①災害復旧事業の実務について

災害復旧技術の実務
国土交通省 水管理・国土保全局 防災課
平成27年5月14日
公共土木施設災害復旧事業の概要
根拠法令
目 的
特 徴
公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年3月31日法律第97号)
自然災害により被災した公共土木施設を迅速に復旧することで、公共の福祉を確保
① 様々な公共土木施設が対象
(河川、海岸、砂防設備、林地荒廃防止施設、地すべり
防止施設、急傾斜地崩壊防止施設、道路、港湾、漁港、
下水道、公園 )
② 高率な国庫負担
③ 迅速で確実な予算措置
④ 迅速な工事着手
・国の災害査定を待たず、発災直後から実施可能
⑤ 原形復旧だけでなく適切な施設形状で復旧
⑥ 県単位で一括し予算交付
・同一災害なら市町村も含め県内で自由に活用可能
1
国土交通省所管 災害復旧関係予算の経年変化
(億円) (直轄 + 補助) 河川、砂防、海岸、道路、港湾、都市
14,000
12,000
10,000
補正
13,821
東日本大震災
当初
新潟福島豪雨
台風10個上陸
8,000
13,286
6,000
4,000
2,000
1276.
6387.
534
993
1279.
2279
3277 3126
0
H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26
2
高率な国庫負担
※ 年間の災害復旧事業費の総額が、
標準税収の1/2を超え、2倍に達するまでの額に相当する額については3/4が国費
標準税収の2倍を超える額に相当する額については4/4が国費
【国庫負担率2/3、災害発生年災(現年災)の場合】
国の負担
(国費 66.7%)
地方の負担
(地方費 33.3%)
起債充当率 100%
地方負担分には、起債(地方債)充当が可能
国の負担
(国費 66.7%)
国の負担額=国費+交付税=98.3%
起債のうち95%交付税
措置(交付税 31.6%)
地方の実質的負担額 1.7%
※ 激甚災害に指定された災害の災害復旧事業については、
次年度(過年災)4.8%
地方公共団体の標準税収入に応じ、さらに国庫負担率をかさ上げ
通常の公共事業は、1/2国庫負担で、自治体実質負担は35%
3
災害復旧事業の主な流れ
○ 地方公共団体の意向を踏まえ,災害緊急調査、事前打合せを実施し,早期復旧を支援.
○ 災害査定は、地方公共団体の準備ができ次第,全国から査定官を派遣して速やかに実施
大規模な災害が発生した場合など
災害緊急調査
県等からの申し入れがあった場合
災害報告
通常、発災後
10日以内
現地調査・設計図書作成
国庫負担申請
復旧進度
1年目 85%
2年目 99%
3年目100%
申請を受けて速やかに実施
災害査定
通常、発災後
2ヶ月以内
国庫負担金の交付
事業費の精算
成功認定(完了検査)
※
事前打合せ
災害発生
(
応
急工
工事
事
含実
む施
)
待災
た害
ず復
、旧
発工
災事
直は
後、
か国
らの
実災
施害
可査
能定
を
4
※災害査定の前に工事着手した場合には、査定時
に被災状況が確認できる資料を整えておくこと
災害緊急調査
●広域にわたる大災害又は人的被害発生等の特別な災
害の場合には、防災課長の命により調査官を派遣。
●調査官は、災害時の気象、被害状況、被災した施設の
応急措置、及び復旧方針の指導を行う。
●近年は、TEC-FORCE(テック・フォース:緊急災害対
策派遣隊)平成20年5月に発足(現在約7000人体制)。
●被災状況の把握や二次被害防止、被災地の早期復旧
のための技術的支援を実施するために活躍。
●東日本大震災では、全国から延べ18,000人を派遣。
5
災害発生・被害報告
●異常な天然現象によって、公共土木施設に被害を生じた
ときは、その施設管理者は、速やかに災害の状況を主務
大臣に報告する。(令第5条1項)
●災害が発生した場合は、調査中でも電話で一報。
●指定市を除く市町村は、都道府県がまとめて報告。
●被災後10日以内に文書で報告し、 訂正は、災害発生
後1か月以内に行う。
●期間内に報告できない場合は、その旨連絡。
6
査定前着工
国の査定前でも、災害復旧は可能
国の災害査定を待たず,被災直後からの復旧工事が可能.
災害査定前に実施した復旧工事も,災害復旧事業に合致する
もの全てが国庫負担の対象.
『公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法』は,事業着手に
ついて制約するものではない.
さらに,仮道,仮締切,欠壊防止など,応急的に施工する必要
がある仮工事も国庫負担の対象.
被災箇所の早急な復旧は、施設管理者の責務.
※ただし、査定前に着工する箇所については,
写真が被災の事実を示す唯一の手段のものとなるので,
被災状況等ができる限りわかる写真を記録。
7
査定前着工(応急工事)
原則として管理者の負担において施行するべきものである
が、主務大臣が特別の事情があると認める場合、応急工事
に要した費用の全部または一部は国庫負担の対象となる。
●応急本工事・・被災前と同じ機能を復旧すること。
●応急仮工事・・仮道、仮さん道、仮橋、仮締切、決壊防
止、仮排水施設及び仮処理施設工事(下水)。
(ポイント)
・緊急性がある場合、被害が拡大する恐れがある場合。
・応急仮工事は、毎年1回程度の出水等で直ちに被災する
おそれのないようなものとすること。
・手戻りに要する費用は、応急工事に含めないものとする。
8
・実施する前に防災課の助言を受けること。
適正な維持管理
怠ると
採択しない
【公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法】
(適用除外)
第六条 この法律は,次ぎに掲げる災害復旧事業については適用しない.
甚だしく維持管理の義務を怠ったことに基因
五
して生じたものと認められる災害に係るもの
【公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法事務取扱要綱】
(維持管理義務怠慢による災害)
第十三 法律第六条第一項第五号に規定する「甚だしく維持管理の義務を怠ったことに基
因して生じたものと認められる災害」とは,次ぎに各号に掲げる災害をいう.
一 腐朽 二 施設の操作不良 三 堤防の耕作
四 その他前各号に掲げるものに類する災害
【災害査定官申合事項】
第一 採択の範囲
十六 要綱第十三第四号の取扱について
巡視・点検及び点検などに基づく必要な維持補修
維持補修に関する計画の履行を著しく怠ったこと
に基因して生じたことが明らかに認められる災害を含むものとする.
9
災害復旧事業の復旧方法
○災害復旧事業とは,被災箇所を原形に復旧す
ることを目的。原形復旧とは,単なる元どおりだ
けではなく、従前の効用を復旧
○原形復旧が困難な場合や不適当な場合には,
形状,材質,構造を改良する等,従前と異なる施
設形状で復旧することができる
-参考-
公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和二十六年三月三十一日法律第九十七号) (抜粋)
(定義)
第二条
2
この法律において「災害復旧事業」とは,災害に因って必要を生じた事業で,災害にかかつた施設を原形に復
旧する(原形に復旧することが不可能な場合において当該施設の従前の効用を復旧するための施設をするこ
とを含む.以下同じ.)ことを目的とするものをいう.
3 災害に因って必要を生じた事業で,災害にかかつた施設を原形に復旧することが著しく困難又は不適当な場合
においてこれに代るべき必要な施設をすることを目的とするものは,この法律の適用については、災害復旧事業
とみなす.
10
災害査定
申請に基づき主務大臣が災害復旧事業費の決定を
行うにあたって、その基礎となる工事費を決めるた
めに行う実地調査
○査定において決定する
工事費に対応する査定様態
整備局等災害査定官
による査定
概ね2000万円以上
2000万円未満
300万円未満又はやむを
得ない理由により机上査定
が可能
○査定体制
決定行為への意見と確認
本省災害査定官
による査定
工事費決定行為の行使
財務省立会官
災害査定官
事務官
検査官(技官)
制度運用状況審査補助
復旧方法検討審査補助
査定の箇所の数量や所
在状況に応じて補助
[留意点]
災害発生後2ヶ月以内に査定実施できるよう努め、適切かつ円滑な査定を図
ること
11
保留と解除
状況によっ
ては省略
内容に
よっては
不採択
災害査定
査定立会
災害査定官権限の下、実施
事務官班
査定官班・検査官班
事前審査
財務省
立会官
採択の是非、決
定金の記載
(朱入れ)
朱入後審査
決定内容の確認
決定金
額集計
決定金額集計
※1
※1
保留は、事務上又は技術上さら
に検討を要する箇所又は工事費
の大きい箇所(4億円以上)、
一定災の箇所の際に適用。
協議設計(実施保留)は工法に
ついて特に検討する必要のある
箇所等の際に適用。
査
定
決
定
実施保留
保留
防災課と
財務本省で協議
協議設計
防災課で工法等検
討財務説明
保留解除(査定決定)
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柔軟な予算執行
【国土交通省ホームページによる周知】
●県単位で一括し予算交付
・災害復旧事業費は,予算費目ごと(河川等=河川,海岸,
砂防等,道路,下水道等),災害年ごとに県単位で一括
して交付.
・災害復旧事業として採択された同一予算費目の工事であ
れば,工種,箇所にかかわらず市町村も含め県内で自由
に活用可能.
●複数工事をまとめて発注可
・複数の工事をまとめ,ロットを拡大して発注することが
可能
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災害査定の簡素化
簡素化を実施する要件
①1災害における被災箇所数若しくは断続的な降雨等に
よる被災箇所数の合計がその都道府県等の過去5ヶ年
間の年間平均箇所数と同程度以上であるとき
②その他、被災が激甚で必要と認めたとき
平成23年災の簡素化
○東日本大震災
○新潟・福島豪雨
○台風12号
○台風15号
○平成23年10月13日から17日
までの大雨
平成24年災の簡素化
○九州北部豪雨等
○8月近畿地方大雨
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災害査定の簡素化(東日本大震災)
復旧・復興に向けた支援:災害査定の大幅な簡素化
○設計図書の大幅な簡素化
○総合単価使用限度額の大幅な拡大
○机上査定額の大幅な拡大
簡素化項目
設計図書の簡素化
通 常
-
総合単価使用限度額
1千万円未満
机上査定額
3百万円未満
東日本大震災
新潟県
中越地震
阪神・淡路
大震災
岩手県・宮城県
福島県・茨城県
栃木県・千葉県
仙台市・千葉市
新潟県
兵庫県・神戸市
-
-
5千万円未満
5千万円未満
1千万円未満
1千万円未満
実
施
1億円未満
5千万円未満
宮城県は11/9/11~3億円
福島県は12/6/27~3億円
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災害査定の簡素化(H25)
迅速な復旧に向けた支援 :災害査定の簡素化
被災地域の迅速な復旧を支援するため、自治体からの要望に基づき
災害復旧事業の査定の簡素化を実施
○総合単価使用限度額の拡大
○机上査定額の拡大
○設計図書の簡素化
(島根、山口、東京都大島管内のみ)
※落橋や土砂崩落により被災状況
の確認が困難な場合
平成25年
10月15日~ 平成25年8月29日~9月17日 平成25年8月22日~
10月16日
豪雨等
26日豪雨
暴風雨
簡素化項目
通
常
千葉県
福島県
東京都
島根県
(大島支庁
山口県
管内)
設計図書の
簡素化
-
1千
総合単価使
万円
用限度額
未満
3百
机上査定額 万円
未満
東京都
青森県・岩手県
秋田県・新潟県
福井県・長野県
三重県・滋賀県
京都府・兵庫県
奈良県
和歌山県・京都市
-
島根県
山口県
新潟県
-
平成25年6月8日~
8月9日豪雨等
福島県
山口県
島根県
岩手県
秋田県
新潟県
山形県
島根県、山口県
2千万円
未満
5千万円
未満
2千万円
未満
5千万円 2千万円 5千万円 2千万円 2千万円
未満
未満
未満
未満
未満
1千万円
未満
1千万円
未満
1千万円
未満
1千万円 1千万円未 1千万円 1千万円 6百万円
未満
満
未満
未満
未満
■H25年度簡素化適用実績
総単5千万、机上1千万【3自治体】
総単2千万、机上1千万【15自治体】
総単2千万、机上6百万【1自治体】
※京都府には京都市を含む
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