10月 - 在ボツワナ日本国大使館

Botswana Medical Information
2015 年 10 月
【医療機関訪問】
当地の民間救急搬送サービス会社を 3 件訪問した。
(1)Emergency Assist:緊急電話番号 991
○沿革
南アフリカの Netcare991 とボツワナの起業家が提携して、
2003 年に当地に設立された。
○業務内容
一般的な現場からの救急搬送、病院間の救急搬送、ボツワナ国外への救急搬送、企業な
どに対する救命訓練指導、24 時間コールセンターサービス。自動車のトラブルに対するロ
ードサービス。ロードサービスは国際自動車連盟(FIA)を介して、日本自動車連盟(JAF)
と提携している。サービス内容は日本と異なるため、詳細は JAF のホームページで確認し
てください。
○設備・装備
ハボロネ、フランシスタウン、マウン、セレビピクウエに拠点を持つ。ハボロネ事務所
は 2 階建てで、1F にスタッフルーム、2F にコールセンターがおかれている。これらの拠
点に救急車を計 10 台所有し、うち 2 台は新型。フォルクスワーゲン社のワゴン車がベース
車両であった。車内装備は心電図モニター、除細動器、吸引装置、酸素配管、挿管セット、
ストレッチャー、薬品など。事務所に搬送用の人工呼吸器があり、救急車に搭載される。
オカバンゴ湿原に近いマウンでは、Okavango Air Rescue と提携している。南アフリカ共
和国に飛行機を所有していると聞いたが、もらった資料やホームページにその記載ない。
○スタッフ
救急スタッフは 20 名で、パラメディックとしてボツワナ政府に登録されている。救急ス
タッフがドライバーを兼ねている。スタッフは Basic Life Support(BLS)と Advanced
Cardiovascular Life Support(ACLS)の訓練を定期的に受けている。
○活動の実際
出動回数は月に 40 件ほどで、自動車事故への対応が多い。ボツワナでは 10~11 月の出
動が多く、公的救急隊の出動理由は病気が一番多いとのこと。搬送料金は距離と重症度で
変化し、例えば大使館から 13km ほど離れた病院までの搬送は、日本円で 12000~18000
円程度とのこと。またその場合の搬送所要時間は、交通量にもよるが7分程度とのこと(実
際にはこの時間での搬送は困難ではないかと考える)。
○印象
装備は標準的、清潔度・整理整頓も問題なし。スタッフの練度は確認できず。
(写真 1)
24 時間コールセンター。奥に見える小部屋
で、コールセンターの管理者が執務。
(写真 2)
救急スタッフの待機室。奥に見えるドアをで
ると、救急車のある駐車場に出る。
(写真 3)
最近導入された救急車で、まだ
Emergency
ていない。
(写真 4)
救急車内部。最近購入されたため、きれいで
あった。足下に置いてあるエマージェンシーバ
ッグ内に薬品を収納。装備や機器の配置は日本
の救急車とあまりかわらない。
Assist
991 の塗装はされ
(写真 5)
Operational Manager の部屋に保管され
ていた、搬送用人工呼吸器。
(写真 6)
救急車に先行して駆けつけるための車両。
(写真 7)
救急車に先行して駆けつけるための車両。
(写真 8)
オフィスのある建物の正面。この建物の
裏手が、救急車の駐車場。
(2)Medical Rescue International (MRI) Botswana :緊急電話番号 992
○沿革
1991 年に民間資本のみで設立され、1998 年にボツワナ証券市場に上場している。
○業務内容
業務は、一般的な現場からの救急搬送、24 時間対応の電話での医療相談、病院間の移送、
飛行機を使った移送、救命訓練指導、鉱山・学校・一般企業における医療サービスの提供
(産業医業務、検診など)
、24 時間営業の薬局、クリニック、眼鏡店、ハボロネ近郊のセレ
ツェカーマ国際空港内のトラベルクリニック。最近、観光地であるカサネに、当地域で初
の民間総合診療所を設置し、地域医療にも貢献している。
○設備・装備
ハボロネを本拠としてフランシスタウン、カサネ、マウン、カニエ、パラペに拠点があ
る。ハボロネ本部は 2 階建ての独立した建物で、1 階に倉庫、スタッフルーム、薬局、眼鏡
店、2 階に事務所、コールセンター、クリニックが置かれている。
ハボロネ本部には、救急車は 3 台、医師やスタッフを乗せて現場に救急車より先に到着
する車両が 2 台配備されている。救急車はワゴンタイプと、悪路・路外にも入れるように
四輪駆動車(トヨタランドクルーザー)をベースにした救急車を使用している。
倉庫に搬送用人工呼吸器3台(1台は新生児用)
、心電図モニター機能+経皮ペーシング
機能付きの除細動器が複数台、新生児搬送用インキュベーターや保温器が保管されていた。
飛行機はハボロネ空港に常駐している、双発プロペラ機(King Air 200:1974 製)を使用
している。Kalahari Air Services と契約し、1機を MRI 専用で使い、同時に 2 機必要なと
きは、臨時でもう 1 機使用できるように契約を結んでいる。この機体はハボロネから南ア
のヨハネスブルグまで 40 分、モザンビークまで 2 時間で行けるとのこと。またオカバンゴ
湿原の飛行場にも着陸可能。機内に患者用ベッドは1床だが、必要時は座席をベッドに変
えて、2人搬送可能。
付属のクリニックの営業時間は、月~金 AM8 時から PM9 時、土曜 AM11 時から PM3
時、日曜 PM2 時から PM8 時、休日 AM11 時から PM3 時。今回の訪問では時間がなく、
中は見ることができなかった。24 時間対応のコールセンターでは、病状を照合していくと、
診断や必要な対応がわかるように作られたマニュアルを使用している。
○活動の実際
交通量によるが、救急車を呼ぶと MRI ハボロネ本部から大使館付近まで 10~15 分、大
使館付近から 13km 離れた私立病院まで 25~30 分。
(前述の 991 の話では所要時間が短か
ったが、MRI の時間の方が実態に近いのではないかと考える)
。料金は距離と重症度で変化
する。今の例で行くと、標準的な金額は P1300、最高で P3000(医師同乗の場合)とのこと。
航空機による搬送は月に 14~20 回、時間にして月に 75~80 時間行っているとのこと。
○印象
装備は充実しており、また施設も整理整頓・清掃がしっかりしていて、好感が持てる。
スタッフが実際に活動しているところは見ることができなかったが、前述の 991、後述の
993 と比較すると、992 が救急車を必要としたときの第一選択と考える。
(写真 1)
24 時間コールセンター。同じサイズのブー
スがあと3カ所有る。またこのフロアーにあ
るオフィスでコールセンターの管理者が執務。
(写真 2)
クリニックの入り口に設置されているプレ
ート、開院時間が記載されている。一緒に写っ
ている人物は、案内してくれた Operational
Manager EMS の James MacKay 氏。
(写真 3)
併設の 24 時間営業の薬局。
(写真 4)
併設の眼鏡店。
(写真 5)
心電図モニター機能+経皮ペーシング機能
付きの除細動器。
(写真 6)
搬送用人工呼吸器3台。オレンジ色のボディ
の 2 台は Drager 製オキシログ Vent(1)、左端
の写真が切れている1台は新生児用。
(写真 7)
赤ちゃんの体温低下を防ぐためのウォ
ーマー。
(写真 8)
搬送用の新生児保育器。
(写真 9)
訪問時、ワゴンタイプの救急車は出払って
いた。悪路用の救急車も出動していたが、たま
たま戻ってきて洗車中で中は見ることができな
かった。ベース車両はトヨタランドクルーザー。
(写真 10)
救急車に先行して駆けつける Rapid Car。1
台はスバル、もう一台はアウディをベースにし
ている。後方に見えるのは、今は使用していな
い旧型の救急車(ワゴンタイプ1台とレンジロ
ーバー2台)とのこと。まだ使えそうな車であ
った。手前で写真を撮っているのは当館スタッ
フ、撮られているのは先ほどの James 氏。
(写真 11)
建物の裏手側からの外観。建物内部もそ
うであったが、建物周囲の清掃・整理整頓
もよくされており、好感が持てる。
(3)Rescue One:緊急電話番号 993
○沿革
MRI で働いていた Patrick W. Proctor 氏(今回の視察の応対者)が、前述の MRI をやめ
て、設立したとのこと。現在は MRI との関係は無いとのこと。Patrick 氏は BLS、ACLS、
Pediatric Advanced Life support(PALS)の資格をアメリカで取得とのこと。Patrick 氏
は早口で多弁(話が止まらない)だったため、質問できなかった事項が多数生じた。
○業務内容
一般的な現場からの救急搬送、病院間の移送、飛行機を使った移送、24 時間対応の電話
での医療相談、レース等のイベントでの救急医療サービス提供、救命訓練指導、火災発生
時の訓練指導、ファーストエイドキットや火災時に使用する装備の販売。レスキュー隊の
様な活動も行うとのこと。
○設備・装備
拠点はハボロネのみ。2 階建ての社屋。ワンボックスタイプの救急車が1台、現場へスタ
ッフを乗せ先行するための車が2台(VW 車のハッチバックタイプ乗用車)
。
装備は充実しており、車載の気管挿管時に使用する喉頭鏡など、使い込まれていてすぐ
に使用可能な状態であった。人工呼吸器、新生児搬送用保育器(インキュベーター)
、モニ
ター・ペーシングができる除細動器などあり。機器はアメリカ製が多いか。車のドアをカ
ットする機械もあるとのこと。また教育用のデバイス(模擬患者人形など)が豊富にあっ
た。スタッフの反応はキビキビしており、よく訓練されている印象。
○活動の実際
話を伺うと、救急搬送で取り扱う事例が、一般的なものよりも重症患者が多い印象を持
った。また国外を含めた病院間の移送をよく行っている印象も受けた。実際の搬送時間や
値段に関しては時間が無くなり聞けなかった。装備やスタッフの能力は優れているが、救
急車が1台だけというのは、この救急隊を利用することにおける欠点か。
(写真 1)
Managing Director の Patrick 氏とスタッ
フ。足下に写っているのは、新生児搬送用の
保育器。
(写真 2)
ワゴンタイプの救急車。
(写真 3)
救急車内のストレッチャー。
(写真 4)
下段は交通外傷などの時に使用する、首や背
骨を動かさずに搬送する機器。
(写真 5)
上段は AED やバッグマスクを納めた容器
が固定されている。ドアの近くには酸素の配
管との接続部がある。
(写真 6)
AED 装置。
(写真 7)
モニター機能、経皮ペーシング機能を持
つ除細動器。
(写真 8)
ワゴンタイプの救急車よりフットワークの
軽い、乗用車ベースの車両。トランクには医療
機器や薬品を装備。必要時は患者搬送も可能と
のこと。
文責:平 昭嘉(在ボツワナ日本国大使館医務官)