ファインテック・ジャパン2015

#1511、2015年4月12日
今週の話題
ファインテック・ジャパン2015
4月8日から3日間、東京ビッグサイトにおいて恒例のファインテック・ジャ
パン2015(フラットパネルディスプレイ展)が開催されました。併せて、フ
ィルムテック・ジャパン、プラスチック・ジャパン、メタル・ジャパン、光・レ
ーザー展なども同時開催となっていますので、ビッグサイトの東ホールがほぼい
っぱいの状況でした。大きなブースを持つ会社があまりありませんでしたので、
出展者は1000社を超えていたかもしれません。タイトルからある程度推測で
きるように、このイベントは、もともと材料、それも機能材料の先端技術の紹介
を目的としているようなのですが、最近はエレクトロニクス関連、あるいはそれ
を製造するための技術が中心となっているようです。一時期はフラットパネルデ
ィスプレイ、タッチパネルスクリーン関連の展示が華やかだったのですが、今年
はだいぶトーンダウンしているようです。ディスプレイ産業の中心が韓国や台湾
に移り、日本メーカーの退潮が影を落としているかのようです。
替わって人が集まっているのが高機能フィルム関連の展示です。キーノート講
演でも、大手化学メーカー、材料メーカーの研究開発責任者による「夢の高機能
フィルム」についてのスピーチが多かったようです。しかしながら展示に関して
は、あまり具体的なアプリケーションになっておらず、「夢」のレベルから、実
用化までには、まだ道のりはかなりあるようです。
一方、フィルムをサブストレートとしたフレキシブル・エレクトロニクスとな
ると、定番はRTR(ロール・ツー・ロール)加工技術ですが、こちらの方は、
以前の観念的な技術レベルから、実用的なレベルに踏み込んだ技術が紹介されて
おり、実際に使われ始めていることがうかがい知れます。例えばスクリーン印刷
機のRTR化は当たりまえの技術になっており、装置メーカーは様々な点で機能
を高めた製品を出してきています。インクジェット印刷、3D印刷のデモンスト
レーションもいくつか見受けられましたが、これまでのような派手なパフォーマ
ンスを見せる展示は少なくなっているようです。それだけ、実用性から見て評価
が固まってきているのかもしれません。RTR化技術でも、これまでのフィルム
成形、ラミネーション、コーティングなどの前工程中心の技術から、パターニン
グ、外形加工のような後加工まで広がってきているようです。その点、富士商工
マシナリー社の位置合わせ技術、東レエンジニアリング社のレーザーパタンニン
グ技術などは、一見地味ですが、それだけ実用化が進んでいるようです。
印刷エレクトロニクス関連でも、派手さはありませんが、実用的なところでの
地道な進歩の状況が出ていたように思います。ミノグループの曲面への印刷が可
能なスクリーン転写印刷機、中沼アートスクリーン社の寸法精度の高いスクリー
-1-
ンマスクなどは、注目に値する技術かと思います。アサヒ化学研究所のファイン
パタン用の銀インク、カーボンインクは、実績があるメーカーの新製品であるだ
けに、凄みを感じます。また、ウシオ電機が発表した VUV-Aligner は、半導体材
料を印刷加工できるプロセスとして期待されます。
今回の展示会では、海外メーカーの参加はそれほど多くありませんでしたが、
台湾だけはまとまってかなりの数のメーカーの出展がありました。
特にディスプレイ関係では、様々な製品の展示があり、技術的にも成熟期に入り
つつあることがわかります。分野によっては日本を追い越しているようです。日
頃はほとんど目にすることがないようなメーカーが、小型のOLEDモジュール
を、当たり前のように展示しているのが印象に残りました。
今回の展示会では、画期的な夢の技術は見当たりませんでしたが、現実的な実
用面では、着実に進歩していることを感じさせるものでした。個人的には、短時
間の割には得るところが少なくないイベントでありました。
DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター)
今週のヘッドライン
2015年4月12日
1.LG Electronics(韓国のエレクトロニクス大手)3/29
2023年までに15億ドルを投資して、ベトナム北部のハイフォン地区に
製造コンプレックスを構築へ。スマートフォンやテレビを製造。
2.Hon Hai(台湾のEMS最大手)3/30
2014年における売上は4.2兆台湾ドル。ネットの利益は1305億台
湾ドル(41.7億米ドル)。前年比で22%の増加。
3.Tel Aviv University(イスラエル)3/30
超薄型ベンダブルデジタルディスプレイの構造体用に、単分子層のバックボ
ーンを開発。
4.LG Chem(韓国の化学メーカー大手)3/31
1億ドルを投資して、中国の液晶パネル用偏光フィルムの製造工場の能力を
大幅増強。
5.DIGITIMES(台湾の業界メディア)3/31
ノートブックPC筐体の材料として合金の比率が増えており、プラスチック
筐体メーカーは製造能力を縮小。
6.Haydale(英国の電子材料メーカー)3/31
急増するグラフェンインクの需要に対応するために、工場スペースを230
平方メートル拡張。
-2-
7.IPC(米国のプリント基板業界団体)3/31
2月の北米プリント基板産業のB/Bレシオは1.05。出荷額は、前年同
月比で1.1%の減少。
8.MarketsandMarkets(米国の市場調査会社)4/2
エレクトロニクス用や自動車用の印刷用ナノ材料の市場は、2013年の7.
1億ドルから、2019年には19.74億ドルに成長と予測。
9.Lumejet(米国の装置メーカー)4/2
フレキシブルディスプレイや OLED などの用途を想定して、RBG 三色カラー
デジタルインクレスヘッドを開発。
10.Electrolube(米国の材料メーカー)4/2
ウェアラブルデバイスの電子回路用に、フレキシブルなコンフォーマルコ
ーティング材料を実用化へ。
11.SEMI(米国の半導体製造装置業界団体)4/2
2016年までに、東南アジアは半導体製造装置に190億ドルを投資す
る見込み。
12.ABI Research(米国の市場調査会社)4/3
携帯用コンピュータに占めるタブレットPCの比率は、2015年末には、
52%に達すると予測。
13.NanoMarket(米国の市場調査会社)4/6
世界の薄型バッテリーの市場は、2015年の34百万ドルから、202
2年には11億ドルに成長と予測。
14.Samsung Electronics(韓国エレクトロニクス大手)4/6
国内の Pyeontaek に新たに DRAM 工場を建設。中国の Xi’an 工場では
NAND の製造ラインを2ライン増設。
15.Perpetuus Advanced Materials(英国の材料メーカー)4/2
ドイツの Heraeus 社と協力して、ナノカーボングラフェンベースの印刷イ
ンクを商品化することに合意。
16.SAR Insight & Consulting(米国の市場調査会社)4/2
世界の家庭用オーディオ機器の市場は、2014年の91億ドルから、2
020年には160億ドル(1億42百万台)に成長と予測。
-3-
17.University of Illinois-Urbane (米国)4/7
新しい金属性のカーボンナノチューブの製造プロセスを開発。設備は安価
で、スケールアップが容易。
18.DIGITIMES(台湾の業界メディア)4/7
2015年における世界のフラットパネルテレビの出荷は、200〜21
0百万台に達する見込み。その内20%が4k タイプ。
19.Apple(米国のエレクトロニクスメーカー大手)4/6
最新のプロセッサーA9は、韓国の Samsung 社と Malta の
GlobalFoundries 社に生産を委託。
20.ASE(台湾の半導体パッケージ大手)4/6
ウェアラブルデバイス用の需要が急増しているため、高雄工場と中歴工場
のシステムインパッケージ(SiP)の生産能力を大幅増強。
21.Molex(米国のコネクタメーカー大手)4/8
自動車用のプリント基板の実装に、鉛フリーの EON Compliant Pin
Technology を発表。
22.ASE(台湾の半導体パッケージメーカー大手)4/8
台湾の工業用水不足に対応するために、今後3年間で生産能力を大幅に増
強する高雄工場で、水のリサイクルシステムを導入する計画。
23.Reportlinker(米国の市場調査会社)4/8
スマートフォンやタブレットPCのスローダウンのために、2015年に
おける世界のフレキシブル基板市場は8.6%の成長に留まると予測。
(注)このヘッドライン・ニュース・レターは速報性を重視するために、若干の
誤訳や数字の変換に誤りがある場合もございます。ご了承下さい。
DKNリサーチ
栄泰産業株式会社
DKNリサーチのイベントスケジュール
*エンドテックセミナー 4月16日
「海外プリント基板規格における品質保証への基本的な考え方と事例に学
ぶ認定制度への対応法、新製品の扱い方」
http://ec.techzone.jp/products/detail.php?product_id=3920
**DKNリサーチの紹介ということで割引なります。
-4-
*継電器・コンタクトテクノロジ研究会、4月24日、機械振興会館
「プリンタブル・エレクトロニクスの基本構成と応用技術
その4. 印刷インクについて」
http://www.elcontech.jp/
* JPCAショー2015 6月3日〜6日
* コンバーテックセミナー 6月26日
「初手から学ぶプリンタブル・エレクトロニクス」
最近のDKNリサーチの論文、出版物
下記URLを開けてみてください。最近のものの一覧をみることができます。
コピーライトの問題がないものは全文を閲覧することもできます。
http://www.dknresearchllc.com/DKNRArchive/Newsletter/Newsletter.html
http://www.dknresearchllc.com/DKNRArchive/Articles/Articles.html
-5-