茨城県広域避難計画の見直し要求書 茨城県広域避難計画の見直し要求書

2015 年 5 月 20 日
茨城県知事
橋本 昌様
原発事故からくらしを守るネットワーク
代表
阿部 功志
さよなら原発ネットワークいばらき
事務局長
村田
深
日本婦人有権者同盟水戸支部
支部長
山内 絢子
脱原発ネットワーク茨城
共同代表
江口 肇、永井 悦子、小川 仙月
原発とまちづくり研究会
代表
小川 仙月
未来への風いちから
代表
荻 三枝子
東海第二原発再稼働ストップ日立市民の会
代表
角田 京子
循環型社会を考える会
代表
魚津真喜子
代表代行
大内健次
さよなら原発ひたちなか市実行委員会
東海第二原発の再稼働を阻止し廃炉をめざす県民センター
連絡責任者
代表
田村 武夫(水戸市双葉台 2-28-4)
茨城県広域避難計画の見直し要求書
東海第二原発が過酷事故をおこせば、県民を苦難に陥れるだけでなく、県民と県土を失い自治
体そのものを消滅させかねません。原発が新規制基準に適合したとしてもリスクが残るのですか
ら、東海第二原発は絶えず 300 万人県民の脅威であって、もはや存続の条件がありません。廃炉
にすべきです。
福島県民の惨状をみると、過酷事故は避難計画の有無に関わりなく苛烈であり、避難計画は、
苦難を軽減するための行政計画に過ぎず、災害そのものをゼロにはできないことを示しています。
したがって、県民と県土を守る県政の最良の選択は、東海第二原発を廃し、災害の原因を元から
断つことです。避難計画が作成されたことをもって原発の存続を認めることは大きな誤りだと指
摘せざるを得ません。
その上で、茨城県広域避難計画(以下、県避難計画)が実効性のある計画として、県民の命や健
康、財産を守る計画になり得るのか、検討を加え改善すべき事項を下記に提起しますので、県に
おいては検討の過程に県民を参加させ、県民と双方向で意見交換を行い、提起する事項の克服と、
実効性のある県避難計画を作成するよう要求します。
追って、本申し入れ後1ケ月以内に公開で回答・説明してくださるよう要求します。
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記
1.県広域避難計画の作成は、県民に全て公開し、県民の理解、合意を前提に作成すること。
県広域避難計画は形式としては県の計画ですが、実質においては避難に遭遇した際の 300 万県
民の計画です。行為主体となる県民の知らないところで作成された計画では、役に立ちません。
津波編、地震編、風水害編は県民の意向を聴くが、県民全体を巻き込み取りまとめ困難が予想さ
れる原子力防災計画・広域避難計画に関しては聴かないという姿勢では、実際の場面において役
立たない非現実的な計画になってしまい、県民に災禍をもたらしかねません。今後はどのような
場面でも、県民との意見交換を通じ、県民の理解・合意を得て作成を進めること。
2.県広域避難計画は、放射能被ばくを上手に回避できればよいというものではありません。避
難開始から避難生活、そして帰還(現状回復)の全過程を対象に、次の条件・基準を満たす内容で
作成すること。
(1)住民に一切被ばくさせることなく避難させること。
(2)避難関連死を出さないこと。
(3)避難先での避難生活は、まさに難を避けるものであるから、住居空間、学校等の公共空
間、マンパワーの提供など避難以前の水準を確保すること。
(4)避難生活は、福島の実例を見れば長期に及ぶことは必至である。避難生活開始とともに、
直ちに仮設住宅、災害公営住宅を提供すること。
(5)完全な除染を行い、原状回復を実現すること。
3.上記2の条件・基準を満たしたとしても、次の不幸な事態の発生は防ぎようがなく、住民を
苦しめることになると予想されるので、過酷事故に伴う被災の実態をリアルに予測し数量化す
るとともに、行政計画でどのように救済するのか、その方法を明示すること。
(1)膨大な数の失業者、操業・営業停止・廃業の発生。
(2)希望するところでの勉学の機会、診療機会の喪失。
(3)移動できない土地、家屋の汚染と家畜、ペットの放置死。
(4)地域社会の崩壊・ふるさとの消失。
4.現在の県避難計画が前提としている福島第一原発事故並みの事故が東海第二原発で起きた場
合に、30 キロ圏に 96 万人が住むこの地域では、どのような惨状がもたらされるのか、30 キロ
圏内に 14 万 1 千人だった福島の事例と比較し、次の項目に関して予想し県民に公表すること
(1)福島第一原発事故の避難関連死が 1,100 人超(東京新聞昨年 9.11 付け)で今なお増加して
いることをふまえると、東海第二原発事故では 1 万人程度発生すると思われるが、県は正確
に予測すること
(2)仮設住宅及び災害公営住宅の必要数。
(3)失業者、操業・営業停止・廃業の発生数。
(4)約 10 万人の小・中・高校生に必要となる教室数。
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5.過酷事故は、人がコントロ―ルできない事態なのに、予め上限を設け計画を作るということ
は、過酷事故の性格を無視した行政のご都合主義であり、行うべきでありません。住民の安
全確保を最優先しなければならない県の責務の放棄でもあります。県は、最大最悪の過酷事
故の事態を想定し、県民に公表したうえで、避難計画を策定すること。
6.本年3月に決定された県避難計画には、今後の課題とされている 4 項目(複合災害、県外の
避難先確保、安定ヨウ素剤の服用および放射能汚染の身体検査)を脇においたとしても、なお次
の通り重大な欠陥があるので、県民との意見交換を通して、見直しを行うこと。
(1)避難する住民の被ばく線量について、確定的影響や確率的影響の低減に努めるとされて
いるが、なぜ住民にこのような被ばくをさせることが許されるのか、根拠を説明すること。
また、確定的影響や確率的影響の被ばく量は最大何ミリシーベルトを指すのか根拠を挙げ
明示すること。
さらに、事故の進展が福島第一原発事故よりも速くかつ多量の放射能を放出する場合は、
確定的影響や確率的影響の低減が不可能になると思われるが、どのように有効対策を講じる
のか対策を示すこと。
(2)30 キロ圏内の病院や社会福祉施設(計 316 施設)においては、患者・入所者に対する支
援体制は全く整っていません。避難に要する車両等の購入および維持に要する費用を原因企
業である日本原電(株)に負担させ、病院や社会福祉施設の負担なしで、態勢を完備すること。
また、病院患者の受け入れに関し、県避難計画の受入市町村内の病院では全員収容は不
可能と推量されるので、全員が確実に受け入れられる態勢を具体化すること。
避難における要配慮者への支援体制がないまま机上でもって避難計画づくりを進めると
すれば、それは棄民政策そのものであり絶対に許すことができません。要配慮者への支援体
制の問題こそ最優先して解決すること。
(3)福島第一原発から 30 キロ(UPZ)圏外で 50 キロ以内にある飯館村が今なお帰還困難
地域等に指定されている実情を踏まえれば、原発から 50 キロ圏内を避難受け入れ市町村と
すべきではありません。さらに近藤駿介原子力委員長(当時)が 250 キロ圏内住民の避難の可
能性を検討した「最悪シナリオ」に従えば、県内に避難先となるところは存在しません。30
キロ圏外ならば避難受け入れ可能とする計画では、避難者が避難先において被ばくする事態
になりかねません。避難先市町村の見直しを行うこと。
また、県は最悪事態を想定し、県内全 44 市町村に避難計画作成を指導すること。その際、
津波等の危険区域を避難先・場所とすることは禁じられている(昨年 4 月、災害対策基本等
改正)から、周知を図り、計画作成に生かすこと。
さらに、霞ケ浦が汚染された場合に、どのように飲料水を確保するのか、対策を明示する
こと。
(4)避難時間推計シミュレーションは、仮に複合災害でなくとも、パニックに陥っての交通
事故、ガス欠車の発生、路上をふさぐ駐停車の存在、路面工事中を考慮すべき条件に加えな
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ければならないが、
(県原子力安全対策課作成の)現シミュレーションでは考慮していない。
また3.11の際の常磐自動車道が不通になったことに加え、検討部会での県警幹部の「高
速道は、緊急車両優先としてもらう必要がある」という発言 に示されるように、高速道路
が不通であることも想定すべきです。実際に起こりうる現象をすべて織り込んで試算し直す
こと。
(5)県は、UPZ圏内住民の防護措置として屋内退避を推進しているが、地震に襲われ崩壊
した家屋や、密閉性を喪失した屋内では防護不能であるばかりか、余震に怯えてこもること
になります。県は、原因企業である日本原電(株)に負担させ各家庭にシェルターを設置し
なければならないが、狭い宅地の中にどのように建設するのか示すこと。
(6)避難する住民の多くは、避難先市町村や避難先施設の位置が分かりません。その住民に
マイカーに乗り避難先に行けと指示しても、住民は恐怖、極度の緊張、疲労困憊と自己責任
を押し付けられるだけで、逃避中に人命を落とすケースもあり得ます。どうすれば各人が避
難先に安んじて確実にたどり着けるか対策を講じること。
(7)東海村には、東海第二原発のほか、原研機構(旧動燃)の高レベル放射性廃液が大量に
保管されているので、いずれか一方の事故によって双方がコントロール不能になる危険があ
るため、首都圏をまきこむ原発被災の危険性がいよいよ大きくなります。このことを県避難
計画が全く想定していないのは、過酷事故の軽視につながります。見直しを加えてこの事態
を想定すること。
(8)過酷事故が発生すれば、土地・家屋など地域全域に放射能が飛来することは防ぎようが
なく、除染しか方法は残っていません。県は除染を行うとしていますが、福島の経験に照ら
し、96 万人が居住する本地域の除染が本当に可能と考えているのならば、予算確保も含め
その方法を示すこと。
(9)県は「財産を守る」と言っていますが、経営基盤の薄弱な日本原電(株)には賠償能力
があるとも思えません。県はどのように金銭的損害賠償を確保するのか、その方法を示すこ
と。
以上
連絡先
田
村
武
夫
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