NSTだより第29号 - 茨城県立こども病院

第 29 号
茨城県立こども病院NST広報誌
2015 年 10 月 31 日発行
企画・編集
NST編集委員
発行責任者
連 利博(副院長)
8 月から新たにホリグチ先生とイズミさんが加わりました。よろしくお願いします。
この度、NST に参加させていただくことになりました栄養科のイズミ
です。
実は、メンバーとして活動させていただくのは今回で 2 度目になりま
す。
前回は、2013 年の夏まで約 6 年の間栄養科に勤務し NST 活動に関
わらせいただき、その後は今年の 5 月までの約 2 年間、米国ワシント
ン DC にて生活しておりました。外国での生活は、さまざまな場面で日
本との違いを感じることがありましたが、栄養面においては、日本では
処方が必要な栄養剤が、近所のスーパーで誰でも購入できる状態でペットボトルや粉ミルクのような粉
末状で販売されていて非常に驚いたことが一番印象に残っています。短い期間でしたが、様々な経験を
した日々でした。
市販されていて驚き
水で薄める乳児用ミル
クもありました
臨床検査科 みやざき 峰幸
NST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム)において、臨床検査の仕事は生化学検査値による
データに基づいて、客観的栄養評価(ODA:Objective Data Assessment)に関わります。
今回はODAに用いられる生化学検査項目について、記したいと思いますが、その前に生化学検査とは
何かについて、簡単に説明したいと思います。
生化学検査とは、血液中の赤血球・白血球などの有形成分と、それ以外の血清という無形成分に遠心
分離機を用いて分離し、血清内の成分を解析数値化し、体内の健康状態を調べる検査です。
それではODAに有用な生化学検査項目を、静脈経腸栄養ハンドブック(日本静脈経腸栄養学会編集)
を基に、血清中タンパク検査項目について記します。
血清アルブミン
トランスフェリン
プレアルブミン
レチノール結合タンパク
血清中で最も含有量が多いタンパク、機能は生体内における浸透圧の保
持・物質(金属イオン・ビリルビン・胆汁酸 etc.)の輸送・アミノ酸の供給
源である。半減期(血中濃度が半減するまでの時間)20 日となっている。
低栄養状態で値が低下する。
肝臓で作られ、機能として体内の鉄の運搬に関わるタンパク、半減期7日
となっている。鉄欠乏性貧血で高値となり、タンパク欠乏性栄養障害で低
値となる。
肝臓で合成され、機能として甲状腺ホルモンの1つであるサイロキシンの
運搬に関与するタンパク、半減期は2日となっている。高カロリー輸液時
に高値となり、タンパク欠乏性栄養障害で低値となる。
肝臓で作られ、機能として、レチノール(ビタミンA)との結合運搬に関
わるタンパク、半減期は 0.5 日となっている。過栄養性脂肪肝で高値となり、
ビタミンA欠乏症・タンパク欠乏性栄養障害で低値となる。
トランスフェリン・プレアルブミン・レチノール結合タンパクは急性相タンパクと言われており、ア
ルブミンより半減期が短いため、短期間の栄養評価に有用な指標とされています。
今回記したのは、ODA に用いられる項目のほんの一部ですが、今後また機会が頂けたら、他の項目に
ついても紹介していきたいと思います。
帰国後、8 月にこども病院に復職させていただいてからは、毎日新しく学ぶことが沢山ありとても充
実していると同時に、まだまだ勉強しなければ!と、気の引き締まる思いでおります。これから NST
メンバーのみなさんと一緒に患者さんのサポートに努めてまいりたいと思いますので、よろしくお願い
いたします。
(栄養科 イズミ)
NST研修のご案内
11/12(木)
・26(木)の 2 日間、当院 NST では、県外から来院する NST の臨床実習生のための研修会を
開催する予定です。今回は特別に院内の職員なら誰でも自由に参加できる研修会とする予定です。NST
の活動を見学してみたい、栄養管理について勉強してみたいという方は是非ご参加ください。
研修会の詳細や参加申し込みは、経営企画課までご連絡ください。
NST 副リーダー 加藤かな江
先日、NST だよりに掲載するための記事を NST ミーティングで検討していると、メンバーから「以
前 NST だよりに掲載されていた NST 介入症例報告を取り上げてほしい」との意見がありました。
「確
かに最近は症例報告を掲載していないな…」と心の中で思いながらも実は「この症例にしよう」と
すぐさま思いつく症例がありませんでした。ここで誤解しないでいただきたいのですが、報告する
症例がないからと言って決して NST が活動をしてないという事では決してありません。
私見ではありますが、平成 19 年から始まった NST も今年で 8 年目、あえて NST が介入しなくても、
「体重増加不良にはマクトンオイルを追加してエネルギーをアップする」
「液体の栄養剤で下痢が起
きる場合はとろみをつける」「長期に栄養剤で栄養管理をする場合は微量栄養素の不足に注意する」
などなど NST ノウハウが院内に浸透してきているのではないかと思います。
NST という特別なチームがなくても院内の誰もが患児の栄養を考えることができるようになるこ
と、これこそ連リーダーの考える当院の NST 活動なのです。