テクニカルノート Spark™ 10M マルチモードリーダー – 発光感度 フラッシュ発光およびグロー発光の検出限界の最適化 緒言 Spark 10M は Tecan の次世代マルチ検出モードマイク ロプレートリーダーで、現代のアプリケーションの ニーズを満たすべく開発されている。同リーダーは正 確、再現可能、迅速な測定を、革新的な設計によって 実現する。 Spark 10M の基本発光モジュールを使用すると、高感 度発光測定(フラッシュ&グロー)を実施できる。OD(光 学濃度)フィルターを使用すると、OD1~OD3 の範囲の 強い信号の減衰により、1 つの実験で非常に高い信号と 低い信号を最適な形で検出し、「過剰」読み取りを防 ぐことができる。これにより、9 桁を上回るダイナミッ クレンジの発光信号の検出が可能になる。強化された 発光モジュールでは、最大 5 種類の異なるルシフェ ラーゼを使用したマルチカラー発光アッセイの測定だ けでなく、発光スペクトルスキャン(例: 発光タンパク 質)の実施もできる。革新的なフィルターベースのアプ ローチにより、398 nm~653 nm の任意の波長を、ス テップサイズ 15 nm、帯域幅 25 nm で選択できる(3)。 特定の測定モードにおけるマイクロプレートリーダー の感度、または検出限界(DL)は、いくつかの異なる要 素に依存する。発光アプリケーションでは、以下の ルールを遵守することがきわめて重要である。 リーダーは最初の測定の実施から少なくとも 20 分前に オンにする必要がある。Spark 10M の非常に高感度な フォトンカウンティングチューブ(PCT)が最適な性能を 発揮するには、これを平衡化する必要があるからであ る。 5 分を上回る測定(積分時間の長い発光カイネティクス や読み取り)を実行する際には、機器の温度制御をオン にする。この操作は、ほとんどのルシフェラーゼの活 動が温度に大きく依存するため重要である。さらに、 操作中に機器が暖まるため、時間の経過に伴う、また プレート全体にわたる、発光の一貫性に影響する。設 定温度(例: 室温+4℃)を維持することで、機器が安定し、 発光信号のドリフトが防止される。 各発光アプリケーションについて、積分時間(つまり、 信号取得の長さ)を最適化する。目安として、フラッ シュ発光ベースのアプリケーションでは 1 秒から 20 秒、 グロー発光ベースのアプリケーションでは 100 ミリ秒 から 1 秒の積分時間が必要となる。 未確立の発光アプリケーションでは、「自動減衰」を 使用すべきである。この機能は、感度損失なしで Spark 10M リーダーのダイナミックレンジを強化し、不要な 「過剰」値がデータに発生するのを防ぐ。 ほとんどの場合、150 ミリ秒の待機時間は、読み取り 精度に悪影響を与える可能性のある、ウェル内の液体 の不要な水はねを防ぐのに十分である。 機器設定値の最適化に加え、一部のアッセイパラメー タも、測定を成功させるためにきわめて重要である。 読み出しパフォーマンス性能を最大限に高めるには、 1 テクニカルノート プレートの種類、形式、および充填容量の最適化が必 要となる。 すべての発光測定では、信号を増幅するために白色の マイクロプレートを使用することが不可欠である。し かし、白色マイクロプレートはエラーの原因となる場 合がある。これは、通常の実験室の明かりの下で保管 されているときに、フォトンが「満載」されるからで ある。このりん光がリーダーによって検出され、その 結果、バッググラウンド信号の整合性が失われる。明 かりを暗くし、プレートをリーダー内で最大 10 分間寝 かせてから測定を開始すると、この偽信号を最小限に 抑え、ブランクウェルの標準偏差を減らして検出限界 を改善することができる(式 1 を参照)。 堅牢な結果を得るには、科学的に正しいデータ整理を 実施すべきである。ピペッティングやプレートエラー に起因する不要な外れ値は、グラブス外れ値検定(1,2) によって取り除くことができる。これは、アッセイブ ランクを含むウェルにおいて、特に重要である。 このテクニカルノートでは、フラッシュ発光とグロー 発光について Spark 10M マルチモードリーダーの最大 機器感度を判定するために使用する、検定の最適な設 定、機器設定値、および統計式について説明する。 グロー発光 材料と手法 Spark 10M マルチモードリーダー (Tecan、オース トリア) 384 ウェル、スモールボリューム白色ポリスチロー ルマイクロプレート(Greiner® Bio-One、ドイツ) 144-041 ATP 検出キット SL (BioThema、スウェー デン) ATP を含まない ddH2O トリス-エチレンジアミノ四酢酸(EDTA)バッファー Labofuge 400e (Heraeus、ドイツ) <> A B C D E F G H 1 BL BL BL BL BL BL BL BL 2 BL BL BL BL BL BL BL BL 3 4 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 5 2 2 2 2 2 2 2 2 6 20 20 20 20 20 20 20 20 7 200 200 200 200 200 200 200 200 8 2,000 2,000 2,000 2,000 2,000 2,000 2,000 2,000 表 1: グロー発光アッセイのプレートレイアウト。Bl = ブランク、各濃度 はウェルごとの最終 ATP 濃度を nM 単位で示す。グレーのウェルは空の ままだった。 測定パラメータと機器設定値 表 2 に示す機器設定値を用いて 3 枚のプレートを測定 した。測定開始前に、白色プレートのりん光に由来す るバックグラウンド信号を最小限に抑制するため、プ レートをリーダーの中で 5 分間静置した。静置後 SparkControl™ ソフトウェアを使用して、吸光スペク トルを表示、分析した。 測定パラメータ プレート 測定モード 減衰 積分時間 待機時間 出力 機器設定値 Greiner384sw 発光 なし 1,000 ms 150 ms カウント/秒 表 2: グロー発光用の機器設定値 データ整理 ブランクウェルの結果のうち著しい外れ値を除外する ために、グラブス外れ値検定を使用した。グラブス検 定(別名: 最大ノルム残差検定)は、正規分布の個体群に 由来すると仮定される一変量のデータセットから外れ 値を検出するために使用する検定である(1)。検定は GraphPad オンライン計算機を使用し、有意水準 0.05 (2)で実施した。 機器の感度を判定するため、20 nM ATP サンプルの信 ピペッティング手順 号と以下の式を用いて検出限界を計算した。 384 ウェルプレートを、表 1 に示すプレートレイアウト に従って、ウェル 1 つあたり 25µl の充填容量で充填した。 5 µl の適切な ATP 原液(1、10、100 nM、1、10 µM)ま たはブランク(トリス-エチレンジアミノ四酢酸(EDTA) バッファー)を各ウェルにピペットで充填し、続いて反 応混合物 20 µl を充填した。気泡を除去するため、プ 式 1: 検出限界の計算。 Concentration [ATP]: ATP の最終濃度(単位 pM) レートを 500~2,000 rpm ですばやく遠心沈殿させた。 mean[ATP]: 平均毎秒カウント数(cps) 手順の実施中は、実験室の明かりを暗くした。 mean[Bl]: ブランクウェルの平均毎秒カウント数(cps) Stdev[Bl]: ブランクウェルの標準偏差 2 テクニカルノート それぞれの測定機器について、グラブス検定を実施し、 次に 50 µl の ENLITEN 試薬を Spark 10M のインジェク 検出限界を計算した。3 つの検出限界の平均値を計算し、 ターシステムを使用して加えた。 機器の感度の判定に使用した。求められた絶対感度(単 位 pM)を、相対感度(単位 amol/ウェル)に変換した(表 3)。 注:インジェクターシステムは、ENLITEN 試薬でプラ イミングする前に ATP を含まない水で洗浄する必要が ある(20 回以上のピストンストローク)。 結果 測定 1 2 3 平均 標準偏差 感度 5.1 pM 128 amol/ウェル 6.1 pM 153 amol/ウェル 6.4 pM 166 amol/ウェル 5.96 pM 149.1 amol/ウェル 0.78 pM 19.6 amol/ウェル 表 3: Spark 10M リーダーを最適な条件でグロー発光測定に用いた場合の 代表的な測定感度。 図 1: 最適な条件を用いた場合の Spark 10M リーダーのグロー発光 注: ここに提示するデータはパフォーマンスの代表値であり、機器の仕様 ではない。 フラッシュ発光 材料と手法 Spark 10M マルチモードリーダー (Tecan、オーストリア) 384 ウェル白色ポリスチロールマイクロプレート (Greiner Bio-One、ドイツ) ENLITEN® ATP アッセイシステム (Promega、ドイツ) ATP を含まない ddH2O <> A B C 1 BL BL BL 2 BL BL BL 3 BL BL BL 4 BL BL BL 5 BL BL BL 6 7 8 9 10 11 0.09 nM 0.9 nM 9 nM 0.09 nM 0.9 nM 9 nM 0.09 nM 0.9 nM 9 nM 表 4: フラッシュ発光アッセイのプレートレイアウト。Bl = ブランク、各 濃度はウェルごとの最終 ATF 濃度を示す。グレーのウェルは空のまま だった。 測定パラメータと機器設定値 プレートは、表 5 に示す機器設定値を用いて測定した。 測定開始前に、白色プレートのりん光に由来するバッ クグラウンド信号を最小限に抑制するため、プレート をリーダーの中で 5 分間静置した。 測定パラメータ プレート 待機時間 測定モード 注入 機器設定値 Greiner384fw 5分 発光、ウェル毎 インジェクターA、容量 50 µl、 200 µl/秒、注入後に補充 待機時間 測定 減衰 積分時間 待機時間 出力 5秒 発光 なし 10,000 ms 150 ms カウント/秒 表 5: フラッシュ発光用の機器設定値 データ整理 グラブス検定の実施後、グロー発光アッセイの場合と 同様に、個々の測定について検出限界を計算した(式 1)。 3 回の独立した測定の平均検出限界を用いて、機器の感 度を判定した。求められた絶対感度(単位 fM)を、相対 感度(単位 amol/ウェル)に変換した(表 6)。 ピペッティング手順 384 ウェルプレートを、表 4 に示すプレートレイアウ トに従って、ウェル 1 つあたり 55µl の合計充填容量で 充填した。 5 µl の適切な ATP 原液(1、10、100 nM)またはブラン ク(ATP を含まない水)をピペットで各ウェルに注入し、 3 テクニカルノート 結論 結果 測定 1 感度 171.2 fM 9.41 amol/ウェル 215.4 fM 11.85 amol/ウェル 176.6 fM 9.77 amol/ウェル 188.0 fM 10.34 amol/ウェル 23.9 fM 1.32 amol/ウェル 2 3 平均 標準偏差 表 6: Spark 10M を最適な条件でフラッシュ発光測定に用いた場合の代表 的な測定感度。 この結果は明らかに、グロー発光とフラッシュ発光の 両方について、Spark 10M の卓越したパフォーマンス を示す。上記の感度検定および機器設定値をセット アップすると、検出限界が改善され、機器の感度が最 大限に高まる。 このテクニカルノートで説明した原則は、すべての発 光ベースアプリケーションに当てはまるが、システム の最適な設定値は、アッセイとユーザー要件によって 異なる。 参考文献 (1) Frank E Grubbs. Procedures for Detecting Outlying Observations in Samples. Technometrics, 1969, 11(1), 1-21. (2) http://graphpad.com/quickcalcs/Grubbs1.cfm (3) TN: Unparalleled flexibility for luminescence detection with the Spark 10M multimode reader: 398597 V1.0. 12-2014 図 2: 最適な条件を用いた場合の Spark 10M のフラッシュ発光の線形性。 注: ここに提示するデータはパフォーマンスの代表値であり、機器の仕様 ではない。 ※このアプリケーションノートは Tecan(本社 スイス)が 発行(原文 英語)し、テカンジャパンが日本語翻訳したも のです。 翻訳文の表現等に疑義が生じた場合は、原文をご参照くだ さい。 Australia +61 3 9647 4100 Austria +43 62 46 89 33 Belgium +32 15 42 13 19 China +86 21 2206 3206 Denmark +45 70 23 44 50 France +33 4 72 76 04 80 Germany +49 79 51 94 170 Italy +39 02 92 44 790 Japan +81 44 556 73 11 Netherlands +31 18 34 48 174 Singapore +65 644 41 886 Spain +34 93 595 95 25 31 Sweden +46 31 75 44 000 Switzerland +41 44 922 81 11 UK +44 118 9300 300 USA +1 919 361 5200 Other countries +43 62 46 89 33 Tecan Group Ltd.では本文書において正確かつ最新の情報をご提供するよう最善の努力を尽くしておりますが、誤謬や脱漏が生じる可能性があります。したがって、Tecan Group Ltd.では明示的または暗示的にかかわらず、本文書における情報の正確性または完全性につき、何らの表明または保証を行うものではありません。また、本文書は予告な く変更する場合があります。記載された商標はすべて法律で保護されています。 本文書に記載された仕様書の技術的詳細および詳しい手順については、テカンの担当者までご 連絡ください。 本文書で取り上げたアプリケーションおよび製品は一部の市場で入手困難な場合がありますので、営業担当者にお問い合わせください。 記載された商標はすべて法律で保護されています。 本文書に記載された商標とデザインは、Tecan Group Ltd.(スイス Männedorf)の商標または登録商標です。完全なリストは www.tecan.com/trademarks で参照できます。リストには含まれませんが、ここに記載されている製品名および会社名はそれぞれの所有者の商標である場合があります。 398751J V1.0. 06-2015 Tecan は、Tecan Group Ltd.(スイス Männedorf)の登録商標です。Spark、SparkControl、Fusion Optics および Quad4 Monochromators は同商標です。 Spark 10M は研究用途向けです。診断用途ではご使用いただけません。 © 2015 Tecan Trading AG www.tecan.com スイス 著作権所有 免責事項と商標については、www.tecan.com をご覧ください。 www.tecan.co.jp/spark 4
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