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第5章
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ポートフォリオの設計
第 5. ポートフォリオの設計
5.1 リスク許容度
「リスク許容度」という言葉を耳にすることは少なくないと思われますが、
この「リスク許容度」の意味をもう一度確認してみます。「リスク許容度」
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とは、『投資家がどの程度のリスクを受け容れることができるのか?』とい
う程度を表す言葉です。もちろん、リスクだけを好む投資家は存在しないた
め、より大きなリスクを受け容れる投資家は、より高い利回りを期待してい
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ることを意味しています。
ところで、このリスク許容度は人によって異なるといわれています。たと
えば、投資経験の全くない人は株式などの高いリスクの商品に投資すること
を躊躇するかもしれません。あるいは、過去に証券投資で大きな失敗をした
人は、「もう証券投資なんてお断り!」という人もいるかもしれません。こ
ういった人たちは、心理的な面でリスクを回避する傾向がある人たちです。
一方で、合理的に考えてリスクを回避したがる人たちも存在します。たと
えば、今回のボーナスを貯金しておいて来年の旅行のときの資金にしようと
考える人は、そのお金を株式やファンドに投資しようとは思わないでしょ
う。投資する期間があまりにも短いからです。また、定年されて退職金が
入ってきたとしても、それをすべて株式やファンドに投資しようと考える人
も少ないでしょう。こういった人たちは、投資する期間や、入ってくるお金
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と持っているお金のバランスなどを考えて、リスクにある程度の制限をかけ
ようと自分でコントロールしている人たちです。
つまり、ある人のリスクに対する許容度を考えるときには、心理的な側面
からと合理的な投資行動の側面から考える必要があるのです。したがって、
「リスク許容度」を測るときに、何かの数値を計算してその計算結果がその
人の「リスク許容度」になると考えることは難しいことになります。図 5.1
のように「リスク許容度」とはたくさんの要素から構成されている包括的な
概念であると理解したほうがよいと思われます。
特に注意してもらいたいことは、「リスク許容度」を構成する要素をすべ
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5.1. リスク許容度
リスク許容度とその構成要素
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図 5.1
て同時に考えないことです。なぜなら、要素の数は図 5.1 に示しただけでも
8 つもあるからです。どのように賢い人でも 8 つのことを同時に考えること
はできません。
そこで推奨したいのは、特に重要と思われることから確認していく作業で
す。もし投資期間と全流動資産に占める投資金額の割合が把握できたとしま
す。そうすると、表 5.1 のように考えることができるかもしません。もちろ
んこの表は完全なものではありません。5 年の投資期間を短いとみるか、長
いとみるかは人によって異なる価値基準が存在します。同じように、保有し
ている資産の 50% 以上をリスクのある資産に投資することになっても、そ
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れほどリスクを採っていないと感じる方もいるかもしれません。
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第 5. ポートフォリオの設計
投資期間・投資割合とリスク許容度
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表 5.1
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リスク許容度の番号は番号が大きいほどリスク許容度が高い(リスクを受け容れる
余地がある)ことを示している。ただし、➄は➀の 5 倍であるということを示すわ
けではない
次のステップで他の構成要素を考えます。表 5.2 「流動資産・年間の剰
余金額とリスク許容度」のような表が考えられると思います。たとえば、表
5.1 である投資家のリスク許容度が➄であったとします。しかし、同じ投資
家について表 5.2 を当てはめた結果が「預貯金/投資信託」であれば、結果的
に、その投資家のリスク許容度は高くないと考えられます。ある程度の流動
資産を保有していたとしても年間の投資可能額が少ないか、あるいは、年間
の投資可能額がある程度あったとしても流動資産の少ない場合には、リスク
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許容度が引き下げられると考えられるからです。
表 5.2
流動資産・年間の剰余金額とリスク許容度
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