「木質材料の流動成形による 性能・デザイン性に優れた スピーカー

「木質材料の流動成形による
性能・デザイン性に優れた
スピーカーキャビネットの試作」
チヨダ工業株式会社
設計 山田哲也
会社紹介
現在ベトナムとタイに金型工場を建設中です。
トヨタ自動車株式会社様より技術開発賞をいただきました。
木質材料の流動成形
サステナブルマテリアル研究部門 木質材料組織制御研究グループ
木材の加工法
①材料除去(分離)
従
来
技
術
切断
切削
曲げ
②素材変形
新技術
③変形・分離・組織相互位置変化・再結合
圧縮
流動成形
産総研資料より
流動成形
流動現象←(変形・分離・組織相互位置変化・再結合)
20nm
50μm
細胞間層でのすべり現象(流動現象)
10mm
細胞壁
適切な条件
※産総研資料より
応力状態、温度、水分・・・
産総研資料より
木質材料の流動成形との関わり。
産業技術研究所 サステナブル
マテリアル研究部門 木質材料
組織制御研究グループ
金型発注
金型受注
チヨダ工業株式会社
今までの経緯
共同研究スタート
受注した金型の結果が良好であった。
スピーカー振動板の開発
育成試験に応募
スピーカーキャビネットの開発
応募の経緯
弊社も開発は進めたい一方、研究費は出来
るだけ抑えたいので、公的支援も視野に入れて
おりましたところ、同グループの三木様より
今回の育成試験の御紹介をいただきました。
そこで今まで開発したスピーカーユニットに
関連したスピーカーキャビネットにも、
木質流動成形のメリットが活かせるのでは?
とのアイデアをいただき応募させて頂きました。
木質の流動成形によるメリット
1.木質材料を用いることにより、美しい響きが
期待できる。
2.デザインの自由度が上がり、新規性が期待で
きる。
3.デザイン上、平行面を無くすことが出来るた
め、音響理論上、定在波の発生を無くすこと
が出来る。
キャビネットの最適化に向けて
今までのスピーカーユニット
の開発段階では、市販の
キャビネットを使用して
おりましたが、少々容積が
足りないと感じておりました。
現在が約2Lでしたので、
2.5L、3.0L、3.5L、4.0Lで
箱を試作することにいたしま
した。
試作箱設計
少しでも定在波が減るよう一部斜面を用いました。
試作箱製作
材質はフィンランドバーチ合板6.5mmと
しました。
スピーカーユニット、バスレフ
ポートは交換できるようにし
ました。
試聴
試聴の結果3.5Lから4.0Lくらいが良さそうだとの結論に達しました。
試聴にて3.5L、4.0Lが聴感上良好であったので、3.5Lから4.0Lを目標にしました。
デザイン目標
市販のものを超える、独自性のあるものを目標とした。
B&W
富士通テン
キソアコースティック
デザインその1
デザインその1
関係者で検討した所、「美しくない」
「中途半端」と言う意見があり再検討
することにしました。
デザイン変更
デザインは科学技術交流財団殿より紹介頂き、あいち産業科学技術総合セ
ンターの山田 圭様にデザインを相談。
1
3
2
4
金型の製作上左右非対称は不可とし、デザイン性、成形性を考慮し 3番を採用とした。
最終デザイン
デザイン画と3.5L~4.0Lと言う条件よりデザインを決定した。
最終デザイン(3次元モデル)
成形品
完成品
バッフル板(正面)は、アルミ板で製作しました。
試聴
試聴結果
今回の試聴で感じられたこと。
1.試作箱より付帯音が少ない。
2.吸音材は入れてないが、定在波は
感じられない。
3.試作箱より情報量が少し減っている印象があ
る。(アルミバッフルの再考の余地あり。)
センターキャップの変更
従来はコーンのみ流動成形品でしたがセンターキャップも流動成形品にしたい
と言う思いがありました。そこで今回金型を製作いたしました。
成形レーザーカット後
のセンターキャップ
従来のスピーカーユニット
変更したスピーカーユニット
試聴したところ従来のものより音の澄んだ瑞瑞しい高域になり良好な結果となった。
インシュレータの追加製作
以前オーディオ関係の方からイン
シュレータを作ってみたらどうか?
と提案がありましたので試作して
みました。
オーディオ用インシュレータ
試聴テストしてみましたが、音の
変化は感じられるので、オーディ
オ業界の方に評価をお願いしたい
と思っています。
今後の課題
1.最適なバッフル板の材質の模索。
2.現在の原材料は前処理に手間がかかり
生産性が悪いため生産性の高い原材料で
成形出来るようにしたい。
3.流動性、形状保持の為樹脂を含浸させて
いるがその最適値を見出したい。
4.現在温調に大変時間が掛かっているため
生産サイクルを向上させたい。
5.音響部品、楽器部品への展開の模索。
終わりに
木質材料の流動成形は、新しい可能性を秘
めた工法と考えています。
今までに無い、物理特性、質感を持っている
物です。それらが生かせるよう今後も取り組
んでまいりたいと考えています。
御静聴有難う御座いました。