国債市場の流動性と金融政策 岩壷健太郎(神戸大学)1 要旨 黒田総裁就任直後に行われた「質的量的金融緩和」は、国債価格の乱高下をもたらし、 市場の流動性を悪化させた。中央銀行による国債買い入れ政策は市場の流動性を悪化させ るものなのか?悪化させないための条件は何か?本論では、日銀がその後行った買い入れ 政策の変化が市場の流動性にどのような影響を与えたのかを分析する。その結果、 (1)買 入れ頻度の増加、(2)1 回当たりの買入れ額の減少、(3)買入れ額のばらつきの減少と いった買い入れ策の変更が市場流動性の改善に大きく寄与していることが明らかになった。 これらの政策変化は投資家に対して買い入れスケジュール予想を容易にし、サプライズを 減らすことにつながっている。日銀の政策変化とそれがもたらす市場流動性への影響は、 金融当局の情報伝達と市場の質に関する理論を支持する証左であることを示す。 1 [email protected] 1
© Copyright 2024 ExpyDoc