治験ニュースレター Vol.10 ― ドラッグラグ ― 皆様は「ドラッグラグ」という言葉を聞いたことがありますか。 「ドラッグラグ」とは海外で使える薬が日本で使えるようになるまで の時差のことを言います。この「ドラッグラグ」について今年2月22日 の朝日新聞朝刊に記事が出ていました。今回の治験ニュースレターは その内容を取り上げたいと思います。 記事によると、日本では2006年度にアメリカと比べて2.4年のドラッ グラグがあったそうですが、2009年度には2年に縮まりました。薬の審 査をする医療品医療機器総合機構(PMDA)の審査官が増員され、審査の 期間が縮小されたのがその原因だそうです。しかしまだアメリカとの 差が2年もあります。 どうしてもっと差が縮まらないのでしょうか。根底には世界の製薬 業界の事情があるようです。日本が世界の薬市場で占めている割合は1 割程度なので、海外の製薬会社は治験を日本で早く実施する必要性を 感じていません。海外の製薬会社は日本よりももっと早く安く正確に 治験ができる地域で治験をした方が得だからです。英語と日本語の言 葉の壁という問題もあります。日本で治験をするためには、英語で書 かれた治験実施計画書(プロトコール)を日本語訳する手間がかかり ます。それよりも、英語が通じる地域で治験をした方が良いわけです。 つまり、日本のドラッグラグの一番の問題点は治験の申請や審査が遅 いのではなく、治験の着手時期が欧米より2年遅いことなのです。この ままでは、海外の治験の流れから日本が取り残されてしまいます。厚 生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の 座長を務める名古屋医療センターの堀田知光先生は「根本的な解決策 は、国際共同治験に日本の医療機関なども参加することと、日本初の 新薬の開発を進めることです。」と言われています。 最近では当院でも国際共同治験がどんどん多くなってきています。 手前味噌で恐縮ですが、当院の治験コーディネーター(CRC)はコン ピューター画面から英語で入力して頑張っていることをお伝えしたい と思います。 臨床研究部 城ヶ崎倫久
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