C08 Research Abstracts on Spatial Information Science CSIS DAYS 2015 東京圏における人口の自然・社会増減の時空間変化 小池 司朗 国立社会保障・人口問題研究所 Email: <[email protected]> Web: <http://www.ipss.go.jp/pr-ad/j/soshiki/kozin/koike.html> (1) 動機: 近年,政府が地方創生を主要施策として打 ち出したことなどから,地域別の人口動向に注目が 集まっている.とくに,東京圏一極集中に関する議 論は高まってきており,今後東京圏の人口分布が どのように変化していくかについては,引き続き高 い関心が持たれると考えられる.本研究では,1980 ~2010 年における地域メッシュ(3 次メッシュ)別の 人口増減を自然増減と社会増減に分解し,それぞ れの時空間変化パターンから将来の人口分布変 化を一定程度見通すことが可能な知見を得ることを 主な目的とする. (2) アプローチ: 「都道府県別生命表」を活用し,任意 の期間における人口増減を自然増減と社会増減に 分解することにより,動態的な分析を可能にする. また,求められた地域メッシュ別の自然増減・社会 増減を都心からの距離帯別,鉄道沿線別に集計し, それぞれの時空間変化に何らかの規則性が見い だせるかを検証する. (3) 意義: 今日,地方自治体は「地方人口ビジョン」に おいて将来人口推計を行うことが努力義務とされて おり,地域別の将来人口推計への関心が高まって いる.本研究は小地域統計の利用により,空間的 な観点から人口動態の分析を行うと同時に推計精 度の向上を目指すものであり,近年の社会的動向 に照らし合わせても有意義であると考えられる. (4) 結果: ・ 2005→2010 年においては,自然増減・社会増 減とも 1995→2000 年から 2000→2005 年の傾向 が概ね継続している.都心回帰の空間的範囲 が拡大する一方で,自然増減はほぼ一律に低 下している. ・ 小池(2010)の 2000→2005 年までのデータ分析 により得られた社会増減の変化パターン(社会 増減の変化は都心から郊外,また南西方向の 路線沿線から北東方向の路線沿線へと波及す る傾向)は,2005→2010 年においても適合して いる. ・ 自然増減・社会増減それぞれの分布や変化の 空間的パターンに一定の規則性が認められた. 今後の主な課題は,男女年齢別データや配偶 関係別データを用いた分析などによって,自然 増減・社会増減の変化の要因を探り,地域別将 来人口推計の出生・死亡・移動の仮定設定に 資する情報を得ることである. (5) 謝辞: 本研究では,東京大学空間情報科学研究 センターの研究用空間データ(研究番号 335)を利 用した.ここに感謝の意を表する.また本研究の概 要は,小池(2015)においても公表している. (6) 参考文献: 小池司朗(2010)首都圏における時空間的人口変 化-地域メッシュ統計を活用した人口動態分析. 「人口問題研究」,66(2),26-47. 小池司朗(2015)東京圏における人口の自然・社 会増減の空間的変化:地域メッシュ統計を用いた 1980~2010 年の分析.「統計」,66(1),14-20. !( !( !( !( !( !( !( !( ~ -500 -500 ~ -200 -200 ~ -100 -100 ~ +100 +100 ~ +500 +500 ~ +1000 +1000 ~ ~ -200 -200 ~ -100 -100 ~ -30 -30 ~ +30 +30 ~ +200 +200 ~ +500 +500 ~ 30 15 0 30 30 km 15 0 30 km 図 1: 東京圏における 2005→2010 年の自然増減(左)と社会増減(右)の分布 - 40 -
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