校長講話

皆さんも知っていると思いますが、このたび2人の日本人の研究者がノーベ
ル賞を受賞しました。大村智さんと梶田隆章さんです。大村さんは医学・生理学
賞、梶田さんは物理学賞を受賞しました。特に梶田さんは埼玉県の東松山市出身
ということから大きな話題となっていますね。同じ埼玉県民の一人としてとて
も誇りに思います。
私はノーベル賞を受賞したことは素晴らしことだと思いますが、それ以上に
大村さんの生い立ちを通して、大村さんのお人柄や心の在り方に深く感動を覚
えています。大村さんは80年前に山梨県の農家に生まれました。小さいころか
ら農作業を手伝い、その時の祖母の教えをずっと大切にしてきました。その教え
とは「人の役に立つことをしなさい」
「世の中のために働きなさい」という教え
です。大学を卒業してから高校の先生になり、その後研究者となり、微生物から
抗生物質をつくり、アフリカなどの熱帯地方の病気を治療する特効薬を開発し
ました。一説には3億人の命を救ったとも言われています。そしてその特効薬を
無償で何十年もの長い間配っています。また薬の開発で得たお金で地元山梨県
に美術館を作ったりしています。なかなかできる事ではありません。世の中には
残念ながら世のため人のためと言いながら、自分の名誉や肩書のために一時的
に慈善活動を行う人もいます。そういう人の心は見えませんが、心遣いや心配り
を見るとよくわかります。大村さんは子どもの頃の祖母の教えを80歳になっ
た今でも守り、人の役に立つ活動に日々取り組んでいます。
2つ目に感動したことは、自分の研究に対して常に情熱を持ち続けていたこ
とです。大村さんは富士山の見えるゴルフ場の土壌から先ほどの特効薬となる
微生物を発見しました。きっとその発見の陰には、何千回、何万回の失敗や挫折
があったことでしょう。それでも大村さんは諦めずに自分の信じた研究を毎日
続けていました。普通、結果が出なかったり、自分の思い通りにならなかったり
すると誰もが諦めてしまいます。しかし何度失敗しようが、大村さんは諦めなか
った。その延長線上に世紀の大発見があったのだと思います。だから大村さんの
発見は偶然ではなく、努力の積み重ねが導いた結果だと捉えています。
福岡中学校でも「人の役に立つ」という行為をしてくれた人たちがいます。先
日、ある保護者からこんな報告をいただきました。
「先日、駒西小学校の運動会
があった時のことです。本校の1年生の数人が運動会終了後のテントの片づけ
を手伝ってくれました。運動会が終わればそのまま帰ってもいいのに、進んで手
伝ってくれました。とても感激しました・・」私はこの話を聞いて、ノーベル賞
を受賞した大村さんと心の気高さは同じだなと思いました。身近なところにも
こんな素敵な心遣いができる福中生がいることを誇りに思っています。
皆さんはアシュリーという少女の名前を聞いたことがありますか。彼女はプ
ロジェリア症候群という800万人に1人の割合の難病に侵されたカナダの少
女でした。プロジェリア症候群とは、成長のスピードが健常者の10倍も速いと
いう難病です。アシュリーは物心ついた時からずっと人からサポートを受けて
生きてきました。その彼女が初めて自分の言葉で人が喜ぶ姿を見て「人の役に立
つことはうれしい」と語ったのです。私たちは誰もが3億人を救うようなことは
できません。しかし隣りの友や仲間の心を支え守る温かな行為行動はできます。
それが目であり表情であり笑顔であり言葉や動作を用いただけでも人の役に立
つことは、アシュリーのように心の持ち方次第で誰でもできるのです。
人の役に立つことの素晴らしさを教えてくれた大村さんやアシュリーのよう
な人に私もなりたいです。そして福岡中学校全体が友だちやクラスメートや家
族のために心を配れる人になり、人の役に立つことの喜びや満足感を味わって
ほしいと心から願っています。
平成27年10月8日
学校朝会・校長講話より