Vol. 11 2006年 3月 (PDF 530KB

ABC 野外教育センター
代表理事
松本睦美
「絶対無理から絶対できる」へと変わる子供たちの輝く目。「大丈夫」と支えあう手、
様々な課題に楽しそうにチャレンジしていく姿、、、2005年も ABC のプログラムを
通じて、多くの子供たちの活きいきした笑顔に会いました。
ABC 野外教育センターも設立から今年(2006 年)で、5年目を向かえますが、こうし
た子供たちの姿に当センターは支えられてきました。
これまで、少しずつ子供たちから大人までとプログラム実施対象の枠が
広がり、社会教育、企業のメセナやスポーツ、ボランティア活動などに
携わる様々なグループの皆様とプログラムを通じて、お互いに多くのこ
とを学びあう機会となりました。
地域で子供たちを見守り育てるため
のコミュニティづくり、親と子、家庭から学校、地域社会においてのコ
ミュニケーションの基盤づくりなどに活用されている方々からの、フィードバックをいただきなが
ら、今後もより充実し、実践するためのプログラムづくりを行なって参ります。
私たちは色々な思いを持っています。そして、ひとりではできないことも力を
あわせればできることも頭ではわかっています。では、実際にどうするの?
そんな実践のためのヒントや気付き、きっかけ作りのためのプログラムを多く
の人々へ提供していきたいと思います。
「思いを形に」は今年の大きなテー
マです。
これからも、「人」
そして、「前向きな思い」を基本に、これまで培ってきた、皆様との関係を大
切に育てていきたいと思います。 そして、今年も、 “Let’s
challenge
A(アドベンチャー:冒険心を持って)
、
B(バランス:心と身体、環境)
、
C(チャレンジ&Fun:チャレンジは楽しい)>
ABC!”
1月後半2週間ほどインドを旅してきました。目的はもちろん食べるこ
と!今回レストランはもちろん家庭料理も存分に味わってきました。一
般にインド料理は辛いっていうイメージだけど、家庭ではさほどスパイ
スは使わないので毎日おいしくいただきました。
さて、インドを旅している中、現地の子供たちの現状に触れる機会があ
りましたのでちょっとご報告します。
まず日本では見ることがない子供たちの就労。民族衣装サリーで有名な村では細か
い手仕事ができる子どもを家計のためと働かせているところもあるとか。道端でお
金になりそうなくずを拾い集める子どもたち。観光地で物売りをする子どもたち。
泣きそうな顔で行きかう人々に物乞いをする子どもたち。テレビや雑誌では見てい
た現状、だけど目の当たりにしたこのショックの大きさは想像を絶するものだった
…。
聞いた話によると、子どもたちの就学率は都市部ではほぼ 100%に近いらし
いが、農村部にいたっては半分以下。それはパブリックスクールの質、先
生の質、一単位のクラスの大きさ(ひどいところは先生1対生徒 100 にも
なるらしい)、家庭の事情、学校へ行く習慣がついていないなど、様々な理
由で子どもたちが小学校からドロップアウトするという。もちろん識字率
が低下するためその後の進学や就職にも困難を伴います。こんな悪循環が
幼い子どもたちの中で起きているのはかなり問題です。
そんな都市部から離れた小さな村では寺子屋のような学校が存在します。
訪れたこの学校は約30年前に自分の子どもと一緒に、パブリックスクールへ行かない近所の子どもたちを
集め始まったという。生きる力を育てるというドイツのシュタイナー教育をベースに、子供たちの可能性を
引き出す工夫を凝らしながら授業が行なわれ、学校というよりは子どもたちが自由に夢を見ることができる
オアシスといった雰囲気。
色とりどりの花々が咲き、大きな樹木が木陰をつくり、それに囲まれ点在する教室。
そこで私と友人二人は歌で温かく歓迎されました。学ぶことの楽しさや喜びを一人
ひとりの目から感じとることのできた瞬間でもありました。
それぞれの国のおかれている立場からみると比較はできないけれど、一人ひとり平
等に学ぶ機会を与えられている日本の子どもたち。無気力が問われる近年、満たさ
れすぎもかなり問題なのでは…。
私のブログにもインドの旅行記を載せてます
のでアクセスしてね♪
サンシャインファームの風
http://sunshinefarm.blog33.fc2.com/
オーストラリアは広大な国土を持っています。たくさんの森林があるように錯
覚していましたが、実は、緑豊かな場所は、海岸付近のわずかな土地に過ぎない
ようで、2000年におけるオーストラリアの国土における森林の割合は20.
1%だそうです。特に乾燥する季節は、ユーカリの木が風でこすれあっただけで
も自然発火する森林火災が多いそうで、しかし、森林が減っているのはこの森林
火災だけが原因ではないのは明白のようです。
我々のマイト(オーストラリアで「友達」の意味)、アンディの住むタスマニア島は緑豊かな島です。
植生はどちらかといえば、オーストラリア本土よりも緯度的に言ってニュージーランドに良く似ていま
す。なので Tom さんは違和感を、Mickey は懐かしさを感じた風景でした。
タスマニアではそんなに時間がなかったので、とりあえず近場でアンディーお薦めの「Tahune Air
Walk」(タフーン エア ウォークと読むそうな)に行ってみることとなりました。タスマニアの州都で
アンディーのホームタウンのホバートから車で約1時間半くらい南西のヒューオンビルという町にある、
豊かなタスマニアの原生林の中をゆったり?歩くことが出来る施設です。ただし、地上30m∼40m
の空中にある遊歩道ですが・・・。(高いし。。。しかも一番のメインのところは支えもなく揺れるの
よ!)
とにかく、長い年月かかって地上60mから80mくらいに伸びた大きな大きなユーカリの木が、森
林の中にドンドンと立っています。いやぁ、すごいなぁ。きっと環境を大切にしてきた結果だなぁ。と
感心しながら、帰りました。
帰ってアンディに感想を話すと、「ホントは、あの遊歩道、今の高さより高くするはずだったんだけど、
あれ以上高くすると、山の向こう側で伐採しているのが見えてしまうから、あの高さにしかならなかっ
たんだ」と。
え?環境保全をしているって思ったけど、伐採?
伐採の歴史など道々知ることが出来たけど、もう過去
のものかと思ってた。そういえば、帰る途中に森に向か
う大きなトラックとすれ違ったっけ。
よくよく調べてみると、タスマニア州の住民が守ろう
としているにもかかわらず(タウンプランニングで明記
されるにもかかわらず)、それを半ば無視した形で伐採業
者が原生林を伐採し海外に輸出しているようで、原生林
の破壊が問題になっているようです。
その多くは紙を作るために輸出されるようで−何百年かかけて育ったタスマニアの木たちが伐採され
て、運ばれ・・・鼻水をかむ「シュン」という音と共に消えていく。極端な表現の仕方だけど、その多く
のタスマニアの木の行き先の多くが、実は日本であるということはあまり知られていないようです。
わざわざニュージーランドやオーストラリアの木々を伐採して、広い太平洋を渡って運ばなくても、日
本には周りを見てもこんなにたくさん木があるのに(ただでさえ春に花粉症で苦しむ人が増えているの
で、切り倒したい人はたくさんいるハズ)
、それを使えばいいじゃん。と思うんだけど、そうはいかない
んでしょうね。
とにかく、色々な申し入れにより、最近では、タスマニアでも原生林を伐採するのではなく、植林を
した森林での伐採ということをすすめるという動きがあるようで
すが、受け入れる側の日本企業は「受け入れている木材が原生林
のものであるとは認識していない」としているところがほとんど
らしいです。
どのくらいの木々が失われていったんだろう。特にネイティブ
の木々や長い年月をかけて育った木々が。その破壊に日本が手を
貸しているのね。そう思うと切なくなります。
皆さんも鼻水が出てティッシュを一枚シュッと取った時、その
一枚のためになくなる自然があるんだなぁ。ということ気にとめ
ておいて頂ければ、このレポートも書いた甲斐があったもんです。 トムさんと木の大きさを比べてみてください
『冒険教育』の考え方を、いかに継続的に提供していくか!ということで地域
での人材育成の事業に『地域で可能な循環する人材育成のシステムづくり』と
して提案、実施してきました。今回は実施した経緯と感想です。
さて、13∼16歳は人間としての自己概念が形成される大切な時期とされて
います。ですから、この時期での体験は、本来、人間としての魅力的な資質を
身につけるための大切なものです。青少年が人間的な係わり合いのもどかしさを肌で感じながら、その
為に必要なコミュニケーションや問題解決などの実践的なスキルを身に付けていく体験をすることは、
その後の成長過程に大きな効果をもたらすことに違いありません。
しかしながら、そうした体験を、1回や 2 回しただけで、果たして身につくでしょうか?
昨年実施した年間にわたるプログラムでは、小さな体験(成功体験)とチャレンジを繰り返しながら、
学びの先に明確な目標を持たせること、そして、繰り返し行なうための「楽しさ(FUN)」という要素が
必要でした。子供たちにとって常に、
『わくわくするもの』
『ドキドキするもの』『本当に自分ができるの
だろうか』『でもやってみたい』、そんな、インパクトあるものが持続するためのエネルギーとなるから
です。それらを総体的にデザインしたものが、「オーストラリアでの野外体験とホームステイ」プログラ
ムとなりました。
地域からのアクション!
5 月上旬、それぞれ違う地域や学校から
参加
者が一同に会し、第 1 回目のプログラムスタートです。知らないもの同士、
お互いに不安そうな表情をした、子供たち、そして、専任ファシリテータ
ーのジョアンと子供たちとの出会いのスタートでもありました。
プログラムの進行とあわせて、緊張や心配で、閉じこもっていた生徒達の
殻が少しずつ破れ、相手への声かけなどが少しずつ出てきます。それでも、
グループからチームへの移行はなかなか順調には行きません。うまくいっ
たり、立ち止まったり、、そんな繰り返しが続きます。『本当にチームにな
るんだろうか?』とそれぞれが不安を覚えたといいます。宿泊合宿を加えた、事前の 3 ヶ月間のプログ
ラム、そして海外現地でのプログラムの前半まで、生徒同士の中にどうしても壊せない壁が残っていま
した。
泣いたり、悩んだりした生徒たち、現地でのプログラム中盤まできてはじめて、自身がその壁をくずそ
うと話し合い、心をひとつにしました。
夜遅くまで焚き火を囲んで、それぞれがばらばらに抱いていた思いを、全て出す生徒たち、事前研修で
学んだことを応用しはじめた瞬間です。
それまでは、抱えている問題は、個々のものでありチームの問題で
はなかったからです。
みんなが抱えている個々の問題を認め合うこと、そして、それを共
有しあうという安心感、お互いの信頼、人とのかかわり、それが、
チームの問題を解決するキーだったことに気づいていく生徒達。
現地プログラム後半では、生徒たちは、一人一人が現地の人とかか
わっていくとう関係に移り、言葉も生活習慣もまったく違う現地の家庭での生活に入りました。その頃
には、習慣の違いやコミュニケーションギャップからくる様々な問題にも、とまどったり困ったりしな
がらも、それに正面から向かっていくという姿を見せていきます。そして、それを楽しんでいるように
さえ見える子供たちの姿はまぶしくカッコイイとさえ感じました。
いままで個々の中で、内側に向いていたエネルギーが、外へ外へと向かっていく、これこそが好転のス
パイラルです。
現地でのプログラム最終日は、それぞれの家族との別れを惜しむ様子は、ちょっとドラマチックで思わ
ずもらい泣きしそうなほどでした。
帰国後は、研修全体を通じての振り返りです。そして、学んだことを人に伝える《プレゼンテーション
スキル》を身につけるステージです。クラブや塾で忙しい中学生は、自主的に時間を作って確かな成果
を作ってくれました。
最後の課題として、次年度の後輩に対して、リーダーとして、そして、アドバ
イザーとしての活躍を期待しています。
5 月始めに集まったときの、バラバラの「グループ(集団)」から、「チーム」へと大きく成長した、生
徒たちに大きなエールを贈りたいとおもいます。そして、ABC 野外教育センターの年間をかけた、冒険
教育導入のプログラムの成果に心からの評価を送りたいと思います。
プログラムのスタートから終了まで、このプログラム実施に立会い、そして、海外研修20日間を同行
したものとして、このプログラムが翌年へ向けて継続的な次のステップを踏んでいくことを願ってやみ
ません。