内容 第 1 章 潮汐 — 1.2 潮汐の理論 天体の運動を表す用語 起潮力の分布と平衡海面 北極側から見た海面の形 赤道面上に月がある場合の海面の形 赤道面に対して傾いた方向に月がある場合の海面の形 潮汐の基本周期 月による潮汐と太陽による潮汐の比較 大潮・小潮の原因 大潮・小潮の周期 tide – p. 1/11 天体の運動を表す用語 自転軸 N Q 赤道 θ E φ S δ W h W’ Q’ 子午線: 北極 N と,地球表面上の一地点と,南極 S を通る大円. 子午面: 地球の中心 E と子午線を含む面. 天球: 中心を E として,半径は地球の半径より非常に大きい仮想的な 球.地球から見た天体(月や太陽)の運動は,この天球上に投 天体 影して考える. M 月の時角: 観測点 Q のある子午面に対する,月 M のある子午面のな す角. 時角は東から西向きに増加.1太陰日 24.8412 時間(24 時間 50 分 28.32 秒)で 360◦ 変化. 太陽の時角: 観測点 Q のある子午面に対する,太陽のある子午面の なす角. 時角は東から西向きに増加.1太陽日 24.0000 時間(24 時間 0 分 0 秒)で 360◦ 変化. 南中: 天球上を日周運動する天体が,観測点 Q の子午線を,東から 西へ通過すること.この時,時角は 0◦ . 地球は自転軸 NS の回りを, 西から東向きに自転 h · · · 時角 地球の自転により,約 1 日で 360◦ 変化. tide – p. 2/11 天体の運動を表す用語(続き) 月の赤緯: 月の地球の回りの公転運動により変化. 南北約 28◦ の範囲を,約 27 日の周期で変化 自転軸 N 天体 Q M 赤道 θ E φ δ W h 太陽の赤緯: 地球の太陽の回りの公転運動により変化. 南北約 23.5◦ の範囲を,約 1 年の周期で変化. Q’ W’ S δ = ∠W′ EW · · · 赤緯 天球上での天体の方向を示す角度の 1 つ. tide – p. 3/11 起潮力の分布と平衡海面 潮汐 · · · 月や太陽の天体による起潮力(潮汐力)が海水に 作用して生じる. 起潮力(潮汐力)· · · 天体からの万有引力と,地球と天体 が相対的に公転運動していることによる遠心力との 合力. 平衡潮汐論 · · · 海水に作用する起潮力を静力学的に計算し, 起潮力と重力がバランスすることで得られる,平衡 海面の形を計算することのできる理論. 図1.3.起潮力の分布(赤のベクトル)と平衡海面の形(青線) 観測点のある子午面と月 M のある子午面が一致した時,即ち,観測点を月が南中した時刻のもの. この時が,この子午面上にある海水に作用する起潮力は最大で,この子午線上にある観測点では満 潮となる. 起潮力の分布は,地球の中心を通り,月の方向に垂直な軸(図の対称軸)に関して,対称. 月の方向で最も強く,外向き.対称軸上では内向き. その結果,月の方向へ海面は膨らみ,それと垂直な方向では縮む. tide – p. 4/11 北極側から見た海面の形 月の公転の周期(約 27 日)と比べて,地球の自 転の周期は十分短いので,地球が 1 日に 1 回自 転する間に,この海面の形はほとんど変化し ない. 図1.4.月の起潮力により,海水は,月 M の方 向と,地球の中心を挟んでそれと反対側の 方向に引っ張られる.この方向には海面は 高くなり,それと直交する方向には低くな る.その結果,図に示すような海面の形が 作られる. 仮に,観測点の子午線方向に月 M がある点を QA とする.地球の自転に伴い, 14 日(時角 90◦ )経過毎に,地球の表面上にいる観測者は, ほぼ固定した海面の中を,QC , QB , QD と移動 し,1 日後に QA に戻る. 観測者が,QA , QB に来た時,最も海面が高い場 所にあるので満潮,QC , QD に来た時,最も海面 が低い場所にあるので干潮となる.このように, 1 日に 2 回,それぞれ満潮と干潮を体験すること になる. tide – p. 5/11 赤道面上に月がある場合の海面の形 満潮となる 2 点 QA と QB で,海面の高さは等 しい. 従って,日潮不等は存在しない. 図1.5.赤道面上に月の方向がある場合(赤緯 が δ = 0◦ の場合)について,地球の中心 を E,北極を N,中心 E と月の方向 M を 結ぶ直線が地球表面と交わる点を W とし た時,これら 3 点を通る断面における海 面の形. tide – p. 6/11 赤道面に対して傾いた方向に月がある場合の海面の形 満潮となる 2 点 QA と QB で,海面の高さが異 なる. 即ち,日潮不等が存在する. 図1.7.赤道面に対して傾いた方向に月がある 場合(赤緯 δ が 0 でない場合)について, 地球の中心を E,北極を N,中心 E と月の 方向 M を結ぶ直線が地球表面と交わる点 を W とした時,これら 3 点を通る断面に おける海面の形. tide – p. 7/11 潮汐の基本周期 1太陽日:観測点において,太陽が南中してから次に南中するまでの時間. 2π = 24.0000 時間 σ 0 σ0 はその角振動数 1太陰日(1朔望日):観測点において,月が南中してから次に南中するまでの時間. 2π = 24.84120 時間(24 時間 50 分 28.32 秒) σ1 σ1 はその角振動数 太陽による半日周潮:周期は1太陽日の 1/2. π = 12.0000 時間 σ 0 月による半日周潮:周期は1太陰日の 1/2. π = 12.42060 時間(12 時間 25 分 14.16 秒) σ 1 tide – p. 8/11 月による潮汐と太陽による潮汐の比較 実際の潮汐 · · · 月による潮汐と太陽による潮汐の重ね合わせ ■ 天体のパラメータ 地球の質量:ME = 5.974 × 1024 kg 月の質量:MM = 7.35 × 1022 kg 太陽の質量:MS = 1.989 × 1030 kg 地球− 月間の距離:dM =384,400 km 地球− 太陽間の距離:dS = 1.496 × 108 km 地球の半径:a = 6378.14 km ■ 平衡潮汐論により得られる潮差(理論値) • 月による潮汐の場合 ξ max − ξ min 3 MM = 2 ME a dM 3 3 MS = 2 ME a dS 3 a = 53.8 cm • 太陽による潮汐の場合 ξ max − ξ min a = 24.7 cm =⇒ 太陽の起潮力がつくる潮汐は,月の起潮力がつくる潮汐の 46%にすぎない. tide – p. 9/11 大潮・小潮の原因 大潮 · · · 月,太陽 S,地球 E がほぼ一直線上に並び(月齢では,新月又は満月の時),月による起潮 力と太陽による起潮力が強めあった時,生じる. 小潮 · · · 地球 E に対する月と太陽 S のなす角がほぼ 90◦ となり(月齢では,上弦又は下弦の時),2 つの起潮力が弱めあった時,生じる. 下弦 公転の 向き 新月(朔) S 太陽光 E 満月(望) 上弦 図1.9. tide – p. 10/11 大潮・小潮の周期 最初の大潮時に,地球 E に対して,太陽 S と月 M が,図1.10(a) の配置で一直線上に並んでいると する. その場合,次の大潮では,同図 (b) の配置で一直線上に並ぶ. 太陽及び月が天球上を日周運動する際の角速度をそれぞれ σ0 , σ1 とおく.ここで,σ0 は,1太陽日 2π/σ0 = 24.0000 時間から,σ1 は,1太陰日 2π/σ1 = 24.8412 時間から与えられる. 最初の大潮から次の大潮までに要する時間を Ts とする.Ts の間に太陽は角度 σ0 Ts だけ,月は角度 σ1 Ts だけ回転する. この回転角の差が 180◦ となった時が次の大潮になる. σ0 Ts − σ1 Ts = π これより, 1 1 1 1 = 354.368 時間 = 14.77 日 · σ0 = · σ1 1 1 2 2 − 2π 2π 24.0000 − 24.8412 と求められる. Ts = (b) 次の大潮 (a) 最初の大潮 180◦ 0◦ E M S S E M 図1.10. (a) 最初の大潮から,(b) 次の大潮までの,地球 E,月 M,太陽 S の位置関係の変化. tide – p. 11/11
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