減損損失の認識・測定と戻し入れ

財務会計
減損会計
講義資料
演習問題
減損損失の認識・測定と戻し入れ
【前提】
①T 社は第1年度期首に M 社を買収した。M社はA,B,C3カ国に製造工場を有している。T
社がM社取得のために支払った購入価格の合計は 10,000 であった。併合された事業の予想活動
年数は 15 年である。この取得に関するデータは次のとおりであった。
第1年度の期首現在
購入価格の配分
識別可能資産の公正価値
の
れ
A国における活動
3,000
2,000
1,000
B国における活動
2,000
1,500
500
C 国における活動
5,000
3,500
1,500
10,000
7,000
3,000
合
計
ん
②T社はA国の資産グループに属する識別可能な資産に関しては 15 年、のれんに関しては 5 年に
わたって残存価額をゼロとした定額法による減価償却を行っている。
③第4年度にA国において新政党が選挙により政権を獲得した。新政府はT社の主力製品の輸出を
相当制限するような法律を成立させた。その結果、予測可能な将来にわたってT社製品の製造は
相当程度削減しなければならなくなると予測された。
④そこで、T社はA国事業ののれんおよび正味資産の回収可能価額の見積もりを要求された。A国
事業に係る識別可能資産およびのれんの減損の有無を判定するにあたっては、個別資産について
独立したキャッシュフローを識別できないため、A国事業全体を資産グループとした。
⑤第4年度末時点でのこの資産グループの正味売却価額は 400 と見積られた。
【減損損失の認識と測定】
⑥A国の資産グループの将来キャッシュフローを見積もるため、T社は次の 5 年間(第 5~9 年度
)の改訂キャッシュフローを予測し、その後(第 10~15 年度)のキャッシュフローは毎年度、
対前年度比でマイナス 5%の成長率に基づいて見積られた。その結果、経営者が承認した割引前
キャッシュフロー予測は後掲の表の(a)欄のとおりであった。
⑦T社はA国事業の使用価値を見積るにあたって、貨幣の時間価値およびA国事業に特有のリスク
を反映した 8%の割引率を用いることにした。その結果、経営者が承認した割引後キャッシュフ
ロ-予測は表の(c)欄のとおりであった。
【減損損失の戻し入れ】
⑦第 6 年度においてA国では新政府が依然として政権を担当していたが、T社が買収したA国事業
の製品に関連する輸出規制の影響は当初に経営者が予測したほど厳しいものではないことがわか
った。その結果、経営者は今後、A国事業の製品の製造量は相当程度回復するであろうと見込む
に至った。
⑧そこで、A国事業の将来キャッシュフロー(割引後)を再計算した結果、第6年度末現在で 1,250
となった。なお、A国事業の資産グループは依然としてA国事業全体で、その正味売却価額は
500 であった。
⑨なお、T社は第4年度末に減損損失を処理した後、切り下げ後の簿価および残存耐用年数を基礎
にして定額法で、A国事業の識別可能な資産およびのれんの減価償却を行っている。
表
年
度
A国事業の将来キャッシュフローの見積り計算表
将来キャッシュ
フロー(割引前)
(a)
8%の割引現価係数
1/(1+0.08)
(b)
n
将来キャッシュ
フロー(割引後)
(c)=(a)×(b)
第 5年度
230
0.92593
213
第 6年度
200
0.85734
171
第 7年度
165
0.79384
131
第 8年度
140
0.73502
103
第 9年度
115
0.68060
78
第 10 年度
109
0.63016
69
第 11 年度
104
0.58350
61
第 12 年度
99
0.54028
53
第 13 年度
94
0.50025
47
第 14 年度
89
0.46320
41
第 15 年度
85
0.42889
36
合
計
1,430
1,003
【設問】
1.第4年度末決算で計上される減損損失の金額はいくらか。また、減損損失を配分後の識別可能
資産とのれんの簿価はそれぞれいくらか。計算過程も示して解答せよ。
2.第6年度末決算で減損損失の戻し入れを行うとしたら、いくらになるか。また、減損損失を戻
し入れ後の識別可能な資産の簿価はいくらか。計算過程も示して解答せよ。