道産乳由来の有用微生物利用技術 ―プロピオン酸菌を利用した新規乎L

平成 15年 度事業報告 。平成 16年 度事業計画 試 験研究 3
道 産 乳 由来 の 有 用微 生物 利 用 技術
―プ ロピオン酸菌を利用 した新規乎L 製品の開発 ―
(H15)
食 品開発 部畜産食 品科 川 上誠 阿 部茂
応用技術部機 能 開発科 渡 邊治
研究 の 目的 と概要
北海道 は国内有数 の酪農地域 であ り、 これ に伴 い地域 の特産 品である乳製 品 の生
産 も多 い。 しか し、道 内の小 規模 乳業 メー カー では製 品開発基盤 が脆弱 であ り、製
造 され る乳製 品 の種類 も一 部 の ものに偏 りがちである。 このため、新規乳製 品 の 開
発 が 中小 の平L業メー カ ー か ら要望 されて い る。 と りわけ、 ヨー グル ト、 チ ー ズ製造
に使 用 され るス ター ター (乳酸菌 な ど平Lを発酵 させ るための種菌)は 欧州 な どか ら
の輸入 品に依存 してい るため、北海道 地域 に根 ざ した乎L業用 ス ター ター 開発 の要望
や相談が道 内の企 業 か ら寄せ られて い る。
プ ロピオ ン酸菌はチ ー ズのス ター ター な どに利用 され る有用微生物 のひ とつ であ
り、 ビフ ィズス菌増殖促 進機能 な どの保健機能 が知 られ てい る。 しか し、 プ ロピオ
ン酸菌 を利用 した 乳製 品は スイ スのエ メンタール チー ズ な どに限定 されてお り、 ま
た 、1年 以 上の長期 間 の熟成 が必 要な ことか ら国内で の利 用例 は少 な い。
本研究では道 内の乳素材 に由来す るプ ロピオ ン酸菌な ど有用微 生物 を分離、選抜
し、 これ を利 用 した新規発酵乳、 ヨー グル ト、 ナチ ュ ラル チ ー ズ な どの 開発 を検討
した。
予定 され る成果 】
【
・北海道産乳 を利 用 した 高付加価値製 品開発 の促進
試験研究 の方法
(1)酸 生成菌 の分離お よび培養
北海道 内 の生 乳、チー ズ 7種 よ り GYP白 亜寒天培地 を用 いて酸 生成菌 を分離 し
た。分離株 は 16SrDNAの 『末端約 500bpの 塩基配列 を決定 し、デ ー ターベ ー ス と
照合す ることに よつて 同定 した。プ ロピオ ン酸菌分離菌株 はブ ドウ糖 ペ プ トン培地、
乳酸ペ プ トン培 地 、脱脂乳培 地 を用 いて培養 した。
(2)ビ フ ィズス菌 の培養
分離菌株 を乳酸 ペ プ トン培地で 35℃ ,72時 間培養 後、培養 上 清 を 0.22μmの フ
ィル ター でろ過 してプ ロピオ ン酸菌培養 上清 を得 た。 乳糖 ペ プ トン培 地及 び乳糖 ペ
″um
プ トン培 地 に プ ロ ピオ ン酸菌 上 清 を 20%添 加 した 培 地 を用 い Bndθ ゎaαθ
鰤 ごLtt NBRC100015を 35℃ 、24時 間嫌気培養 した。ビフ ィズス菌 の菌数 は TOS
プ ロピオ ン酸寒天培地 を用 いて計測 した。
(3)発 酵乳 の試作
発酵乳 は 10%滅 菌脱脂 乳 に分離 したプ ロピオ ン酸菌培養液 を 2%添 加 し、35℃、
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平成 15年度事業報告 。平成 16年度事業計画 試 験研究 3
8時 間 の発酵 を行 い試作 品 とした。 さらに、発酵 後 カ ー ドを粉砕 し各種糖液 を添加
す る ことによつて ドリンクタイプ の発酵乳製 品を試 作 した。
実験結果
(1)プ ロピオ ン酸菌 の分離
北海道 内 の生 乳、チー ズ 7種 よ り GYP白
亜寒天 培 地 を用 い て分離 した 酸生成
菌 208株 か らプ ロ ピオ ン酸菌 と推定 され る短拝菌 5株 (PFl∼ PF 5)を 分離 した。
16SrDNA『 末 端 約 500bpの 塩 基 配 列 の 結 果 か ら分 離 菌 株 は プ ロ ピ オ ン 酸 菌
“めa“α力盟 FFeだ“先燿Iの
物
近縁種 と推定 した。
分離菌株 はブ ドウ糖 ペ プ トン培地 での発育は遅 かったが 、炭素源 として 乳酸 を
用 いたペ プ トン培 地では急速 に生 育 し、 プ ロピォ ン酸、 二 酸化炭素等 を生 成 した。
また 、脱脂乳培地 では L¨茅L酸を生成 す ることが明 らかになった。 これ らの こ とか
ら分離菌株 はナチ ュ ラル チー ズ 、発酵乳 へ の利用 が期待 され る。
(2)ビ フ ィズス菌増殖能 の検索
B壼 姉 aαe」i― 鰤 ご囮 NBRC100015の
培養結果 を表 に示す 。分離株 PF 2の
培養 上清 を添加 した培 地で ビフ ィズス菌 の増殖 が認 め られた。
(3)発 酵乳 の試作
分離菌株 PF2を 用 いた発酵乳は培養 8時 間後 に p H4.5、乳酸酸度 0.9と な り
弱 いカー ドを形成 した(図)。試 作 され た発酵乳 は、通常 の発酵乳 に比 べ 酸 味が低
くフ レー バ ー もマ イ ル ドな製 品 とな った。試作 した発酵乳 を 5℃ で 1週 間保存 じ
ていて も酸味 の上 昇、ガ スの発生 は認 め られなか った。 ドリンク タイプ の試 作品
ではシ ョ糖 、イ ソマル トオ リゴ糖 の添加 品が良好 な フ レー バ ー を示 した。
乳糖ペ プ トン培地
乳糖ペ プ トン培地
十PF2培養上清
4
1.6x104
培養 時間 (時 間)
ロ プロピオン酸 菌発酵乳pH交 化
本研究は プ ロピオ ン酸菌 の機 能性検索、乳製 品へ の利 用、実用化 を 目指 し来 年度
よ り重′
点領域特 別研 究 「
道産食材 の機 能性 を活 か した 新規加 工食 品 の 開発 」 へ発展
させ る予定である。
4 要
約
北海道 内 の乳素材 よ り乳製 品に利用可能 なプ ロ ピオ ン酸、乳酸な どを生成す るプ
ロピオ ン酸菌 を分離 した。 当該 プ ロピオ ン酸菌 の上 清 を添加す るこ とによ リビフ ィ
ズス菌 の増殖 が認 め られた。
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