畦畔,法面改良による雑草,漏水抑制効果 -間隙分布に対する廃石膏,消石灰の影響Effect of weed and water leakage control by improvement of levee and slope. - The influence of waste gypsum and slaked lime on the pore distribution.小川 大貴 1・川谷 真輝 2・佐藤 泰一郎 3 1 高知大学大学院農学専攻・2 東和スポーツ施設株式会社・3 高知大学農学部 要旨(Abstract);畦畔,法面の改良材として廃石膏,消石灰を混入したときの,間隙分布の変化 が雑草繁茂や漏水抑制に与える影響を検討した.改良材の混入により,粗間隙率は減少し,細間 隙率は増加した.間隙は土粒子や水の移動空間である.そのため,改良材の混入により,土壌硬 度が増加し,飽和透水係数が減少した.改良材を用いて,雑草繁茂と漏水の抑制が可能である. テーマ:土壌物理研究の最前線 Trend in Soil Physics キーワード:間隙分布,廃石膏,消石灰,土壌硬度,飽和透水係数 Key words: pore distribution, waste gypsum, slaked lime, soil hardness, saturated hydraulic conductivity 1.はじめに 3.雑草繁茂と漏水抑制に間隙が与える影響 水田畦畔や法面では,雑草繁茂や漏水の防止 真砂土に対する改良材混入は土壌硬度に影 のため,適切な管理が必要である.しかし,こ 響を与えた(Fig.1).真砂土の土壌硬度は, れらの管理は,労働負担を軽減するために,省 1680-1750kg m-3 で,21-24mm だった.改良 力化が求められている.これまで,廃石膏,消 材をそれぞれ 5wt.%混入させると硬度が顕著 石灰を用いた地盤改良(亀井ら,2007)や,ア に増加した.しかし,混入率,乾燥密度の増加 ルカリ土壌改良(飯野ら,1996)が研究されて に伴う土壌硬度比の変化は,廃石膏では減少傾 きた.そこで,本研究では畦畔や法面における 向,消石灰では一定であった.これは,粒径の 廃石膏,消石灰の混入による間隙分布の変化が, 細かな改良材の混入により粗間隙率が減少し, 雑草繁茂と漏水抑制に与える影響を調べた. 細間隙率が増加したことが影響している 2.材料と実験方法 (Table.1) .間隙が小さくなったことで,土粒 実験は畦畔,法面土をモデル化し,室内で行 子の移動が制限され,土壌の抵抗が増えたこと った.モデル土には,真砂土に,畦畔・法面改 で硬度が増加した.また,消石灰の硬度比は廃 良材として廃石膏,消石灰を混入した.混入率, 石膏よりも大きくなった.消石灰は土粒子との 乾燥密度を調整し,充填試料を作成した 間でケイ酸カルシウム水和物などを生成し,土 (Table.1) .また,試料の水分は pF3.0 とした. 粒子間を固定し,硬化することが知られている 試料の間隙は,土壌間隙を毛細管と仮定し, (小関ら,2005) .消石灰の硬度比が大きくな 管径と毛細管上昇高の関係から,土壌水分ポテ ったこと,混入率と乾燥密度の増加による変化 ンシャルを当量直径とした(土壌物理測定法, がなかったことは,この硬化が影響していると 1982) .本研究では粗間隙を 0.006-1.0mm,細 考えられる.また,硬度の増加は,根の伸長に 間隙を 0.003 - 0.006mm とし,間隙量で除し 対する抵抗の増加を,間隙径が小さくなったこ たものを粗間隙率,細間隙率とした. とは,根の伸長の空間が減少したことを示す. 雑草繁茂の抑制は山中式土壌硬度,漏水抑制 以上より,改良材の混入によって,雑草繁茂の は変水位法による飽和透水係数から求め,間隙 抑制が期待でき,混入には消石灰が適している. 分布との関係を検討した.土壌硬度は,真砂土 飽和透水係数は,改良材混入率と乾燥密度の の値を基準として, “土壌硬度比”で表した. 増加の影響を受け,減少傾向にあった(Fig.2). また,廃石膏の飽和透水係数が消石灰よりも低 ρ d= 1680 kg m-3 1.3 ρ d= 1700 kg m-3 1.3 い.透水係数の減少も間隙が影響している.土 1.2 さくなったことで,水の移動が妨げられ,透水 係数が減少したと考えられる.一方,消石灰で は,硬化により粗間隙率が廃石膏より多くなる. そのため改良材混入効果は,20wt.%で廃石膏 1.2 土壌硬度比 土壌硬度比 Sh 土壌硬度比 壌の間隙は水の移動空間であるため,間隙が小 1.1 1.0 廃石膏 Sh=-0.014m+1.2 0.9 0.9 -3 ρ d= 1730 kg m ρ d= 1750 kg m-3 1.3 0 5 10 15 20 25 1.3 0 5 10 15 20 25 混入量 ( % ) 混入量 ( % ) 1.2 4.まとめ 本研究は,畦畔・法面改良として廃石膏,消 土壌硬度比 土壌硬度比 制が期待でき,混入には廃石膏が適している. 1.1 1.0 混入により,粗間隙が増加する.そのため,土 1.1 1.0 廃石膏 Sh=-0.012m+1.2 0.9 0 石灰を真砂土に混入したときの雑草繁茂と漏 水の抑制効果について検討を行った.改良材の 1.0 廃石膏 Sh=-0.016m+1.3 1.2 が消石灰より大きくなった.よって,漏水の抑 1.1 廃石膏 Sh=-0.011m+1.2 0.9 5 10 15 20 25 0 5 10 15 20 25 混入量 混入量 ( % ) 混入率 m ( wt.% ) (%) ●:廃石膏 ○:消石灰 Fig. 1 改良材の混入による土壌硬度の変化 Change of soil hardness by improvement material. ρ d =1680 kg m-3 10-2 0.0 灰は,硬化により硬度が維持され,粗間隙が廃 0.0 10-3 0.0 消石灰 Ks=10-0.10x-2.4 0.0 石膏より大きくなったため,透水性の低下が少 0.0 10-4 0.0 0.0 10-5 0.0 飽和透水係数 Ks ( cm s-1 ) 壌硬度が増加し,透水性が低下する.特に消石 ない.このことから,雑草繁茂の抑制には消石 灰,漏水の抑制には廃石膏の混入が適している. 引用文献 飯野福哉,定方正毅,青木正則,新田義孝,松本聰(1997) : 脱硫装置からの石膏と石炭灰を用いたアルカリ土壌の改 良,日本エネルギー学会誌,76:119-124 小関宣裕,桐山栄,木戸健二(2005) :石灰および石灰複合系 固化材による地盤改良,Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan,12:512-515 亀井健史,加藤孝明,珠玖隆行(2007) :半水石膏の地盤改材 としての有効利用-廃石膏ボードの再利用-,地盤工学ジ ャーナル Vol. 2,No. 3:245-252 土壌物理性測定法委員会偏(1982):土壌物理性測定法: 83-90,養賢堂 0.0 10-6 0.0 廃石膏 Ks=10-0.11m-3.1 ρ d= 1700 kg m-3 消石灰 Ks=10-0.12x-2.6 0.0 廃石膏 Ks=10-0.13m-3.0 0.0 ρ d= 1750 kg m-3 ρ d= 1730 kg m-3 10-20 5 10 15 20 25 0.0 0.0 0 5 10 15 20 25 消石灰 消石灰 Ks=10-0.13x-2.7 Ks=10-0.14x-3.2 0.0 0.0 10-3 0.0 10-4 0.0 0.0 10-5 0.0 0.0 0.0 廃石膏 10-6 廃石膏 Ks=10-0.14m-3.0 Ks=10-0.16m-3.0 0.0 0.0 0 5 10 15 20 25 0 5 10 15 20 25 混入率 m ( wt.% ) ●:廃石膏 ○:消石灰 Fig.2 改良材の混入による飽和透水係数の減少 Decrease of saturated hydraulic conductivity by improvement material. Table.1 試料の条件と間隙分布 Sample conditions and pore distribution 試料 真砂土 廃石膏 5wt.% 廃石膏 10wt.% 廃石膏 20wt.% 乾燥密度 粗間隙率 細間隙率 その他 -3 3 -3 3 -3 3 -3 (kg m ) (m m ) (m m ) (m m ) 1680 1700 1730 1750 1680 1700 1730 1750 1680 1700 1730 1750 1680 1700 1730 1750 0.67 0.63 0.62 0.61 0.54 0.53 0.49 0.50 0.39 0.38 0.37 0.38 0.13 0.13 0.13 0.11 0.00 0.01 0.02 0.02 0.04 0.04 0.04 0.05 0.07 0.08 0.08 0.08 0.07 0.07 0.08 0.07 0.33 0.36 0.37 0.37 0.41 0.43 0.44 0.45 0.59 0.61 0.62 0.62 0.80 0.80 0.80 0.83 試料 消石灰 5wt.% 消石灰 10wt.% 消石灰 20wt.% 乾燥密度 粗間隙率 細間隙率 その他 -3 3 -3 3 -3 3 -3 (kg m ) (m m ) (m m ) (m m ) 1680 1700 1730 1750 1680 1700 1730 1750 1680 1700 1730 1750 0.39 0.37 0.33 0.31 0.41 0.39 0.33 0.32 0.27 0.26 0.24 0.21 0.05 0.06 0.06 0.07 0.06 0.04 0.07 0.04 0.05 0.06 0.06 0.05 0.55 0.57 0.57 0.57 0.53 0.57 0.58 0.59 0.67 0.68 0.71 0.74
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