課題名 先進閉じ込め配位

課題名
先進閉じ込め配位
研究代表者:長﨑百伸・京都大学エネルギー理工学研究所
研究協力者:
海外(氏名、所属):
D. Anderson, K. Likin, C. Deng (Univ. Wisconsin, USA), D. Darrow (Princeton
Plasma Physics Laboratory), J. H. Harris (Oak Ridge National Laboratory, USA), F.
Wagner, M. Hirsch, V. Erckmann, H. Laqua, N. B. Marushchenko, M. Preynas, T.
Stange (Max Plank Institute, Germany), M. Ramisch (Stuttgart Univ., Germany), J.
Sanchez, E. Ascasibar, C. Hidalgo, T. Estrada, A. Cappa, A. Alonso (CIEMAT, Spain),
B. Blackwell, D. Pretty, H. Punzmann (Australian National Univ., Australia), V.
Chechkin, V. Pankratov (Kharkov Institute, Ukraine), X. R. Duan, Q. W. Yang, L. W.
Yan, W. W. Xiao, K. J. Zhao, L. Zang (Southwest Institute of Physics, China), H. Y.
Lee, J. H. Jang, W. H. Choe (KAIST, Korea)
国内(氏名、所属):
佐野史道、水内亨、岡田浩之、南貴司、門信一郎、小林進二、山本聡、大島慎介、G. Weir,
木島滋(京都大学エネルギー理工学研究所)、中村祐司(京都大学エネルギー科学研究科)、
村上定義(京都大学工学研究科)、武藤敬、吉村泰夫、伊神弘恵、高橋裕巳、秋山毅志
(核融合科学研究所)、北島純男 (東北大学工学研究科)、西野信博(広島大学大学院工
学研究院)
1. 目的と期待される効果
世界のヘリカル研究は核融合科学研究所の LHD の精力的な研究とともに、立体磁気
軸配位を有する新概念装置(先進ヘリカル配位)の Heliotron J(京都大学)、TJ-II(ス
ペイン、CIEMAT 研究所)
、HSX(米国、ウィスコンシン大学)
、H-1NF(豪州、オー
ストラリア国立大学)が稼働中であることに加え、2014 年には Wendelstein 7-X(ド
イツ、マックスプランク研究所)が実験を開始する予定であり、相補的な研究が進めら
れている。本課題は、磁場閉じ込めプラズマ中の乱流、磁気島及び磁力線の理解のため、
Heliotron J 実験を基盤にしつつ、先進閉じ込め配位研究の国際拠点形成を目指すこと
を目的としている。平成 22 年度から開始された本研究では、Heliotron J と同様に立体
磁気軸配位を有するヘリカル系装置との国際共同研究を推進してきた。特に、先進ヘリ
カル配位における H-mode などの閉じ込め改善モード理解のための電子密度・温度分
布・揺動計測システムの構築、周辺プラズマ乱流揺動計測、データマイニング手法等を
用いた MHD データ解析、高エネルギー粒子輸送研究、電子サイクロトロン波及び電子
バーンスタイン波による加熱・電流駆動の物理解明などの国際共同研究等を通し、国際
的研究者コミュニティの共同研究を進め、国際共著論文出版や国際学会での招待講演発
表の成果を得ている。
2. 成果
平成 17-21 年度の 5 年間にわたり推進された「国際共同研究拠点ネットワークの形
成」プロジェクトでは、先進ヘリカルの閉じ込め改善に向け、閉じ込め改善の物理を理
解するための電子密度分布・揺動計測システムの構築、周辺プラズマ揺動計測、データ
マイニング手法を用いた新しい MHD データ解析、電子サイクロトロン電流駆動の物理
解明などの国際共同研究・連携研究を核融合科学研究所双方向型共同研究や日米科学技
術協力事業等の支援を得つつ推進し、国際共同研究拠点形成の基盤作りを行ってきた。
こうした成果をベースとし、平成 22 年度から開始された本研究では、Heliotron J と同
様に立体磁気軸配位を有する W7-X, WEGA, TJ-II, H-1, HSX との国際共同研究を推進
している。また、先進計測開発の観点から、西南物理研究所(中国)、KAIST(韓国)
との共同研究も開始した。
これらの国際共同研究拠点ネットワーク活動を継続・発展させ、先進ヘリカル最適
化へ向けた基盤データ構築をより進めてゆくためには、若手研究者を中心とする国際的
研究者コミュニティの形成が不可欠である。この様なコミュニティ形成の場として、平
成 25 年度より「若手国際ジョイントラボ」を新たに設置し、これまでの国際共同研究
の実績をベースに、コア・プラズマ輸送安定性改善や境界プラズマ熱粒子制御等の大テ
ーマの下、国際的研究機関からの招聘研究者を含めた 30-40 代の若手研究者が中心とな
って実験テーマの立案・実験遂行を一貫して行うマシンタイムを Heliotron J 実験プロ
グラムに設けることにより、若手研究者の国際共同研究交流を進めている。今年度は、
ドイツ・マックスプランク研究所より T. Stange を招聘し、2.45GHz マイクロ波による
NBI プラズマスタートアップの際に観測される高エネルギー電子の挙動に関する共同
実験を行い、また、KAIST より H. Y. Lee, J. H. Jang を招聘し、軟 X 線検出器を用い
たプラズマトモグラフィーの共同研究を進める等の活動を行った。また、国内の若手研
究者派遣も行った。国際共同研究成果の詳細については、次の 3 章において記述する。
3. 海外からの招聘および海外への派遣
3.1 被招聘者:Torsten Stange(ドイツ・Max-Planck Institute・研究員)
招聘先:京都大学エネルギー理工学研究所
期間: 平成 27 年 11 月 3 日-平成 27 年 11 月 30 日
課題名: 先進閉じ込め配位における高エネルギー電子の挙動に関する共同研究
Heliotron J において 2.4GHz マイクロ波を用いた NBI プラズマ着火の実験提案を
行い、11 月 5 日-14 日に行われたヘリオトロン J プラズマ実験において共同提案実験を
行った。NBI のためのターゲットプラズマの生成は 2.45GHz マイクロ波を用いた。真
空容器内に 2.45GHz マイクロ波の共鳴
層がないため非共鳴加熱であり、加熱機
構として 2.45GHz マイクロ波アンテナ
近傍での振動電場によるストキャステ
ィック・ランダウ加速(SLA)が考えら
れる。しかしながら、加熱プロセスを開
始するためには電子は最低 50eV 程度の
エネルギーを持たなければならない。こ
のため、閉じ込め磁場用コイルのランプ
アップにおいて形成されるトロイダル
電場が種電子の生成に重要な役割を果
たしている。それと同時に、中性粒子と
図 3.1.1 NBI スタートアップの放電例。追
種電子の衝突を通して、プレフィルガス
加ガスパフにより、密度が 8 倍高いターゲ
が数 eV のエネルギーをもつ予備電離さ
ットプラズマが生成された(#56810)。
れた背景ガスを形成するために重要で
ある。
2.45GHzマイクロ波によって生成さ
れる電子はMeV程度のエネルギーに達
している可能性がある。SLAによって加
熱された電子からバルクプラズマへのエ
ネルギー輸送は予備電離プラズマの密度
に関係している。12kW 2.45GHzマイクロ
波加熱で生成されたプラズマの電子密度
はガスパフに強く依存した(ショット番号
#56750 - #56752)。加熱中に追加された
ガスパフをステップ的に増大させてゆ
くことにより、平均電子密度は
<ne>≈0.4·1019 m-3 まで到達した。この結 図 3.1.2 Gamma-Scout によって計測され
果、図3.1.1に示すように、NBIスタート た硬 X 及びガンマ線強度のトロイダル分
アップのための時間は大きく短縮され 布。
ている。これは、追加ガスパフのない放
電では18msecの遅れが見られていることと対照的である。最適化したターゲットプラ
ズマのne, Te分布をトムソン散乱システムによって計測することも試みたが、残念なが
ら、Teが低いため分布を得るところまでには至っていない。
2.45GHzマイクロ波を用いて生成される高エネルギー電子の挙動を調べるため、2台
のGamma-Scouts® を用い、X-及びガンマ線の分布を調べた。図3.1.2に示すように、
X-及びガンマ線の最大強度はICRFアンテナ近傍であった。トロイダル角26度に設置さ
れている2.45GHzアンテナにおいて生成された高速電子がトーラス外側へとドリフト
し、ICRFアンテナにおいて、その軌道が制限されていることが推測される。
3.2 被招聘者:Hyunyong Lee (韓国・韓国科学技術院・博士研究員)、Juhyeok Jang (韓
国・韓国科学技術院・博士課程)
招聘先: 京都大学エネルギー理工学研究所
期間: 平成 26 年 11 月 20 日−平成 26 年 11 月 29 日
課題名: Soft X-ray measurement and their computer tomography method for
Heliotron J plasmas
先進磁場配位における MHD 不安定性の
2 次元構造を調べる目的で、京都大学と韓国
科学技術院(KAIST)では、軟 X 線検出器を用
いたプラズマトモグラフィーの共同研究を
進 め て い る 。 本 研 究では 、 被 招 聘 者 ら が
KAIST で開発した Philips-Tikhonov 法に基
づいたトモグラフィーコードをヘリオトロ
ン J へ適用することを目的とする。
図 3.2.1 はヘリオトロン J に設置された
軟 X 線検出器の視線配置を示す。平成 25 年
までは、上側(SXU)と内側(SXI)の 2 つの視線
配列(赤色)で計測が行われた。平成 26 年には
プラズマトモグラフィーの性能向上を図る
ため、既存の視線配列に加えて下側に新たな
軟 X 線検出器(SXL、青色)を設置された。一
つの検出器において 20 個の視線を有するの
図 3.2.1 ヘリオトロン J における軟 X
線検出器の視線配置図
図 3.2.2 (a) 仮定した軟 X 線放射強度分布、(b)2 つの視線配列、(c)3 つの視線配列に
よる再構築結果
で、総視線数は 40 から 60 個に増えた。
そこで、視線の追加によって軟 X 線放射強度分布の再構築に及ぼす影響を調べた。
図 3.2.2(a)は再構築テストのために仮定した軟 X 線放射強度分布で、(b)は 2 つの視線
配列、(c)は 3 つの視線配列を用いて、再構築を行った結果を示す。再構築計算には、
ヘリオトロン J の標準磁場配位の磁場データを用いた。図 3.2.2(b)で示したように、既
存の視線配列だけでも仮定した放射強度分布と近い結果が得られるが、プラズマ中心部
の上下に非対称性が見られた。この場合、再構築誤差は約 6.4%である。一方、3 つの
視線配列で放射強度分布を再構築した場合、再構築誤差が 5%に減り、プラズマ中心部
における上下非対称性も小さくなった。従って、3 つの視線配列を用いると既存の 2 つ
の視線配列より再構築誤差や上下非対称性を減らすことができると考えられる。
今後は、京都大学で開発されたプラズマトモグラフィーコードの再構築結果との比
較を行い、ヘリオトロン J における軟 X 線放射強度分布のトモグラフィーコードの改
良を議論する予定である。また、実際の軟 X 線計測データを用いて MHD 不安定性の 2
次元構造解析を行う予定である。
3.3 被招聘者:Linge Zang(中国・西南物理研究所・研究員)
招聘先:京都大学エネルギー理工学研究所
期間: 平成 27 年 3 月 24 日-平成 27 年 3 月 31 日(予定)
課題名: 先進閉じ込め配位における周辺揺動に関する共同研究
超音速分子ビーム入射(SMBI)はガス供給法の一種であり、強度の強い指向性の
あるガスをプラズマへと供給する。Heliotron J では、SMBI によって電子密度とエネ
ルギー閉じ込めを改善されることが実験的に示されている。蓄積エネルギーは通常のガ
スパフでは密度増大とともに飽和する傾向が見られるが、SMBI により、より高蓄積エ
ネルギーの領域へと拡張することが可能である。本共同研究では、SMBI による閉じ込
め改善を理解するため、SMBI が周辺揺動に与える影響を周辺プラズマを計測すること
で調べた。また、周辺揺動のための先進計測ハードウェアの開発を進めている。
図 3.3.1 SMBI 入射直後の短期間のみ、揺動強度確率密度関数(PDF)の歪み(突発
的大振幅揺動の発生)が増加する、その後、PDF の歪みも収まる。
これまで、SMBI 入射口から離れた場所に
設置した静電プローブにより周辺プラズマ揺
動の局所観測を行い、その解析から SMBI 前
後における周辺プラズマ揺動の局所的特性並
びに揺動駆動の粒子損失を評価した。それに
より、図 3.3.1、3.3.2 に示すように、① SMBI
入射直後の短期間のみ、揺動の低周波数成分
ならびに揺動強度確率密度関数(PDF)の歪
み(突発的大振幅揺動の発生)が増加し、揺
動駆動粒子損失が増加する、②その後、この
揺動の低周波数成分が減衰し、PDF の歪みも
収まり、揺動駆動粒子損失が減少しているこ
とが明らかとなった。さらに、SMBI 前後に 図 3.3.2 SMBI 入射での周辺揺動の
おける最外殻磁気面近傍でのポロイダル回転 変化。入射直後の短期間のみ、揺動
速度の径方向シアが変化していることを見出 駆動粒子損失が増加する。その後、
し、この変化が上述の低周波数域の揺動特性 この揺動の低周波数成分が減衰し、
の変化やそれに伴う揺動駆動粒子束の変化に 揺動駆動粒子損失が減少している。
関係している可能性を示した。これらの周辺
揺動特性並びに揺動駆動損失の変化
が、プラズマ閉じ込め劣化、あるい
は閉じ込め改善の一因となっている
として、SMBI では、この閉じ込め
劣化期間を短時間で終わらせること
ができ、その後の閉じ込め改善につ
ながっているとのモデルを提示した。
静電プローブは周辺プラズマを
計測できる有用な手法である。本共
同研究では、密度揺動の分布が得ら
れるビーム放射分光(BES)計測と
の比較も行う。また、周辺揺動の調 図 3.3.3 thermal couple を取り付けた新しい
べるため、thermal couple を取り付 プローブ。
けた新しいプローブをデザインし組
み立てている(図 3.3.3 参照)
。この
プローブは 5 つのピンプローブアレイからなっており、揺動駆動熱流束を計測すること
が可能である。Thermal couple はプラズマ周辺での熱負荷を計測する手法としてよく
利用されており、SMBI でのエネルギー損失の時間発展を追うことが可能である。まず、
第 1 段階として、このプローブを組み立て、較正手法について検討を進めている。
3.4 被招聘者:Kaijun Zhao(中国・西南物理研究所・教授)
招聘先:京都大学エネルギー理工学研究所
期間: 平成 27 年 3 月 8 日-平成 27 年 3 月 22 日
課題名: 先進閉じ込め配位におけるプラズマ流と揺動に関する共同研究
ヘリカル系プラズマとトカマクにおけるプラズマ流と乱流揺動の比較を進めるため
の共同研究を進めている。J-TEXTトカマクでは共鳴磁場揺動(RMP)磁場を印加する
ことで周辺領域に磁気島が形成される。Langmuir probeを用いて測定された、RMPが
ある場合と無い場合の周辺電子温度と径方向電場の径方向分布を図3.4.1に示す。RMP
が有無によって電子温度分布の形状は大きく異なることがわかり、磁気島がある場合は
磁気島の内部で電子温度が平坦化している。最外殻磁気面LCFSの内側約1.5cmの磁気
島境界では、Te分布は急峻となる。磁気島がある場合、径方向電場は磁気島内部で負
から正の値へと変化する。
磁気島に対する揺動の反応を調べた。図3.4.2に示すように、30-400kHzの周波数帯
域における浮遊ポテンシャル揺動の自乗平均平方根は磁気島内部で小さくなり、磁気島
境界で大きい。ポロイダル波数重み平均の径方向分布を図4.2(b)に示す。LCFS内の負
のkθ は電子反磁性方向に揺動が伝播していることを示唆している。しかしながら、磁
気島内部ではkθは増加し、負から正へと符号が変わる。正のkθ は揺動がイオン反磁性
方向に伝播していることが示唆している。磁気島がある場合、GAMは周辺領域で減衰
し、磁気島効果は径電場、レイノルズ数を増加させる。乱流応力の勾配は磁気島がある
場合、LCFS近傍で急峻になり、強い径電場シアーが形成されている可能性がある。
図 3.4.1 RMP 有無での周辺プラズ
マパラメタと揺動の分布, (a) 電子
温度, (b) 径方向電場 Er.
図 3.4.2 磁気島の有る場合と無い場合の(a)
揺動強度の径方向分布と(b) 平均ポロイ
ダル波数
3.5 被派遣者:大島慎介(京都大学エネルギー理工学研究所・助教)
派遣先: 米国 University of Wisconsin–Madison
期間: 平成 27 年 3 月 10 日-平成 27 年 3 月 19 日
課題名:先進閉じ込め配位における長距離相関と周辺揺動に関する共同研究
近年、多くの実験装置においてゾーナルフローは観測され、その理解は急速に進展
してきた。これまで、その共通する挙動や構造について着目されてきたが、一方でその
周波数特性や波数については装置間での差異も存在している。例えば、TJ-II 装置におい
ては 20kHz までの相関の存在が報告されており、その周波数特性は通常のゾーナルフロー
と比較して広がっている。また HSX 装置では径方向に長い波長を有する構造が確認されて
おり、典型的には径方向の波長は 1cm(イオンラーマー半径の 10-50 倍)であるという理論
予測とは異なっている。今後、装置やパラメータの違いに起因する挙動・構造の差異に
ついての理解を包含し一般化を図り、将来の先進装置の設計に役立てていくことが必要
である。特に、3 次元磁場を有するヘリカル装置においては、帯状流、乱流の挙動はよ
り雑となることは自明であり、実験的な観点から LHD, ヘリオトロン J, HSX, TJ-II な
どの装置において長距離相関を含め周辺揺動の挙動を明らかにすることは重要である。
ヘリオトロンJ装置では、最外殻磁気面周辺でトロイダル方向に長距離相関を有する
低周波の電場揺動が観測された。この揺動は、トロイダル方向に対称(m/n~0/0)な構
造を有し、密度/磁場揺動との相関を持たないことから、ゾーナルフローの特徴と良く
一致する。しかしながら、径方向に位相差が大きく変化せず、その径方向波長は理論的
な予測、そして他装置で観測されているゾーナルフローの典型的波長に対して大きい。
径方向に位相構造が大きく変化しないことは電場シアの生成に不利ではあるが、電場の
揺動強度がLCFS内部から急速に上昇しているため、その勾配付近で電場シア、つまり
E×Bフローシアが形成される。このシアリングレートを評価したところ、他装置で観
測される値と同程度であり、このシア構造は乱流輸送に影響しうる。また、クロスバイ
コヒーレンス解析を適用したところ、低周波領域で有意な相関が見出され、Er-E揺動
の非線形結合によって生成されるレイノルズ応力に起因して駆動されるというゾーナ
ルフロー生成のシナリオと矛盾しない結果を示す。また2次元確率密度分布関数を用い
た解析によって、乱流とゾーナルフローとの弱い相関の存在を得ており、乱流からゾー
ナルフローへのエネルギー移送を示唆している。
一方、ウィスコンシン大学マディソン校が有するHSX装置では、バイアス実験時に長
距離相関現象が同様に観測されている。特に、ヘリオトロンJ装置と同様に径方向波長
が長いという点が興味深い。一方、クロスバイコヒーレンス解析の結果によると、レイ
ノルズ応によって駆動されていない可能性を示唆しており、この点はヘリオトロンJ装
置の結果とは異なる。本共同研究では、ヘリオトロンJ装置とHSX装置で観測される長
距離相関含め周辺揺動の挙動についてそれらの共通点と差異に関して議論を深め、3次
元磁場構造が乱流および長距離相関現象に与える影響について理解を目指す。
4. 課題と今後の予定
本事業は自然科学研究機構の「自然科学研究における国際的学術拠点の形成」事業
の一環であり、国際的研究者コミュニティの共同研究交流拠点形成、新しい方法論とし
ての「イメージングサイエンス」への貢献を進めている。本課題では、今年度、NBI
によるプラズマ着火のための 2.45GHz マイクロ波を用いた種プラズマ生成、トモグラ
フィーを用いた MHD 不安定性に関する研究、ラングミュアプローブを用いた周辺揺動
計測、プラズマ流と乱流揺動の相関に関する共同研究等を推進した。特に、NBI スタ
ートアップに関しては、ドイツ・マックスプランク研究所からの若手研究者が実験を提
案、Heliotron J において 2 週間の共同実験を行い、2.45GHz マイクロ波による予備電
離プラズマの最適化、及び、2.45GHz マイクロ波によって生成された高エネルギー電
子のトーラス分布を明らかにする実験データを取得することができた。この結果は、ト
カマクも含めたトーラスプラズマにおけるプラズマ生成物理の知見を与えるとともに、
W7-X などの先進ヘリカル配位における信頼性あるプラズマ生成に貢献するものと期
待される。今後、これらの研究を継続し、先進ヘリカル最適化の基盤データ構築をさら
に進めてゆく。
これまでの共同研究を基盤として、今後、W7-X(ドイツ)、TJ-K(ドイツ)、TJ-II
(スペイン)
、H-1NF(オーストラリア)
、URAGAN(ウクライナ)との国際共同研究
をさらに推進する。また、一昨年度より米国・ウィスコンシン大学の HSX グループと
共同研究を開始しており、先進ヘリカル配位に関する国際拠点形成に向けて世界のほぼ
全ての関連装置との連携が進んでいる。アジア諸国との協力を推進するため、中国、韓
国との国際共同研究も開始している。国内共同研究では、核融合科学研究所、大阪大学、
広島大学、筑波大学、東北大学、及び、京都工芸繊維大学等との連携研究を進めている。
国際共同研究、連携研究のための人的交流を拡大し、実験結果の比較検討や加熱・計測
システムおよび解析ツールの開発を通して、京都大学が中心的な機関となる先進閉じ込
め配位の国際共同研究拠点ネットワーク形成を推進してゆく。
5. 成果発表
論文(査読あり)
1. N. Kenmochi, T. Minami, C. Takahashi, S. Tei, T. Mizuuchi, S. Kobayashi, K.
Nagasaki, Y. Nakamura, H. Okada, S. Kado, S. Yamamoto, S. Ohshima, S.
Konoshima, N. Shi, L. Zang, Y. Ohtani, K. Kasajima, and F. Sano, “First
measurement of time evolution of electron temperature profiles with Nd:YAG
Thomson scattering system on Heliotron J”, Rev. Sci. Instrum. 85, 11D819 (2014)
2. N. SHI, S. OHSHIMA, K. TANAKA, T. MINAMI, K. NAGASAKI, S.
YAMAMOTO, Y. OHTANI, L. ZANG, T. MIZUUCHI, H. OKADA, S. KADO, S.
KOBAYASHI, S. KONOSHIMA, N. KENMOCHI and F. SANO, "Electron Density
Reconstruction and Optimum Beam Arrangement of Far-Infrared Interferometer
in Heliotron J", Plasma Fusion Res. 9, 3402043 (2014)
3. N. Shi, S. Ohshima, K. Tanaka, T. Minami, K. Nagasaki, S. Yamamoto, Y. Ohtani,
L. Zang, T. Mizuuchi, H. Okada, S. Kado, S. Kobayashi, S. Konoshima, N.
Kenmochi and F. Sano, "A novel electron density reconstruction method for
asymmetrical toroidal plasmas", Rev. Sci. Instrum. 85, 053506 (2014)
4. L. Zang, S. Ohshima, T. Mizuuchi, N. Nishino, S. Yamamoto, K. Kasajima, K.
Hashimoto, M. Sha, M. Takeuchi, K. Mukai, H. Y. Lee, N. Kenmochi, K. Nagasaki,
S. Kado, H. Okada, T. Minami, S. Kobayashi, N. Shi, S. Konoshima, Y. Nakamura
and F. Sano, "Effect of supersonic molecular-beam injection on edge fluctuation
and particle transport in Heliotron J", Phys. Plasmas 21, 042308 (2014)
国際学会等での発表
1. N. Kenmochi, T. Minami, C. Takahashi, S. Tei, T. Mizuuchi, S. Kobayashi, K.
Nagasaki, Y. Nakamura, H. Okada, S. Kado, S. Yamamoto, S. Ohshima, S.
Konoshima, L. Zang, Y. Ohtani, and F. Sano, "Time evolution of profile of
high-performance plasma with Nd:YAG Thomson scattering system on Heliotron
J", 24th International Toki Conference (ITC24) on Expanding Horizons of Plasma
and Fusion Science through Cross-Fertilization, Ceratopia Toki, Toki-city, Gifu,
2.
3.
4.
5.
Japan, November 4-7, 2014, P4-39
Y. Ohtani, S. Ohshima, A. Nuttasart, T. Akiyama, T. Minami, K. Tanaka, K.
Nagasaki, N. Shi, T. Mizuuchi, N. B. Marushchenko, S. Kobayashi, H. Okada, S.
Kado, S. Yamamoto, L. Zang, N. Kenmochi, S. Konoshima, Y. Nakamura, F. Sano,
"Present status of high time-resolved far infrared laser interferometer on
Heliotron J", 24th International Toki Conference (ITC24) on Expanding Horizons
of Plasma and Fusion Science through Cross-Fertilization, Ceratopia Toki,
Toki-city, Gifu, Japan, November 4-7, 2014, P4-25
S. Ohshima, S. Kobayashi, S. Yamamoto, K. Nagasaki, T. Mizuuchi, H. Okada, T.
Minami, S. Kado, K. Hashimoto, K. Kasjima, H.Y. Lee, L. Zang, N. Kenmochi, Y.
Ohtani, S. Konoshima, and F. Sano , "Observation of a Toroidally Symmetrical
Electric Field Fluctuation with Radially Elongated Structure in Heliotron J",
25th IAEA Fus. Energy Conf., St. Petersburg, Russia, Oct. 13-18, 2014, EX/P4-26
S, Yamamoto, K. Nagasaki, S. Kobayashi, T. Mizuuchi, H. Okada, T. Minami, S.
Kado, S. Ohshima, Y. Nakamura, F. Volpe, K. Nagaoka, S. Konoshima, N. Shi, L.
Zang, N. Kenmochi, Y. Ohtani, and F. Sano, "External Control of
Energetic-ion-driven MHD Instabilities by ECH/ECCD in Heliotron J Plasmas",
25th IAEA Fus. Energy Conf., St. Petersburg, Russia, Oct. 13-18, 2014, EX/P4-27
S. Kobayashi, H.Y. Lee, K. Nishioka, Y. Nakamura, S. Nishimura, T. Mizuuchi, S.
Kado, K. Nagasaki, H. Okada, T. Minami, S. Yamamoto, S. Ohshima, M.
Yokoyama, S. Murakami, K. Watanabe, R. Seki, N. Kenmochi, S. Konoshima, F.
Sano, "Parallel flow dynamics and comparison with neoclassical transport
analysis in NBI plasmas of Heliotron J", 25th IAEA Fus. Energy Conf., St.
Petersburg, Russia, Oct. 13-18, 2014, EX/P4-28