ナノテック・ジャパン 2015

#1503、2015年2月1日
今週の話題
ナノテック・ジャパン
2015
1〜4月は注目のハイテク関連の展示会が目白押しです。1月中旬のネプコ
ン・ジャパンに引き続き、先週は28日から3日間、東京ビッグサイトで、ナノ
テック・ジャパン2015が開催されました。ネプコンに比べると、規模は一回
り小さくなりますが、それでもビッグサイトの東ホールのフロアいっぱいにメー
カーや各種団体のブースが設置されていました。人出もかなりのもので、初日の
午前中はややスローだったものの、午後になると、フロアに人があふれるような
状況でした。無料のオープンセミナーなどは、用意された座席はいっぱいで、立
ち見席には何重もの人垣ができていて、ちょっと覗いてみることなどできません
でした。
ネプコンではエレクトロニクス・パッケージが中心であるのに対して、ナノテ
ックは、より素材の方に重点があり、しかもアカデミックな印象を受けます。帝
人や東レのような大手の化学メーカーや材料メーカーの他に、NEDO、産総研、
理研といったようなメジャーの研究開発機関の大きなブースが並んでいます。私
の認識が浅いだけかもしれませんが、日頃あまり耳にしないような団体もたくさ
ん出ています。海外の研究機関の出展が多いことも、この展示会の特徴です。目
に付いた大きなものをあげてみますと、ドイツ、イタリア、スイス、韓国、台湾、
タイランド、チェコ、カナダ(アルバータ州)、スペイン、イランなどです。米
国は見当たりませんが、ノースカロライナ州政府のブースを見かけました。特に
大きいのは、ドイツ、台湾、韓国です。ドイツの Fraunhofer 研究所は、それだ
けで他の国を圧倒するような大きさです。大学や県などの地方自治体は、たくさ
んありすぎて、とてもかぞえられません。東大、京大、阪大、名大のようなメジ
ャーな国立大学はもちろんですが、琉球大学、北大、島根大学、高知大学のよう
な地方からの出展もかなりあります。また早大、関東学院大学、慶大というよう
な私立大学も出展しています。このようなメーカーではない各種団体の数はそう
とうなもので、全体のフロア面積の四分の一を越えていたかもしれません。その
他、私はほとんど見ることができませんでしたが、スマートエネルギー関連の展
示もまとまってあったようです。
さて展示会の内容ですが、名前が示すように、ナノ技術、ナノ材料に関する出
展が多かったのですが、その他にプリンタブル・エレクトロニクスと表面処理に
関する展示も多く、各メーカーは新しい技術の進捗、技術の優位性をアピールし
ています。しかしながら、ナノ材料については、現実的なアプローチが多くなっ
ているようで、技術的には後退局面さえ感じます。典型的なものとしては、銀ナ
ノパウダー、ナノインク、ナノペースト、銅ナノインク、銀ナノワイヤ、カーボ
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ンナノチューブ(CNT)、グラフェンなどがあげられます。かつて、ナノ材料
といえば、簡単な印刷プロセスで半導体デバイスや超伝導回路、フレキシブル・
ディスプレイなどを製造できる夢の素材としてもてはやされたわけですが、今回
の展示のうたい文句をみると、十年前のそれとあまり違わないように見えます。
それどころか、ちょっと突っ込んだ質問をすると、期待は失望に変わります。
その一つの例としてあげられるのはカーボンナノチューブです。以前にカーボ
ンナノチューブがデビューした時に、あるメーカーは、CNTは金属銅以上の導
電性を持ち、半導体としての性能も持っていると称していました。今回は、2、
3社が糸状に成形したCNTを出していましたが、その導電性は金属よりも若干
劣る程度(半分くらい)となっていました。ところが、グラフのデータをよく見
ると、導電性の単位が一般に使われるものではなく、CNTが有利になるように
選んでいるのです。そのあたりをブースの説明員に問いただすと、しどろもどろ
になり、担当のエキスパートに助けを求めます。だいたいエキスパートは誠実な
感じのエンジニアで、大げさな物言いはせず、丁寧に説明してくれます。残念な
がらその結論としては、CNTの物性にあまり驚くようなものは無く、これとい
った応用は思いつきません。メーカーとしては、それだからこそこのような展示
会へ出展して、用途を見出してもらおうという思惑のようですが、来場者の方と
しても、これといった特徴が無いのであれば、適当なアプリケーションなど思い
つかないでしょう。
他のナノ材料にも同じようなことが言えそうですが、材料メーカーとしては、
それなりに特徴のある材料を、流行りの展示会に出せば、大きなポテンシャルを
もったユーザーに巡り会えるのでは、と期待しているようです。一方、大部分の
ビジターの方は、特定の業界の技術トレンドを見るのが主目的で、具体的な用途
を持っているわけではありません。ごく一部のビジターが特定の用途に必要な素
材として、ナノ材料に期待してやってくるわけですが、目的にぴったりの製品に
出会えるのはまれで、多くの場合、「帯に短し、襷に長し」で終わってしまうよ
うです。特に、材料メーカーの多くが参考出品的なスタンスで、販売価格など真
面目に考えていなかったりするため、ユーザーの期待に合わないことになるよう
です。
というようなわけで、華やかな展示会で期待は高まりますが、ビジネスにたど
り着くまでには、越えなければならないハードルがたくさんあるナノテクノロジ
ーのようです。
DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター)
今週のヘッドライン
2015年2月1日
1.DIGITIMES(台湾の業界メディア)1/14
2014年におけるタブレットPCの出荷は、2億55〜60百万台に達し
た模様。2015年は9%程度の成長に留まると予測。
2
2.DIGITIMES(台湾の業界メディア)1/14
ZD Technology、Flexium 等の台湾の大手フレキシブル基板メーカーは、新
年第1四半期について強気の予測。iPhone 関連の需要が堅調で、前年同期比
で二桁の成長。
3.Ichia(台湾のフレキシブル基板メーカー大手)1/14
2014年における売り上げは112.3億台湾ドル、利益は10.7億台
湾ドル。一株あたりの利益は3.21台湾ドル。
4.HIS(米国の市場調査会社)1/14
世界のビデオ・サーベイランス機器の市場は、2014年の150億ドルか
ら、2018年には236億ドルに成長と予測。平均成長率:12%/年。
5.Samsung Electronics(韓国エレクトロニクス大手)1/14
カナダのスマートフォンメーカー老舗 BlackBerry Ltd.を買収する方向で交
渉中とのうわさ。買収金額は75億ドル。Samsung は否定。
6.UMC(台湾の半導体メーカー大手)1/15
2015年第2四半期には、14ナノメートルルールチップの試験生産を開
始する計画。
7.ASE(台湾のICパッケージ大手)1/15
子会社のUSI(Universal Scientific Industrial Co., Ltd.)を分離する
ことを、役員会で承認。
8.Samsung Electronics(韓国エレクトロニクス大手)1/15
米国アップル社から次世代のA9プロセッサーを受注の見込み。14ナノメ
ートルルールのチップ。シェアは70%を予測。
9.University of Illinois(米国の大学)1/15
水に溶けるシリコンを使って、溶解するエレクトロニクスデバイスの可能性。
埋め込み型生化学センサーなどで、大きな市場性。
10.Gartner(米国の市場調査会社)1/15
2015年における世界の半導体出荷額は、前年比5.5%増加の3580
億ドルに達すると予測。
11.Samsung Electronics(韓国エレクトロニクス大手)1/19
今後海外の生産拠点を、順次中国からベトナムにシフトしていく方針。すで
にベトナムの総輸出額の20%近くを占める。
3
12.Digitimes Research(台湾の市場調査会社)1/20
2015年第1四半期における世界のノートブックPCの出荷は3852万
台の見込み。前期比で16.4%、前年同期比で2.4%の減少。台湾のO
DMメーカーは3110万台。
13.Persistence Market Research(米国の市場調査会社)1/20
世界の自動車コックピット用エレクトロニクスの市場は、2013年の21
1億ドルから、2020年には615億ドルに成長と予測。
14.Thin Film Electronics(ノルウェーのベンチャー企業)1/21
同社の Thinfilm MemoryT Labels の実用化、量産のために、米国の Xerox 社
と戦略的な業務提携。
15.Sensata(米国のデバイスメーカー)1/20
自動車用センサーの量産のために、ブルガリアに2番目の工場を立ち上げへ。
従業員1500名を新たに雇用。
16.University of Massachusetts(米国)1/21
プリンタブル&フレキシブル・エレクトロニクスについて4百万ドルの研究
助成金を獲得。今後10年間で760億ドルの新しい市場。
17.Printed Circuits Inc.(米国の基板メーカー)1/22
Maskless Lithography 社のプリンターと Orbotech 社のLDIを設置。内層、
外層、ソルダーマスクのイメージングに活用の計画。
18.Hon Hai(台湾のEMS最大手)1/22
グループ内のICパッケージングメーカーShunShin Technology を切り離す
方針。独立させることにより、市場の拡大を目指す。
19.Rogers Corporation(米国の基板材料メーカー)1/23
米国の高周波デバイス用シリコン材料メーカーArion LLC の買収を完了。高
周波材料事業強化の一環。
20.SEMI(米国の半導体製造装置業界団体)1/23
2014年12月における北米の半導体製造装置産業のB/Bレシオは、0.
04下がって0.98に。出荷額、受注額は増加。
21.Apple(米国のエレクトロニクス企業大手)1/25
中国における iPhone の販売台数は、すでに米国における販売台数を凌駕。
22.Samsung Electronics(韓国エレクトロニクス最大手)1/26
4
インドネシアでスマートフォンの組み立てを開始。主にインドネシア市場向
けに生産。
23.Flip Chip Opto Inc.(米国のデバイスメーカー)1/27
新しい大出力LEDモジュールを、チップオンボード実装でリリース。
24.Kyung Hee University(韓国)1/26
グラフェンとカーボンナノチューブを組み合わせて、透明で巻き取り可能な
エレクトロニクスを実現へ。
25.Unimicron(台湾の基板メーカー大手)1/30
2015年第1四半期の市場動向について慎重な見方。前年同期比で3%増
の617.6億台湾ドルの売上げを予想。
(注)このヘッドライン・ニュース・レターは速報性を重視するために、若干の
誤訳や数字の変換に誤りがある場合もございます。ご了承下さい。
DKNリサーチ
栄泰産業株式会社
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* サイエンス&テクノロジーセミナー 2月24日
「フレキシブル・エレクトロニクスとロール・ツー・ロール生産システム、
〜その可能性と課題〜」
http://www.science-t.com/st/cont/id/23737
*英学史学会、東日本支部大会 3月26〜27日
*洋学史研究会、4月12日、青山学院大学(東京)
「新史料、江戸時代初期の阿蘭陀医学書」
*継電器・コンタクトテクノロジ研究会、4月17日、機械振興会館
「プリンタブル・エレクトロニクスの基本構成と応用技術
その4. 印刷インクについて」
* JPCAショー2015 6月3日〜6日
* コンバーテックセミナー 6月26日
「初手から学ぶプリンタブル・エレクトロニクス」
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