愛知県海部郡蟹江町立須西小学校

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響き合える子
部活動を通して、関わり合い、学び合える子どもの育成を目指して
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愛知県海部郡蟹江町立須西小学校
教諭
1
岡 本 由 紀 子
はじめに
本校は、13学級、303名の中規模校である。愛知県西部、田畑や川に囲まれた比較的自然
の多い場所に位置している。昔からこの地に住んでいる人が多く、祖父母と同居している、また
は祖父母が近所に住んでいるという子どもが多い。地域行事も盛んで、平成24年には「須成祭」
が国の重要無形民俗文化財に指定された。このような地域で育った本校の子どもは、伸び伸びと
して素直である。
本校の金管バンド部は、4年生から6年生で構成されており、現在22名で活動している。隔
週で行われるクラブの時間の他に、2時間目終了後や清掃後の休み時間などでも練習を行ってい
る。また、陸上部やサッカー部、バスケットボール部が競技会前のみに活動する期間には、それ
らと合わせて16時40分まで練習を行っている。さらに、夏休みや冬休みなどには、午前中に
練習を行っている。限られた時間の中で技術を少しでも向上させるために、本校では、海部地区
吹奏楽連盟が主催する講習会や地域での行事に進んで参加している。様々な人と進んで関わり、
学び合うことで、技術の向上(音づくり)だけでなく、人づくりもできると考えている。そして、
それらを通して、人とも、音とも「響き合える子」を目指したい。
2
年間活動計画
ここでは、校内・地域・連盟主催の活動の3つにわけて述べる。
月
校内の活動
4月
5月
地域行事の活動
吹奏楽連盟主催の活動(開催場所)
藤丸桜祭りでの演奏披露
部活動発足
6月
管・打楽器講習会参加(須西小)
7月
マーチング講習会(七宝小)
9月
運動会
(開・閉会式の演奏)
10月
蟹江町文化祭での演奏披露
※来年度予定
11月
学習発表会
(高学年合唱の伴奏に参加)
※今年度は雨天中止
アンサンブル講習会参加(蟹北中)
アンサンブルコン
アンサンブルコンテスト
テスト演奏披露会
2月
(甚目寺中央公民館)
藤丸秋祭りでの演奏披露
12月
1月
ふれあいカーニバル参加
(甚目寺中央公民館)
蟹江町フェスティバル参加
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3
活動内容と考察
(1) 校内の活動
ア 日頃の練習の様子
限られた時間だからこそ、基礎練習を大切にしている。リーダー
が中心となり、メトロノームに合わせて呼吸を整える練習や、マウ
スピースでの練習、音階練習などを行っている。最近では、顧問が
行く前に自主的に始められていることが多く、意欲的に取り組む姿
が見られる。
今年度の曲目は、新入部員のために毎年取り入れている「かえる
【経験者がアドバイス】
の合唱」と「きらきら星」
、運動会で演奏するための「勝利をたた
える歌」「宇宙戦艦ヤマト」
「士官候補生」である。
イ 運動会
運動会では、開・閉会式の際に「ファンファーレ」
・
「入退場曲」
・
「勝利をたたえる歌」を演奏している。全校の子どもたちが金管バ
ンド部の演奏を聴くのは、毎年これが初めてとなる。低学年の子ど
もが歩きやすいよう、4拍子のはっきりとした曲を選んだり、だれ
もが知っている曲を選んだりしている。
【ファンファーレを演奏する姿】
ウ 合唱の伴奏に参加
本校の学習発表会は、毎年合唱から始まる。今年度は、高学年の
合唱曲「友達だから」で、トランペットとトロンボーン、ドラムセ
ットの伴奏を取り入れた。金管バンド部の子どもたちの中から希望
者を募り、休み時間を利用して練習を行った。初めはピアノ伴奏と
合わせるのに苦労したようだったが、指揮者を見て演奏することで
うまく合わせられるようになった。当日は、合唱を聴いた保護者や
低学年の子どもたちから好評で、伴奏に参加した金管バンド部の子
【高学年合唱での伴奏に参加】
たちも充実感を味わうことができたようであった。
エ アンサンブルコンテスト演奏披露会
アンサンブルコンテスト前日に、全校児童の前で演奏を披露している。金管バンド部の子ども
たちにとっては、本番で自分の力を出しきるための良い予行演習の機会となっている。寒い時期
である上に、あまり響かない体育館での発表となるため、マウスピースや楽器を暖めておくこと
が大切である。子どもたちはマウスピースを手で包んだり、ポケットに入れたり、楽器を抱えた
り、自分なりの様々な工夫をこらして、発表に臨んでいる。前日に発表することで、良い緊張感
をもって本番に臨むことができるようである。
(2) 地域行事の活動
ア 藤丸桜祭り・秋祭り
桜祭りは4月の第1土曜日、秋祭りは11月の第1土曜日に、校
区内にある藤丸第1公園で行われている。地域の方がたくさん集ま
るため、本校の金管バンド部を知ってもらえるとても良い機会とな
っている。また、6年生が中心となって、学校紹介をしたり、演奏
【藤丸秋祭りの演奏の様子】
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曲を紹介したりする機会があることも、子どもたちにとって良いことであると感じている。他に
も、蟹江北中学校吹奏楽部が小学生の後に演奏を行うため、子どもたちは中学生のすばらしい演
奏を間近で聴くことができ、「自分もこうなりたい」「こうやって演奏できるようになりたい」と
憧れを抱くことができる貴重な日となっている。
イ 蟹江町フェスティバル
蟹江町フェスティバルは、町内の小学校2校、中学校2校が参加
している。また、蟹江町に住んでいるもしくは勤務している方で構
成された「蟹江吹奏楽団」も参加しており、計5団体が出演してい
る。2月中旬に行われるこの行事は、6年生にとって最後の出演と
なる。4月から練習してきた曲をしっかりと演奏しようとする姿を
【6年生、最後の演奏】
毎年見ることができるので、顧問にとっては最も印象に残る行事と
なる。また、このフェスティバルも、子どもたちにとって、中学生
のマーチングを取り入れた演奏や「蟹江吹奏楽団」の演奏を聴くこ
とができ、音を合わせることに憧れを抱くことができる良い機会と
なっている。さらに、全体合奏として中学生や「蟹江吹奏楽団」の
方々と一緒に「さんぽ」を演奏することができる。一度しかできな
い貴重な演奏に参加することができ、子どもたちは満足そうである。
【蟹江吹奏楽団の演奏】
(3) 海部地区吹奏楽連盟主催の活動
ア 管・打楽器講習会
6月中旬に本校で開催される「管・打楽器講習会」
。毎年大好評
で多くの小学校が参加するため、昨年度より午前と午後の2部開催
となっている。トランペット、アルトホルン、トロンボーン、ユー
フォニウム・チューバ、打楽器と5つのコースに分かれており、6
年生を中心に参加している。それぞれに専門の外部講師を招き、楽
【トランペットコースの様子】
器の手入れ方法、構え方、練習している曲のアドバイスなど、様々
なことを学ぶことができる。子どもたちが普段意識していなかったことを、外部講師から丁寧に
教えてもらえることで、姿勢や音の出し方などを意識して練習に取り組む姿勢が見られる。また、
どの講師も非常におもしろく、興味を引きつける指導がしていただけるので、子どもたちが楽し
く講習を受けることができるのも魅力的である。各小学校の顧問も、基礎・基本から改めて学ぶ
ことができるのでとてもありがたいとアンケートに書いている。小学校顧問にとっても、この講
習会は実りあるものとなっていることがうかがえる。本校では、講習会後に子どもたちが進んで
楽器の手入れをするようになった。これは大変大きな成果であると言える。
イ ふれあいカーニバル
10月中旬に甚目寺中央公民館にて行われている「ふれあいカーニバル」
。毎年、運動会で演奏
した曲を披露するため、子どもたちは自信をもって参加している。そして、これまでに、学校紹
介や曲紹介をする機会を何度も体験してきているので、上手に司会進行ができるようになってい
る。また、全体合奏「さんぽ」を、ここでも演奏することができる。全参加校がひとつになって
演奏するのは、子どもたちにとってとても良い経験となる。ふれあいカーニバルの最後には、中
学生のゲスト演奏がある。
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今年度は、尾張地区大会でトップ通過を果たした大治中学校吹奏
楽部が、小学生に合わせた曲を演奏しただけでなく、様々な楽器を
一つ一つ丁寧に紹介してくれた。中には、小学生にとって、あまり
見る機会がない楽器も多く、集中して見ていた姿が印象に残った。
ここでも、中学生の演奏は小学生にとって憧れになり、中学生にと
っても、他人に聴いてもらえる良い経験になった。また、このよう
な機会を通して、中学生になったら吹奏楽部に入りたいと思う子ど
【他の学校との合同演奏】
もも出てくるため、小中連携の視点から見ても、良いことであった。
ウ アンサンブル講習会
12月中旬に行われる「アンサンブル講習会」は、他の活動と大きく違い中学校で開催されて
いる。アンサンブルコンテストに向けて、中学校顧問に指導をしていただける貴重な日である。
今年度は、大治中学校、佐織中学校、蟹江北中学校、暁中学校の4校で開催される。講習会は、
各チーム1時間と決められており、前半の30分は中学生が各パートに一人ずつついて、音や運
指、姿勢などを個別に確認してくれる。後半の30分は、中学校顧問が演奏を聴き、全体のバラ
ンスを整えたり、今後の練習方法などについてアドバイスをいただけたりする。
小学校顧問にとって、中学校顧問の指導を間近に見ることができる機会となるので、大変有意
義であると感じている。また、子どもたちにとっても、一人一人が中学生に優しく教えてもらえ
るので、いっそうやる気が出るようである。と同時に、中学生にとっても、どのように教えると
小学生が分かるのかを考えながら進められるため、とても勉強になるようである。特に、本校が
うかがう蟹江北中学校吹奏楽部には、本校の卒業生が多く在籍しているため、懐かしく、親しみ
やすいようである。何より、アンサンブル講習会に参加することで、この後の冬休みの練習は、
より内容の濃いものにすることができている。
エ アンサンブルコンテスト
各学校が最も目標にしている活動の一つである。各チーム10名
までで構成され、審査員がそれぞれのチームに対して5段階で評価
をしている。その合計数により、金・銀・銅と賞が与えられ、満点
を出したチームはさらに「グッドサウンド賞」がもらえるため、子
どもたちの意気込みもすごい。また、各審査員からチームごとに講
【アンサンブルコンテスト】
評もしていただけるので、毎年、20チームほどが参加する大規模
なものとなっている。本校からも2チーム出場する予定である。校内オーディションを行い、パ
ートを決定する。今年度は「大脱走のテーマ」と「レイダース・マーチ」の2曲で出場する。
4
おわりに
地域で発表する機会を得たことにより、子どもの練習しようとする意欲が高まったり、より良
い演奏方法を考えたりする姿勢が見られる。また、他の学校と一緒に講習を受けたことで刺激さ
れ、日々の練習により熱心に取り組もうとする姿勢が見られる。さらに、中学生との関わりから、
自分の部活選択について考えようとする姿も見られる。このことから、金管バンド部の活動を通
して、人づくり、音づくりが進められつつあることが分かる。今後も、地域行事や吹奏楽連盟主
催の活動に進んで参加することで、子どもたちが「響き合える」よう取り組んでいきたい。
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