光格子中のボース気体の超流動臨界速度

光格子中のボース気体の超流動臨界速度
―変分モンテカルロ法による解析―
栗原研究室 修士2年 八木庭涼平
冷却原子系
・ボース・アインシュタイン凝縮(BEC)の実現
T 0
M. H. Anderson et al. (1995)
運動量0の状態に全粒子が凝縮する
・特徴
理論模型におけるパラメータを直接実験で制御し、比較ができる!
冷却原子系
・ボース・アインシュタイン凝縮(BEC)の実現
T 0
M. H. Anderson et al. (1995)
運動量0の状態に全粒子が凝縮する
・特徴
理論模型におけるパラメータを直接実験で制御し、比較ができる!
今回はボース系に注目する
光格子中のボース気体
例:ボース・ハバード模型
サイト間のホッピング
オンサイト斥力相互作用
光格子中のボース気体
例:ボース・ハバード模型
サイト間のホッピング
オンサイト斥力相互作用
レーザー
・実験
光格子
は格子の深さにより調節
注目する現象1:超流動・モット絶縁体量子相転移
格子点あたりに整数個の粒子がいる場合、
相互作用を増やしていくと相転移を起こす
相互作用による損が大き
いため粒子は局在化
超流動相
モット絶縁体相
注目する現象1:超流動・モット絶縁体量子相転移
・実験 M. Greiner et al., Nature(2002)
格子点あたりに整数個の粒子がいる場合、
相互作用を増やしていくと相転移を起こす
相互作用による損が大き
いため粒子は局在化
超流動相
モット絶縁体相
超流動相
浅い
格子ポテンシャル
モット絶縁体相
深い
格子ポテンシャル
系が超流動状態の場合、運動量分布
に干渉パターンが現れる
超流動・モット絶縁体量子相転移の理論解析
・グッツウィラー近似による解析 (2次元)
condensate fraction
格子点あたりの粒子数:1
condensate fraction(凝縮している粒子の割合)
がなくなりモット絶縁体相に転移する
超流動相
凝縮体成分あり
モット絶縁体相
凝縮体成分なし
超流動・モット絶縁体量子相転移の理論解析
・グッツウィラー近似による解析 (2次元)
condensate fraction
格子点あたりの粒子数:1
condensate fraction(凝縮している粒子の割合)
がなくなりモット絶縁体相に転移する
超流動相
凝縮体成分あり
次元 グッツウィラー近似による
モット絶縁体相
凝縮体成分なし
数値的厳密解
誤差
1
11.66
3.28(密度行列繰り込み群)
255%
2
23.31
16.74(量子モンテカルロ)
39%
3
34.97
29.34(量子モンテカルロ)
19%
超流動・モット絶縁体量子相転移の理論解析
・グッツウィラー近似による解析 (2次元)
condensate fraction
格子点あたりの粒子数:1
condensate fraction(凝縮している粒子の割合)
がなくなりモット絶縁体相に転移する
超流動相
凝縮体成分あり
次元 グッツウィラー近似による
モット絶縁体相
凝縮体成分なし
数値的厳密解
誤差
1
11.66
3.28(密度行列繰り込み群)
255%
2
23.31
16.74(量子モンテカルロ)
39%
3
34.97
29.34(量子モンテカルロ)
19%
グッツウィラー近似は低次元になるにつれ、誤差が大きくなる
注目する現象2:超流動流の崩壊
・格子ポテンシャルの強弱に加え、速度を制御
格子の速度
粒子の運動量
注目する現象2:超流動流の崩壊
・格子ポテンシャルの強弱に加え、速度を制御
格子の速度
粒子の運動量
超流動流が不安定化する運動量が存在!
超流動臨界運動量
注目する現象2:超流動流の崩壊
格子の速度
粒子の運動量
超流動流が不安定化する運動量が存在!
超流動臨界運動量
・実験(3次元)
condensate fraction
・格子ポテンシャルの強弱に加え、速度を制御
J. Mun et al., PRL (2007)
注目する現象2:超流動流の崩壊
・実験(3次元)
J. Mun et al., PRL (2007)
condensate fraction
・格子ポテンシャルの強弱に加え、速度を制御
格子の速度
粒子の運動量
超流動流が不安定化する運動量が存在!
超流動臨界運動量
相転移点で超流動臨界運動量は0
注目する現象2:超流動流の崩壊
・実験(3次元)
J. Mun et al., PRL (2007)
condensate fraction
・格子ポテンシャルの強弱に加え、速度を制御
格子の速度
粒子の運動量
超流動流が不安定化する運動量が存在!
超流動臨界運動量
赤線はグッツウィラー近似の結果
3次元系において非常によく一致
相転移点で超流動臨界運動量は0
超流動流崩壊の理論解析
グッツウィラー近似の問題:低次元系において誤差が大きい!
しかもこの系では量子モンテカルロ法の適用が難しく、グッツウィラー近似を超えた
取り扱いはまだない
超流動流崩壊の理論解析
グッツウィラー近似の問題:低次元系において誤差が大きい!
しかもこの系では量子モンテカルロ法の適用が難しく、グッツウィラー近似を超えた
取り扱いはまだない
有望な解析手法:変分モンテカルロ法
本研究の目的
2次元光格子中ボース気体において、変分モンテカルロ法
により超流動臨界運動量が解析できるかを確かめる
超流動流崩壊の理論解析
グッツウィラー近似の問題:低次元系において誤差が大きい!
しかもこの系では量子モンテカルロ法の適用が難しく、グッツウィラー近似を超えた
取り扱いはまだない
有望な解析手法:変分モンテカルロ法
本研究の目的
今回やったこと
2次元光格子中ボース気体において、変分モンテカルロ法
により超流動臨界運動量が解析できるかを確かめる
少数サイトの有限系で
①超流動・モット絶縁体転移点の他の手法との比較
②超流動臨界運動量の解析
計算方法
・有限サイズの格子系で近似
二次元正方格子 L×Lサイト (L=6,8,10)
格子点あたりの粒子数(粒子数/サイト数)=1
計算方法
・有限サイズの格子系で近似
二次元正方格子 L×Lサイト (L=6,8,10)
格子点あたりの粒子数(粒子数/サイト数)=1
超流動・モット絶縁体量子相転移を見たい
計算方法
・有限サイズの格子系で近似
二次元正方格子 L×Lサイト (L=6,8,10)
格子点あたりの粒子数(粒子数/サイト数)=1
超流動・モット絶縁体量子相転移を見たい
・流れのあるボース・ハバード模型
・流れ演算子
計算方法
・有限サイズの格子系で近似
二次元正方格子 L×Lサイト (L=6,8,10)
格子点あたりの粒子数(粒子数/サイト数)=1
超流動・モット絶縁体量子相転移を見たい
・流れのあるボース・ハバード模型
流れが無い場合はオンサイト斥力を持つボース・ハバード模型
・流れ演算子
・ジャストロウ型波動関数
・凝縮体の割合:condensate fraction
・エネルギー
サイト数
(行列
粒子数
の最大固有値)/(粒子数)
・エネルギーの微分
・超流動臨界運動量
音速
が最大となる
では音速が虚数となる
圧縮率
有効質量
①モット絶縁体転移点の確認
流れがない場合
①モット絶縁体転移点の確認
凝縮体成分が無くならない
流れがない場合
有限サイトで近似したため : 有限サイズ効果
①モット絶縁体転移点の確認
流れがない場合
・相転移点
凝縮体成分が無くならない
グッツウィラー近似
23.31
量子モンテカルロ
16.74
今回の結果
~20
有限サイトで近似したため : 有限サイズ効果
外挿により無限系の結果を得ることができる
②超流動臨界運動量
②超流動臨界運動量
相転移点へと減少せず、異常な
上昇が現れる!
②超流動臨界運動量
②超流動臨界運動量
サイズを上げることで異常な振
サイズを上げることで異常な
振る舞いは抑えられ、モット絶
る舞いは抑えられ、相転移点
縁体転移点へ向かう
へと減少する
②超流動臨界運動量
サイズを上げることで異常な振
る舞いは抑えられ、相転移点
へと減少する
有限サイトでは凝縮体は無くな
らない!
②超流動臨界運動量
サイズを上げることで異常な振
サイズを上げることで異常な
振る舞いは抑えられ、モット絶
る舞いは抑えられ、相転移点
縁体転移点へ向かう
へと減少する
有限サイトでは凝縮体は無くな
らない!
外挿により問題を回避できる
まとめ
グッツウィラー近似の範囲を超えた超流動臨界速度の解析をするため、変分モンテ
カルロ法を試した。
が大きい領域においては超流動臨界運動量が異常な上昇を示す。
これは有限サイズ効果によるもので、大きなサイズの解析により回避できると思われる。
この問題が回避できれば、変分モンテカルロ法はグッツウィラー近似の範囲を超えて、
超流動臨界速度を解析できるといえる。
・今後の展望
大きなサイズの計算により、異常な振る舞いを回避できるか?
別の系で、これまでグッツウィラー近似でしか解析できなかった問題に取り組む。
付録1:近似法の比較
・グッツウィラー近似
1サイト近似
グッツウィラー波動関数を仮定
無限系での解析:有限サイズ効果はない
量子揺らぎに重要なサイト間の相関を考
慮できない
・変分モンテカルロ法
周期境界条件付きの有限サイトに近似
ジャストロウ型波動関数を仮定
サイト相関を考慮することができる
有限のサイトで計算するために、有限
サイズ効果がある
付録2:変分モンテカルロ法
サイト数が増えると状態数は膨大になる(指数関数的に増加)
期待値を対角化などで求めることは不可能
ただし
は
いものを選んでくる
エネルギーが最小となるように変分パラメータを最適化
が大き
付録3:エラーバーの付け方
のerror bar
付録4:超流動流の不安定化
・音速の定義
圧縮率
・励起スペクトルからの音速の定義
有効質量
励起状態のエネルギー
音速が虚になる ⇔ 励起モードが虚数となる!
微小な揺らぎが指数関数的に増大し、超流動流を破壊する