JLA ライフセービングフォーラム2015 宮崎LC(渚の交番)における公的救助機関との連携事例 藤田和人 * 1 2.3 渚の交番運営体制 1.はじめに 宮崎ライフセービングクラブ(LC)は,2001 年6月3日に九州では2番目となるライフセービン グ ク ラ ブ と し て 発 足 . 2006年 6年 26日 に NPO法 人化.2010年6月26日,宮崎県宮崎市青島ビーチ に全国で初めて設置された沿岸域総合管理施設 「宮崎市青島ビーチセンター(渚の交番 )」(写真1)に事務所を移転し,様々な活動を展開していま す.本報告で は,宮崎 LCが構築 した公的救 助機 関との連携を深めるきっかけとなった「渚の交番 プロジェクト」の説明、公的救助機関との連携に 至った経緯,具体的な連携内容について報告する. 2.「渚の交番プロジェクト」の説明 1) 2.1 「渚の交番プロジェクト」とは? 海から地域全体を安全で元気にすることを目的 に,日本財団海洋グループ(現ソーシャルイノ ベーション本部)が推進するプロジェクトです. 2.4 渚の交番運営委員会組織 渚の交番は,宮崎県の観光名所のひとつ青島ビー チに位置し,水難事故や青パトパトロールなどの 防災・防犯・各種マリンスポーツの体験教室や海 岸清掃,海洋生物や自然環境の保全など、夏だけ でなく一年を通じて,海から地域を元気にする活 動の中核となる,新たな海辺の拠点である. 2.2 プロジェクトが生まれた背景 渚の交番は,宮崎市が所有する青島海水浴場管 理棟を改修し,宮崎市青島ビーチセンター(渚の 交番)として開設された. 開設にあた っては、日 本財団と 宮崎 LCとの間 で,2008年から協議を 重ね, 2009年秋頃, 宮崎 市が所有する青島海水浴場管理棟を改修して設置 することで合意.日本財団の助成を得て,全面的 に改修工事を行い,2010年6月26日にオープンし た. ──────────────────────── 英文タイトル - 1 - トロールを週に 1回の頻度で実施.これにより宮 崎北警察署と宮崎南警察署それぞれに設置される 「青パト連合」に所属.犯罪等発生時は FAXにて 情報 の 共有 化 が図 ら れた . また こ の 2008年 度に 日本財団よりツートンカラーのパトカーの助成も 受ける(写真-2). 写真-1 宮崎市青島ビーチセンター「渚の交番」 公的救助機関は渚の交番運営委員会組織内での オブザーバーとしての立場で、年に3回は我々の 活動計画や報告を行っており、毎回アドバイス等 をいただいているといった関係が構築されている. また,渚の交番という 1年中固定電話やFAXと いった連絡がとれる環境があるということが,更 写真-2 宮崎LC所有の青色回転灯装備パトカー に信頼関係を深めた. 3.宮崎県警本部・宮崎北 南警察署との連携 3.1 宮崎LCビーチパトロール隊の発足 3.3 現在の連携 2010年 から の 渚の 交 番設 置 以降 は ,主 な パト ロール範囲を青島周辺の 20km圏内に変更.週に 2006年11月 28日 ,自動車 に青色 回転灯を 装備 4回の頻度で防犯パトロールを実施.それらの活 して自主防犯 パトロール を行う「 宮崎 LCビーチ 動が認 められ , 2013年 10月 に宮 崎県警 より 隊 長 パトロール隊」を宮崎県警本部からの証明をいた である藤田理事長が防犯功労者に表彰された.ま だき,宮崎LC内12名のメンバーにて発足 .九州 た同年より宮崎県防犯協会連合会より年間最大で 内では初となる海岸線に特化した防犯パトロール 1万5,000円のガソリン代の給付が発生. 隊である.使 用車両は, 宮崎 LC理事長所有 の自 他の連携としては,宮崎県警本部所属水上警察 動車(ハイエース)を使用.運営費は,夏期業務 隊とは海上にて事案が発生した際に,情報を共有 で得られた費用 にて捻出 (ガソ リン代・保険 ・車 し,状況により我々が初動対応するといったこと 検).発足当初は月に1回のペースで,パトロール も行われている.また以下にパトロール実施によ 実施者証(警察署にて受講しなくてはならない)を る青島駐在所所轄内の事故件数(海水浴期間)を 取得した 12名が,交代制にて2人でパトロールを 示す. 実施. 2008年 3件,2009年 7件,2010年 3件 2011年 0件,2012年 1件,2013年 4件 2014年 3件 (2015年3月4日現在) 3.2 2008年度からの日本財団の支援 2007年 度か ら は, 宮 崎県 よ り「 み やざ き 臨海 公園北ビーチ」の通年運営の業務委託を受託.防 犯パトロールについては、公園内にてほぼ毎日の 今後は,青島駐在所の「駐在所連絡協議会」へ 入会し,更に連携を深めていく予定である. 実施 と なる . 日々 の 活動 は ブロ グ ( CANPAN) にて発信.それが日本財団職員の目にとまり,渚 の交番の必要性を調査する委託事業を受託.臨海 公園から青島ビーチまでの往復約40kmの防犯パ - 2 - 4.4 装備について 4.宮崎市消防局・宮崎市南消防署との連携 原則として水上バイク,ウェットスーツ等につ 4.1 機能別消防団水上バイク隊の発足 2) いては,団員個人所有のものを使用.救助にか 2007年6月 4日,全 国で初め て宮崎市 消防団に , 台風時の浸水地域の救助活動や,沿岸等での水難 かった燃料,救助による水上バイクの修理につい ては公費対応. 事故発生時の救助活動を強化するため,機能別消 通常時の被服として, ウィンドブレーカー (上 防団員である「水上バイク隊」 (写真-3)が創設さ 下)とアポロキャップを貸与. れた. 救助活動時のための救命胴衣・ヘルメット (ダ 2005年9月の台風第14号において,救助活動実 イビング用)・ドライスー ツ・デジタル トラン 績のある水上バイク愛好者団体を対象に団員が構 シーバー等を貸与. 成された.宮崎LCからは2名が創設メンバーとし て入団.宮崎市南部を中心に,事案発生時に出動, 4.5 報酬・災害補償等について 訓練等も実施している. 基本団員と異なり,活動内容が限定されるため, 年報酬は支給しない. 1回の出動につき出動手当(3,700円)を支給する. (基本団員と同じ.) 退職報償金は支給する.(団員歴5年以上,基本 団員と同じ.) 活動中の事故については,公務災害扱いとなる. (基本団員と同じ.) 4.6 出動状況について 2007年 訓練 4回 2008年 訓練 2回 救助・捜索 1回 2009年 訓練 1回 救助・捜索 3回 機能別消防団員とは、得意分野や既にある資機 2010年 訓練 6回 救助・捜索 7回 材を活用して,ある特定の活動や大規模災害時等 2011年 訓練 6回 救助・捜索 1回 に活動を限定して参加する消防団員のことであり, 2012年 訓練 6回 救助・捜索 1回 基本団員のようにすべての活動や災害には出られ 2013年 訓練11回 救助・捜索 6回 ないが,得意分野に特化して活動できるという特 2014年 訓練 7回 救助・捜索 4回 徴がある.団員の身分は,地方公務員法及び消防 (2015年3月4日現在) 写真-3 機能別消防団水上バイク隊の面々 4.2 機能別消防団員について 組織法に規定された,市町村における「非常勤の 特別職地方公務員」である. 5.宮崎海上保安部との連携 5.1 渚の交番救難所の発足 2012年10月1日,民間ボランティア組織の宮崎 4.3 主な活動 (1)通常時 県水難 救済 会に 、「渚 の交 番救 難所 」 (宮崎LCメ 消防団行事への参加. ンバー11名にて構成)として認められる. 宮崎海 市や消防団が主催する水難事故訓練への参加 . 上 保安 部 か ら 青島 沿 岸 部 まで は , 巡 視艇 で 約 30 分団で実施する舟艇訓練等への参加. 分,ヘリコプターは鹿児島空港からくるので約 (2)災害時 水上バイクが航行可能な,沿岸(海岸から2海 里以内)や河川での水難事故での救助活動. 台風や大雨などによる水害発生時の内水面での 救助活動. 20分 か か る. 青 島 沿 岸部 に て 水 難事 故 が 発 生し た際に迅速に対応するために,また,巡視艇が水 深の浅い海域へ近づくことができないため,水深 が浅い海域で渚の交番救難所が対応する.また, 当保安部とは,市内小学校で水上安全教室を合同 - 3 - 開催したり,離岸流事故防止にかかる調査を協働 4.まとめ したりしている. これまではライフセーバーとしての責務のよう な と こ ろ で の 活 動 ( ボ ラ ン テ ィ ア )が 主 で あ り , 5.2 救助出動・訓練等 報奨金等について 3) 発動時から救助終了までの時間が 4時間未満の 必要であれば「善意」で初動していた状況が あっ 出動に対する 1名分の交付は5,000円,4時間以上 た.渚の交番という拠点が設置され,タイムリー 24時間未満は6,000円,24時間を超え48時間未満 な情報が入るようになったことにより,その初動 までの出動に対する加算交付として3,000円.訓 部隊としての「期待」も各機関や地域から感じら 練奨励金は1回あたり1,000円. れるようになった.情報をいち早く発信した機関 の指揮系統下に入り,そこの手当や保障等を担保 5.3 海上安全指導員の指定 することは,現場で活動するメンバーの安全を確 2013年 6月 20日 ,宮 崎LCの 藤 田理 事長 が 宮崎 保することに繋がり,また公的救助機関と 県では7人目となる海上安全指導員に指名 される. 「WIN-WIN」 な 関 係 で , 気 持 ち よ く 現 場 活 動 が 海上安全指導員制度は,水難事故を未然に防止し, できることに繋がった.ボランティアを否定する 安全で秩序ある海洋性レクリエーションの発展を わけではない.しかし,社会的地位の向上を図る 図る た め, 海 上保 安 庁が 1974年に 発 足. 各 管区 上では,行政(公的救助機関)からの出動手当や保 海上保安部長の推薦により指定.全国におよそ 険等の担保は,いずれは切り開かなくてはならな 1700名が活躍する.また同時に宮崎 LC所有の水 い.当クラブの実績が全国の地域で活動する地域 上バイク 2艇が,海上保安庁指定の「安全 パト ライフセービングクラブの一助になることを願っ ロール艇」になった(写真-4). てやまない. 謝 辞 この連携に寄与して頂いた,宮崎海上保安部, 宮崎市消防局,宮崎市南消防署,宮崎県警本部, 宮崎南警察署の公的救助機関,宮崎県水難救済会, 宮崎市消防団機能別消防団水上バイク隊の民間救 助機関の皆様に感謝の意を表します. 写真-4 海上安全指導員への配布物 以下に宮崎海上保安部所轄内(青島沿岸部)の 水難事故件数を示す. 2010年 2013年 3件,2011年 0件,2014年 藤田 1件,2012年 2件 0件(2015年3月4日現在) 参考文献 1) 日 本財団 監査 グループ 事 業評価報 告書「 渚の交 番プロジェクトの推進~宮崎・青島~」 2) 宮崎市消防局総務課消防団係「機能別消防団員水上 バイク隊について」 3) 日本水難救済会 地方組織に関する規則 和人* 宮崎ライフセービングクラブ 理事長 Kazuto FUJITA e-mail:[email protected] - 4 -
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