クオン - New車の整備記録

UDトラックス株式会社
EBS・ABS
通 称 名
車両型式
エンジン型式
適用時期
出 典 資 料
クオン
LDG−CK 系
LDG−CV 系
LDG−CD 系
LKG−CD 系
LDG−CW 系
LKG−CW 系
LDG−CG 系
LKG−CG 系
LDG−GK 系
GH11TA
GH11TB
GH11TC
GH13TD
GH13TE
2010.7 ∼
整備要領書 2010 大型トラック
(Ⅳ)
No. S2000 3C78A
電子制御式ブレーキ・システム
(EBS・ABS)
1 概 要
1) ABS
ABS とは,アンチロック・ブレーキ・システム(Anti−lock・Brake・System)の略称で,滑りやすい路面に
おける制動時に,車輪ロックによるタイヤ・スリップを電子制御により防止することで制動力が確実に路面
に伝わり安定した車両姿勢が得られる。また,摩擦係数の異なる路面でも車輪ごとに制動力がコントロール
されるので車両の尻ふりが防止できる。制動時に車輪がロックしないのでハンドル操作が確保でき,障害物
の回避が容易に行えると共に緊急制動時にはポンピング・ブレーキ操作が不要なため,ドライバの負担を軽
減する。万一,ABS に異常が発生した場合にも系統単位で自動的に通常ブレーキに復帰させるほか,自己
診断機能により異常警報を発し安全を確保する。
2)
EBS
EBS とはエレクトロニック・ブレーキ・システム(Electronic・Brake・System)
の略称で,ブレーキ・シス
テムに電気信号系を追加することによりブレーキ・レスポンス及びブレーキ・フィーリングを向上させたシ
ステムである。
制動操作に対するブレーキの応答性がよく,制動距離の短縮効果が得られる。また,積載量の大小にかかわ
らず同じペダルの踏み込み量で同じ減速度が得られるようにブレーキをコントロールするため,積載量に応
じてペダルの踏み方を変える必要がなくドライバの負担を軽減する。
万一,システムに異常が発生した場合でも,自動的に通常ブレーキに復帰させるほか,自己診断機能により
異常警報を発し安全を確保する。
なお,EBS は ABS の機能も備えており,更に EHS※ コントロール・ユニットからの制御信号(CAN 通信)に
より EHS としても機能する。
※:EHS とはイージ・ヒル・スタート(Easy・Hill・Start)の略称で,発進動作までの間,電磁バルブによりブレー
キ圧を保持することで,坂道発進を容易にする坂道発進補助装置のことである。
− 1 −
U D
2 構造・機能
1) 構成部品の構造・作動
⑴ コントロール・ユニット(図− 1)
センタ・コンソール内に ABS,EBS コントロール・ユニットが設置されており,システム全体の制御を行っ
ている。コントロール・ユニットは自己診断機能をもち,コントロール・ユニット自身内部の状態を常に
チェックすると同時に各ユニット及び配線の状態を
チェックしている。システム異常時は,ウォーニング・
ランプを点灯させる。なお,コントロール・ユニットへ
の電源系のコネクタにはショート・バーがあり,コネク
タが緩むと ABS の場合は ABS ウォーニング・ランプ,
EBS の場合は EBS ウォーニング・ランプが点灯する。
注意 ABS コントロール・ユニットは車種及びシステムに
よって異なるため,識別ラベルが貼り付けされている。
間違った適用はシステムの故障の原因となる。
図− 1 コントロール・ユニット
⑵ ABS コントロール・ユニット(図− 2)
常時,車輪速センサからの電気信号により車輪速と推定車両速度を演算処理しており,必要に応じて ABS
を作動させる。
ABS 作動時は,制御信号を必要に応じた箇所の ABS モジュレータに送り,ブレーキ空気圧を制御する。なお,
ABS 制御回路は 2 系統となっており,異常発生時には,異常があった箇所を含む系統の一部又は全部を通
常ブレーキに復帰させるようになっている。
車輪速センサを装着している 4 輪に対して 4 個の ABS モジュレータを,前軸左右各 1 個と後軸左右各 1 個の
2 系統で管理,制御する。
図− 2 ABS コントロール・ユニット
⑶ EBS コントロール・ユニット(図− 3)
前軸側は左右の車輪速センサからの電気信号で,後軸側はアクスル・モジュレータとのデータ通信により常
時,車輪速の監視及び推定車両速度を演算処理しており,ブレーキ・バルブからの電気信号入力に応じて最
適な制動力を得られるようブレーキ系統の空気圧を制御する。
トラクタはトレーラに供給するブレーキ空気圧も最適になるよう制御する。制動時,ブレーキ・バルブから
ペダルの踏み込み量を電気信号として受け取ると,そのときの車両速度をもとに踏み込み量に応じた要求減
速度を演算し,最適なブレーキ空気圧を決定する。プロポーショナル・リレー・バルブ,アクスル・モジュ
レータ,EBS トレーラ・コントロール・バルブ(トラクタのみ)に制御信号を送り,必要に応じたブレーキ
空気圧を発生させることによりブレーキを作動させる。また,制動中は実際の減速度と要求減速度を比較し,
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U D
要求減速度となるようブレーキ空気圧を制御し続ける。ABS 機能作動時,前軸側ブレーキは ABS モジュレー
タに制御信号を送り直接制御する。後軸側ブレーキはアクスル・モジュレータに制御信号を送り,アクスル・
モジュレータがブレーキ空気圧を制御する。
図− 3 EBS コントロール・ユニット
⑷ リレー類
⒜ インフォメーション・モジュール・リレー(トレーラ・ストップ・ランプ・リレー)
(図− 4)
ストップ・ランプ点灯時にストップ・ランプ回路からの
電流によって励磁され,インフォメーション・モジュー
ルにストップ・ランプ点灯(ブレーキの作動)を知らせる
と同時に,トレーラ側のストップ・ランプを点灯させる。
図− 4 インフォメーション・モジュール・リレー
⒝ インフォメーション・モジュール(図− 5)
インフォメーション・モジュールは内部にリレーと自己
保持回路をもち,ABS ジャンパ・ケーブルとトレーラ
側 ABS プラグの連結により,トレーラに ABS が装着さ
れているか確認する働きをする。ABS 付きトレーラを
連結したときは,インフォメーション・ランプの消灯に
より ABS 付きトレーラであることを示し,また ABS な
しトレーラを連結したときは,インフォメーション・ラ
ンプの点灯により ABS なしを知らせる。
図− 5 インフォメーション・モジュール
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⑸ 車輪速センサ及びパルス・ホイール
車輪速センサ及びパルス・ホイールは,各車輪に設置されている。
⒜ 車輪速センサ(図− 6)
車輪速センサはブレーキ・ブラケット又はアクスル・チューブにセンサ・ブラケット及びホルダを介して取
り付けてある。センサ本体は,永久磁石コアにコイルを巻いた電磁ピックアップである。
車輪が回転してパルス・ホイールのセンシング・ホールがセンサの磁束を通過するとき,センサ・コア外周
のコイルに生じる電位差(パルス信号)を車輪速信号としてコントロール・ユニットに送る。
図− 6 車輪速センサ
⒝ パルス・ホイール(図− 7)
パルス・ホイールはハブ側に圧入された非分解部品で,
100 個のセンシング・ホールが車輪速センサのコアに対
して垂直に均等配列されており,センサの磁束に反応す
る鉄材を用いている。なお,パルス・ホイールの交換は
ハブ Ass'y で行う。
図− 7 パルス・ホイール
⑹ ABS モジュレータ(図− 8)
ABS モジュレータはコントロール・ユニットからの電
気信号により制御される 2 個のソレノイド・バルブによ
り構成されている。ソレノイド・バルブそれぞれの開,
閉状態の組み合わせにより,ブレーキ・チャンバ(フル
エア)
へ送られるブレーキ空気圧を制御する。
図− 8 ABS モジュレータ
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U D
⑺ ABS ウォーニング・ランプ(図Ⅰ− 9)
ABS ウォーニング・ランプ(黄色)はコンビ・メータ内
にあり,コントロール・ユニットに接続されている。コ
ントロール・ユニットが自己診断機能により ABS 機能
に異常があると判断した場合に点灯し,ドライバに警告
する。
図Ⅰ− 9 ABS ウォーニング・ランプ
⑻ EBS ウォーニング・ランプ(図− 10)
EBS ウォーニング・ランプ(赤色)はコンビ・メータ内
にありコントロール・ユニットに接続されている。コン
トロール・ユニットが自己診断機能により ABS 機能に
異常があると判断した場合に点灯して,ドライバに警告
する。なお,点灯時は EBS ウォーニング・ブザーも鳴る。
このとき EBS は作動不可になる。
図− 10 EBS ウォーニング・ランプ
⑼ トレーラ ABS ウォーニング・ランプ(図− 11)
トレーラ ABS ウォーニング・ランプ(黄色)はコンビ・
メータ内にある。トレーラに ABS が装着されており,
トレーラのコントロール・ユニットが自己診断機能によ
りシステムに異常が発生したと判断した場合に点灯し,
ドライバに警告する。
図− 11 トレーラ ABS ウォーニング・ランプ
⑽ トレーラ ABS インフォメーション・ランプ(図− 12)
トレーラ ABS インフォメーション・ランプ(黄色)はコ
ンビ・メータ内にある。ABS なしトレーラを連結した
場合に,インフォメーション・モジュールにより点灯し
てドライバに ABS が装着されていないトレーラを牽引
していることを知らせる。
図− 12 トレーラ ABS インフォメーション・ランプ
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⑾ EBS 仕様ブレーキ・バルブ(図− 13)
EBS 仕様のブレーキ・バルブは,通常のブレーキ・バルブと同様にペダルの踏み込み加減に応じた空気圧
信号を発生するだけでなく,踏み込みタイミング及び踏み込み量を電気信号としてコントロール・ユニット
及び EBS ストップ・ランプ・リレーに送るスイッチ及びストローク・センサを内蔵している。スイッチ及
びストローク・センサはそれぞれ二つ内蔵されており,万一どちらか一方が故障しても残り一つの回路の電
気信号をもとにコントロール・ユニットは EBS を作動させることができる。
図− 13 EBS 仕様ブレーキ・バルブ
⑿ プロポーショナル・リレー・バルブ(図− 14)
プロポーショナル・リレー・バルブは,トラクタはセカンド・クロス・フレーム前方,トラックはサード・
クロス・フレーム後方に設置されており,前軸側ブレーキの EBS 制御を行う。プロポーショナル・ソレノ
イド・バルブ,リレー・バルブ,圧力センサを内蔵している。
制動時,コントロール・ユニットからの電気信号がプロポーショナル・ソレノイド・バルブを作動させ,電
気信号を空気圧信号に変換してリレー・バルブに送る。リレー・バルブはエア・リザーバからの空気圧を,
プロポーショナル・ソレノイド・バルブからの空気圧信号及びブレーキ・バルブからの空気圧信号に比例し
たブレーキ空気圧として出力する。この出力圧は圧力センサが電気信号に変換してコントロール・ユニット
に送る。電気信号が失陥(EBS 非作動)時は,通常のリレー・バルブと同様にブレーキ・バルブからの空気
圧信号だけで作動する。
図− 14 プロポーショナル・リレー・バルブ
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U D
⒀ アクスル・モジュレータ(図− 15)
アクスル・モジュレータはエア・リザーバから後軸ブレーキへの配管途中に設置され,後軸側ブレーキの
EBS 制御及び ABS 機能制御を行う。アクスル・モジュレータ・コントロール・ユニットが一つと,左右の
ブレーキ空気圧を独立して制御するためにソレノイド・バルブが 4 個,出力圧センサ,リレー・バルブが,
それぞれ 2 個ずつ内蔵されている。
アクスル・モジュレータ・コントロール・ユニットは,車輪速センサからの電気信号により後軸側左右の車
輪速を,圧力センサからの電気信号により後軸側ブレーキ空気圧を監視している。また,コントロール・ユ
ニットとデータ通信することにより,コントロール・ユニットからの指示に従い後軸側のブレーキを制御す
る。ソレノイド・バルブは片側 2 個で構成されており,アクスル・モジュレータ・コントロール・ユニット
の制御により作動し,リレー・バルブへ空気圧信号を送る。出力圧センサは左右それぞれのブレーキ空気圧
をアクスル・モジュレータ・コントロール・ユニットに電気信号として送る。リレー・バルブは,ソレノイ
ド・バルブからの空気圧信号に比例した空気圧をそのまま後軸側ブレーキに送る。
制動時,ブレーキ作動開始信号及びドライバの要求する減速度データをコントロール・ユニットからアクス
ル・モジュレータ・コントロール・ユニットが受信する。アクスル・モジュレータ・コントロール・ユニッ
トはソレノイド・バルブを制御し,エア・リザーバからの空気圧を必要な圧力に調整してブレーキに送る。
制動中は実際の車輪速及びブレーキ空気圧とコントロール・ユニットから受信した減速度データを演算処理
し,要求減速度になるよう調整し続ける。制動中にいずれかの後輪がロック傾向にあるとコントロール・ユ
ニットが判断した場合,アクスル・モジュレータがロック傾向にある車輪へのブレーキ空気圧を ABS モジュ
レータと同様に制御して,効率的な制動を行う。(ABS 機能の作動)
図− 15 アクスル・モジュレータ
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U D
⒁ ソレノイド・バルブ(図− 16)
ソレノイド・バルブは,後軸用ブレーキ空気圧のバックアップ回路中に設置されている。
通常
(EBS 作動状態)は,ブレーキ・ペダルを踏むとコントロール・ユニットがソレノイド・バルブを“ON”
(通
電)状態にして,ブレーキ・バルブからの後軸用ブレーキ空気圧信号がアクスル・モジュレータに伝わるの
を遮断している。万一,異常が発生した EBS が非作動状態になった場合,ソレノイド・バルブは“OFF”
(非
通電)状態になり,ブレーキ・バルブからの後軸用ブレーキ空気圧信号がそのままアクスル・モジュレータ
に送られる。
図− 16 ソレノイド・バルブ
⒂ EBS トレーラ・コントロール・バルブ(図− 17)
EBS トレーラ・コントロール・バルブはトレーラへのブレーキ配管直前に設置されており,トレーラ側ブレー
キ
(コントロール・ライン,サプライ・ライン共)への供給空気圧の制御を行う。ソレノイド・バルブ,リレー・
バルブ,セーフティ・バルブ,圧力センサを内蔵している。
ソレノイド・バルブはコントロール・ユニットからの電気信号を空気圧信号に変換してリレー・バルブに送
る。リレー・バルブはエア・リザーバからの空気圧を,ソレノイド・バルブからの空気圧信号及びブレーキ・
バルブからの空気圧信号又はハンド・ブレーキ・バルブからの空気圧信号に比例したブレーキ空気圧として
サービス・ラインに出力する。圧力センサは出力圧を電気信号に変換してコントロール・ユニットに送る。
サプライ・ラインに失陥があった場合,セーフティ・バルブが作動しエア・リザーバのエア損失速度をおさ
える。電気信号が失陥(EBS 非作動)時は,ブレーキ・バルブ又はハンド・ブレーキ・バルブからの空気圧
信号のみに比例したブレーキ空気圧をサービス・ラインに出力する。
図− 17 EBS トレーラ・コントロール・バルブ
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U D
⒃ ABS(EBS)
ジャンパ・ケーブル(図− 18)
トラクタ側とトレーラ側の電気回路を連結するためのカプラ付きのケーブルである。
ABS 付きトレーラへの ABS 用電源,アース及びウォーニング回路,更に EBS 付きトレーラの場合は EBS
用通信回路
(EBS 付きのトラクタのみ)を接続する。
図− 18 ABS(EBS)ジャンパ・ケーブル
2) ABS 制御
コントロール・ユニットは車輪速センサからの回転(電気)信号により各車輪の回転速度を常に監視している。
制動中に車輪速が規定の減速度(減速パターン)を超えたとき,コントロール・ユニットはその車輪がロック
する恐れがあると判断し,制御信号を ABS モジュレータに送りエア・チャンバ内の空気圧を減圧すること
で制動力を加減して車輪のロックを防止する。
その後,車輪速が復帰すると,コントロール・ユニットは車輪ロックの恐れがないと判断し,再び制御信号
を ABS モジュレータに送り,エア・チャンバ内を増圧して制動力を増す。このサイクルを繰り返すことに
より滑りやすい路面での車輪のロックを防止し,安定した制動力を確保する。
制動中,上記のような制動力の減少,増加というサイクルを繰り返すことにより,滑りやすい路面での車輪
ロックを防止し,安定した制動力を確保する。
⑴ ABS モジュレータの動作(図− 19)
ABS モジュレータは,コントロール・ユニットからの
電気信号により制御される 2 個のソレノイド・バルブの
組み合わせで以下の三つのモードに動作し,エア・チャ
ンバへのブレーキ空気圧を制御する。
⒜ 増圧
(通常)
モード
ソレノイド・バルブ 1,2 とも非通電状態で,入力空気
圧をそのまま出力する。入力空気圧がそのままエア・
チャンバへ送られるので,入力空気圧の増減がそのまま
図− 19 ABS モジュレータの動作
制動力の増減となる。
⒝ 減圧モード
ソレノイド・バルブ 1,2 とも通電状態で,入力空気圧を遮断し,出力側空気圧を大気中に排出する。
入力空気圧と関係なくエア・チャンバ内の空気圧が減圧され,制動力が減少する。
⒞ 保持モード
ソレノイド・バルブ 1 が通電,ソレノイド・バルブ 2 が非通電状態で,入力空気圧を遮断し,出力側空気圧
も遮断
(保持)
する。
入力空気圧と関係なくエア・チャンバ内の空気圧が保持されるので,制動力も保持される。
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U D
3) EBS 制御
コントロール・ユニットはブレーキ・バルブからの電気信号によりペダルの踏み込みタイミング及び踏み込
み量を検知し,踏み込み量に応じた減速度を得られるようにプロポーショナル・リレー・バルブ,アクスル・
モジュレータ,EBS トレーラ・コントロール・バルブ(トラクタのみ)に制御信号を送る。
プロポーショナル・リレー・バルブはコントロール・ユニットからの電気信号及びブレーキ・バルブからの
空気圧信号に比例した空気圧を,ブレーキ・チャンバ(フルエア)へ送り,ブレーキを作動させる。アクスル・
モジュレータはコントロール・ユニットからのデータ信号から必要と判断される空気圧を,後軸用のブレー
キ・チャンバへ送り,ブレーキを作動させる。
EBS トレーラ・コントロール・バルブはコントロール・ユニットからの電気信号及びブレーキ・バルブか
らの空気圧信号に比例した空気圧を,トレーラのブレーキ系統に送る。
また,コントロール・ユニットは ABS と同様に車輪速センサからの電気信号により各車輪の回転速度を常
に監視しており,実際の減速度をペダル踏み込み量から算出した目標減速度と比較し,異なる場合には目標
減速度と一致するようプロポーショナル・リレー・バルブ及びアクスル・モジュレータを制御して制動力を
調整する。
⑴ 通常制動時
ドライバがブレーキ・バルブのペダルを踏み込むと,ブレーキ・バルブ内部のスイッチ及びストローク・セ
ンサがペダルの踏み込みタイミングと踏み込み量(角度)を電気信号としてコントロール・ユニットに送る。
コントロール・ユニットは常時,前輪側の車輪速センサ及び後輪側のアクスル・モジュレータ内蔵のコント
ロール・ユニットとのデータ通信により車両速度を推定,監視しており,ブレーキ・バルブからの電気信号
を受け取ると,踏み込み量とその時点での推定車両速度から要求減速度を演算し,要求減速度に応じた制動
力を発生するよう各ユニットに制御信号を送る。
前軸側はコントロール・ユニットがプロポーショナル・リレー・バルブを電気信号で制御し,適切なブレー
キ空気圧を発生させる。
後軸側はコントロール・ユニットがアクスル・モジュレータ内蔵のコントロール・ユニットとデータ通信し
ており,コントロール・ユニットからの指示にしたがってアクスル・モジュレータが適切なブレーキ空気圧
を発生させる。
トラクタの場合,コントロール・ユニットが EBS トレーラ・コントロール・バルブを電気信号で制御し,
適切なブレーキ空気圧を発生させトレーラ側に送る。
なお,制動中は常時,実際の減速度と要求減速度との比較演算を行い,要求減速度どおり減速するようにブ
レーキ空気圧を調整し続ける。
電気信号でブレーキ空気圧を制御するため,ブレーキ・バルブからの空気圧信号よりもレスポンス良くブ
レーキ空気圧を制御できる。また,要求減速度で減速するようにブレーキ空気圧を制御するので,積載量に
かかわらず同じペダルの踏み込み量で同じ減速度が得られる。
⑵ EBS 非作動時
電気系統の故障又はコントロール・ユニットが重大故障を検出し EBS 機能の作動を中止した場合は,従来
のブレーキ・システム同様,空気圧回路のみでブレーキは作動する。
前軸側はプロポーショナル・リレー・バルブが,ブレーキ・バルブからの空気圧信号のみでリレー・バルブ
として作動し,空気圧信号に比例したブレーキ空気圧を発生させる。
後軸側は空気圧バックアップ回路上のソレノイド・バルブが,ブレーキ・バルブからの空気圧信号でリレー・
バルブとして作動し,空気圧信号に比例したブレーキ空気圧を発生させアクスル・モジュレータに送る。ア
− 10 −
U D
クスル・モジュレータはブレーキ空気圧をそのまま通過させブレーキを作動させる。
トラクタの場合は EBS トレーラ・コントロール・バルブがブレーキ・バルブからの空気圧信号のみでリレー・
バルブとして作動し,空気圧信号に比例したブレーキ空気圧を発生させトレーラ側に送る。
⑶ ABS 機能作動時
ABS 機能作動時は ABS と同じく,車輪をロックさせずに効率よく制動できるようにコントロール・ユニッ
トが前軸側は ABS モジュレータを,後軸側はアクスル・モジュレータを制御してブレーキ空気圧を制御する。
更に ABS と同じく補助ブレーキを一時的に解除する。
3 点検・整備
1) 故障診断
⑴ 診断方法
(図− 20,21)
故障診断はコントロール・ユニットの自己診断機能により出力される故障コードで行う。故障コードは,
ABS ウォーニング・ランプ(EBS は ASR 作動ランプ,又は UDSC/ASR 作動ランプ)の点滅によって表示され,
故障箇所及び故障内容の特定をすることができる。また,ABS(含む ASR 機能)のコントロール・ユニット
にはメモリ機能が内蔵されており,過去の故障を取り出して確認することができる。
参考 ・ウォーニング・ランプの点灯を伴わない異常は,構成部品の機械的な故障が考えられる。コントロール・
ユニットの自己診断で故障箇所を特定するのは難しいので各構成部品を点検し,異常が確認されたら処置
を行うこと。
・EBS は現在故障のみ出力可能なため,EBS 又は ABS ウォーニング・ランプが点灯又は EBS ウォーニング・
ランプが点滅している状態でなるべくキー・スイッチを“OFF”にせず処置を行うこと。
①運転席前方,ステアリング・コラム横にあるハーネス・
クリップより,ABS 故障診断用ギボシ“B”を取り出し,
ギボシ端子部に専用工具のダイアグ・チェック・ハーネ
ス
(99731 Z0007)を接続する。
②キー・スイッチが
“OFF”になっているときは,
“ON”に
する。
③キー・スイッチを“ON”にした場合は 3 秒以上間をあけ,
ダイアグ・チェック・ハーネスを 0.5 ∼ 3.0 秒間ボデー・
アースする。
図− 20 診断方法⑴
注意 3.0 秒以上ボデー・アースさせると,過去の故障コー
ドが消去される。また,ABS 故障コードが出力され
ないことがあるので,ボデー・アースは,必ず時間内
で行うこと。
④ ABS ウォーニング・ランプ(EBS は ASR 作動ランプ,
又は UDSC/ASR 作動ランプ)が点滅し,故障コードを
出力する。
⑤故障コードを読み取り,故障コード一覧表を参照して故
障箇所の特定を行う。
図− 21 診断方法⑵
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U D
2) 故障コードの表示
故障コードは,点滅するランプの点灯回数で表示され,2 桁(けた)の数値の組み合せで 1 件の故障を表わす。
故障コードは,アースに短絡 1.5 秒後に出力され,出力中はランプが 0.5 秒間隔で点滅する。1 桁目と 2 桁目
の間は 1.5 秒の消灯で表し,1 件目と 2 件目の間は,4 秒の消灯で表す。(最大 4 件の故障コードを記録)
ABS(含む ASR 機能)の故障コードは,故障のない場合,現在故障のある場合,過去の故障を出力している
場合で出力パターンが異なる。EBS は,現在の故障状況のみ出力し,過去の故障出力はない。
参考 ・故障コードの意味は故障コード一覧表を参照すること。
・エンジン回転が高い状態でキー OFF すると CAN 系の故障コードが過去故障で出力する場合がある。
⑴ ABS
故障のない場合(図− 22)
現在故障がなく,過去においても故障の記録がない場合は,正常時コード(故障コード「1 − 1」)を出力する。
故障コード出力は 1 回のみで,出力後 4 秒で自動的に終了し,ランプは消灯したまま(条件によっては点灯
したまま)
になる。
注意 故障のない場合は,故障コードは 1 回しか出力されないので見落としのないように注意すること。
図− 22 故障のない場合
現在故障のある場合(図− 23)
自己診断時に故障が発見された場合は,その故障コードを繰り返し出力する。2 件以上の故障がある場合は,
最後に発見された故障のコードを繰り返し出力する。出力を終了するにはキー・スイッチを“OFF”にする。
注意 故障が 2 件以上ある場合は,最後に発見された故障以外の故障コードは出力されない。故障診断時に故障件数
を特定するのは困難なので,出力されている故障コードに対応する故障の処置後,必ず再度故障診断を行い,
ほかの故障がないか確認すること。
図− 23 現在故障のある場合
− 12 −
U D
過去の故障出力(図− 24)
現在は故障がないが過去に故障があった場合は,最新の故障コードから 1 回ずつ最大 4 件の出力を行う。す
べての故障コードを出力後,自動的にランプが消灯又は点灯する。
注意 故障コードは 1 回ずつしか出力されないので,見落としのないように注意する。また,1 桁目と 2 桁目を間違
えないように注意する。
図− 24 過去の故障出力
⑵ EBS(図− 25)
現在の故障状況のみ出力する。故障のない場合は正常時コード「1 − 1」,故障のある場合はその故障を表す
コードを 1 回出力する。
参考 故障コードに従って処置を行った後,再度故障診断を行い正常時コード
「1 − 1」が出ることを確認する。
図− 25 EBS
3) 故障コードの消去(ABS のみ)
⑴ 消去方法
(図− 26,27)
故障箇所確認後,故障コードを消去する場合は以下の方法で行う。
参考 故障コードの消去を行うと,コントロール・ユニット内に記憶している故障コードをすべて消去する。消去
された故障コードは再度取り出すことができないので,消去前に十分確認してから作業を行うこと。
①故障診断用ギボシ端子
“B”に専用工具のダイアグ・チェック・ハーネス(99731 Z0007)を接続する。
②キー・スイッチを
“ON”
にする。
③キー・スイッチを“ON”にした後 3 秒以上間をあけ,ダ
イアグ・チェック・ハーネスを 3.0 ∼ 6.3 秒間ボデーに
アースする。
参考 故障診断用ギボシ端子を 15 秒以上ボデー・アースさ
せると,コントロール・ユニットがランプ球切れと判
断してしまい故障コードの消去は行われないので,ボ
デー・アースは必ず時間内に行うこと。
図− 26 消去方法⑴
− 13 −
U D
④故障コードが正常に消去された場合,約 8 秒後にシステ
ム・コードが表示される。
現在故障箇所があり,故障コードを消去できない場合は,
直ちにシステム・コードが出力される。
参考 ・現在故障がある場合は故障コードを消去することは
できない。
・ABS(含む ASR 機能)は,故障コードの消去作業を
行うと ASR 作動ランプが点灯し,ASR は非作動に
図− 27 消去方法⑵
なる。キー・スイッチを
“OFF”
にすれば消灯する。
⑤故障コード出力操作を行い,故障コード
“1 − 1”
(正常)を確認する。
⑵ 消去確認
システム・コードの応答時間で確認する。
消去完了の場合(図− 28)
故障コードの消去が完了すると,約 8 秒後にシステム・コードを出力する。出力を終了するにはキー・スイッ
チを
“OFF”
にする。その後,故障コード出力を行い,故障コード“1 − 1”
(正常)を確認すること。
図− 28 消去完了の場合
消去不可の場合(図− 29)
現在故障箇所がある場合,故障コードは消去できない。この場合は最初からシステム・コードを出力する。
システム・コードは,キー・スイッチを“OFF”にするまで繰り返す。消去不可が確認されたら再度故障診
断を行い,故障箇所を修理する。
図− 29 消去不可の場合
参考 〈システム・コード表示回数〉
区 分
フルエア・ブレーキ車
表示回数
2
− 14 −
U D
4) 故障コード一覧表
故障診断により出力された故障コードを故障コード一覧表と照らし合わせ,故障箇所を特定する。また,故
障コード一覧表に記されている「点検記号」は,次項の「点検のヒント」に対応しているので参照し処置を行う。
⑴ ABS
1 桁目
2 桁目
1
1
正常
1
全 ABS モジュレータ・ソレノイドの長時間作動,又は前輪右側 ABS モジュ
レータ・ソレノイド系統の断線,ショート,作動時間異常
B,C,E,
F,G
2
前輪左側 ABS モジュレータ・ソレノイド系統の断線,ショート,作動時間
異常
C,E,F,
G
3
後輪右側 ABS モジュレータ・ソレノイド系統の断線,ショート,作動時間
異常
C,E,F,
G
4
後輪左側 ABS モジュレータ・ソレノイド系統の断線,ショート,作動時間
異常
C,E,F,
G
1
前輪右側車輪速センサ・ギャップの異常又は異常スリップ
B
2
前輪左側車輪速センサ・ギャップの異常又は異常スリップ
B
3
後輪右側車輪速センサ・ギャップの異常又は異常スリップ
B
4
後輪左側車輪速センサ・ギャップの異常又は異常スリップ
B
1
前輪右側車輪速センサ断線,ショート
A
2
前輪左側車輪速センサ断線,ショート
A
3
後輪右側車輪速センサ断線,ショート
A
4
後輪左側車輪速センサ断線,ショート
A
1
前輪右側車輪速センサ信号異常
B
2
前輪左側車輪速センサ信号異常
B
3
後輪右側車輪速センサ信号異常
B
4
後輪左側車輪速センサ信号異常
B
1
前輪右側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常
B
2
前輪左側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常
B
3
後輪右側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常
B
4
後輪左側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常
2
3
4
5
6
7
8
故 障 内 容
点検記号
―
B
E,F,G,
K,L
1
CAN 通信ライン断線,ショート,信号異常,極度のスリップ
4
ABS ウォーニング・ランプ断線,ショート,球切れ
E,J
1
コントロール・ユニット電源低電圧,断線
I,E
2
コントロール・ユニット電源過電圧
H
3
コントロール・ユニット内部異常
M
4
コントロール・ユニット内部異常
5
コントロール・ユニット・アース断線,ショート
M
− 15 −
F,G
備 考
U D
⑵ ABS(ASR 機能付き)
1 桁目
2 桁目
1
1
正常
1
全 ABS モジュレータ・ソレノイドの長時間作動,又は前輪右側 ABS モジュ
レータ・ソレノイド系統の断線,ショート,作動時間異常
2
前輪(CV 系は前前軸)ABS モジュレータ・ソレノイド系統の断線,ショート, C,E,F,
作動時間異常
G
3
後輪右側 ABS モジュレータ・ソレノイド系統の断線,ショート,作動時間
異常
C,E,F,
G
4
後輪左側 ABS モジュレータ・ソレノイド系統の断線,ショート,作動時間
異常
C,E,F,
G
1
前輪右側車輪速センサ・ギャップの異常又は異常スリップ
B
2
前輪左側車輪速センサ・ギャップの異常又は異常スリップ
B
3
後輪右側車輪速センサ・ギャップの異常又は異常スリップ
B
4
後輪左側車輪速センサ・ギャップの異常又は異常スリップ
B
1
前輪右側車輪速センサ断線,ショート
A
2
前輪左側車輪速センサ断線,ショート
A
3
後輪右側車輪速センサ断線,ショート
A
4
後輪左側車輪速センサ断線,ショート
A
1
前輪右側車輪速センサ信号異常
B
2
前輪左側車輪速センサ信号異常
B
3
後輪右側車輪速センサ信号異常
B
4
後輪左側車輪速センサ信号異常
B
1
前輪右側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常
B
2
前輪左側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常
B
3
後輪右側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常
B
4
後輪左側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常
B
1
CAN 通信ライン断線,ショート,信号異常,極度のスリップ
E,F,G,
K,L
2
ディファレンシャル・ブレーキ・バルブ断線,ショート,作動時間異常,又
は後々軸ブレーキ・カット・マグネチック・バルブ断線,ショート,作動時
間異常(CD 車のみ)
C,E,F,
G
4
ABS ウォーニング・ランプ断線,ショート,球切れ
2
3
4
5
6
7
8
故 障 内 容
点検記号
―
B,C,E,
F,G
E,J
5
ASR システム異常
1
コントロール・ユニット電源低電圧,断線
E
2
コントロール・ユニット電源過電圧
H
3
コントロール・ユニット内部異常
M
4
コントロール・ユニット内部異常
M
5
コントロール・ユニット・アース断線,ショート
− 16 −
I,E
F,G
備 考
U D
⑶ EBS(UDSC(スタビリティ・コントロール)機能付き)
1 桁目
1
2
3
4
5
6
7
8
2 桁目
故 障 内 容
点検記号
備 考
1
正常
―
2
故障コードでは未定義の故障
―
1
前輪右側 ABS モジュレータ・バルブの異常
A
2
前輪左側 ABS モジュレータ・バルブの異常
4
UDSC コントロール・ユニットの異常
P,R,S
5
SAS/SAC の異常
Q,R,T
UDSC 付き車のみ *
6
UDSC コントロール・ユニット /SAC への供給電圧の異常
R
UDSC 付き車のみ *
1
前輪右側車輪速センサ・ギャップの異常
B
2
前輪左側車輪速センサ・ギャップの異常
B
3
後輪右側車輪速センサ・ギャップの異常
B
4
後輪左側車輪速センサ・ギャップの異常
B
1
前輪右側車輪速センサと接続ハーネスの断線,ショート
A
2
前輪左側車輪速センサと接続ハーネスの断線,ショート
A
3
後輪右側車輪速センサと接続ハーネスの断線,ショート
A
4
後輪左側車輪速センサと接続ハーネスの断線,ショート
A
1
前輪右側車輪速センサ信号異常
B
2
前輪左側車輪速センサ信号異常
B
3
後輪右側車輪速センサ信号異常
B
4
後輪左側車輪速センサ信号異常
B
1
前輪右側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常
B
2
前輪左側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常
B
3
後輪右側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常
B
4
後輪左側車輪速センサ・パルス・ホイールの異常
B
A
1
CAN 通信ライン断線,ショート
N
2
ブレーキ・カット・マグネチック・バルブの異常
D
4
ウォーニング・ランプ又はパイロット・ランプの異常
C
5
ブレーキ・バルブの異常
E
6
EBS トレーラ・コントロール・バルブの異常
F
7
アクスル・モジュレータの異常
G
8
プロポーショナル・リレー・バルブの異常
2
コントロール・ユニット電源過電圧
I
3
コントロール・ユニット内部異常
J
4
コントロール・ユニット設定不良
K
5
コントロール・ユニット又は ABS モジュレータ・アース(戻り側)
の異常
A
6
コントロール・ユニット電源(a.7,8,9 番端子)
の異常
L
7
センサ供給電圧の異常
M
8
アクスル・モジュレータ供給電圧の異常
D
9
前輪速度の異常
B
10
後輪速度の異常
B
1
ソレノイド・バルブ接続ハーネスの断線,ショート
D
2
ソレノイド・バルブの異常
D
アクスル・モジュレータとの通信異常
トラクタ
F
コントロール・ユニット電源低電圧
3
CD 車のみ
H,L,D,
G
1
9
UDSC 付き車のみ *
N
UDSC コントロール・ユニットとの通信異常
P,R
UDSC 付き車のみ *
SAC との通信異常
Q,R
UDSC 付き車のみ *
− 17 −
U D
1 桁目
9
2 桁目
故 障 内 容
点検記号
4
タイヤ・サイズ違い
B
7
トレーラ EBS との通信異常
O
8
ESCOT 又は EHS との通信異常
N
11
ACC/CMS,ESCOT との通信異常
N
備 考
トラクタ
CD 車のみ
*:UDSC 付き車は,キャリブレーション・ツールを用いて PC 用故障コードで故障内容を確認すること。
5) 点検のヒント
⑴ ABS(ASR 機能付き)
点検記号
不良内容
点 検 の ヒ ン ト
車輪速センサ系統のハーネス断線又は
ショート
・センサ本体(内部コイル),ハーネス及びコネクタの接触不良,断線
又はショートを点検
・シャシ・ハーネス,キャブ・ハーネス,コントロール・ユニット側
コネクタの接触不良,断線,ショートを点検
・センサの抵抗値を測定
(温度により抵抗値が変わることに注意)
B
車輪速信号の異常
・センサの出力電圧を測定し,定格値と照合
・センサ本体(内部コイル),ハーネス及びコネクタの接触不良,断線
又はショートを点検
・シャシ・ハーネス,キャブ・ハーネス,コントロール・ユニット側
コネクタの接触不良,断線,ショートを点検
・パルス・ホイールの損傷及びセンサ・ホルダの固定,センサ・ギャッ
プ,ハブ・ベアリングの遊びを点検
C
ABS モジュレータ,ディファレンシャル・ ・対象部品の導通,抵抗値測定
ブレーキ・バルブ又は後後軸ブレーキ・ ・対象部品の内部エア通路に異物混入
・対象部品単位での作動確認
カット・マグネチック・バルブ異常
D
・リレー内部励磁コイルの断線,ショート
エキゾースト・ブレーキ・カット・リレー,
・シャシ・ハーネス,キャブ・ハーネス,コントロール・ユニット側
リターダ・カット・リレー異常
コネクタの接触不良,断線,ショートを点検
E
ハーネスの断線
・フューズの不良
・コントロール・ユニットと構成部品間の接続が,一時的又は断続的
に切れている
・各コネクタ
(シャシ・ハーネス,キャブ・ハーネス,コントロール・
ユニット)
の接触不良を点検
・各ハーネスの断線点検 : ハーネスを揺さぶって,抵抗変化の有無を
点検
F
アースにショート
・コントロール・ユニットの出力が,一時的又は断続的にアースに
ショート
・抵抗値の測定,ハーネスの点検
G
プラス電源にショート
・コントロール・ユニットの出力又は接続されている構成部品がとき
どきプラス電源にショート
H
過電圧
・車両側の回路電圧が 32V 以上
・ジェネレータ,バッテリを点検
I
低電圧
・車両側の回路電圧が 18V 以下
・ジェネレータ,バッテリを点検
・抵抗値の測定,ハーネスの点検
J
ランプ球切れ
・抵抗値測定
K
CAN 通信ライン異常
・ASR のエンジン制御系の点検
・ABS + ASR コントロール・ユニットとエンジン・コントロール・
ユニット間の CAN 通信ハーネス断線点検
極度のスリップ
・長時間の駆動輪スリップ
(ダイナモ・テスタ・チェック時)
・タイヤ・サイズの違い
・パルス・ホイールの歯数を点検
・ABS モジュレータ,ディファレンシャル・ブレーキ・バルブの機
能点検
A
L
− 18 −
U D
点検記号
M
不良内容
点 検 の ヒ ン ト
コントロール・ユニット設定不良又は内部
異常
・コントロール・ユニットを適用外車両に接続したことによるコント
ロール・ユニット内部設定エラー
・故障コード消去及び ASR 再設定ができれば外部要因による異常(継
続使用可能)
・故障コード消去及び ASR 再設定ができない場合は,コントロール・
ユニットを交換
⑵ EBS(UDSC 機能付き)
点検記号
不良内容
点 検 の ヒ ン ト
ABS モジュレータ・バルブの異常
・コネクタの接触不良の点検
・ハーネスの断線又はショートを点検
・モジュレータ・バルブ戻り側グランド・ラインの断線を点検
・ソレノイド・バルブの抵抗値を測定し,定格値と照合
車輪速信号の異常
・センサの出力電圧,抵抗値を測定し,定格値と照合
・タイヤ・サイズの違い
・センサ本体,ハーネス及びセンサ・ホルダの固定,センサ・ギャッ
プ,ハブ・ベアリングの遊びを点検
・センサ本体,ハーネス及びコネクタの接触不良,断線又はショート
を点検
・パルス・ホイールの損傷を点検
ランプ類の異常
・各コネクタ
(シャシ・ハーネス,キャブ・ハーネス,コントロール・
ユニット)
の接触不良を点検
・各ハーネスの断線,ショートを点検
・ランプの点検
後後軸ブレーキ・カット・マグネチック・
バルブ,ソレノイド・バルブの異常
・コントロール・ユニットと各バルブ間のハーネスの断線又は各バル
ブ本体が一時的もしくは断続的なショート又は断線
・ハーネス及びコネクタの接触不良,断線又はショートを点検。ハー
ネスなど確認後,不良が継続する場合は各バルブ本体を交換
・ソレノイド・バルブの抵抗値を測定し,定格値と照合
ブレーキ・バルブの異常
・ハーネスの断線又はショートを点検
・コントロール・ユニットとブレーキ・バルブ間の接続が一時的もし
くは断続的に断線又はショート
・コネクタの接触不良の点検
・ブレーキ・バルブ内蔵スイッチの作動点検
EBS トレーラ・コントロール・バルブ,
プロポーショナル・リレー・バルブの異常
・ハーネスの断線又はショートを点検
・コントロール・ユニットと各バルブ間の接続が一時的もしくは断続
的なショート又は断線
・コネクタの接触不良の点検
・バルブ内蔵圧力センサの点検
・ソレノイド・バルブの抵抗値を測定し,定格値と照合
アクスル・モジュレータの異常
・ハーネスの断線又はショートを点検
・コネクタの接触不良の点検
・コントロール・ユニットからアクスル・モジュレータへの供給電圧
を点検
・アクスル・モジュレータのグランド・ライン点検
H
低電圧
・コントロール・ユニットへの供給電圧が 16V 以下
・ジェネレータ,バッテリを点検
・車両側の供給電圧に異常がない場合,コントロール・ユニット内部
の異常
I
過電圧
・コントロール・ユニットへの供給電圧が 32V 以上
・ジェネレータ,バッテリを点検
J
コントロール・ユニット内部異常
・キー・スイッチを“OFF”にし,再度“ON”
にして不具合を確認。リセッ
トされていれば外部要因による異常。リセットできない場合はコン
トロール・ユニットを交換
A
B
C
D
E
F
G
− 19 −
U D
点検記号
不良内容
点 検 の ヒ ン ト
K
システム構成の不具合
・コントロール・ユニットと構成部品の接続関係を確認
・ハーネスの誤接続を点検
・コントロール・ユニットとアクスル・モジュレータ間の接続ハーネ
ス及び各部品の適合を確認
・EHS の有無,適合を確認
・UDSC の有無の確認及び UDSC コントロール・ユニット,SAC の
接続の確認
・EBS コントロール・ユニット,UDSC コントロール・ユニットの仕
様の確認
L
コントロール・ユニット供給電圧の異常
・コントロール・ユニット電源ラインのハーネス及び電圧を点検
・コントロール・ユニット電源ラインのフューズを点検
・ハーネス及びコネクタの接触不良,断線又はショートを点検
M
センサ供給電圧
・プロポーショナル・リレー・バルブ,トレーラ・コントロール・バ
ルブの圧力センサ,ブレーキ・バルブのストローク・センサの電源
ラインのハーネス及び電圧を点検
通信異常
・ハーネス及びコネクタの接触不良,断線又はショートを点検
・コントロール・ユニットとアクスル・モジュレータ間通信ラインの
ハーネス点検。ハーネスに異常がない場合は,コントロール・ユニッ
トとアクスル・モジュレータを交互に交換して異常を確認
・CAN 通信ラインのハーネス及び信号電圧点検。EBS コントロール・
ユニットとエンジン・コントロール・ユニット,EHS コントロール・
ユニット,ESCOT コントロール・ユニット,トラフィックアイ・
ブレーキ・コントロール・ユニット,クラスタ・メータ,エアサス・
コントロール・ユニット,VECU,NICU を交互に交換して異常を
確認
トレーラ EBS との通信異常
・トラクタ側ハーネス:ABS ジャンパ・ケーブルの点検
・トレーラ側:ABS ジャンパ・ケーブル・コネクタ 6,7 番端子の点
検
(トレーラ EBS 以外のハーネスが付いていないこと)
・EBS コントロール・ユニット,トレーラ EBS コントロール・ユニッ
トの点検
P*
EBS,UDSC コントロール・ユニット間
ローカル CAN 異常
・ハーネス及びコネクタの接触不良,断線又はショートを点検
・EBS コントロール・ユニットと UDSC コントロール・ユニット間通
信ラインのハーネス点検。ハーネスに異常がない場合は,EBS コン
トロール・ユニットと UDSC コントロール・ユニットを交互に交換
して異常を確認
Q*
EBS コントロール・ユニット,SAC 間ロー
カル CAN 異常
・ハーネス及びコネクタの接触不良,断線又はショートを点検
・EBS コントロール・ユニットと SAC 間通信ラインのハーネス点検。
ハーネスに異常がない場合は,EBS コントロール・ユニットと
SAC を交互に交換して異常を確認
R*
EBS コントロール・ユニットから UDSC
コントロール・ユニットと SAC への電源
供給異常
・EBS コントロール・ユニットから UDSC コントロール・ユニットと
SAC への供給電圧を点検
・ハーネスの断線又はショートを点検
・コネクタの接触不良の点検
・UDSC コントロール・ユニットのグランド・ラインを点検
・SAC のグランド・ラインを点検
S*
UDSC コントロール・ユニット固有の異常
(取り付け)
・UDSC コントロール・ユニットの取り付け位置,向き,ガタの有無
を点検
・UDSC のキャリブレーション
N
O
T*
SAC 固有の異常
・SAC 及び SAS の異常
・ハーネス及びコネクタの接触不良,断線又はショートを点検
・SAC 又は SAS への供給電圧及びグランド・ラインを点検
・SAC の CAN 通信ラインのハーネス点検。ハーネスに異常がない場
合は,SAC と EBS コントロール・ユニット,メータを交互に交換
して異常を確認
・SAS の取り付け位置,方向,舵角中立位置を合わせて点検
*:UDSC 付き車は,キャリブレーション・ツールを用いて PC 用故障コードで故障内容を確認すること。
− 20 −
U D
6) 重点部位の点検・整備 ⑴ 車輪速センサの点検(一部を抜粋して紹介)
準 備
・サーキット・テスタ,配線図,リード線
点検項目
・車輪速センサ本体
・ハーネス
(導通,ショート,絶縁)
・車輪速センサのセット状態(ギャップ)
・パルス・ホイール
・最終確認
作業手順
(図− 30)
図− 30 作業手順
− 21 −
U D
⒜ ハーネスの断線(点検記号:B − 1)
(図− 31,32)
点検 [1 − 1]
車輪速センサとハーネス組での抵抗点検
①キー・スイッチを“OFF”にする。
②下表を参照し,コントロール・ユニットからハーネス・
コネクタの接続を取り外す。
ただし,EBS の後輪側車輪速センサからの配線はアク
スル・モジュレータに接続されているので,アクスル・
モジュレータからコネクタを取り外す。
図− 31 車輪速センサとハーネス組での抵抗点検⑴
③下表の各端子間で抵抗値を測定する。また,各端子間の絶縁状態を点検する。(図は ABS 前輪右側を測定)
注意 コントロール・ユニットからコネクタを外す場合(EBS:18 ピン,ABS:15 ピン)又は,電源ラインのフュー
ズを抜く場合はキー・スイッチ
“OFF”
後 3 秒以上経過の後抜くこと。
システム
ABS,ABS
(含む ASR 機能)
EBS
端 子 位 置
前輪右
前輪左
後輪右
後輪左
標準抵抗値
〔kΩ〕
a − 10 ∼ a − 13
a − 12 ∼ a − 15
a − 17 ∼ a − 18
a − 11 ∼ a − 14
1.0 ∼ 1.3
c−4∼c−5
d−7∼d−8
62* − 1 ∼ 62* − 2
63* − 1 ∼ 63* − 2
1.0 ∼ 1.3
*:62,63 はアクスル・モジュレータの番号
図− 32 車輪速センサとハーネス組での抵抗点検⑵
④良否判断
[2]
(点検記号:B − 6)を実施する。
・測定値が標準値内の場合は, 点検 (点検記号:B − 4)を実施する。
・抵抗値が標準値以外又は断線,ショートなどの場合は, 点検 [3]
⒝ ハーネスの GND ショート(点検記号:B − 2)
(図− 33,34)
点検 [1 − 2]
車輪速センサとハーネス組での導通点検
①キー・スイッチを“OFF”にする。
②下表を参照し,コントロール・ユニットからハーネス・
コネクタの接続を取り外す。
ただし,EBS の後輪側車輪速センサからの配線はアク
スル・モジュレータに接続されているので,アクスル・
モジュレータからコネクタを取り外す。
図− 33 ハーネスの GND ショート⑴
− 22 −
U D
③下表の各端子間で抵抗値を測定する。また,各端子間の絶縁状態を点検する。(図は ABS 前輪右側を測定)
注意 コントロール・ユニットからコネクタを外す場合(EBS:18 ピン,ABS:15 ピン)又は,電源ラインのフュー
ズを抜く場合はキー・スイッチ
“OFF”
後 3 秒以上経過後抜くこと。
システム
ABS,ABS
(含む ASR 機能)
EBS
端 子 位 置
前輪右
前輪左
後輪右
後輪左
a − 10 ∼アース
a − 12 ∼アース
a − 17 ∼アース
a − 11 ∼アース
a − 13 ∼アース
a − 15 ∼アース
a − 18 ∼アース
a − 14 ∼アース
c − 4 ∼アース
d − 7 ∼アース
62* − 1 ∼アース
63* − 1 ∼アース
c − 5 ∼アース
d − 8 ∼アース
62* − 2 ∼アース
63* − 2 ∼アース
標準抵抗値
〔kΩ〕
∞ (絶縁)
∞ (絶縁)
*:62,63 はアクスル・モジュレータの番号
図− 34 ハーネスの GND ショート⑵
④良否判断
[2]
(点検記号:B − 6)を実施する。
・測定値が標準値内の場合は, 点検 (点検記号:B − 4)を実施する。
・抵抗値が標準値以外又は断線,ショートなどの場合は, 点検 [3]
⒞ ハーネスの 24V ショート(点検記号:B − 3)
点検 [1 − 3]
車輪速センサとハーネス組での導通点検(図− 35,36)
①キー・スイッチを“OFF”にする。
②下表を参照し,コントロール・ユニットからハーネス・
コネクタの接続を取り外す。
ただし,EBS の後輪側車輪速センサからの配線はアク
スル・モジュレータに接続されているので,アクスル・
モジュレータからコネクタを取り外す。
図− 35 車輪速センサとハーネス組での導通点検⑴
③コントロール・ユニット部のコネクタを取り外したままの状態でキー・スイッチを“ON”にし,各端子とアー
スの電圧を測定し,電源との絶縁状態を点検する。(図は ABS 前輪右側を測定)
注意 コントロール・ユニットからコネクタを外す場合(EBS:18 ピン,ABS:15 ピン)又は,電源ラインのフュー
ズを抜く場合はキー・スイッチ
“OFF”
後 3 秒以上経過の後抜くこと。
− 23 −
U D
システム
ABS,ABS
(含む ASR 機能)
EBS
端 子 位 置
前輪右
前輪左
後輪右
後輪左
a − 10 ∼アース
a − 12 ∼アース
a − 17 ∼アース
a − 11 ∼アース
a − 13 ∼アース
a − 15 ∼アース
a − 18 ∼アース
a − 14 ∼アース
c − 4 ∼アース
d − 7 ∼アース
62* − 1 ∼アース
63* − 1 ∼アース
c − 5 ∼アース
d − 8 ∼アース
62* − 2 ∼アース
63* − 2 ∼アース
標準測定値
〔V〕
0
0
*:62,63 はアクスル・モジュレータの番号
図− 36 車輪速センサとハーネス組での導通点検⑵
④良否判断
[2]
(点検記号:B − 6)を実施する。
・測定値が標準値内の場合は, 点検 (点検記号:B − 4)を実施する。
・抵抗値が標準値以外又は断線,ショートなどの場合は, 点検 [3]
⒟ センサ出力電圧異常,信号異常〔高周波入力〕
(点検記号:B − 6)
(図− 37)
点検 [2]
車輪速センサ出力電圧の点検
①各車輪を回せるようにジャッキ・アップする。
警告 ジャッキ・アップ時は安全のため車体をスタンドで支え固定すること。
②キー・スイッチを“OFF”にする。
③下表を参照し,コントロール・ユニットからハーネス・コネクタの接続を取り外す。
ただし,EBS の後輪側車輪速センサからの配線はアクスル・モジュレータに接続されているので,アクスル・
モジュレータからコネクタを取り外す。
③テスト車輪を前進方向に最大 8km/h 又は,1 秒間に 1/2 回転回しながら,各車輪速センサの出力電圧を測定
する。
(図は ABS 前輪右側を測定)
端 子 位 置
システム
ABS,ABS(含む ASR 機能)
EBS
前輪右
前輪左
後輪右
a − 10 ∼ a − 13
a − 12 ∼ a − 15
a − 17 ∼ a − 18
a − 11 ∼ a − 14
c−4∼c−5
d−7∼d−8
62* − 1 ∼ 62* − 2
63* − 1 ∼ 63* − 2
*:62,63 はアクスル・モジュレータの番号
各車輪標準電圧値〔mV−AC〕:100 以上
図− 37 センサ出力電圧異常,信号異常〔高周波入力〕
− 24 −
後輪左
U D
④良否判断
・測定値が正常な場合は,コントロール・ユニットの異常が考えられるためコントロール・ユニットを交換す
る。
・測定値が異常な場合は,
[5]
(点検記号:B − 7)を実施する。
参考 測定値が正常範囲でも各センサの出力電圧値に大きな差がある場合は,車輪速センサの取り付け調整を行う
こと。
⑤確認
コントロール・ユニットの交換を行った場合は,異常有無の確認作業を必ず行い,異常がないことを確認す
ること。
⒠ コイルの短絡(点検記号:B − 4)
(図− 38)
点検 [3]
車輪速センサ本体の点検
①キー・スイッチを“OFF”にする。
②車輪速センサのコネクタを取り外す。
③車輪速センサ・コネクタの端子間にテスタ・リードを当
てて抵抗を測定する。
標準抵抗値
〔kΩ〕:1.0 ∼ 1.3
参考 測定は常温状態で行うこと。
図− 38 コイルの短絡
④良否判断
[4]を実施する。
・測定値が正常な場合は 点検 ・測定値が異常の場合はセンサに異常があると考えられるため,センサを交換する(センサ交換時は 点検 [5]
(点検記号:B − 7)を参照して取り付け調整を行うこと)。
参考 センサ先端が摩耗している場合は,センサ・ホルダ,センサ・ブラケットの不具合も考えられるので併せて
交換すること。
− 25 −
U D
⒡ コントロール・ユニット∼車輪速センサ間ハーネス異常(図− 39)
点検 [4]
コントロール・ユニット∼車輪速センサ間ハーネスの点検
①キー・スイッチを“OFF”にする。
②コントロール・ユニットからハーネス・コネクタを取り外す。
③車輪速センサのコネクタから,ハーネス・コネクタを取り外す。
④ハーネスの導通,絶縁,ショートを点検する。
〈EBS:CD,CW,CV,CG,CX 車〉
図− 39 コントロール・ユニット∼車輪速センサ間ハーネス異常
⑤良否判断
・点検の結果,異常のあったハーネスの修理又は交換を行う。
・ハーネスに異常がない場合は,コントロール・ユニットに異常があると考えられるため,コントロール・ユ
ニットを交換する。
⑥確認
車輪速センサ,コントロール・ユニットを交換,ハーネスの修理又は交換を行った場合は,異常有無の確認
作業を必ず行い,異常がないことを確認すること。
⒢ パルス・ホイールふれ大,センサ・ギャップ不良(点検記号:B − 7)
点検 [5]
車輪速センサ取り付け状態の点検
車輪速センサの取り付け状態の点検は外部からできないので,タイヤ Ass'y 及びハブ Ass'y を取り外して行う。
ただし,点検後又は部品交換後のハブ Ass'y 取り付け前に必ず取り付け調整を行うこと。なお,CG,CX 系
車の後輪以外は取り外さずにセンサ・ギャップの簡易確認が行える。
ⓐ取り付け状態の点検(図− 40,41,42)
①点検する車輪以外に輪止めをする。
②タイヤ Ass'y を取り外す。
③ドラム又はディスク・ロータ付きでハブ Ass'y を取り外す。
− 26 −
U D
注意 ・ドラム又はディスク・ロータ付きハブ Ass'y は重いので,デフ・ジャッキなどを使用して降ろすこと。
・取り外しはセンサへの衝撃が加わらぬようにハブ・プーラを使用して行うこと。
④センサ本体,センサ・ホルダ及びセンサ・ブラケット
の状態を目視にて点検し,異常がなければレバーなど
を使用して,センサ先端をブラケットより下記セット
寸法まで突出させる。
センサ・セット寸法
〔mm〕:5.5
図− 40 取り付け状態の点検⑴
⑤セット後,センサ先端に徐々に力を加えて 157 ∼ 196
N{16 ∼ 20kgf}の力でセンサが押し込まれるかどうか
点検する。
図− 41 取り付け状態の点検⑵
⑥良否判断
・目視にて,センサ・ホルダ及びセンサ・ブラケットに
変形,損傷があれば新品と交換し,取り付け調整を行
う。
・センサ先端に力を加えて,センサが 157N{ 16kgf}以
下で動いたとき,又は 196N{ 20kgf}以上で動かない
ときは,センサ・ホルダを新品と交換し,取り付け調
図− 42 取り付け状態の点検⑶
整を行う。
[6]
(点検記号:B − 5)を実施する。
・取り付け状態に異常がなければ 点検 注意 センサ先端が異常に摩耗している場合は,センサ・ホルダ及びセンサ・ブラケットとセンサ本体も併せて交
換すること。
参考 ・センサ Ass'y を取り外す場合は,センサ・ブラケットよりセンサをホルダごと取り外した後,ホルダからセ
ンサ Ass'y を取り外すこと。
・センサ・ブラケット取り付けボルトは,センサに衝撃が加わらないように手締めの後,レンチを使用して
締め付けること。
(インパクトなどは使用しない)
ⓑ取り付け調整
(図− 43)
①センサ先端をセンサ・ブラケットよりセット寸法だけ
突出させる。
センサ・セット寸法
〔mm〕:5.5
図− 43 取り付け調整
− 27 −
U D
②ハブ Ass'y を取り付ける。センサ・ギャップはハブ取り付け後,ハブ側のパルス・ホイールがセンサ先端
に接触してセンサを押し込むことで,正規のクリアランスに自動的に調整される。
参考 ・センサは強い衝撃を与えると,コイルの断線などの内部の損傷を招く恐れがあるため,センサをハンマで
叩いたり,足まわり部品
(パルス・ホイールを含む)を強くぶつけたりしないこと。
・ハブの装着時には,ハブをこじらないように注意し,センサがパルス・ホイール面に垂直に接するように
取り付けること。
③ハブ・ベアリングのプリロード調整を行う。(プリロード調整については,整備要領書の各シャシの項を
参照すること)
参考 ハブ・ベアリングにガタがあるとセンサ・ギャップが変動し,車輪速センサ・エラーを発生する場合がある
ためプリロード調整は確実に行うこと。
④タイヤ Ass'y を取り付ける。
ⓒ車輪速センサ・ギャップの簡易確認(図− 44,45,46)
タイヤ及びハブ Ass'y を取り外さずにアクスルの内側から車輪速センサのギャップを確認することができる。
車輪速センサの出力電圧を測定して正常範囲でも各センサ間で大きな差がある場合などは,以下の方法でセ
ンサ・ギャップの確認を行う。
〈後輪:CG,CX 系車〉
CG 系車の後輪は簡易確認ができない。タイヤ及びハブ Ass'y を取り外せない場合は,下記方法でギャップ
確認を行うこと。
①上側のブレーキ・ダスト・カバー(取り付けボルト M10:3 本)を取り外す。上側のみの取り外しが困難な
場合は,下側のダスト・カバーも取り外す。
参考 ダスト・カバーを変形させないように注意し作業をすること。
②ブレーキ・ブラケットとブレーキ・シューの間からドライバなどで車速センサを静かに押す。
③確認後,ダスト・カバーを取り付ける。
図− 44 車輪速センサ・ギャップの簡易確認⑴
− 28 −
U D
〈後輪:CG,CX 系車以外〉
①車輪速センサ裏側のボルト(M6)を取り外す。リヤ・アクスル内側の車輪速センサ取り付け位置にあたる
ボルトとそのほかのボルトでは,二面幅が異なる。
車輪速センサ・ハーネスの貫通穴(ブレーキ・ブラケット)より上又は下 45°の位置にある M6 のボルト部
で確認する。
図− 45 車輪速センサ・ギャップの簡易確認⑵
②取り外した位置のボルト穴の先が車輪速センサ後端にあたるので,その部分を首下 110mm 位の丸棒など
で静かに押す。パルス・ホイールにつき当て感があればセンサ・ギャップは確保されている。
③取り外したボルトを確実に締め付ける。
(前輪)
バック・プレートに露出している車輪速センサを静か
に押す。
図− 46 車輪速センサ・ギャップの簡易確認⑶
④確認
センサ・ホルダ,センサ・ブラケットの交換を行った場合は,異常有無の確認作業を必ず行い,異常がな
いことを確認すること。
⒣ パルス・ホイール破損〔歯抜け〕
(点検記号:B − 5)
(図− 47)
点検 [6]
パルス・ホイールの点検
[5]
(点検記号:B − 7)で取り外した状態のハブ Ass'y にあるパルス・ホイールを目視で点検する。
① 点検 ②パルス・ホイールの歯のピッチ不良,凹みの有無,ライ
ニングやドラムの摩耗粉の有無を点検する。摩耗粉があ
れば除去する。
図− 47 パルス・ホイール破損〔歯抜け〕
③良否判断
・パルス・ホイールに異常がない場合は車輪速センサ本体に異常があると考えられるので車輪速センサを新
[5]
(点検記号:B − 7)を参照して取り付け調整を行う。
品と交換し, 点検 − 29 −
U D
・パルス・ホイールに異常がある場合はハブ Ass'y で新品と交換し, 点検 [5]
(点検記号:B − 7)を参照
して取り付け調整を行う。
④確認
パルス・ホイール(ハブ Ass'y)の交換を行った場合は,異常有無の確認作業を必ず行い,異常がないことを
確認すること。
参 考
1) サービス・データ
〈整備基準値〉
項 目
車輪速センサ
整備基準
抵抗値〔kΩ〕
1.0 ∼ 1.3
出力電圧〔mV−AC〕
100 以上
セット寸法〔mm〕
備 考
5.5
ABS モジュレータ・ソレノイド・バルブ〔Ω〕
13.9 ∼ 15.6
ディファレンシャル・ブレーキ・バルブ〔Ω〕
33 ∼ 37
ブレーキ・カット・マグネチック・バルブ〔Ω〕
33 ∼ 37
CD 車
ソレノイド・リレー・バルブ〔Ω〕
33 ∼ 37
EBS
ソレノイド・バルブ
〔Ω〕
プロポーショナル・リレー・バルブ
圧力センサ〔V〕
33 ∼ 37
d−9∼d−3
5
d−6∼d−3
21.6 ∼ 28.8
b − 13 ∼ d − 3
21.6 ∼ 28.8
b − 14 ∼ d − 3
0.4 ∼ 0.6
ソレノイド・バルブ〔Ω〕
トレーラ・コントロール・バルブ
圧力センサ〔V〕
EBS
0.4 ∼ 0.6
コントロール・ユニット電源電圧〔V〕
21.6 ∼ 28.8
UDSC コントロール・ユニット,SAC 供給電圧〔V〕
20.6 ∼ 28.8
SAS 供給電圧
〔V〕
9 ∼ 16
− 30 −
EBS:トラクタ車
UDSC 付き車
U D
2) 配置図
〈キャブ室内ユニット〉
− 31 −
U D
3) 車外ユニット
〈CV,CG 車以外〉
− 32 −
U D
4) 回路図
〈EBS〉
− 33 −