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ケースで学ぶ ビジネス計数コース <基本編>
第 2 章 生産活動の数字を読む
2-1 生産能力を見る
「生産能力」とは、1日当たりで生産することのできる「良品」の最大数のことを表している。「良品」とは、
生産された全製品の中から不良品を除いたもので、最終的に顧客に提供できる製品のことである。家電・パソコン・
自動車といった機械系製品の場合には、「生産能力が1日あたり 100 個」のように、個数ベースで生産能力を示す
ことができる。
生産能力の概念は、公式のように、
「歩留率」「生産速度」「正味操業時間率」「操業時間」という4つの
要因に分解することができる。
「歩留(ぶどまり)率」は、良品生産量を総生産量で割った数字である。
「良品生産量」は良品の個数、
「総生産量」
とは最大生産可能な製品の総個数を表しているので、歩留率は「良品率」と言い換えることができる。
「生産速度」とは、正味の作業時間1単位当たりで生産できる製品の量で、
「正味操業時間率」とは、故障・メン
テナンスなどによって機械が停止している時間(ダウンタイム)や段取り替えの時間を除いた、正味の作業時間の
割合である。生産能力を拡大するには、これら4つの要因のいずれか、
あるいはすべてが大きくなればよいのである。
この公式を使えば、どのような理由で生産能力が向上したのか、あるいは低下したのかを分析することができる。
具体的な数値例で考えてみよう。表は、一昨年と昨年の A 社工場の生産能力に関する数値をまとめたものである。
これをみると、生産能力が 1000 台から 2000 台に飛躍的に向上したことがわかる。
その原因を探るには、公式にしたがって4つの要因に分解し、一昨年と昨年を比較してみればよい。すなわち、
このケースでは、歩留率と操業時間はほとんど変化ないものの、生産速度と正味操業時間率が飛躍的に拡大したこ
とがその原因だということが理解できる。
生産能力の公式:
1日当たり良品数 =
良品生産量(個)
総生産量(個)
×
総生産量(個)
正味操業時間(時)
×
正味操業時間(時)
操業時間(時)
× 操業時間(時)
= 歩留率(%)× 生産速度(個)× 正味操業時間率(%)× 操業時間(時)
■生産能力
生産能力(台) 良品生産量(台) 総生産量(台)
正味操業時間
操業時間
一昨年
1000
1000
10000
1500
2500
昨年
2000
2000
20000
2500
2500
■要因分解
一昨年
昨年
生産能力(台)
歩留率(%)
生産速度(台) 正味操業時間率(%) 操業時間
1000
10.0%
6.67
60.0%
2000
10.0%
1 8.00
100.0%
↓
↓
↓
↓
2500
©2003 JMAM
2500
↓
= 歩留率(%)× 生産速度(個)× 正味操業時間率(%)× 操業時間(時)
ケースで学ぶ ビジネス計数コース < 基本編 >
第 2 章 生産活動の数字を読む
2-1
生産能力を見る
■生産能力
生産能力(台) 良品生産量(台) 総生産量(台)
正味操業時間
操業時間
一昨年
1000
1000
10000
1500
2500
昨年
2000
2000
20000
2500
2500
■要因分解
生産能力(台)
歩留率(%)
生産速度(台) 正味操業時間率(%) 操業時間
一昨年
1000
10.0%
6.67
60.0%
2500
昨年
2000
10.0%
8.00
100.0%
2500
↓
↓
↓
↓
↓
2倍
(変化なし)
(向上)
(向上)
(変化なし)
覚えておきたい重要用語集
●正味操業時間
操業時間から、機械が停止している時間や段取りの時間を除いた、実際に
生産している作業時間。正味操業時間を操業時間で割ったものを「正味操
業時間率」という。
●生産速度
正味作業時間1単位当たりで生産できる製品の量。総生産量を正味操業時
間で割ったもの。
●生産能力
1日当たりで生産することのできる「良品」の最大数のこと。
●歩留率
総生産量に対する良品生産量の比率。比率が高いほど、不良品が少ない。
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