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3 日 3 道 路 の り面
伊東 佳 彦
*
3 日 3 コ 1 被 害 の概 要 と地質
連
0 1ぅ
今 回 の地 震 では、 直後 に多数 の斜面崩壊 や落石が発
生 した。 また、地震 に よる岩盤 の緩 みが原因 と考 え ら
れ るい くつ かの崩壊 が地震後ある程度 の時間 を置 いて
X
崩
一 発 生 して いる。幸 い に して人的被害 はなかった。主 な
崩壊 の位置 と概要 をそれぞれ図 3 - 4 、 表 3 - 4 に 示
す。
崩壊 が 多 か ったの は一 般 回道 3 3 6 号の広尾 ∼ 襟 実岬
図 3-5 位
震源等)
置図 (崩壊位置、道路名 、
間であ り、大小 2 0 数箇所 で崩壊 が確認 された。地震直
後 に崩壊 が発 生 し崩積 土 が道路面 に まで到 達 したの
は、広尾町 ( 一般国道 3 3 6 号) の 1 箇 所 である。また、
地震か ら 5 日 後 の1 0 月 1 日 に静 内町 ( 道道静 内中札 内
線) で 岩盤崩壊 が発生 し、崩積上が道道静 内中札 内線
を覆 い通行止 め となった。また1 0 月2 3 日には浦河町 ( 一
般 国道 2 3 6 号) で 、小 規模 な崩壊 が発 生 し、 国道が片
通行 となった。道路 の り面崩壊 による交通へ の 直接
傾」
的な影響 があった のは1 1 月 1 日 現在、合計 3 箇 所 であ
る。 また、広尾町 の一箇所 では崩積上が覆道 を乗 り越
え海岸 に達 した。
残 りの場所 では、崩積土 は概 ねポケ ッ
トや ク リアラ ンス に収 まってい る。主 な崩壊 の概要 に
日高 螺露 群
砂 岩 ` 寅碧 額
つい て述 べ る。
被害地域周辺 の地 質概要 図を図 3 - 6 に 示す。広尾
町 フンベ付近か ら同町 ルベ シベ ツ付近 までは、 日高累
層群 の砂岩 ・頁岩類 か らな り、 ルベ シベ ツか らえ りも
図 3-6 地
質略 図
「
ガイドJ を 基に作成)
北海道地質
( 産業技術総合研究所
町境浜 までは花 南岩類か らなる。境浜か らまた 日高累
層群 の砂 岩 ・頁岩か らなる。
沖地震 による主な道路 の り面 ・斜面崩壊箇所
表 3-3 +勝
番号
道路名
市 町村
R336
広尾 町
形態
主な 地 質
備考
落 石4 0 個
落石
日高 累 層 群 砂 岩
ゲート設置
落 石 フ個
落石
花高 岩
地点
宝浜 第 3
広尾 町
黄全
崩壊
広尾 町
・
ルヘシヘツ∼ ほしま
崩壊
日高 累 層 群 砂 岩 頁 岩
崩積 土 除去
5
R336
広尾 町
ほしば第1
崩壊
日高 累層群砂岩
崩積 土除去
6
R336
広尾 町
]ンクリート
法枠部
崩壊
日高 累層群砂岩
7
広尾 町
音調 津
崩壊
日高 累 層 群 砂 岩
8
広尾町
美幌
崩壊
日高 累 層 群 砂 岩 買 港
広尾町
美幌
崩壊
日高 累 層 群 砂 岩 = 頁岩
広尾町
フンベ 第 1
崩壊
日高 累 層 群 砂 岩 頁 岩
広尾町
フンベ 第 1
崩壊
日高 累 層 群 砂 岩
R336
広尾町
フンペ 第 1
崩壊
日高 累 層 群 砂 岩
R336
広尾町
浜 フン ベ
崩壊
日高 累 層 群 砂 岩
R336
広尾町
浸 フン ベ
崩壊
日高 累 層 群 砂 岩
R236
浦河町
月寒
崩壊
蝦夷 層群砂岩
地 震 後 2 フ日 目
静 内町
静内ダム上 流
崩壊
花尚岩賃岩石
地震後4日 目
道道
質研 究 室 長
北海道開発土木研究所月報 特 集号 2 0 0 3 年
200
山石
広尾 町
R336
]
同
R336
一
化
2
3
R336
*地
崩壊量(mめ
ピタタヌンケ
上豪 設 置
仮 設 柵 設置
前積 土除去
2 代 表的な崩壊事例
(1)ル ベ シベ ツ覆道 ∼ ほ しば覆道明 か り
3.3日
(一般国道 336号、広尾町)
本震直後 に発生 した と考 え られ、その崩壊規模 は約
200ボと推 定 され る。崩 積 土 は金 網 の 下 を くぐり擁壁
を越 え道路面 に到達 した (写真 3-49)。
崩積土 は被砕 され落石 の最大径 は50cm以下 で ある④
崩壊斜面 は70∼80度の急傾斜 となってお り、 日高累層
群 の砂岩 ・頁岩 か らなる⑥個 々の落石 は細 片化 し褐色
を呈 す るな ど風化 の程度が大 きい ことか ら、表層風化
部が地震動 によ り崩壊 した と推定 され る。
写真 3-51 金
網 の破 損状況 (広尾道路総合事業所提供)
ベ シベ ツ覆道 ∼ほ しば覆道明かりの崩壊
写真 3-49 ル
(広尾道路総合事業所提供)
写真 3-52 ラ
(2)ほ しば覆 道 (一般 国道 336号、広 尾 町)
ジ ヨ ンヘ リか ら見 た崩積 土 の 状況
(広尾道路総合事業所提供)
本震 直後 に発 生 した と考 え られ る。 崩積 土 は金 網 を
破 り覆道 を乗 り越 え海岸 に達 して い る (写真 3-50、
51)。崩壊規模 は約2,400拭と黄金道路周辺では最大で
あ った。 崩積 土 は全 体 として褐色 を呈 し、礫径 も小 さ
い もの を主 体 とす るが、 中 には径 2.5mと 大 きい もの
も見 られた (写真 3-52)。
崩壊斜面 は70∼80度の急崖 となってお り、 日高累層
群 の砂岩 を主体 とす る。地層 の傾斜、節理等 は明瞭で
はな い。崩壊 は斜面 中∼ 上 部 の風化部が層理、節理等
の不連続面 に規制 されて発生 した と考 え られる。
(3)浜 フンベ覆道 (一般国道 336号、広尾町 )
本震直後 に発生 した と考 え られ る。崩 積 土 は金網 を
被損 させ たが、 覆道上部 には達 して い ない (写真 353)。崩壊土量 は約 500胡で あ る。 最大径約 2mの 落石
が見 られた。崩壊 は斜面 中腹部 で発生 し、尾根状 の 出っ
写真 3-50 ラ
ジ ヨンヘ リか らみ た崩 壊 部 の 状況
(広尾道路総合事業所提供)
38
張 りによ り二 手 に分かれて堆積 して い る。
崩壊斜面 は50∼70度の急崖 となってお り、 日高累層
北海道 開発生木研 究所 月報 特 集号 2003年
群 の砂岩 を主体 とす る。層理面傾斜 は20∼30度であ る。
落石 の最大径 は 2m程 度 と大 きいが、崩積土 は大部分
(5)静内ダム上 流 (道道静 内中札内線 、静 内町)
10月 1日 午前 9時 20分∼ 30分頃に発 生 した。崩壊規
が細片化 してお り、径 10∼20cmのもの を主体 とす る。
崩壊 は斜面 中∼上 部 の風化部 が層理、節理等 の不連続
模 は 高 さ50m、 幅 40、厚 さ 2∼ 3m、 崩積 土量 は約
5,000拭と推定 され る (写真 3-55)。
面 に規制 されて発生 した と考 え られる。
崩壊 した岩盤 は最大径 10mの ブ ロ ックを含 む大小 の
岩石 に分離 し、3箇 所 で落石 防護柵 を破壊 し、道路上
お よび道路下の斜面 にまで堆積 した。 この うち道路面
には約 1,500ぷが堆積 した と見積 もられ る (写真 356)。崩壊 前 の 写真 に よる と、 この斜 面 はか つ て崩壊
を経験 した こ とが あ り、高 さ240mの うち上部 80mが
露岩 してお り、下部 に古 い崩壊 に よる岩石 が扇状 に堆
積 して いた。
写真 3-53:浜
フンベ覆 道 上の崩 壊
(広尾道路総合事業所提供)
―
(4)ビ タタヌンケ覆道起点坑 回
(一般国道 336号 、広尾町)
崩壊 の 状況
ほつかい」より撮影)
(北海道開発局防災ヘ リ 「
写 真 3-55
本震直後 に発生 した と考 え られ る。 径 10∼40cmの 落石
が40個 程 度見 られ る (写真 3-54)。 地 質 は 日高累層
群 の砂岩 で、 変形 が進み細 か い割れ 目が多 い。当該斜
面北側 に花 問岩 との境界があ る。
写真 3-56 道
路 面 へ の 崩積 土堆積 の 状況
落石防護柵 も破壊されている。
写真 3-54 ビ
タタ ヌンケ覆道横 の落石
北海道開発土木研究所月報 特 集号 2003年
崩壊斜面 はやや細粒 の花尚岩質岩か ら構成 されてお
り、崩壊面には右下が り流れ盤 の節理面 が認め られる
地質 は 白亜 系蝦夷累層群浦河層 の塊状粗 ∼ 中粒砂 岩
( 写真 3 - 5 7 ) 。 崩壊 は岩盤 中 の流 れ盤状 の節理面 に
規制 されて発生 した と考 え られ る。崩 壊 の主 原因 は、
である。地 層 は60度程度傾斜 してお り、斜面 に対 して
地震 によ り岩盤 中に卓越す る節理面が緩 んだため と考
は流れ盤 となって い る。ただ し層理面 は不鮮 明 である。
え られる。 また、地震後 の 降雨 ( 総雨量 3 2 m m ) が 影響
崩壊 は層理面 の風化部 を不連続面 として発 生 した と考
した可能性 も指摘 される。
え られる。
3日 3日 3 今 後 の調査 ・研 究に向 けて
北海道開発土木研 究所 で対応 した道路斜面 の被害 を
中心 に概要 を述 べ た。崩壊 は責金道路 と呼 ばれ る急崖
斜面 を中心 に発生 して い る。地質 との 関係 では、付加
体堆積物 で ある 日高累層群 で、 表層風化部 を中心 とす
る崩壊 が 目立 つ 。花南岩類分布地域 では、 静 内 ダム上
流 の よ うに、崩積土量数千胡で最大礫径が 10mと 大 き
い ものか ら小規模 な落石 な ど様 々 な崩壊形態が見 られ
る。 今後、地震 による崩壊形態 と地 質構造 との 関係 を
整理 して い く予定 で あ る。
今 回の地 震 に よ り付近 の岩盤が相 当緩 んで い る と考
え られ、時間が経過 した後 もい くつ か の崩壊が発生 し
写真 3-57 道 路 から見上げた崩壊面 の状況
右下が り流れ盤の節理面が認められる。
(6)月 寒 (一般 国道 236号 、浦河 町 )
地 震 か ら27日 後 の 10月 23日 に発 生 した (写真 358)。 崩壊 直 前 に時 間雨 量 20mmの 降雨 (地震 後 最 大 )
て い る。 今後 も融雪期、豪雨時な どを中心 に注意が必
要 と考 える。
調査 ・検討 にあたっては、北海道室蘭土木現業所、
帝広 開発建設部広尾道路総合事務所 、室蘭開発建設部
浦河道路事務所お よび静 内道路建設事業所 の方 々 に大
変お世話 にな りま した。記 してお礼 申 し上 げ ます。
が あ り、地震 で 緩 んだ 岩盤 が 降雨 に よ り不 安 定化 した
と考 え られ る。崩 壊 量 は50拭以下 と小 規模 で あ ったが
道路脇 で 発 生 したため、交 通 に影響 が 出た。 ただ し、
金 網 に よ り飛 散 は抑 え られ金網 自体 に も破損 はなか っ
た。
写真 3-58 崩
40
壊部 の状況 崩 積土 は除去 されてい る
北海道開発土木研究所月報 特 集号 2003年