:30~10:54
e ポスター 18:手根骨骨折 1
座長:田中 利和(キッコーマン総合病院)
2-A-EP-24 トモシンセシスによる舟状骨偽関節術後経過観察
Tomosynthesis radiography for scaphoid nonunion surgery
古町 克郎(岩手医大 医学部 整形外科)
佐藤 光太朗,熊谷 瑠璃子,田島 克巳,土井田 稔
舟状骨偽関節手術の経過観察にトモシンセシスを用いた。本法は 1 回の走査でボリュームデータの検
出ができ、高精細像がえられ、CT の 1/10 の被曝であり、金属アーチファクトの低減が容易である。
単純 X 線で検出困難な未癒合の間隙がトモシンセシスで検出できる可能性があると思われた。
2-A-EP-25 若年者の舟状骨骨折偽関節に対する低出力超音波パルスによる保存的治療
Nonoperative treatment of scaphoid fracture nonunion in adolescence with lowintensity pulsed ultrasound
木村 理夫(帝京大学 医学部 整形外科)
佐々木 源,松下 隆
スポーツ活動性の高い若年者の舟状骨骨折の遷延治癒、偽関節症例に対して、ギプス固定と低出力超
音波パルス(LIPUS)を併用した保存療法を行った。症例は全例スポーツで受傷した 10 歳代の 3 例で、
初診時 X 線で全例とも Herbert 分類 type D2 であった。平均 59 日で骨癒合を得、LIPUS 使用期間は
平均 4.2ヶ月であった。今回の結果から、本法は若年者の舟状骨偽関節に対する治療の第 1 選択として
試みて良い方法と考える。
237
e Poster A
2-A-EP-23 両側二分舟状骨:1 症例報告と文献的考察
e Poster A
2-A-EP-26 不安定型舟状骨偽関節に対する橈骨遠位骨幹端からの anterolateral
corner bone graft
Short-term results of scaphoid nonunion with DISI deformity treated by anterolateral
corner bone graft from distal radial metaphysis
久能 隼人(埼玉成恵会病院 埼玉手外科研究所)
福本 恵三
本報告は DISI 変形を伴う不安定型舟状骨偽関節に対し橈骨遠位骨幹端の前外側角(anterolateral
corner:ALC)より採取した移植骨を舟状骨掌側からはめ込み固定した 4 症例の観察的研究である.
ALC は 2012 年 Aguilella らにより報告された方法であるが一般的ではない.その形態は舟状骨腰部と
非常に類似しており採取は同一術野から行うことができ手根骨アライメント再建にも有用であった.
2-A-EP-27 有鈎骨鈎骨折の骨折型分類と治療成績
Relationship between fracture classification and clinical result of hook of the hamate
fractures
武田 真輔(鈴鹿回生病院 整形外科)
森田 哲正,藤澤 幸三,辻井 雅也,平田 仁
当院で治療した有鈎骨鈎骨折 28 例(スポーツによる受傷 15 例,外傷 11 例,原因不明 2 例)を,CT axial
画像で 4 つの骨折型に分類し,治療方法,合併症などを検討した。24 例は手術治療(鈎切除 22 例,ス
クリュー固定 2 例)を行い,4 例は保存治療を行った。術前合併症で小指屈筋腱損傷が 6 例あり,これ
らは全て基部型であった。スクリュー固定後や保存治療後の偽関節例は無く,骨折型分類別に的確な
治療方針を立てることが重要と考える。
10:54~11:18
e ポスター 19:手根骨骨折 2
座長:笹 益雄(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院整形外科)
2-A-EP-28 有鉤骨骨折を伴った尺側 CM 関節脱臼骨折の治療経験
Fracture-dislocation of the Ulnar Carpometacarpal Joints Associated with Hamate
Fracture
廣田 高志(福岡徳洲会病院 整形外科)
尾上 英俊
有鉤骨骨折を伴った尺側中手手根関節脱臼骨折は比較的稀な外傷である。2003 年 1 月〜2013 年 12 月
までに当科で治療を行った 8 症例について検討したので報告する。症例は全例男性で受傷時年齢は 16
〜48 歳(平均 27.5 歳)であり、全例観血的整復固定を行った。最終経過観察時に X 線所見では全例で整
復位を維持していた。
238
The Treatment of Rare Cases of Carpal Bone Dislocation.
古川 雄樹(健和会大手町病院 整形外科)
酒井 和裕,杉田 健,宮地 有理
手根骨脱臼は比較的まれである。今回我々はまれな手根骨脱臼を 2 症例経験したので報告する。症例
1:19 歳、男性フォークリフト運転中に横転し重傷。X 線像において左手全 CM 関節脱臼、有鈎骨掌
側脱臼を認めた。受傷当日に整復を行った。症例 2:57 歳、男性、鉄骨が左手に落ちてきて受傷。左
手月状骨周囲掌側脱臼を認めた。受傷当日に整復を行った。いずれの症例も特殊な外力が加わり、発
生した極めてまれに脱臼である。
2-A-EP-30 非脱臼性の Perilunate injuries
Perilunate injuries, not dislocated
藤原 達司(大阪府立急性期総合医療センター 整形外科・四肢外傷センター)
難波 二郎
今回月状骨周囲骨折で、月状有頭骨関節脱臼のない 5 症例 6 手を経験したので報告する。骨折型は 6
手とも greater arc を経路とした舟状骨骨折,三角骨骨折等を認め、うち 2 手で有頭骨骨折を合併して
いたが、月状骨周囲脱臼は認めなかった。非脱臼性の Perilunate injuries では過小評価され、その後
月状骨周囲脱臼が発生した報告があり、本疾患の存在を念頭にいれ治療方針を決定する必要がある。
2-A-EP-31 第 4・5CM 関節脱臼骨折例の検討
Treatment of dislocation fractures of the fourth and fifth carpometacarpal joints
向田 雅司(聖隷浜松病院 手外科・マイクロサージャリーセンター)
神田 俊浩,大井 宏之,鈴木 歩実
今回、第 4・5CM 関節脱臼骨折の治療結果について報告する。当院で治療を行った 10 症例を対象とし
た。CM 関節脱臼に対しては鋼線固定、骨折に対しては鋼線もしくはロッキングプレート固定を行っ
た。全例とも比較的良好な整復位、骨癒合が得られた。疼痛が残存するものは 2 例であった。健側比
較で握力平均 90%、TAM は平均 91%であった。第 4・5CM 関節脱臼骨折に対してもロッキングプレ
ートは有用である。
239
e Poster A
2-A-EP-29 稀な手根骨脱臼の治療経験
e Poster A
13:55~14:25
e ポスター 20:橈骨遠位端骨折(治療)1
座長:藤原 浩芳(京都府立医科大学大学院運動器機能再生外科学)
2-A-EP-32 ADAPTIVE plate を使用した橈骨遠位端骨折の治療成績と注意点
Clinical Evaluation and Attensions of Diistal Radius Fracture treated with ADAPTIVE
Plate
久保 和俊(昭和大学医学部整形外科学教室)
川崎 恵吉,池田 純,前田 利雄,稲垣 克記
MES 社製の poly axial locking plate(ADAPTIVE)を用いて加療した橈骨遠位端骨折の治療成績とと
もにそこから見えた注意すべき点を報告する。平均矯正損失は ΔUV0.7mm、ΔVT0.8°
ΔRI1.0°であっ
た。矯正損失が比較的大きかった症例は 6 例 6 手にみられた。本プレートは橈骨遠位端骨折に対して
有用であると思われた。一方で、スクリューの挿入位置やプレートの設置状態などにより矯正損失が
大きくなる可能性があるため注意を要する。
2-A-EP-33 転位のある背尺側骨片を有する橈骨遠位端関節内骨折に対する Acu︲Loc 2
Frag︲Loc system の有用性
Usefullness of Acu-Loc 2 plate for the surgical treatment of distal radius fracture with
ulnodorsal fragmnet
大坪 晋(松山市民病院 整形外科)
背側骨片の中で橈骨手根関節と遠位橈尺関節の両方の関節面を含む背尺側の骨片の整復固定は重要で
ある。今回 Acu-Loc 2 plate を掌側から当て、Frag-Loc system を用いて背尺側骨片を固定した 3 症
例を経験した。3 症例共に骨癒合が得られ、可動域も良好である。背尺側骨片の転位が残存すると回
内・外制限につながる可能性があり、その固定に Acu-Loc 2 Frag-Loc system は有用である。
2-A-EP-34 橈骨遠位端骨折プレート固定時のレトラクタブルガイドの使用経験
Retractable Guide for Plate Fixation of Distal Radius Fracture
蔡 栄浩(手稲渓仁会病院 整形外科)
佐々木 勲,前田 明子,遠藤 腱,西田 欽也
橈骨遠位端骨折のプレート固定術時に軟部組織をレトラクトすることを兼ねたドリルガイドを作成
し、その使用の有無で各群 24 例ずつを比較検討した。レトラクタブルガイド使用により AO 分類 A3
の症例に限れば手術時間は平均 10 分短縮できた。またレトラクタブルガイド使用によりヒューマン
エラーを減少でき手術の安全性が高まると思われた。
240
ルトアップデバイス使用の検討
Examination for tilt up device of stellar 2 plate with the intension of reduction for
Dorsal tilt of distal radius fracture
吉澤 貴弘(赤心堂)
関谷 繁樹,中井 生男,野村 英介
当科では橈骨遠位端骨折に対し、Reduction and Distal Fixat ion First technique(以下 R and D)法(加
藤ら 2013 年日手会誌)を行ってきた。中には R and D 法でもプレート設置直前に十分な volar tilt が得
られない症例があることから、ステラ 2 プレートのティルトアップデバイスを用いて subcondral にス
ムースピンを挿入し、プレート近位を戻すことにより、Dorsal tilt の整復を行う手法を行い、その有
効性と問題点について検討した。
2-A-EP-36 骨折が遠位骨幹部に及ぶ橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート
固定の治療成績
Clinical Results of Palmar Locking Plate Fixation for Distal Radius Fractures with
Distal Diaphyseal Extension
森谷 浩治((財)新潟手の外科研究所)
坪川 直人,原 敬,上村 一成,牧 裕
【目的】骨折が遠位骨幹部に及ぶ橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート(PLP)固定の治療
成績を報告する。【対象と方法】2012 年 7 月からの 2 年間に PLP 固定を施行した 211 例のうち、骨折線
が骨幹部に及んでいた 8 例を対象とした。【結果】対健側比の可動域は 79-97% まで回復しており、尺
骨変異も平均で術直後 1mm、最終診察時 1.9mm であった。【考察】本骨折も PLP 固定により良好な治
療成績が獲得できたていた。
14:25~14:55
e ポスター 21:橈骨遠位端骨折(治療)2
座長:野本 榮(埼玉石心会病院整形外科)
2-A-EP-37 橈骨遠位端骨折に伴う橈側転位型尺骨遠位端骨折に対する橈背側プレート
固定の試み
Radial-Dorsal Plate Fixation for Radial Deviated Distal Ulna fractures Concomitant
with Distal Radius Fractures
斉藤 憲太(埼玉成恵会病院・埼玉手外科研究所)
加藤 知行,堀内 孝一
橈側転位型橈骨遠位端骨折に伴う尺骨遠位端骨折では尺骨は遠位尺側から近位橈側に斜めに骨折線が
入り橈側転位することが多い.4 例の尺骨遠位端骨折に対して背側アプローチで橈背側からプレート
固定を行い良好な成績を得た.症例を選んで行えば有効な方法である.
241
e Poster A
2-A-EP-35 橈骨遠位端骨折の Dorsal tilt の整復を目的としたステラ 2 プレートのティ
e Poster A
2-A-EP-38 掌側転位型橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレートの治療成績
Clinical results of volar locking plate fixation for volar displaced distal radius fractures
加藤 義洋(済生会山形済生病院整形外科)
石垣 大介,豊野 修二,本間 龍介,高木 理彰
掌側転位型橈骨遠位端骨折に掌側ロッキングプレート(VLP)で治療した 18 例 19 手を調査した。X 線
評価は術後と最終時で UV、RI、PT に有意差を認めなかった。手関節可動域も良好で、握力は健側
比 73.3% であった。プレート遠位のピンを全て挿入した 10 手と比べ、一部挿入しなかった 9 手では成
績は同等であった。バットレス効果が得られる場合は、必ずしも遠位のピンを全て挿入しなくとも良
いと考える。
2-A-EP-39 Micronail 髄内釘における遠位横止め screw の骨外穿破についての検討
Distal locking screw perforation in using Micronail for distal radial fracture fixation.
若杉 琢磨(土浦協同病院 整形外科)
白坂 律郎,佐々木 研,石突 正文,藤田 浩二
Micronail の遠位 screw の骨外穿破につき検討した。対象は橈骨遠位端骨折に対し骨接合術後 CT 評価
を行った 36 例。背側へ向かう screw は 36 例中 29 例が橈骨背側面へ向かい、Nail size 別では screw が
橈骨背側面へ向かう症例は #1 と 2 で 5 例中 2 例、#3 で 17 例中 14 例、#4 で 14 例中 13 例であった。Size
の大きい髄内釘の背側方向の screw が骨外穿破のリスクが高かった。
2-A-EP-40 橈骨遠位端骨折における尺背側骨片の術前後 CT 評価―3 整復方法による
比較―
comparison of reduction ratio at the site of ulno-dorsal fragment of distal radial
fracture between three different procedure on Computed Tomography
井川 真依子(東大阪市立総合病院 整形外科)
重松 浩司,面川 庄平,田中 康仁
橈骨遠位端骨折では橈骨尺背側骨片の整復が重要である。今回、橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキ
ングプレート固定術の整復方法により尺背側骨片の整復率に差があるかどうか、手術前後の CT で評
価を行った。整復方法は鏡視下、鏡視下と Frag-Loc screw の併用、透視下のみの 3 群に分けたが、
どの整復方法でも比較的良好な整復が得られていた。Frag-Loc screw を併用した群では橈側部・中
間部の整復率は他群と比較して良好であった。
242
The flexor carpi radialis brevis muscle : Report of 5 cases of volar approach for the
distal radius fractures
永田 純一(長崎県病院企業団 対馬いづはら病院 整形外科)
小島 安弘,里村 健志,石河 利之,安食 孝士
橈骨遠位端骨折に対して掌側ロッキングプレートを用いて手術した 113 例中 5 例に破格筋である短橈
側手根屈筋(Flexor Carpi Radialis Brevis、以下、FCRB)を認めた。この 5 例について retrospective
に検討したところ、FCRB が手術展開の妨げや術後疼痛の原因となることがわかった。FCRB は比較
的まれな筋肉であるが、橈骨遠位端骨折に対する掌側アプローチの際には破格筋の存在と解剖学的特
徴について理解しておく必要がある。
15:05~15:47
e ポスター 22:高齢者・その他
座長:木村 理夫(帝京大学病院整形外科)
2-A-EP-42 高齢者における母指ボタンホール変形
Boutonniere Deformity of the Thumb in Elderly People
原 龍哉(名古屋大学 医学部 手の外科)
山本 美知郎,栗本 秀,岩月 克之,平田 仁
高齢者において,特記すべき既往歴がなくとも母指ボタンホール変形を生じていることがある.本研
究では母指ボタンホール変形の有病率を調査し,超音波検査で母指の評価を行った.2014 年 1 月から
10 月までに母指 162 指を調査し,ボタンホール変形の有病率は 9.2% であった.母指ボタンホール変形
の有無を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った結果,年齢,EPB 腱幅の広さ,母指 MP 関
節屈曲角度がボタンホール変形に影響していた.
2-A-EP-43 骨粗鬆症を伴う上肢骨折の観血的治療に併用したテリパラチドの有効性
The utility of teriparatide with surgical treatment for upper extremity fragility
fractures: Case series
安福 友紀子(大阪府済生会中津病院 整形外科)
高松 聖仁,細見 僚,香月 憲一,大橋 弘嗣
骨粗鬆症を伴う高齢者の上肢骨折患者に対してテリパラチド(20μg 連日投与)を使用した症例,5 名 6
骨折を経験した.テリパラチド開始から骨癒合までの期間は全症例で平均 95.2 日,そのうち偽関節例
の 177 日を除くと平均 78.8 日であり,全例にて骨癒合を得ることができた.高齢者の骨折治療に対し,
骨粗鬆症の治療としてテリパラチドを併用することは骨癒合に有利に働く可能性がある.
243
e Poster A
2-A-EP-41 橈骨遠位端骨折の手術中に破格筋を認めた 5 例の検討
e Poster A
2-A-EP-44 握力、Key ピンチ力、Quality of life の満足度は骨密度の予測因子である
Grip and key strength and satisfaction of Quality of life are predictive factors of bone
mineral density
田鹿 毅(群馬大学 整形外科)
山本 敦史,大谷 昇,高岸 憲二
一般住民において握力、Key ピンチ力、Euro QOL と骨密度の関連を調査したので報告する。男性 70
人、女性 146 人、合計 216 人平均年齢 63.5 歳であった。両側握力、母指、示指の Key ピンチ力を測定
した。超音波骨密度測定器にて踵骨内伝播速度、%YAM 値を測定した。握力、Key ピンチ力,Euro
QOL VAS 値の評価は骨密度を予測する重要な因子になりうることが示唆された。
2-A-EP-45 弾発指に対するステロイド腱鞘内注射の評価
The Efficacy of Intra-Sheath Steroid Injection for Trigger Finger
坂田 亮介(神戸大学 大学院 整形外科)
乾 淳幸,美舩 泰,無藤 智之,国分 毅
ステロイドの腱鞘内注射は弾発指に対する保存的治療法として広く用いられており、さまざまなステ
ロイドが使用されてきたが、腱断裂の報告もみられるなど、その使用方法にはまだ解明の余地がある。
当施設で弾発指に対して行われたステロイド腱鞘内注射を後向きに検討し、その作用について評価し
た。本研究では、トリアムシノロンアセトニドの腱鞘内注射が有用である可能性が示唆された。
2-A-EP-46 Dupuytren 拘縮における PIP 関節高度拘縮例対する関節 release の有用性
PIP joint release in case with sever contractures of the proximal interphalangeal joint
in Dupuytren’s disease
佐藤 信隆(山梨大学 医学部 整形外科)
大北 弦樹,斎藤 正憲,長澤 晃樹,波呂 浩孝
PIP 関節の release の有用性に対して調査した。2000 年以降、当院の手術例で 60 度以上の屈曲拘縮を
認める 17 人 19 指を対象とした。手術は病的腱膜の可及的全切除に加え PIP 関節の掌側板、手綱靭帯、
側副靭帯、副靭帯の release を行なった群(R)10 指と非 release 群(N)9 指について拘縮角度、%TAM
に対して術前と最終観察時を比較検討した。拘縮角度は有意差を認めが%TAM は有意差がなかった。
高度拘縮例に対して有用と考えられた。
2-A-EP-47 まれな小指 MP 関節伸展位ロッキングの手術治療経験
Locked Metacarpophalangeal Joint in Extension of the little Finger: A report of two
cases
大野 義幸(岐阜市民病院 形成外科)
平川 明弘
母指以外で MP 関節伸展位ロッキングは極めてまれである。今回,我々は 2 例の小指 MP 関節伸展位
ロッキング症例を経験し他.いずれも徒手整復不能で,観血的治療を行ったので報告する。
244
Damage of Central Motor Conduction and Function of Intrinsic Muscles of Hand
澁谷 亮一(協立病院 整形外科)
河井 秀夫
四肢麻痺のある頚椎症性脊髄症 73 名の、短母指外転筋での中枢運動路伝導時間(CMCT)を測定した。
短母指外転筋の CMCT とピンチ力、握り - 開きの 10 秒テストと四肢麻痺の程度は互いに有意な相関
関係を示した。上腕二頭筋の CMCT、上腕三頭筋の CMCT と握力は四肢麻痺の程度と有意な相関は
示さなかった。手内在筋の機能が、障害されやすく、中枢運動神経の障害をよく反映することが、電
気生理学的に示された。
15:47~16:11
e ポスター 23:炎症 1
座長:田中 英城(新潟県立吉田病院整形外科)
2-A-EP-49 ばね指に対する術前ばね現象と腱鞘切開術中 tenosynovitis との関連
Preoperative Sevelity of Snapping and Intraoperative Flexor Tenosynovitis in
Snapping Finger
安藤 佳幸(白庭病院 整形外科)
安田 匡孝,細見 僚
105 例 127 指のばね指腱鞘切開術施行例に対する術前症状と術中 tenosynovitis 程度との関連性を調査
した.術前ばね現象を 5 段階,術中 tenosynovitis を 4 段階に分類し,その特徴と相関性を算出した.
結果,ばね指進行に伴う解除不可ロッキング症例では著明な tenosynovitis を呈した症例は認めなかっ
た.屈筋腱の滑動減少に伴い tenosynovitis が鎮静することが示唆された.
2-A-EP-50 治療手技によりばね指のケナコルト腱鞘内注射の治療成績は異なるか?
Is different technique different outcome of trigger finger intra-sheath steroid injection?
田中 利和(キッコーマン総合病院)
小川 健,岡野 英里子,神山 翔,落合 直之
ばね指治療にたいする腱鞘内ステロイド注射は、異なった治療者により成績が異なることがある。今
回治療者間の手技による成績の違いについて検討を行った。初診のばね指 137 名 160 指に対して 10 名
の医師が腱鞘内注射を行った。注射の時期、針刺入位置、量、投与部位、注射後ストレッチの有無に
つて、再発と、再注射までの期間を目的変数にして、検討。再発は 71 指(44%)注射手技の違いによ
る再発率、再発期間には違いはなかった。
245
e Poster A
2-A-EP-48 中枢性運動路障害の指標としての手の機能の電気生理学的検討
e Poster A
2-A-EP-51 PIP 関節屈曲拘縮が主訴である屈筋腱狭窄性腱鞘炎(ばね指)に対し手術を
行った症例の検討
Three Cases Report of trigger digit with flexion contracture of PIP joint
古作 英実(国保 依田窪病院 整形外科)
PIP 関節の屈曲拘縮を伴うばね指の手術では A1 プーリーの切開のみでは屈曲拘縮が改善しないこと
があり A2 プーリーの切開も必要だが,これを全切開してよいかに関しては議論がある.今回 PIP 関
節の屈曲拘縮が主訴の症例に対し,A2 プーリーは部分切開にとどめ,完全伸展しない場合は PIP 関
節の掌側板切除を行ったので,その結果を報告する.
2-A-EP-52 手指ばね指に対する腱鞘切離後の PIP 関節伸展制限
PIP Joint Extension After Open Trigger Finger Release
草野 望(富永草野病院 整形外科)
腱鞘切離を行ったばね指の 33 指に腱滑動を促す後療法を行い、術翌日後療法前後、1、4 週後、最終
の PIP 伸展制限角を、術前の PIP 関節(PIP)伸展制限無し群、軽度群、重度群、A2 腱鞘全切離群に分け、
群間と群内で比較した。伸展制限角は早期に改善し、群間では有意差無く、群内では後療法前が他よ
り有意に大きかった。また術前後の PIP 伸展制限は DIP 他動最大屈曲下で改善するため、その主因は
腫脹した屈筋腱の A2 での滑動制限と考えた。
16:11~16:41
e ポスター 24:炎症 2
座長:岩本 卓士(慶應義塾大学整形外科)
2-A-EP-53 FDS 切除を用いた難治性手指狭窄性腱鞘炎の治療経験
Experience of Treatment for Recalcitrant Stenosing Flexor Tenosynovitis Using FDS
Resection
難波 二郎(市立豊中病院 整形外科)
岡本 道雄,宮村 聡,山本 浩司
狭窄性腱鞘炎はときに通過傷害が A1pulley 以外にも存在し、PIP 関節屈曲拘縮が残存する。A1pulley
の切開後に PIP 関節屈曲拘縮を呈した症例の FDS 腱切除を報告する。7 例で平均年令は 73 才であった。
FDS 尺側の半切 4 例、FDS 全切 3 例に施行した。完全伸展は 5 例に可能となり、PIP 屈曲拘縮は平均
39 から 6 度に改善した。切除 FDS 腱の病理検査 2 例において線維軟骨化生と石灰化を認めた。
246
Resection of flexor digitorum superficialis for the treatment of recalcitrant stenosing
flexor tenosynovitis
亀山 真(東京都済生会中央病院 整形外科)
小見山 貴継,手塚 正樹,柳本 繁
指可動域制限のある重度の狭窄性屈筋腱腱鞘炎に対し,Favre が提唱する浅指屈筋腱切除を行った経
験を報告する.適応は,母指を除く指関節の自動屈曲障害があり,超音波エコーで A2 下に腱症を認め,
他動的屈伸で屈筋腱の滑走障害がある例に対し,通常の腱鞘切開,腱滑膜切除,腱剥離を施行し,こ
れらの操作後も腱の滑走が滞る場合としている.適応は極めて慎重にすべきだが,指可動域の改善が
確実に得られる優れた治療であった.
2-A-EP-55 手根管開放術後に発症したばね指の検討
Trigger finger after carpal tunnel release
中島 紀綱(ハンズ高知フレッククリニック)
貞廣 哲郎
手根管開放術後にばね指が発症することは知られている。当院において鏡視下手根管開放術(以下
ECTR)後にばね指を発症した例につき調査・検討を行った。対象は ECTR を行った 84 例 93 手。平均
年齢 66 歳(46〜90 歳)。ECTR に腱鞘切開を併用した例が 40 手、ECTR のみ行った例が 53 手であった。
13 手 18 指(14.0%)に術後ばね指の発症を認め、術前 MRI 評価も行った。ばね指を発症する例では術前
MRI にて、多数指に腱鞘炎の像を認める傾向にあった。
2-A-EP-56 上腕骨外側上顆炎に対する多血小板血漿(PRP)療法による治療 ―第一報―
The treatment of lateral epicondylitis by the platelet rich plasma
新井 猛(聖マリアンナ医科大学 整形外科学講座)
別府 諸兄,清水 弘之,井上 肇,大森 みかよ
PRP 療法の上腕骨外側上顆炎に対する臨床試験を実施した。4 週間おきに 2〜3 回投与し評価した。症
例は 13 例,平均年齢 51 歳であった。施行前の VAS 平均値は 55.8 で VAS 値が 0 となった症例は 2 例の
みで,ほか 2 例は 2 回および 3 回投与で VAS に変化が無く,手術予定となった。9 例は 2 回投与例で平
均 VAS 値 36 が 12 に,3 回投与例で平均 VAS 値 60 が 38 にとどまった。上腕骨外側上顆炎に対する
PRP 療法の詳細な適応基準などさらなる検討を加える必要がある。
2-A-EP-57 非常に稀な幼児手関節に発症した結核性関節炎
A Rare Tuberosity Arthritis Case of the Infant Wrist Joint
山本 久司(山口労災病院 整形外科)
梅原 渓太郎,三好 智之
手関節に発症した 2 歳 10ヶ月男児の関節結核を経験した。血液検査で炎症所見があり、抗生剤投与で
改善なく手術施行。結核 PCR 法で関節結核と診断。抗結核薬の投与と再掻爬にて鎮静化。問題点と
して幼児手関節結核は非常に稀。鑑別・確定診断の困難さ。小児の抗結核薬選択の難しさ。手術治療
の良否と解剖学的知識と経験が必要。抗結核薬は関節移行が悪く、関節軟骨の破壊が危惧される為、
早期に掻爬も併用することが有効と思われた。
247
e Poster A
2-A-EP-54 重度狭窄性屈筋腱腱鞘炎に対する浅指屈筋腱切除の経験
e ポスター B(e Poster B)
8:00~8:42
e ポスター 25:基礎・腫瘍
座長:村松 慶一(山口大学整形外科)
e Poster B
2-B-EP-1
骨折部安定性が骨折治癒過程に及ぼす影響の組織評価―Triple Color GFP
マウスと新規考案創外固定モデルを用いた研究
Fixation stability dictates the differentiation pathway of periosteal progenitor cells in
fracture repair
萩原 祐介(日本医科大学 千葉北総病院 整形外科)
Rowe David,高井 信朗
マウス脛骨ピンニング(IMP)、創外固定(EF)を考案し、オステオカルシン、未熟骨芽細胞、肥大軟
骨を同時発現する 3 色 GFP マウスを用いて固定強度の違いによる骨折治癒過程を観察した。術後 2,5
週で X-ray、動態解析、蛍光組織観察を行った。EF は形態保持能に優れたが、動態解析で両群差を
認めなかった。組織像では IMP は 2 次骨癒合を EF は 1 次骨癒合を示した。EF は強固な固定及び部分
免荷と言う近年の治療を反映するモデルである。
2-B-EP-2
近赤外蛍光色素 TK︲1 を用いたラット下肢二次性リンパ浮腫モデルにおける
水動態の解析
Near-infrared fluorescence imaging in the experimental model of secondary
lymphedema using TK-1
倉橋 俊和(名古屋大学大学院 医学系研究科 手の外科学)
大西 哲朗,平田 仁
新規インドシアニン蛍光色素 TK-1 は立体構造 3nm 以下の微小な水溶性近赤外蛍光色素であり、その
微小な粒子径ゆえに ICG では不可能であった経静脈的な水動態の観察を可能とする。TK-1 を用いた
ラット下肢二次性リンパ浮腫モデルの近赤外蛍光イメージングでは、浮腫肢における TK-1 の排出が
健側肢に比して有意に亢進しており、リンパ浮腫初期には経静脈的な水の排出が亢進して停滞するリ
ンパ還流を代償している可能性を示唆した。
2-B-EP-3
LED ライトを用いた皮下腫瘤簡易補助診断法
The Way to Use LED Light for Auxiliary Diagnosis of Subcutaneous Mass
新井 健(東京歯科大学市川総合病院リハビリテーション科)
穴澤 卯圭,水野 早季子
皮下腫瘤の補助診断法としてガングリオンとその他の皮下腫瘤を鑑別するために高輝度 LED ライト
を用いてきた.腫瘤の光透過性を見ると同時に腫瘤の境界が光で描出されるかどうか見ることでより
確実にガングリオンの診断が可能であり,ガングリオンでない腫瘤を穿刺することもなくなった.携
帯が容易で痛みを伴わず瞬時に診断できることから皮下腫瘤簡易補助診断法として有用であると考え
られた.
248
2-B-EP-4
当科における手部軟部腫瘤例の検討
Evaluation of soft tissue masses in the hands and wrists
増山 直子(関東労災病院)
小林 康一,深澤 克康,金子 雅子,岡崎 裕司
2-B-EP-5
Metachondromatosis ―消退と変形―
Metachondromatosis -disappearance and deformity佐竹 寛史(山形大学 医学部 整形外科)
本間 龍介,丸山 真博,長沼 靖,高木 理彰
小児手足骨に発生した稀な metachondromatosis の 3 症例を経験した。症例 1 は 10 歳、女。右第 5 中手
骨骨幹端に発症し、10 か月で自然消退した。症例 2 は 7 歳、男。第 1 中手骨骨幹端に発症し、変形と
可動域制限がみられたため部分切除を行い、術後 2 年 7 か月で消退した。症例 3 は 6 か月、男児。第 2
趾基節骨近位に発症し、変形が高度となったため矯正骨切りを行い、再度変形が進行したため矯正骨
切りと骨端線閉鎖術を行い軽快した。
2-B-EP-6
Common digital nerve に発生した結節性筋膜炎の 1 例
Intraneural nodular fasciitis of the common digital nerve in the palm
水島 秀幸(名古屋大学大学院医学系研究科 機能構築医学専攻 運動・形態外科学講座 手外科学)
平田 仁
結節性筋膜炎は良性腫瘍あるいは外傷や感染を契機に発生する筋線維芽細胞の反応性病変とされてお
り、通常は前腕屈側に生じることが多く、手部以遠での発生は少ない。また通常筋膜より発生すると
されており、神経より発生したと考えられる症例は本邦および回外を含めこれまで 6 例しか報告され
ていない。今回指神経より発生したまれな結節性筋膜炎症例を経験したため報告を行う。
2-B-EP-7
上肢に発生した悪性骨軟部腫瘍の再建と術後機能評価
Functional evaluation after excision of malignant bone and soft tissue tumors
三又 義訓(岩手医科大学 整形外科)
佐藤 光太朗,古町 克郎,田島 克己,西田 淳
上肢に発生した悪性骨軟部腫瘍に対して手術を施行した 22 例(男性 12 例,女性 10 例)の切除縁評価,
再建,組織型,局所再発,転移,転帰,術後患肢機能を評価した.再建を要したのは 16 例であり,
内訳は人工肩関節置換術 5 例,局所皮弁 3 例,遊離皮弁 2 例,僧帽筋皮弁 2 例,指列移行術 2 例,wrap
around flap1 例であった.MSTS スコアは,平均 82.4%(26.7-100.0%)であり,術後の患肢機能は良好
であった.
249
e Poster B
2000 年から 2014 年まで当科にて手術した手部軟部腫瘤病変 72 例を検討し、術前診断と最終診断の整
合性を評価した。内訳は腱鞘巨細胞腫 17 例、ガングリオン 9 例、グロムス腫瘍 5 例、線維腫 5 例、瘢
痕 4 例、その他であった。悪性は myxoinflammatory fibroblastic sarcoma の 1 例であった。当科での
術前診断と最終診断の整合性は 63%(72 例中 46 例)であった。悪性も含め、腫瘍のサイズが小さく遠
位にあるものほど術前評価が困難であった。
8:42~9:06
e ポスター 26:腫瘍 1
座長:伊原 公一郎(関門医療センター整形外科)
2-B-EP-8
e Poster B
腱鞘巨細胞腫の治療経験
Clinical Outcome of Tenosynovial Giant Cell Tumor
能登 公俊(愛知県がんセンター愛知病院 整形外科)
建部 将広,細野 幸三,山田 健志
腱鞘巨細胞腫は日常診療でよく遭遇する良性腫瘍であるが,再発しやすいことが知られている.手関
節以遠に発生した腱鞘巨細胞腫 35 例の治療成績を報告する.全例に電話での聞き取り調査を行った
ところ,定期診察が終了した 3 例に術後 2 年以降での再発を認め,手術から聞き取り調査までの平均
79 か月間において 5 例(14%)に再発を認めた.より長期間の経過観察もしくは再発時の受診指示の説
明が必要と考えられる.
2-B-EP-9
グロムス腫瘍 12 例の検討
Glomus tumor: analysys of 12 cases
川口 洋平(名古屋市立大学 整形外科)
岡本 秀貴,立松 尚衛,関谷 勇人,大塚 隆信
グロムス腫瘍は手指の爪下部に好発するが、その症状の発現は非特異的であることも多く、腫瘍径も
小さいため、確定診断が困難である。当院で手術を施行したグロムス腫瘍 12 例に対して、自覚症状
から診断に至るまでの期間,臨床所見(自発痛,圧痛,温度過敏性,爪甲変形,爪床の色調変化の有無),
単純 X 線,MRI,術後の爪変形,再発について調査したので報告する。
2-B-EP-10 手指爪下グロムス腫瘍手術例の検討
Treatment of Subungual Glomus Tumors
白井 久也(美杉会佐藤病院 手外科センター)
黒川 義隆,沢辺 一馬,野田 和王
手指爪下に発生したグロムス腫瘍 12 例の検討を行った.X 線,MRI,エコーの術前検査で腫瘍の同定
不能を 2 例に認めたが,術中に腫瘍を見出すことができ,症状と身体所見が診断に大切であった.爪
郭外側展開法は爪変形を生じにくいという報告があるが,自験例で行った標準の経爪甲的展開でも工
夫した部分的爪甲反転により,小さな侵襲で腫瘍を切除できることがわかり,再発や爪変形増悪例は
認めなかった.
250
2-B-EP-11 超音波検査で診断した指尖部グロムス腫瘍の治療経験
Importance of ultrasonography in digital glomus tumors
瀬川 武司(富山県立中央病院 整形外科)
橋本 二美男,中村 琢哉,丸箸 兆延,笹川 武史
9:06~9:36
e ポスター 27:腫瘍 2
座長:普天間 朝上(琉球大学整形外科)
2-B-EP-12 遠位橈尺関節から発生した尺骨神経内ガングリオン
A ganglion within the ulnar nerve and communication with the distal radioulnar joint
via an articular branch
斉藤 公亮(大阪市立大学大学院医学研究科 整形外科学)
岡田 充弘,上村 卓也,新谷 康介,中村 博亮
我々は遠位橈尺関節(DRUJ)から発生し、尺骨神経内に発育した神経内ガングリオンを経験した。症
例は 51 歳男性。右手関節尺側の軟部腫瘤と共に、尺骨神経領域の知覚鈍麻があり、骨間筋と小指外
転筋に筋萎縮を認めた。MRI にて前腕遠位尺側に尺骨神経の関節枝と伴走し、DRUJ と連続する嚢胞
性病変を認めた。術中、関節枝から発育したガングリオンを確認した後、関節枝とともに切除するこ
とで、術後再発を抑えることができた。
2-B-EP-13 手指粘液嚢腫に対する低侵襲手術
Minimally Invasive Surgery for Mucous Cyst of the Finger
稲葉 尚人(那須赤十字病院)
鈴木 拓
手指粘液嚢腫に対する手術としては,嚢腫を切除せずに骨棘を切除する Lowrey らの方法が有用であ
ると多く報告がある.一方で,骨棘切除に伴った伸筋腱付着部の損傷の合併症も報告されている.今
回われわれは,骨棘切除も行わず背側関節包切除のみを行う低侵襲手術を 9 例 10 指に対して行った.
術後,嚢腫の再発,爪甲変形や感染も全例で認めなかった.手指粘液嚢腫に対する手術として有用な
方法であると考えられた.
251
e Poster B
指尖部グロムス腫瘍は画像評価が困難な手外科領域の腫瘍の一つである。従来は主に理学所見によっ
て診断し、治療計画を立てていたが、術前に超音波検査をすることで腫瘍内の血流を確認し、術前診
断の精度を高めることができると考えられる。また術者が術前に超音波で位置を確認することで、低
侵襲や手術時間の短縮につながり有意義であると考えられる。
2-B-EP-14 上肢に発生した神経鞘腫の臨床的検討
Clinical Characteristics of Patients with Schwannoma in upper extremity
藤渕 剛次(愛媛大学大学院 医学系研究科 整形外科学)
今井 浩,竹葉 淳,清松 悠,三浦 裕正
e Poster B
神経鞘腫は比較的よくみられる軟部腫瘍の一つである.今回,われわれは当院で外科的治療を施行し
た上肢発生の神経鞘腫症例 31 例に関し,その臨床的特徴と術後成績の関連について検討を行った.
術後,症状が増悪した症例の割合は 22.6% であった.術後症状悪化の危険因子として,これまでに様々
な報告があるが,今回の検討では上腕部発生,尺骨神経発生例において術後症状増悪例が多い傾向に
あることが示された.
2-B-EP-15 手に発生した滑膜性骨軟骨腫症の臨床所見と治療成績
Clinical Findings and Operative Outcomes of Synovial Osteochondromatosis of the
Hand
上石 貴之(横浜市大 整形外科)
松尾 光祐,川端 佑介,小牧 裕子,齋藤 知行
滑膜性骨軟骨腫症は多数の小さな遊離体を生じるが、手に発生することはまれである。手に発生し、
病理所見により滑膜性骨軟骨腫症と診断した 5 例は、術前症状として全例に腫脹があり、4 例に疼痛
を認めた。全例に腫瘍切除および滑膜切除術を施行した。ほとんどの例で腫脹、疼痛は改善したが 1
例で再発を認めた。滑膜性骨軟骨腫症は再発率が高いことに加え 5~10 年後に再発を認めることが多
く、今後も長期の経過観察が必要である。
2-B-EP-16 手指・手関節に発生した血管平滑筋腫 5 例の検討
Review of 5 cases of angioleiomyoma in finger or hands
宮村 聡(市立豊中病院 整形外科)
難波 二郎,岡本 道雄,山本 浩司
手指・手関節発生の血管平滑筋腫 5 例について検討した。血管平滑筋腫は有痛性の腫瘤を形成し、中
年女性に好発する。疼痛の原因は虚血であるとされ、組織学的分類である森本の分類では solid type
に多いとされる。自験例では全例男性で、疼痛を認めるものは solid type の 1 症例のみであり、solid
type と疼痛に関連性はなかった。今後、手指・手関節に発生する同腫瘍の更なる症例の積み重ねが必
要と考える。
252
9:50~10:14
e ポスター 28:画像診断
座長:砂川 融(広島大学大学院医歯薬保健学研究院)
2-B-EP-17 橈骨の正常 3 次元形状予測の試み
大浦 圭一郎(大阪大学 大学院 整形外科)
横田 太,岡 久仁洋,村瀬 剛,佐藤 嘉伸
CT を用いた 3 次元変形矯正シミュレーションは,健側を目標とするため両側罹患例では行えない.
そこで我々は正常骨形状を予測する手法を考案した.正常 CT データ 100 例から 3 次元橈骨モデルを
作成し,1 例を抽出して骨の一部を削除した欠損骨モデルを作成した.残り 99 例の骨モデルに部分最
小二乗回帰を行い,欠損骨モデルから全橈骨モデルを予測した.以上の手順を 100 例すべてに行った.
誤差は小さく臨床で使用できる精度と考えられた.
2-B-EP-18 舟状骨骨折に対する CT 舟状骨条件の有用性の検討
The diagnostic performance of scaphoid fractures with computed tomography
浦野 秀樹(中日病院 名古屋手外科センター)
中尾 悦宏,篠原 孝明,高橋 明子,中村 蓼吾
舟状骨骨折の CT 検査において通常の手関節 MPR 像に舟状骨の冠状断、矢状断、舟状骨放射状 CT を
追加することは骨折の有無のスクリーニングにおける感度、特異度、精度を上昇させ、複数の観察者
間の骨折型診断の一致率も上昇させる。また、検査時間の延長や被爆等の患者負担の増加もない。骨
折のスクリーニング、治療方針決定のための骨折型の精査のどちらにおいても有効な方法である。
2-B-EP-19 ばね指における掌側板の影響 ―超音波画像での評価―
Sonographic evaluation of effects of the volar plate on trigger finger
田中 祥貴(清恵会病院 大阪外傷マイクロサージャリーセンター)
五谷 寛之,矢野 公一,佐々木 康介,宮下 昌大
本研究では弾発指の弾発現象に掌側板の肥厚が関与している可能性について検討した。弾発現象を伴
う指では A1 pulley,屈筋腱,掌側板の厚みが、疼痛のみの指では A1 pulley,屈筋腱の厚みが無症状
対側指と比較して有意に増加していた。またトリアムシノロン注射後は注射前と比較して A1 pulley,
掌側板の厚みが有意に減少していた。弾発現象発生には A1 pulley,屈筋腱の肥厚に加え、掌側板の
肥厚も関与していることが示唆された
253
e Poster B
Predicting the normal three-dimensional shape of the radius.
2-B-EP-20 3D スキャナーを用いた非侵襲的形態記録
Non invasive measurement of hand volume using 3D scanner
新海 宏明(名古屋大学 手の外科)
原 龍哉,山本 美知郎,岩月 克之,平田 仁
e Poster B
非侵襲的で簡便な腫脹の定量的評価法として、3D スキャナーを使用し手の体積を測定し、その信頼
性を検討した。水で満たした容器に手を入れあふれた水の体積と、3D スキャナーで測定した手の体
積を比較した。両体積には有意な高い相関が認められ、検者内信頼性と検者間信頼性は非常に高値で
あった。本手法は手の腫脹に対して有用な検査法であると考える。
10:14~10:44
e ポスター 29:靭帯損傷
座長:六角 智之(千葉市立青葉病院整形外科)
2-B-EP-21 超音波検査を用いた母指 MP 関節側副靭帯損傷の治療経験
Treatment of collateral ligament tears of the thumb MP joint by using Ultra
sound diagnosis
櫛田 学(櫛田 学 整形外科クリニック)
超音波検査により母指 MP 関節側副靭帯損傷と診断し加療を行った 13 例 14 指について報告する。年
齢は 11〜40 歳で、受傷スポーツは球技が 11 例、柔道が 2 例であった。単純 X 線撮影後、コニカ製
SONIMAGE613 と 12-5 MHz リニアプローブを用いて超音波検査を行った。治療は母指装具を約 4
週装着させた。受傷後 2 週間までに加療を行った 11 指では問題なくスポーツに復帰した。受傷後 3 週
以上で受診した 3 指では改善が得られず、靭帯縫合術を行った。
2-B-EP-22 JuggerKnot ソフトアンカーを用いた母指 MP 関節側副靭帯損傷の治療成績
Clinical results of the treatment of collateral ligament injury of the
metacarpophalangeal joint of the thumb with JuggerKnot mini soft anchor
竹元 暁(平塚共済病院 整形外科・手外科センター)
坂野 裕昭,勝村 哲,岡崎 敦,齋藤 知行
JuggerKnot ソフトアンカー1.0mm ミニを使用した母指 MP 関節側副靭帯損傷 12 例の治療成績につい
て検討した.術後は良好な関節可動域が得られ,不安定性は認めず合併症もなかった.本アンカーは
従来の金属製アンカーよりサイズが小さくドリル径も細く,引き抜き強度にも優れている.pull out
wire 法と異なり手技が簡便で皮膚障害や感染リスクも低く,母指靭帯縫合における有用なデバイス
であると考えた.
254
2-B-EP-23 外傷性母指 CM 関節脱臼の新鮮例に対する治療経験
Treatment for Acute Traumatic Carpometacarpal Joint Dislocation of the Thumb
浅野 研一(東海病院 整形外科)
牧野 仁美,近藤 高弘,鈴木 正孝,平田 仁
2-B-EP-24 稀な小児陳旧性手指 PIP 関節側副靭帯損傷の一例
A case of chronic injury of the PIP collateral ligament in child
高崎 実(九州労災病院 整形外科)
畑中 均
手指 PIP 関節側副靭帯損傷は日常診療でよく見られる外傷であるが、小児での発生は稀とされている。
今回我々は、5 歳時に受傷した稀な小児陳旧性手指 PIP 関節側副靭帯損傷の症例を経験したので、PIP
関節側副靭帯損傷の文献学的考察を含め報告する
2-B-EP-25 DRUJ ロッキングの 1 例
A case of DRUJ locking
小原 由紀彦(大久保病院 整形外科)
中村 俊康,鎌田 雄策
DRUJ ロッキングは TFCC が DRUJ の掌側または背側に陥頓し、前腕回旋制限を生じる病態である。
44 歳女性 テニス中に転倒。回外 45 度と制限があり受傷後 8ヵ月で手術を施行する。背側断裂した
TFCC が掌側偏移し、前腕回外動作での尺骨頭の掌側偏移を妨げており、DRUJ 鏡下で陥頓した
TFCC を整復した。術後、前腕回外は 90 度と制限なく、痛みもなく経過している。DRUJ ロッキング
の病態は単純であり、治療は容易である。
255
e Poster B
外傷性の母指 CM 関節脱臼は非常に稀な疾患であり,整復後に再脱臼しやすく陳旧例へ移行すると治
療に難渋する.全例で徒手整復は可能であったが,容易に再脱臼を起こした.不安定性があると判断
し,経皮的鋼線刺入固定を 1 例,観血的靭帯修復を 3 例に行った.しかし,経皮的鋼線刺入固定で治
療した症例で再脱臼を生じ,不安定性と疼痛を認めた.新鮮例のうちに靭帯修復を行うことで不安定
性を残さないことが必要と考える.
10:44~11:14
e ポスター 30:Kienbock 病
座長:岩瀬 嘉志(順天堂東京江東高齢者医療センター)
2-B-EP-26 キーンベック病の手関節腫脹の解析
e Poster B
Analysis of Wrist Swelling in Kienboeck’s Disease
市瀬 彦聡(中日病院 名古屋手外科センター)
中村 蓼吾,中尾 悦宏,篠原 孝明,高橋 明子
キーンベック病の手関節腫脹の存在と部位を X 線写真と MRI で検討した。手関節基準側面像で有頭
骨々頭から皮膚までの軟部厚を背側と掌側で計測した。健常手関節では軟部厚に左右差がなかった。
キーンベック病では患側、背側にのみ軟部組織厚の有意の増大を認めた。MRI 横断像では背側の関節
包と背側の腱走行部に健常手関節に比べ有意の腫大を認めた。キーンベック病の手関節腫脹は背側の
関節包炎と腱腱鞘炎によるものと推定できる。
2-B-EP-27 高度分節化を認める Kienbock 病に対し月状骨部分切除、腱球挿入術を施
行した 3 例
Partial tendon ball replacement in advanced Kienbock disease. Report of three cases.
増田 哲夫(広島大学 整形外科)
砂川 融,中島 祐子,四宮 陸雄,越智 光夫
Kienbock 病に対し、当科ではこれまで血管柄付き骨移植術と除圧の併用で対応してきた。今回、月
状骨の高度分節化を認める症例(Lichtman 分類、Stage IIIB)に対し、月状骨部分切除と腱球挿入術を
併用した 3 例を経験した。術後の Modified Mayo Wrist Score では Good(80 点)1 例、Fair(75 点)2 例で
あった。進行した Kienbock 病に対し、本術式は良い方法であると考える。
2-B-EP-28 キーンベック病に対する骨核入り腱球移植の術後成績
Clinical outcomes of resection arthroplasty by using tendon ball grafting for
Kienbock’s disease
中村 修(香川大学 整形外科)
加地 良雄,山口 幸之助,山本 哲司
Lichtman 分類 stage3 以上の進行期キーンベック病に対し、骨核入り腱球移植術および仮 STT 固定術
を行ってきた。その臨床成績と術後 X 線所見を評価した。対象は術後半年以上経過した 7 手。病期は
Lichtman 分類で stage3b が 6 例、stage4 が 1 例。結果は、手関節痛は全例で消失、可動域および握力
もそれぞれ改善した。単純 X 線では、平均で RS 角が 52.5°、CHR が 0.48 と保たれていた。
256
2-B-EP-29 Kienbock 病に対する創外固定器を併用した血管柄付き橈骨移植による治
療経験
Vascularized Bone Grafts from the Distal Radius with External Fixation for the
Treatment of Kienbock Disease
金 潤壽(太田総合病院 手外科センター)
富田 泰次,根本 高幸,岩崎 幸治
2-B-EP-30 キーンベック病に対する新しい保存療法~体外衝撃波治療の経験
Extracorporeal Shock Wave Therapy as a new conservative therapy for Kienbock
disease
國吉 一樹(千葉大学大学院 整形外科学)
小林 倫子,上野 啓介,安部 玲,鈴木 崇根
対象はキーンベック病 14 例.男性 9 例,女性 5 例,平均年齢 64.5 歳(38-71 歳).Lichtman 分類 2 型 3 例、
3a 型 6 例、3b 型 5 例.1ヶ月間の装具療法無効例に体外衝撃波治療を月に 1 回ずつ 3ヶ月間施行した.
平均経過観察期間は19ヶ月
(6-36ヶ月)
であった.結果,労作時Visual Analog Scale
(VAS)
,quick DASH,
手関節可動域(arc),握力(健側比),Mayo wrist score で有意な改善を認めた.
13:55~14:31
e ポスター 31:末梢神経基礎的研究(1)
座長:新井 健(東京歯科大学市川総合病院リハビリテーション科)
2-B-EP-31 Feeder cell を用いないヒト iPS 細胞からの神経堤幹細胞分化誘導
Differentiation of human induced pluripotent stem cells into neural crest stem cells in
vitro
安部 玲(千葉大学大学院医学研究院 整形外科学)
小林 倫子,赤坂 朋代,鈴木 崇根,國吉 一樹
外傷等による末梢神経損傷は時に麻痺や知覚脱失・鈍麻などの重篤な後遺症を残す.これまでの研究
で損傷した神経に対する神経幹細胞移植や Schwann 細胞移植の効果が示されており,細胞移植に向
けて簡便かつ安定した方法での細胞の供給が求められている.本研究の目的は,ヒト人工多能性幹細
胞から feeder cell を用いずに神経堤幹細胞を分化誘導させることである.分化したことを免疫細胞化
学染色を用いて確認した.
257
e Poster B
Kienbock 病に対する血管柄付き骨移植を行い、創外固定器を併用し月状骨の除圧を行ってきたので、
その治療成績に検討を加え報告する。症例は 8 例、Lichtman 分類では stageIII が 4 例、stageII が 4 例、
手術時年齢は平均 39 歳で、X 線学的検討と臨床成績などを調査した。carpal height ratio は改善し、
MRI や CT においても改善傾向や骨癒合を認めた。Mayo Wrist Score は excellent6 例、good が 2 例で、
全例、疼痛は改善していた。
2-B-EP-32 末梢神経再生における BMP7/smad シグナルの関与
Involvement of BMP7/Smad signale in de-differentiated Schwann cells during
peripheral nerve regeneration after injury
國分 直樹(三重大学大学院 医学系研究科 整形外科)
辻井 雅也,横山 弘和,平田 仁,須藤 啓広
e Poster B
Bone morphogenic protein-7(BMP7)は骨誘導能だけでなく様々な組織の発生に必須とされ,神経保
護作用の報告もある.本研究にて末梢神経損傷後に Shwann cell における BMP-7/smad シグナルの活
性化と,in vitro での Schwann cell に対する細胞増殖能の増強作用が確認された.Schwann cell は
Bungner’s bands形成や神経栄養因子の分泌など末梢神経再生の重要な役割を担う.BMP7はSchwann
cell を介して末梢神経再生に関与することが示唆された.
2-B-EP-33 BMP Coreceptor RGMb における末梢神経再生への役割
Role of BMP coreceptor RGMb in peripheral nerve regenertion
大村 威夫(浜松医科大学 医学部 整形外科)
澤田 智一,松山 幸弘
Repulsive guidance molecule b(RGMb)は Bone Morphogenetic protein(BMP)の副受容体および増感
剤として知られている。本研究では RGMb-/- を用い、BMP signaling の神経再生への役割を検討し
たところ、BMP signaling は神経再生に対し重要な役割を担っていることが明らかとなった。
2-B-EP-34 Methylcobalamin はシュワン細胞の分化を促進し、ラット脱髄モデルの
再髄鞘化を促進する
Methylcobalamin promotes the differentiation of Schwann cells and the remyelination
of the rat demyelination model
西本 俊介(大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学)
田中 啓之,岡田 潔,村瀬 剛,吉川 秀樹
Methylcobalamin(MeCbl)は末梢神経障害に対して広く使用されているが、その再生過程で重要なシ
ュワン細胞(SCs)への影響は不明で、その作用について検討した。MeCbl を増殖状態の SCs に投与す
ると Erk 活性が低下した。分化誘導した SCs および後根神経節細胞との共培養では MBP の発現量が
増加した。ラット脱髄モデルでも MBP 陽性軸索数が有意に増加しており、MeCbl は SCs 分化促進作
用を有し、末梢神経再生促進への寄与が示唆された。
2-B-EP-35 ラット坐骨神経欠損モデルに対するナーブリッジの神経再生促進効果
Nerve regeneration after peripheral nerve repair with Nerbridge in a rat segmental
sciatic nerve defects model
西本 俊介(大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学)
田中 啓之,岡田 潔,村瀬 剛,吉川 秀樹
ナーブリッジはポリグリコール酸製の外筒にコラーゲンが充填されており、臨床試験で感覚機能回復
が報告されているが基礎的な研究報告はない。ラット坐骨神経欠損モデルにおける前脛骨筋湿重量、
終末潜時、筋力に関して、ナーブリッジ群はこれを中空にした群と比して有意に回復させ、蛍光免疫
染色でも MBP 陽性軸索数を有意に改善させた。ナーブリッジは中空構造の人工神経と比べて神経再
生に有利であると思われた。
258
2-B-EP-36 Adipose︲Derived Regenerative Cells を用いたハイブリッド型人工神経
の研究
Hybrid nerve graft added Adipose-Derived Regenerative Cells promotes peripheral
nerve regeneration
岡本 駿郎(金沢大学 整形外科)
多田 薫,八野田 愛,山本 大樹,土屋 弘行
14:31~15:07
e ポスター 32:末梢神経基礎的研究(2)
座長:光嶋 勲(東京大学医学部形成外科)
2-B-EP-37 遊離神経片内へ移植した motoneuron を新たな支配神経とする脱神経筋再建
Reconstruction of the denervated muscle by motoneuron-transplanted free nerve
中野 智則(名古屋大学大学院 手の外科)
栗本 秀,加藤 宗一,新海 宏明,平田 仁
脱神経筋筋腹へ遊離末梢神経片を縫合し、さらに神経片内に motoneuron を移植すると、motoneuron
は生着し縫合部を越えて筋肉内へ軸索を伸ばしていく。移植後 3 か月では、新たな神経筋接合部が形
成され、電気刺激により筋収縮がみられた。遊離神経片と motoneuron が脱神経筋の新たな支配神経
となることが実証された。この技術は、支配神経を任意に設置でき、本来の支配神経の位置に制限さ
れない自由度の高い機能再建を可能とする。
2-B-EP-38 神経損傷による神経筋接合部の変性を防ぐために―Wnt/β カテニン経路の
検討
Targeting the Wnt/Beta-Catenin Signaling Pathway after Traumatic Nerve Injury to
Improve Functional Recovery
栗本 秀(名古屋大学 手外科)
岩月 克之,山本 美知郎,Ranjan Gupta,平田 仁
神経筋接合部(NMJ)での適切な神経伝達機能には、アセチルコリン受容体の高密度の凝集が必要と
される。神経損傷後には経時的にアセチルコリン受容体は分散し、再神経支配後の運動機能回復を妨
げる要因となる。Wnt/β カテニン経路が神経損傷後におこる NMJ の変性に関与していることを、マ
ウス坐骨神経損傷モデルを用い明らかとした。Wnt/β カテニン経路の制御が、神経損傷後の機能回復
を補完する有用な治療タ ーゲットとなり得る。
259
e Poster B
今回我々は臨床応用を念頭に、生体吸収性の人工神経に ADRCs を封入したハイブリッド型人工神経
を作成し、その短期成績について検討した。日本白色家兎の坐骨神経を 15mm 切離し、架橋した。架
橋に用いた管腔物と封入物により実験群を 3 群作成した。ハイブリッド型人工神経群はシリコンチュ
ーブ + 生理食塩水群、人工神経 + 生理食塩水群と比較し電気生理学、病理学的評価において優れてお
り、本研究の結果からも有用であると考えられた。
2-B-EP-39 神経筋接合部形成促進薬の探索
Research of the Drug Activates the Formation of Neuromuscular Junctions
石井 久雄(名古屋大学 医学部 手の外科)
川本 祐也,中野 智則,栗本 秀,平田 仁
e Poster B
FDA 既認可薬パネルを用いて、神経筋接合部の形成を促進する薬剤の網羅的スクリーニングを行っ
た。同定された薬剤 A は、Western blotting 法にて濃度依存的に MuSK のリン酸化を促進し、C2C12
細胞の筋管において neural agrin 単独に比べ ACh-receptor の凝集を促進することが確認された。ま
た、マウスの神経再支配筋において、AChRε サブユニットや Col-Q 等の RNA の発現を増加させ、神
経伝導検査にて CMAP を増大させる傾向を認めた。
2-B-EP-40 手根管内における神経癒着モデルを用いた癒着の予防に関する検討
Prevention of adhesions with experimental model of median nerve adhesion in carpal
tunnel of rabbits
八野田 愛(金沢大学 整形外科)
多田 薫,岡本 駿郎,山本 大樹,土屋 弘行
手根管症候群を初めとする絞扼性神経障害例や外傷に伴う末梢神経損傷例において、神経の癒着は治
療上の問題となることが多い。今回、我々が考案したウサギ手根管内における神経癒着モデルを用い
て神経癒着予防剤としてアルギン酸ゲルを使用し、その効果を確認した。肉眼的評価、病理学的評価、
電気生理学的評価を行い、アルギン酸ゲルは組織修復の過程に作用し神経と周囲組織の癒着を予防し
ていると考えられた。
2-B-EP-41 ラット腕神経叢引き抜き損傷モデルにおける後根神経節および脊髄での
p75 NTR の発現
Expression of p75NTR in Dorsal Root Ganglia and Spinal Cord of Rat Brachial
Plexus Avulsion Model
小林 倫子(千葉大学大学院 医学研究院 整形外科学)
安部 玲,赤坂 朋代,鈴木 崇根,國吉 一樹
過去に腕神経叢引き抜き損傷(以下 BPA)に対して抗 p75NTR 抗体を投与し、疼痛を軽減したことを
報告した。今回は ELISA 法を用い右 C7DRG、右 C8DRG、C7 脊髄、引きぬいた C8 神経根局所におけ
る p75NTR の発現を調べ、抗 p75NTR 抗体の作用部位を検討した。抗 p75NTR 抗体の作用部位は引き
抜いた損傷局所である可能性が示唆された。
260
2-B-EP-42 交差神経移植後の体性感覚野応答 ―マウスモデルにおける解析―
Somatosensory Cortical Responses after Contralateral Peripheral Nerve Transfer
- Analysis in Mice Model間庭 圭一(新潟大学 整形外科)
山下 晴義,澁木 克栄,柴田 実,遠藤 直人
15:15~15:57
e ポスター 33:末梢神経臨床
座長:高木 岳彦(東海大学医学部外科学系整形外科学)
2-B-EP-43 橈骨神経浅枝の走行と手術時損傷の危険性についての考察
Anatomical characteristics of the superficial branch of the radial nerve and relationship
to surgical sites
戸張 佳子(四谷メディカルキューブ 手の外科・マイクロサージャリーセンター)
平瀬 雄一,平良 貴志,山田 哲生,伊川 真実
母指中手骨基部から橈骨茎状突起近位約 4cm まで皮下を剥離し、関節形成術、腱縫合術前に橈骨神経
浅枝の走行を確認した。25 手中 10 手(40%)は(1)第 1 伸筋区画および(2)snuff box、(3)母指 CM 関節
を横切らず末梢へ走行していた。
(1)
(2)
(3)の上を走行していたのはそれぞれ 28%、32%、32%であり、
重複していることも多く、母指橈側へ向かう掌側枝の割合が高かった(78%)。
2-B-EP-44 末梢神経絞扼性障害における ICG 蛍光法を用いた神経内微小血行動態評価
Evaluation for Hemodynamics of Peripheral Nerve with Entrapment Neuropathy by
ICG Fluorescence
岡田 充弘(大阪市立大学医学研究科 整形外科学教室)
横井 卓哉,上村 卓也,新谷 康介,中村 博亮
インドシアニングリーン(ICG)蛍光法を用いることで、末梢神経内の微小血行動態が評価可能か検討
を行った。ICG 蛍光法は、ICG を静脈投与するだけの簡易かつ安全性の高い方法であり、広範囲で輝
度変化を観察することができた。また、赤外蛍光解析ソフトを用いることで、蛍光輝度の定量化が可
能であった。ICG 蛍光法は、末梢神経内部の血流評価方法として利用可能であることが示唆された。
261
e Poster B
Contralateral C7 Transfer のマウスモデルを作成し、フラビン蛋白蛍光イメージングで前肢振動刺激
時の体性感覚野応答を解析した。対照群では、刺激と対側に視床入力による直接応答をを認めた。交
差神経移植群では刺激と同側に視床入力による直接応答を、対側に弱い間接応答を認めた。大脳皮質
各層ごとの解析では、対照群の直接応答では 4 層優位、交差神経移植群の間接応答は 2/3 層優位の傾
向であった。
2-B-EP-45 リストカット後に生じたアロディニアに対して有茎脂肪筋膜弁移植を行っ
た2例
Clinical results of pedicled adipofascial flap graft for hand allodynia after wrist cut;
two cases reports
入船 秀仁(札幌医科大学 救急医学講座)
高橋 信行,金谷 耕平,射場 浩介
e Poster B
リストカット後に生じたアロディニアに対し、神経剥離を行い、一次的に軽快するも再発した症例に
対し、再神経剥離に加えて有茎前腕脂肪筋膜弁移植を行い、良好な結果を得た 2 例を経験した。本法
は神経癒着を起因とした症例に対しては、再癒着防止と神経周囲血流改善が得られると考えられ、有
用な治療法の 1 つと考えられる。
2-B-EP-46 指引き抜き切断再接着術における神経再生誘導チューブの使用
The neuranagenesis guide tube for replantation of the avulsion amuputated finger
松末 武雄(関西電力病院 形成再建外科)
高見 昌司,清水 和輝,冨田 浩一,関 謙太朗
神経引き抜き断裂を認める症例に対して、再接着術時にナーブリッジを使用し、使用群と非使用群と
比較、考察した。中節骨より中枢レベルでの神経引き抜き損傷を伴う切断指の場合、ナーブリッジに
より良好な知覚の回復が得られることが示された。末節骨レベルでの切断指の場合は、ナーブリッジ
の有効性ははっきりしなかった。
2-B-EP-47 神経再生誘導チューブ使用症例の短期成績
Short follow-up date of nerve reconstruction cases by artificial nerve conduit
山田 哲生(四谷メディカルキューブ手の外科マイクロサージャリーセンター)
平瀬 雄一,平良 貴志,戸張 佳子,竹田 絵理子
末梢神経の再建には自家神経移植が使用されてきた。今でも、重要な知覚や運動機能の再建に対する
自家神経移植の有用性はゆるぎない。しかし、神経採取部位の犠牲をともなうという欠点故に、比較
的短い神経欠損に対しては自家神経移植の使用をためらうこともあった。最近、使用が許された神経
再生誘導チューブは神経採取部の犠牲をともなわないという大きな利点がある。われわれが使用した
症例の短期結果について報告する。
2-B-EP-48 手根開放術後に重度の低位尺骨神経麻痺をきたした 1 症例
Ulnar Neuropathy due to Volar and Ulnar Displacement of the Finger Flexor Tendons
Following Open Carpal Tunnel Release: Case Report
田辺 勝久(西宮市立中央病院 整形外科)
手根管開放術後に低位尺骨神経麻痺をきたした症例を経験した。MRI、超音波検査にて手根管内の屈
筋腱が掌側尺側に偏位しているのが認められた。麻痺は徐々に回復し、術後 1 年 3ヶ月で知覚障害は
正常化し、軽度の筋萎縮を認めるものの、ほぼ正常レベルの筋力に回復した。
262
2-B-EP-49 特発性後骨間神経麻痺における“くびれ”の病理像
Histological findings of hourglass-like constriction in a patient with spontaneous
posterior interosseous nerve palsy.
小松 雅俊(信州大学 医学部附属病院 整形外科)
山崎 宏,内山 茂晴,額田 均,加藤 博之
16:00~16:36
e ポスター 34:切断肢
座長:村田 景一(市立奈良病院四肢外傷センター)
2-B-EP-50 切断指治療に対するアンケート調査による患者満足度の検討
Questionnaire Investigation of Satisfaction with Treatment of Finger Amputation
丹羽 智史(安城更生病院 手の外科・マイクロサージャリーセンター)
建部 将広,三竹 辰徳,田中 健司,浦田 士郎
切断指の治療患者に対し、郵送によるアンケート調査を行い、長期経過の満足度および自覚的機能評
価に関して検討した。154 例中返答のあった 58 例を対象とした。DIP 関節より遠位の損傷に関しては、
再接着・皮弁・断端形成の 3 群にて、近位の損傷に関しては、再接着と断端形成の 2 群にて比較した。
満足度、疼痛・しびれの程度、Hand20 に関しては、有意差を認めなかったが、入院期間、休業期間
に関しては、再接着例が有意に長かった。
2-B-EP-51 指切断時の decision making における医師・患者の優先事項の違い
Patient and Hand surgeon preference on Finger Replantation
西塚 隆伸(名古屋大学 医学部 手の外科)
平田 仁,山本 美知郎,岩月 克之,原 龍哉
本研究では日本での切断指治療に対する患者および手外科医の認識をアンケート調査にて比較する事
を目的とした。治療選択に際し患者は外見よりも機能を、医師は切断高位、どの指か、挫滅の有無等
を重視する傾向にあったが双方とも費用や保険の有無は重視していなかった。本調査を prestudy と
し今後は日米医師患者 4 群の cross-cultural study を行っていきたい
263
e Poster B
24 歳の男性,左特発性後骨間神経麻痺の発症 6 か月後に,神経束間剥離術を行った.肘より 5cm 近位
の神経の“くびれ“を含む神経束を切除し,神経移植を行った.切除した神経束に炎症細胞浸潤は見ら
れなかった.くびれの近位部では,小径神経線維が多数みられ sprouting が示唆された.“くびれ”部
の縦断像では神経周膜が斜走しており同部での神経束のねじれを示していた.“くびれ”部より遠位で
は神経線維は全て Waller 変性していた.
2-B-EP-52 当院における指尖部切断に対する手掌ポケット法の治療成績
Clinical Results of Palmar Pocket Method for Fingertip Amputations
澤井 誠司(松寿会 共和病院 形成外科)
北山 稔大,添田 晴雄
e Poster B
2009 年から 2013 年までに指尖部切断に対して手掌ポケット法で治療を行った 33 名 33 指を対象として
評価した。挿入期間は平均 16.9 日、創感染は認めず全例で生着し、12 例で二次手術を行った。知覚機
能は S1 から S2 の症例が多く、TAM は平均 240 度であった。subzone1 から 2 までの切断では手掌ポケ
ット法が有用な治療法の一つであると考えられるが、術後に生じる指尖部の萎縮などに対して二次手
術を要する症例があることには注意が必要である。
2-B-EP-53 玉井分類 zone 3 切断指再接着後の可動域
Range of Motion of Tamai zone 3 replanted digits
神田 俊浩(聖隷浜松病院 手外科・マイクロサージャリーセンター)
大井 宏之,向田 雅司,鈴木 歩実
zone 3 再接着指の MP 関節および PIP 関節の術後可動域(以下 ROM)を調査した。当センターで再接
着術を施行した 146 例 185 指のうち zone 3 切断指 22 例 25 指を対象とした。結果は MP 関節平均 ROM
16.2°/87.4°、PIP 関節平均 ROM 1.6°/78.1°であった。MP 関節の ROM は問題なかったが、PIP 関節の
ROM 獲得は確実ではなかった。PIP 関節 ROM 獲得のためには可能な限り深指屈筋腱は縫合し、かつ
早期の ROM 訓練を行うよう努めるべきであると考えられる。
2-B-EP-54 母指完全引き抜き切断再接着後の機能再建術の経験
Functional Reconstruction of replanted thumb following complete avulsion injuries
with amputation
宮地 有理(健和会大手町病院 整形外科)
酒井 和裕,古川 雄樹,杉田 健
母指完全引き抜き切断の再接着生着率は近年向上して、生着母指の機能・整容などの二次再建の必要
性が高まった。時期と方法選択は改善効果と侵襲による合併症の視点が重要である。今回当科で 2 症
例を経験した。左 IP 関節離断と MP 関節離断で前者は部分壊死となり遊離皮弁知覚皮弁による二次再
建を行った。後者は完全生着し二次的に神経・腱再建術を行い良好な結果を得た。
2-B-EP-55 切断指再接着後に血行再建を必要とした再手術例の検討
study of amputated fingers to redo revascularization
清水 和輝(関西電力病院)
北山 稔大,添田 晴雄
切断指再接着術後の注意すべき合併症として血行障害が挙げられる。今回、切断指再接着後に再手術
にて複数回の血行再建を必要とした症例を検討したので報告する。
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