1P40 Concentration dependence analysis of X-ray emission spectra for aqueous solution (1 RIKEN/SPring-8, 2 The Institute for Solid State Physics) Takashi Tokushima 1, Yuka Horikawa 1,2, Hidemi Arai 1, Shik Shin1,2 近年、実験技術、光源などの進歩によって、溶液や液体中の分子の電子状態の観測が軟 X 線発 光分光法、軟 X 線吸収分光法あるいは液体分子線を利用した光電子分光法などの手法を用いて 行われるようになってきた。我々は、大型放射光施設 SPring-8 の BL17SU において軟X線を透過さ せることができる薄膜を大気と真空を仕切る窓として用いる液体フローセルの開発を行い、軟 X 線 発光分光法による液体(水、酢酸)[1-3]、溶液(酢酸、アミノ酸、たんぱく質)[4-7]を対象とした電子 状態の研究を行っている。軟 X 線発光分光法は内殻電子の励起によって生じる励起状態の緩和過 ある(Fig.1 参照)。軟 X 線発光分光法の absorption Energy 程の一つである発光を観測する手法で emission 特徴のひとつは、励起エネルギーを自 XAS (X-ray absorption spectroscopy) 在に変えることで、多成分系においても Valence 特定の成分を選んで観測することが可 たとえば、酢酸分子は、523.5eV 付近 にカルボキシル基の OC=O1s→π *遷移 による特徴的な吸収ピークをもつ。この y ra X- 能なことである。 Intensity = density of states Core io iss n XES (X-ray emission spectroscopy) em Fig.1 Energy diagram of x-ray absorption and emission spectroscopy. ピークは水の吸収の構造よりも低エネルギー側であるため、 このピーク周辺のエネルギー領域では水溶液中の酢酸だけ が選択的に励起される。Fig.2 に示したのは、523.5eV の励起 エネルギーで測定した、さまざまな濃度の酢酸水溶液の O1s 発光の測定結果である。濃度がある程度高い領域において は、酢酸分子に由来するピーク構造がはっきりと観測されてい ることが分かる。一方で、酢酸の濃度が低い試料においては、 溶媒である水の寄与がスペクトルに含まれていて、濃度によ る電子状態の変化を詳細に調べる上では好ましくない。 そこで、我々は、水溶液中の分子の軟 X 線発光強度の濃度 Fig.2 O1s X-ray emission spectra of acetic acid aqueous solution. Spectral intensity is normalized by area under the curve. 依存性から、スペクトル全体に占める水の寄与を推測する方法を検討した。本発表では、溶液の軟 X線発光の解析方法とそれによって求められた酢酸水溶液の中の酢酸の発光スペクトルの濃度依 存性に関して報告を行う。 [1] T. Tokushima et al., Chemical Physics Letters 460, 387 (2008). [2] T. Tokushima et al., Physical Chemistry Chemical Physics 11, 1679 (2009). [3] T. Tokushima et al., Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena 177, 192 (2010). [4] Y. Horikawa et al., Physical Chemistry Chemical Physics 11, 8676 (2009). [5] Y. Harada et al., Journal of the Physical Society of Japan 78, 044802 (1 (2009). [6] 德島高, 原田慈久,辛埴, 日本物理学会誌 63, 852 (2008). [7] Y. Horikawa et al., Physical Chemistry Chemical Physics 12, 9165 (2010).
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