ファイナンス A 講義資料 赤壁弘康 2013 年度春学期 トラッキング・エラー 個別株式(あるいはポートフォリオ)i の収益率を Ri 、市場収益率を RM とするとき、個別証券(ポー トフォリオ)の収益率と市場収益率の差 X = Ri − RM をトラッキング・エラーということがある。ト ラッキングエラーの期待値は E(X) = E(Ri − RM )] = E(Ri ) − E(RM ) = µi − µM であり、分散は V (X) = V (Ri − RM ) = E[(Ri − RM − (µi − µM ))2 ] = E[{(Ri − µi ) − (RM − µM )}2 ] = E[(Ri − µi )2 ] + E[(RM − µM )2 ] − 2E[(Ri − µi )(RM − µM )] 2 = σi2 + σM − 2σiM 2 − 2σ となる。したがって、Ri , RM が正規分布に従うとき、X は平均 µi − µM 、分散 σi2 + σM iM の正 2 2 規分布 N (µi − µM , σi + σM − 2σiM ) に従うことになる。資本市場の均衡においては、i のベータ係数 βi を用いて E(X) = (βi − 1)(µM − r), 2 2 2 V (X) = σi2 + σM − 2βi σM = σi2 + σM (1 − 2β) となる。各証券の収益率が正規分布に従うとすれば、トラッキング・エラー X は平均 (βi − 1)(µM − r)、 2 (1 − 2β) の正規分布に従う(X ∼ N ((β − 1)(µ − r), σ 2 + σ 2 (1 − 2β)))ことになる。 分散 σi2 + σM i M i M この関係と標準化の手法を利用すれば、トラッキング・エラーがある値 α 以上になる確率 P(|X| ≥ α) を計算することが可能になる。また、ポートフォリオ i が市場ポートフォリオをうまく模倣していると き、µi ≃ µM , σi ≃ σM , βi ≃ 1 であるから、X は定数ゼロに近似的に等しくなることがわかる。この ように、ポートフォリオ(あるいはファンド)が市場をどの程度うまく模倣できているを示す尺度とし て、トラッキング・エラー X を利用することができる。 1
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